ネットワーク化された診断臨床分析装置の差し迫った分析故障を検出するための方法
ネットワーク化された診断臨床分析装置における差し迫った分析故障を検出するための方法は、特定の分析装置の動作が1以上の閾値に基づいて統計的に区別可能であるかを検出することに基づいたものである。故障は、分析装置の1以上の構成要素又はモジュールが故障する場合に発生する。こうした差し迫った故障を検出するための方法を開示する。診断臨床分析装置の母集団についての予め選択された分析装置の変量の集合に関するベースラインデータを用いて差し迫った故障の閾値を生成する。次いで、同じ予め選択された分析装置の変量の集合を含む作動データにより、時系列的な作動上の統計値を生成することが可能である。作動上の統計値が所定の様式で差し迫った故障の閾値を超える場合、差し迫った分析故障が予測される。このような差し迫った分析故障の検出により、問題とされる分析装置に対するサービスを合理的に予定することが容易になるため、高いアッセイのスループット及び正確さが維持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してネットワーク化された診断臨床分析装置における差し迫った分析故障の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、臨床検査室における標準的な備品である。人の手の多大な関与を必要としていた検定法は、現在では専ら、試料を分析装置に装填し、所望の試験を実施するように分析装置をプログラムし、その結果を待つことによって行われている。使用される分析装置及び方法は広範である。その一部の例としては、終点反応分析及び反応速度分析などの分光吸光度検定法(spectrophotometric absorbance assay)、濁度検定法(turbidimetric assays)、比濁検定法(nephelometric assays)、放射エネルギー減衰検定法(radiative energy attenuation assays)(本明細書に参照により援用する米国特許第4,496,293号及び同第4,743,561号に述べられるものなど)、イオン捕獲検定法、比色試験法、蛍光分析法、電気化学的検出システム、電位差検出システム、及び免疫測定法が挙げられる。これらの方法の一部又はすべてのものは、古典的な湿式化学法、イオン選択性電極(ISE)分析法、薄膜フォーマット乾式化学法、ビード及びチューブフォーマット又はマイクロ滴定プレート、及び磁性粒子の使用を用いて実行できる。米国特許第5,885,530号は、ビード及びチューブフォーマットでの免疫測定を行うための典型的な自動分析装置の動作を理解するために有用な記載を提供していて、同特許は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
診断臨床分析装置はますます複雑化しつつある電気機械装置であることは言うまでもない。独立型の乾式化学システム及び独立型の湿式化学システム以外に、両タイプの分析を含む統合型装置も商業的に使用されている。これらのいわゆる組合せ型臨床分析装置においては、例えば複数の乾式化学システム及び湿式化学システムを1個の格納ハウジング内に設けることができる。あるいは、複数の湿式化学システムを1個の格納ハウジング内に設けるか、又は複数の乾式化学システムを1個の格納ハウジング内に設けることもできる。更に、例えば湿式化学システム又は乾式化学システムのような同様のシステムを、そうすることが作動上有利であることが証明されている場合には、1つのシステムが別のシステムのリソースを使用できるように統合することもできる。
【0004】
上記の化学システムのそれぞれは、その動作の観点から独特である。例えば、公知の乾式化学システムは一般的に試料供給部、多数の乾式スライド要素を有する試薬供給部、計量/輸送機構、及び複数の試験読み取りステーションを有するインキュベータを備えている。所定量の試料を、輸送レールに沿って可動式計量トラックによって運搬される吻状要素又はプローブを使用して計量先端部内に吸引する。次に先端部から所定量の試料をインキュベータ内に装填された乾式スライド要素上に計量しながら供給(分注)する。スライド要素をインキュベートし、検体の存在又は濃度を検出するために、光学的読み取り値又は別の読み取り値などの測定値を得る。留意すべき点として、乾式化学システムでは、入力される患者試料に試薬を添加する必要がない。
【0005】
これに対して、湿式化学システムでは、キュベットなどの反応容器を使用し、この中で所定量の患者試料、少なくとも1種類の試薬流体、及び/又は他の流体を混合して検定を行う。検定物を更にインキュベートし、分析物を検出するための試験を行う。湿式化学システムは更に、患者試料流体を試料供給部から反応容器に輸送するための計量機構を有している。
【0006】
異なる検定分析装置の種類及び検定方法が存在するにもかかわらず、多くの分析装置は幾つかの共通の特徴及び設計上の構成を共有している。言うまでもなく、試料に対して何らかの測定が行われる。これには、試料がその測定法に適した形態で置かれる必要がある。したがって、多くの分析装置において、試料操作システム又は機構が見られる。湿式化学装置では、試料は、一定分量を反応キュベット又は他の何らかの容器に分散できるように、通常、分析装置内のカップ又はチューブのような試料容器に入れられる。ポンプ、弁、パイプ及び管路などの液体輸送路のような適切な流体ハンドリング装置を使用し、圧力又は真空によって駆動されるプローブ又は吻状要素が、試料容器から反応容器へと所定量の試料を計量及び移送するために用いられることが多い。特に試料中に比較的大量の検体が予想又は見出される場合には、この試料プローブ若しくは吻状要素、又は異なるプローブ若しくは吻状要素によって反応容器に希釈剤を供給する必要がある場合も多い。非使い捨て型の計量プローブを洗浄するためには洗浄液又は洗浄処理が一般的に必要とされる。この場合にも、洗浄液及び希釈剤を正確に計量して供給するために流体ハンドリング装置が必要とされる。
【0007】
試料の調製及び供給以外に、試料に対して行われる測定値を明示する動作では、蛍光又は光の吸光度などの何らかの識別可能な事象を生ずるために試薬、基質、又は試料と結合する他の物質の分注が必要とされることが多い。検出可能な事象を達成するためにしばしば複数の異なる物質が試料と混合される。これは、複数の試薬及び洗浄工程が必要とされることが多い免疫検定の場合に特に当てはまる。試薬操作システム又は機構によってこれは実現される。一般的に、これらの計量システムはキャリーオーバーを防止するために洗浄工程を必要とする。この場合もやはり、流体ハンドリング装置はこれらの操作の中心的な構成である。
【0008】
他の共通システム要素としては、何らかの刺激源を、刺激を検出するための何らかの機構とともに含む測定モジュールがある。こうしたスキームとしては、例えば、単色光源及び熱量計、反射率計、旋光計、及び照度計が挙げられる。最新の自動分析装置は、分析装置の動作を監視し、生成されたデータを、局所的に又はネットワーク若しくはインターネットを介して接続された遠隔監視センターに報告するための高度なデータ処理システムを更に有している。試薬冷却システム、インキュベータ、並びに試料及び試薬搬送システムなどの多くのサブシステムも、既に述べた主システムのそれぞれにしばしば見られる。
【0009】
本明細書において使用される用語としての分析故障とは、診断臨床分析装置の1以上の構成要素又はモジュールが故障しはじめる際に発生するものである。このような故障は、初期製造時の欠陥、又は長期の損耗及び劣化によって生じうる。例えば多くの種類の機械的故障があり、これには、過負荷、衝撃、疲労、クリープ、破裂、応力緩和、応力腐食亀裂、腐食疲労などが含まれる。これらの単一の構成要素の故障は、信用されうるが、許容しえない程度に不正確な検定結果に結びつく。これらの不正確性すなわち正確性の喪失は、機械的ノイズ又は更には非効率なソフトウェアのプログラミングのプロトコルといった多くの因子によって更に増幅されうる。これらの多くは比較的容易に解決できるものである。しかしながら、μg/dL、又は更にはng/dLの範囲でしばしば測定される検体濃度では、試料及び試薬操作システム、並びに試料及び試薬操作システムに影響する支援システム及びサブシステムに特別の注意を払わなければならない。試料及び試薬操作システムは、小量の液体の正確かつ精密な輸送を必要とするため、試料及び試薬プローブに見られるような極めて薄い管路及び容器が一般的に組み込まれている。多くの機器は、ハードウェア/ソフトウェアシステムの多数の要素の正常な動作にそれぞれが依存する複数の固有の流体供給システムの同時的かつ統合的な動作を必要とする。これらのハードウェア/ソフトウェアシステムの一部の要素は、低い確率レベルで生じる故障モードを有する。このようなプローブにおける欠陥又は閉塞は、極めて不規則かつ不正確な結果を生じうるものであり、したがって分析故障の原因となるものである。同様に、不完全な洗浄プロトコルは、多数の試料が関与する多数の検定結果における誤った読み取り値を与えるキャリーオーバーエラーにつながりうる。これは、供給容器(例えばプローブ又は吻状要素)への分注流体の付着によって引き起こされる。また、容器が試薬又は希釈剤と接触する場合には、過剰に希釈され、したがって低めに報告された結果にもつながりうる。分注流体への空気又は他の流体の飛沫同伴により、分注された流体に帰する体積の一部は実際には飛沫同伴された液体であることから、分注流体の体積が仕様よりも低くなる可能性がある。上記に述べたような問題が臨床分析装置によって明確に特定されうる場合の標準的な作動手順は、検出されたエラーの種類がその数値によって規定されるエラーコードを発行すること、及びアッセイの数値結果を保留して、特定された問題を解決するか、あるいは最低でも要求された検定のやり直しを要求することである。上記に述べた問題から生じる分析故障は、参照によって本明細書に援用する米国特許出願公開第2005/0196867号において解決策が提案されている。更に、上記に述べた問題の具体的な解決を図った、統計的プロセス制御の一形態である診断臨床分析装置を監視するために開発された確立した方法があり、参照により本明細書に援用するJames O.Westgard、Basic QC Practices:Training in Statistical Quality Control for Healthcare Laboratories,2nd edition,AACC Press,2002、並びに参照により本明細書に援用するCarl A.Burtis、Edward R.Ashwood及びDavid E.Bruns、Tietz Fundamentals of Clinical Chemistry,6th edition,Saunders,2007に詳細に述べられている。
【0010】
しかしながら、上記に述べたような個別の構成要素に関連した、又はモジュールに関連した問題以外に、分析故障の原因となりうるシステムに関連した一連の問題が存在する。システム関連の問題は、複数の構成要素及びサブシステムの時間の経過にともなう劣化によって生じ、検体測定値の変動度増大という形で現れる。システムに関連したこうした一連の問題の1つの特徴として、上記に述べた、米国特許出願公開第2005/0196867号において定義される問題と異なり、決定的なエラーを検出することはできず、その結果、エラーコードは発行されずかつ検定の数値結果は保留されない。マイクロチップ法及びマイクロウェル法において特に問題となるのは、周囲及びインキュベータの両方における熱安定性の問題である。複数の構成要素及びサブシステムが関与するため、1個の変量を監視することによって差し迫った分析故障を検出することは不可能であり、複数の変量を監視することが必要である。上記に参照することにより本明細書に援用したJames O.Westgard 及びCarl A.Burtis等に詳細に述べられるようにこれらの変量の測定値を用いて本明細書に述べるような差し迫った分析故障を検出することが可能であり、これを用いて分析装置の全体の動作を監視することも可能である。言うまでもなく、どの変量の集合を監視するべきかは極めて重要な問題である。商業的に使用されている多くの診断臨床分析装置では、分析装置の開発の設計段階において通常発生する分析装置のエラーバジェット解析によって最も簡単にこの問題に対する解答が得られる。エラーバジェットの計算は感度分析の特殊な一形態である。この計算によって、システムの精度に潜在的に影響するものと考えられる個別のエラー源又はエラー源の群による別々の影響が求められる。本質的には、エラーバジェットとは、これらのエラー源のカタログのようなものである。エラーバジェットは、複雑な電子システムの設計における標準的な装備品である。初期の1つの例として、参照によって本明細書に援用する、Arthur Gelb、Editor、Applied Optimal Estimation,The MIT Press,1974,p.260を参照されたい。診断臨床分析装置の動作に関連するすべての変量が容易に測定できるわけではないことから、どの変量を監視すべきかを特定する体系的なアプローチが求められている。こうしたアプローチの1つとしてトルネード表及びトルネード図がある。付録に、ごく簡略化された電子回路におけるトルネード分析の使用の一例を挙げた。特定の変量の集合を監視することの決定は最終的には工学的決定である。
【0011】
米国特許第5,844,808号、同第6,519,552号、同第6,892,317号、同第6,915,173号、同第7,050,936号、同第7,124,332号、及び同第7,237,023号は、故障を検出するための様々な方法及び装置について教示又は示唆を与えるものであるが、機器の充分な使用を可能としつつ故障を予測するには充分なものとはいえない。実際、あらゆる機器で将来のある時点において故障が予想される。予想される故障を体系的な様式で整理することについては、これらの文書に開示される具体的な方法又は装置によって教示も示唆もなされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本出願は、ネットワーク化された診断臨床分析装置の差し迫った分析故障を、診断臨床分析装置が許容しえない正確さ及び精度で検定結果を生成する前に予測するための方法を提供する。本開示は、故障が既に発生していることを検出するためのものではなく、そのような判定は診断分析装置の他の機能及び回路によって行われるものだからである。更に、すべての故障が臨床診断分析装置によって生成される結果の信頼性に影響するわけではない。代わりに、本開示は、差し迫った故障を検出し、そのような故障を修正する助けとなることによって臨床診断分析装置の全体の性能を改善することに関係するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願の別の態様は、診断臨床分析装置の分析故障の前にネットワーク化された診断臨床分析装置に保守担当者を派遣するための方法に関する。
【0014】
診断臨床分析装置における差し迫った故障を予測するための好ましい一方法は、複数の診断臨床分析装置において複数の変量を監視する工程と、監視変量の値からの異常値をスクリーニングして除外する工程と、異常値を除外するためにスクリーニングされた監視変量の値に基づいて監視変量のそれぞれについて閾値(ベースライン管理図の管理限界値など)を導出する工程と、監視変量の値を正規化する工程と、監視変量の正規化された値を用いて合成閾値を生成する工程と、特定の診断臨床分析装置から監視変量についての作動データを収集する工程と、前記特定の診断臨床分析装置が合成閾値を超えた場合に警告を発生する工程と、を含む。
【0015】
ある変量の異常値とは、根底にある予想又は推定される分布に基づいて、3%以下、1%以下、0.1%以下、及び0.01%以下からなる集合から選択される比率で生じることが予想される値である。
【0016】
好ましい一実施形態では、監視変量を正規化するために特定の監視変量の閾値を更に用いる。このような実施方法の選択は、本発明の範囲に対する限定を目的としたものではなく、こうした選択が特許請求の範囲において明確に示されないかぎりは、本発明の範囲に対する限定として理解されるべきではない。別の実施形態では、監視変量に異なった正規化を行い得る。正規化によって、ベースライン合成値の管理限界値のような合成閾値が、重み付けされた基礎となる変量の値を適切に反映することが確実になる。正規化により、パラメータの値は数値的に桁が異なるような場合であってもパラメータを合成閾値の構成要素として使用することが可能となる。例として、正規化後に合成された周囲温度の標準偏差、計量条件コード率(%)、及び、ランプ電流の負の一次導関数は、それらの値を正規化する前であっても名目上桁が異なっている。
【0017】
好ましい一実施形態では、特定の診断臨床分析装置について監視される変量が、例えば1回、3つの連続した時点の内の2回、又は特定の時間間隔又は作動期間中に所定の回数といったように所定の様式で合成閾値を超える場合に、その特定の診断臨床分析装置について差し迫った故障の警告が発生される。更に、特に明確に示されないかぎり、差し迫った故障とは、検定結果が検体又は関連する試薬の製造業者によって指定された変動の境界内に充分に収まっていたとしても性能の変動頻度が高くなることを指す。このような実施方法の選択は、本発明の範囲に対する限定を目的としたものではなく、こうした選択が特許請求の範囲において明確に示されないかぎりは、本発明の範囲に対する限定として理解されるべきではない。
【0018】
本出願の更なる目的、特徴及び利点が、以下の好ましい実施形態を詳細に考慮することによって当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】統合された診断臨床分析装置及び汎用コンピュータネットワークを示す図。複数の独立して動作する診断臨床分析装置101、102、103、104及び105が、ネットワーク106に接続されている。ベースライン時間と呼ばれる特定の最初の時点107において、すべての診断臨床分析装置101、102、103、104及び105がデータを収集し、次いでデータを汎用コンピュータ112に転送する。未来の時点108、109、110及び111において、更なる作動データが収集され、汎用コンピュータ112に転送される。
【図2】ベースラインデータと、データポイント202によって示される、25日の連日期間で特定の診断臨床分析装置から汎用コンピュータ112に報告された作動データから計算された統計値の値とから導かれるロバストな統計的管理図の管理限界値201を示すアッセイ予測警告管理図を示す図。23、24、及び25日目では3つの統計値の内の2つが管理図の管理限界値を超えている点に注意されたい。
【図3】実施例1のベースラインデータを用いて管理図の管理限界値を計算するためのデータセットアップを示す図。列301は、862台の分析装置の集合における特定の診断臨床分析装置を示している。列302は、以後、ベースラインエラー1の値として知られる、分析装置による報告されたエラーコード率(%)を示す。列303は、以後、正規化ベースラインエラー1の値として知られる、分析装置による正規化されたエラーコード率(%)の値を示す。列304は、以後、ベースライン範囲1の値として知られる、分析装置による報告されたアナログ/ディジタル電圧カウントを示す。列305は、以後、正規化ベースライン範囲1の値として知られる、分析装置による正規化されたアナログ/ディジタル電圧カウントを示す。列306は、以後、ベースライン比1の値として知られる、分析装置による報告された3つの信号電圧の期待値に対する3つの検証数の平均値の比を示す。列307は、以後、正規化ベースライン比1の値として知られる、分析装置による3つの信号電圧の平均値に対する3つの検証数の平均値の正規化された比を示す。列308は、以後、ベースライン合成1の値として知られる、列303、305、及び307の3つの正規化された値の平均値である。行309はそれぞれ、列302、列304、列306、及び列308の値の平均である。行310はそれぞれ、列302、列304、列306、及び列308の値の標準偏差である。行311は、平均±3×標準偏差の範囲に含まれない値が除外された後に列302、列304、列306、及び列308にそれぞれ残った値の平均である。行311の平均値は、トリミングされた平均値を表す。行312は、平均±3×標準偏差の範囲に含まれない値が除外された後に列302、列304、列306、及び列308にそれぞれ残った値の標準偏差である。行312の標準偏差は、トリミングされた標準偏差を表す。行313は、それぞれ列302、列304、列306、及び列308について、行311のトリミングされた平均+3×行312のトリミングされた標準偏差からなる個々の管理図の管理限界値である。行313かつ列308の要素はベースライン合成1の値の管理図の管理限界値。
【図4】特定の時点において実施例1の862台の診断臨床分析装置の集団の調査から得られ報告されたエラーコード率(%)の解析から得られたヒストグラムを示す図。
【図5】特定の時点において実施例1の862台の診断臨床分析装置の集団の調査から得られ報告されたアナログ/ディジタルカウントの解析から得られたヒストグラムを示す図。
【図6】特定の時点において実施例1の862台の診断臨床分析装置の集団の調査から得られた、平均信号電圧に対する平均検証数の報告された比率の解析から得られたヒストグラムを示す図。
【図7】実施例1の作動データを用いて合成1の値を計算するためのデータセットアップを示す図。列701は、データが測定された日付を示す。列702はそれぞれ、以後、作動エラー1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による報告されたエラーコード率(%)を示す。列703はそれぞれ、以後、正規化作動エラー1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による正規化されたエラーコード率(%)の値を示す。列704はそれぞれ、以後、作動範囲1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による報告されたアナログ/ディジタル電圧カウントを示す。列705はそれぞれ、以後、正規化作動範囲1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による正規化されたアナログ/ディジタル電圧カウントを示す。列706はそれぞれ、以後、作動比1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による3つの信号電圧の平均値に対する3つの検証数の平均値の報告された比を示す。列707はそれぞれ、以後、正規化作動比1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による3つの信号電圧の平均値に対する3つの検証数の平均値の正規化された比を示す。列708はそれぞれ、以後、作動合成1の値として知られる、それぞれの日付についての列703、705及び707の3つの正規化された値の平均値。
【図8】実施例1について作動合成1の毎日の値をプロットした管理図を示す図。グラフには、トリミングされたベースライン合成1の管理図の管理限界値(約74.332)を表す線801が示されている。ドット802は、作動合成1の毎日の値を表す。
【図9】W 901、X 902、Y 903、及びZ 904の4つの信号入力を有する簡単な電子回路を示す図。これら4つの信号は、独立ランダム変量の特性を有している。信号W 901とX 902とは加算器905において合成されて信号A 906を生じる。信号A 906は乗算器907において信号Y 903と合成されて信号B 908を生じる。信号B 908は加算器910において信号Z 904と合成されて信号C 909を生じる。
【図10】付録において考察するモデル回路における信号Cの出力分散に対する異なる入力変量の影響を示すトルネード図。表の値を図中に示す。
【図11】実施例2のベースラインデータを用いて管理図の管理限界値を計算するためのデータセットアップを示す図。列1101は、758台の分析装置の集団における特定の診断臨床分析装置を示している。列1102は、以後、ベースラインインキュベータ2の値として知られる、分析装置によるインキュベータ温度の誤差の標準偏差を示す。列1103は、以後、正規化ベースラインインキュベータ2の値として知られる、分析装置によるインキュベータ温度の正規化された標準偏差を示す。列1104は、以後、ベースライン試薬2の値として知られる、分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の誤差の標準偏差を示す。列1105は、以後、正規化ベースライン試薬2の値として知られる、分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の誤差の正規化された標準偏差を示す。列1106は、以後、ベースライン周囲2の値として知られる、分析装置による周囲温度の標準偏差を示す。列1107は、以後、正規化ベースライン周囲2の値として知られる、分析装置による周囲温度の正規化された標準偏差を示す。列1108は、以後、ベースラインコード2の値として知られる、分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの条件コード率(%)を示す。列1109は、以後、正規化ベースラインコード値2として知られる、分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの正規化された条件コード率(%)を示す。列1110は、以後、ベースライン合成2の値として知られる、列1103、1105、1107、及び1109の4つの正規化された値の平均値である。行1111はそれぞれ、列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110の値の平均である。行1112はそれぞれ、列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110の値の標準偏差である。行1113は、平均±3×標準偏差の範囲に含まれない値が除外された後に列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110にそれぞれ残った値の平均である。行1113の平均は、トリミングされた平均を表す。行1114は、平均±3×標準偏差の範囲に含まれない値が除外された後に列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110にそれぞれ残った値の標準偏差である。行1114の標準偏差は、トリミングされた標準偏差を表す。行1115は、それぞれ列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110について、行1113のトリミングされた平均+3×行1114のトリミングされた標準偏差からなる個々の管理限界値。
【図12】実施例2の作動データを用いて合成2の値を計算するためのデータセットアップを示す図。列1201は、データが測定された日付を示す。列1202はそれぞれ、以後、作動インキュベータ2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるインキュベータ温度の標準偏差を示す。列1203はそれぞれ、以後、正規化作動インキュベータ2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるインキュベータ温度の正規化された標準偏差を示す。列1204は、以後、作動試薬2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の標準偏差を示す。列1205は、以後、正規化作動試薬2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の正規化された標準偏差を示す。列1206はそれぞれ、以後、作動周囲2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による周囲温度の標準偏差を示す。列1207はそれぞれ、以後、正規化作動周囲2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による周囲温度の正規化された標準偏差を示す。列1208は、以後、作動コード2の値として知られる、それぞれの日付について分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの条件コード率(%)を示す。列1209は、以後、正規化作動コード2の値として知られる、それぞれの日付について分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの正規化された条件コード率(%)を示す。列1210はそれぞれ、以後、作動合成2の値として知られる、それぞれの日付についての列1203、1205、1207及び1209の4つの正規化された値の平均値。
【図13】実施例2について作動合成2の毎日の値をプロットした管理図を示す図。このグラフでは、ベースライン合成2の管理図の管理限界値1301は約89.603であることが示されている。ドット1302は、作動合成2の毎日の値を表す。
【図14】実施例3の作動データを用いて合成3の値を計算するためのデータセットアップを示す図。列1401は、データが測定された日付を示す。列1402はそれぞれ、以後、作動インキュベータ3の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるインキュベータ温度の標準偏差を示す。列1403はそれぞれ、以後、正規化作動インキュベータ3の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるインキュベータ温度の正規化された標準偏差を示す。列1404は、以後、作動試薬3の値として知られる、分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の標準偏差を示す。列1405は、以後、正規化作動試薬3の値として知られる、分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の正規化された標準偏差を示す。列1406はそれぞれ、以後、作動周囲3の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による周囲温度の標準偏差を示す。列1407はそれぞれ、以後、正規化作動周囲3の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による周囲温度の正規化された標準偏差を示す。列1408は、以後、作動コード3の値として知られる、それぞれの日付について分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの条件コード率(%)を示す。列1409は、以後、正規化作動コード3の値として知られる、それぞれの日付について分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの正規化された条件コード率(%)を示す。列1410はそれぞれ、以後、作動合成3の値として知られる、それぞれの日付についての列1403、1405、1407及び1409の4つの正規化された値の平均値。
【図15】実施例3について作動合成3の値の毎日の値をプロットした管理図を示す図。このグラフでは、ベースライン合成3の管理図の管理限界値1501は約89.603であることが示されている。ドット1502は、作動合成3の毎日の値を表す。
【図16】ベースライン合成の管理図の管理限界値及び作動データ点を計算するために用いられるソフトウェアのフローチャート。処理は、開始楕円記号(1601)で開始された後、データが利用可能な分析装置の数が入力される(1602)。1つの分析装置のベースラインデータが読み取られた(1603)後、更なる分析装置のデータが引き続き入力されるべきかについて確認が行われる(1604)。Yesの場合、制御は1603のブロックに差し戻されるが、そうでない場合には、すべての分析装置の横断データ(クロスセクション)にわたって、各入力変量についてベースラインの平均及び標準偏差が計算される(1605)。ここで、平均から少なくとも標準偏差の3倍を加算又は減算した範囲内に含まれない値を有するすべてのデータは計算用データセットから除外され(1606)(この処理はトリミングとして知られる)、トリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差が各変量について計算される(1607)。次に、各変量についてベースライン管理図の管理限界値が計算され(1607A)、トリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差を用いてベースライン合成の管理図の管理限界値が計算される(1608)。恐らくは、ベースラインデータの収集から充分に経過したある時点において、特定の分析装置について特定の期間における作動データの入力が開始される(1609)。ブロック1610において、更なる期間のデータがあるか否かを判定するための確認が行われる。Yesの場合、制御は1609に差し戻されるが、そうでない場合には、各変量の入力値はその変量のベースライン管理図の管理限界値によって除算され、各変量は正規化される(1611)。次に、作動合成値が計算される(1612)。この後、これらの作動値はコンピュータメモリに記憶され(1613)、予め計算されたベースライン合成管理限界値と比較される(1614)。規定の計画対象期間にわたって特定の回数で管理限界値を超える場合には、遠隔監視センターに差し迫った分析装置の故障が通知され(1615)、そうでない場合には、制御がブロック1610に差し戻されて特定の分析装置からの別の期間の作動データの入力を待機する。
【図17】異なる時点における監視変量及びそれぞれの閾値についての情報の代表的表示図。影付きのセルは、それぞれの閾値を超える監視変量に注意を惹きつけて、分析装置のトラブルシューティング又は性能改善に役立つ。この表示により、疑わしいサブシステムに注意が向けられ、差し迫った故障のトラブルシューティングに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において検討する技法は、遠隔診断臨床分析装置が、許容しえない正確さ及び精度の検定結果を報告する見込みの原因となる故障寸前の(差し迫った分析故障)1つ以上の構成要素を有する可能性を、遠隔診断センターの管理者が評価することを可能にするものである。
【0021】
本明細書において検討する技法の効果は、実際の事象の前に差し迫った分析故障を検出し、分析装置を使用する商業体及びサービスプロバイダーの双方にとって都合のよい時点において遠隔配置された診断臨床分析装置にサービスする(差し迫った分析故障の原因を決定して回復させる)ことである。
【0022】
本発明の一般的理解のため、図面を参照する。図中、同様の要素は同様の参照番号を用いて示している。本発明を説明するに当たっては、以下の用語を説明文に使用している。
【0023】
数学的な意味合いで使用する「又は」なる用語は、本明細書においては、A又はBが真である、と言った場合に、(1)Aが真である、(2)Bが真である、又は(3)両方が真である、ことを指すように、数学上の「包含的OR」を意味する。
【0024】
「パラメータ」なる用語は、本明細書においては、あるプロセス又は母集団の所定の特性のことを指して言う。例えば、規定されたプロセス又は集団の確率密度関数に対して、母集団のパラメータである平均は、固定された値であるが恐らくは未知の値μを有する。
【0025】
「変量」なる用語は、本明細書においては、あるプロセス又は母集団の入力又は出力として変動するあるプロセス又は母集団の特性のことを指す。例えばインキュベータ温度のその所望の設定値からの観測される誤差が今+0.5℃であるとは、出力を表している。
【0026】
「統計値」なる用語は、本明細書においては、1つ以上のランダムな変量の関数のことを指す。ある母集団からの試料に基づく「統計値」を、母集団のパラメータの未知の値を推定するために用いることができる。
【0027】
「トリミングされた平均」なる用語は、本明細書においては、その統計値を計算するために用いられるデータが、著しく小さいか又は大きい度量のデータの値を除外するように解析及び再構築される場合の位置推定である統計値のことを指す。
【0028】
「ロバストな統計値」なる用語は、本明細書においては、異常値がある場合、又はより一般的には根底にあるパラメータ仮定がそれほど正しくない場合に古典的な統計学的方法よりも優れた性能が得られる統計値のことを指すものであり、トリミングされた平均はその簡単な一例である。
【0029】
「横断データ(クロスセクション)」なる用語は、本明細書においては、多数の異なる診断臨床分析装置にわたって、一定期間に生成されるデータ又は統計値のことを指す。
【0030】
「時系列」なる用語は、本明細書においては、特定の診断臨床分析装置において多数の期間に生成されるデータ又は統計値のことを指す。
【0031】
「期間」なる用語は、本明細書においては、データが蓄積され、個々の統計値が生成される時間の長さのことを指す。例えば、24時間にわたって蓄積され、所定の統計値を生成するために用いられるデータは、1日の「期間」に基づいた統計値を与えることになる。更に、60分間にわたって蓄積され、所定の統計値を生成するために用いられるデータは、1時間の「期間」に基づいた統計値を与えることになる。
【0032】
「対象期間」なる用語は、本明細書においては、特定の事象が考慮される時間の長さのことを指す。「対象期間」は多数の「期間」を含みうる。
【0033】
「ベースライン期間」なる用語は、本明細書においては、ネットワーク上の診断臨床分析装置の集団からのデータが収集される時間の長さのことを指す(例えばデータを毎日、24時間収集することができる)。
【0034】
「作動期間」なる用語は、本明細書においては、特定の診断臨床分析装置からのデータが収集される時間の長さのことを指す(例えば、データを24時間の作動期間にわたって1時間に1回収集することにより、24個の観測値又はデータ点を与える)。
【0035】
診断臨床分析装置の特定の設計に関連した変量は、監視のために、分析装置の全体のエラーバジェットに対する異常に高い寄与を特定する個々の変量の能力に基づいて選択される。無論、診断臨床分析装置はこれらの変量を測定可能でなければならない。これらの変量の内の幾つを監視するかについての決定は工学的な決定であり、使用される検定方法(すなわち、Ortho−Clinical Diagnostics(登録商標)分析装置における、MicroSlide(商標)、MicroTip(商標)、又はMicroWell)、及び診断臨床分析装置自体(すなわち、Vitros(登録商標)5,1 FS、Vitros(登録商標)ECiQ、Vitros(登録商標)350、Vitros(登録商標)DT60 II、Vitros(登録商標)3600、又はVitros(登録商標)5600)によって決まる。他の製造者については、本明細書において検討する同じ技法が技術的に同様の検定について機能する。付録において、正確さ又は精度に多大な影響を及ぼす変量を特定するために使用することが可能な、トルネード表及びトルネード図を使用した方法について述べる。特定の分析装置における特定の検定法の範囲内で、監視すべき異なる変量の集合を必要とする場合がある複数の測定様式を有することも可能である。
【0036】
図1を参照すると、乾式化学薄膜スライドを使用した診断臨床分析装置の解析の好ましい実施形態では、通常の商業的運転状態にある複数の診断臨床分析装置101、102、103、104及び105から、特定の第1の期間、通常は月曜日から金曜日までの週労働時間にわたってベースラインデータを収集する。この特定の第1の期間にわたったベースラインデータの蓄積により、診断臨床分析装置1台当たり1つのデータセットが得られ、データセットはネットワーク106上を送信され、データフロー107によって累積的に表される。汎用コンピュータ112が、ネットワーク106上の複数の診断臨床分析装置からこのベースラインデータを受信する。次いで複数の診断臨床分析装置からのベースラインデータは、汎用コンピュータ112によって統合され、以下の3つの変量、すなわち、(1)ベースラインエラーと呼ばれる、非ゼロ状態又はエラーコードを生じるマイクロスライドアッセイのパーセンテージ、(2)ベースライン範囲と呼ばれる、主電圧回路における変動の評価基準、及び(3)ベースライン比と呼ばれる、3つの信号電圧の平均値に対する3つの検証数の平均値の比、からなる特定の第1の期間にわたった多くのクロスセクション観測値を生成する。この情報を更に変換するため、3つの変量のそれぞれの平均及び標準偏差を計算し、平均±少なくとも標準偏差3つ分の範囲に含まれない個々の観測値を集合的データから除外する。この操作はトリミングとして知られる。トリミングされた平均は、データ異常値の影響を受けにくく、トリミングされたデータセットに利用可能なすべての情報が含まれている点でロバストな統計値の一例である。別の好ましい実施形態では、ロバストではないが不完全又は断片的情報に基づいた統計値を使用しうることは注目すべき点である。この後、3つの変量のそれぞれに対して、データセットに残った観測値に基づいて新たなトリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差を計算する。
【0037】
次いで、トリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差を用いて、3つの変量のそれぞれについてトリミングされた平均+少なくとも3×トリミングされた標準偏差からなるベースライン管理図の管理限界値を計算する。各変量に100を掛け、そのベースライン管理図の管理限界値でそれぞれ除算することによって、個々のベースラインエラー、ベースライン範囲、及びベースライン比の値を正規化する。正規化されたベースラインエラー、正規化されたベースライン範囲、及び正規化されたベースライン比を単一の評価基準にまとめるため、ベースライン合成値と呼ばれるこれら3つの正規化された値の平均を計算する。ベースライン管理図の管理限界値を生成するために用いたのと同じ計算工程を用いて、ベースライン合成値の平均及び標準偏差を計算する。次いで、ベースライン合成平均±少なくとも3×ベースライン合成標準偏差の範囲に含まれないベースライン合成値を除外し、トリミングされたベースライン合成平均及びトリミングされたベースライン合成標準偏差を計算する。次いで図2に示されるような、トリミングされたベースライン合成管理図の管理限界値201を、トリミングされたベースライン合成平均+少なくとも3×トリミングされたベースライン合成標準偏差として計算する。計算される第1の統計値であるトリミングされたベースライン合成管理図の管理限界値201は、遠隔診断臨床分析装置のベースラインデータから完全に導出されるロバストな統計値である。別の好ましい実施形態では、ロバストでないが不完全又は断片的情報に基づいた統計値を使用しうることは注目すべき点である。上記のベースライン計算の詳細なフローチャート及び以下の作動の計算を図16に示す。
【0038】
ベースライン統計値を用いて遠隔設置された遠隔臨床分析装置を個々に監視して、多くの試薬又はMicroSlides(商標)のような検出装置を交換する際の較正の妥当性、及びパラメータ値の調整の必要性に関連する分析装置の動作の変化を調べることもできることは注目すべき点である。遠隔監視センターに転送されたデータを用いて同じ又は代替的な統計値を計算し、要求に応じて、あるいは予め決められた間隔で遠隔サイトにダウンロードすることができる。この後、これらの統計値の数値を、シューハート(Shewhart)管理図、レビー・ジェニングス(Levey-Jennings)管理図、又はウェストガード(Westgard)ルールのベースライン値として用いることができる。こうした方法は、上記に参照によって援用したJames O.Westgard及びCarl A.Burtis等に述べられている。
【0039】
ベースラインデータの収集後、特定の連続した第2の期間にわたって特定の診断臨床分析装置について作動データを収集し、ネットワークデータフロー108、109、110及び111によって示されるように各期間の終わりにネットワーク113を通じて汎用コンピュータ112に送信する。このデータは、作動エラー、作動範囲、及び作動比についての多くの第2の期間の値からなる。特定の作動変量、すなわち、作動エラー、作動範囲、及び作動比に関連した一連の値について、各値は、100を掛け、予め計算したその変量の関連するベースライン管理図の管理限界値で除算することによって正規化する。汎用コンピュータ112は、これら3つの正規化された作動変量の平均値を計算して一連の第2の期間について作動合成値を得るようにプログラムされる。一連の第2の期間にわたって計算されたこれらの作動合成値の値は、観測値の時系列を表す。計算された第2の統計値である作動合成値は、その大きさが、特定の診断臨床分析装置のエラーバジェットの全体的な変動を示す統計値である。別の好ましい実施形態では、ロバストでないが不完全又は断片的情報に基づいた統計値を使用しうることは注目すべき点である。汎用コンピュータ112は、図2にプロットされる値202によって示されるように、これらの値を記憶及びトラッキングし、作動合成の値が、所定の対象期間にわたって所定の数の第2の期間についてベースラインデータから求められるトリミングされたベースライン合成の管理図の管理限界値201よりも大きい場合、遠隔監視センターに、その特定の分析装置の差し迫った分析故障があることを通知する。上記のベースライン及び作動計算の詳細なフローチャートを図16に示す。
【0040】
差し迫った分析故障についていつ警告するかを決定するための上記に述べた基準は、従来の統計的プロセス管理の基準よりもかなり厳密である。詳細には、この方法で用いられる基準は、作動合成の値が、3つの連続した観測値の内の2つについて、トリミングされたベースライン合成管理限界値201を超える場合である。これは、トリミングされた平均+3×トリミングされた標準偏差を超えることと同等である。本明細書に参照によって援用する、John S.Oakland in Statistical Process Control,6th Edition,Butterworth−Heinemann,2007において指摘されるように、個々又は作動管理図を用いた場合に、あるプロセスが制御不能であることを警告するための通常の基準は、(1)1つの重要な変量の観測値が、平均+3×標準偏差よりも大きい、(2)3つの連続した重要な変量の観測値の内、2つが平均+2×標準偏差を超える、又は(3)8つの連続した重要な変量の観測値が、常に平均を超えるかあるいは常に平均よりも小さい、ことである。したがって、この方法で用いられる基準は、通常用いられる基準よりもより厳密、すなわち起こる確率が大幅に低いものである。この基準を用いることにより、観測される偽陽性の数が減るという結果につながるものであり、この場合の偽陽性とは、差し迫った分析故障の警告が必要とされていない場合にこうした警告を予報することである。しかしながら、別の好ましい実施形態では、適切な基準として上記に概要を述べた基準又は別の基準を使用して偽陽性の数を減少させても良い。
【0041】
ベースライン統計値のような作動上の統計値を用いて遠隔設置された遠隔臨床分析装置を個々に監視して、多くの試薬又はMicroSlides(商標)のような検出装置を交換する際の較正の妥当性、又はパラメータ値の調整の必要性に関連する分析装置の動作の変化を測定することもできる。遠隔監視センターに転送されたデータを用いて統計値を計算し、要求に応じて、あるいは予め決められた間隔で遠隔サイトにダウンロードすることができる。これらの統計値の数値は、この後、データが受信される際にシューハート(Shewhart)管理図、レビー・ジェニングス(Levey-Jennings)管理図、又はウェストガード(Westgard)ルールを用いて解析することができる。こうした方法は、上記に参照によって援用したJames O.Westgard及びCarl A.Burtisらに述べられている。
【0042】
遠隔監視センターは、少なくとも1つの診断臨床分析装置が差し迫った分析故障を有するという通知がなされると、使用すべき適切なフォローアップ過程を決定しなければならない。本明細書において検討する技法は、遠隔監視センターの管理者による、集められたデータ及びそれに続いて計算された統計値を、順序付けられた一連の動作に変換することを可能にするものである。差し迫った分析故障が予測された場合に各遠隔診断臨床分析装置について利用可能な第2の統計値の値を用いることで、どの遠隔分析装置を最初にサービスするべきかに優先順位をつけることができるが、これは第2の統計値の相対的な大きさがその分析装置の全体的な故障の可能性を示していることによる。第2の統計値の値が高いほど、差し迫った故障が発生する確率は高くなる。これは、サービスのリソースが限定されており、こうしたリソースを最大限に活用することが望ましい場合に大きな価値がある。遠隔診断分析装置のサービスサイトの場所からの距離に応じて、オンサイトのサービスコールは最大で数時間かかる場合もある。この時間の一部は、サイトに向かう(及びサイトから戻る)ために費やされ、これに加えて故障しはじめている診断臨床分析装置の1以上の構成要素を特定及び交換するのに要する時間量を必要とする。更に、差し迫った故障の通知のタイミングが極めてよければ、オンサイトのサービスコールを前もって予定された分析装置の停止時間と一致するように計画することが可能であり、これにより分析装置を使用する商業体にとって分析装置の稼働時間の中断を防止することが可能な場合もある。例えば、ある病院では、患者サンプルを、その多くが就業日の概ね午前7時から午後10時までに分析されるように採取する。こうした病院では、午後10時から午前7時まで診断臨床分析装置を停止させることが最も好都合である。更に、サービスサイトの場所では、通常の就業時間中、更に主な休日及び他のイベントに確実に先立ってサービスコールを予定することがより望ましい。
【0043】
キュベット又はマイクロタイタープレートのいずれかを用いる湿式化学法の好ましい実施形態は、異なる変量の集合を監視することが求められる点以外は、薄膜スライドの上記の好ましい実施形態と同様である。しかしながら、ベースライン情報の第1のロバストな統計値への全体的な変換、及び作動データの第2の統計値への変換については、管理図の操作と変わらないままである。本開示の実施の代表的な例について以下に述べる。
【実施例】
【0044】
実施例1−647台の分析装置
この例では、イオン特異的電極をアッセイ測定装置として使用する乾式化学法によるMicroSlide(商標)診断臨床分析装置における差し迫った分析故障の検出について扱う。2008年8月12日に862台の診断臨床分析装置の集団から1日間にわたって3つの特定の変量についてのデータを得た。第1の変量は、非ゼロエラーコード又は条件を生じる全ナトリウム、カリウム、及び塩素アッセイのパーセンテージである。第2の変量は、全カリウムアッセイについてイオン特異的電極読み出しの間に測定された3つの電圧信号レベルの平均である。更に第3の変量は、全カリウムアッセイに対する平均値検証のアナログ/ディジタルカウントに対する平均信号アナログ/ディジタルカウントの比の標準偏差である。信号アナログ/ディジタルカウントは電位計によって測定されるスライドの電圧であり、検証アナログ/ディジタルカウントはスライドに内部参照電圧を順次印可して測定されるスライドの電圧である。
【0045】
本実施例及びこれに続く実施例において、ベースライン及び作動データ値は、IEEE浮動小数点演算標準754によって定義される倍精度浮動小数点の値として得られることは注目すべき点である。これについて、これらの値は、コンピュータ内部では8ディジタルバイトを用いて表されるが、約10進15桁の精度を有する。この精度の程度は一連の数値計算の全体を通じて維持されるが、このような精度をテキスト参照及び数字で維持するには実用的ではない。この説明の目的で、テキスト又は数字で参照されるすべての浮動小数点数は、存在する有効10進桁数とは関係なく、小数第3位の最も近い桁にまで切り上げ又は切り下げられる3つの小数位として表示される。例えば、123.456781234567は123.457として表示され、0.00123456781234567は0.001として表示される。この表示メカニズムは、表示どおりの数値量が計算に使用されれば不正確な計算を潜在的に生じる効果をもたらす。例えば、上記の2つの10進15桁の数を掛け合わせると、10進15桁の精度で0.152415768327997を生じるが、2つの数字の2つの表示された表現が掛け合わされれば10進6桁で0.123456が得られる。このようにして得られた2つの値は明らかに大きく異なっている。
【0046】
図3は、上記のベースラインデータを用いて管理限界値を計算するためのデータセットアップを含む。列301は、862台の分析装置の集団における特定の診断臨床分析装置を示している。列302は、分析装置によって報告されたエラーコード率(%)を示す(すなわちベースラインエラー1)。列304は、分析装置によって報告された3つの電圧信号レベルの平均を示す(すなわちベースライン範囲1)。列306は、分析装置によって報告された、平均の信号アナログ/ディジタルカウントに対する信号アナログ/ディジタルカウント数の平均値の比を示す(すなわちベースライン比1)。3つの報告されたデータの列302、304及び306のそれぞれについて、行309に示されるように平均を計算し、行310に示されるように標準偏差を計算する。図4、図5、及び図6は、862台の全報告診断臨床分析装置について、それぞれ、報告されたベースラインエラー1の値、報告されたベースライン範囲1の値、及び報告されたベースライン比1の値のヒストグラムを示す。次に、トリミングとして知られるプロセスにおいて、ベースラインエラー1の平均値(0.257)±3×ベースラインエラー1の標準偏差の値(1.136)の範囲に含まれない、列302内のすべてのベースラインエラー1の値を除外する。行311に示されるトリミングされたベースラインエラー1の平均値、及び行312に示されるトリミングされたベースラインエラー1の標準偏差の値は、トリミング後に列302に残った値から計算される。同様のトリミング計算をベースライン範囲1及びベースライン比1の値について行う。行313の最初の3つの要素として示される、得られたベースラインエラー1の管理限界値、ベースライン範囲1の管理限界値、及びベースライン比1(baseline range1)の管理限界値は、トリミングされた平均+3×トリミングされた標準偏差として計算される。
【0047】
次に列302のベースラインエラー1の各データの値に100を掛け、ベースライン1管理限界値(行313の最初の要素)で除算することによって列303に示されるような正規化されたベースラインエラー1が得られる。同様にして、これらの計算を、列304に示されるベースライン範囲1のデータ値、及び列306に示されるベースライン比1のデータ値について繰り返すと、正規化されたベースライン範囲1の値の列305及び正規化されたベースライン比1の値の列307が得られる。次に、列301の分析装置と関連付けられた列308のベースライン合成1の値を、列303の正規化されたベースラインエラー1、列305の正規化されたベースライン範囲1、及び列307の正規化されたベースライン比1の平均値として計算する。次いで列308のベースライン合成1の平均及び標準偏差を計算し、それぞれ行309及び行310の4番目の要素として示す。ベースライン合成1の平均±3×ベースライン合成1の標準偏差の範囲に含まれない列308の要素はトリミングによって除外する。この後、列308の行311の第4の要素である、トリミングされたベースライン合成1の平均を、トリミング後に列308に残ったベースライン合成1の値を用いて計算する。更に、列308の行312の第4の要素である、トリミングされたベースライン合成1の標準偏差を、トリミング後に列308に残ったベースライン合成1の値を用いて計算する。次に、計算される第1の統計値である、トリミングされたベースライン合成1の管理限界値を、トリミングされたベースライン合成1の平均値+3×トリミングされたベースライン1の標準偏差として計算し、その結果を列308の行313の第4の要素として示す。
【0048】
図7は、複数行のデータとして表示された、647台の分析装置からの毎日の作動データレポートのデータセットアップを含む。列701は、データが測定された日付を示す。列702、704及び706は、作動エラー1、作動範囲1、及び作動比1をそれぞれ示す。列703、705及び707はそれぞれ、列702、704及び706に100を掛けてからトリミングされたベースラインエラー1の平均値、トリミングされたベースライン範囲1の平均値、トリミングされたベースライン比の平均値で除算することによってそれぞれ得られる作動エラー1、作動範囲1、及び作動比1のそれぞれの計算された正規化値である。列708に、列703、705及び707の値の平均をとることによって得られた第2の計算された統計値である作動合成値1の値を格納する。
【0049】
図8は、647台の診断臨床分析装置の管理図を含み、列708の作動合成1のそれぞれの値がドット802のようにプロットされている。線801は、トリミングされたベースライン合成1の管理限界値(74.332)を表す。毎日の作動合成1の値は管理限界値の近くから始まり、3日間の間これを超え、その後、管理限界値よりも下に低下している点に留意されたい。これは、診断臨床分析装置による差し迫った分析故障の最初の兆候である。更に数日後、作動合成1の値は3日間の内の2日間、再び管理限界値を超えている。操作上の問題の外面的な兆候はまだ認められなかったが、サービステクニシャンが派遣され、慎重な分析の後、電位計が徐々に故障しつつあることが分かった。電位計は9月28日に交換した。この後、この試験データの期間では、作動合成1の値は管理限界値を下回った。
【0050】
実施例2−267台の分析装置
この実施例では、アッセイ測定装置として試料を通った吸光度を測定するための光度計を使用した湿式化学法であるMicroTip(商標)診断臨床分析装置における差し迫った分析故障の検出を扱う。2008年11月13日に、758台の診断臨床分析装置の数段から1日間にわたって4つの特定の変量についてのデータを得た。第1の変量は、1時間毎に測定したベースラインインキュベータ2の値として定義される、インキュベータ温度における誤差の標準偏差である。第2の変量は、1時間毎に測定したベースライン試薬2の値として定義される、MicroTip(商標)試薬供給温度における誤差の標準偏差である。第3の変量は、1時間毎に測定したベースライン周囲2の値として定義される、周囲温度の標準偏差である。更に、第4の変量は、コード2の値として定義される、二次的計量及び3つの読み取りデルタチェックコードを合成したものの条件コード率(%)である。
【0051】
次いで、この実施例におけるトリミングされたベースライン合成2の管理図の管理限界値を、実施例1においてトリミングされたベースライン合成1の管理図の管理限界値を計算するために用いたのと同じ様式により計算する。図11にそのデータ構造を示す。図中、列1101はベースラインデータを与える分析装置を示し、列1102、1104、1106及び1108はそれぞれ、ベースラインインキュベータ2、ベースライン試薬2、ベースライン周囲2、及びベースラインコード2の値である。ベースラインインキュベータ2、ベースライン試薬2、ベースライン周囲2、及びベースラインコード2の入力値の正規化された値を、列1103、1105、1107及び1109にそれぞれ示す。行1111及び1112にはそれぞれ、列1102、1104、1106及び1108の平均及び標準偏差をそれぞれ格納する。行1113及び1114にはそれぞれ、列1103、1105、1107及び1109のトリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差をそれぞれ格納する。列1110の行1115の要素5は、計算された第1の統計値(具体的には89.603)であるトリミングされたベースライン合成2の管理図の管理限界値である。
【0052】
図12は、複数行のデータとして表示された、267台の分析装置からの毎日の作動データレポートのデータセットアップを含む。列1201は、データが測定された日付を示す。列1202、1204、1206及び1208にはそれぞれ、作動インキュベータ2、作動試薬2、作動周囲2、及び作動コード2の報告された毎日の値を格納する。列1203、1205、1207及び1209はそれぞれ、実施例1の作動値の値と同じ様式で得られた作動インキュベータ値2、作動試薬値2、作動周囲値2、及び作動コード値2の4つの値の正規化された値である。列カラム1210には、計算された第2の統計値である毎日の作動合成2の値を格納する。
【0053】
図13は、267台の診断臨床分析装置の管理図を含み、列1210の作動合成2のそれぞれの値がドット1302としてプロットされている。線1301は、トリミングされたベースライン合成2の管理図の管理限界値(89.603)を表している。毎日の作動合成2の値は、7日間は低い値で始まり、その後、急に高くなって管理限界値を3日間超えていることに留意されたい。更に8日間、低い値に戻った後、作動合成2の値は3日間の内、2日間、再び管理限界値を超えている。上記の事象はどちらも、差し迫った分析故障に関する警告につながるものである。この後、この試験データの期間では、毎日の作動合成2の値は管理限界値を下回った。
【0054】
実施例3−406台の分析装置
この実施例では、アッセイ測定装置として試料を通った吸光度を測定するための光度計を使用した湿式化学法であるMicroTip(商標)診断臨床分析装置における差し迫った分析故障の検出を扱う。2008年11月13日に得られた実施例2のベースラインデータを用いて、図14に示されるように、406台の分析装置についての作動データを2008年10月24日から2008年12月2日まで毎日得た。
【0055】
列1401は、データが測定された日付を示す。列1402、1404、1406、及び1408にはそれぞれ、作動インキュベータ3、作動試薬3、作動周囲3、及び作動コード3の報告された毎日の値を格納する。列1403、1405、1407及び1409はそれぞれ、実施例1の作動変量の値と同じ様式で得られた作動インキュベータ3、作動試薬3、作動周囲3、及び作動コード3の4つの値の正規化された値である。カラム1410には、計算された第2の統計値である毎日の作動合成値3の値を格納する。
【0056】
図15は、406台の診断臨床分析装置の管理図を含み、列1410の作動合成3のそれぞれの値がドット1502としてプロットされている。線1501は、トリミングされたベースライン合成3の管理図の管理限界値(89.603)を表している。毎日の作動合成3の値は多くの日数にわたる低い値で始まり、その後、2008年11月20日に急に高くなって3日間の内、2日間、管理限界値を超えている。更に2日間、低い値に戻った後、作動合成3の値は3日間の内、2日間、再び管理図の管理限界値を超えている。上記の事象はどちらも、差し迫った分析故障に関する警告につながるものである。この後、この試験データの期間では、毎日の作動合成3の値は管理図の管理限界値を下回った。
【0057】
実施例4−差し迫った故障の検出によってフラグ付けされる検定精度
この実施例では、差し迫った故障をより頻繁にフラグ付けするMicroTip(商標)診断臨床分析装置によって生成された結果では不正確度がより高いことを実証する。差し迫った故障の検出は、故障の修理をより迅速とするばかりでなく、完全とは言えない検定の性能を有する確率が最も高い分析装置をフラグ付けすることによって検定におけるより高い性能を与えることを可能にする。そうでない場合、単独で調べられる検定の結果はその検定について設定された公式の許容誤差を満たすもの思われることが多いことからこのような改良は行うことが困難である。検定の結果における分散が高い不正確度を反映していることを検出することにより、分散を低減し、その結果、検定の結果の信頼性を高めるような手段を講じることが可能である。
【0058】
高い不正確度は、最も頻繁に警告を誘発した分析装置を特定することによって実証した。この目的のため、741台のネットワーク化された臨床分析装置を用いて2008年の12月10日から12月12日までベースラインデータを収集した。各分析装置について8つの変量を追跡した。すなわち、(i)スライドインキュベータドラッグ(Slide Inc Drag)、(ii)反射分散(Refl.Var.)、(iii)周囲分散(Ambient Var.)、(iv)スライドインキュベータ温度分散(Slide Inc.Temp.Var.)、(v)ランプ電流(Lamp Current)、(vi)コード/使用−システムよって、計量故障が疑われる装置を検出する−処理されたスライドの数に対する試料計量コード率(%)(コード/使用)、(vii)Δ DR(CM)特定の閾値よりも大きい差を有する事象の数をカウントする、9秒間離れたCM検定の2つの読み取り値間の差(Δ DR(CM))、及び(viii)Δ DR(比率)(Δ DR(比率))、2つの点を見て所定の濃度レベルよりも低いアッセイを特定して回帰線よりも低いノイズを検出する。
【0059】
ベースラインデータは、図16に表されるように処理することにより、上記の変量のそれぞれについて平均及び標準偏差を計算した後、トリミングによって平均から標準偏差3つ分よりも離れたエントリーを切り落とすことによってこうした値を除外した。残った変量のエントリーを処理して8つの変量のそれぞれについてトリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差を計算した。トリミングされた変量の平均と3倍の標準偏差との合計を用いて上記に述べたように変量の値を正規化した。このような実施方法の選択は、本発明の範囲に対する限定を目的としたものではなく、こうした選択が特許請求の範囲において明確に示されないかぎりは、本発明の範囲に対する限定として理解されるべきではない。トリミングされた変量の平均と標準偏差×3との合計である正規化係数を変量に対する閾値として用いることによって作動データにおける異常な変化をフラグ付けし、トラブルシューティング及び診断臨床分析装置へのサービスの助けとする。このため、このような閾値をベースラインデータからの8つの監視される変量のそれぞれに対して計算した。変量のすべてについて正規化された値を合成してベースライン合成の管理図の管理限界値を計算し、これを用いて差し迫った故障をフラグ付けした。この実施例では、ある分析装置がベースライン合成の管理図の管理限界値を超えた場合にその分析装置を差し迫った故障についてフラグ付けした。このような実施方法の選択は、本発明の範囲に対する限定を目的としたものではなく、こうした選択が特許請求の範囲において明確に示されないかぎりは、本発明の範囲に対する限定として理解されるべきではない。8つの監視される変量のそれぞれについての閾値及びベースライン合成の管理図の管理限界値(いずれもベースラインデータから導かれる)を表1に示す。これらの閾値を更に用いて変量のそれぞれを続いて正規化することによってベースライン合成の管理図の管理限界値を計算したところ、その値は104.79であり(この値を用いて8つの変量すべてを同時に評価することで差し迫った故障を検出する)、個々の変量を見ることにより必要とされるサービス又は修正の種類に対するより詳細な調査を始める助けとした。
【表1】
【0060】
作動データを用い、選択された比色分析検定について、2009年の11月〜12月の間に最も高い頻度で警告を誘発した12台の診断臨床分析システムが特定されたこれらを、既知の品質管理用(QC)試薬に対する検定性能を比較することによって最も低い頻度で警告を誘発した12台の診断臨床分析システムと比較した。こうした試薬は、同様の分散について同程度の読み取り値を与えるものであることが理想的である。両方の母集団(最も高い頻度で警告を誘発した12台の診断臨床分析システム及び最も低い頻度で警告を誘発した12台の診断臨床分析システム)に対して統合標準偏差(pooled standard deviation)を行った。代わりに、警告を誘発する診断臨床分析システムは、高い不正確度を示すことが判明した(より悪い検定性能)。したがって、警告を誘発する診断臨床分析システムも高い不正確度を示す。表2のカルシウム(Ca)検定のデータ例は、5台の「不良」診断臨床分析装置、そのそれぞれにおいて品質管理用試薬を測定した回数、平均、標準偏差、及び変動係数、並びにそれに続く5台の「良」診断臨床分析装置の同様の数値を示す。
【表2】
【0061】
鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)などの異なる検定について同様のデータを収集した。
【0062】
分析装置は同様のQCに基づいて選択した。顧客は様々なQC製造業者からのQC流体を使用することから、複数の検定のQC試薬に対して同様な平均を有する(同じ製造業者であることを示す)分析装置を特定した。「差し迫った故障」なる用語が、異なる検定において同様の悪い性能を必要としない点を認識することは有用である。分析装置1でのALB(アルブミン)検定では分析装置2と同じALB用のQC試薬を使用することができるが、分析装置1はCa検定においては異なるQC流体を使用してもよく、したがって分析装置2とは異なってもよい。したがって、少なくとも5台(12台の内)の分析装置が、各検定についてQCを行った場合に同様の平均(製造業者又は同等の性能)を有するものとして特定された。その結果、5台の「不良」又は5台の「良」として特定された分析装置が、すべての検定において同じわけではなかった。警告を誘発する頻度に基づけば、Fe検定において最も悪い分析装置が、Mg検定において最も悪い分析装置とはならない場合がある。
【0063】
実施例5−差し迫った故障によって影響される検定の良品率
この実施例では、実施例4において述べた分析装置及びデータを用いる。これらの分析装置において調べた別の評価基準は、一定期間内に分析装置で行われたすべての検定の内、合格した検定の数を割合として示す初回検査時の良品率(First Time Yield(FTY))である。
【0064】
QC試薬によって測定された分散とは異なり、FTY基準は診断臨床分析装置上での実際の検定性能を調べるものである。FTYの低い値は多くの検定の結果が検定故障検出システム及び手順によって拒絶されていることを示し−このことは、特定の検定ではなくてシステムの差し迫った故障を検出することとは対照的に、これは検定を繰り返すことをしばしば必要としスループットを低下させる。一般的に、診断臨床分析装置では90%よりも高いFTY値、典型的には94%よりも高いFTY値が予想される。FTYを、5台の「良」システム(FTYが最も高い)及び5台の「不良」システム(FTYが最も低い)について更に比較したところ、「不良」システムの方がFTYは低かった。
【0065】
下記表3のデータ例は、5台の「不良」診断臨床分析装置の識別番号、そのそれぞれで行った検定の回数、それぞれの初回検査時の良品率、及びそれに続く「良」診断臨床分析装置の同様の数値を示す。
【表3】
【0066】
直ちに理解されるように、「不良」(高頻度の警告)分析装置ではFTYの低下が認められる。したがって、差し迫った故障を修正することがFTYを高めるために望ましい。
【0067】
実施例6−高い平均警告値によって影響される検定の良品率
この実施例では、実施例4において述べた分析装置及びデータを用いる。作動データを用いて、選択された比色分析検定について、高い平均警告値(警告を発生するためにベースライン合成の管理図の管理限界値と比較される)を示した10台の診断臨床分析システムを特定し、低い平均警告値を有した12台の診断臨床分析システムと比較した。この解析では、既知の品質管理(QC)試薬で検定性能を比較する際に、警告を誘発する分析装置の警告値はカウントしなかった(換言すれば、誘発値を無視した)。警告を誘発するシステムは、極めて大きく、平均値を人為的に高める誘発値を少数有する可能性がある。この方法では、警告が誘発される際の警告値を無視することによって高い平均値を有するシステムを特定した。これは実施例4とよく似ているが、高い平均警告値を有する幾つかのシステムを含み、高い警告値のすべてについて警告を誘発するわけではない。
【0068】
上記に述べたように、QC試薬は同様の分散について同程度の読み取り値を与えるものであることが理想的である。統合標準偏差を両方の集団に対して行ったところ、高い平均警告値を有するシステムが、低い平均警告値を有するシステムと比較して高い不正確度を示すことが示された。初回検査時の良品率のデータを、それ以外は実施例5における分析と同様の様式で5台の「良」及び5台の「不良」システムについても比較した。「不良」システムはより低いFTYを有することが分かった。したがって、高い平均警告値を有する診断臨床分析システムもまた高い不正確度を示す。
【0069】
実施例7−単一の分析装置の警告値レベルは検定の不正確度を反映する
この実施例においても、実施例4において述べたものと同様の分析装置を用いる。QC試薬に基づくデータを単一のシステムでのすべてのCM検定について評価した。システムが警告限界値を超えている期間における分析装置の性能を、システムが警告限界値を超えていない期間における分析装置の性能と比較した。このような比較は、同様の環境、操作者のプロトコル及び試薬を確保し、差し迫った故障の検出の有用性の評価を可能とする。この方法は、検定の結果(すなわちQCの結果)における性能の差を測定するための尺度を与えるものである。
【0070】
各化学検査/QC流体の組み合わせの信頼水準95%でのF検定は、調べられた分析装置が「不良」である場合に、28のデータセットの化学検査の内、27(96.4%)について「良」である場合の分析装置と比較して、化学検査1つ当たり2つのQCレベルの少なくとも一方について低い化学検査の不正確度を示すことを判定した。これらを表4に「偽」レベルによって示し、分散が「良」分析装置について「不良」分析装置よりも大きい場合を太字で示した。より詳細には、1つを除いたすべての化学検査において、QC流体の少なくとも1つが、分析装置が「良」である場合よりも分析装置が「不良」である場合により大きいQCの分散を有した。このことは、不正確度の指標として2つのQCレベルを用いることにより、「不良」フェーズにある場合の分析装置が、「良」である場合の分析装置と比較して低い化学検査の性能を示す傾向を有することを示している。
【0071】
フィールドエンジニア又はホットラインが、検定予測警告情報の使用によってより迅速にサポートを行ううえで本開示によってどのように支援されるかを調べることは有用である。ベースライン合成の管理図の管理限界値に常に近い分析装置は、事前に修理を行うために選択するか、あるいは、検定予測警告に関連した情報を、顧客が検定性能に関する問題について電話する際に応答モードで使用することができる。1以上の基礎変量が異常であることを示す、合成警告値が閾値を上回る場合には、原因を特定するための好ましいプロセスの1つは、個々の変量を見ることである。例えば実施例4では、警告値(ベースライン合成の管理図の管理限界値と比較される)を構成する8つの個別の変量がある。これらの変量はそれぞれが閾値を有し、好ましい実施形態では、データをトリミングし、変量の値を正規化するためにこの閾値を用いる。閾値を上回っていることは、変量が異常なサブシステム又は性能を表していることを示す。監視される変量の1つだけが異常である場合、フィールドエンジニアは診断臨床分析装置のこの部分に集中することができる。これとは極めて対照的に、現在の検定性能の問題は、一般的に、主たる原因となっているサブシステムを特定するためだけでも地域の専門家による複数回の訪問及び支援を必要とする。したがって、差し迫った警告が可能であることによって、顧客は性能の低下した状態が解消されるまで数日又は数週間にわたって低下した性能に耐えることから救われる。こうした状況では顧客は、1つのシステムで低い性能(顧客の使用する管理プロセスに従って)を有する検定を行うことを止めることが多く、問題が解消されるまでこれらの検定物をその研究所の分析装置に、又は必要な場合には異なる病院に移動させることになる。
【0072】
図17は、実施例4からのデータ及び閾値に基づいた例示的なスクリーンショットを示す。この模式図は、異なる監視変量、それぞれの閾値、及び異なる時点における値を示している。個々の閾値を超えた場合(差し迫った故障について警告が誘発されるとは限らない)、変量はフラグ付けされる。フラグ付けをするためには、当業者には周知の、異なる色、点滅する値、及び他の方法を用いることができる。
【0073】
警告値と検定精度との間の相関が完全である可能性は低い点にも注意を要する。実施例4〜7は、警告値がコントロール精度に見られるように検定性能と相関し、より低い程度でFTYとも相関していることを示す。完全ではない相関が予想される理由は、検定管理のデータが、分析装置のハードウェア性能とは無関係な多くの因子によって影響されるためである。コントロール精度は、管理流体希釈誤差(多くの管理流体は再構成を必要とするため)、感知流体の取り扱い(蒸発、不適切な混合、使用前の不適切な流体の予熱)、及び化学的検定に内在する不正確性(このロット又はロットの部分で異常に高い)などの因子によって引き起こされる操作者エラーによって影響される。検定予測警告値が合成閾値よりも充分低い場合に顧客が検定性能について苦情を述べていることが分かれば、これによりフィールドエンジニア又はホットライン要員が、問題が分析装置によって引き起こされたものではないことをさらに確信できることから有用である。これにより、顧客プロトコルの慎重な見直しが求められるが、顧客が行っていることが、観察される不正確性の原因となっているということを顧客に納得させることが困難であることが多いために、これは容易なことではない。この検定のグループ分けの性能に影響する分析装置のハードウェアは予想の範囲内で良好に機能しているということを実証するデータを有していれば、顧客の手順及びプロセスを変更又は見直しの提案を受け入れるように顧客を納得させることが容易となるはずである。
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【0074】
本発明の方法及びプロセスに対して様々な改変及び変更を行い得ることは、当業者にとっては明白であろう。したがって、本発明は、このような改変物及び変更物を、それらが付属の「特許請求の範囲」及びその均等物の範囲に含まれるものとして、網羅するものとする。
【0075】
上記に引用したすべての刊行物の開示は、恰もそれぞれが参照によって個別に援用されているものと同様にして、その全容を参照によって本明細書に明示的に援用する。
【0076】
付録
エラーバジェットの例
図9は、既知の平均及び既知の分散を有する独立したランダム変量の特性をそれぞれが有する4つの入力信号を有する簡単な電子回路を示している。各信号の明示的特性値は以下のとおりである。
【表5】
【0077】
ここで、E()は期待値を表し、V()は分散を表す。回路図及び信号の数値特性の表層的な概説によって、出力信号の分散に対する入力信号の影響についての理解はほとんど得られないことは確かである。しかしながら、出力信号の分散に対する各入力信号の定量的影響を調べることが望ましい。この考え方は、ある入力信号の出力信号に対する影響が大きいほど、その信号のエラーバジェットは小さくなるはずであるというものである。出力信号に最も大きく影響するこれらの信号を特定することで、本出願との関連で監視するべき信号の候補のリストが更に与えられる。
【0078】
上記に示したような各信号の明示的特性値を考慮すれば、信号Aの特性値は、本明細書に参照によって援用するH.D.Brunk、An Introduction to Mathematical Statistics,2nd Edition,Blaisdell Publishing Company,1965及び本明細書に参照によって援用するAlexander McFarlane Mood、Franklin A.Graybill及びDuane C.Boes、Introduction to the Theory of Statistics,3rd Edition,McGraw−Hill,1974に見られるような独立したランダム変量の和及び積の期待値及び分散についての既知の関係を利用することで計算することができる。詳細には、
E(A)=E(W+X)=E(W)+E(X)=6.00
V(A)=V(W+X)=V(W)+V(X)=0.50
【0079】
次に、信号Bの特性値を以下のようにして決定することができる。
E(B)=E(A*Y)=E(A)*E(Y)=6.00
V(B)=V(A*Y)=E(A)2*V(Y)+E(Y)2*V(A)+V(A)*V(Y)=4.15
【0080】
更に、最後に信号Cの特性値を以下のようにして決定することができる。
E(C)=E(B+Z)=E(B)+E(Z)=8.00
V(C)=V(B+Z)=V(B)+V(Z)=4.65
【0081】
しかしながら、信号A、B及びCの明示的特性値が分かったからといって、そのことが、信号W、X、Y及びZの入力の平均及び分散に対する信号Cの分散の感受性に関して何も示すわけではない。
【0082】
この感度情報を得るための1つの方法は、参照によって本明細書に援用する、Ted G.Eschenbach,Spiderplots versus Tornado Diagrams for Sensitivity Analysis,Interfaces,Volume 22,Number 6,November−December 1993,p.40〜46によって説明されるようなトルネード表又はトルネード図を使用することである。トルネード表又はトルネード図は、出力信号Cの分散の変化を監視しながら、入力信号の特性値を変化させようとする値の範囲を特定することによって得られる。これを行うことによって図10に示されるようなトルネード表が得られる。
【0083】
明らかな点として、信号Yの分散は信号Cの分散に対して大差で最も大きな影響を有する。影響が小さくなる順に並べると、Wの期待値、Xの期待値、Yの期待値、Zの分散、Xの分散、及びWの分散となる。この特定の回路では、Yの分散の小さな変動も、信号Cの分散に大きな影響を及ぼす。
【0084】
図10には、トルネード表におけるYの分散の大きな影響をグラフによって示す、情報のトルネード図も含まれている。
【0085】
〔実施の態様〕
(1) ネットワーク化された診断臨床分析装置における差し迫った故障を検出するための方法であって、
複数の診断臨床分析装置において複数の変量を監視する工程と、
当該複数の変量の値からの異常値をスクリーニングして除外する工程と、
第1の変量の当該これらのスクリーニングされた値に基づいて当該複数の変量から当該第1の変量の閾値を導出する工程と、
合成閾値を計算するために当該複数の変量から選択された、当該第1の変量を含む変量の値を正規化する工程と、
これらの正規化された変量の値を用いて当該合成閾値を生成する工程と、
当該ネットワーク化された診断臨床分析装置から作動データを収集する工程と、
当該診断臨床分析装置が当該合成閾値を超えた場合に警告を発生する工程と、を含む方法。
(2) 第1の変量の閾値が当該第1の変量を正規化するためにも用いられる、実施態様1に記載の方法。
(3) 第1の変量の閾値が、第1のトラブルシューティング活動に相当する当該第1の変量を特定するためにも用いられる、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記作動データを用いて、前記合成閾値との比較用の警告値が計算される、実施態様1に記載の方法。
(5) ネットワーク化された診断臨床分析装置の差し迫った分析故障を検出するための方法であって、
第1の特定の期間にわたって、複数のネットワーク化された診断臨床分析装置から商業運転の間にベースラインデータを収集する工程と、
当該ベースラインデータを第1の統計値に変換する工程と、
第2の特定の期間にわたって、特定のネットワーク化された診断臨床分析装置から商業運転の間に一連の作動データを収集する工程と、
当該一連の作動データを一連の第2の統計値に変換する工程と、
当該第2の統計値が当該第1の統計値を所定の様式で所定の量だけ超えた場合に、遠隔監視センターに当該特定の診断臨床分析装置における差し迫った診断臨床分析装置の分析故障を通知する工程と、を含む方法。
(6) 前記ネットワーク化された診断臨床分析装置が、薄膜スライド、キュベット、ビード及びチューブフォーマット、又はマイクロウェルを用いる商業的検定を行う、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記ネットワーク化された診断臨床分析装置が、インターネット、イントラネット、無線ローカルエリアネットワーク、無線メトロポリタンネットワーク、広域コンピュータネットワーク、及び汎欧州ディジタル移動電話方式ネットワークからなる群から選択されるネットワークを用いて接続される、実施態様5に記載の方法。
(8) 前記第1の期間が24時間であり、前記第2の期間が24時間である、実施態様5に記載の方法。
(9) 前記所定の量が前記第1の統計値の10%であり、前記所定の様式が3つの連続した期間の中の2つである、実施態様5に記載の方法。
(10) 差し迫った分析故障の検出に対応して、ネットワーク化された診断臨床分析装置を点検修理するための方法であって、
前記差し迫った故障を検出するために用いられた監視変量を特定する工程と、
所定期間の間に当該監視変量から、それぞれの閾値を超える変量の集合を調査する工程と、ベースラインデータを第1の統計値に変換する工程と、
当該変量の集合の中の1つ又は2つ以上の要素をより良好に制御するためのいくつかの点検修理事項を提案する工程と、を含む方法。
【0086】
(11) 点検修理可能な故障に関する前記集合の前記1つ又は2つ以上の要素に対応するサブシステムを調査する工程を更に含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記集合の前記1つ又は2つ以上の要素が、点検修理後にそれぞれの閾値を超えないことを確認する工程を更に含む、実施態様10に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してネットワーク化された診断臨床分析装置における差し迫った分析故障の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、臨床検査室における標準的な備品である。人の手の多大な関与を必要としていた検定法は、現在では専ら、試料を分析装置に装填し、所望の試験を実施するように分析装置をプログラムし、その結果を待つことによって行われている。使用される分析装置及び方法は広範である。その一部の例としては、終点反応分析及び反応速度分析などの分光吸光度検定法(spectrophotometric absorbance assay)、濁度検定法(turbidimetric assays)、比濁検定法(nephelometric assays)、放射エネルギー減衰検定法(radiative energy attenuation assays)(本明細書に参照により援用する米国特許第4,496,293号及び同第4,743,561号に述べられるものなど)、イオン捕獲検定法、比色試験法、蛍光分析法、電気化学的検出システム、電位差検出システム、及び免疫測定法が挙げられる。これらの方法の一部又はすべてのものは、古典的な湿式化学法、イオン選択性電極(ISE)分析法、薄膜フォーマット乾式化学法、ビード及びチューブフォーマット又はマイクロ滴定プレート、及び磁性粒子の使用を用いて実行できる。米国特許第5,885,530号は、ビード及びチューブフォーマットでの免疫測定を行うための典型的な自動分析装置の動作を理解するために有用な記載を提供していて、同特許は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
診断臨床分析装置はますます複雑化しつつある電気機械装置であることは言うまでもない。独立型の乾式化学システム及び独立型の湿式化学システム以外に、両タイプの分析を含む統合型装置も商業的に使用されている。これらのいわゆる組合せ型臨床分析装置においては、例えば複数の乾式化学システム及び湿式化学システムを1個の格納ハウジング内に設けることができる。あるいは、複数の湿式化学システムを1個の格納ハウジング内に設けるか、又は複数の乾式化学システムを1個の格納ハウジング内に設けることもできる。更に、例えば湿式化学システム又は乾式化学システムのような同様のシステムを、そうすることが作動上有利であることが証明されている場合には、1つのシステムが別のシステムのリソースを使用できるように統合することもできる。
【0004】
上記の化学システムのそれぞれは、その動作の観点から独特である。例えば、公知の乾式化学システムは一般的に試料供給部、多数の乾式スライド要素を有する試薬供給部、計量/輸送機構、及び複数の試験読み取りステーションを有するインキュベータを備えている。所定量の試料を、輸送レールに沿って可動式計量トラックによって運搬される吻状要素又はプローブを使用して計量先端部内に吸引する。次に先端部から所定量の試料をインキュベータ内に装填された乾式スライド要素上に計量しながら供給(分注)する。スライド要素をインキュベートし、検体の存在又は濃度を検出するために、光学的読み取り値又は別の読み取り値などの測定値を得る。留意すべき点として、乾式化学システムでは、入力される患者試料に試薬を添加する必要がない。
【0005】
これに対して、湿式化学システムでは、キュベットなどの反応容器を使用し、この中で所定量の患者試料、少なくとも1種類の試薬流体、及び/又は他の流体を混合して検定を行う。検定物を更にインキュベートし、分析物を検出するための試験を行う。湿式化学システムは更に、患者試料流体を試料供給部から反応容器に輸送するための計量機構を有している。
【0006】
異なる検定分析装置の種類及び検定方法が存在するにもかかわらず、多くの分析装置は幾つかの共通の特徴及び設計上の構成を共有している。言うまでもなく、試料に対して何らかの測定が行われる。これには、試料がその測定法に適した形態で置かれる必要がある。したがって、多くの分析装置において、試料操作システム又は機構が見られる。湿式化学装置では、試料は、一定分量を反応キュベット又は他の何らかの容器に分散できるように、通常、分析装置内のカップ又はチューブのような試料容器に入れられる。ポンプ、弁、パイプ及び管路などの液体輸送路のような適切な流体ハンドリング装置を使用し、圧力又は真空によって駆動されるプローブ又は吻状要素が、試料容器から反応容器へと所定量の試料を計量及び移送するために用いられることが多い。特に試料中に比較的大量の検体が予想又は見出される場合には、この試料プローブ若しくは吻状要素、又は異なるプローブ若しくは吻状要素によって反応容器に希釈剤を供給する必要がある場合も多い。非使い捨て型の計量プローブを洗浄するためには洗浄液又は洗浄処理が一般的に必要とされる。この場合にも、洗浄液及び希釈剤を正確に計量して供給するために流体ハンドリング装置が必要とされる。
【0007】
試料の調製及び供給以外に、試料に対して行われる測定値を明示する動作では、蛍光又は光の吸光度などの何らかの識別可能な事象を生ずるために試薬、基質、又は試料と結合する他の物質の分注が必要とされることが多い。検出可能な事象を達成するためにしばしば複数の異なる物質が試料と混合される。これは、複数の試薬及び洗浄工程が必要とされることが多い免疫検定の場合に特に当てはまる。試薬操作システム又は機構によってこれは実現される。一般的に、これらの計量システムはキャリーオーバーを防止するために洗浄工程を必要とする。この場合もやはり、流体ハンドリング装置はこれらの操作の中心的な構成である。
【0008】
他の共通システム要素としては、何らかの刺激源を、刺激を検出するための何らかの機構とともに含む測定モジュールがある。こうしたスキームとしては、例えば、単色光源及び熱量計、反射率計、旋光計、及び照度計が挙げられる。最新の自動分析装置は、分析装置の動作を監視し、生成されたデータを、局所的に又はネットワーク若しくはインターネットを介して接続された遠隔監視センターに報告するための高度なデータ処理システムを更に有している。試薬冷却システム、インキュベータ、並びに試料及び試薬搬送システムなどの多くのサブシステムも、既に述べた主システムのそれぞれにしばしば見られる。
【0009】
本明細書において使用される用語としての分析故障とは、診断臨床分析装置の1以上の構成要素又はモジュールが故障しはじめる際に発生するものである。このような故障は、初期製造時の欠陥、又は長期の損耗及び劣化によって生じうる。例えば多くの種類の機械的故障があり、これには、過負荷、衝撃、疲労、クリープ、破裂、応力緩和、応力腐食亀裂、腐食疲労などが含まれる。これらの単一の構成要素の故障は、信用されうるが、許容しえない程度に不正確な検定結果に結びつく。これらの不正確性すなわち正確性の喪失は、機械的ノイズ又は更には非効率なソフトウェアのプログラミングのプロトコルといった多くの因子によって更に増幅されうる。これらの多くは比較的容易に解決できるものである。しかしながら、μg/dL、又は更にはng/dLの範囲でしばしば測定される検体濃度では、試料及び試薬操作システム、並びに試料及び試薬操作システムに影響する支援システム及びサブシステムに特別の注意を払わなければならない。試料及び試薬操作システムは、小量の液体の正確かつ精密な輸送を必要とするため、試料及び試薬プローブに見られるような極めて薄い管路及び容器が一般的に組み込まれている。多くの機器は、ハードウェア/ソフトウェアシステムの多数の要素の正常な動作にそれぞれが依存する複数の固有の流体供給システムの同時的かつ統合的な動作を必要とする。これらのハードウェア/ソフトウェアシステムの一部の要素は、低い確率レベルで生じる故障モードを有する。このようなプローブにおける欠陥又は閉塞は、極めて不規則かつ不正確な結果を生じうるものであり、したがって分析故障の原因となるものである。同様に、不完全な洗浄プロトコルは、多数の試料が関与する多数の検定結果における誤った読み取り値を与えるキャリーオーバーエラーにつながりうる。これは、供給容器(例えばプローブ又は吻状要素)への分注流体の付着によって引き起こされる。また、容器が試薬又は希釈剤と接触する場合には、過剰に希釈され、したがって低めに報告された結果にもつながりうる。分注流体への空気又は他の流体の飛沫同伴により、分注された流体に帰する体積の一部は実際には飛沫同伴された液体であることから、分注流体の体積が仕様よりも低くなる可能性がある。上記に述べたような問題が臨床分析装置によって明確に特定されうる場合の標準的な作動手順は、検出されたエラーの種類がその数値によって規定されるエラーコードを発行すること、及びアッセイの数値結果を保留して、特定された問題を解決するか、あるいは最低でも要求された検定のやり直しを要求することである。上記に述べた問題から生じる分析故障は、参照によって本明細書に援用する米国特許出願公開第2005/0196867号において解決策が提案されている。更に、上記に述べた問題の具体的な解決を図った、統計的プロセス制御の一形態である診断臨床分析装置を監視するために開発された確立した方法があり、参照により本明細書に援用するJames O.Westgard、Basic QC Practices:Training in Statistical Quality Control for Healthcare Laboratories,2nd edition,AACC Press,2002、並びに参照により本明細書に援用するCarl A.Burtis、Edward R.Ashwood及びDavid E.Bruns、Tietz Fundamentals of Clinical Chemistry,6th edition,Saunders,2007に詳細に述べられている。
【0010】
しかしながら、上記に述べたような個別の構成要素に関連した、又はモジュールに関連した問題以外に、分析故障の原因となりうるシステムに関連した一連の問題が存在する。システム関連の問題は、複数の構成要素及びサブシステムの時間の経過にともなう劣化によって生じ、検体測定値の変動度増大という形で現れる。システムに関連したこうした一連の問題の1つの特徴として、上記に述べた、米国特許出願公開第2005/0196867号において定義される問題と異なり、決定的なエラーを検出することはできず、その結果、エラーコードは発行されずかつ検定の数値結果は保留されない。マイクロチップ法及びマイクロウェル法において特に問題となるのは、周囲及びインキュベータの両方における熱安定性の問題である。複数の構成要素及びサブシステムが関与するため、1個の変量を監視することによって差し迫った分析故障を検出することは不可能であり、複数の変量を監視することが必要である。上記に参照することにより本明細書に援用したJames O.Westgard 及びCarl A.Burtis等に詳細に述べられるようにこれらの変量の測定値を用いて本明細書に述べるような差し迫った分析故障を検出することが可能であり、これを用いて分析装置の全体の動作を監視することも可能である。言うまでもなく、どの変量の集合を監視するべきかは極めて重要な問題である。商業的に使用されている多くの診断臨床分析装置では、分析装置の開発の設計段階において通常発生する分析装置のエラーバジェット解析によって最も簡単にこの問題に対する解答が得られる。エラーバジェットの計算は感度分析の特殊な一形態である。この計算によって、システムの精度に潜在的に影響するものと考えられる個別のエラー源又はエラー源の群による別々の影響が求められる。本質的には、エラーバジェットとは、これらのエラー源のカタログのようなものである。エラーバジェットは、複雑な電子システムの設計における標準的な装備品である。初期の1つの例として、参照によって本明細書に援用する、Arthur Gelb、Editor、Applied Optimal Estimation,The MIT Press,1974,p.260を参照されたい。診断臨床分析装置の動作に関連するすべての変量が容易に測定できるわけではないことから、どの変量を監視すべきかを特定する体系的なアプローチが求められている。こうしたアプローチの1つとしてトルネード表及びトルネード図がある。付録に、ごく簡略化された電子回路におけるトルネード分析の使用の一例を挙げた。特定の変量の集合を監視することの決定は最終的には工学的決定である。
【0011】
米国特許第5,844,808号、同第6,519,552号、同第6,892,317号、同第6,915,173号、同第7,050,936号、同第7,124,332号、及び同第7,237,023号は、故障を検出するための様々な方法及び装置について教示又は示唆を与えるものであるが、機器の充分な使用を可能としつつ故障を予測するには充分なものとはいえない。実際、あらゆる機器で将来のある時点において故障が予想される。予想される故障を体系的な様式で整理することについては、これらの文書に開示される具体的な方法又は装置によって教示も示唆もなされていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本出願は、ネットワーク化された診断臨床分析装置の差し迫った分析故障を、診断臨床分析装置が許容しえない正確さ及び精度で検定結果を生成する前に予測するための方法を提供する。本開示は、故障が既に発生していることを検出するためのものではなく、そのような判定は診断分析装置の他の機能及び回路によって行われるものだからである。更に、すべての故障が臨床診断分析装置によって生成される結果の信頼性に影響するわけではない。代わりに、本開示は、差し迫った故障を検出し、そのような故障を修正する助けとなることによって臨床診断分析装置の全体の性能を改善することに関係するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本出願の別の態様は、診断臨床分析装置の分析故障の前にネットワーク化された診断臨床分析装置に保守担当者を派遣するための方法に関する。
【0014】
診断臨床分析装置における差し迫った故障を予測するための好ましい一方法は、複数の診断臨床分析装置において複数の変量を監視する工程と、監視変量の値からの異常値をスクリーニングして除外する工程と、異常値を除外するためにスクリーニングされた監視変量の値に基づいて監視変量のそれぞれについて閾値(ベースライン管理図の管理限界値など)を導出する工程と、監視変量の値を正規化する工程と、監視変量の正規化された値を用いて合成閾値を生成する工程と、特定の診断臨床分析装置から監視変量についての作動データを収集する工程と、前記特定の診断臨床分析装置が合成閾値を超えた場合に警告を発生する工程と、を含む。
【0015】
ある変量の異常値とは、根底にある予想又は推定される分布に基づいて、3%以下、1%以下、0.1%以下、及び0.01%以下からなる集合から選択される比率で生じることが予想される値である。
【0016】
好ましい一実施形態では、監視変量を正規化するために特定の監視変量の閾値を更に用いる。このような実施方法の選択は、本発明の範囲に対する限定を目的としたものではなく、こうした選択が特許請求の範囲において明確に示されないかぎりは、本発明の範囲に対する限定として理解されるべきではない。別の実施形態では、監視変量に異なった正規化を行い得る。正規化によって、ベースライン合成値の管理限界値のような合成閾値が、重み付けされた基礎となる変量の値を適切に反映することが確実になる。正規化により、パラメータの値は数値的に桁が異なるような場合であってもパラメータを合成閾値の構成要素として使用することが可能となる。例として、正規化後に合成された周囲温度の標準偏差、計量条件コード率(%)、及び、ランプ電流の負の一次導関数は、それらの値を正規化する前であっても名目上桁が異なっている。
【0017】
好ましい一実施形態では、特定の診断臨床分析装置について監視される変量が、例えば1回、3つの連続した時点の内の2回、又は特定の時間間隔又は作動期間中に所定の回数といったように所定の様式で合成閾値を超える場合に、その特定の診断臨床分析装置について差し迫った故障の警告が発生される。更に、特に明確に示されないかぎり、差し迫った故障とは、検定結果が検体又は関連する試薬の製造業者によって指定された変動の境界内に充分に収まっていたとしても性能の変動頻度が高くなることを指す。このような実施方法の選択は、本発明の範囲に対する限定を目的としたものではなく、こうした選択が特許請求の範囲において明確に示されないかぎりは、本発明の範囲に対する限定として理解されるべきではない。
【0018】
本出願の更なる目的、特徴及び利点が、以下の好ましい実施形態を詳細に考慮することによって当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】統合された診断臨床分析装置及び汎用コンピュータネットワークを示す図。複数の独立して動作する診断臨床分析装置101、102、103、104及び105が、ネットワーク106に接続されている。ベースライン時間と呼ばれる特定の最初の時点107において、すべての診断臨床分析装置101、102、103、104及び105がデータを収集し、次いでデータを汎用コンピュータ112に転送する。未来の時点108、109、110及び111において、更なる作動データが収集され、汎用コンピュータ112に転送される。
【図2】ベースラインデータと、データポイント202によって示される、25日の連日期間で特定の診断臨床分析装置から汎用コンピュータ112に報告された作動データから計算された統計値の値とから導かれるロバストな統計的管理図の管理限界値201を示すアッセイ予測警告管理図を示す図。23、24、及び25日目では3つの統計値の内の2つが管理図の管理限界値を超えている点に注意されたい。
【図3】実施例1のベースラインデータを用いて管理図の管理限界値を計算するためのデータセットアップを示す図。列301は、862台の分析装置の集合における特定の診断臨床分析装置を示している。列302は、以後、ベースラインエラー1の値として知られる、分析装置による報告されたエラーコード率(%)を示す。列303は、以後、正規化ベースラインエラー1の値として知られる、分析装置による正規化されたエラーコード率(%)の値を示す。列304は、以後、ベースライン範囲1の値として知られる、分析装置による報告されたアナログ/ディジタル電圧カウントを示す。列305は、以後、正規化ベースライン範囲1の値として知られる、分析装置による正規化されたアナログ/ディジタル電圧カウントを示す。列306は、以後、ベースライン比1の値として知られる、分析装置による報告された3つの信号電圧の期待値に対する3つの検証数の平均値の比を示す。列307は、以後、正規化ベースライン比1の値として知られる、分析装置による3つの信号電圧の平均値に対する3つの検証数の平均値の正規化された比を示す。列308は、以後、ベースライン合成1の値として知られる、列303、305、及び307の3つの正規化された値の平均値である。行309はそれぞれ、列302、列304、列306、及び列308の値の平均である。行310はそれぞれ、列302、列304、列306、及び列308の値の標準偏差である。行311は、平均±3×標準偏差の範囲に含まれない値が除外された後に列302、列304、列306、及び列308にそれぞれ残った値の平均である。行311の平均値は、トリミングされた平均値を表す。行312は、平均±3×標準偏差の範囲に含まれない値が除外された後に列302、列304、列306、及び列308にそれぞれ残った値の標準偏差である。行312の標準偏差は、トリミングされた標準偏差を表す。行313は、それぞれ列302、列304、列306、及び列308について、行311のトリミングされた平均+3×行312のトリミングされた標準偏差からなる個々の管理図の管理限界値である。行313かつ列308の要素はベースライン合成1の値の管理図の管理限界値。
【図4】特定の時点において実施例1の862台の診断臨床分析装置の集団の調査から得られ報告されたエラーコード率(%)の解析から得られたヒストグラムを示す図。
【図5】特定の時点において実施例1の862台の診断臨床分析装置の集団の調査から得られ報告されたアナログ/ディジタルカウントの解析から得られたヒストグラムを示す図。
【図6】特定の時点において実施例1の862台の診断臨床分析装置の集団の調査から得られた、平均信号電圧に対する平均検証数の報告された比率の解析から得られたヒストグラムを示す図。
【図7】実施例1の作動データを用いて合成1の値を計算するためのデータセットアップを示す図。列701は、データが測定された日付を示す。列702はそれぞれ、以後、作動エラー1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による報告されたエラーコード率(%)を示す。列703はそれぞれ、以後、正規化作動エラー1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による正規化されたエラーコード率(%)の値を示す。列704はそれぞれ、以後、作動範囲1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による報告されたアナログ/ディジタル電圧カウントを示す。列705はそれぞれ、以後、正規化作動範囲1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による正規化されたアナログ/ディジタル電圧カウントを示す。列706はそれぞれ、以後、作動比1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による3つの信号電圧の平均値に対する3つの検証数の平均値の報告された比を示す。列707はそれぞれ、以後、正規化作動比1の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による3つの信号電圧の平均値に対する3つの検証数の平均値の正規化された比を示す。列708はそれぞれ、以後、作動合成1の値として知られる、それぞれの日付についての列703、705及び707の3つの正規化された値の平均値。
【図8】実施例1について作動合成1の毎日の値をプロットした管理図を示す図。グラフには、トリミングされたベースライン合成1の管理図の管理限界値(約74.332)を表す線801が示されている。ドット802は、作動合成1の毎日の値を表す。
【図9】W 901、X 902、Y 903、及びZ 904の4つの信号入力を有する簡単な電子回路を示す図。これら4つの信号は、独立ランダム変量の特性を有している。信号W 901とX 902とは加算器905において合成されて信号A 906を生じる。信号A 906は乗算器907において信号Y 903と合成されて信号B 908を生じる。信号B 908は加算器910において信号Z 904と合成されて信号C 909を生じる。
【図10】付録において考察するモデル回路における信号Cの出力分散に対する異なる入力変量の影響を示すトルネード図。表の値を図中に示す。
【図11】実施例2のベースラインデータを用いて管理図の管理限界値を計算するためのデータセットアップを示す図。列1101は、758台の分析装置の集団における特定の診断臨床分析装置を示している。列1102は、以後、ベースラインインキュベータ2の値として知られる、分析装置によるインキュベータ温度の誤差の標準偏差を示す。列1103は、以後、正規化ベースラインインキュベータ2の値として知られる、分析装置によるインキュベータ温度の正規化された標準偏差を示す。列1104は、以後、ベースライン試薬2の値として知られる、分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の誤差の標準偏差を示す。列1105は、以後、正規化ベースライン試薬2の値として知られる、分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の誤差の正規化された標準偏差を示す。列1106は、以後、ベースライン周囲2の値として知られる、分析装置による周囲温度の標準偏差を示す。列1107は、以後、正規化ベースライン周囲2の値として知られる、分析装置による周囲温度の正規化された標準偏差を示す。列1108は、以後、ベースラインコード2の値として知られる、分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの条件コード率(%)を示す。列1109は、以後、正規化ベースラインコード値2として知られる、分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの正規化された条件コード率(%)を示す。列1110は、以後、ベースライン合成2の値として知られる、列1103、1105、1107、及び1109の4つの正規化された値の平均値である。行1111はそれぞれ、列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110の値の平均である。行1112はそれぞれ、列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110の値の標準偏差である。行1113は、平均±3×標準偏差の範囲に含まれない値が除外された後に列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110にそれぞれ残った値の平均である。行1113の平均は、トリミングされた平均を表す。行1114は、平均±3×標準偏差の範囲に含まれない値が除外された後に列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110にそれぞれ残った値の標準偏差である。行1114の標準偏差は、トリミングされた標準偏差を表す。行1115は、それぞれ列1102、列1104、列1106、列1108、及び列1110について、行1113のトリミングされた平均+3×行1114のトリミングされた標準偏差からなる個々の管理限界値。
【図12】実施例2の作動データを用いて合成2の値を計算するためのデータセットアップを示す図。列1201は、データが測定された日付を示す。列1202はそれぞれ、以後、作動インキュベータ2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるインキュベータ温度の標準偏差を示す。列1203はそれぞれ、以後、正規化作動インキュベータ2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるインキュベータ温度の正規化された標準偏差を示す。列1204は、以後、作動試薬2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の標準偏差を示す。列1205は、以後、正規化作動試薬2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の正規化された標準偏差を示す。列1206はそれぞれ、以後、作動周囲2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による周囲温度の標準偏差を示す。列1207はそれぞれ、以後、正規化作動周囲2の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による周囲温度の正規化された標準偏差を示す。列1208は、以後、作動コード2の値として知られる、それぞれの日付について分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの条件コード率(%)を示す。列1209は、以後、正規化作動コード2の値として知られる、それぞれの日付について分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの正規化された条件コード率(%)を示す。列1210はそれぞれ、以後、作動合成2の値として知られる、それぞれの日付についての列1203、1205、1207及び1209の4つの正規化された値の平均値。
【図13】実施例2について作動合成2の毎日の値をプロットした管理図を示す図。このグラフでは、ベースライン合成2の管理図の管理限界値1301は約89.603であることが示されている。ドット1302は、作動合成2の毎日の値を表す。
【図14】実施例3の作動データを用いて合成3の値を計算するためのデータセットアップを示す図。列1401は、データが測定された日付を示す。列1402はそれぞれ、以後、作動インキュベータ3の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるインキュベータ温度の標準偏差を示す。列1403はそれぞれ、以後、正規化作動インキュベータ3の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置によるインキュベータ温度の正規化された標準偏差を示す。列1404は、以後、作動試薬3の値として知られる、分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の標準偏差を示す。列1405は、以後、正規化作動試薬3の値として知られる、分析装置によるMicroTip(商標)試薬供給温度の正規化された標準偏差を示す。列1406はそれぞれ、以後、作動周囲3の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による周囲温度の標準偏差を示す。列1407はそれぞれ、以後、正規化作動周囲3の値として知られる、それぞれの日付についての分析装置による周囲温度の正規化された標準偏差を示す。列1408は、以後、作動コード3の値として知られる、それぞれの日付について分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの条件コード率(%)を示す。列1409は、以後、正規化作動コード3の値として知られる、それぞれの日付について分析装置による二次的計量と3つの読み取りデルタチェックコードとを合成したものの正規化された条件コード率(%)を示す。列1410はそれぞれ、以後、作動合成3の値として知られる、それぞれの日付についての列1403、1405、1407及び1409の4つの正規化された値の平均値。
【図15】実施例3について作動合成3の値の毎日の値をプロットした管理図を示す図。このグラフでは、ベースライン合成3の管理図の管理限界値1501は約89.603であることが示されている。ドット1502は、作動合成3の毎日の値を表す。
【図16】ベースライン合成の管理図の管理限界値及び作動データ点を計算するために用いられるソフトウェアのフローチャート。処理は、開始楕円記号(1601)で開始された後、データが利用可能な分析装置の数が入力される(1602)。1つの分析装置のベースラインデータが読み取られた(1603)後、更なる分析装置のデータが引き続き入力されるべきかについて確認が行われる(1604)。Yesの場合、制御は1603のブロックに差し戻されるが、そうでない場合には、すべての分析装置の横断データ(クロスセクション)にわたって、各入力変量についてベースラインの平均及び標準偏差が計算される(1605)。ここで、平均から少なくとも標準偏差の3倍を加算又は減算した範囲内に含まれない値を有するすべてのデータは計算用データセットから除外され(1606)(この処理はトリミングとして知られる)、トリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差が各変量について計算される(1607)。次に、各変量についてベースライン管理図の管理限界値が計算され(1607A)、トリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差を用いてベースライン合成の管理図の管理限界値が計算される(1608)。恐らくは、ベースラインデータの収集から充分に経過したある時点において、特定の分析装置について特定の期間における作動データの入力が開始される(1609)。ブロック1610において、更なる期間のデータがあるか否かを判定するための確認が行われる。Yesの場合、制御は1609に差し戻されるが、そうでない場合には、各変量の入力値はその変量のベースライン管理図の管理限界値によって除算され、各変量は正規化される(1611)。次に、作動合成値が計算される(1612)。この後、これらの作動値はコンピュータメモリに記憶され(1613)、予め計算されたベースライン合成管理限界値と比較される(1614)。規定の計画対象期間にわたって特定の回数で管理限界値を超える場合には、遠隔監視センターに差し迫った分析装置の故障が通知され(1615)、そうでない場合には、制御がブロック1610に差し戻されて特定の分析装置からの別の期間の作動データの入力を待機する。
【図17】異なる時点における監視変量及びそれぞれの閾値についての情報の代表的表示図。影付きのセルは、それぞれの閾値を超える監視変量に注意を惹きつけて、分析装置のトラブルシューティング又は性能改善に役立つ。この表示により、疑わしいサブシステムに注意が向けられ、差し迫った故障のトラブルシューティングに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において検討する技法は、遠隔診断臨床分析装置が、許容しえない正確さ及び精度の検定結果を報告する見込みの原因となる故障寸前の(差し迫った分析故障)1つ以上の構成要素を有する可能性を、遠隔診断センターの管理者が評価することを可能にするものである。
【0021】
本明細書において検討する技法の効果は、実際の事象の前に差し迫った分析故障を検出し、分析装置を使用する商業体及びサービスプロバイダーの双方にとって都合のよい時点において遠隔配置された診断臨床分析装置にサービスする(差し迫った分析故障の原因を決定して回復させる)ことである。
【0022】
本発明の一般的理解のため、図面を参照する。図中、同様の要素は同様の参照番号を用いて示している。本発明を説明するに当たっては、以下の用語を説明文に使用している。
【0023】
数学的な意味合いで使用する「又は」なる用語は、本明細書においては、A又はBが真である、と言った場合に、(1)Aが真である、(2)Bが真である、又は(3)両方が真である、ことを指すように、数学上の「包含的OR」を意味する。
【0024】
「パラメータ」なる用語は、本明細書においては、あるプロセス又は母集団の所定の特性のことを指して言う。例えば、規定されたプロセス又は集団の確率密度関数に対して、母集団のパラメータである平均は、固定された値であるが恐らくは未知の値μを有する。
【0025】
「変量」なる用語は、本明細書においては、あるプロセス又は母集団の入力又は出力として変動するあるプロセス又は母集団の特性のことを指す。例えばインキュベータ温度のその所望の設定値からの観測される誤差が今+0.5℃であるとは、出力を表している。
【0026】
「統計値」なる用語は、本明細書においては、1つ以上のランダムな変量の関数のことを指す。ある母集団からの試料に基づく「統計値」を、母集団のパラメータの未知の値を推定するために用いることができる。
【0027】
「トリミングされた平均」なる用語は、本明細書においては、その統計値を計算するために用いられるデータが、著しく小さいか又は大きい度量のデータの値を除外するように解析及び再構築される場合の位置推定である統計値のことを指す。
【0028】
「ロバストな統計値」なる用語は、本明細書においては、異常値がある場合、又はより一般的には根底にあるパラメータ仮定がそれほど正しくない場合に古典的な統計学的方法よりも優れた性能が得られる統計値のことを指すものであり、トリミングされた平均はその簡単な一例である。
【0029】
「横断データ(クロスセクション)」なる用語は、本明細書においては、多数の異なる診断臨床分析装置にわたって、一定期間に生成されるデータ又は統計値のことを指す。
【0030】
「時系列」なる用語は、本明細書においては、特定の診断臨床分析装置において多数の期間に生成されるデータ又は統計値のことを指す。
【0031】
「期間」なる用語は、本明細書においては、データが蓄積され、個々の統計値が生成される時間の長さのことを指す。例えば、24時間にわたって蓄積され、所定の統計値を生成するために用いられるデータは、1日の「期間」に基づいた統計値を与えることになる。更に、60分間にわたって蓄積され、所定の統計値を生成するために用いられるデータは、1時間の「期間」に基づいた統計値を与えることになる。
【0032】
「対象期間」なる用語は、本明細書においては、特定の事象が考慮される時間の長さのことを指す。「対象期間」は多数の「期間」を含みうる。
【0033】
「ベースライン期間」なる用語は、本明細書においては、ネットワーク上の診断臨床分析装置の集団からのデータが収集される時間の長さのことを指す(例えばデータを毎日、24時間収集することができる)。
【0034】
「作動期間」なる用語は、本明細書においては、特定の診断臨床分析装置からのデータが収集される時間の長さのことを指す(例えば、データを24時間の作動期間にわたって1時間に1回収集することにより、24個の観測値又はデータ点を与える)。
【0035】
診断臨床分析装置の特定の設計に関連した変量は、監視のために、分析装置の全体のエラーバジェットに対する異常に高い寄与を特定する個々の変量の能力に基づいて選択される。無論、診断臨床分析装置はこれらの変量を測定可能でなければならない。これらの変量の内の幾つを監視するかについての決定は工学的な決定であり、使用される検定方法(すなわち、Ortho−Clinical Diagnostics(登録商標)分析装置における、MicroSlide(商標)、MicroTip(商標)、又はMicroWell)、及び診断臨床分析装置自体(すなわち、Vitros(登録商標)5,1 FS、Vitros(登録商標)ECiQ、Vitros(登録商標)350、Vitros(登録商標)DT60 II、Vitros(登録商標)3600、又はVitros(登録商標)5600)によって決まる。他の製造者については、本明細書において検討する同じ技法が技術的に同様の検定について機能する。付録において、正確さ又は精度に多大な影響を及ぼす変量を特定するために使用することが可能な、トルネード表及びトルネード図を使用した方法について述べる。特定の分析装置における特定の検定法の範囲内で、監視すべき異なる変量の集合を必要とする場合がある複数の測定様式を有することも可能である。
【0036】
図1を参照すると、乾式化学薄膜スライドを使用した診断臨床分析装置の解析の好ましい実施形態では、通常の商業的運転状態にある複数の診断臨床分析装置101、102、103、104及び105から、特定の第1の期間、通常は月曜日から金曜日までの週労働時間にわたってベースラインデータを収集する。この特定の第1の期間にわたったベースラインデータの蓄積により、診断臨床分析装置1台当たり1つのデータセットが得られ、データセットはネットワーク106上を送信され、データフロー107によって累積的に表される。汎用コンピュータ112が、ネットワーク106上の複数の診断臨床分析装置からこのベースラインデータを受信する。次いで複数の診断臨床分析装置からのベースラインデータは、汎用コンピュータ112によって統合され、以下の3つの変量、すなわち、(1)ベースラインエラーと呼ばれる、非ゼロ状態又はエラーコードを生じるマイクロスライドアッセイのパーセンテージ、(2)ベースライン範囲と呼ばれる、主電圧回路における変動の評価基準、及び(3)ベースライン比と呼ばれる、3つの信号電圧の平均値に対する3つの検証数の平均値の比、からなる特定の第1の期間にわたった多くのクロスセクション観測値を生成する。この情報を更に変換するため、3つの変量のそれぞれの平均及び標準偏差を計算し、平均±少なくとも標準偏差3つ分の範囲に含まれない個々の観測値を集合的データから除外する。この操作はトリミングとして知られる。トリミングされた平均は、データ異常値の影響を受けにくく、トリミングされたデータセットに利用可能なすべての情報が含まれている点でロバストな統計値の一例である。別の好ましい実施形態では、ロバストではないが不完全又は断片的情報に基づいた統計値を使用しうることは注目すべき点である。この後、3つの変量のそれぞれに対して、データセットに残った観測値に基づいて新たなトリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差を計算する。
【0037】
次いで、トリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差を用いて、3つの変量のそれぞれについてトリミングされた平均+少なくとも3×トリミングされた標準偏差からなるベースライン管理図の管理限界値を計算する。各変量に100を掛け、そのベースライン管理図の管理限界値でそれぞれ除算することによって、個々のベースラインエラー、ベースライン範囲、及びベースライン比の値を正規化する。正規化されたベースラインエラー、正規化されたベースライン範囲、及び正規化されたベースライン比を単一の評価基準にまとめるため、ベースライン合成値と呼ばれるこれら3つの正規化された値の平均を計算する。ベースライン管理図の管理限界値を生成するために用いたのと同じ計算工程を用いて、ベースライン合成値の平均及び標準偏差を計算する。次いで、ベースライン合成平均±少なくとも3×ベースライン合成標準偏差の範囲に含まれないベースライン合成値を除外し、トリミングされたベースライン合成平均及びトリミングされたベースライン合成標準偏差を計算する。次いで図2に示されるような、トリミングされたベースライン合成管理図の管理限界値201を、トリミングされたベースライン合成平均+少なくとも3×トリミングされたベースライン合成標準偏差として計算する。計算される第1の統計値であるトリミングされたベースライン合成管理図の管理限界値201は、遠隔診断臨床分析装置のベースラインデータから完全に導出されるロバストな統計値である。別の好ましい実施形態では、ロバストでないが不完全又は断片的情報に基づいた統計値を使用しうることは注目すべき点である。上記のベースライン計算の詳細なフローチャート及び以下の作動の計算を図16に示す。
【0038】
ベースライン統計値を用いて遠隔設置された遠隔臨床分析装置を個々に監視して、多くの試薬又はMicroSlides(商標)のような検出装置を交換する際の較正の妥当性、及びパラメータ値の調整の必要性に関連する分析装置の動作の変化を調べることもできることは注目すべき点である。遠隔監視センターに転送されたデータを用いて同じ又は代替的な統計値を計算し、要求に応じて、あるいは予め決められた間隔で遠隔サイトにダウンロードすることができる。この後、これらの統計値の数値を、シューハート(Shewhart)管理図、レビー・ジェニングス(Levey-Jennings)管理図、又はウェストガード(Westgard)ルールのベースライン値として用いることができる。こうした方法は、上記に参照によって援用したJames O.Westgard及びCarl A.Burtis等に述べられている。
【0039】
ベースラインデータの収集後、特定の連続した第2の期間にわたって特定の診断臨床分析装置について作動データを収集し、ネットワークデータフロー108、109、110及び111によって示されるように各期間の終わりにネットワーク113を通じて汎用コンピュータ112に送信する。このデータは、作動エラー、作動範囲、及び作動比についての多くの第2の期間の値からなる。特定の作動変量、すなわち、作動エラー、作動範囲、及び作動比に関連した一連の値について、各値は、100を掛け、予め計算したその変量の関連するベースライン管理図の管理限界値で除算することによって正規化する。汎用コンピュータ112は、これら3つの正規化された作動変量の平均値を計算して一連の第2の期間について作動合成値を得るようにプログラムされる。一連の第2の期間にわたって計算されたこれらの作動合成値の値は、観測値の時系列を表す。計算された第2の統計値である作動合成値は、その大きさが、特定の診断臨床分析装置のエラーバジェットの全体的な変動を示す統計値である。別の好ましい実施形態では、ロバストでないが不完全又は断片的情報に基づいた統計値を使用しうることは注目すべき点である。汎用コンピュータ112は、図2にプロットされる値202によって示されるように、これらの値を記憶及びトラッキングし、作動合成の値が、所定の対象期間にわたって所定の数の第2の期間についてベースラインデータから求められるトリミングされたベースライン合成の管理図の管理限界値201よりも大きい場合、遠隔監視センターに、その特定の分析装置の差し迫った分析故障があることを通知する。上記のベースライン及び作動計算の詳細なフローチャートを図16に示す。
【0040】
差し迫った分析故障についていつ警告するかを決定するための上記に述べた基準は、従来の統計的プロセス管理の基準よりもかなり厳密である。詳細には、この方法で用いられる基準は、作動合成の値が、3つの連続した観測値の内の2つについて、トリミングされたベースライン合成管理限界値201を超える場合である。これは、トリミングされた平均+3×トリミングされた標準偏差を超えることと同等である。本明細書に参照によって援用する、John S.Oakland in Statistical Process Control,6th Edition,Butterworth−Heinemann,2007において指摘されるように、個々又は作動管理図を用いた場合に、あるプロセスが制御不能であることを警告するための通常の基準は、(1)1つの重要な変量の観測値が、平均+3×標準偏差よりも大きい、(2)3つの連続した重要な変量の観測値の内、2つが平均+2×標準偏差を超える、又は(3)8つの連続した重要な変量の観測値が、常に平均を超えるかあるいは常に平均よりも小さい、ことである。したがって、この方法で用いられる基準は、通常用いられる基準よりもより厳密、すなわち起こる確率が大幅に低いものである。この基準を用いることにより、観測される偽陽性の数が減るという結果につながるものであり、この場合の偽陽性とは、差し迫った分析故障の警告が必要とされていない場合にこうした警告を予報することである。しかしながら、別の好ましい実施形態では、適切な基準として上記に概要を述べた基準又は別の基準を使用して偽陽性の数を減少させても良い。
【0041】
ベースライン統計値のような作動上の統計値を用いて遠隔設置された遠隔臨床分析装置を個々に監視して、多くの試薬又はMicroSlides(商標)のような検出装置を交換する際の較正の妥当性、又はパラメータ値の調整の必要性に関連する分析装置の動作の変化を測定することもできる。遠隔監視センターに転送されたデータを用いて統計値を計算し、要求に応じて、あるいは予め決められた間隔で遠隔サイトにダウンロードすることができる。これらの統計値の数値は、この後、データが受信される際にシューハート(Shewhart)管理図、レビー・ジェニングス(Levey-Jennings)管理図、又はウェストガード(Westgard)ルールを用いて解析することができる。こうした方法は、上記に参照によって援用したJames O.Westgard及びCarl A.Burtisらに述べられている。
【0042】
遠隔監視センターは、少なくとも1つの診断臨床分析装置が差し迫った分析故障を有するという通知がなされると、使用すべき適切なフォローアップ過程を決定しなければならない。本明細書において検討する技法は、遠隔監視センターの管理者による、集められたデータ及びそれに続いて計算された統計値を、順序付けられた一連の動作に変換することを可能にするものである。差し迫った分析故障が予測された場合に各遠隔診断臨床分析装置について利用可能な第2の統計値の値を用いることで、どの遠隔分析装置を最初にサービスするべきかに優先順位をつけることができるが、これは第2の統計値の相対的な大きさがその分析装置の全体的な故障の可能性を示していることによる。第2の統計値の値が高いほど、差し迫った故障が発生する確率は高くなる。これは、サービスのリソースが限定されており、こうしたリソースを最大限に活用することが望ましい場合に大きな価値がある。遠隔診断分析装置のサービスサイトの場所からの距離に応じて、オンサイトのサービスコールは最大で数時間かかる場合もある。この時間の一部は、サイトに向かう(及びサイトから戻る)ために費やされ、これに加えて故障しはじめている診断臨床分析装置の1以上の構成要素を特定及び交換するのに要する時間量を必要とする。更に、差し迫った故障の通知のタイミングが極めてよければ、オンサイトのサービスコールを前もって予定された分析装置の停止時間と一致するように計画することが可能であり、これにより分析装置を使用する商業体にとって分析装置の稼働時間の中断を防止することが可能な場合もある。例えば、ある病院では、患者サンプルを、その多くが就業日の概ね午前7時から午後10時までに分析されるように採取する。こうした病院では、午後10時から午前7時まで診断臨床分析装置を停止させることが最も好都合である。更に、サービスサイトの場所では、通常の就業時間中、更に主な休日及び他のイベントに確実に先立ってサービスコールを予定することがより望ましい。
【0043】
キュベット又はマイクロタイタープレートのいずれかを用いる湿式化学法の好ましい実施形態は、異なる変量の集合を監視することが求められる点以外は、薄膜スライドの上記の好ましい実施形態と同様である。しかしながら、ベースライン情報の第1のロバストな統計値への全体的な変換、及び作動データの第2の統計値への変換については、管理図の操作と変わらないままである。本開示の実施の代表的な例について以下に述べる。
【実施例】
【0044】
実施例1−647台の分析装置
この例では、イオン特異的電極をアッセイ測定装置として使用する乾式化学法によるMicroSlide(商標)診断臨床分析装置における差し迫った分析故障の検出について扱う。2008年8月12日に862台の診断臨床分析装置の集団から1日間にわたって3つの特定の変量についてのデータを得た。第1の変量は、非ゼロエラーコード又は条件を生じる全ナトリウム、カリウム、及び塩素アッセイのパーセンテージである。第2の変量は、全カリウムアッセイについてイオン特異的電極読み出しの間に測定された3つの電圧信号レベルの平均である。更に第3の変量は、全カリウムアッセイに対する平均値検証のアナログ/ディジタルカウントに対する平均信号アナログ/ディジタルカウントの比の標準偏差である。信号アナログ/ディジタルカウントは電位計によって測定されるスライドの電圧であり、検証アナログ/ディジタルカウントはスライドに内部参照電圧を順次印可して測定されるスライドの電圧である。
【0045】
本実施例及びこれに続く実施例において、ベースライン及び作動データ値は、IEEE浮動小数点演算標準754によって定義される倍精度浮動小数点の値として得られることは注目すべき点である。これについて、これらの値は、コンピュータ内部では8ディジタルバイトを用いて表されるが、約10進15桁の精度を有する。この精度の程度は一連の数値計算の全体を通じて維持されるが、このような精度をテキスト参照及び数字で維持するには実用的ではない。この説明の目的で、テキスト又は数字で参照されるすべての浮動小数点数は、存在する有効10進桁数とは関係なく、小数第3位の最も近い桁にまで切り上げ又は切り下げられる3つの小数位として表示される。例えば、123.456781234567は123.457として表示され、0.00123456781234567は0.001として表示される。この表示メカニズムは、表示どおりの数値量が計算に使用されれば不正確な計算を潜在的に生じる効果をもたらす。例えば、上記の2つの10進15桁の数を掛け合わせると、10進15桁の精度で0.152415768327997を生じるが、2つの数字の2つの表示された表現が掛け合わされれば10進6桁で0.123456が得られる。このようにして得られた2つの値は明らかに大きく異なっている。
【0046】
図3は、上記のベースラインデータを用いて管理限界値を計算するためのデータセットアップを含む。列301は、862台の分析装置の集団における特定の診断臨床分析装置を示している。列302は、分析装置によって報告されたエラーコード率(%)を示す(すなわちベースラインエラー1)。列304は、分析装置によって報告された3つの電圧信号レベルの平均を示す(すなわちベースライン範囲1)。列306は、分析装置によって報告された、平均の信号アナログ/ディジタルカウントに対する信号アナログ/ディジタルカウント数の平均値の比を示す(すなわちベースライン比1)。3つの報告されたデータの列302、304及び306のそれぞれについて、行309に示されるように平均を計算し、行310に示されるように標準偏差を計算する。図4、図5、及び図6は、862台の全報告診断臨床分析装置について、それぞれ、報告されたベースラインエラー1の値、報告されたベースライン範囲1の値、及び報告されたベースライン比1の値のヒストグラムを示す。次に、トリミングとして知られるプロセスにおいて、ベースラインエラー1の平均値(0.257)±3×ベースラインエラー1の標準偏差の値(1.136)の範囲に含まれない、列302内のすべてのベースラインエラー1の値を除外する。行311に示されるトリミングされたベースラインエラー1の平均値、及び行312に示されるトリミングされたベースラインエラー1の標準偏差の値は、トリミング後に列302に残った値から計算される。同様のトリミング計算をベースライン範囲1及びベースライン比1の値について行う。行313の最初の3つの要素として示される、得られたベースラインエラー1の管理限界値、ベースライン範囲1の管理限界値、及びベースライン比1(baseline range1)の管理限界値は、トリミングされた平均+3×トリミングされた標準偏差として計算される。
【0047】
次に列302のベースラインエラー1の各データの値に100を掛け、ベースライン1管理限界値(行313の最初の要素)で除算することによって列303に示されるような正規化されたベースラインエラー1が得られる。同様にして、これらの計算を、列304に示されるベースライン範囲1のデータ値、及び列306に示されるベースライン比1のデータ値について繰り返すと、正規化されたベースライン範囲1の値の列305及び正規化されたベースライン比1の値の列307が得られる。次に、列301の分析装置と関連付けられた列308のベースライン合成1の値を、列303の正規化されたベースラインエラー1、列305の正規化されたベースライン範囲1、及び列307の正規化されたベースライン比1の平均値として計算する。次いで列308のベースライン合成1の平均及び標準偏差を計算し、それぞれ行309及び行310の4番目の要素として示す。ベースライン合成1の平均±3×ベースライン合成1の標準偏差の範囲に含まれない列308の要素はトリミングによって除外する。この後、列308の行311の第4の要素である、トリミングされたベースライン合成1の平均を、トリミング後に列308に残ったベースライン合成1の値を用いて計算する。更に、列308の行312の第4の要素である、トリミングされたベースライン合成1の標準偏差を、トリミング後に列308に残ったベースライン合成1の値を用いて計算する。次に、計算される第1の統計値である、トリミングされたベースライン合成1の管理限界値を、トリミングされたベースライン合成1の平均値+3×トリミングされたベースライン1の標準偏差として計算し、その結果を列308の行313の第4の要素として示す。
【0048】
図7は、複数行のデータとして表示された、647台の分析装置からの毎日の作動データレポートのデータセットアップを含む。列701は、データが測定された日付を示す。列702、704及び706は、作動エラー1、作動範囲1、及び作動比1をそれぞれ示す。列703、705及び707はそれぞれ、列702、704及び706に100を掛けてからトリミングされたベースラインエラー1の平均値、トリミングされたベースライン範囲1の平均値、トリミングされたベースライン比の平均値で除算することによってそれぞれ得られる作動エラー1、作動範囲1、及び作動比1のそれぞれの計算された正規化値である。列708に、列703、705及び707の値の平均をとることによって得られた第2の計算された統計値である作動合成値1の値を格納する。
【0049】
図8は、647台の診断臨床分析装置の管理図を含み、列708の作動合成1のそれぞれの値がドット802のようにプロットされている。線801は、トリミングされたベースライン合成1の管理限界値(74.332)を表す。毎日の作動合成1の値は管理限界値の近くから始まり、3日間の間これを超え、その後、管理限界値よりも下に低下している点に留意されたい。これは、診断臨床分析装置による差し迫った分析故障の最初の兆候である。更に数日後、作動合成1の値は3日間の内の2日間、再び管理限界値を超えている。操作上の問題の外面的な兆候はまだ認められなかったが、サービステクニシャンが派遣され、慎重な分析の後、電位計が徐々に故障しつつあることが分かった。電位計は9月28日に交換した。この後、この試験データの期間では、作動合成1の値は管理限界値を下回った。
【0050】
実施例2−267台の分析装置
この実施例では、アッセイ測定装置として試料を通った吸光度を測定するための光度計を使用した湿式化学法であるMicroTip(商標)診断臨床分析装置における差し迫った分析故障の検出を扱う。2008年11月13日に、758台の診断臨床分析装置の数段から1日間にわたって4つの特定の変量についてのデータを得た。第1の変量は、1時間毎に測定したベースラインインキュベータ2の値として定義される、インキュベータ温度における誤差の標準偏差である。第2の変量は、1時間毎に測定したベースライン試薬2の値として定義される、MicroTip(商標)試薬供給温度における誤差の標準偏差である。第3の変量は、1時間毎に測定したベースライン周囲2の値として定義される、周囲温度の標準偏差である。更に、第4の変量は、コード2の値として定義される、二次的計量及び3つの読み取りデルタチェックコードを合成したものの条件コード率(%)である。
【0051】
次いで、この実施例におけるトリミングされたベースライン合成2の管理図の管理限界値を、実施例1においてトリミングされたベースライン合成1の管理図の管理限界値を計算するために用いたのと同じ様式により計算する。図11にそのデータ構造を示す。図中、列1101はベースラインデータを与える分析装置を示し、列1102、1104、1106及び1108はそれぞれ、ベースラインインキュベータ2、ベースライン試薬2、ベースライン周囲2、及びベースラインコード2の値である。ベースラインインキュベータ2、ベースライン試薬2、ベースライン周囲2、及びベースラインコード2の入力値の正規化された値を、列1103、1105、1107及び1109にそれぞれ示す。行1111及び1112にはそれぞれ、列1102、1104、1106及び1108の平均及び標準偏差をそれぞれ格納する。行1113及び1114にはそれぞれ、列1103、1105、1107及び1109のトリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差をそれぞれ格納する。列1110の行1115の要素5は、計算された第1の統計値(具体的には89.603)であるトリミングされたベースライン合成2の管理図の管理限界値である。
【0052】
図12は、複数行のデータとして表示された、267台の分析装置からの毎日の作動データレポートのデータセットアップを含む。列1201は、データが測定された日付を示す。列1202、1204、1206及び1208にはそれぞれ、作動インキュベータ2、作動試薬2、作動周囲2、及び作動コード2の報告された毎日の値を格納する。列1203、1205、1207及び1209はそれぞれ、実施例1の作動値の値と同じ様式で得られた作動インキュベータ値2、作動試薬値2、作動周囲値2、及び作動コード値2の4つの値の正規化された値である。列カラム1210には、計算された第2の統計値である毎日の作動合成2の値を格納する。
【0053】
図13は、267台の診断臨床分析装置の管理図を含み、列1210の作動合成2のそれぞれの値がドット1302としてプロットされている。線1301は、トリミングされたベースライン合成2の管理図の管理限界値(89.603)を表している。毎日の作動合成2の値は、7日間は低い値で始まり、その後、急に高くなって管理限界値を3日間超えていることに留意されたい。更に8日間、低い値に戻った後、作動合成2の値は3日間の内、2日間、再び管理限界値を超えている。上記の事象はどちらも、差し迫った分析故障に関する警告につながるものである。この後、この試験データの期間では、毎日の作動合成2の値は管理限界値を下回った。
【0054】
実施例3−406台の分析装置
この実施例では、アッセイ測定装置として試料を通った吸光度を測定するための光度計を使用した湿式化学法であるMicroTip(商標)診断臨床分析装置における差し迫った分析故障の検出を扱う。2008年11月13日に得られた実施例2のベースラインデータを用いて、図14に示されるように、406台の分析装置についての作動データを2008年10月24日から2008年12月2日まで毎日得た。
【0055】
列1401は、データが測定された日付を示す。列1402、1404、1406、及び1408にはそれぞれ、作動インキュベータ3、作動試薬3、作動周囲3、及び作動コード3の報告された毎日の値を格納する。列1403、1405、1407及び1409はそれぞれ、実施例1の作動変量の値と同じ様式で得られた作動インキュベータ3、作動試薬3、作動周囲3、及び作動コード3の4つの値の正規化された値である。カラム1410には、計算された第2の統計値である毎日の作動合成値3の値を格納する。
【0056】
図15は、406台の診断臨床分析装置の管理図を含み、列1410の作動合成3のそれぞれの値がドット1502としてプロットされている。線1501は、トリミングされたベースライン合成3の管理図の管理限界値(89.603)を表している。毎日の作動合成3の値は多くの日数にわたる低い値で始まり、その後、2008年11月20日に急に高くなって3日間の内、2日間、管理限界値を超えている。更に2日間、低い値に戻った後、作動合成3の値は3日間の内、2日間、再び管理図の管理限界値を超えている。上記の事象はどちらも、差し迫った分析故障に関する警告につながるものである。この後、この試験データの期間では、毎日の作動合成3の値は管理図の管理限界値を下回った。
【0057】
実施例4−差し迫った故障の検出によってフラグ付けされる検定精度
この実施例では、差し迫った故障をより頻繁にフラグ付けするMicroTip(商標)診断臨床分析装置によって生成された結果では不正確度がより高いことを実証する。差し迫った故障の検出は、故障の修理をより迅速とするばかりでなく、完全とは言えない検定の性能を有する確率が最も高い分析装置をフラグ付けすることによって検定におけるより高い性能を与えることを可能にする。そうでない場合、単独で調べられる検定の結果はその検定について設定された公式の許容誤差を満たすもの思われることが多いことからこのような改良は行うことが困難である。検定の結果における分散が高い不正確度を反映していることを検出することにより、分散を低減し、その結果、検定の結果の信頼性を高めるような手段を講じることが可能である。
【0058】
高い不正確度は、最も頻繁に警告を誘発した分析装置を特定することによって実証した。この目的のため、741台のネットワーク化された臨床分析装置を用いて2008年の12月10日から12月12日までベースラインデータを収集した。各分析装置について8つの変量を追跡した。すなわち、(i)スライドインキュベータドラッグ(Slide Inc Drag)、(ii)反射分散(Refl.Var.)、(iii)周囲分散(Ambient Var.)、(iv)スライドインキュベータ温度分散(Slide Inc.Temp.Var.)、(v)ランプ電流(Lamp Current)、(vi)コード/使用−システムよって、計量故障が疑われる装置を検出する−処理されたスライドの数に対する試料計量コード率(%)(コード/使用)、(vii)Δ DR(CM)特定の閾値よりも大きい差を有する事象の数をカウントする、9秒間離れたCM検定の2つの読み取り値間の差(Δ DR(CM))、及び(viii)Δ DR(比率)(Δ DR(比率))、2つの点を見て所定の濃度レベルよりも低いアッセイを特定して回帰線よりも低いノイズを検出する。
【0059】
ベースラインデータは、図16に表されるように処理することにより、上記の変量のそれぞれについて平均及び標準偏差を計算した後、トリミングによって平均から標準偏差3つ分よりも離れたエントリーを切り落とすことによってこうした値を除外した。残った変量のエントリーを処理して8つの変量のそれぞれについてトリミングされた平均及びトリミングされた標準偏差を計算した。トリミングされた変量の平均と3倍の標準偏差との合計を用いて上記に述べたように変量の値を正規化した。このような実施方法の選択は、本発明の範囲に対する限定を目的としたものではなく、こうした選択が特許請求の範囲において明確に示されないかぎりは、本発明の範囲に対する限定として理解されるべきではない。トリミングされた変量の平均と標準偏差×3との合計である正規化係数を変量に対する閾値として用いることによって作動データにおける異常な変化をフラグ付けし、トラブルシューティング及び診断臨床分析装置へのサービスの助けとする。このため、このような閾値をベースラインデータからの8つの監視される変量のそれぞれに対して計算した。変量のすべてについて正規化された値を合成してベースライン合成の管理図の管理限界値を計算し、これを用いて差し迫った故障をフラグ付けした。この実施例では、ある分析装置がベースライン合成の管理図の管理限界値を超えた場合にその分析装置を差し迫った故障についてフラグ付けした。このような実施方法の選択は、本発明の範囲に対する限定を目的としたものではなく、こうした選択が特許請求の範囲において明確に示されないかぎりは、本発明の範囲に対する限定として理解されるべきではない。8つの監視される変量のそれぞれについての閾値及びベースライン合成の管理図の管理限界値(いずれもベースラインデータから導かれる)を表1に示す。これらの閾値を更に用いて変量のそれぞれを続いて正規化することによってベースライン合成の管理図の管理限界値を計算したところ、その値は104.79であり(この値を用いて8つの変量すべてを同時に評価することで差し迫った故障を検出する)、個々の変量を見ることにより必要とされるサービス又は修正の種類に対するより詳細な調査を始める助けとした。
【表1】
【0060】
作動データを用い、選択された比色分析検定について、2009年の11月〜12月の間に最も高い頻度で警告を誘発した12台の診断臨床分析システムが特定されたこれらを、既知の品質管理用(QC)試薬に対する検定性能を比較することによって最も低い頻度で警告を誘発した12台の診断臨床分析システムと比較した。こうした試薬は、同様の分散について同程度の読み取り値を与えるものであることが理想的である。両方の母集団(最も高い頻度で警告を誘発した12台の診断臨床分析システム及び最も低い頻度で警告を誘発した12台の診断臨床分析システム)に対して統合標準偏差(pooled standard deviation)を行った。代わりに、警告を誘発する診断臨床分析システムは、高い不正確度を示すことが判明した(より悪い検定性能)。したがって、警告を誘発する診断臨床分析システムも高い不正確度を示す。表2のカルシウム(Ca)検定のデータ例は、5台の「不良」診断臨床分析装置、そのそれぞれにおいて品質管理用試薬を測定した回数、平均、標準偏差、及び変動係数、並びにそれに続く5台の「良」診断臨床分析装置の同様の数値を示す。
【表2】
【0061】
鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)などの異なる検定について同様のデータを収集した。
【0062】
分析装置は同様のQCに基づいて選択した。顧客は様々なQC製造業者からのQC流体を使用することから、複数の検定のQC試薬に対して同様な平均を有する(同じ製造業者であることを示す)分析装置を特定した。「差し迫った故障」なる用語が、異なる検定において同様の悪い性能を必要としない点を認識することは有用である。分析装置1でのALB(アルブミン)検定では分析装置2と同じALB用のQC試薬を使用することができるが、分析装置1はCa検定においては異なるQC流体を使用してもよく、したがって分析装置2とは異なってもよい。したがって、少なくとも5台(12台の内)の分析装置が、各検定についてQCを行った場合に同様の平均(製造業者又は同等の性能)を有するものとして特定された。その結果、5台の「不良」又は5台の「良」として特定された分析装置が、すべての検定において同じわけではなかった。警告を誘発する頻度に基づけば、Fe検定において最も悪い分析装置が、Mg検定において最も悪い分析装置とはならない場合がある。
【0063】
実施例5−差し迫った故障によって影響される検定の良品率
この実施例では、実施例4において述べた分析装置及びデータを用いる。これらの分析装置において調べた別の評価基準は、一定期間内に分析装置で行われたすべての検定の内、合格した検定の数を割合として示す初回検査時の良品率(First Time Yield(FTY))である。
【0064】
QC試薬によって測定された分散とは異なり、FTY基準は診断臨床分析装置上での実際の検定性能を調べるものである。FTYの低い値は多くの検定の結果が検定故障検出システム及び手順によって拒絶されていることを示し−このことは、特定の検定ではなくてシステムの差し迫った故障を検出することとは対照的に、これは検定を繰り返すことをしばしば必要としスループットを低下させる。一般的に、診断臨床分析装置では90%よりも高いFTY値、典型的には94%よりも高いFTY値が予想される。FTYを、5台の「良」システム(FTYが最も高い)及び5台の「不良」システム(FTYが最も低い)について更に比較したところ、「不良」システムの方がFTYは低かった。
【0065】
下記表3のデータ例は、5台の「不良」診断臨床分析装置の識別番号、そのそれぞれで行った検定の回数、それぞれの初回検査時の良品率、及びそれに続く「良」診断臨床分析装置の同様の数値を示す。
【表3】
【0066】
直ちに理解されるように、「不良」(高頻度の警告)分析装置ではFTYの低下が認められる。したがって、差し迫った故障を修正することがFTYを高めるために望ましい。
【0067】
実施例6−高い平均警告値によって影響される検定の良品率
この実施例では、実施例4において述べた分析装置及びデータを用いる。作動データを用いて、選択された比色分析検定について、高い平均警告値(警告を発生するためにベースライン合成の管理図の管理限界値と比較される)を示した10台の診断臨床分析システムを特定し、低い平均警告値を有した12台の診断臨床分析システムと比較した。この解析では、既知の品質管理(QC)試薬で検定性能を比較する際に、警告を誘発する分析装置の警告値はカウントしなかった(換言すれば、誘発値を無視した)。警告を誘発するシステムは、極めて大きく、平均値を人為的に高める誘発値を少数有する可能性がある。この方法では、警告が誘発される際の警告値を無視することによって高い平均値を有するシステムを特定した。これは実施例4とよく似ているが、高い平均警告値を有する幾つかのシステムを含み、高い警告値のすべてについて警告を誘発するわけではない。
【0068】
上記に述べたように、QC試薬は同様の分散について同程度の読み取り値を与えるものであることが理想的である。統合標準偏差を両方の集団に対して行ったところ、高い平均警告値を有するシステムが、低い平均警告値を有するシステムと比較して高い不正確度を示すことが示された。初回検査時の良品率のデータを、それ以外は実施例5における分析と同様の様式で5台の「良」及び5台の「不良」システムについても比較した。「不良」システムはより低いFTYを有することが分かった。したがって、高い平均警告値を有する診断臨床分析システムもまた高い不正確度を示す。
【0069】
実施例7−単一の分析装置の警告値レベルは検定の不正確度を反映する
この実施例においても、実施例4において述べたものと同様の分析装置を用いる。QC試薬に基づくデータを単一のシステムでのすべてのCM検定について評価した。システムが警告限界値を超えている期間における分析装置の性能を、システムが警告限界値を超えていない期間における分析装置の性能と比較した。このような比較は、同様の環境、操作者のプロトコル及び試薬を確保し、差し迫った故障の検出の有用性の評価を可能とする。この方法は、検定の結果(すなわちQCの結果)における性能の差を測定するための尺度を与えるものである。
【0070】
各化学検査/QC流体の組み合わせの信頼水準95%でのF検定は、調べられた分析装置が「不良」である場合に、28のデータセットの化学検査の内、27(96.4%)について「良」である場合の分析装置と比較して、化学検査1つ当たり2つのQCレベルの少なくとも一方について低い化学検査の不正確度を示すことを判定した。これらを表4に「偽」レベルによって示し、分散が「良」分析装置について「不良」分析装置よりも大きい場合を太字で示した。より詳細には、1つを除いたすべての化学検査において、QC流体の少なくとも1つが、分析装置が「良」である場合よりも分析装置が「不良」である場合により大きいQCの分散を有した。このことは、不正確度の指標として2つのQCレベルを用いることにより、「不良」フェーズにある場合の分析装置が、「良」である場合の分析装置と比較して低い化学検査の性能を示す傾向を有することを示している。
【0071】
フィールドエンジニア又はホットラインが、検定予測警告情報の使用によってより迅速にサポートを行ううえで本開示によってどのように支援されるかを調べることは有用である。ベースライン合成の管理図の管理限界値に常に近い分析装置は、事前に修理を行うために選択するか、あるいは、検定予測警告に関連した情報を、顧客が検定性能に関する問題について電話する際に応答モードで使用することができる。1以上の基礎変量が異常であることを示す、合成警告値が閾値を上回る場合には、原因を特定するための好ましいプロセスの1つは、個々の変量を見ることである。例えば実施例4では、警告値(ベースライン合成の管理図の管理限界値と比較される)を構成する8つの個別の変量がある。これらの変量はそれぞれが閾値を有し、好ましい実施形態では、データをトリミングし、変量の値を正規化するためにこの閾値を用いる。閾値を上回っていることは、変量が異常なサブシステム又は性能を表していることを示す。監視される変量の1つだけが異常である場合、フィールドエンジニアは診断臨床分析装置のこの部分に集中することができる。これとは極めて対照的に、現在の検定性能の問題は、一般的に、主たる原因となっているサブシステムを特定するためだけでも地域の専門家による複数回の訪問及び支援を必要とする。したがって、差し迫った警告が可能であることによって、顧客は性能の低下した状態が解消されるまで数日又は数週間にわたって低下した性能に耐えることから救われる。こうした状況では顧客は、1つのシステムで低い性能(顧客の使用する管理プロセスに従って)を有する検定を行うことを止めることが多く、問題が解消されるまでこれらの検定物をその研究所の分析装置に、又は必要な場合には異なる病院に移動させることになる。
【0072】
図17は、実施例4からのデータ及び閾値に基づいた例示的なスクリーンショットを示す。この模式図は、異なる監視変量、それぞれの閾値、及び異なる時点における値を示している。個々の閾値を超えた場合(差し迫った故障について警告が誘発されるとは限らない)、変量はフラグ付けされる。フラグ付けをするためには、当業者には周知の、異なる色、点滅する値、及び他の方法を用いることができる。
【0073】
警告値と検定精度との間の相関が完全である可能性は低い点にも注意を要する。実施例4〜7は、警告値がコントロール精度に見られるように検定性能と相関し、より低い程度でFTYとも相関していることを示す。完全ではない相関が予想される理由は、検定管理のデータが、分析装置のハードウェア性能とは無関係な多くの因子によって影響されるためである。コントロール精度は、管理流体希釈誤差(多くの管理流体は再構成を必要とするため)、感知流体の取り扱い(蒸発、不適切な混合、使用前の不適切な流体の予熱)、及び化学的検定に内在する不正確性(このロット又はロットの部分で異常に高い)などの因子によって引き起こされる操作者エラーによって影響される。検定予測警告値が合成閾値よりも充分低い場合に顧客が検定性能について苦情を述べていることが分かれば、これによりフィールドエンジニア又はホットライン要員が、問題が分析装置によって引き起こされたものではないことをさらに確信できることから有用である。これにより、顧客プロトコルの慎重な見直しが求められるが、顧客が行っていることが、観察される不正確性の原因となっているということを顧客に納得させることが困難であることが多いために、これは容易なことではない。この検定のグループ分けの性能に影響する分析装置のハードウェアは予想の範囲内で良好に機能しているということを実証するデータを有していれば、顧客の手順及びプロセスを変更又は見直しの提案を受け入れるように顧客を納得させることが容易となるはずである。
【表4−1】
【表4−2】
【表4−3】
【0074】
本発明の方法及びプロセスに対して様々な改変及び変更を行い得ることは、当業者にとっては明白であろう。したがって、本発明は、このような改変物及び変更物を、それらが付属の「特許請求の範囲」及びその均等物の範囲に含まれるものとして、網羅するものとする。
【0075】
上記に引用したすべての刊行物の開示は、恰もそれぞれが参照によって個別に援用されているものと同様にして、その全容を参照によって本明細書に明示的に援用する。
【0076】
付録
エラーバジェットの例
図9は、既知の平均及び既知の分散を有する独立したランダム変量の特性をそれぞれが有する4つの入力信号を有する簡単な電子回路を示している。各信号の明示的特性値は以下のとおりである。
【表5】
【0077】
ここで、E()は期待値を表し、V()は分散を表す。回路図及び信号の数値特性の表層的な概説によって、出力信号の分散に対する入力信号の影響についての理解はほとんど得られないことは確かである。しかしながら、出力信号の分散に対する各入力信号の定量的影響を調べることが望ましい。この考え方は、ある入力信号の出力信号に対する影響が大きいほど、その信号のエラーバジェットは小さくなるはずであるというものである。出力信号に最も大きく影響するこれらの信号を特定することで、本出願との関連で監視するべき信号の候補のリストが更に与えられる。
【0078】
上記に示したような各信号の明示的特性値を考慮すれば、信号Aの特性値は、本明細書に参照によって援用するH.D.Brunk、An Introduction to Mathematical Statistics,2nd Edition,Blaisdell Publishing Company,1965及び本明細書に参照によって援用するAlexander McFarlane Mood、Franklin A.Graybill及びDuane C.Boes、Introduction to the Theory of Statistics,3rd Edition,McGraw−Hill,1974に見られるような独立したランダム変量の和及び積の期待値及び分散についての既知の関係を利用することで計算することができる。詳細には、
E(A)=E(W+X)=E(W)+E(X)=6.00
V(A)=V(W+X)=V(W)+V(X)=0.50
【0079】
次に、信号Bの特性値を以下のようにして決定することができる。
E(B)=E(A*Y)=E(A)*E(Y)=6.00
V(B)=V(A*Y)=E(A)2*V(Y)+E(Y)2*V(A)+V(A)*V(Y)=4.15
【0080】
更に、最後に信号Cの特性値を以下のようにして決定することができる。
E(C)=E(B+Z)=E(B)+E(Z)=8.00
V(C)=V(B+Z)=V(B)+V(Z)=4.65
【0081】
しかしながら、信号A、B及びCの明示的特性値が分かったからといって、そのことが、信号W、X、Y及びZの入力の平均及び分散に対する信号Cの分散の感受性に関して何も示すわけではない。
【0082】
この感度情報を得るための1つの方法は、参照によって本明細書に援用する、Ted G.Eschenbach,Spiderplots versus Tornado Diagrams for Sensitivity Analysis,Interfaces,Volume 22,Number 6,November−December 1993,p.40〜46によって説明されるようなトルネード表又はトルネード図を使用することである。トルネード表又はトルネード図は、出力信号Cの分散の変化を監視しながら、入力信号の特性値を変化させようとする値の範囲を特定することによって得られる。これを行うことによって図10に示されるようなトルネード表が得られる。
【0083】
明らかな点として、信号Yの分散は信号Cの分散に対して大差で最も大きな影響を有する。影響が小さくなる順に並べると、Wの期待値、Xの期待値、Yの期待値、Zの分散、Xの分散、及びWの分散となる。この特定の回路では、Yの分散の小さな変動も、信号Cの分散に大きな影響を及ぼす。
【0084】
図10には、トルネード表におけるYの分散の大きな影響をグラフによって示す、情報のトルネード図も含まれている。
【0085】
〔実施の態様〕
(1) ネットワーク化された診断臨床分析装置における差し迫った故障を検出するための方法であって、
複数の診断臨床分析装置において複数の変量を監視する工程と、
当該複数の変量の値からの異常値をスクリーニングして除外する工程と、
第1の変量の当該これらのスクリーニングされた値に基づいて当該複数の変量から当該第1の変量の閾値を導出する工程と、
合成閾値を計算するために当該複数の変量から選択された、当該第1の変量を含む変量の値を正規化する工程と、
これらの正規化された変量の値を用いて当該合成閾値を生成する工程と、
当該ネットワーク化された診断臨床分析装置から作動データを収集する工程と、
当該診断臨床分析装置が当該合成閾値を超えた場合に警告を発生する工程と、を含む方法。
(2) 第1の変量の閾値が当該第1の変量を正規化するためにも用いられる、実施態様1に記載の方法。
(3) 第1の変量の閾値が、第1のトラブルシューティング活動に相当する当該第1の変量を特定するためにも用いられる、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記作動データを用いて、前記合成閾値との比較用の警告値が計算される、実施態様1に記載の方法。
(5) ネットワーク化された診断臨床分析装置の差し迫った分析故障を検出するための方法であって、
第1の特定の期間にわたって、複数のネットワーク化された診断臨床分析装置から商業運転の間にベースラインデータを収集する工程と、
当該ベースラインデータを第1の統計値に変換する工程と、
第2の特定の期間にわたって、特定のネットワーク化された診断臨床分析装置から商業運転の間に一連の作動データを収集する工程と、
当該一連の作動データを一連の第2の統計値に変換する工程と、
当該第2の統計値が当該第1の統計値を所定の様式で所定の量だけ超えた場合に、遠隔監視センターに当該特定の診断臨床分析装置における差し迫った診断臨床分析装置の分析故障を通知する工程と、を含む方法。
(6) 前記ネットワーク化された診断臨床分析装置が、薄膜スライド、キュベット、ビード及びチューブフォーマット、又はマイクロウェルを用いる商業的検定を行う、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記ネットワーク化された診断臨床分析装置が、インターネット、イントラネット、無線ローカルエリアネットワーク、無線メトロポリタンネットワーク、広域コンピュータネットワーク、及び汎欧州ディジタル移動電話方式ネットワークからなる群から選択されるネットワークを用いて接続される、実施態様5に記載の方法。
(8) 前記第1の期間が24時間であり、前記第2の期間が24時間である、実施態様5に記載の方法。
(9) 前記所定の量が前記第1の統計値の10%であり、前記所定の様式が3つの連続した期間の中の2つである、実施態様5に記載の方法。
(10) 差し迫った分析故障の検出に対応して、ネットワーク化された診断臨床分析装置を点検修理するための方法であって、
前記差し迫った故障を検出するために用いられた監視変量を特定する工程と、
所定期間の間に当該監視変量から、それぞれの閾値を超える変量の集合を調査する工程と、ベースラインデータを第1の統計値に変換する工程と、
当該変量の集合の中の1つ又は2つ以上の要素をより良好に制御するためのいくつかの点検修理事項を提案する工程と、を含む方法。
【0086】
(11) 点検修理可能な故障に関する前記集合の前記1つ又は2つ以上の要素に対応するサブシステムを調査する工程を更に含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記集合の前記1つ又は2つ以上の要素が、点検修理後にそれぞれの閾値を超えないことを確認する工程を更に含む、実施態様10に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク化された診断臨床分析装置における差し迫った故障を検出するための方法であって、
複数の診断臨床分析装置において複数の変量を監視する工程と、
当該複数の変量の値からの異常値をスクリーニングして除外する工程と、
第1の変量の当該これらのスクリーニングされた値に基づいて当該複数の変量から当該第1の変量の閾値を導出する工程と、
合成閾値を計算するために当該複数の変量から選択された、当該第1の変量を含む変量の値を正規化する工程と、
これらの正規化された変量の値を用いて当該合成閾値を生成する工程と、
当該ネットワーク化された診断臨床分析装置から作動データを収集する工程と、
当該診断臨床分析装置が当該合成閾値を超えた場合に警告を発生する工程と、を含む方法。
【請求項2】
第1の変量の閾値が当該第1の変量を正規化するためにも用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の変量の閾値が、第1のトラブルシューティング活動に相当する当該第1の変量を特定するためにも用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記作動データを用いて、前記合成閾値との比較用の警告値が計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ネットワーク化された診断臨床分析装置の差し迫った分析故障を検出するための方法であって、
第1の特定の期間にわたって、複数のネットワーク化された診断臨床分析装置から商業運転の間にベースラインデータを収集する工程と、
当該ベースラインデータを第1の統計値に変換する工程と、
第2の特定の期間にわたって、特定のネットワーク化された診断臨床分析装置から商業運転の間に一連の作動データを収集する工程と、
当該一連の作動データを一連の第2の統計値に変換する工程と、
当該第2の統計値が当該第1の統計値を所定の様式で所定の量だけ超えた場合に、遠隔監視センターに当該特定の診断臨床分析装置における差し迫った診断臨床分析装置の分析故障を通知する工程と、を含む方法。
【請求項6】
前記ネットワーク化された診断臨床分析装置が、薄膜スライド、キュベット、ビード及びチューブフォーマット、又はマイクロウェルを用いる商業的検定を行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の量が前記第1の統計値の10%であり、前記所定の様式が3つの連続した期間の中の2つである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
差し迫った分析故障の検出に対応して、ネットワーク化された診断臨床分析装置を点検修理するための方法であって、
前記差し迫った故障を検出するために用いられた監視変量を特定する工程と、
所定期間の間に当該監視変量から、それぞれの閾値を超える変量の集合を調査する工程と、ベースラインデータを第1の統計値に変換する工程と、
当該変量の集合の中の1つ又は2つ以上の要素をより良好に制御するためのいくつかの点検修理事項を提案する工程と、を含む方法。
【請求項9】
点検修理可能な故障に関する前記集合の前記1つ又は2つ以上の要素に対応するサブシステムを調査する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記集合の前記1つ又は2つ以上の要素が、点検修理後にそれぞれの閾値を超えないことを確認する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項1】
ネットワーク化された診断臨床分析装置における差し迫った故障を検出するための方法であって、
複数の診断臨床分析装置において複数の変量を監視する工程と、
当該複数の変量の値からの異常値をスクリーニングして除外する工程と、
第1の変量の当該これらのスクリーニングされた値に基づいて当該複数の変量から当該第1の変量の閾値を導出する工程と、
合成閾値を計算するために当該複数の変量から選択された、当該第1の変量を含む変量の値を正規化する工程と、
これらの正規化された変量の値を用いて当該合成閾値を生成する工程と、
当該ネットワーク化された診断臨床分析装置から作動データを収集する工程と、
当該診断臨床分析装置が当該合成閾値を超えた場合に警告を発生する工程と、を含む方法。
【請求項2】
第1の変量の閾値が当該第1の変量を正規化するためにも用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の変量の閾値が、第1のトラブルシューティング活動に相当する当該第1の変量を特定するためにも用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記作動データを用いて、前記合成閾値との比較用の警告値が計算される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ネットワーク化された診断臨床分析装置の差し迫った分析故障を検出するための方法であって、
第1の特定の期間にわたって、複数のネットワーク化された診断臨床分析装置から商業運転の間にベースラインデータを収集する工程と、
当該ベースラインデータを第1の統計値に変換する工程と、
第2の特定の期間にわたって、特定のネットワーク化された診断臨床分析装置から商業運転の間に一連の作動データを収集する工程と、
当該一連の作動データを一連の第2の統計値に変換する工程と、
当該第2の統計値が当該第1の統計値を所定の様式で所定の量だけ超えた場合に、遠隔監視センターに当該特定の診断臨床分析装置における差し迫った診断臨床分析装置の分析故障を通知する工程と、を含む方法。
【請求項6】
前記ネットワーク化された診断臨床分析装置が、薄膜スライド、キュベット、ビード及びチューブフォーマット、又はマイクロウェルを用いる商業的検定を行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の量が前記第1の統計値の10%であり、前記所定の様式が3つの連続した期間の中の2つである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
差し迫った分析故障の検出に対応して、ネットワーク化された診断臨床分析装置を点検修理するための方法であって、
前記差し迫った故障を検出するために用いられた監視変量を特定する工程と、
所定期間の間に当該監視変量から、それぞれの閾値を超える変量の集合を調査する工程と、ベースラインデータを第1の統計値に変換する工程と、
当該変量の集合の中の1つ又は2つ以上の要素をより良好に制御するためのいくつかの点検修理事項を提案する工程と、を含む方法。
【請求項9】
点検修理可能な故障に関する前記集合の前記1つ又は2つ以上の要素に対応するサブシステムを調査する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記集合の前記1つ又は2つ以上の要素が、点検修理後にそれぞれの閾値を超えないことを確認する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2012−519280(P2012−519280A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552123(P2011−552123)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025191
【国際公開番号】WO2010/099170
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511093409)オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】Ortho−Clinical Diagnostics, Inc.
【住所又は居所原語表記】1001 U.S. Route 202, Raritan, New Jersey 08869, United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/025191
【国際公開番号】WO2010/099170
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511093409)オーソ−クリニカル・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】Ortho−Clinical Diagnostics, Inc.
【住所又は居所原語表記】1001 U.S. Route 202, Raritan, New Jersey 08869, United States of America
【Fターム(参考)】
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