説明

ネットワーク・プリントシステム

【課題】 ユーザに有益な(印刷環境を適切に評価した)情報を提供する。
【解決手段】 印字データを実際に送信する際、スループットを測定/算出する。
印刷環境の履歴を蓄積する→印刷プロファイル等の印刷情報も合わせて記憶する。
印刷環境が適切でないと判断された状態に応じて、ユーザに通知するメッセージの通知内容/通知形式を適切に変更する→印刷環境が不適合の、頻度・印刷環境の組み合わせなどを考慮し、適切に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク通信システムおよびネットワーク・プリントシステム
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク通信の速度および品質は通信環境に依存して変化するため、通信状態の良否を正確に判断することが困難であった。特に無線ネットワークにおいては、混雑や雑音電波による影響を受けるため実際に通信するまでは通信状態が分からないという問題点があり、これを解決するために種々の発明がなされている。
【0003】
例えば、通信状態を判断する方法(特許文献1参照)や、通信状態の判断結果により通信経路を選択する方法(特許文献2、3参照)が考案されている。
【0004】
特許文献1は通信環境試験用データを送信し、折り返し送信されてきたフレームを受信する。送信したデータと受信したデータとの間で、異なっているビット数に基づいてビットエラーレートを算出することで、通信状態の良否を判断するものである。
【0005】
特許文献2はテストのためのデータを複数回送信し、受信側よりの応答信号によりデータの到達状況が良である通信路を選択するものである。
【0006】
特許文献3は通信状態の良い無線伝送路を選択できるようにすることにより、プリント時間を短縮するものである。
【特許文献1】特開2003−050677号公報
【特許文献2】特開平05−268194号公報
【特許文献3】特開2002−264431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、比較的大きいデータを送信する場合は、一般に通信状態が良いと測定されているにも関わらず通信速度が極端に遅くなるという事が経験上知られており、更に、一般のユーザが使用しているネットワークにおいては所望の機器との通信経路が1つしかないため、通信状態の良否に関わらず通信を行わなければならない場合が多い。
【0008】
加えて、印刷のようにユーザの設定によって転送データ量が変化する特徴を持ったデータ転送においては、転送データ量が大きい設定で印刷を実行してしまうと印刷完了までに膨大な時間を費やしてしまう場合もあるが、ユーザは実際に印刷する前に通信状態の良否を知ることは困難である。
【0009】
上記の通り、通信前に通信状態の良否をユーザに通知する手段の発明という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、例えば以下の構成を備える。
【0011】
即ち、クライアントと周辺装置とがネットワーク経由の通信を行うシステムにおいて、通信経路の通信状態を評価および記憶する通信状態記憶手段と、通信状態記憶手段に記憶された評価結果を通知する通信状態通知手段とを備え、通信状態はデータ転送実行速度とデータ転送条件との関係により評価され、且つ記憶されることを特徴としている。
【0012】
更に、通信状態の評価に応じて、ユーザへの通知方法やタイミングを適切に変更することも特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、通信路における通信状態の評価を印刷条件を関連付けて記憶することで、同様の印刷条件下での通信状態を予測できる。更に、通信状態の評価に応じて通知方法およびタイミングを変更するため、ユーザに対して信頼性の高い情報を適切なタイミングで通知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態例を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に本発明の第1の実施形態を示す。
【0016】
クライアント100および200はネットワークを介して周辺装置300と通信可能な、ネットワーク通信システムである。以下、ネットワーク通信システムの一例として、周辺装置300が印刷装置であり、クライアント100および200から印刷ジョブを送信するネットワーク・プリントシステムを用いて説明する。
【0017】
クライアント100は周辺装置300を印刷装置として認識しており、印刷ジョブを発行することが可能である。印刷処理の詳細は本発明の主旨から外れるので説明を割愛するが、ユーザが印刷データならびに印刷処理を実行する印刷装置を選択し、さらに印刷プロファイルとして用紙サイズおよび部数および印刷品位等の各種印刷条件を選択することで、印刷処理が開始される。クライアント200の動作に関しても同様である。
【0018】
続いて、通信状態保存手段ならびに通信状態通知手段の動作について、順に説明する。
【0019】
図2は通信状態保存手段の基本動作フローである。
【0020】
上記の通り印刷処理が開始されると、通信状態保存手段はステップS201でデータ転送条件を判断する。具体例としては印刷品位やデータサイズを判断する。
【0021】
ステップS202では、通信状態の良否を判断する。ここでは転送データの実効速度を測定し、前記ステップS201で判明したデータ転送条件毎に設けた各閾値を基準に良い方から順に「優/良/可/劣」等に分類するものとする。
【0022】
ステップS203で、データ転送条件と通信状態評価を関連付け、任意の数あるいは任意の期間の評価を蓄積する。
【0023】
図3に通信状態評価蓄積テーブルの一例を示す。
【0024】
図4は通信状態通知手段の基本動作フローである。
【0025】
ステップS401として、図3に一例を示した通信状態評価蓄積テーブルを、データ転送条件毎に分類して解析する。各評価の平均値を算出したり、評価に閾値を設け、閾値を下回った割合などにより判断したりしても良い。図5に以下の説明で用いる通信状態評価解析結果の一例を示す。図5では転送条件として、印刷品位と転送データサイズを用いた例を示している。
【0026】
ステップS402において、印刷処理が開始される等のデータ転送開始要求がある場合、通信状態通知手段は該転送データのデータ転送条件を判断する。
【0027】
ステップS403では、通信状態通知手段はクライアント或いはユーザに通信状態評価を通知する。通知方法の詳細ならびに通知情報の扱い方は本発明の主旨から外れるため、説明を割愛する。
【0028】
その後データ転送が実行される。(ステップS404、S405)
【実施例2】
【0029】
第2の実施形態として、通信状態通知手段が通信状態評価に応じてユーザへの通知内容およびタイミングを変更する例を、図6に示した通信状態通知手段の通知タイミングが変化する場合の動作フローを用いて説明する。
【0030】
第1の実施形態との相違点は、ステップS403が実行される条件やタイミングが異なる点である。
【0031】
ここでは通信状態評価解析結果は図5に示した通りであり、評価「可」は通信を推奨できない推奨範囲外を、評価「劣」はユーザが満足する通信が保証できる許容範囲外であることを意味するものとする。
【0032】
ステップS601およびS602は、ステップS401およびS402と同じである。
【0033】
ステップS603では、該転送データの転送条件に関連付けられている通信状態評価を判断し、例えば通信状態評価が「優/良/可」であれば、ステップS604へ進みデータ転送を開始する。
【0034】
通信状態評価が「劣」の場合は、通信状態通知手段はクライアント或いはユーザに警告を通知する(ステップS605)。
【0035】
例えば警告の通知をポップアップダイアログで通知する事により、ユーザのへの通知と共に転送を実行するか否かを例えばユーザに確認することもできる(ステップS606)。データ転送を実行する場合は、ステップS604へ進み、キャンセルする場合はS607へ進む。
【0036】
ステップS604でデータ転送が開始された後、ステップS608にて該転送データの転送条件に関連付けられている通信状態評価を判断する。
【0037】
例えば通信状態評価が「優/良」であればデータ転送を完了してステップS609へ進み、通信状態評価が「可/劣」の場合は、通信状態通知手段がクライアント或いはユーザに注意を通知する(ステップS610)。注意の通知方法は警告の通知方法とは異なり、データ転送を継続したまま付加情報としてユーザに通知するだけとするなど、データ転送処理の実行の可否を選択させた「警告」とは通知方法を変更することで、ユーザの利便性を考慮することができる。
【0038】
以上、実施例を用いて本発明について説明した。
【0039】
なお本発明に対して、発明の主旨から逸脱せずに種々の変更を加えることも可能である。
【0040】
例えば、本実施例では印刷プロファイルとして印刷品位のみを用いて説明したが、用紙サイズなど転送データ量に影響を及ぼす条件やその他通信状態に影響を及ぼし得る条件を考慮して通信状態を評価することも可能である。
【0041】
また、印刷状態評価蓄積テーブルに印刷開始時刻を合わせて記憶しておくことで、他者の通信量や他電子機器からの雑音等によりネットワークの通信負荷が特定の時間帯に増大する等の現象を把握し、それらを評価および通知方法に反映することも勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】ネットワーク通信システム。
【図2】通信状態保存手段の基本動作フロー。
【図3】通信状態評価蓄積テーブル。
【図4】通信状態通知手段の基本動作フロー。
【図5】通信状態評価解析結果例。
【図6】通信状態通知手段の通知タイミングが変化する場合の動作フロー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアントと周辺装置とがネットワーク経由の通信を行うシステムにおいて、
通信経路の通信状態を評価および記憶する通信状態記憶手段と、
前記通信状態記憶手段に記憶された評価結果を通知する通信状態通知手段と
を備え、
前記通信状態はデータ転送実行速度とデータ転送条件との関係により評価され、且つ記憶されることを特徴とする、ネットワーク通信システム。
【請求項2】
クライアントと周辺装置であるプリンタとがネットワーク経由の通信を行うプリントシステムにおいて、
通信経路の通信状態を評価および記憶する通信状態記憶手段と、
前記通信状態記憶手段に記憶された評価結果を通知する通信状態通知手段と
を備え、
前記通信状態はデータ転送実行速度とデータ転送条件との関係により評価され、且つ記憶されることを特徴とする、ネットワーク・プリントシステム。
【請求項3】
前記転送データとは、印刷データであることを特徴とする
請求項2に記載のネットワーク・プリントシステム。
【請求項4】
前記データ転送条件とは、印刷プロファイルである事を特徴とする
請求項2および3に記載のネットワーク・プリントシステム。
【請求項5】
前記通信状態通知手段が、通信状態評価結果に依ってユーザに通知する方法およびタイミングを変更することを特徴とする、請求項2乃至4に記載のネットワーク・プリントシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−15641(P2009−15641A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177415(P2007−177415)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】