説明

ネットワーク管理装置及びプログラム

【課題】パスの設定を行うノード装置が含まれているパケット・ネットワークにおいて、各パケットの経路を管理できるネットワーク管理装置を提供する。
【解決手段】ネットワーク管理装置は、管理区分内の各ノード装置間のリンクについてのリンク情報をいずれかのノード装置から取得、あるいは、各ノード装置が送信するリンク情報を監視することで取得する手段と、リンク情報及び所定の経路計算アルゴリズムに基づきパケットの経路を判定するための経路情報を作成する手段と、ラベル・スイッチ・パスの設定が可能なノード装置を判定する手段と、判定したノード装置から、該ノード装置が設定しているラベル・スイッチ・パスの経路を示すパス情報を取得する手段と、ラベル・スイッチ・パスに収容されるパケットの経路については、該ラベル・スイッチ・パスの経路へと該経路情報を修正する手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パケットの経路管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークは、一般的に、その管理主体等により複数の管理区分(Administrative Domain)に分割することができ、各管理区分内において、ルータ等の交換処理を行うノード装置は、OSPF(Open Shortest Path First)や、ISISといったリンクステート型ルーティング・プロトコルを用いてリンク情報を含むリンク広告(LSA:Link State Advertisement)を交換し、これにより管理区分内の総てのノード装置間で同期したリンク情報データベース(LSDB:Link State DataBase)を作成して保持し、この同期したLSDBに基づき各IPパケットの宛先に至る最短経路を計算して各パケットの経路を示す経路表を作成し、これにより通信を行っている。
【0003】
また、障害時における通信への影響を判定するため、管理区分内のノード装置と同一LSDBを保持し、ノード装置と同一の経路計算アルゴリズムを用いて各ノード装置が保持しているのと同じ経路表を作成するネットワーク管理装置が、例えば、非特許文献1に記載されている。なお、非特許文献1において、ネットワーク管理装置が保持するLSDBは、管理区分内のいずれかのノード装置からその内容を直接取得したもの、あるいは、リンク上を流れるLSAを監視してネットワーク管理装置が作成したものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Shu Zhang al.、“Rtanaly:A Systemto Detect and Measure IGP Routing Changes”、ISPJ Digital Courier、Vol.2、pp.198−206、2006年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、リソースの効率的な利用や、明示的な経路制御、さらには、障害復旧の高速化を目的とし、MPLS−TE(Multiprotocol Label Switching−Traffic Engineering)技術がIPネットワークに適用されている。具体的には、2つのルータ間にラベル・スイッチ・パス(LSP:Label Switched Path)を設定し、この2つのノード装置の一方から他方に送信するIPパケットについては、このパスを通過させる構成が用いられている。
【0006】
MPLS−TEにおいて、2つのノード装置間に設定するLSPの経路は、例えば、LSPの帯域といったLSPに関する種々のパラメータや、LSP設定時のネットワーク状況等に依存し、さらには、ネットワークの運用者が経路を指定することも可能であるため、上記LSDBと所定の経路計算アルゴリズムにより定まる経路とは、一般的には、異なることになる。つまり、非特許文献1に記載のネットワーク管理装置では、任意のパケットが通過する経路を管理することはできない。
【0007】
したがって、本発明は、MPLS−TEの様に、パスの設定を行うノード装置が含まれているパケット・ネットワークにおいて、各パケットの経路を管理できるネットワーク管理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるパケット・ネットワークのネットワーク管理装置は、
管理区分内の各ノード装置間のリンクについてのリンク情報をいずれかのノード装置から取得、あるいは、各ノード装置が送信するリンク情報を監視することで取得する第1の手段と、リンク情報及び所定の経路計算アルゴリズムに基づきパケットの経路を判定するための経路情報を作成する第2の手段と、管理区分内の各ノード装置の中でラベル・スイッチ・パスの設定が可能なノード装置を判定する第3の手段と、前記判定したラベル・スイッチ・パスの設定が可能なノード装置から、該ノード装置が設定しているラベル・スイッチ・パスの経路を示すパス情報を取得する第4の手段と、ラベル・スイッチ・パスに収容されるパケットの経路については、該ラベル・スイッチ・パスの経路へと該経路情報を修正する第5の手段とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第3の手段は、リンク情報に含まれるラベル・スイッチ・パスの設定が可能であることを示す情報を監視し、ラベル・スイッチ・パスの設定が可能であることを示すリンク情報を広告したノード装置を、ラベル・スイッチ・パスの設定が可能なノード装置と判定することも好ましい。
【0010】
本発明によるプログラムは、
上記ネットワーク管理装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
パケット・ネットワーク内を流れるパケットの経路を正確に把握することができ、障害発生により影響を受ける通信を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるネットワーク管理装置のブロック図である。
【図2】本発明による経路判定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明によるネットワーク管理装置のブロック図である。図1に示す様に、ネットワーク管理装置は、LSA情報取得部1と、LSDB2と、パス設定ノード装置判定部3と、LSP情報取得部4と、経路計算部5と、経路修正部6と、経路表7と、検索部8とを備えている。なお、ネットワーク管理装置は、管理区分内の各ノード装置と通信することができる。
【0014】
LSA情報取得部1は、管理区分内のノード装置からLSDBの内容を直接取得することにより、あるいは、ノード装置間で交換されるLSAを監視することにより、リンク情報を取得し、管理区分内の全ノード装置が有するのと同じ内容のLSDB2を作成する。リンク情報には、各リンクについて、リンクの識別子、リンク両端のノード装置の識別子、コスト等の情報に加え、そのリンク情報を広告したノード装置がLSPを設定できる装置であるか否かを示す情報が含まれている。例えば、IETFのRFC3630によると、Link TLVを含むOpaqueLSAを広告しているノード装置は、LSPの設定が可能な装置である。
【0015】
パス設定ノード装置判定部3は、LSDB2に含まれるリンク情報から、上記LSPの設定が可能であるノード装置を判定し、LSP情報取得部4は、このLSPの設定が可能であると判定した各ノード装置に対して、設定しているLSPについてのパス情報を要求して、パス情報を取得する。パス情報とは、LSPの設定を行ったノード装置が保持しているLSPの管理情報であり、パスの識別子、パスの始点となるノード装置、終点となるノード装置、パスが経由するリンク又はノード装置の情報が含まれている。
【0016】
経路計算部5は、LSDB2の情報からノード装置が使用しているものと同じ経路計算アルゴリズムを用いて任意のネットワーク間の経路を計算し、パケットの経路を特定する経路情報のデータベースである経路表7を生成する。ここで、経路計算部5が計算する経路情報は、LSPによらず転送されるパケットの経路となる。続いて、経路修正部6は、LSP情報取得部4が取得したパス情報に基づき各LSPの始点及び終点のノード装置を判定し、LSPに収容されるパケットについては、LSPの経路となる様に経路表7の経路情報を修正する。より具体的には、LSPの始点のノード装置が受信したIPパケットのうち、終点のノード装置に送信しなければならないIPパケットについては、LSPの経路となる様に経路表7の経路情報を修正する。
【0017】
例えば、図2に示すネットワーク構成において、経路計算部5が計算した経路情報によるネットワークPからネットワークQに至る経路がノード装置D−F−G−Cであったとする。ここで、ノード装置DとCの間にLSPが設定されていない場合、ノード装置Dに到着したネットワークQ宛てのパケットは、ノード装置F−G−Cと転送されてネットワークQに送信されることになる。これに対して、ノード装置DからCに、ノード装置AとBを経由するLSPが設定されている場合、ノード装置Dに到着したネットワークQ宛てのパケットは、このLSPについてのラベルが付与されて、つまりこのパスに収容され、ノード装置A及びB経由でノード装置Cに転送され、ノード装置Cにおいてラベルが取り除かれてネットワークQに送信されることになる。このため、経路修正部6は、経路計算部5が求めたネットワークPからネットワークQへの経路であるノード装置D、F、G、Cを、パス情報に基づきノード装置D、A、B、Cに修正する。
【0018】
検索部8は、経路表7の情報から、例えば、あるリンクやノード装置を経由する経路を検索して出力する機能を有し、例えば、リンク及び/又はノード装置に障害が発生した場合、この障害によりどのネットワーク間の通信が影響を受けているかを出力する。これによりネットワークの運用者は素早く障害対応を行える様になる。
【0019】
なお、本発明によるネットワーク管理装置は、コンピュータを図1の各部として機能させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。さらに、本発明は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せによっても実現可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 LSA情報取得部
2 LSDB
3 パス設定ノード装置判定部
4 LSP情報取得部
5 経路計算部
6 経路修正部
7 経路表
8 検索部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パケット・ネットワークのネットワーク管理装置であって、
管理区分内の各ノード装置間のリンクについてのリンク情報をいずれかのノード装置から取得、あるいは、各ノード装置が送信するリンク情報を監視することで取得する第1の手段と、
リンク情報及び所定の経路計算アルゴリズムに基づきパケットの経路を判定するための経路情報を作成する第2の手段と、
管理区分内の各ノード装置の中でラベル・スイッチ・パスの設定が可能なノード装置を判定する第3の手段と、
前記判定したラベル・スイッチ・パスの設定が可能なノード装置から、該ノード装置が設定しているラベル・スイッチ・パスの経路を示すパス情報を取得する第4の手段と、
ラベル・スイッチ・パスに収容されるパケットの経路については、該ラベル・スイッチ・パスの経路へと該経路情報を修正する第5の手段と、
を備えているネットワーク管理装置。
【請求項2】
第3の手段は、リンク情報に含まれるラベル・スイッチ・パスの設定が可能であることを示す情報を監視し、ラベル・スイッチ・パスの設定が可能であることを示すリンク情報を広告したノード装置を、ラベル・スイッチ・パスの設定が可能なノード装置と判定する、
請求項1に記載のネットワーク管理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のネットワーク管理装置としてコンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−212834(P2010−212834A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54565(P2009−54565)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】