説明

ノズルプレートの製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】ノズルの間隔を狭くして高密度な液滴の吐出を行えるとともに、各ノズルから吐出される液滴の吐出方向のばらつきを抑制することにより、液滴の吐出品質を向上させたノズルプレートの製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】液体を吐出する複数のノズル13を有し、該ノズルと連通する流路が形成された流路部材に接合されるノズルプレート14の製造方法であって、
把持部の一端側に該把持部よりも直径が短い尖端部80を設けた複数のパンチ部材を備え、各パンチ部材の前記把持部の側面の一部を平面部とし、当該平面部同士で各パンチ部材同士を接合したパンチ50を用い、パンチ50の尖端部80でノズルプレート14にノズル13を穿設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルプレートの製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電圧を印加することで変形する圧電素子で液体に圧力を付与することにより
ノズルから液滴を吐出する液体噴射ヘッドが知られており、その代表例として、ノズルか
らインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドとしては、印刷物の解像度を向上させるために
、1つの圧力発生室に対して複数のノズルを設けたものが提案されている。このようなイ
ンクジェット式記録ヘッドの複数のノズルは、柱状のパンチ本体の先端部に複数の打ち込
み部を形成したパンチを用い、当該打ち込み部をノズルプレートに貫通させることで形成
される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−226814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つのパンチを用いてノズルプレートに逐次開口を設けて複数のノズルとすると、各ノ
ズル同士が近接しているため、肉寄りが生じる。このため、ノズルの位置の精度が低下し
、また、ノズルがノズルプレートの平面に対して傾斜するので、インクの直進性が低下し
、インク滴の着弾精度も低下してしまう。
【0006】
また、複数のパンチ同士の側面を密着させたものを用いて、ノズルプレートに同時に複
数のノズルを設けると、ノズルの間隔は、パンチの直径に依存するため、近接したノズル
を形成することができない。パンチの直径を小さくしてノズルの間隔を狭くすることも可
能ではあるが、この場合、パンチの強度が低下し、パンチが折れてしまうことがある。
【0007】
特許文献1に係るパンチは、1つのパンチ本体に2つの打ち込み部が設けられている。
このようなパンチにおいては、ノズルの間隔を狭くするためには、打ち込み部同士の間隔
を狭くする必要があるが、この打ち込み部同士の間隔を狭くすることは困難である。
【0008】
なお、このような問題は、インクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液
体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑み、ノズルの間隔を狭くして高密度な液滴の吐出を行える
とともに、各ノズルから吐出される液滴の吐出方向のばらつきを抑制することにより、液
滴の吐出品質を向上させたノズルプレートの製造方法及び液体噴射ヘッドの製造方法を提
供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を吐出する複数のノズルを有し、該ノズルと
連通する流路が形成された流路部材に接合されるノズルプレートの製造方法であって、柱
状の把持部の一端側に該把持部よりも直径が短い尖端部を設けた複数のパンチ部材を備え
、各パンチ部材の前記把持部の側面の一部を平面とし、各パンチ部材を各平面同士で接合
させて形成したパンチを用い、前記パンチの前記尖端部で前記ノズルプレートにノズルを
穿設することを特徴とするノズルプレートの製造方法にある。
かかる態様では、柱状の把持部の一部の側面に平面を設けることで、各パンチ部材の尖
端部同士の間隔が、平面を設けずにパンチ部材同士を接合した場合の尖端部同士の間隔よ
りも狭いものとなる。このようなパンチを用いることで、より狭い間隔で複数のノズルを
ノズルプレートに同時に形成することができるので、ノズル同士が近接していても、肉寄
りの発生を抑制することができる。これにより、ノズルの位置の精度が低下することが防
止され、さらに、各ノズルがノズルプレートの平面に対して傾斜することが防止される。
このようなノズルプレートは、液体の直進性が向上し、液滴の着弾精度が向上しており、
これを用いた液体噴射ヘッドの吐出品質を向上させることができる。
【0011】
ここで、前記尖端部は、前記把持部に連続した第1テーパー部と、当該第1テーパー部
に連続して前記第1テーパー部よりも角度の狭い第2テーパー部と、第2テーパー部に連
続したストレート部とから構成されていることが好ましい。これによれば、切削により尖
端部を好適に作製することができる。
【0012】
また、前記パンチは、円柱状の前記把持部の一部を平面とした各パンチ部材を、当該平
面同士で接合することにより形成されたことが好ましい。これによれば、円柱状の把持部
からなるパンチ部材からパンチを構成することができる。円柱状の把持部であっても、平
面部を設けることでより確実にパンチ部材同士を接合することができる。
【0013】
また、前記パンチ部材の前記尖端部とは反対側の基端面を研磨により面一とすることが
好ましい。これによれば、パンチの基端面に荷重を掛ける際に、各パンチ部材に均等に荷
重が掛かる。したがって、パンチにより形成される複数のノズルをより確実に同一形状と
することができる。
【0014】
また、前記パンチは、各パンチ部材の側面に、当該パンチ部材に隣接して接合されるパ
ンチ部材の数だけ平面を形成し、当該平面同士で各パンチ部材を接合したことが好ましい
。これによれば、複数の尖端部が、例えば二方向に並んだパンチが形成され、一度に二方
向に列設されたノズルを形成することができる。
【0015】
上記課題を解決する本発明の他の態様は、液体を吐出するノズルを有するノズルプレー
トと、前記ノズルに連通する圧力発生室が形成される流路部材と、前記圧力発生室に圧力
変化を生じさせる圧力発生手段とを備える液体噴射ヘッドの製造方法であって、柱状の把
持部の一端側に該把持部よりも直径が短い尖端部を設けた複数のパンチ部材を備え、各パ
ンチ部材の前記把持部の側面の一部を平面とし、当該平面同士で各パンチ部材同士を接合
したパンチを用い、前記パンチの前記尖端部で前記ノズルプレートにノズルを穿設し、当
該ノズルプレートを前記流路部材に接合することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法
にある。
かかる態様では、ノズルの間隔を狭くして高密度な液滴の吐出を行えるとともに、各ノ
ズルから吐出される液滴の吐出方向のばらつきを抑制することにより、液滴の吐出品質を
向上させた液体噴射ヘッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【図3】一実施形態に係るノズルプレートの平面図である。
【図4】ノズルとインクから形成されたドットとの関係を表すイメージ図である。
【図5】一実施形態に係るパンチ部材の正面図及び底面図である。
【図6】一実施形態に係るパンチ部材の正面図及び底面図である。
【図7】一実施形態に係るパンチ部材の正面図及び底面図である。
【図8】一実施形態に係るパンチの正面図及び底面図である。
【図9】ノズルプレートにノズルを形成する工程を説明する断面図である。
【図10】変形例に係るパンチの底面図である。
【図11】変形例に係るパンチ部材の正面図及び底面図、パンチの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〈実施形態1〉
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。以下、インクジェット式記録ヘッ
ドは液体噴射ヘッドの一例であり、単にヘッドとも言う。また、当該ヘッドが搭載される
インクジェット式記録装置は液体噴射装置の一例である。
【0018】
図1は、本発明のヘッドが搭載される液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録
装置の概略斜視図である。
【0019】
図示するように、本実施形態の液体噴射装置であるインクジェット式記録装置1は、例
えば、ブラック(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等の複数の異な
る色のインクが貯留される貯留室を有するインクカートリッジ(液体貯留手段)2が装着
された記録ヘッド10を具備する。記録ヘッド10はキャリッジ3に搭載されており、記
録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5
に沿って軸方向に移動可能に設けられている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示し
ない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キ
ャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5
に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙装置等により給紙された紙等の記
録シートSがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0020】
図2は、本実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。図示するように、記録ヘッド1
0は、複数の圧力発生室11を有する流路基板の一例である流路形成基板12と、各圧力
発生室11に連通する複数のノズル13が穿設されたノズルプレート14と、流路形成基
板12のノズルプレート14とは反対側の面に設けられる振動板15とを具備する流路部
材16を有する。さらに、振動板15上の各圧力発生室11に対応する領域に設けられる
圧電素子17を有する圧電素子ユニット18と、振動板15上に固定されて圧電素子ユニ
ット18が収容される収容部19を有するケースヘッド20とを具備する。
【0021】
流路形成基板12には、その一方面側の表層部分に、圧力発生室11が隔壁によって区
画されてその幅方向で複数並設されている。各圧力発生室11の列の外側には、ケースヘ
ッド20の液体導入路であるインク導入路(図示なし)を介してインクが供給されるリザ
ーバー22が、流路形成基板12を厚さ方向に貫通して設けられている。そして、リザー
バー22と各圧力発生室11とは、インク供給路23を介して連通し、各圧力発生室11
には、インク導入路(図示なし)、リザーバー22及びインク供給路23を介してインク
が供給される。また、圧力発生室11のリザーバー22とは反対の端部側には、流路形成
基板12を貫通するノズル連通孔24が形成されている。このような流路形成基板12は
、本実施形態では、シリコン単結晶基板からなり、流路形成基板12に設けられる上記圧
力発生室11等は、流路形成基板12をエッチングすることによって形成されている。
【0022】
この流路形成基板12の一方面側にはノズル13が穿設されたノズルプレート14が接
合され、各ノズル13は、流路形成基板12に設けられたノズル連通孔24を介して各圧
力発生室11と連通している。
【0023】
また、流路形成基板12の他方面側、すなわち、圧力発生室11の開口面側には振動板
15が接合され、各圧力発生室11はこの振動板15によって封止されている。
【0024】
振動板15は、例えば、樹脂フィルム等の弾性部材からなる弾性膜25と、この弾性膜
25を支持する、例えば、SUSなどの金属からなる支持板26との複合板で形成されて
おり、弾性膜25側が流路形成基板12に接合されている。
【0025】
また、振動板15の各圧力発生室11に対向する領域内には、圧電素子17の先端部が
当接する島部27が設けられている。この圧電素子17の先端面は、接着剤30によって
島部27に接合されている。すなわち、振動板15の各圧力発生室11の周縁部に対向す
る領域に他の領域よりも厚さの薄い薄肉部28が形成されて、この薄肉部28の内側にそ
れぞれ島部27が設けられている。また、本実施形態では、振動板15のリザーバー22
に対向する領域に、薄肉部28と同様に、支持板26がエッチングにより除去されて実質
的に弾性膜のみで構成されるコンプライアンス部29が設けられている。なお、このコン
プライアンス部29は、リザーバー22内の圧力変化が生じた時に、このコンプライアン
ス部29の弾性膜25が変形することによって圧力変化を吸収し、リザーバー22内の圧
力を常に一定に保持する役割を果たす。
【0026】
圧電素子17は、一つの圧電素子ユニット18において一体的に形成されている。すな
わち、圧電材料31と電極形成材料32,33とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積
層した圧電素子形成部材34を形成し、この圧電素子形成部材34を各圧力発生室11に
対応して櫛歯状に切り分けることによって各圧電素子17が形成されている。すなわち、
複数の圧電素子17が一体的に形成されている。そして、この圧電素子17(圧電素子形
成部材34)の振動に寄与しない不活性領域、すなわち、圧電素子17の基端部側が固定
基板35に固着され、圧電素子17は固定基板35を介してケースヘッド20に固定され
ている。
【0027】
また、圧電素子17の基端部近傍には、固定基板35とは反対側の面に、各圧電素子1
7を駆動するための信号を供給するフレキシブル配線基板37が接続され、これら圧電素
子17(圧電素子形成部材34)と固定基板35とフレキシブル配線基板37とで圧電素
子ユニット18が構成されている。
【0028】
ケースヘッド20は、島部27に相対向する領域に厚さ方向に貫通する収容部19が設
けられている。圧電素子ユニット18の全体は、この収容部19に収容され、圧電素子1
7の先端部が上述したように振動板15の島部27に当接された状態で固定され、固定基
板35が、ケースヘッド20に接着剤39で固定されている。
【0029】
ケースヘッド20上には、フレキシブル配線基板37の各配線36がそれぞれ接続され
る複数の導電パッド40が設けられた配線基板41が固定されており、ケースヘッド20
の収容部19は、この配線基板41によって実質的に塞がれている。配線基板41には、
ケースヘッド20の収容部19に対向する領域にスリット状の開口部42が形成されてお
り、フレキシブル配線基板37はこの配線基板41の開口部42から収容部19の外側に
引き出されている。
【0030】
フレキシブル配線基板37は、例えば、圧電素子17を駆動するための駆動IC(図示
なし)が搭載されたチップオンフィルム(COF)からなる。そして、フレキシブル配線
基板37の各配線36は、その基端部側では、例えば、半田、異方性導電材等によって圧
電素子17を構成する電極形成材料32,33に接続されている。一方、先端部側では、
各配線36は配線基板41の各導電パッド40に接合されている。具体的には、配線基板
41の開口部42から収容部19の外側に引き出されたフレキシブル配線基板37の先端
部が配線基板41の表面に沿って折り曲げられた状態で、各配線36は配線基板41の各
導電パッド40に接合されている。
【0031】
このような記録ヘッド10では、インク滴を吐出する際に、圧電素子17及び振動板1
5の変形によって各圧力発生室11の容積を変化させて所定のノズル13からインク滴を
吐出させるようになっている。具体的には、インクカートリッジ2(図1参照)からリザ
ーバー22にインクが供給されると、インク供給路23を介して各圧力発生室11にイン
クが分配される。実際には、圧電素子17に電圧を印加することにより圧電素子17を収
縮させる。これにより、振動板15が圧電素子17と共に変形されて圧力発生室11の容
積が広げられ、圧力発生室11内にインクが引き込まれる。ノズル13に至るまで内部に
インクが満たされた後、配線基板41を介して供給される記録信号に従い、圧電素子17
の電極形成材料32,33に印加していた電圧を解除する。これにより、圧電素子17が
伸張されて元の状態に戻ると共に振動板15も変位して元の状態に戻る。結果として圧力
発生室11の容積が収縮して圧力発生室11内の圧力が高まりノズル13からインク滴が
吐出される。
【0032】
図3は、ノズルプレートの平面図である。図示するように、ノズルプレート14は、例
えば、ステンレス鋼などの金属からなる薄板にノズル13が穿設されて形成されている。
ノズル13は、1つの圧力発生室11に対して2つ設けられている。
【0033】
図4は、ノズルと、各ノズルから吐出されたインク滴により形成されるドットとの関係
を表すイメージ図である。なお、図中の一点鎖線は、各圧力発生室11の幅方向の中心軸
を表している。同図に示すように、各ノズル13から吐出されたインク滴によりドット1
00が形成される。1つの圧力発生室11に設けられた2つのノズル13からインク滴が
吐出されるため、複数のドット100は、圧力発生室11のピッチよりも高密度となる。
すなわち、圧力発生室11の間隔よりも狭い間隔でドット100を形成することができる
。これにより、高密度な印刷を行うことができ、また、圧力発生室11同士の間隔を狭く
しすぎることによるクロストークの影響を抑制できる。
【0034】
ここで、上述したノズルプレートの製造に用いるパンチについて説明する。図5は、本
実施形態に係るパンチ部材の正面図、底面図及び尖端部を拡大した要部正面図であり、図
6〜図7は、本実施形態に係るパンチ部材の正面図及び底面図であり、図8は、本実施形
態に係るパンチの正面図及び底面図である。
【0035】
本実施形態に係るパンチ50は、2つのパンチ部材60から構成されている(図8参照
)。
【0036】
図5に示すように、1つのパンチ部材60は、把持部70と、把持部70の一端側に設
けられた尖端部80とから構成されている。
【0037】
パンチ部材60は、例えば金属から形成されている。把持部70は、円柱状であり、一
端側には尖端部80が設けられ、他端側には、把持部70の幅よりも広い基端部71が設
けられている。
【0038】
尖端部80は、把持部70に連続した第1テーパー部81と、第1テーパー部81に連
続した第2テーパー部82と、第2テーパー部82に連続したストレート部83とから構
成されている。第1テーパー部81は、把持部70の先端に向けて幅が漸減した円錐状の
側面を有する。また、第2テーパー部82は、把持部70の先端に向けて幅が漸減した円
錐状に形成されている。ストレート部83は、円柱状に形成され、把持部70と同軸であ
る。第2テーパー部82の側面と把持部70の軸心とが成す角は、第1テーパー部81の
側面と把持部70の軸心とが成す角よりも小さい。すなわち、第1テーパー部81よりも
第2テーパー部82の方が鋭い形状となっている。また、尖端部80は、直径が把持部7
0の直径よりも短い。
【0039】
図6及び図7に示すように、上述したパンチ部材60には、側面の一部に平面部72が
設けられている。図6に示した点線は、図5に示したパンチ部材60に設けられる平面部
72の位置を表し、図7は、図5に示したパンチ部材60に平面部72を設けたものを表
している。
【0040】
これらの図に示すように、平面部72は、図5に示したパンチ部材60において、第1
テーパー部81を通り、把持部70の軸心と平行な平面を有している。本実施形態では、
2つのパンチ部材60の各平面部72は、同じ形状となっている。
【0041】
図8に示すように、パンチ50は、平面部72が設けられたパンチ部材60同士を、平
面部72で接合して形成されている。本実施形態では、各パンチ部材60の平面部72を
当接させ、他の金属部品(図示せず)で固定している。パンチ部材60を接着剤などで接
合することも可能ではある。しかし、接着剤の厚みのバラツキで、ストレート部83の間
隔が変わってしまう虞があるので、平面部72同士を当接させてパンチ50とすることが
好ましい。なお、固定の際には、各パンチ部材60の各尖端部80(ストレート部83の
頂面)がノズルプレート14に当接するように、各パンチ部材60の位置を調整する。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態に係るパンチ50は、円柱状の把持部70の一端に
尖端部80を設け、把持部70の側面の一部に平面部72を設けたパンチ部材60を、平
面部72で接合することで構成されている。
【0043】
図8(b)に示すように、尖端部80のストレート部83は、元々、円柱状であった把
持部70の軸心と同軸であった。このような把持部70の一部の側面に平面部72を設け
ることで、ストレート部83と平面部72との距離Dは、ストレート部83と把持部70
の平面部72以外の側面(円周面)との距離R(円柱状の把持部70の半径)よりも短く
することができる。そして、この平面部72でパンチ部材60同士を接合するので、各パ
ンチ部材60のストレート部83同士の間隔を、2×Rよりも短い2×Dとすることがで
きる(仮に、平面部72を設けずにパンチ部材60同士を接合した場合、ストレート部8
3同士の間隔は、2×Rとなる)。
【0044】
換言すれば、断面形状において、ストレート部83(尖端部80)と平面部72との距
離Dが、ストレート部83(尖端部80)と把持部70の平面部72以外の側面(円周面
)との距離Rよりも短いパンチ部材60を、平面部72で接合したものがパンチ50とな
る。
【0045】
このような構成のパンチ50は、把持部70自体は、尖端部80の間隔に合わせて狭く
する必要がないので、強度が保たれ、パンチ50が折れることが防止されている。一方、
尖端部80(ストレート部83)同士の間隔は、2×Rよりも狭い2×Dとすることがで
きる。したがって、後述するように、この尖端部80でノズルプレート14のノズル13
を穿設する際には、狭い間隔の尖端部80により、ノズル13の間隔を狭くすることがで
きる。
【0046】
また、図8(a)に示すように、各パンチ部材60の基端部71は、側面に連続した基
端面73が面一となっている。これにより、パンチ50の基端面73に荷重を掛ける際に
、各パンチ部材60に均等に荷重が掛かる。したがって、パンチ50により形成される2
つのノズル13をより確実に同一形状とすることができる。
【0047】
ここで、上述したパンチ50を用いてノズルプレートにノズルを形成する工程について
説明する。図9は、パンチを用いてノズルプレートにノズルを形成する工程を説明する断
面図である。
【0048】
図9(a)に示すように、ノズルプレート14のノズル13が形成される領域に、パン
チ50の尖端部80のストレート部83の頂面を当接させる。当該領域は、流路形成基板
12の1つの圧力発生室11(ノズル連通孔24)に対向する領域でもある。
【0049】
図9(b)に示すように、パンチ50の基端面73(図8参照)を押圧し、ストレート
部83をノズルプレート14に突き刺す。さらに、図9(c)に示すように、パンチ50
の基端面73を押圧し、ストレート部83にノズルプレート14を貫通させ、第2テーパ
ー部82までノズルプレート14に進入させる。そして、図9(d)に示すように、パン
チ50をノズルプレート14から引き抜くことで、2つのノズル13が形成される。ノズ
ル13の形状は、ストレート部83の側面と第2テーパー部82の側面に合わせた形状と
なっている。
【0050】
以降、特に図示しないが、図2に示した流路部材16に、1つの圧力発生室11に2つ
のノズル13が連通するようにノズルプレート14を接合する。そして、流路部材16に
ケースヘッド20を取り付け、収容部19に圧電素子ユニット18を収容して、島部27
に圧電素子17の先端を接合し、配線基板41をケースヘッド20に取り付けて、記録ヘ
ッド10とする。
【0051】
以上に説明したように、本実施形態に係るノズルプレートの製造方法では、円柱状の把
持部70の一部の側面に平面部72を設け、平面部72でパンチ部材60同士を接合した
パンチ50を用いる。このパンチ50は、ストレート部83と平面部72との距離Dが、
ストレート部83と把持部70の平面部72以外の側面(円周面)との距離Rよりも短い
。すなわち、パンチ50は、各パンチ部材60の尖端部80(ストレート部83)同士の
間隔が、平面部72を設けずにパンチ部材60同士を接合した場合の尖端部同士の間隔よ
りも狭いものとなる。
【0052】
このようなパンチ50を用いることで、より狭い間隔で2つのノズル13をノズルプレ
ート14に同時に形成することができるので、ノズル13同士が近接していても、肉寄り
の発生を抑制することができる。これにより、ノズルの位置の精度が低下することが防止
され、さらに、各ノズル13がノズルプレート14の平面に対して傾斜することが防止さ
れる。このようなノズルプレート14は、インクの直進性が向上し、インク滴の着弾精度
が向上したものとなり、このノズルプレート14を用いた記録ヘッド10の印刷品質を向
上させることができる。
【0053】
また、パンチ部材60の尖端部80同士を近接させるために、把持部70全体の直径を
縮小する必要がないので、パンチ50の強度を維持し、パンチ50が折れてしまうことが
防止されている。
【0054】
さらに、尖端部80は、第1テーパー部81と第2テーパー部82とストレート部83
とから構成されている。このような構成は、円柱状の部材の一端を切削することで尖端部
80と把持部70とを形成する場合に好適である。すなわち、切削時に水平方向の力が加
わっても、第1テーパー部81は、直径が比較的大きいので、水平方向に振れたり変形し
にくい。そして、より直径が小さい第2テーパー部82及びストレート部83は、第1テ
ーパー部81を設けた分、短い長さとすることができるので、水平方向の力で振れたり変
形することが抑制される。仮に、1つのテーパー部を切削で設けると、第2テーパー部8
2やストレート部83は細長いものとなるため、水平方向の力で振れたり変形する虞があ
る。
【0055】
なお、上述したパンチ部材60は、円柱状の把持部70の側面の一部を切削して形成し
てもよいし、当初から図7に示した形状のパンチ部材60を作製してもよい。
【0056】
〈実施形態2〉
実施形態1では、2つのパンチ部材60からパンチ50を構成したが、このような態様
に限定されない。
【0057】
図10は、本実施形態に係るパンチ50Aの底面図である。なお、実施形態1と同一の
ものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0058】
図10(a)に示すように、本実施形態に係るパンチ50Aは、4つのパンチ部材60
から構成されている。各パンチ部材60には、2つの平面部72を作製する。すなわち、
点線で示すように、把持部70の軸心と平行であり、かつ第1テーパー部81を通る2つ
の平面部72を形成する。各パンチ部材60の2つの平面部72は、直交している。
【0059】
図10(b)に示すように、各パンチ部材60を各平面部72で接合する。本実施形態
では、1つのパンチ部材60は、他の2つのパンチ部材60とそれぞれ平面部72で接合
されている。
【0060】
このように構成されたパンチ50Aにおいても、ストレート部83と平面部72との距
離Dは、ストレート部83と把持部70の平面部72以外の側面(円周面)との距離Rよ
りも短くすることができる。そして、この平面部72でパンチ部材60同士を接合するの
で、各パンチ部材60のストレート部83同士の間隔を、2×Rよりも短い2×Dとする
ことができる。
【0061】
また、1つのパンチ部材60に、2つのパンチ部材60が接合されているので、尖端部
80は、二方向に列設されることになる。例えば、同図に示した例では、上下方向と左右
方向に2個の尖端部80が列設している。このようなパンチ部材60を用いることで、ノ
ズルプレート14に、二方向に列設されたノズル13を同時に形成することができる。
【0062】
このように、複数のパンチ部材60を用いる場合についても、各尖端部80(ストレー
ト部83)同士の間隔をより狭くしたパンチ50Aを構成することができる。
【0063】
〈実施形態3〉
実施形態1及び実施形態2は、パンチ部材60は円柱状であったが、これに限定されな
い。
【0064】
図11(a)は、本実施形態に係るパンチ部材の正面図、図11(b)は、パンチ部材
の底面図、図11(c)は、本実施形態に係るパンチの底面図である。なお、実施形態1
と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0065】
図11(a)及び図11(b)に示すように、パンチ部材60Bは、正六角柱状の把持
部70を具備する。この把持部70には、連続して尖端部80Bが設けられている。
【0066】
尖端部80Bは、把持部70に連続した第1テーパー部81Bと、第1テーパー部81
Bに連続した第2テーパー部82Bとストレート部83Bから構成されている。第1テー
パー部81Bは、把持部70の先端に向けて幅が漸減した正六角錐状の側面を有する。ま
た、第2テーパー部82Bは、把持部70の先端に向けて幅が漸減した正六角錐状に形成
されている。ストレート部83Bは、正六角柱状に形成され、把持部70と同軸である。
【0067】
第2テーパー部82Bの側面と把持部70の軸心とが成す角は、第1テーパー部81B
の側面と把持部70の軸心とが成す角よりも小さい。すなわち、第1テーパー部81Bよ
りも第2テーパー部82Bの方が鋭い形状となっている。
【0068】
このようなパンチ部材60Bの側面の一部に、平面部72を設ける。すなわち、図の点
線に示すように、第1テーパー部81Bを通り、把持部70の軸心と平行な平面を有する
平面部72を形成する。
【0069】
そして、図11(c)に示すように、上述した平面部72が設けられたパンチ部材60
B同士を、平面部72で接合してパンチ50Bを構成する。
【0070】
尖端部80Bのストレート部83Bは、元々、正六角柱状であった把持部70の軸心と
同軸であった。このような把持部70の一部の側面に平面部72を設けることで、ストレ
ート部83Bと平面部72との距離Dは、ストレート部83Bと把持部70の平面部7
2以外の側面との距離Dよりも短くすることができる。そして、この平面部72でパン
チ部材60B同士を接合するので、各パンチ部材60Bのストレート部83B同士の間隔
を、2×Dよりも短い2×Dとすることができる。
【0071】
換言すれば、断面形状において、ストレート部83B(尖端部80B)と平面部72と
の距離Dが、ストレート部83Bと把持部70の平面部72以外の側面との距離D
りも短いパンチ部材60Bを、平面部72で接合したものがパンチ50Bとなる。
【0072】
このような構成のパンチ50Bにおいても、実施形態1と同様に、把持部70自体は、
尖端部80Bの間隔に合わせて狭くする必要がないので、強度が保たれ、パンチ50Bが
折れることが防止されている。一方、尖端部80B(ストレート部83B)同士の間隔は
、2×Dよりも狭い2×Dとすることができる。したがって、この尖端部80Bでノ
ズルプレート14のノズル13を穿設する際には、狭い間隔の尖端部80Bにより、ノズ
ル13の間隔を狭くすることができる。
【0073】
以上のように、正六角柱のパンチ部材60Bに平面部72を設け、各パンチ部材60B
を平面部72で接合してパンチ50Bを構成することができる。同様にして、正多角柱な
ど点対称の柱状のパンチ部材から本発明に係るパンチを構成することができる。
【0074】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したもの
に限定されるものではない。
【0075】
例えば、一つのパンチ部材には、一つの尖端部を設ける態様に限定されず、1つのパン
チ部材に複数の尖端部が設けられていてもよい。また、尖端部は、第1テーパー部、第2
テーパー部、ストレート部から構成される場合に限定されず、ノズルプレート14にノズ
ルを穿設可能な形状であればよい。
【0076】
また、上述した各実施形態では、流路(圧力発生室)に圧力変化を生じさせる圧力発生
手段として、圧電材料31と電極形成材料32、33とを交互に積層させて軸方向に伸縮
させる縦振動型の圧電素子17を例示したが、圧力発生手段は、特にこれに限定されるも
のではなく、圧電材料31と電極形成材料32、33とを交互に積層させて積層方向の一
端部を振動板15に当接させる横振動型の圧電素子を用いるようにしてもよい。
【0077】
また、圧力発生手段としては、例えば、下電極、圧電材料からなる圧電体層及び上電極
を成膜及びリソグラフィー法によって形成した薄膜型の圧電素子を用いてもよく、また、
グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子を使用することも
できる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発
熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間
に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出
させるものなども使用することができる。
【0078】
また、上述したインクジェット式記録装置1では、記録ヘッド10がキャリッジ3に搭
載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録
ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行
う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0079】
なお、上記各実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録
ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが
、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク
以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。そ
の他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種
の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッ
ド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる
電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げら
れ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 記録ヘッド(液体噴射ヘッ
ド)、 11 圧力発生室、 13 ノズル、 14 ノズルプレート、 15 振動板
、 17 圧電素子、 50、50A、50B パンチ、 60、60B パンチ部材、
70 把持部、 71 基端部、 72 平面部、 73 基端面、 80、80B
尖端部、 81、81B 第1テーパー部、 82、82B 第2テーパー部、 83
ストレート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルを有し、該ノズルと連通する流路が形成された流路基板に
接合されるノズルプレートの製造方法であって、
柱状の把持部の一端側に該把持部よりも直径が短い尖端部を設けた複数のパンチ部材を
備え、各パンチ部材の前記把持部の側面の一部を平面とし、各パンチ部材を各平面同士で
接合させて形成したパンチを用い、
前記パンチの前記尖端部で前記ノズルプレートにノズルを穿設する
ことを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載するノズルプレートの製造方法において、
前記尖端部は、前記把持部に連続した第1テーパー部と、当該第1テーパー部に連続し
て前記第1テーパー部よりも角度の狭い第2テーパー部と、第2テーパー部に連続したス
トレート部とから構成されている
ことを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するノズルプレートの製造方法において、
前記パンチは、円柱状の前記把持部の一部を平面とした各パンチ部材を、当該平面同士
で接合することにより形成された
ことを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載するノズルプレートの製造方法において、
前記パンチ部材の前記尖端部とは反対側の基端面を研磨により面一とする
ことを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載するノズルプレートの製造方法において、
前記パンチは、各パンチ部材の側面に、当該パンチ部材に隣接して接合されるパンチ部
材の数だけ平面を形成し、当該平面同士で各パンチ部材を接合した
ことを特徴とするノズルプレートの製造方法。
【請求項6】
液体を吐出するノズルを有するノズルプレートと、前記ノズルに連通する圧力発生室が
形成される流路部材と、前記圧力発生室に圧力変化を生じさせる圧力発生手段とを備える
液体噴射ヘッドの製造方法であって、
柱状の把持部の一端側に該把持部よりも直径が短い尖端部を設けた複数のパンチ部材を
備え、各パンチ部材の前記把持部の側面の一部を平面とし、当該平面同士で各パンチ部材
同士を接合したパンチを用い、
前記パンチの前記尖端部で前記ノズルプレートにノズルを穿設し、
当該ノズルプレートを前記流路部材に接合する
ことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−254552(P2012−254552A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128393(P2011−128393)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】