説明

ネットワーク監視システムおよびその監視対象装置の登録方法

【課題】 不要なパケットを送出せず、最低限の設定により監視対象装置を自動的に検出(監視対象装置に関する情報を登録)すること。
【解決手段】 監視ネットワーク上に配置された複数台の監視対象装置と、この複数台の監視対象装置を集中管理する監視システムと、を含むネットワーク監視システムにおいて、複数台の監視対象装置に関する情報を監視システムに登録する方法は、監視システムが、監視ネットワークにおいて適用されるOSPFルーチンプロトコルにおいて独自メッセージを付与して、監視ネットワーク全体に配信し、独自メッセージを受信した監視対象装置が、監視システムに対して当該監視対象装置に関する情報の登録依頼を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク監視システムに関し、特に、監視対象装置に関する情報を登録(検出)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク監視システムは、監視システムと、この監視システムに監視ネットワークを介して接続された複数台の監視対象装置とを備えている。このようなネットワーク監視システムにおいて、監視システムは、複数台の監視対象装置を監視するために、それら複数台の監視対象装置に関する情報を登録する必要がある。ここで、「監視対象装置に関する情報」とは、当該監視対象装置のIPアドレス、装置名称、装置種別等の、監視対象装置を特性する情報を意味する。
【0003】
従来、監視対象装置に関する情報を登録する場合、監視システムにおいて監視対象装置に関する情報を手動で登録していた。
【0004】
一方、この種のネットワーク監視システムにおいては、柔軟な経路制御を行うために、ルーティングプロトコルとしてOSPF(Open Shortest Path First)を適用することが多い。経路制御プロトコルとしてOSPFを用いた、種々の先行技術文献が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1は、経路制御プロトコルとしてOSPFを用いたネットワークにおいて、ネットワークの全体構成を一元管理することが可能であり、経路障害を簡単かつ正確に特定できるようにした「ネットワーク監視システム」を提供している。特許文献1に開示されたネットワーク監視システムは、複数のエリアをバックボーンエリアで結び、経路制御プロトコルとしてOSPFを採用したネットワークの経路変更監視システムである。この経路変更監視システムは、OSPFルータと、エージェントと、マネージャとを具備する。OSPFルータは、各エリアに設けられ、ネットワークの更新に応答して経路情報を交換し合う。エージェントは、各エリアごとに設けられ、経路情報を取得してリンク内のトポロジデータベースを作成する。マネージャは、バックボーンエリアに設けられ、各エージェントからトポロジデータベースを収集し、これらを結合してネットワーク全体のトポロジデータベースを作成する。
【0006】
また、特許文献2は、OSPFプロトコルが動作するネットワークシステムにおいて、OSPFパケットを監視し、異常を検知し、改善案を提示することができる「ネットワークシステム」を提案している。特許文献2に開示されたネットワークシステムは、少なくとも一つのネットワーク監視装置と、このネットワーク監視装置を統合的に監視する総合監視システムとを備え、OSPFユニキャストルーティングプロトコルが動作するネットワークシステムである。ネットワーク監視装置の各々は、エリア情報ルータおよびAS境界ルータが配信するLSA情報を配信サブネット情報として定期的に監視し、エリア情報ルータ及びAS境界ルータが配信するLSA情報をABR/ASBR情報として取得し、その配信サブネット情報とABR/ASBR情報とを統合監視装置に通知する。統合監視装置は、配信サブネット情報及びABR/ASBR情報を各エリア単位に管理し、エリア境界ルータ及びAS境界ルータをマップ上に識別表示し、配信サブネット情報をユーザ操作に応じて表示する。更に、統合監視装置は、ネットワーク集約可能なサブネットを解析し表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−354012号公報
【特許文献2】特開2010−109729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなネットワーク監視システムでは、監視システムにおいて複数種類の監視対象装置に関する情報を登録し、管理するため、該当する監視対象装置の名称やそのIP(internet protocol)アドレス、装置種別など設定項目が多い。その結果、大量の監視対象装置の登録を行うことによる作業効率の低下や、設定間違いによる監視異常などにより、監視対象装置を正しく監視することができないという問題がある。
【0009】
また、従来のネットワーク監視システムにおいて、LLDP(Link Layer Discovery Protocol)といったプロトコルを使用して、監視ネットワーク上に配置された機器(監視対象装置)を検出する方法をとるものがある。しかしながら、LLDPはレイヤ2プロトコルであり、サブネットワークをまたいで情報を一元的に抽出することができない。その為、ネットワーク全体の情報を把握するためには、監視システムに隣接したネットワークから徐々に機器に関する情報を取得していく必要がある。
【0010】
そのほか、監視システムから運用者等に指定されたIPアドレスの範囲に対して登録メッセージを送信し、応答があった監視対象装置に関する情報を登録するといった半自動の方法を提供するものもある。しかしながら、監視対象装置の有無によらず登録メッセージを送出するため、効率的ではないという課題がある。
【0011】
本発明の目的は、監視対象装置において特別な設定を行うことなく、監視対象装置を自動で検出(監視対象装置に関する情報を登録)する方法を提供することにある。
【0012】
尚、上記特許文献1および2に開示されたネットワーク(監視)システムは、どちらも、単にOSPFのパケットを受動的に監視し、ネットワーク状態を判断しているに過ぎない。換言すれば、上記特許文献1および2は、いずれも、ネットワーク上の監視対象装置を自動で検出する技術思想に関するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る監視対象装置の登録方法は、監視ネットワーク上に配置された複数台の監視対象装置と、該複数台の監視対象装置を集中管理する監視システムと、を有するネットワーク監視システムにおいて、前記複数台の監視対象装置に関する情報を前記監視システムに登録する方法であって、前記監視システムが、前記監視ネットワークにおいて適用されるOSPFルーチンプロトコルにおいて独自メッセージを付与して、前記監視ネットワーク全体に配信するステップと、前記独自メッセージを受信した監視対象装置が、前記監視システムに対して当該監視対象装置に関する情報の登録依頼を行うステップと、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サブネットワークによる制限を回避し、存在しない装置に対する非効率的なパケット送出を回避することが可能であり、誤設定の機会を減らすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るネットワーク監視システムを示すブロック図である。
【図2】図1に示したネットワーク監視ネットワークシステムに使用される、監視システムおよび監視対象装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】OSPFプロトコルで配信されるOpaque LSAの構成を示す図である。
【図4】図3に示したOpaque LSAのOpaque Informationにおいて設定された例を示す図である。
【図5】図1に示したネットワーク監視システムにおいて、監視ネットワーク中のルータをも図示したブロック図である。
【図6】図1に示したネットワーク監視システムの監視対象装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図7】図1に示したネットワーク監視システムにおいて、監視対象装置から監視システムに発出される登録依頼メッセージの一例をも示すブロック図である。
【図8】図1に示したネットワーク監視システムの監視システムの動作手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るネットワーク監視システムを示すブロック図である。
【図10】本発明に関連する第1のネットワーク監視システムを示すブロック図である。
【図11】図10に示したネットワーク監視システムにおける、監視対象装置に関する情報の登録方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明に関連する第2のネットワーク監視システムを示すブロック図である。
【図13】本発明に関連する第3のネットワーク監視システムを示すブロック図である。
【図14】図13に示したネットワーク監視システムにおける、監視対象装置に関する情報の登録方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の理解を容易にするために、最初に、本発明に関連するネットワーク監視システムについて説明する。
【0017】
図10および図11を参照して、本発明に関連する第1のネットワーク監視システムにおける、監視対象装置に関する情報の登録方法について説明する。図10は本発明に関連する第1のネットワーク監視システムを示すブロックであり、図11は本発明に関連する第1のネットワーク監視システムにおける監視対象装置に関する情報の登録方法を示すフローチャートである。
【0018】
図10に示されるように、本発明に関連する第1のネットワーク監視システムは、監視システム101と、監視対象装置103とを備え、それらは監視ネットワーク102を介して接続されている。
【0019】
次に、図11を参照して、図10に示した関連する第1のネットワーク監視システムにおける監視対象装置に関する情報の登録方法について説明する。
【0020】
関連する第1のネットワーク監視システムにおいては、監視対象装置を設置し(ステップS301)た後、監視対象装置103においてIP(interne protocol)アドレスの設定、装置名称の設定、ルーティングプロトコルの設定を行う(ステップS302)。そして、監視システム101との到達性を確保したうえで監視システム101から該当装置103を監視するために、監視システム101において装置種別の設定、該当装置のIPアドレスの設定、該当装置の装置名称の設定を行い(ステップS304)、該当装置103の登録を行う(ステップS303)。
【0021】
この場合、監視システム101と監視対象装置103とにおいて同様の設定を矛盾なく設定する必要がある。設定間違いが発生すると監視対象装置103を正しく監視できないので、監視対象装置103への設定(ステップS302)、あるいは監視システム101への設定(ステップS304)を見直し、再度接続を行う必要があるという問題がある。
【0022】
これらを解消するために、図12に示すような、本発明に関連する第2のネットワーク監視システムが知られている。
【0023】
図示の本発明に関連する第2のネットワーク監視システムは、監視システム101と、この監視システム101に第1のネットワーク401aを介して接続されたネットワーク機器402と、このネットワーク機器402に第2のネットワーク401bを介して接続された第1の監視対象装置103aと、この第1の監視対象装置103aに第3のネットワーク401cを介して接続された第2および第3の監視対象装置103bおよび103cと、第1の監視対象装置103aに第4のネットワーク401dを介して接続された第4の監視対象装置103dと、この第4の監視対象装置103dに第5のネットワーク401eを介して接続された第5および第6の監視対象装置103eおよび103fと、を含む。
【0024】
本発明に関連する第2のネットワーク監視システムは、監視システム101や監視対象装置103a〜103fにおいて、LLDP(Link Layer Discovery Protocol)などのレイヤ2の隣接機器検出を行うプロトコルを使用して、監視対象装置103a〜103fの自動検出を行っている。
【0025】
この場合、LLDPのようなプロトコルはレイヤ2プロトコルであり、サブネットワークを越えて通信することがでない。そのため、監視システム101は、最初に監視システム101に隣接した第1のネットワーク401aから情報を抽出し、その情報をもとに隣接する第1のネットワーク401aに存在するネットワーク機器402に対して、さらに隣接する第2のネットワーク401bの情報を抽出する必要がある。また、場合によっては該当監視システム101において監視することのできない、たとえば異機種の装置(ネットワーク機器)402などを排除する必要がある。その結果、処理が複雑になるという課題がある。
【0026】
図13および図14を参照して、本発明に関連する第3のネットワーク監視システムおよびその監視対象装置に関する情報の登録方法について説明する。図13は本発明に関連する第3のネットワーク監視システムを示すブロックであり、図14は本発明に関連する第3のネットワーク監視システムの監視対象装置に関する情報の登録方法を示すフローチャートである。
【0027】
図13に示されるように、本発明に関連する第3のネットワーク監視システムは、監視システム101と、第1乃至第6の監視対象装置103a〜103fとを備え、それらは監視ネットワーク102を介して接続されている。第1乃至第6の監視対象装置103a〜103f同士は、監視回線104を介して互いに接続されている。
【0028】
次に、図14を参照して、図13に示した関連する第3のネットワーク監視システムにおける監視対象装置に関する情報の登録方法について説明する。この登録方法は、監視システム101から指定された範囲のIPアドレスに対して登録メッセージを送出し、応答のあった監視対象装置に関する情報を登録する方法である。
【0029】
まず、監視システム101は、指定された範囲のIPに対して登録メッセージを送信する(ステップS501)。そして、監視システム101は、監視対象装置から応答があったか否かを判断する(ステップS502)。応答があった場合(ステップS502の「あり」)、監視システム101は、その応答のあった監視対象装置に関する情報を登録する(ステップS503)。その登録後又はステップS502において応答がなかった場合(ステップ502の「なし」)、監視システム101は、指定された範囲すべての確認完了か否かを判断する(ステップS504)。確認完了でない場合(ステップS504の「いいえ」)、処理をステップS501に戻す。確認完了である場合(ステップS504の「はい」)、処理を終了する。
【0030】
この登録方法では、監視対象装置の台数が増加するにつれ、ステップS501にて登録メッセージを送出するIPアドレスの範囲が広くなる。また、監視対象装置が存在するかどうかによらず登録メッセージを送出するため、結果として無駄なメッセージの送出が増加し、監視ネットワーク102のトラフィック増加を招く。さらに、監視システム101では、ステップS502に示すように、応答メッセージがないことをタイムアウトで判断するしかないため、装置登録処理時間の増加を招くという課題がある。
【0031】
そこで、本発明では、監視ネットワークを運用するうえで通常適用されるルーティングプロトコルにおいて独自メッセージを挿入し、処理することにより不要なパケットを送出せず、最低限の設定により監視対象装置を自動的に検出(監視対象装置に関する情報を登録)する方法を提供する。
【0032】
次に、本発明の特徴について説明する。
【0033】
本発明は、監視ネットワーク上に配置された複数台の監視対象装置と、それらを集中管理する監視システムと、から構成されるネットワーク監視システムにおいて、監視ネットワーク上に設置された監視対象装置を自動的に検出(監視対象装置に関する情報を登録)し、監視システムにおいて監視対象装置を自動的に制御可能としたことを特徴としている。
【0034】
次に、本発明の実施の形態の構成について図面を参照して説明する。
【0035】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るネットワーク監視システムについて説明する。図示のネットワーク監視システムは、監視システム101と、第1乃至第6の監視対象装置103a〜103fとを備え、それらは監視ネットワーク102を介して接続されている。第1乃至第6の監視対象装置103a〜103f同士は、監視回線104を介して互いに接続されている。
【0036】
図1において、監視対象装置103a〜103f、及び監視システム101は、本発明の第1の実施形態における監視機器(監視対象装置)の自動検出方法を搭載した装置である。
【0037】
こうした監視システム101、および監視対象装置103a〜103fから構成されるネットワーク監視システムは、多くの監視対象装置を管理し、さらに監視ネットワーク102上にて障害が発生した場合においても監視システム101にて監視制御を継続する。そのため、監視回線104の冗長化やメッシュ構成といった複雑なネットワークを構成することが多い。また、そうしたネットワークにおいて柔軟な経路制御を行うため、ルーティングプロトコルとしてOSPF(Open Shortest Path First)を適用することが多い。ここで、OSPFとは、パケットを送信する際の最適なルートを決定するための経路制御プロトコルの1つで、総経路の料金を考慮して、最適経路を決定する。
【0038】
図2は、図1に示した監視システム101および監視対象装置103の内部構成の詳細を示すブロック図である。
【0039】
監視システム101は、IPによって構成された監視ネットワーク102と1つ以上のインタフェースにて接続されている。
【0040】
また、監視システム101は、その内部に、OSPFプロトコル処理部105と、監視システム情報挿入部106と、登録メッセージ受信処理部109とを持つ。
【0041】
OSPFプロトコル処理部105は、監視ネットワーク102に対してOSPFプロトコルパケットを送出する。また、OSPFプロトコル処理部105は、他の監視対象装置やルータなどから送出されるOSPFプロトコルパケットを受信し、監視ネットワーク102の経路制御を行う。
【0042】
監視システム情報挿入部106は、監視システム101自身が送出するOSPFプロトコルパケットに監視システム101の情報を挿入する。登録メッセージ受信処理部109は、後述するように、監視対象装置103からの登録依頼メッセージを受信する。
【0043】
これに対して、監視対象装置103は、監視システム101と同様に、IPによって構成された監視ネットワーク102と1つ以上のインタフェースにて接続されている。
【0044】
監視対象装置103は、経路制御のためのOSPFプロトコル処理部107と、監視システム情報抽出部108と、登録メッセージ送信処理部110とを持つ。
【0045】
監視システム情報抽出部108は、OSPFプロトコルパケットに含まれる監視システム101の情報を抽出する。登録メッセージ送信処理部110は、抽出した情報をもとに監視システム101への登録要否を判断して、監視システム101に当該監視対象装置103に関する情報の登録依頼メッセージを送出する。
【0046】
ここで、監視システム101と監視対象装置103とを接続するIPネットワーク(監視ネットワーク)102上には、レイヤ2スイッチやルータなどの監視システム101が監視対象としないネットワーク機器も配置されており、これらを含めたネットワーク全体の到達性はOSPFによる経路制御により実現される。
【0047】
監視システム101の監視システム情報挿入部106は、OSPFプロトコルパケットに監視システム101自身の情報を格納して、独自メッセージとして監視ネットワーク102上に配信する。これに対して、監視対象装置103の監視システム情報抽出部108は、OSPFプロトコルパケットに格納された監視システム101の情報により、監視システム101を自動検出(抽出)する。登録メッセージ送信処理部110は、検出(抽出)した監視システム101に対して、監視対象装置103の装置種別や監視用に設定された装置名称などを含めた登録依頼メッセージを送出する。
【0048】
このようにして、本発明の第1の実施形態では、監視ネットワーク102において定常的に処理されるOSPFプロトコルパケットに監視システム101の情報を含めた独自メッセージを、監視ネットワーク102上に配信しているので、受信したOSPFプロトコルパケットから監視システム101の情報を抽出した監視対象装置103が、監視システム101に対して当該監視対象装置103に関する情報の登録依頼を行う登録依頼メッセージを送出することにより、監視システム101において監視対象装置103を自動検出(監視対象装置103に関する情報の登録を)することが可能となる。
【0049】
次に、図2に示したネットワーク監視システムの動作について説明する。
【0050】
監視システム101は、監視ネットワーク102の経路制御を行うため、そのOSPFプロトコル処理部105は、監視ネットワーク102に対して、OSPFプロトコルパケットを送出し、また監視ネットワーク102からOSPFプロトコルパケットを受信する。
【0051】
このとき、OSPFプロトコルでは、図3に示すOpaque LSAとよばれるアプリケーション独自のデータを配信するためのデータ定義が用意されている。
【0052】
本発明の第1の実施形態による監視システム101は、このOpaque LSAデータ定義を利用し、Opaque LSAのLink State Typeに、OSPFネットワーク全体に配信する情報として定義されている“11”を設定し、Opaque Typeには“128”から“255”の範囲にて任意の値を設定し、Opaque IDには“0”を設定する。ここで、Opaque Typeは“128”から“255”の値は独自仕様として定義されているため、監視システム101、および監視対象装置103において共通となる値を使用すればよく、本発明の第1の実施形態では値の特定は行わない。
【0053】
このほかのOpaque Informationを除いたデータは、OSPFの標準的な動作として規定された値を設定するものとし、ここでは説明しない。
【0054】
本発明の第1の実施形態における登録方法では、図4に示すように、Opaque Informationにおいて、一般的に使用される32bit単位長にて定義されたTLVフォーマットを利用し、監視システム101のIPアドレス、および監視システム101の種別を設定する。このとき、図4に示すように、監視システム101のアドレスは、IPv4であってもIPv6であってもデータ長が変更となるだけである。また、OSPFとしても、IPv4であればOSPFv2を使用し、IPv6であればOSPFv3を使用することで、本発明の第1の実施形態による手法を適用することが可能である。
【0055】
監視システム101から配信された図4に示すOpaque LSAは、図5に示すように、監視システム101や監視対象装置103と同様にOSPFによる経路制御を行うルータ801で受信される。前述のようにOpaque Typeが独自仕様用途に定義された値に設定されているため、ルータ801自身では該当するOpaque LSAの情報の抽出や特定の処理は実施せず、ルータ801に接続された監視ネットワーク102上に転送を行う(図中に、Opaque LSA 802bとして記載している)。
【0056】
このようにして、監視システム101の情報は、OSPFプロトコルパケットを介して監視ネットワーク102全体に配信された状態となる。
【0057】
この状態において、新規に第1の監視対象装置103aを設置したとする。新規の監視対象装置の設置時には、該当第1の監視対象装置103aに対してIPアドレスの設定を行い、管理用の装置名称の設定、およびOSPFにより経路制御の有効化設定を行う。
【0058】
新規に設置された第1の監視対象装置103aにおいてOSPFが有効化されると、第1の監視対象装置103aにおいて監視システム101から配信されたOpaque LSA 802b監視システム情報が受信される。
【0059】
第1の監視対象装置103aは、図6に示す手順により、受信した監視システム情報を抽出し、登録メッセージ送信処理部110にて該当監視システム101に対して自身に関する情報を登録する必要があるかどうかを判断し、すでに登録ずみであればなにも処理を行わない。
【0060】
詳述すると、第1の監視対象装置103aのOSPFプロトコル処理部107は、OSPFパケットを受信する(ステップS901)。第1の監視対象装置103aの監視システム情報抽出部108は、その受信したOSPFパケットにOpaque LSAが含まれているか否か判断する(ステップS902)。Opaque LSAが含まれていれば(ステップS902の「はい」)、第1の監視対象装置103aの監視システム情報抽出部108は、Opaque LSAより、監視システム101の種別、IPアドレスを取得する(ステップS903)。
【0061】
次に、第1の監視対象装置103aの登録メッセージ送信処理部110は、その取得した監視システム101の種別、IPアドレスが登録依頼済みか否か判断する(ステップS904)。登録依頼済みでなければ、(ステップS904の「いいえ」)、第1の監視対象装置103aの登録メッセージ送信処理部110は、監視システム101に対して登録依頼メッセージを通知する(ステップS905)。
【0062】
そして、第1の監視対象装置103aの登録メッセージ送信処理部110は、監視システム101から登録依頼受信完了通知を受信したか否かを判断する(ステップS906)。登録依頼受信完了通知を受信したなら(ステップS906の「はい」)、処理を終了する。登録依頼受信完了通知を受信しないなら(ステップS906の「いいえ」)、処理をステップS905に戻す。
【0063】
登録メッセージ送信処理部110にて登録依頼を行う必要があると判断された場合、図7に示すように、第1の監視対象装置103aの登録メッセージ送信処理部110は、監視システム情報に含まれる監視システム101のタイプに応じて適切な通信手段を利用して、該当監視対象装置103aのIPアドレス、装置名称、装置種別を含む登録依頼メッセージ1101を監視システム101に対して発出する。このとき、第1の監視対象装置103aが発出する登録依頼メッセージ1101は、Opaque LSA 802bに含まれる監視システム種別に応じて適切なメッセージを使用して行うこととする。したがって、本発明の第1の実施形態では、具体的なメッセージ種別やフォーマットについては規定しない。
【0064】
監視システム101の登録メッセージ受信処理部109は、図8に示すように、第1の監視対象装置103aから登録依頼メッセージを受信する(ステップS1001)と、すでに登録済みか否か判断する(ステップS1002)。登録済みでなければ(ステップS1002の「いいえ」)、監視システム101の登録メッセージ受信処理部109は、登録処理を実施する(ステップS1003)。その後、監視システム101のOSPFプロトコル処理部105は、該当する第1の監視対象装置103aに対して登録依頼メッセージの受信完了を通知し(ステップ1004)、第1の監視対象装置103aからの登録依頼メッセージの送出を抑止する。
【0065】
第1の監視対象装置103aの登録メッセージ送信処理部110は、登録依頼メッセージの受信完了通知により、図6のステップS904の処理にて監視システム101の情報に対して登録依頼済みと判断し、以後OSPFパケットに含まれる監視システム情報抽出時に登録依頼を行わないように制御する。
【0066】
このように、監視対象装置103は、登録依頼メッセージに対して自身に関する情報を含めて監視システム101に登録依頼を行っている。その結果、人手による作業は、監視対象装置の設置時の作業のみとなり、誤設定の機会を減らすことが可能となる。
【0067】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態においては、以下に記載するような効果を奏する。
【0068】
第1の効果は、OSPFプロトコルパケットにおいて独自メッセージを定義し、OSPFプロトコルによりネットワーク全体への配信制御を行っているので、サブネットワークの制限なく監視システムの情報を配信できることである。
【0069】
第2の効果は、ルーティングプロトコルパケットにおいて独自メッセージを定義しているので、本第1の実施形態で提案する機能を持たない通常のルータが内容を解釈して登録依頼通知を発出することはなく、また、存在しない装置に対して余計なパケットを送出することもないことである。このため、監視システムにおいて監視対象とする装置だけを抽出(監視対象装置に関する情報の登録を)することが可能となる。
【0070】
第3の効果は、監視対象装置に登録された情報をもとに監視システムへの登録依頼を行うため、誤設定による接続異常を極力回避することが可能となることである。
【0071】
図9を参照して、本発明の第2の実施形態に係るネットワーク監視システムについて説明する。本発明の第2の実施形態として、その基本的構成は、上記の通りであるが、OSPFのスタブエリア1202とよばれるエリアの対応についてさらに工夫している。
【0072】
OSPFではネットワーク構成が大規模になると経路情報が大きくなるため、ネットワーク全体を複数のエリアに分割して経路情報を縮小することが可能となる。このとき、OSPF上ではエリアからの出口が1箇所しか存在しない場合、スタブエリア1202と呼ばれる特殊なエリアとして定義し、該当エリア1202には全ての経路情報を配布することなく、エリア外部へのルートはデフォルトルートとしてのみ配信されるようになる。
【0073】
この場合、Opaque LSAのLink State Typeが“11”として定義された監視システム情報を含むOpaque LSA 1203は、スタブエリア1202内部の監視対象装置103a〜130cに配信されなくなる。
【0074】
このため、この第2の実施形態では、スタブエリア1202の境界に配置された監視対象装置1201が、監視システム情報の再配信処理部1205を持つ。この再配信処理部1205は、スタブエリア1202外より受信したOpaque LSA 1203より監視システム情報を抽出し、スタブエリア1202内にエリア内部にのみ配布するタイプであるOpaque LSA Link State Type10として再配信する仕組みを持つ。
【0075】
これにより、スタブエリア1202に存在する監視対象装置103a〜130cに対しても監視システム情報が到達し、前述する第1の実施形態の動作と同様に、監視システム101に対して登録依頼メッセージを送出することが可能となる。
【0076】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0077】
101 ・・・ 監視システム
102 ・・・ 監視ネットワーク
103a〜103f ・・・ 監視対象装置
104 ・・・ 監視回線
105 ・・・ OSPFプロトコル処理部
106 ・・・ 監視システム情報挿入部
107 ・・・ OSPFプロトコル処理部
108 ・・・ 監視システム情報抽出部
109 ・・・ 登録メッセージ受信処理部
110 ・・・ 登録メッセージ送信処理部
801 ・・・ ルータ
1101 ・・・ 登録依頼メッセージ
1201 ・・・ 監視対象装置
1202 ・・・ スタブエリア
1205 ・・・ 再配信処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視ネットワーク上に配置された複数台の監視対象装置と、該複数台の監視対象装置を集中管理する監視システムと、を有するネットワーク監視システムにおいて、前記複数台の監視対象装置に関する情報を前記監視システムに登録する方法であって、
前記監視システムが、前記監視ネットワークにおいて適用されるOSPFルーチンプロトコルにおいて独自メッセージを付与して、前記監視ネットワーク全体に配信するステップ、
前記独自メッセージを受信した監視対象装置が、前記監視システムに対して当該監視対象装置に関する情報の登録依頼を行うステップと、
を含む、監視対象装置の登録方法。
【請求項2】
前記配信するステップは、前記監視システムが、前記独自メッセージに、当該監視システムの情報を含めて前記監視ネットワーク上に配信し、
前記登録依頼を行うステップは、前記独自メッセージを受信した監視対象装置が、自身に関する情報を含めた登録依頼メッセージを前記監視システムに送出する、
請求項1に記載の監視対象装置の登録方法。
【請求項3】
前記監視システムが、前記登録依頼メッセージを受信するステップを更に含む、請求項2に記載の監視対象装置の登録方法。
【請求項4】
前記監視システムが、前記登録依頼メッセージを受信後、該当する監視対象装置に対して登録依頼メッセージの受信完了を通知するステップを更に含む、請求項3に記載の監視対象装置の登録方法。
【請求項5】
監視ネットワーク上に配置された複数台の監視対象装置と、該複数台の監視対象装置を集中管理する監視システムと、を有するネットワーク監視システムにおいて、
前記監視システムは、
前記監視ネットワークに対してOSPFプロトコルパケットを送出し、前記複数台の監視対象装置から送出されるOSPFプロトコルパケットを受信する監視側OSPFプロトコル処理部と、
前記OSPFプロトコルパケットに当該監視システムの情報を格納して前記監視ネットワーク上に配信する監視システム情報挿入部と、を有し、
前記複数台の監視対象装置の各々は、
前記監視ネットワークに対してOSPFプロトコルパケットを送出し、前記監視システムから送出されるOSPFプロトコルパケットを受信する装置側OSPFプロトコル処理部と、
前記OSPFプロトコルパケットに格納された前記監視システムの情報により、前記監視システムを抽出する監視システム情報抽出部と、
前記抽出した監視システムに対して、当該監視対象装置の装置種別や監視用に設定された装置名称を含めた登録依頼メッセージを送出する登録メッセージ送信処理部と、を有する
ネットワーク監視システム。
【請求項6】
前記監視システムは、前記登録依頼メッセージを受信する登録メッセージ受信処理部を更に含む、請求項5に記載のネットワーク監視システム。
【請求項7】
監視ネットワーク上に配置された複数台の監視対象装置を集中管理する監視システムであって、
前記監視ネットワークに対してOSPFプロトコルパケットを送出し、前記複数台の監視対象装置から送出されるOSPFプロトコルパケットを受信するOSPFプロトコル処理部と、
前記OSPFプロトコルパケットに当該監視システムの情報を格納して前記監視ネットワーク上に配信する監視システム情報挿入部と、
を有する監視システム。
【請求項8】
前記複数台の監視対象装置のいずれかから送出される登録依頼メッセージを受信する登録メッセージ受信処理部を更に含む、請求項7に記載の監視システム。
【請求項9】
監視ネットワーク上に配置され、監視システムによって集中管理される監視対象装置であって、
前記監視ネットワークに対してOSPFプロトコルパケットを送出し、前記監視システムから送出されるOSPFプロトコルパケットを受信するOSPFプロトコル処理部と、
前記OSPFプロトコルパケットに格納された前記監視システムの情報により、前記監視システムを抽出する監視システム情報抽出部と、
前記抽出した監視システムに対して、当該監視対象装置の装置種別や監視用に設定された装置名称を含めた登録依頼メッセージを送出する登録メッセージ送信処理部と、
を有する監視対象装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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