説明

ネットワークシステム及びネットワークシステムの同期方法

【課題】論理的なリング型ネットワークを構成するシステムにおいて、ノード間のタイマ値の同期を容易且つ的確に行なう。
【解決手段】マスタノードはシステム同期処理を行って、各ノードでのタイマラッチ指示メッセージの往き及び戻り時の受信タイミングにおけるタイマ値を収集し、各ノードでのタイマ値に基づき各スレーブノードとの間の伝送遅延時間を演算して各スレーブノードに通知する。各スレーブノードは、マスタノードからのマスタタイマ値と伝送遅延時間との和を自ノードのタイマ値として設定してマスタノードとの同期を図る。さらにマスタノードは、各ノードがループバック状態にあるか否かを監視し(ステップS21〜S23)、ループバック状態に変化があったとき、ネットワークのシステム構成に変更があったとして、再度システム同期処理を行ってノード間における同期化を図る(ステップS25)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノードをデイジーチェーン接続し、且つ両端のノードで回線を折り返すことによりリング状の伝送経路を形成するようにしたネットワークシステム及びネットワークシステムの同期方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークにおけるタイマ同期方式として、NTP(Network Time Protocol)、或いはIEEE1588規格等が知られている。
図18は、NTPの概要を示したものである。
このNTPは、インターネット等で使用されるプロトコルであって、標準時刻を有するサーバ81に対し、クライアント82から時刻通知のメッセージを送信し、サーバ81側がこれに対して自身の時刻を添付して応答することにより、クライアント82が自身の時刻を補正するものである。
【0003】
つまり、クライアント82は、時刻通知のメッセージを送信した時点から、サーバ81側の時刻が付加された応答メッセージを受信するまでの応答時間を記録しておき、メッセージが、往路及び復路とも同一経路を通ることを前提として、応答メッセージに付加されたサーバ81側の時刻を応答時間で補正し、これを応答メッセージ受信時のクライアント82の現在時刻として自身の時計を修正するようにしている。
【0004】
例えば、クライアント82が時刻通知のメッセージを送信した時刻を“TA”、クライアント82がサーバ81側から応答メッセージを受信するまでの応答時間を“2Δ”、サーバ81側からの応答メッセージに付加されているサーバ81側の時刻をTBとすると、サーバ81側から応答メッセージを受信した時刻は“TA+2Δ”で表すことができ、これはすなわち、“TB+Δ”となる。したがって、クライアント82は現在時刻を、“TB+Δ”として設定する。
また、IEEE1588規格においても、マスタとスレーブとの間の伝送遅延距離が往路及び復路とも同一であることを前提として、ハードウェアベースでの時間取得、設定機能を用いてNTPより精度の高い同期を実現している。
【0005】
また、このように、メッセージの往路及び復路の伝送経路が同一であることを利用して同期を行なう方法として、マスタ装置が時刻送信要求元の端末装置に現在時刻を通知し、現在時刻の通知を行なった時点から、その応答を受信するまでの所要時間をマスタ装置で検出し、その往復時間の1/2相当を片道の伝送遅延時間とし、これを現在時刻に加算して他の端末装置に通知し、これを端末装置が現在時刻として設定するようにしたもの(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、マスタ装置のGPSが正常である間は、メッセージの往路及び復路の伝送経路が同一であることを利用して同期を行い、マスタ装置のGPSも異常となったときには、マスタ装置の現在時刻を一斉同報により他の端末装置に送信し、且つ端末装置がこれを現在時刻として設定することにより、同期を図るようにしたもの(例えば、特許文献2参照)等も提案されている。
【0006】
さらに、リング型ネットワークシステムにおいて、各局をメインルート及びサブルートからなる二重ループ伝送路により結合し、メインルートとサブルートとで互いに逆方向にメッセージを流すことにより、ターゲットとする局までのメインルート及びサブルートによるメッセージの到達時間差を検出し、この到達時間差をもとに、時刻同期を行なう方法等も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−28119号公報
【特許文献2】特開2006−71441号公報
【特許文献3】特開平6−214060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図19(a)に示すように、複数のノードA〜Eがリング状の回線Lに接続されたリング型ネットワークシステムにおいては、ノード“A”から送出されたメッセージは、例えば時計周りに伝送路上を巡回する。例えば図19(b)に示すように、ノード“A”をマスタとしたとき、時刻“TimeA”でマスタノード“A”がブロードキャスト通信によりマスタノード“A”におけるタイマ値を各ノードに通知し、これによりネットワークシステム内でのタイマの同期を図ったとしても、ノード“A”から送出されたメッセージは、ノード“B”、ノード“C”、ノード“D”、ノード“E”を経てノード“A”に伝達されることになる。このため、例えばノード“B”とノード“E”とでは、マスタノード“A”との間のメッセージの伝送距離が異なるため、ノード“B”がメッセージを受信するタイミングに比較してノード“E”がメッセージを受信するタイミングは遅れることになる。
【0009】
つまり、時刻“TimeA”でノード“A”が送信したメッセージを各ノードが受信するまでの所要時間を伝送遅延時間としたとき、ノード“B”における伝送遅延時間“TAB”は、ノード“A”とノード“B”との間の伝送に要する所要時間相当であるのに対し、ノード“E”での伝送遅延時間“TAE”は、メッセージが回線Lを介してノード“E”まで伝送されるのに要する伝送に伴う所要時間とノード“A”及びノードE”間に介在するノードがメッセージを受信してからこれを送信するまでの中継に要する所要時間を、介在するノード毎に加算した値との和となる。
【0010】
このため、リング型ネットワークシステムにおいて同期を行なう場合、例えば、ブロードキャスト通信を用いてノード“A”の時刻を各ノードに伝達したとしても、上述のように、メッセージの送信元であるノード“A”に近い上流側のノードと、ノード“A”から比較的遠い下流側のノードとでは、メッセージを受信する時刻が異なってしまう。
各ノードでは、メッセージを受信した時点で、通知されたノード“A”の時刻を現在時刻としてタイマ値を更新設定しているため、メッセージの受信タイミングが異なると、結果的に各ノードにおけるタイマ値も異なることになり、その分だけ同期精度が低下することになる。
【0011】
各ノードにおいてタイマ値に同期して実行される処理が、ネットワークにおけるメッセージの一巡時間よりも十分に大きなオーダでの時間差で行なわれたとしても許容されるのであれば問題ないが、例えば、メッセージを受信する毎にノード間で同期して処理を行なうようなシステムにおいては、上流側ノードと、下流側のノードとの間でメッセージ受信時の時刻に差がありこれに基づきタイマ値を更新設定した場合には、問題となる。
【0012】
例えば、図19(a)に示すようなネットワークシステムに対して、NTP、IEEE1588規格、特許文献1或いは特許文献2等といった、メッセージが、往路及び復路とも同一経路を通ることを前提とした、時刻同期方式を適用する場合を考える。この場合、リング型ネットワークシステムは、図19(b)に示すように、メッセージはリング状の回線を一方向に周回して伝送されるため、例えばノード“A”からノード“D”までの伝送経路と、ノード“D”からノード“A”までの伝送経路とは異なり、すなわち伝送距離が異なる。このため、メッセージが、往路及び復路とも同一経路を通ることを前提とした、時刻同期方式を適用したとしても十分な精度を得ることはできない。
図19(a)のような複数のノードが物理的にリング型に接続されたネットワークシステムの場合には、各ノードを二重ループ回線で接続しメインルート及びサブルートにおける逆方向に送信されるメッセージの到達時間差を用いることにより時刻同期を行なうことができる。
【0013】
一方、リング型ネットワークとして、環状のケーブルに複数のノードを接続したネットワークシステムの他に、複数のノードをデイジーチェーン接続し、両端のノードで回線を折り返し、メッセージを往きと戻りとの2回中継することにより、論理的にリング型の伝送路を形成するようにしたネットワークシステムがある。このようなネットワークシステムは、物理的な接続は、ピアツーピアでノード間を1本のケーブルで接続するだけでよく、環状ケーブルを用いたリング状リング型ネットワークシステムのように各ノードをリング状に配置しなくてよいため、ノードの配置位置等に制約を受けることが比較的少ない。また、デイジーチェーン接続されている場合であっても、論理的にリング状の伝送路を形成することによって、一括データ収集及び一括データ配信のプロトコルを容易に実現することができる等といった特徴がある。
【0014】
このような論理的にリング型の伝送路を形成するネットワークシステムにおいて、メインルート及びサブルートにおけるメッセージの到達時間差を用いることにより時刻同期を行なう場合には、回線を二重にする必要があり、すなわち、往路の伝送線及び復路の伝送線を2組用意せねばならず、ケーブルコスト、対ノイズ性等の問題もある。
また、そもそも、メインルート及びサブルートを設ける時刻同期方法においては、時刻同期のためにメインルート及びサブルートで等しくメッセージを処理できねばならず、ネットワーク処理回路が冗長な回路となってしまう。
【0015】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の問題点に着目してなされたものであり、デイジーチェーン接続され論理的にリング型の伝送路が形成されるネットワークシステムにおいて、各ノード間における同期を容易且つ高精度に行なうことの可能なネットワークシステム及びネットワークシステムの同期方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1にかかるネットワークシステムは、第1の伝送路及び第2の伝送路それぞれがマスタノード及び複数のスレーブノードをデイジーチェーン接続し、該デイジーチェーン接続された両端のノードそれぞれで前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続してリング状の伝送路を構成し、何れかのノードが、隣接するノードとの間での通信が不可となる異常状態を検出したときに前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続してループバックし、前記異常状態の復旧が検出されたときに前記ループバックを解除して前記ループバックにより前記マスタノードから切り離されたスレーブノードを前記マスタノードに再接続するネットワークシステムにおいて、前記マスタノード及びスレーブノードは、タイマと、該タイマのタイマ値をラッチさせるためのタイマラッチ指示メッセージを前記第1の伝送路から受信した時の自ノードの前記タイマのタイマ値をラッチする第1のラッチ手段と、前記タイマラッチ指示メッセージを前記第2の伝送路から受信した時の自ノードの前記タイマのタイマ値をラッチする第2のラッチ手段と、前記ラッチされたタイマ値を収集するためのタイマ値収集メッセージを受信したとき、前記第1のラッチ手段によってラッチされたタイマ値と前記第2のラッチ手段によってラッチされたタイマ値とを前記タイマ値収集メッセージにタイマ情報として付加するタイマ情報付加手段と、を備え、前記マスタノードは、前記タイマラッチ指示メッセージを各ノードに送信するタイマラッチ指示メッセージ送信手段と、前記タイマラッチ指示メッセージを送信した後、前記タイマ値収集メッセージを、各ノードを経由して周回させるタイマ値収集手段と、前記スレーブノードのそれぞれと自ノードとの間の伝送遅延時間を、各ノードを周回した後の前記タイマ値収集メッセージの前記タイマ情報に基づき演算する伝送遅延時間演算手段と、当該伝送遅延時間演算手段で演算された前記伝送遅延時間を、各スレーブノードに伝達するための伝送遅延時間設定メッセージを送信する伝送遅延時間設定メッセージ送信手段と、前記伝送遅延時間設定メッセージを送信した後、自ノードの前記タイマの現時点でのタイマ値を各スレーブノードに送信するマスタタイマ値送信手段と、を有しノード間のタイマ値を同期化するシステム同期部を備え、さらに、該システム同期部によるノード間のタイマ値の同期化後に前記各スレーブノードでの前記ループバック状態の有無を獲得するためのループバック状態読み出しメッセージを各スレーブノードに周回させるループバック状態読み出し手段と、各スレーブノードを周回した前記ループバック状態読み出しメッセージ基づき、各ノードがループバック状態にあるか否かを監視し、何れかのノードのループバック状態が変化したとき、前記システム同期部を作動させて前記ノード間でのタイマ値の再同期を図るシステム再同期手段と、を備え、前記スレーブノードは、
前記伝送遅延時間設定メッセージを受信したとき、当該伝送遅延時間設定メッセージから自ノードの伝送遅延時間を獲得する伝送遅延時間獲得手段と、前記マスタタイマ値送信手段により送信されたマスタノードのタイマ値を受信し、該受信したタイマ値と前記伝送遅延時間獲得手段で獲得した前記伝送遅延時間との和を、自ノードの前記タイマの現在のタイマ値として更新設定するタイマ値同期手段と、前記ループバック状態読み出しメッセージを受信したとき、当該ループバック状態読み出しメッセージに自ノードにおけるループバック状態の有無を示すループバック情報を付加するループバック状態付加手段と、を備え、前記ループバック状態の変化に伴うシステム構成の変化に応じてノード間のタイマ値の再同期を図るようにしたことを特徴としている。
【0017】
また、請求項2に係るネットワークシステムは、前記第1の伝送路と第2の伝送路とは同一長さを有し、前記伝送遅延時間演算手段は、前記タイマ値収集メッセージに各ノードにより付加された前記タイマ情報に基づき各ノードの配置位置を検出し、検出した配置位置と前記第1および第2のラッチ手段でラッチされた各ノードにおける前記タイマ値と一の伝送メッセージが前記リング状の伝送路を一周するのに要する一周時間とから前記伝送遅延時間を演算することを特徴としている。
【0018】
また、請求項3に係るネットワークシステムは、前記各ノードは、前記第1の伝送路及び第2の伝送路のうち一方の伝送路から入力した前記タイマラッチ指示メッセージに対して処理を行い、且つ他方の伝送路から入力した前記タイマラッチ指示メッセージを中継し、前記伝送遅延時間演算手段は、前記各ノードの配置位置及び前記各ラッチ手段でラッチされた前記タイマ値に基づき、隣接するノード間それぞれにおける前記タイマラッチ指示メッセージの伝送時間をノード間伝送時間として演算するノード間伝送時間演算手段を有し、前記マスタノードから前記伝送遅延時間の演算対象であるターゲットノードまでの間の、隣接するノード間それぞれの前記ノード間伝送時間の和と、前記マスタノードと前記ターゲットノードとの間に介在するノードにおける前記タイマラッチ指示メッセージに対するメッセージ判定処理時間の和との総和を、前記マスタノードと前記ターゲットノードとの間の伝送遅延時間とすることを特徴としている。
【0019】
さらに、請求項4に係るネットワークシステムは、前記ノード間伝送時間演算手段は、前記ラッチ手段でラッチされたタイマ値に基づき一のノードが前記タイマラッチ指示メッセージを一方の伝送路から受信した時点から他方の伝送路から受信するまでの所要時間である受信経過時間を演算し、前記第1のノードにおける前記受信経過時間と前記第2のノードにおける前記受信経過時間との差分の絶対値から、前記第1のノード及び第2のノードのうちの上流側のノードにおける前記タイマラッチ指示メッセージに対するメッセージ判定処理時間を減算し、この減算結果の1/2を前記第1のノード及び第2のノード間における前記ノード間伝送時間とし、前記マスタノードとこの下流に隣接するノードとの間のノード間伝送時間を演算するときには、前記タイマ情報から算出される前記マスタノードにおける前記受信経過時間を前記一周時間から減算し、この減算結果をノード間伝送時間演算時のマスタノードにおける受信経過時間として用いることを特徴としている。
【0020】
さらにまた、請求項5に係るネットワークシステムは、前記マスタタイマ値送信手段は、前記マスタノードの前記タイマのタイマ値を、定期的に送信し、前記タイマ値同期手段は、前記マスタノードの前記タイマ値を受信する毎に、自ノードの前記タイマのタイマ値を更新設定することを特徴としている。
さらに、請求項6に係るネットワークシステムは、前記両端のノードは、当該ノード内部で前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続し、前記ラッチ手段は、前記第1の伝送路及び前記第2の伝送路から前記ノードへの前記タイマラッチ指示メッセージの入力端それぞれに設けられ、前記タイマラッチ指示メッセージが前記ノードの入力端に達した時点で前記タイマ値をラッチし、前記タイマ情報付加手段は、前記タイマラッチ指示メッセージを、前記第1の伝送路及び前記第2の伝送路の何れから受信したかを表す受信情報と前記タイマ値とを、前記タイマ情報として前記タイマ値収集メッセージの予め設定された領域に付加し、前記伝送遅延時間演算手段は、前記タイマ値収集メッセージに付加された前記タイマ情報の並び順及び前記受信情報に基づき、各ノードの配置位置を検出することを特徴としている。
【0021】
また、本発明の請求項7に係るネットワークシステムの同期方法は、第1の伝送路及び第2の伝送路それぞれがマスタノード及び複数のスレーブノードをデイジーチェーン接続し、該デイジーチェーン接続された両端のノードそれぞれで前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続してリング状の伝送路を構成し、何れかのノードが、隣接するノードとの間での通信が不可となる異常状態を検出したときに前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続してループバックし、前記異常状態の復旧が検出されたときに前記ループバックを解除して前記ループバックにより前記マスタノードから切り離されたスレーブノードを前記マスタノードに再接続するネットワークシステムにおける同期方法であって、前記マスタノード及びスレーブノードはそれぞれタイマを有し、前記マスタノードが、前記各ノードが有するタイマのタイマ値のラッチを指示するタイマラッチ指示メッセージをブロードキャスト通信により各ノードに送信するステップと、前記タイマラッチ指示メッセージを受信したノードにおいて、前記タイマラッチ指示メッセージを前記第1の伝送路から受信したときの自ノードの前記タイマのタイマ値及び前記タイマラッチ指示メッセージを前記第2の伝送路から受信したときの前記タイマのタイマ値をラッチするステップと、前記マスタノードが、前記タイマラッチ指示メッセージを送信した後、各ノードでラッチしたタイマ値を収集するためのタイマ値収集メッセージを、各ノードを経由して周回させるステップと、前記タイマ値収集メッセージを受信したノードが、前記タイマラッチ指示メッセージを前記第1の伝送路及び前記第2の伝送路から受信したときにラッチしたタイマ値をタイマ情報として前記タイマ値収集メッセージに付加するステップと、前記マスタノードにおいて、各ノードを周回した後の前記タイマ値収集メッセージに付加された前記タイマ情報に基づき、各ノードの配置位置を検出し、検出した配置位置と各ノードでラッチされた前記タイマ値と前記タイマラッチ指示メッセージが前記リング状の伝送路を一周するのに要した一周時間とから、前記スレーブノードのそれぞれと前記マスタノードとの間の前記タイマラッチ指示メッセージの伝送遅延時間を演算し、前記伝送遅延時間を各スレーブノードに伝達するための伝送遅延時間設定メッセージを送信するステップと、前記伝送遅延時間設定メッセージを受信したスレーブノードが、前記伝送遅延時間設定メッセージから自ノードの伝送遅延時間を獲得するステップと、前記マスタノードが、前記伝送遅延時間設定メッセージを送信した後、前記マスタノードの前記タイマの現時点でのタイマ値を各スレーブノードにブロードキャスト通信により送信するステップと、前記マスタノードのタイマ値を受信した前記スレーブノードが、前記マスタノードのタイマ値と前記伝送遅延時間設定メッセージから獲得した前記伝送遅延時間との和を、自ノードの前記タイマの現在のタイマ値として更新設定するステップと、を有し、前記ノード間でのタイマ値の同期化を図るシステム同期処理ステップと、前記ノード間でのタイマ値の同期化を図った後、前記マスタノードが、前記各スレーブノードでの前記ループバック状態の有無を獲得するためのループバック状態読み出しメッセージを各スレーブノードに周回させるステップと、前記スレーブノードが、前記ループバック状態読み出しメッセージを受信したとき当該ループバック状態読み出しメッセージに自ノードにおけるループバック状態の有無を付加するステップと、前記マスタノードが、各スレーブノードを周回した前記ループバック状態読み出しメッセージ及び自ノードのループバック状態に基づき、何れかのノードのループバック状態が変化したことを検出したとき、再度前記システム同期処理ステップを実行して前記ノード間でのタイマ値の再同期を図るステップと、を備え、前記ループバック状態の変化に伴うシステム構成の変化に応じてノード間のタイマ値の再同期を図ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、各ノードにおける、タイマラッチ指示メッセージを第1の伝送路から受信した時点でのタイマ値と第2の伝送路から受信した時点でのタイマ値をタイマ情報としてマスタノードで収集する。そして、収集したタイマ情報をもとに、各ノードの配置位置を検出すると共にマスタノードとスレーブノードとの間の伝送遅延時間を演算してこれを各スレーブノードに通知し、スレーブノードが、ブロードキャストで送信されたマスタノードのマスタタイマ値に、伝送遅延時間相当だけ加算した値を各スレーブノードでのタイマ値として更新設定するため、ノード間におけるタイマ値を的確に同期させることができる。
【0023】
さらに、マスタノードでは、スレーブノード及び自ノードのループバック状態の変化を監視し、何れかのノードでのループバック状態の変化を検出したときには再度ノード間のタイマ値の同期化を図るため、ループバック状態となること、或いはループバック状態から復旧することに伴い、ネットワークシステムの構成が変化した場合であっても、マスタノードがループバック状態の変化を検出した時点で、ノード間でのタイマ値の同期化を図ることができる。よって、ネットワークシステムの構成が変化したことに伴いノード間でのタイマ値の同期を維持することができなくなった場合であっても、速やかにノード間でのタイマ値の同期化を図ることができ、ノード間でタイマ値が不同期となることにより制御に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用したネットワークシステムの一例を示す構成図である。
【図2】(a)は本発明の接続状態を表す説明図、(b)は論理的な接続状態を表す説明図である。
【図3】ノードの概略構成を示すブロック図である。
【図4】ノードの動作説明に供する説明図である。
【図5】マスタノードで実行されるシステム同期処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】スレーブノードで実行される同期化処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】マスタノードで実行されるシステム再同期処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】スレーブノードで実行されるループバック状態付加処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】ループバック状態読み出しメッセージに付加される情報の一例である。
【図10】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図11】タイマ値収集メッセージで収集されたタイマ情報の一例である。
【図12】伝送遅延時間の演算方法を説明するための説明図である。
【図13】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図14】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図15】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図16】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図17】本発明の動作説明に供する説明図である。
【図18】NTPによる同期方式を説明するための説明図である。
【図19】リング型ネットワークのブロードキャスト通信を用いた同期方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用したネットワークシステムの一例を示す構成図である。
このネットワークシステムは、例えば、ノード“A”〜ノード“E”の5つのノードを備えて構成され、ノード“A”がマスタとして動作する。
各ノードは、ノード“E”、ノード“A”、ノード“B”、ノード“C”、ノード“D”の順にデイジーチェーン接続され、隣接するノード間は、それぞれ1対1にピアツーピアで接続される。すなわち、ノード“E”及びノード“A”間は、ケーブルL1で接続され、ノード“A”及びノード“B”間はケーブルL2で接続され、ノード“B”及びノード“C”間はケーブルL3で接続され、ノード“C”及びノード“D”間はケーブルL4で接続される。
【0026】
各ノードは、第1の接続端子11と第2の接続端子12との2つのケーブル接続口を備え、一方のノードの第1の接続端子11と他方のノードの第2の接続端子12とを対応させて接続される。すなわち、ノード“E”の第2の接続端子12とケーブルL1の一端とを接続し、ノード“A”の第1の接続端子11とケーブルL1の他端とを接続することによりノード“E”とノード“A”とをピアツーピア接続する。同様にノード“A”の第2の接続端子12及びノード“B”の第1の接続端子11間、ノード“B”の第2の接続端子12及びノード“C”の第1の接続端子11間、ノード“C”の第2の接続端子12及びノード“D”の第1の接続端子11間を接続することにより、隣接するノード間がピアツーピアで接続されたネットワークシステムが形成される。
【0027】
各ケーブルLn(n=1〜4)は、図2(a)に示すように、第1の配線L11と当該第1の配線L11と同一長さの第2の配線L22とを有する。
各ノードは、図2(a)に示すように、ケーブルLn及びケーブルLn+1の第1の配線L11どうし、及び第2の配線L22どうしを、ノードを介して接続する。また、端部のノードであって、一方の接続端子11又は12のみにケーブルLnが接続されているノード“D”又は“E”は、接続されたケーブルLnの第1の配線L11と第2の配線L22とを内部で接続する。すなわち、ノード“D”は、ケーブルL4の第1の配線L11と第2の配線L22とを接続する。また、ノード“E”は、ケーブルL1の第1の配線L11と第2の配線L22とを接続する。
【0028】
これによって、図2(a)に示すように、各ノード“A”〜“C”を介して接続された一連の第1の配線L11と一連の第2の配線L22とが、端部のノード“D”及び“E”で接続されて、各ケーブルLnの第1の配線L11と第2の配線L22とからなるリング状の伝送路を形成している。その結果、図2(b)に示すように、論理的にリング状に接続されたリング型ネットワークを構成している。
なお、図2(a)において、13は処理部である。この処理部13は、ケーブルLnを介して伝送されるメッセージの送受信処理及び受信した自ノード宛のメッセージにしたがって所定の演算を行なう等のメッセージ処理を行なう。
【0029】
図3は、各ノードの構成の一例を示したものである。
図3に示すように、各ノードは、ケーブルLnが接続される第1の接続端子11及び第2の接続端子12と、処理部13と、ラッチ回路15及び16と、タイマ17と、切り替え回路18と、を備える。
ラッチ回路15は、第1の接続端子11に接続される第1の配線L11から伝送メッセージを入力すると共に、伝送メッセージを切り替え回路18に出力する。
そして、ラッチ回路15は、伝送メッセージの予め設定された特定領域を参照し、この特定領域のデータが予め設定した特定情報であるとき、タイマ17のタイマ値をラッチすると共に、第1のタイマ値有効フラグF1を“1”とし、第1のタイマ値有効フラグF1とラッチタイマ値とを処理部13に出力する。伝送メッセージの特定領域のデータが前記特定情報でないときにはタイマ値のラッチは行なわない。
【0030】
一方、ラッチ回路16は、第2の接続端子12に接続される第2の配線L22からの伝送メッセージを入力すると共に、伝送メッセージを切り替え回路18に出力する。
そして、ラッチ回路16は、伝送メッセージの予め設定された前記特定領域を参照し、この特定領域のデータが前記特定情報であるとき、タイマ17のタイマ値をラッチして第2のタイマ値有効フラグF2を“1”とし、第2のタイマ値有効フラグF2とラッチタイマ値とを処理部13に出力する。伝送メッセージの前記特定領域のデータが特定情報でないときにはタイマ値のラッチは行なわない。
【0031】
これらラッチ回路15及び16は、上述のように特定のメッセージを受信したかどうかを監視し、特定のメッセージを受信したときにタイマ17のタイマ値を獲得し、タイマ値及びタイマ値有効フラグを“1”として通知するだけの回路である。したがって、これらラッチ回路15及び16を追加したとしても、メッセージの伝送に影響を与えるものではない。また、処理部13と無関係にタイマ値のラッチのみを行なうため回路全体に対する影響も小さい。
タイマ17は、水晶振動子を含んで構成され、タイマ値をラッチ回路15及び16に出力する。
【0032】
切り替え回路18は、自ノードが、端部のノードであるか否かに応じて、処理部13、ラッチ回路15及び16、第1の接続端子11、第2の接続端子12との間で接続先を切り替える。なお、自ノードが端部のノードであるか否かは、例えば、各ノードにおいて、第1の接続端子11と第2の接続端子12との何れか一方のみにケーブルが接続されている状態であるか否かを、例えば電気的に未接続状態であるか否かを検出すること等により検出すればよい。また、切り替え回路18における切り替えは、ソフトウェア的に切り替えるようにしてもよく、また物理的に接続先を切り替えるように構成してもよい。
【0033】
そして、切り替え回路18は、自ノードが端部に位置していないとき、すなわちノード間に接続された中間ノードである場合には、図4(a)に示すように、ラッチ回路15からの伝送メッセージをそのまま処理部13に伝達し、処理部13からの伝送メッセージを第2の接続端子12の第1の配線L11に送出する。
また、切り替え回路18は、ラッチ回路16からの伝送メッセージをそのまま第1の接続端子11の第2の配線L22に送出する。
【0034】
一方、自ノードが右端のノードである場合、すなわち、図1において、ノード“D”である場合には、第2の接続端子12には、ケーブルLnが接続されないため、切り替え回路18は、図4(b)に示すように、ラッチ回路15からの伝送メッセージを処理部13に伝達し、処理部13からの伝送メッセージを第1の接続端子11の第2の配線L22に送出する。
同様に、自ノードが左端のノードである場合、すなわち、図1において、ノード“E”である場合には、第1の接続端子11には、ケーブルLnが接続されていないため、切り替え回路18は、図4(c)に示すように、ラッチ回路16からの伝送メッセージをそのまま処理部13に伝達し、処理部13からの伝送メッセージを第2の接続端子12の第1の配線L11に送出する。
【0035】
そして、処理部13は、切り替え回路18を介して受信した伝送メッセージに基づき前記送受信処理及びメッセージ処理等を行ない、必要に応じて伝送メッセージを生成しこれを切り替え回路18に出力する。また、処理部13は、隣接するノードとの通信状態を監視し、断線または隣接するノード自体の異常等の要因のために、隣接するノードとの通信が不可となる通信系統の異常状態を検出したときには、ループバックを行ってこのノードをネットワークシステムから切り離す。これによりマスタノードとこのマスタノードと接続状態にある他のノード(以後、スレーブノードともいう)との間で通信を継続する。また、隣接するノードの異常状態の復旧を検出したときにはループバックを解除し、このループバックによりネットワークシステムから切り離されたスレーブノードをマスタノードに再接続する。
【0036】
また、処理部13は、ラッチ回路15及び16からの第1のタイマ値有効フラグF1及びラッチタイマ値、第2のタイマ値有効フラグF2及びラッチタイマ値を入力する。
そして、自ノードがマスタノードであるときには、システム同期処理を実行して各ノードからラッチタイマ値を収集し、これに基づきノード間でのタイマ値の同期を図る。また、自ノードがマスタノードであるときにはシステム再同期処理を実行し、具体的には自ノードを含む各ノードがループバック状態にあるか否かを監視し、何れかのノードのループバック状態が変化したとき、すなわち何れかのノードがループバック状態となったとき或いはループバック状態が解除されたときには、再度システム同期処理を実行する。つまり、何れかのノードがループバック状態となること或いはループバック状態を解除することによりネットワークシステムのシステム構成が変化することから、マスタノード及びこれと接続されるスレーブノードとからなる新たなシステム構成においてノード間のタイマ値の同期化を図る。
【0037】
一方、自ノードがマスタノードでないとき、つまりスレーブノードであるときには、マスタノードからタイマラッチ指示メッセージを受信したときに同期化処理を実行し、マスタノードからの指示にしたがって、マスタノードとのタイマ値の同期を図る。また、スレーブノードであるときには、ループバック状態付加処理を行い、自ノードがループバック状態にあるか否かを、マスタノードに通知する。
【0038】
次に、マスタノードで実行されるシステム同期処理及びスレーブノードで実行される同期化処理の処理手順を、図5及び図6を伴って説明する。なお、図5はマスタノードでのシステム同期処理、図6はスレーブノードでの同期化処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
マスタノードでは、このシステム同期処理を予め設定したタイミングで実行する。例えば、起動時、或いは、予め設定した定周期で実行する。
マスタノードでは、図5に示すように、まず、ステップS1で、各ノードに対してタイマ17のラッチを指示するタイマラッチ指示メッセージを送信する。このとき、マスタノードは、タイマラッチ指示メッセージを、各ノード宛にブロードキャスト通信により送信する。また、マスタノードは、タイマラッチ指示メッセージの予め設定した領域に、このメッセージがタイマラッチ指示メッセージであることを特定するための特定情報を設定して送信する。
【0039】
スレーブノードは、タイマラッチ指示メッセージを受信すると、ラッチ回路15又は16で、タイマラッチ指示メッセージの予め設定された特定領域のデータが所定の特定情報であるか否かを判断する。このとき、ラッチ回路15及び16には参照すべき特定領域及び特定情報として、マスタノードから送信される前記タイマラッチ指示メッセージの、当該メッセージがタイマラッチ指示メッセージであることを特定する特定情報が格納されている領域と、前記タイマラッチ指示メッセージであることを特定する特定情報とを設定しておく。
【0040】
ラッチ回路15又は16は、受信したメッセージの特定領域を参照し、特定領域のデータが、タイマラッチ指示メッセージであることを特定する特定情報と一致するとき、受信したメッセージはタイマラッチ指示メッセージであると認識し、この時点におけるタイマ17のタイマ値をラッチする。そして、ラッチ回路15でタイマ値をラッチしたときには第1のタイマ値有効フラグF1を“1”、ラッチ回路16でタイマ値をラッチしたときには第2のタイマ値有効フラグF2を“1”、として、タイマ値有効フラグとラッチタイマ値とを対応付けて処理部13に出力する。
【0041】
このとき、図2(a)に示すように、第1の配線L11を介して伝送されるタイマラッチ指示メッセージは、端部のノードで折り返されて第2の配線L22を介して伝送されるため、ノード間に配置されたスレーブノードでは、第1の配線L11からタイマラッチ指示メッセージを受信した後、再度第2の配線L22から同一のタイマラッチ指示メッセージを受信することになる。
このため、ノード間に配置されたスレーブノードでは、ラッチ回路15及び16のそれぞれによりタイマ値がラッチされることになる。
【0042】
一方、端部に配置されたスレーブノードでは、図4(b)及び(c)に示すように、第1の配線L11及び第2の配線L22を内部で折り返しているため、タイマラッチ指示メッセージは、ラッチ回路15及び16の何れか一方のみにより検出されてタイマ値がラッチされることになる。
スレーブノードの処理部13では、タイマラッチ指示メッセージを受信し、これに伴いラッチ回路15、16から、ラッチタイマ値及びタイマ値有効フラグを入力すると、これら情報を所定の記憶領域に保持する(図6ステップS11)。
マスタノードでは、各ノードを周回したタイマラッチ指示メッセージを受信するとこれを伝送路から削除し、次に、タイマ値収集メッセージを送信し、各ノードに対して各ノードでラッチしたタイマ情報の付加を指示する(図5ステップS2)。
【0043】
スレーブノードでは、タイマ値収集メッセージを受信すると、図6のステップS12に移行し、ラッチ回路15及び16の両方又は何れか一方から通知されたタイマ値有効フラグとラッチタイマ値とをタイマ情報とし、このタイマ情報を、受信したタイマ値収集メッセージの予め設定された領域にその領域の先頭から順に格納する。
前述のように、ノードとノードとの間に位置するノードでは、往路と復路との2回、同一のタイマラッチ指示メッセージを受信するため、タイマ情報は、往き時におけるタイマ値有効フラグ及びラッチタイマ値と、戻り時におけるタイマ値有効フラグ及びラッチタイマ値とで構成される。
【0044】
一方、右端又は左端に位置するノードでは、往路又は復路の何れか一回のみタイマラッチ指示メッセージを受信する。このため、右端又は左端のノードでは、ラッチ回路15又は16の何れか一方でのみタイマ値をラッチする。処理部13では、ラッチ回路15からラッチタイマ値を受信しなかったときには第1のタイマ値有効フラグF1を“0”とし、ラッチ回路16からラッチタイマ値を受信しなかったときには第2のタイマ値有効フラグF2を“0”とする。そして、“0”に設定されたタイマ値有効フラグと、ラッチ回路15又は16から通知されたラッチタイマ値及びこれに対応する“1”に設定されたタイマ値有効フラグと、をタイマ情報とする。
【0045】
そして、タイマ値収集メッセージに自ノードにおけるタイマ情報を格納した後、これを次ノードに送出する。
各スレーブノードがこの処理を行なうことにより、各ノードにおけるタイマ情報が、タイマ値収集メッセージの所定の領域に格納され、且つ経由したスレーブノードの並び順に、各ノードにおけるタイマ情報が格納されることになる。
マスタノードは、各スレーブノードを周回したタイマ値収集用メッセージを受信するとこれを回収する。そして、各スレーブノードが格納したタイマ情報の最後に、自ノードにおけるタイマ情報を格納する(図5ステップS3)。
【0046】
マスタノードは、続いて、各スレーブノード及び自ノードにおけるタイマ情報に基づき、マスタノードから送信したタイマラッチ指示メッセージが各スレーブノードに到達するまでの所要時間である伝送遅延時間を、到達先のノード毎にそれぞれ算出する(図5ステップS4)。この算出方法は後述する。
マスタノードは、ノードごとに伝送遅延時間を算出すると、算出した伝送遅延時間を各ノードに通知するための伝送遅延時間設定メッセージを各ノード宛に送出する(図5ステップS5)。
スレーブノードは、伝送遅延時間設定メッセージを受信すると、自ノードの伝送遅延時間を獲得する(図6ステップS13)。
【0047】
マスタノードは、各ノードを周回して戻ってきた伝送遅延時間設定メッセージを伝送路上から削除する。そして、現時点におけるタイマ17のタイマ値を獲得し、これをマスタタイマ値とし、このマスタタイマ値を伝送するためのマスタタイマ値配布メッセージを生成し、これを各ノード宛にブロードキャストにより送信する(図5ステップS6)。そして、システム同期処理を終了する。
スレーブノードは、マスタタイマ値配布メッセージをブロードキャストにより受信すると、受信したマスタタイマ値配布メッセージからマスタタイマ値を獲得し、獲得したマスタタイマ値と、先に伝送遅延時間設定メッセージから獲得した自ノードの伝送遅延時間とを加算し、これを現時点におけるタイマ値として、自ノードのタイマ17のタイマ値を更新設定する(図6ステップS14)。そして、処理部13では同期化処理を終了する。
【0048】
次に、マスタノードで実行されるシステム再同期処理及び、スレーブノードで実行されるループバック状態付加処理を、図7及び図8を伴って説明する。図7はシステム再同期処理の処理手順の一例を示すフローチャート、図8はループバック状態付加処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
マスタノードでは、図5のシステム同期処理を実行した後、予め設定した定周期で図7に示すシステム再同期処理を実行する。
【0049】
なお、後述のように、マスタノードでは、図7のシステム再同期処理によって収集するスレーブノードのループバック状態に基づき再度システム同期処理を実行するか否かを判断している。このため、ノード間のタイマ値が不同期となった場合、システム再同期処理の実行周期が長いときほど、この不同期となる状態の継続時間が長くなる。したがって、ネットワークシステムの運用状況等から決定される、ノード間のタイマ値が不同期であっても許容される許容時間を考慮して、システム再同期処理の実行周期を決定すればよい。
【0050】
マスタノードでは、まず、ステップS21でループバック状態読み出しメッセージを各スレーブノード宛に発行する。
各スレーブノードは、ループバック状態読み出しメッセージを受信すると(図8のステップS31)、自ノードのループバック状態を、ループバック状態読み出しメッセージの所定の領域に付加して次ノードに送出する(図8のステップS32)。ここで、各ノードは、図4(b)に示すように、第1の接続端子11側(以後、A系という)でループバックして自ノードが右端のノードとなる場合と、図4(c)に示すように、第2の接続端子12側(以後、B系という)でループバックして自ノードが左端のノードとなる場合とがある。
【0051】
したがって、スレーブノードは、自ノードの局番と、自ノードのA系のループバック状態及びB系のループバック状態と、を、ループバック状態読み出しメッセージに付加する。この処理を各スレーブノードが実行することにより、例えば図9(a)に示すように、各ノードにおけるA系のループバック状態、B系のループバック状態が、各ノードの局番と対応付けられて、ループバック状態読み出しメッセージの所定の領域に格納されることになる。
【0052】
マスタノードは、各スレーブノードを周回したループバック状態読み出しメッセージを受信すると、これを回収する(図7のステップS22)。そして、マスタノードは、各ノードのループバック状態及び自ノードの現在のループバック状態と、予め所定の記憶領域に保持している前回の処理周期における各ノードのループバック状態とを比較し、各ノードのループバック状態に変化があるか否かを判断する(図7のステップS23)。
そして、各ノードのループバック状態に変化がなければそのまま処理を終了するが、各ノードのループバック状態に変化があればステップS24に移行し、各ノードのループバック状態を所定の記憶領域に記憶する。そして、図5に示すシステム同期処理を実行する(ステップS25)。
【0053】
次に、上記実施の形態の動作を説明する。
今、図1に示すノード“A”〜“E”からなる論理的なリング型ネットワークシステムが構成されたネットワークシステムにおいて、各ノード間のタイマ値の同期を行なうものとする。
マスタノード“A”では、まず、タイマラッチ指示メッセージを各ノード宛にブロードキャストで送信し(図5のステップS1)、次に、各ノードでのタイマ情報の付加を指示するタイマ値収集メッセージを各ノード宛に送信する(図5のステップS2)。
【0054】
このネットワークシステムは、論理的なリング型ネットワークを構成しているため、各スレーブノードでは、タイマラッチ指示メッセージを、第1の配線側L11と第2の配線側L22との両方から入力し、且つ端部のノードでは、タイマラッチ指示メッセージをそのノード内で折り返しているため、第1の配線L11側又は第2の配線L22側の何れか一方から入力することになる。
【0055】
したがって、マスタノード“A”がタイマラッチ指示メッセージを送出してからの経過時間は、図10のように表されることになる。なお、図10において縦軸は経過時間、横軸はネットワークシステム上におけるタイマラッチ指示メッセージの伝達状況を表す。
また、各スレーブノードではタイマラッチ指示メッセージを受信すると、図11に示すように、ラッチ回路15、16のうち、タイマ値をラッチしたラッチ回路に対応するタイマ値有効フラグを“1”とし、ラッチ回路15、16でタイマラッチ指示メッセージを受信した時点におけるタイマ17のタイマ値と、第1、第2のタイマ値有効フラグとを処理部13に通知し、処理部13では通知されたタイマ値有効フラグとラッチタイマ値とを対応付けて記憶する(図6のステップS11)。
【0056】
続いて、スレーブノードでは、ラッチ回路15又は16から獲得したラッチタイマ値及びタイマ値有効フラグからなるタイマ情報をタイマ値収集メッセージの所定の領域に順次格納する(図6のステップS12)。
このため、マスタノード“A”に戻ってきたタイマ値収集メッセージには各ノードのタイマ情報が各ノードの配置順に格納されている。
【0057】
例えば、各ノードがラッチ回路15でラッチしたラッチタイマ値をTA1〜TE1とし、ラッチ回路16でタイマ値をラッチしたタイミングをTA2〜TE2とすると、図11に示すように、タイマラッチ指示メッセージには、ノードの並び順に各ノードを特定する局番とタイマ情報とが対応付けられて格納され、タイマ情報としてタイマ値有効フラグと、ラッチタイマ値とが格納される。
【0058】
ノード“B”はノードとノードとの間に配置されたノードであってラッチ回路15及び16の両方によりタイマラッチ指示メッセージが検出されるため、ラッチ回路15でラッチしたラッチタイマ値TB1及び第1のタイマ値有効フラグF1=“1”と、ラッチ回路16でラッチしたラッチタイマ値TB2及び第2のタイマ値有効フラグ値F2=“1”とが格納され、同様に、ノード“C”、またノード“A”においても、それぞれラッチ回路15及び16によるラッチタイマ値と、第1のタイマ値有効フラグF1=“1”及び第2のタイマ値有効フラグF2=“1”と、が格納される。
【0059】
一方、ノード“D”は右端のノードでありラッチ回路15でのみタイマ値がラッチされるため、ラッチタイマ値TD1と第1のタイマ値有効フラグF1=“1”とが格納され、ラッチ回路16による第2のタイマ値有効フラグF2は“0”として格納される。
同様に、ノード“E”は左端のノードでありラッチ回路16でのみタイマ値がラッチされるため、ラッチタイマ値TE2と第2のタイマ値有効フラグF2=“1”とが格納され、ラッチ回路15による第1のタイマ値有効フラグF1は“0”として設定される。
【0060】
したがって、各ノードを周回したタイマ値収集メッセージを参照することにより、タイマ値有効フラグの一方が“0”であるノードは端部のノードであると判断することができる。そして、第1のタイマ値有効フラグF1が“0”の場合には、これは第1の接続端子11にケーブルLnが接続されていないことを意味するため左端のノードであると判断することができる。同様に、第2のタイマ値有効フラグF2が“0”の場合には、第2の接続端子12にケーブルLnが接続されていないことを意味するため右端のノードであると判断することができる。
【0061】
このため、マスタノード“A”では、図11のタイマ値収集メッセージに格納された各ノードのタイマ情報の格納順及びタイマ値有効フラグが“0”であるか否かに基づき、マスタノード“A”から、ノード“B”、“C”、“D”、“E”、“A”の並びでリング型のネットワークが形成され、且つノード“D”が右端のノード、ノード“E”が左端のノードであることを認識することができ、すなわち図1に示す並び順で各ノードが接続されていることを認識することができる。
そして、マスタノード“A”では、図11に示す各ノードにおけるタイマ情報を獲得するとこれに基づき各ノードの配置順を検出し、各ノードの配置順に基づき伝送遅延時間を演算する(図5ステップS4)。
ここで、この時点では各ノード間においてタイマ値の同期はとられていないため、それぞれのノードにおけるタイマ値の間に何ら相関関係はない。
【0062】
しかしながら、同一ノード内のタイマ値、例えばTB1とTB2とは同一のタイマ17の値をラッチしているため、このタイマ値TB1とTB2との差分は、ノード“B”においてラッチタイマ指示メッセージを上流側から受信した時点から同一のメッセージが下流側から戻ってくるまでの所要時間(以下、受信経過時間いう。)を表している。
ネットワークシステム上の各ノードにおける受信経過時間どうしは比較可能なデータであり、例えばノード“B”における受信経過時間ΔTBとノード“C”における受信経過時間ΔTCとは比較することができる。
【0063】
ノード“B”における受信経過時間ΔTBとノード“C”における受信経過時間ΔTCとの差分DIFFBC(=ΔTB−ΔTC)は、図10及び図12に示すように、「ノード“B”が上流からメッセージを受信してから、このメッセージがノード“C”に到達するまで(図12中の太線m1部分)の所要時間」と「ノード“C”が下流からメッセージを受信してからこのメッセージがノード“B”に到達するまで(図12中の太線m2部分)の所要時間」との和に相当することになる。
したがって、差分DIFFBCは次式(1)で表すことができる。
DIFFBC=(TB2−TB1)−(TC2−TC1) ……(1)
【0064】
また、差分DIFFBCは、図10に示すようにノード“B”−“C”間のケーブルL3におけるメッセージの伝送時間(以後、ノード間伝送時間ともいう)と、ノード“B”にメッセージが到達してからメッセージが送出されるまでの所要時間、すなわちメッセージの中継及びメッセージを受信するか否かの判定に要する時間(以下、メッセージ判定処理時間という。)と、ノード“C”に下流側からメッセージが到達してからノード“C”がこれを中継してメッセージが送出されるまでの所要時間(以下、中継処理時間という。)との和で表すことができる。
【0065】
ここで、ノード“B”のメッセージ判定処理時間をTαとし、ノード“B”−“C”間のケーブルL3におけるノード間伝送時間をLBCとし、ノード“C”での中継処理時間は差分DIFFBCに比較して十分小さいものとすると、差分DIFFBCは略次式(2)で表すことができる。つまり、ケーブルL3は第1の配線L11と第2の配線L22とが同一長さであるため、第1の配線L11と第2の配線L22とでノード間伝送時間は同一とみなすことができる。したがって、次式(2)が成り立つ。
DIFFBC=2×LBC+Tα ……(2)
【0066】
したがって(1)及び(2)式から、隣接するノード“B”−“C”間のケーブルL3におけるノード間伝送時間LBCは次式(3)で表すことができる。
BC={(TB2−TB1)−(TC2−TC1)−Tα}/2 ……(3)
隣接するノード“C”−“D”間のケーブルL4におけるノード間伝送時間LCDも、前記式(3)と同様の手順で算出することができる。
【0067】
また、以上の例では、マスタノード“A”よりも右側に配置されたノードにおいて隣接するノード間におけるメッセージのノード間伝送時間を算出しているが、左側に配置されたノードの場合も同様の手順で算出することができる。
ただし、マスタノード“A”とこれに隣接するノードとの間のメッセージの伝送時間は、マスタノード“A”がラッチタイマ指示メッセージを上流側から受信した時点から同一のメッセージが下流側から戻ってくるまでの所要時間である左側受信経過時間と、マスタノード“A”がラッチタイマ指示メッセージを下流側に送出した時点から同一のメッセージが下流側から戻ってくるまでの所要時間である右側受信経過時間と、を用いて算出する。
【0068】
前記左側受信経過時間は、マスタノード“A”におけるタイマ値TA1及びTA2の差分「TA2−TA1」で算出することができる。また、右側受信経過間は、マスタノード“A”がラッチタイマ指示メッセージを下流側に送出した時点から、論理的なリング型の伝送経路を一周してマスタノード“A”に戻りこれに対するマスタノード“A”での処理が終了するまでの所要時間(以後、メッセージ一周時間という)をTとしたとき、「T−(TA2−TA1)」で表すことができる。
【0069】
なお、メッセージ一周時間はマスタノード“A”の処理部13において計測すればよく、処理部13からラッチタイマ指示メッセージを下流側に送出した時点を開始時点、ラッチタイマ指示メッセージが論理的なリング型の伝送経路を一周してマスタノードに戻り、これに対するマスタノード“A”での処理が終了した時点を終了時点として、開始時点から終了時点までの所要時間を演算すればよい。
【0070】
そして、マスタノード“A”と隣接するスレーブノード“B”との間のノード間伝送時間を演算するときには、右側受信経過時間「T−(TA2−TA1)」と、ノード“B”における受信経過時間とに基づき上記(3)式と同様の手順で算出する。また、マスタノード“A”とノード“E”との間のノード間伝送時間を演算するときには、左側受信経過時間「TA2−TA1」とノード“E”における受信経過時間とに基づき上記(3)式と同様の手順で算出する。
【0071】
このようにして、ノード“A”−“B”間、ノード“B”−“C”間、ノード“C”−“D”間、ノード“E”−“A”間についてそれぞれノード間伝送時間を算出したならば、これらに基づき、マスタノード“A”と各ノードとの間の伝送遅延時間を算出する。
具体的には、マスタノード“A”とターゲットノードとの間に介在する各ケーブルにおけるノード間伝送時間及び介在するノードにおけるメッセージの処理時間との和を算出しこれをターゲットノードまでの伝送遅延時間とする。
【0072】
例えば、ターゲットノードを“C”とする。ネットワークシステムにおける各ノードの配置位置は、タイマ値収集メッセージに付加された各ノードにおけるラッチ情報の並び順から把握することができる。
図1に示すように、マスタノード“A”とターゲットノード“C”との間にはノード“B”が介在する。このため、伝送遅延時間はノード“A”−“B”間のケーブルL2におけるノード間伝送時間と、ノード“B”におけるメッセージ判定処理時間と、ノード“B”−“C”間のケーブルL3におけるノード間伝送時間と、の和で表されることがわかる。
【0073】
ここで、各ノードにおける処理部13の演算処理性能が同一であるものとすると、各ノードにおけるメッセージ判定処理時間は同等とみなすことができるため“Tα”として表すことができる。
したがって、マスタノード“A”からターゲットノードまでの間の伝送遅延時間は、マスタノード“A”からターゲットノードまでの間に介在する各ケーブルにおけるノード間伝送時間と、マスタノード“A”からターゲットノードまでの間に介在するノードの数×メッセージ判定処理時間“Tα”との和から算出することができる。つまり、マスタノード“A”とノード“C”との間の伝送遅延時間は、ノード“A”−C”間のケーブルL2におけるノード間伝送時間と、ノード“B”−“C”間のケーブルL3におけるノード間伝送時間と、ノードの数(この場合“1”)×Tαとの和で表すことができる。
【0074】
なお、ノードにおけるメッセージ判定処理時間Tαは、予め実測しておくこと、或いは、メッセージの中継及びメッセージを受信するか否かの判定に要する所要時間を、設計時に論理的に算出しておくこと等により予め設定しておけばよい。
マスタノード“A”では、このようにしてマスタノード“A”から各ターゲットノードまでの伝送遅延時間を算出すると、各ターゲットノードと算出した伝送遅延時間とを対応付け、この伝送遅延時間を各ノードに伝達するための伝送遅延時間設定メッセージを生成しこれを各ノード宛に送信する(図5のステップS5)。
【0075】
各スレーブノードは、伝送遅延時間設定メッセージを受信すると自ノードの伝送遅延時間を獲得し、これを所定の記憶領域に保存する(図6のステップS13)。
マスタノードは、各ノードを周回した伝送遅延時間設定メッセージを受信するとこれを伝送路上から削除する。そして、現時点におけるタイマ17のタイマ値を獲得し、これを各ノードに伝達するためのマスタタイマ値配布メッセージを生成し、このマスタタイマ値配布メッセージをブロードキャストで各ノード宛に送信する(図5のステップS6)。
【0076】
各スレーブノードでは、マスタタイマ値配布メッセージを獲得するとこのマスタタイマ値配布メッセージからマスタタイマ値を獲得し、先に受信した自ノードにおける伝送遅延時間とマスタタイマ値とを加算し、これを現時点におけるタイマ17のタイマ値として更新設定する(図5のステップS6)。
例えば、図13に示すように、各ノードの伝送遅延時間が、ノード“B”は“15”、ノード“C”は“20”、ノード“D”は“30”、ノード“E”は“55”、ノード“A”は“0”として通知されたものとする。
【0077】
マスタノード“A”からマスタタイマ値として“5000”が通知されたとすると、図14に示すように、ノード“B”は、タイマ17のタイマ値を“5015”に更新設定する。同様に、ノード“C”は“5020”、ノード“D”は“5030”、ノード“E”は“5055”として更新設定する。
ここで、マスタノード“A”のタイマ値が“5000”であったとしても、マスタタイマ値通知メッセージがノード“B”に伝達されるまでには伝送遅延時間“15”を要し、マスタタイマ値通知メッセージが実際にノード“B”に伝達された時点では、マスタノードのタイマ値は“5015”となっている。したがって、マスタタイマ値“5000”と伝送遅延時間“15”とを加算した“5015”をノード“B”におけるタイマ値と設定することにより、マスタノード“A”のタイマ値とノード“B”のタイマ値とを“5015”で同期させることができる。
【0078】
つまり、伝送遅延時間は、マスタノード“A”から送信されたタイマラッチ指示メッセージが各ノードに伝達されるまでの所要時間である。したがって、各スレーブノードが、通知されたマスタタイマ値と伝送遅延時間との和を自ノードにおけるタイマ値として更新設定することにより、各スレーブノードでは、マスタノードから各スレーブノードにメッセージが伝送されるまでの所要時間を考慮して自ノードにおけるタイマ値を更新設定することになるため、ノード間のタイマ値を高精度に同期させることができる。
【0079】
また、先に通知された伝送遅延時間は、ブロードキャスト通信によりタイマラッチ指示メッセージを送信したときの各ノードにおけるタイマラッチ指示メッセージの送受信タイミングに基づき算出された値である。そして、マスタタイマ値配布メッセージもブロードキャストにより送信されているため、このマスタタイマ値配布メッセージがマスタノードから送信されてから各ノードに伝達されるまでの所要時間は、タイマラッチ指示メッセージがマスタノードから送信されてから各ノードに伝達されるまでの所要時間と同等である。したがって、タイマラッチ指示メッセージの各ノードにおける送受信タイミングに基づき各ノードにおけるタイマ値を更新設定することによって、同等の条件で算出された伝送遅延時間に基づきタイマ値を更新設定することになり、より高精度に同期させることができる。
【0080】
また、上記実施の形態においては、伝送遅延時間を前記(2)式に基づいて算出しており、前記(2)式では、ノード“B”からノード“C”への伝送経路とノード“C”からノード“B”への伝送経路とが同一という前提で演算を行なっている。前述のように、ノード“B”からノード“C”へのメッセージの伝送は第1の配線L11により行い、ノード“C”からノード“B”へのメッセージの伝送は第2の配線L22により行い、第1の配線L11と第2の配線L22とは同一の長さを有するため、そのノード間伝送時間は同等とみなすことができる。
【0081】
したがって、伝送メッセージの論理的な伝送経路は、ノード“C”からノード“B”へ伝送する場合には、ノード“C”、ノード“D”、ノード“E”、ノード“A”、ノード“B“となり、ノード“B”からノード“C”に伝送メッセージを伝送する伝送経路とは異なるが、この実施の形態においては、ノード“B”からノード“C”へ及びノード“C”からノード“B”への物理的な伝送路におけるメッセージの伝送時間を演算しており、ノード“B”からノード“C”への伝送路である第1の配線L11とノード“C”からノード“B”への伝送路である第2の配線L22との長さは同一であってそのメッセージの伝送時間は同等であるため、ノード“B”からノード“C”への伝送経路とノード“C”からノード“B”への伝送経路とが同一という前提で伝送遅延時間の演算を行なったとしても、的確に伝送遅延時間を演算することができる。
【0082】
今、例えば図15に示すように、ある時点におけるマスタノード“A”のタイマ値が“100”、スレーブノード“B”のタイマ値は“77”、スレーブノード“C”のタイマ値は“80”、スレーブノード“D”のタイマ値は“2”、スレーブノード“E”のタイマ値は“11”であるものとする。この状態では、各ノードのタイマ値が異なるため同期をとることができない。
【0083】
ここで、図15に示すように、マスタノード“A”とスレーブノード“B”間の伝送遅延時間が“1”、同様に、マスタノード“Aとスレーブノード“C”間が“3”、マスタノード“Aとスレーブノード“D”間が“4”、マスタノード“Aとスレーブノード“E”間が“6”とする。マスタノードがタイマ値“100”の時点でこのタイマ値“100”をマスタタイマ値としてブロードキャストにより各ノード宛に送信すると、マスタノード“A”及びスレーブノード“B”間の伝送遅延時間は“1”であるため、スレーブノード“B”は、そのタイマ値が“78”の時点で、マスタタイマ値“100”を受信する。このため、スレーブノード“B”は、受信したマスタタイマ値“100”に、マスタノード“A”とスレーブノード“B”間の伝送遅延時間“1”を加算し、スレーブノード“B”のタイマ値を“101”に更新設定する。これにより、図15に示すように、マスタノード“A”のタイマ値が“101”の時点において、スレーブノード“B”のタイマ値は“101”となり、すなわちマスタノード“A”とスレーブノード“B”のタイマ値との同期がとれたことになる。
【0084】
同様に、スレーブノード“C”、“D”及び“E”においても処理を行うことによって、スレーブノード“C”はマスタノード“A”のタイマ値が“103”の時点でマスタタイマ値“100”を受信してスレーブノード“C”のタイマ値を“83”から“103”に更新し、スレーブノード“D”はマスタノード“A”のタイマ値が“104”の時点でマスタタイマ値“100”を受信してスレーブノード“D”のタイマ値を“6”から“104”に更新し、スレーブノード“E”はマスタノード“Aのタイマ値が“106”の時点でマスタタイマ値“100”を受信してスレーブノード“E”のタイマ値を“17”から“106”に更新設定する。
このため、マスタタイマ値“100”が全てのスレーブノードに到達した時点、すなわちマスタノード“A”のタイマ値が“106”の時点で、マスタノード“A”及び各スレーブノード“B”〜“E”の各タイマ値が全て“106”となり、全てのノード間でタイマ値の同期がとれたことになる。
【0085】
各ノードは、このようにノード間でのタイマ値の同期化が図られた状態で、ノード間での通信処理を行うと共に、隣接ノードとの間の通信状態を監視し通信異常を検出したときにはループバック状態となって該当する隣接ノードをネットワークから切り離す。また、マスタノード“A”は、図7に示すシステム再同期処理を開始して定周期でループバック状態読み出しメッセージを各スレーブノード宛に送信し、各スレーブノードは自ノードのループバック状態の有り/無しをループバック状態読み出しメッセージに付加する。マスタノード“A”は、ループバック状態読み出しメッセージに付加された各スレーブノードのループバック状態及び自ノードのループバック状態に基づき各ノードのループバック状態の変化を監視し、ループバック状態が変化していないときにはそのまま処理を終了する。
【0086】
したがって、図1の構成を有するネットワークシステムにおいて、全てのノードが正常に動作しているときには、図9(a)に示すように、端部のノードであるスレーブノード“D”のB系及びスレーブノード“E”のA系はループバック有りとして通知され、その他のスレーブノードではループバック無しとして通知される。
この状態から図16(a)、(b)に示すように、スレーブノード“C”とスレーブノード“D”間に通信異常が発生すると、スレーブノード“C”はこれを検出し、A系側をループバック状態に切り替え、ネットワークからスレーブノード“D”を切り離す。
これによって、マスタノード“A”、スレーブノード“B”、“C”、“E”からなるネットワークシステムが再構成され、図16(b)に示すように、マスタノード“A”、スレーブノード“B”、“C”、“E”が論理的にリング状に接続されたネットワークシステムが構成される。
【0087】
そして、マスタノード“A”から次の処理周期のタイミングでループバック状態読み出しメッセージが発行されると(図7のステップS21)、スレーブノード“C”では、図9(b)に示すように“B系でループバック状態有り”として通知する。このため、マスタノードでは、各ノードを周回したループバック状態読み出しメッセージに付加されたループバック状態有無の情報と、予め記憶している前回処理実行時のループバック状態の有無の情報とを比較することで、スレーブノード“C”のループバック状態に変化があったことを検出する(ステップS22、S23)。このため、マスタノードでは、通知されたループバック状態有無の情報を所定の記憶領域に更新記憶すると共に、図5のシステム同期処理を実行する。(ステップS24、S25)。なお、前回処理実行時にはループバック状態が通知されたが、今回はループバック状態が通知されないノード、逆に、今回ループバック状態が通知されたが、前回処理実行時にはループバック状態が通知されていないノードについては、ループバック状態の変化により、システムから切り離されたノード或いはシステムに新たに追加されたノードとみなし、これらについてはループバック状態の変化の有無の判断は行わない。
【0088】
図16のシステム構成の場合、スレーブノード“D”が切り離された状態となるため、マスタノード“A”とスレーブノード“B”との間、マスタノード“A”とスレーブノード“C”との間の伝送遅延時間はそれぞれ“1”、“3”のまま変化しないが、スレーブノード“E”は、スレーブノード“D”を経由してメッセージが伝送されていたため、スレーブノード“E”とマスタノード“A”間の伝送遅延時間が短縮されて例えば“5”として算出される。
【0089】
このため、例えば、この時点における各ノードのタイマ値が、図17(a)に示すように、マスタノード“A”、スレーブノード“B”、“C”、“E”のタイマ値が、それぞれ“200”、“177”、“180”、“111”であった場合には、スレーブノード“B”では、伝送遅延時間“1”が経過したタイマ値が“178”である時点でマスタタイマ値“200”を受信するため、タイマ値を“178”に替えて“201”に更新設定する。同様に、スレーブノード“B”では伝送遅延時間が“3”であるため、タイマ値が“183”の時点でタイマ値を“203”に更新設定し、スレーブノード“E”では伝送遅延時間が“5”であるため、タイマ値が“116”の時点でタイマ値を“205”に更新設定する。
【0090】
このため、図17(a)に示すように、マスタタイマ値が“205”の時点でこれらマスタノード“A”と各スレーブノードとの間のタイマ値の同期がとられることになる。
そして、この状態から、スレーブノード“D”が故障から復旧し、スレーブノード“C”がループバックを解除すると、スレーブノード“C”は“ループバック状態無し”としてループバック状態読み出しメッセージに付加するため、マスタノード“A”では、スレーブノード“C”のループバック状態が変化したことを検出し、再度システム同期処理を実行する。
【0091】
ここで、スレーブノード“D”はネットワークから切り離されていたため、図17(b)に示すようにそのタイマ値は、マスタノード“A”と同期していないが、スレーブノード“C”が“ループバック状態無し”として付加したループバック状態読み出しメッセージをマスタノード“A”に通知することによりシステム同期処理が実行される。よって、この時点で、マスタノード“A”やその他のスレーブノード間でタイマ値の同期をとることができる。
【0092】
また、前述のように、タイマ17は、水晶振動子を含んで構成されている。このため、起動時等に、システム同期処理を実行することによってノード間でタイマ値の同期を図ったとしても、水晶振動子の誤差によりノード間でタイマ値にずれが生じる可能性があり、このずれが大きくなるとシステム停止等、システム全体に影響を与える可能性がある。このため、マスタノード“A”、スレーブノード“B”、“C”、“E”は、既にノード間でタイマ値の同期がとられているため、本来、これらノードのタイマ値は同等程度の値を示すはずであるが、図17(a)や図17(b)に示すようにタイマ値にずれが生じることがある。
【0093】
しかしながら、マスタノード“A”において各スレーブノードのループバック状態の変化を監視し、ループバック状態が変化するタイミングで、再度伝送遅延時間の演算を行っているため、この時点で、水晶振動子の誤差によるノード間でのタイマ値のずれをも除去することができる。
また、スレーブノード“D”の復旧時に、スレーブノード“D”の他にシステムに新たにスレーブノード“X”が追加された場合などであっても、マスタノード“A”、スレーブノード“B”、“C”、“E”にさらにスレーブノード“D”及びスレーブノード“X”が追加された新たなネットワークシステムが構成されたとして、再度システムの同期化が図られるため、スレーブノードを新たに追加した場合であっても的確に同期化を図ることができる。
【0094】
このように、ループバック状態となったとき、及びループバック状態から復旧したときにシステム同期処理を行っているため、ネットワークシステムに参加しているノード構成が変化したときにタイマ値の同期化を図ることができる。このため、ノード間でタイマ値が不同期となることに起因して制御が停止状態となる期間を短くすることができ、速やかに制御を再開することができる。また、ループバック状態が変化したタイミングで再度同期化を図っているため、水晶振動子の誤差によるノード間でのタイマ値のずれを除去することができる。したがって、図5のシステム同期処理を定期的に実行することにより、水晶振動子の誤差によるタイマ値のずれを除去すると共に、ループバック状態が変化したタイミングでも水晶振動子の誤差によるタイマ値のずれを除去することができる。このため、水晶振動子の誤差によるタイマ値のずれを頻繁に除去することができ、結果的に、ノード間でのタイマ値を精度よく同期させることができる。
【0095】
特に、ノード間のタイマ値の同期精度として、マイクロ秒、ミリ秒の単位での精度を要求するシステムにおいては、頻繁にタイマ値の同期化を図り、水晶振動子の影響を抑制する必要がある。上述のように、何れかのノードのループバック状態が変化したタイミングでシステム同期処理を実行するように構成し、何れかのノードがループバック状態から復旧した場合など、マスタノード“A”と接続状態になくマスタノード“A”とのタイマ値の同期が図られていないスレーブノードが新たに追加される状態となった場合だけでなく、マスタノード“A”と接続状態にあって既にマスタノード“A”とのタイマ値の同期が図られている場合であっても、システム同期処理を実行するようにしているため、単にシステム構成の変化に伴いノード間のタイマ値が不同期となることを解消するだけでなく、水晶振動子の影響によるノード間のタイマ値のずれをも解消することができ、ノード間でのタイマ値の同期精度をより向上させることができる。
【0096】
なお、上記実施の形態においては、端部のノード“D”、ノード“E”では、ノード内部で回線を折り返してリング型の伝送路を構成する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、折り返し用に、ケーブルLnが接続されない側の接続端子11又は12に、第1の配線L11側と第2の配線L22側とを単に接続するための折り返し用ケーブルを挿しておくことにより、リング型の伝送路を構成するようにしてもよい。この場合、端部のノードから送信された伝送メッセージは、折り返し用ケーブルを経由して再度端部のノードで受信されるため、ラッチ回路15又は16で検出され、タイマ値がラッチされることになる。このため、マスタノードでは、タイマ値有効フラグからは、端部のノードがどれであるかを認識することができない。
【0097】
そのため、折り返し用ケーブルを用いて折り返しを行なった場合には、端部のノードにおいてスイッチ操作を行なうことにより端部のノードに対して端部のノードであることを認識させ、端部のノードにおいて、自ノードのタイマ情報として、端部のノードであることを付加して送信するようにすれば、マスタノードでは、タイマ情報から端部のノードが何れのノードであるかを容易に認識することができる。
【0098】
或いは、折り返し用ケーブルを用いて折り返しを行なった場合には、ラッチ回路15でラッチしたタイマ値と、ラッチ回路16でラッチしたタイマ値との差、すなわち、受信経過時間は折り返し用ケーブルにおける伝送時間相当の長さとなり、ノード間のノードにおける受信経過時間に比較して短い。したがって、受信経過時間が、折り返し用ケーブルによる折り返しが行なわれているとみなされるしきい値よりも短いかどうかに基づき、端部のノードであるか否かを判断するようにしてもよい。
また、上記実施の形態においては、ノード“A”からノード“E”の5つのノードを有するネットワークシステムを構成した場合について説明したが、これに限らず、複数のノードからネットワークシステムであれば適用することができる。
【0099】
また、上記実施の形態においては、ケーブルが接続されているか否かを検出することにより、端部のノードであるか否かを検出する場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、端部のノードにおいてオペレータがスイッチ操作等を行なうことにより、端部のノードとして設定するように構成することもできる。また、このオペレータのスイッチ操作により、切り替え回路18の接続先が物理的に切り替わるように構成してもよい。
【0100】
また、上記実施の形態においては、マスタノードでシステム同期処理が実行されたときに、マスタノードのタイマのタイマ値をスレーブノードに通知してタイマ値を同期させる場合について説明したがこれに限るものではない。
例えば、スレーブノードでは、システム同期処理が最初に行なわれたとき例えば起動時等に、通知された各ノードにおける伝送遅延時間を記憶しておく。そして、マスタノードでは、一旦システム同期処理を行なった後、このシステム同期処理を定期的に行う場合には、起動時のシステム構成と現在のシステム構成とが変化していない場合にはマスタタイマ値配布メッセージのみを定期的に送信し、このマスタタイマ値配布メッセージを受信したスレーブノードが、記憶している伝送遅延時間と通知されたマスタタイマ値とから自ノードのタイマのタイマ値を更新設定することにより、定期的に、タイマ値の同期を図るようにしてもよい。
【0101】
このように、システム同期処理全体を定期的に行なうのではなく、マスタタイマ値の送信及びスレーブノードでのタイマ値の更新設定のみを定期的に実行する場合であっても、ネットワークシステムにおけるタイマ値の同期を的確に行なうことができる。また、このようにシステム同期処理を定期的に行なうことによって、タイマ17の構成要素に水晶振動子が含まれる場合であっても、各ノード間における水晶振動子の誤差等の影響を、的確に抑制することができる。
【0102】
また、上記実施の形態においては、マスタノードがタイマラッチ指示メッセージを送信する場合について説明したが、これに限るものではない。つまり、ある伝送メッセージを、ラッチ回路15で受信するタイミングと、同一の伝送メッセージをラッチ回路16で受信するタイミングとがわかればよい。このため、各ノードが、マスタノードに限らず他のノードが送信する任意の伝送メッセージをタイマラッチ指示メッセージとみなし、任意の伝送メッセージをラッチ回路15及び16で受信した時点におけるタイマ値をラッチするように構成してもよい。
そして、マスタノードがタイマ値収集メッセージを定期的に、或いはイベント的に送信して、各ノードが保持する最新のタイマ情報を収集しこれと、任意の伝送メッセージの一周時間とを用いて伝送遅延時間を演算し、最新の伝送遅延時間に基づき各ノードがタイマ値の同期化を図るようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態において、ラッチ回路15及びラッチ回路16は、タイマラッチ指示メッセージを受信するときにのみ、動作可能な状態となっていればよい。したがって、例えば、マスタノードがタイマラッチ指示メッセージを送信するタイミングが、システム起動時及びその後定期的に等、予め決まっている場合には、スレーブノード側でこれに合わせてラッチ回路15及び16を動作可能な状態にし、一旦タイマ値の同期を図った後、ラッチ回路15及び16を休止状態に切り替え、その後、定期的に行なわれるタイマ値の同期を図るタイミングに合わせて、ラッチ回路15及び16を動作可能な状態に切り替えることにより消費電力の削減を図るようにしてもよい。
【0104】
また、タイマラッチ指示メッセージは、一方のラッチ回路で受信された後、他方のラッチ回路で受信されるため、タイマラッチ指示メッセージを先に受信するラッチ回路は常時動作可能状態とし、後に受信するラッチ回路は、先に受信するラッチ回路でタイマラッチ指示メッセージを受信したときに動作可能な状態に切り替え、タイマ値をラッチして処理部13に通知した後、再度休止状態に切り替えるように構成してもよい。この場合には、後に受信するラッチ回路の消費電力の削減を図ることができる。
【0105】
また、各ノードが、任意のメッセージをタイマラッチ指示メッセージとみなしてタイマ値をラッチするように構成した場合には、各ノードがタイマ値をラッチするタイミングに合わせてラッチ回路15及び16を動作可能状態に切り替え、それ以外のときにはラッチ回路15及び16を休止状態に切り替えるように構成してもよい。
また、各ノードが正常に動作している状態から、何れかのノードがループバック状態となったときには、正常動作可能なスレーブノードとマスタノードとの間では、引き続きタイマ値の同期がとれている。このため、水晶振動子の誤差に起因するノード間でのタイマ値のずれを考慮しなくてもよいシステムの場合には、正常状態からループバック状態となったときにはシステム同期処理を行わず、ループバック状態を解除したときにのみシステム同期処理を再度実行するようにしてもよい。
【0106】
また、水晶振動子の誤差に起因するノード間でのタイマ値のずれを考慮しなくてもよいシステムの場合には、システム同期処理を定周期で実行しなくてもよく、例えば、起動時にシステム同期処理を実行し、その後は、ループバック状態が変化したときにのみシステム同期処理を実行するようにしてもよい。
ここで、上記実施の形態において、ラッチ回路15及び16が第1のラッチ手段、第2のラッチ手段に対応し、図5のステップS2及び図6のステップS12の処理がタイマ情報付加手段に対応し、図5のステップS1の処理がタイマラッチ指示メッセージ送信手段に対応し、ステップS2及びステップS3の処理がタイマ値収集手段に対応し、ステップS4の処理が伝送遅延時間演算手段に対応し、ステップS5の処理が伝送遅延時間設定メッセージ送信手段に対応し、ステップS6の処理がマスタタイマ値送信手段に対応し、ステップS1からステップS6の処理がシステム同期部に対応し、図6のステップS12の処理がタイマ情報付加手段に対応し、ステップS13の処理が伝送遅延時間獲得手段に対応し、ステップS14の処理がタイマ値同期手段に対応している。
【0107】
また、図7のステップS21及びS22の処理がループバック状態読み出し手段に対応し、ステップS23〜S25の処理がシステム再同期手段に対応し、図8のステップS31及びステップS32の処理がループバック状態付加手段に対応している。
また、図5のステップS4の処理で、隣接するノード間のノード間伝送時間を算出する処理がノード間伝送時間演算手段に対応している。
【符号の説明】
【0108】
11 第1の接続端子
12 第2の接続端子
13 処理部
15、16 ラッチ回路
17 タイマ
L1〜L4 ケーブル
11 第1の配線
22 第2の配線
T メッセージ一周時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の伝送路及び第2の伝送路それぞれがマスタノード及び複数のスレーブノードをデイジーチェーン接続し、該デイジーチェーン接続された両端のノードそれぞれで前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続してリング状の伝送路を構成し、
何れかのノードが、隣接するノードとの間での通信が不可となる異常状態を検出したときに前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続してループバックし、
前記異常状態の復旧が検出されたときに前記ループバックを解除して前記ループバックにより前記マスタノードから切り離されたスレーブノードを前記マスタノードに再接続するネットワークシステムにおいて、
前記マスタノード及びスレーブノードは、
タイマと、
該タイマのタイマ値をラッチさせるためのタイマラッチ指示メッセージを前記第1の伝送路から受信した時の自ノードの前記タイマのタイマ値をラッチする第1のラッチ手段と、
前記タイマラッチ指示メッセージを前記第2の伝送路から受信した時の自ノードの前記タイマのタイマ値をラッチする第2のラッチ手段と、
前記ラッチされたタイマ値を収集するためのタイマ値収集メッセージを受信したとき、前記第1のラッチ手段によってラッチされたタイマ値と前記第2のラッチ手段によってラッチされたタイマ値とを前記タイマ値収集メッセージにタイマ情報として付加するタイマ情報付加手段と、を備え、
前記マスタノードは、
前記タイマラッチ指示メッセージを各ノードに送信するタイマラッチ指示メッセージ送信手段と、
前記タイマラッチ指示メッセージを送信した後、前記タイマ値収集メッセージを、各ノードを経由して周回させるタイマ値収集手段と、
前記スレーブノードのそれぞれと自ノードとの間の伝送遅延時間を、各ノードを周回した後の前記タイマ値収集メッセージの前記タイマ情報に基づき演算する伝送遅延時間演算手段と、
当該伝送遅延時間演算手段で演算された前記伝送遅延時間を、各スレーブノードに伝達するための伝送遅延時間設定メッセージを送信する伝送遅延時間設定メッセージ送信手段と、
前記伝送遅延時間設定メッセージを送信した後、自ノードの前記タイマの現時点でのタイマ値を各スレーブノードに送信するマスタタイマ値送信手段と、を有しノード間のタイマ値を同期化するシステム同期部を備え、
さらに、
該システム同期部によるノード間のタイマ値の同期化後に前記各スレーブノードでの前記ループバック状態の有無を獲得するためのループバック状態読み出しメッセージを各スレーブノードに周回させるループバック状態読み出し手段と、
各スレーブノードを周回した前記ループバック状態読み出しメッセージ基づき、各ノードがループバック状態にあるか否かを監視し、何れかのノードのループバック状態が変化したとき、前記システム同期部を作動させて前記ノード間でのタイマ値の再同期を図るシステム再同期手段と、を備え、
前記スレーブノードは、
前記伝送遅延時間設定メッセージを受信したとき、当該伝送遅延時間設定メッセージから自ノードの伝送遅延時間を獲得する伝送遅延時間獲得手段と、
前記マスタタイマ値送信手段により送信されたマスタノードのタイマ値を受信し、該受信したタイマ値と前記伝送遅延時間獲得手段で獲得した前記伝送遅延時間との和を、自ノードの前記タイマの現在のタイマ値として更新設定するタイマ値同期手段と、
前記ループバック状態読み出しメッセージを受信したとき、当該ループバック状態読み出しメッセージに自ノードにおけるループバック状態の有無を示すループバック情報を付加するループバック状態付加手段と、を備え、
前記ループバック状態の変化に伴うシステム構成の変化に応じてノード間のタイマ値の再同期を図るようにしたことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
前記第1の伝送路と第2の伝送路とは同一長さを有し、
前記伝送遅延時間演算手段は、前記タイマ値収集メッセージに各ノードにより付加された前記タイマ情報に基づき各ノードの配置位置を検出し、検出した配置位置と前記第1および第2のラッチ手段でラッチされた各ノードにおける前記タイマ値と一の伝送メッセージが前記リング状の伝送路を一周するのに要する一周時間とから前記伝送遅延時間を演算することを特徴とする請求項1記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記各ノードは、前記第1の伝送路及び第2の伝送路のうち一方の伝送路から入力した前記タイマラッチ指示メッセージに対して処理を行い、且つ他方の伝送路から入力した前記タイマラッチ指示メッセージを中継し、
前記伝送遅延時間演算手段は、
前記各ノードの配置位置及び前記各ラッチ手段でラッチされた前記タイマ値に基づき、隣接するノード間それぞれにおける前記タイマラッチ指示メッセージの伝送時間をノード間伝送時間として演算するノード間伝送時間演算手段を有し、
前記マスタノードから前記伝送遅延時間の演算対象であるターゲットノードまでの間の、隣接するノード間それぞれの前記ノード間伝送時間の和と、前記マスタノードと前記ターゲットノードとの間に介在するノードにおける前記タイマラッチ指示メッセージに対するメッセージ判定処理時間の和との総和を、前記マスタノードと前記ターゲットノードとの間の伝送遅延時間とすることを特徴とする請求項2記載のネットワークシステム。
【請求項4】
前記ノード間伝送時間演算手段は、前記ラッチ手段でラッチされたタイマ値に基づき一のノードが前記タイマラッチ指示メッセージを一方の伝送路から受信した時点から他方の伝送路から受信するまでの所要時間である受信経過時間を演算し、
前記第1のノードにおける前記受信経過時間と前記第2のノードにおける前記受信経過時間との差分の絶対値から、前記第1のノード及び第2のノードのうちの上流側のノードにおける前記タイマラッチ指示メッセージに対するメッセージ判定処理時間を減算し、この減算結果の1/2を前記第1のノード及び第2のノード間における前記ノード間伝送時間とし、
前記マスタノードとこの下流に隣接するノードとの間のノード間伝送時間を演算するときには、前記タイマ情報から算出される前記マスタノードにおける前記受信経過時間を前記一周時間から減算し、この減算結果をノード間伝送時間演算時のマスタノードにおける受信経過時間として用いることを特徴とする請求項3記載のネットワークシステム。
【請求項5】
前記マスタタイマ値送信手段は、前記マスタノードの前記タイマのタイマ値を、定期的に送信し、
前記タイマ値同期手段は、前記マスタノードの前記タイマ値を受信する毎に、自ノードの前記タイマのタイマ値を更新設定することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載のネットワークシステム。
【請求項6】
前記両端のノードは、当該ノード内部で前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続し、
前記ラッチ手段は、前記第1の伝送路及び前記第2の伝送路から前記ノードへの前記タイマラッチ指示メッセージの入力端それぞれに設けられ、前記タイマラッチ指示メッセージが前記ノードの入力端に達した時点で前記タイマ値をラッチし、
前記タイマ情報付加手段は、前記タイマラッチ指示メッセージを、前記第1の伝送路及び前記第2の伝送路の何れから受信したかを表す受信情報と前記タイマ値とを、前記タイマ情報として前記タイマ値収集メッセージの予め設定された領域に付加し、
前記伝送遅延時間演算手段は、前記タイマ値収集メッセージに付加された前記タイマ情報の並び順及び前記受信情報に基づき、各ノードの配置位置を検出することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のネットワークシステム。
【請求項7】
第1の伝送路及び第2の伝送路それぞれがマスタノード及び複数のスレーブノードをデイジーチェーン接続し、該デイジーチェーン接続された両端のノードそれぞれで前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続してリング状の伝送路を構成し、
何れかのノードが、隣接するノードとの間での通信が不可となる異常状態を検出したときに前記第1の伝送路と前記第2の伝送路とを接続してループバックし、
前記異常状態の復旧が検出されたときに前記ループバックを解除して前記ループバックにより前記マスタノードから切り離されたスレーブノードを前記マスタノードに再接続するネットワークシステムにおける同期方法であって、
前記マスタノード及びスレーブノードはそれぞれタイマを有し、
前記マスタノードが、前記各ノードが有するタイマのタイマ値のラッチを指示するタイマラッチ指示メッセージをブロードキャスト通信により各ノードに送信するステップと、
前記タイマラッチ指示メッセージを受信したノードにおいて、前記タイマラッチ指示メッセージを前記第1の伝送路から受信したときの自ノードの前記タイマのタイマ値及び前記タイマラッチ指示メッセージを前記第2の伝送路から受信したときの前記タイマのタイマ値をラッチするステップと、
前記マスタノードが、前記タイマラッチ指示メッセージを送信した後、各ノードでラッチしたタイマ値を収集するためのタイマ値収集メッセージを、各ノードを経由して周回させるステップと、
前記タイマ値収集メッセージを受信したノードが、前記タイマラッチ指示メッセージを前記第1の伝送路及び前記第2の伝送路から受信したときにラッチしたタイマ値をタイマ情報として前記タイマ値収集メッセージに付加するステップと、
前記マスタノードにおいて、各ノードを周回した後の前記タイマ値収集メッセージに付加された前記タイマ情報に基づき、各ノードの配置位置を検出し、検出した配置位置と各ノードでラッチされた前記タイマ値と前記タイマラッチ指示メッセージが前記リング状の伝送路を一周するのに要した一周時間とから、前記スレーブノードのそれぞれと前記マスタノードとの間の前記タイマラッチ指示メッセージの伝送遅延時間を演算し、前記伝送遅延時間を各スレーブノードに伝達するための伝送遅延時間設定メッセージを送信するステップと、
前記伝送遅延時間設定メッセージを受信したスレーブノードが、前記伝送遅延時間設定メッセージから自ノードの伝送遅延時間を獲得するステップと、
前記マスタノードが、前記伝送遅延時間設定メッセージを送信した後、前記マスタノードの前記タイマの現時点でのタイマ値を各スレーブノードにブロードキャスト通信により送信するステップと、
前記マスタノードのタイマ値を受信した前記スレーブノードが、前記マスタノードのタイマ値と前記伝送遅延時間設定メッセージから獲得した前記伝送遅延時間との和を、自ノードの前記タイマの現在のタイマ値として更新設定するステップと、を有し、前記ノード間でのタイマ値の同期化を図るシステム同期処理ステップと、
前記ノード間でのタイマ値の同期化を図った後、前記マスタノードが、前記各スレーブノードでの前記ループバック状態の有無を獲得するためのループバック状態読み出しメッセージを各スレーブノードに周回させるステップと、
前記スレーブノードが、前記ループバック状態読み出しメッセージを受信したとき当該ループバック状態読み出しメッセージに自ノードにおけるループバック状態の有無を付加するステップと、
前記マスタノードが、各スレーブノードを周回した前記ループバック状態読み出しメッセージ及び自ノードのループバック状態に基づき、何れかのノードのループバック状態が変化したことを検出したとき、再度前記システム同期処理ステップを実行して前記ノード間でのタイマ値の再同期を図るステップと、を備え、
前記ループバック状態の変化に伴うシステム構成の変化に応じてノード間のタイマ値の再同期を図ることを特徴とするネットワークシステムの同期方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−5042(P2012−5042A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140617(P2010−140617)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】