説明

ノイズ検出機能を備えた画像診断支援方法

【課題】被験者の負担を減らして、眼底画像等の医用画像からレンズの汚れ等に起因するノイズを正確に検出する。また、医用画像から病変の候補領域を精度よく抽出する。
【解決手段】複数の被写体を撮影した複数枚の画像の色成分画像それぞれで、近傍画素の画素値以上の画素値を有する画素を病変画素として検出し、所定値以上の数枚の画像で連続して病変画素として検出された画素をノイズ画素候補として検出する。撮影タイミングの時系列順に前記複数枚の画像を遡ってノイズ発生タイミングを探索し、該ノイズ画素の位置が病変候補画素ではなく、かつ、撮影されるべき器官の一部でもない画像のうち最新のものの次の画像から、該ノイズ画素の位置にノイズがあると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮影して得た医用画像中からノイズを検出する方法と、前記画像中に存在する病変を検出し、前記病変を表示装置に表示して診断の効率化を図る画像診断支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラのレンズ等の光学部品に埃などの汚れが付着した場合やデジタルカメラの撮像素子に欠陥があった場合、前記カメラで撮影して得た画像に黒斑点や白斑点といったノイズが現れる。画像診断支援装置において、このノイズは病変と誤解される恐れがある。したがって、ノイズと病変を区別する必要があり、また、用途に応じてノイズを除去する必要がある。
【0003】
カメラのレンズ等に付着した汚れ等によって画像に生じたノイズを検出する方法として、撮像装置の動作に関わる情報を用いてノイズを検出あるいは除去する方法が数多く考案されている。特開2004−16486号公報(特許文献1)では、あらかじめ撮像装置で撮影した補正パターン画像を用いてノイズを除去している。補正パターン画像の作成方法は、焦点位置を変えて撮影して得た画像と焦点位置情報をあらかじめ記憶しておき、撮影時の焦点位置とあらかじめ記憶されている焦点位置との比率を算出し、あらかじめ記憶されている画像に前記比率を演算することで被写体撮影時の焦点位置に応じた補正パターンを作成する。また、一様な反射面で構成された光学部材をあらかじめ撮影して得た画像を補正パターン画像として用いる方法も、特開2004−16486号公報に開示されている。
【0004】
特開2004−153422号公報(特許文献2)では、あらかじめ撮影した基準画像と被写体を撮影して得た画像との差分をとってノイズを検知している。また、被写体を撮影した画像とカメラを前後移動あるいは回転してから被写体を撮影して得た画像と差異をとってノイズを検知する方法も、特開2004−153422号公報に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−16486号公報
【0006】
【特許文献2】特開2004−153422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来技術において、特許文献1の一様な反射面で構成された光学部材を撮影した画像を用いる技術では、ノイズを検出するために毎回カメラの前に光学部材を置く必要があるため、撮影者の手間が増える。特許文献2のあらかじめ撮影した基準画像を用いる技術を画像診断支援のための眼底画像のノイズ検出に用いることを考えると、眼底画像には個人差が大きいため、基準画像を得るのが困難である。また、これらの技術では、既に撮影済みの眼底画像からノイズを検出することはできない。さらに、特許文献2の被写体を撮影した画像とカメラを前後移動あるいは回転させ被写体を繰返し撮影してノイズを除去する技術を医用画像に適用するとすれば、被験者を複数回撮影する必要があり、被験者にとっての負担が大きい眼底画像等の撮影においては、大きなデメリットがある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、補正パターン画像の撮影や、被写体を複数回撮影するなどによって撮影回数を増やすことなく、眼底画像等の医用画像からレンズの汚れ等に起因するノイズを検出する方法を備えることで、医用画像から病変を精度よく抽出する方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像診断支援方法は、(1):画像入力装置に接続される画像診断支援処理部に、複数の画像の入力を受け付ける第1のステップと、該複数の画像の色成分画像のそれぞれについて、各画素の画素値に基づいて病変候補画素を検出する第2のステップと、該複数の画像において、繰返し病変候補画素として検出される画素をノイズ画素と判断する第3のステップと、該複数の画像において、該ノイズ画素の位置以外に検出された病変候補画素を病変候補領域と判断する第4のステップと、前記病変候補領域およびノイズ画素の情報を前記複数の画像のそれぞれに対応付けて格納する第5のステップとを実行させることを特徴とする。
【0010】
(2):画像診断支援方法(1)であって、前記第2のステップにおいて、前記複数の画像についての検出結果を画素ごとに累積し、前記第3のステップにおいて、前記累積結果を参照し、病変候補画素として検出された累積値が閾値以上の画素をノイズ画素と判断することを特徴とする。
【0011】
(3):画像診断支援方法(2)であって、前記第2のステップにおいて、該画素が撮影されるべき器官の一部ではないことを条件に病変候補画素を検出することを特徴とする。
【0012】
(4):(1)から(3)いずれかの画像診断支援方法であって、前記第3のステップにおいて、撮影タイミングの時系列順に前記複数の画像を遡ってノイズ発生タイミングを探索し、該ノイズ画素の位置が病変候補画素ではなく、かつ、撮影されるべき器官の一部でもない画像のうち最新のものの次の画像から、該ノイズ画素の位置にノイズがあると判断することを特徴とする。
【0013】
(5):(1)から(4)のいずれかの画像診断支援方法であって、前記ノイズとして検出された画素を連結してノイズ領域を作成し、ノイズ領域を表示装置に表示させる第6のステップを実行させることを特徴とする。
【0014】
(6):前記(1)ないし(4)のいずれかの画像診断支援方法であって、前記ノイズとして検出されたノイズ画素の近傍の画素群のうち、ノイズ画素と判定されていない画素群の平均値を算出し、前記ノイズ画素の画素値を前期平均値に置き換えた画像を作成し、前記作成した画像を表示装置に表示させる第7のステップを実行させることを特徴とする。
【0015】
(7):(1)ないし(6)のいずれかに記載の画像診断支援方法であって、前記病変候補領域の情報を前記画像と対応付けて表示装置に表示させる第8のステップを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被験者に負担を低減し、人手による手間をかけることなくノイズを正しく検出できる。このノイズ検出方法により、健康な人を病気であると判定する率である偽陽性率を低減した画像診断支援方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を眼底画像の例により説明する。
病変のない眼底画像の模式図を図7(A)に示し、糖尿病網膜症患者の眼底画像の模式図を図7(B)に示す。病変のない眼底画像には、血管(703)、視神経乳頭(704)、黄斑部(705)が撮像される。一方、糖尿病網膜症患者の眼底画像には、前記血管、視神経乳頭、黄斑部に加えて、明色調の白斑(701)と暗色調の出血(702)といった病変が撮像される。眼底画像の診断支援の一つの方法は、眼底画像から病変候補領域を検出し、前記病変候補領域を医師に提示するものである。
【0018】
眼底画像にノイズによる明色調の領域や暗色調の領域がある場合、前記ノイズが明色調病変の白斑や暗色調病変の出血と間違われる可能性がある。そこで、眼底画像のノイズを検出し、前記ノイズ領域を表示装置に表示させる、または、前記ノイズ領域を補間する等の処理を実行する。前記ノイズ検出方法は、病変候補画素として検出される頻度の高い画素は、ノイズにより暗色調あるいは明色調で撮像されている可能性が高いことを利用したものである。
【0019】
以下、デジタル眼底カメラ等の撮像手段を用いてあらかじめ撮影して得た複数枚の眼底画像に対する画像診断支援方法を記述する。
図1は、眼底画像に存在する病変を検出し、検出された病変を表示装置に表示する画像診断支援方法を示す処理フロー図である。画像診断支援処理は、デジタル眼底カメラ等の撮像手段により撮影して得た複数枚の眼底画像を画像入力として取り込み(101)、画像入力の緑成分画像の画素値が周辺の画素と比べて所定の閾値以上、高いまたは低い画素からなる病変の候補領域を抽出し(102)、抽出結果をそれぞれの検出結果画像(108)に書き込む。検出結果画像(108)は、各画素値が病変やノイズであること等を示すラベルを含むデータであり、後述する画像診断支援装置のメモリ内の検出結果記憶手段109に記憶されている。次に、検出結果記憶手段109に格納されている検出結果画像108を参照して、病変候補画素として繰り返し検出されている画素をノイズ画素と判定し、判定結果を検出結果画像108に書き込む(103)。次に、前記ノイズ画素それぞれに対して、複数枚の画像を時系列順に遡ってノイズが発生した画像をそれぞれ判定し、前記判定された画像に対応する検出結果画像108にノイズ情報を書き込む(104)。ノイズ発生画像を判定後、時間的に最も新しい画像の眼底画像を表示する際に、ノイズと判定された領域付近に警告を表示し、病変と判定された領域の周囲を強調した画像を作成して表示装置に表示する(105)。その後、時間的に最も新しい画像より前の過去の画像のそれぞれについても、ノイズと判定された領域付近に警告を出し、病変と判定された領域の周囲を強調した画像を作成し、必要に応じて画像を1枚ずつ表示装置に表示してもよい。
【0020】
ノイズと判定された領域付近に警告を出す処理は医師から指示があったときのみ行ってもよい。また、ノイズと判定された領域付近に警告を出す代わりに、ノイズと判定された領域を補正することも可能である。
【0021】
以下、画像診断支援処理およびノイズ検出処理を実行する画像診断支援装置および図1の処理の各部の詳細について図を用いて説明する。なお、画像入力101は従来の技術と同様である。
図2は、画像診断支援処理およびノイズ検出処理を実行する画像診断支援装置の構成を示す。図2において、201は被験者の眼底を撮影するカメラ、209は図1における101から105までを行なう検出装置である。カメラ201と検出装置209は、ケーブル208で接続されている。ここでは、カメラ201の代わりに、既に撮影済みのフィルムを画像として取り込むスキャナやデジタル画像の読み込み装置等を用いてもよい。
【0022】
検出装置209は、装置内部の各部を接続するためのバス206、カメラ201から画像入力101を行なう画像入力部202、検出装置209の全体の制御およびノイズ検出処理と画像診断支援処理を行なうCPU203、ノイズ検出結果や病変の候補領域検出結果を表示する表示部204、起動時の操作や診断結果の書き込み等を行なうための操作部205、ノイズ検出処理と画像診断支援処理に必要な画像データ(検出結果画像108など)やプログラム等を格納するためのメモリ207を備える。図1の101から105のステップは、メモリ207に格納されたプログラムをCPU203で実行することにより実現される。
【0023】
図3は、病変候補領域抽出処理フロー(102)を示している。病変候補領域抽出処理102は、複数の画像の色成分画像のそれぞれについて、各画素の画素値に基づいて病変候補画素を検出し、前記画素が眼底組織の一部ではないことを条件に病変候補画素を抽出する処理である。抽出する病変は明色調の病変と暗色調の病変である。病変候補領域の抽出処理は、まず、時間的に最も古い方からの順番を表すiを1として(301)、眼底組織領域を検出する。眼底組織領域の検出処理は、画像入力から血管領域、視神経乳頭領域、黄斑部領域を検出し、検出結果を検出結果画像108に書き込む。血管領域の検出方法は、例えば電子情報通信学会論文誌、Vol.E87-D, No.1、pp.155-163の記載にある公知の技術を適用する。視神経乳頭領域の検出方法は、例えばIEEE Transactions on Medical Imaging, Vol.21, No.10, October 2002の記載にある公知の技術を適用する。黄斑部領域の検出方法は、例えば特開平7−136123号公報の記載にある公知の技術を適用する。この結果、各入力画像について、図9(A−1)に示すような検出結果画像データが生成される。ここでは、血管領域の画素ついて9のフラグが立てられ、視神経乳頭領域の画素について8のフラグが立てられ、黄斑部領域の画素について7のフラグが立てられる。
【0024】
次に、第i画像の検出結果画像データで血管領域の画素(フラグ9)と視神経乳頭領域の画素(フラグ8)と黄斑部領域の画素(フラグ7)を除く位置の画素のうち、第i画像の緑成分画像の近傍画素の画素値より所定の閾値以上、暗い画素を暗色調病変候補画素として検出し(303)、検出結果を検出結果画像108に書き込む。また、第i画像の緑成分画像の近傍画素の画素値より所定の閾値以上、明るい画素を明色調病変候補画素として検出し(304)、検出結果を検出結果画像108に書き込む。ここで、緑成分画像の代わりに病変とそれ以外のコントラストが高くなる色成分画像を用いてもよい。また、画像補正を行ってから、緑成分画像あるいは前記コントラストが高くなる色成分画像を用いてもよい。近傍画素の画素値は、前記血管領域の画素と視神経乳頭領域の画素と黄斑部領域の画素を含めて算出する方法あるいは除いて算出する方法どちらを用いてもよい。病変候補画素の検出方法は、この方法に限らず、例えば、David Benjamin Usher, “Image Analysis for the Screening of Diabetic Retinopathy”, Doctor of Philosophy Thesis, King’s College, University of London の記載にある公知の技術が適用できる。この結果、各入力画像について、図9(A−2)に示すように検出結果画像データが変更される。ここでは、近傍画素よりも暗い画素について1のフラグが立てられ、近傍画素よりも明るい画素について2のフラグが立てられる。iがwでなければ(305)、i=i+1(306)として、302以降の処理を繰り返す。以上、302、303、304を最も過去の画像(i=1)から最新画像(i=w)まで繰り返す。
【0025】
図4は、ノイズ画素検出処理フロー(103)を示している。ノイズ画素検出処理103では、複数の画像についての検出結果を画素ごとに累積し、前記累積結果を参照し、病変候補画素として検出された累積値が閾値以上の画素をノイズ画素と判断する。以下、黒色のノイズ画素を検出する処理を説明する。前記説明における病変は、暗色調病変を指すものとする。検出結果記憶手段109に格納されている第1画像から第w画像の検出結果画像108の各画素を参照し病変候補画素(フラグ1)の累積頻度を算出して、各画素が病変候補画素の累積頻度である累積頻度画像を作成してメモリに格納する(401)。図9(B)に、累積頻度画像データの例を示す。ここでは、画素ごとに、第1画像から第w画像のいくつの画像においてその画素が病変候補画素として検出されたかの累積頻度が格納される。次に、累積頻度画像において画素値がしきい値以上の画素をノイズ画素として検出し(402)、その結果をノイズ検出結果画像110に書き込む。これは、病変候補画素として検出される頻度の高い画素は、ノイズにより暗色調で撮像されている可能性が高いと考えられるからである。ここで、しきい値を例えば5とすると、病変候補画素としての検出の累積頻度が9となっている画素はノイズ画素と判断され、累積頻度が1となっている画素は、ノイズ画素ではなく正しく病変画素として検出された画素と判断される。ノイズ検出結果画像(110)は、画像診断支援装置のメモリ内の検出結果記憶手段109に記憶されている。
【0026】
図5は、ノイズ発生画像の判定処理フロー(104)を示している。ノイズ発生画像の判定処理104では、撮影タイミングの時系列順に前記複数の画像を遡ってノイズ発生タイミングを探索し、前記ノイズ画素の位置が病変候補画素ではなく、かつ、眼底組織の一部でもない画像のうち最新のものの次の画像から、前記ノイズ画素の位置にノイズがあると判断する。ノイズ発生画像の判定処理フローは、前記の各ノイズ画素の位置を検出結果画像110より参照し、処理対象位置リストに格納する(501)。時間的に最も新しい画像からの順番を表すkをwとして(502)、複数枚の眼底画像のうち、第k画像と第k+1画像において処理対象位置の画素を検出結果画像108より参照する(503)。第k画像の参照結果が病変候補画素(フラグ1)のとき(504)、前記画素をノイズと判定し(507)、結果を第k画像の検出結果画像108に書き込む。第k画像の参照結果が病変画素(フラグ1)でないとき(504)、第k+1画像の参照結果がノイズ画素(フラグ3)であり、第k画像の参照結果が血管領域の画素(フラグ9)あるいは黄斑部領域の画素(フラグ7)ならば、前記画素をノイズと判定し(507)、結果を第k画像の検出結果画像108に書き込む。前記書き込み後、第k画像における502から507までの処理を全ての処理対象位置に対して実行したか否かを調査する(509)。
【0027】
第k画像の参照結果が病変画素(フラグ1)でないとき(504)、第k+1画像の参照結果がノイズ画素(フラグ3)でないならば、第k画像における502から507までの処理を全ての処理対象位置に対して実行したか否かを調査する(509)。
【0028】
第k画像の参照結果が病変画素(フラグ1)でないとき(504)、第k+1画像の参照結果がノイズ画素(フラグ3)であり、第k画像の参照結果が血管領域の画素(フラグ9)あるいは黄斑部領域の画素(フラグ7)でないとき、第k画像におけるにおける502から507までの処理を全ての処理対象位置に対して実行したか否かを調査する(509)。
【0029】
第k画像において502から507までの処理を未実行の処理対象位置が存在する場合(509)、第k画像の処理対象位置の画素に対して502から507までの処理を繰り返す。第k画像において502から507までの処理を全ての処理対象位置で実行し終わった場合k=1でなければ(510)、k=k−1として(511)、第k画像の処理対象位置の画素に対して502から507までの処理を繰り返し、k=1ならば(510)、ノイズ発生画像の判定処理を終了する。
【0030】
また、第k画像の参照結果が病変画素(フラグ1)でないとき(504)、第k+1画像の参照結果がノイズ画素(フラグ3)であり、第k画像の参照結果が血管領域の画素(フラグ9)あるいは黄斑部領域の画素(フラグ7)でないとき、ノイズが発生したのは第k画像の撮影後、第k+1画像の撮影前であると推測し、第k画像よりも前のノイズ検出処理を行わずに過去画像に対するノイズ検出処理を終了することもできる。
【0031】
図6は、表示(105)の処理フロー図を示す。表示の処理フローは、検出結果画像108を参照して(601)、検出結果画像でノイズ画素(フラグ3)が存在するとき(602)、ノイズ画素(フラグ3)同士を連結してノイズ領域を生成し(603)、入力画像においてノイズ領域付近の位置に警告メッセージを付加した表示用画像を新たに作成する(604)。次に、検出結果画像で病変候補画素(フラグ1)が存在するとき(605)、検出結果画像の病変候補画素(フラグ1)同士を連結して病変候補領域を生成し(606)、前記表示用画像に対して病変候補領域部分を強調したものを付加する(607)。前記表示用画像を表示部204に表示させ(609)、ノイズの存在を医師に知らせる。
【0032】
ノイズ警告メッセージを表示部204に表示した例を図8に示す。807は眼底画像の模式図を表す。701は明色調の病変、702は暗色調の病変、703は血管、704は視神経乳頭、705は黄斑部、806は警告メッセージ、808はノイズを表す。図8のように、ノイズの警告を表示すると同時に、病変候補と判定された領域の周りを強調する表示を行なうことで、医師に病変の候補の存在を知らせる。病変候補の警告ともに、ノイズと判断される箇所も表示することにより、より検出精度の高い病変候補領域の検出結果を医師に提示できるので、病気にかかっている人を病気であると判定する敏感度の向上に役立つ。
【0033】
また、上記602でノイズと判定された画素に対して、補間処理をした画像を表示することもできる。補間処理の例として、ノイズと判定された画素の周囲にある画素のうち、ノイズと判定されてない画素値の平均をノイズと判定された画素の画素値にする方法や、ニアレストネイバー法、バイリニア法、バイキュービック法等によってノイズと判定された画素の画素値を決定する方法がある。これらの補間処理を行った画像を医師に表示することにより、健康な人を病気であると判定する率である偽陽性率の低減に役立つ。
【0034】
以上、カメラのレンズ等の光学部品に埃などの汚れが付着した場合に現れる黒色のノイズ画素を対象としてノイズ画素検出103とノイズ発生画像判定104を説明してきたが、ノイズにはデジタルカメラ等の撮像素子の欠陥によって現れる白色のノイズ画素もある。白色のノイズ画素の場合、506において血管あるいは黄斑部の一部の変わりに視神経乳頭の一部を用いることでノイズ画素検出103とノイズ発生画像判定104が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例における画像診断支援方法を示す処理フロー図である。
【図2】本発明によるノイズ検出と画像診断支援を実行する画像診断支援装置の構成図である。
【図3】病変候補領域を抽出する方法を示す処理フロー図である。
【図4】ノイズ画素を検出する方法を示す処理フロー図である。
【図5】ノイズ発生画像を判定する方法を示す処理フロー図である。
【図6】ノイズの警告表示方法と病変候補領域を表示する方法を示す処理フロー図である。
【図7】健康な人の眼底画像と糖尿病網膜症の患者の眼底画像の模式図である。
【図8】ノイズの警告と病変候補領域を表示した表示画面の例を示す図である。
【図9】検出結果画像の例(A)と累積頻度画像の例(B)を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
102…病変候補領域抽出、103…ノイズ画素検出、104…ノイズ発生画像判定、105…ノイズ警告表示と病変候補領域表示。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像から病変候補領域を検出して表示する画像診断支援プログラムであって、画像入力装置に接続される画像診断支援処理部に、
複数の画像の入力を受け付ける第1のステップと、
該複数の画像の色成分画像のそれぞれについて、各画素の画素値に基づいて病変候補画素を抽出する第2のステップと、
該複数の画像において、繰返し病変候補画素として検出される画素をノイズ画素と判断する第3のステップと、
該複数の画像において、該ノイズ画素の位置以外に検出された病変候補画素を病変候補領域と判断する第4のステップと、
前記病変候補領域およびノイズ画素の情報を前記複数の画像のそれぞれに対応付けて格納する第5のステップとを実行させることを特徴とする画像診断支援プログラム。
【請求項2】
請求項1記載の画像診断支援プログラムであって、
前記第2のステップにおいて、前記複数の画像についての検出結果を画素ごとに累積し、
前記第3のステップにおいて、前記累積結果を参照し、病変候補画素として検出された累積値が閾値以上の画素をノイズ画素と判断することを特徴とする画像診断支援プログラム。
【請求項3】
請求項2記載の画像診断支援プログラムであって、
前記第2のステップにおいて、該画素が撮影されるべき器官の一部ではないことを条件に病変候補画素を検出することを特徴とする画像診断支援プログラム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の画像診断支援プログラムであって、
前記第3のステップにおいて、撮影タイミングの時系列順に前記複数の画像を遡ってノイズ発生タイミングを探索し、該ノイズ画素の位置が病変候補画素ではなく、かつ、撮影されるべき器官の一部でもない画像のうち最新のものの次の画像から、該ノイズ画素の位置にノイズがあると判断することを特徴とする画像診断支援プログラム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像診断支援プログラムであって、
前記ノイズとして検出された画素を連結してノイズ領域を作成し、ノイズ領域を表示装置に表示させる第6のステップを実行させることを特徴とする画像診断支援プログラム。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかに記載の画像診断支援プログラムであって、
前記ノイズとして検出されたノイズ画素の近傍の画素群のうち、ノイズ画素と判定されていない画素群の平均値を算出し、前記ノイズ画素の画素値を前期平均値に置き換えた画像を作成し、前記作成した画像を表示装置に表示させる第7のステップを実行させることを特徴とする画像診断支援プログラム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の画像診断支援プログラムであって、
前記病変候補領域の情報を前記画像と対応付けて表示装置に表示させる第8のステップを実行させることを特徴とする画像診断支援プログラム。
【請求項8】
画像から病変領域候補を検出して表示する画像診断支援装置であって、
画像の入力を受け付ける画像入力部と、前記入力された画像から病変候補領域を検出する演算部と、該検出された病変候補領域の情報を表示する表示部と、前記入力された画像の情報を格納するメモリとを有し、
前記演算部は、
前記画像入力部から入力される複数の画像の色成分画像のそれぞれについて、各画素の画素値に基づいて病変候補画素を検出し、
該複数の画像において、繰返し病変候補画素として検出される画素をノイズ画素と判断し、
該複数の画像において、該ノイズ画素の位置以外に検出された病変候補画素を病変候補領域と判断し、
前記病変候補領域およびノイズ画素の情報を前記複数の画像のそれぞれに対応付けて前記メモリに格納することを特徴とする画像診断支援装置。
【請求項9】
画像から病変領域候補を検出して表示する画像診断支援方法であって、
画像入力部において複数の画像の入力を受け付ける第1のステップと、
演算部において実行される、
該複数の画像の色成分画像のそれぞれについて、各画素の画素値に基づいて病変候補画素を抽出する第2のステップと、
該複数の画像において、繰返し病変候補画素として検出される画素をノイズ画素と判断する第3のステップと、
該複数の画像において、該ノイズ画素の位置以外に検出された病変候補画素を病変候補領域と判断する第4のステップと、
前記病変候補領域およびノイズ画素の情報を前記複数の画像のそれぞれに対応付けて格納する第5のステップとを有することを特徴とする画像診断支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−280682(P2006−280682A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105595(P2005−105595)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】