説明

ノイズ除去コネクタ

【課題】コンデンサ容量が異なる複数種のノイズ除去コネクタを低コストで提供する。
【解決手段】ノイズ除去コネクタ1は、バッテリ側からの直流電流を送電する電線の端末に取り付けられた雄型の端子金具と嵌合可能な筒部9aを有した雌型の端子金具9と、端子金具9を収容するコネクタハウジング7と、筒部9aとコネクタハウジング7との間に筒部9aを包囲する格好で配されかつグランドと接続した金属板8と、筒部9aと金属板8との間に掛け渡された4つのコンデンサ10と、を有している。4つのコンデンサ10は、互いに並列に接続されることにより全体として各コンデンサ10の容量の4倍のノイズ除去性能を有している。またこのコンデンサ10は、前記直流電流に混入したノイズをグランド側に流すことにより除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサを内蔵したノイズ除去用のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用の高周波ノイズ除去機能を有するコネクタとして、図5に示すような構造を有するものがある(特許文献1を参照)。図5において、コネクタ101は、絶縁性の合成樹脂により構成されたコネクタハウジング102と、コネクタハウジング102の外周を覆うとともに導電性の金属により構成されたシールドケース103と、シールドケース103を貫通するとともにこのシールドケース103にはんだ付けされた筒状のコンデンサ104と、コネクタハウジング102及びコンデンサ104を貫通するとともにこのコンデンサ104にはんだ付けされた棒状の雄型端子105とから構成されている。
【特許文献1】特開平05−326073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したコネクタ101の構造では、コンデンサ104の容量が異なるコネクタ101を複数種製造する場合、該当する容量のコンデンサ104を複数種用意する必要があるほか、シールドケース103に設けるコンデンサ104の取付穴の大きさを用いるコンデンサ104のサイズに応じて変更する必要があり、コンデンサ104やシールドケース103の品番が増加するという問題があった。このため、コネクタ101のコストが高騰するという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、コンデンサ容量が異なる複数種のノイズ除去コネクタを低コストで提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、相手方の端子金具と嵌合可能な端子金具と、前記端子金具を収容する絶縁性のコネクタハウジングと、前記端子金具と前記コネクタハウジングとの間に前記端子金具を包囲する格好で配されかつグランドと接続した金属板と、前記端子金具と前記金属板との間に掛け渡された複数のコンデンサと、を有したことを特徴とするノイズ除去コネクタである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載された発明によれば、同一規格のコンデンサを必要な容量を満たす数だけ互いに並列に接続して用いることにより、共通のコネクタハウジングと一種類のコンデンサを用いてコンデンサの容量が異なる複数種のノイズ除去コネクタを製造することができるので、部品品番の増加を抑制することができ、そのために、これらのノイズ除去コネクタを安価で提供することができる。また、寸法の小さいコンデンサを複数組み合わせて用いることにより、寸法の大きいコンデンサを用いる必要がなくコネクタハウジング内のスペースを有効利用できるので、該コネクタの大型化を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の一実施の形態に係るノイズ除去コネクタ1を、図1ないし図4を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るノイズ除去コネクタの設置箇所を説明する説明図である。図2は、図1に示されたノイズ除去コネクタを示す斜視図である。図3は、図2中のA−A線に沿う断面図である。図4は、図2中のB−B線に沿う断面図である。図5は、従来のノイズ除去コネクタを示す断面図である。
【0008】
本実施形態のノイズ除去コネクタ(以下、単にコネクタと呼ぶ。)1は、図1に示すように、ハイブリッド車に搭載されるインバータ2に設けられたコネクタ1である。このインバータ2は、前記ハイブリッド車のエンジンルームに配されるとともに、車両後方に配されるバッテリ3から一対の電線4を通じて送電される直流電流を所望の周波数の交流電流に変換してモータ5などの各種電子機器に供給するものである。また、電線4は、導電性の芯線の周囲を絶縁被覆で覆った被覆電線であり、その芯線の総断面積は15mm2程度である。なお、図1中の6は、電線4の端末に取り付けられかつインバータ2のコネクタ1と接続するコネクタである。このコネクタ6は、電線4の端末に取り付けられた「相手方の端子金具」としての棒状の雄型端子(図示せず。)を有している。
【0009】
上記コネクタ1は、図2ないし図4に示すように、一対の雌型の端子金具(以下、雌端子と呼ぶ。)9と、この雌端子9を収容するコネクタハウジング7と、金属板8と、複数のコンデンサ10と、を有している。
【0010】
上記雌端子9は、導電性の金属により構成されかつ上述した電線4の端末に取り付けられた雄型端子を収容可能な(雄型端子と嵌合可能な)筒部9aと、インバータ2内の電気回路と接続した図示しない接続部とを有している。
【0011】
上記コネクタハウジング7は、絶縁性の合成樹脂により構成されかつインバータ2の外郭に取り付けられる板状の取付部7aと、取付部7aから立設するとともに上述した雌端子9の筒部9aを収容する筒状の収容部7bと、を有している。この収容部7bと筒部9aとは互いに間隔をあけて配されている。
【0012】
上記金属板8は、上述したコネクタハウジング7の収容部7bと雌端子9の筒部9aとの間に配されているとともに、筒部9aと互いに間隔をあけて配されている。即ち金属板8は、筒部9aの外周を覆う格好に配されている。この金属板8は、筒部9aを覆うことにより、雌端子9及び筒部9a内に収容される雄型端子がコネクタ1の外部からノイズを拾うことを防止する。さらに、この金属板8は、図示しない一端部がグランドとしてのインバータ2のフレームと電気的に接続している。
【0013】
上記コンデンサ10は、上述した金属板8と雌端子9の筒部9aとの間に配されている。コンデンサ10は、合成樹脂製のハウジングに収容されかつ金属板と絶縁体との積層体を有する本体部10aと、一端部が前記金属板と接続するとともに他端部が前記ハウジングから露出した一対の端子部10b,10cと、を有して構成されている。この一対の端子部10b,10cのうち一方の端子部10bの他端部は筒部9aと接続しているとともに、他方の端子部10cの他端部は金属板8と接続している。即ちグランドと接続している。本発明では、金属板8が上述したようにコネクタハウジング7の収容部7bと筒部9aとの間に配されているので、容易に端子部10cと金属板8とを接続することができる。また、端子部10b,10cと筒部9a及び金属板8との接続は、抵抗溶接及び超音波溶着が好適である。このコンデンサ10は、電線4を流れる直流電流に混入して運ばれてきた交流電流のノイズを金属板8即ちグランド側に流すことにより除去する。即ち、コンデンサ10と金属板8とインバータ2のフレームとは、ノイズフィルタを構成している。なお、前記ノイズは、AM・FMラジオなどの放送波に混入するノイズである。
【0014】
さらに、上記コンデンサ10は、本実施形態では、金属板8と筒部9aとの間に4つ配されている。これら複数のコンデンサ10は、互いに並列接続された関係にあるので、コネクタ1全体のノイズ除去性能、即ちコンデンサ容量は、コンデンサ10単体の容量の和になる。また、本実施形態では、全て同一規格のコンデンサ10を用いているのでそのコンデンサ容量は一つのコンデンサ10の4倍になる。さらに、本実施形態ではコンデンサ10を4つ配しているが、金属板8と筒部9aとの間に設けられたスペース内に配置でき得る限りコンデンサ10の数を増やすことができる。本発明ではこのように、同一規格のコンデンサ10を必要な容量を満たす数だけ互いに並列に接続して用いることにより、共通のコネクタハウジング7と一種類のコンデンサ10を用いてコンデンサ容量が異なる複数種のコネクタ1を製造することができるので、部品品番の増加を抑制することができ、そのために、これらのコネクタ1を安価で提供することができる。なお、一般的にコンデンサは高容量になるほど低周波域でのノイズ除去性能が良い。
【0015】
また、金属板8と筒部9aとの間のスペースはコンデンサ10を配置する以外に利用されることのないスペースであり、コネクタ1の小型化のためには必要最小限の寸法に設定されることが望ましい。一方、仮に、容量が大きく寸法の大きい他のコンデンサをこのスペースに取り付けるとすると、このスペースを多く取る必要がありコネクタハウジング7が大型化してしまうが、本発明では、寸法の小さいコンデンサ10を複数組み合わせて用いることによりこのスペースを有効利用でき、コンデンサ容量の大きいコネクタ1を製造する際にもコネクタハウジング7を必要最小限の寸法に設定できる。したがってコネクタ1の大型化を抑制することができる。
【0016】
上記構成のコネクタ1は、コンデンサ10により電線4を流れる直流電流に混入して運ばれてきたノイズを除去することができるとともに、金属板8にシールドされていることによりコネクタ1の外部からノイズを拾うことを防止することができる。したがって、インバータ2内にノイズが混入することを防止できる。また、コネクタ1がノイズ除去機能を有したことにより、従来一対の電線4を覆っていた編組シールドを省略することも可能になる。
【0017】
上述した実施形態では、端子金具は筒状の電気接触部9aを有する雌型の端子金具9であったが、本発明では、端子金具は雄型の端子金具であっても良い。また、上述したコネクタ1は、インバータ2とバッテリ3との間の電気回路のいずれの箇所に用いても良いが、ノイズを混入させたくない電子機器の入口に直接連結させることが最も効果的である。
【0018】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るノイズ除去コネクタの設置箇所を説明する説明図である。
【図2】図1に示されたノイズ除去コネクタを示す斜視図である。
【図3】図2中のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2中のB−B線に沿う断面図である。
【図5】従来のノイズ除去コネクタを示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 コネクタ(ノイズ除去コネクタ)
7 コネクタハウジング
8 金属板
9 雌端子(端子金具)
10 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手方の端子金具と嵌合可能な端子金具と、
前記端子金具を収容する絶縁性のコネクタハウジングと、
前記端子金具と前記コネクタハウジングとの間に前記端子金具を包囲する格好で配されかつグランドと接続した金属板と、
前記端子金具と前記金属板との間に掛け渡された複数のコンデンサと、を有したことを特徴とするノイズ除去コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−41396(P2008−41396A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213434(P2006−213434)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】