説明

ノズル面清掃装置及びインクジェット記録装置

【課題】払拭時のヘッドノズル面からの洗浄液の進入や液ダレを抑制し、吐出安定性を向上させる。
【解決手段】払拭ユニット100は、払拭ウェブ112を搬送する搬送部110と、払拭ウェブ112に洗浄液を供給する洗浄液付与部140と、洗浄液が供給された払拭ウェブ112から洗浄液を回収する洗浄液回収部150と、を備えている。搬送部110により搬送される払拭ウェブ112は、洗浄液付与部140において洗浄液が付与された後、洗浄液回収部150において余剰な洗浄液が回収される。洗浄液が回収された払拭ウェブ112は、押圧ロール122に巻き掛けられ、ヘッド32のノズル面33に押圧当接することでノズル面33を払拭清掃する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル面清掃装置及びインクジェット記録装置に関し、特に洗浄液を付与した払拭部材によりインクジェットヘッドのノズル面を払拭するヘッドクリーニング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置では、ヘッドのノズル面(ノズルが形成されている面)が汚れていると、吐出不良を生じる。このため、定期的にノズル面の清掃が行われる。
【0003】
ノズル面を清掃する方法としては、従来、ブレードでノズル面を払拭して清掃する方法や、ウェブでノズル面を払拭して清掃する方法などが知られている。
【0004】
特許文献1には、液滴吐出ヘッドのノズル面を払拭するためのワイピングシートに対して洗浄液を噴霧する際に、マスキング手段によりワイピングシート上における洗浄液の噴霧領域を画定することで、所望の噴霧領域に洗浄液を均一に含浸させる技術が開示されている。
【0005】
また特許文献2には、吐出ヘッドの一面に対して直接的ないし間接的に洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、払拭の際の洗浄液供給手段による洗浄液の供給の有無を選択する供給選択手段を備えることで、洗浄液の供給を伴う払拭動作と洗浄液の供給を伴わない払拭動作とを使い分ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006―239620号公報
【特許文献2】特開2007−7977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸収性を有する長尺状のウェブ等の払拭部材でヘッドを払拭する場合、ウェブの吸収能力によって払拭性が異なってくる。
【0008】
例えば、ウェブに含まれる洗浄液量が多いと、ウェブの吸収力が機能しないために、ノズル面払拭時にノズル内部に洗浄液が進入し、インクの吐出に悪影響を与えてしまう。また、ウェブの吸収能力を超える洗浄液が供給されると、ウェブ搬送中にウェブからの液ダレが発生し、装置内汚染を引き起こす。さらに、洗浄液使用量が多くなるというデメリットもある。
【0009】
一方、ウェブに含まれる洗浄液が少ないと、ウェブの吸収能力が大きいために、ノズル面払拭時にノズルから多量のインクを引き出してしまい、ノズル面にインクのスジ上の跡を残してしまう。
【0010】
このように、ウェブに洗浄液を供給する際には、最適なウェブの吸収能力を維持することが大切である。
【0011】
これに対し、特許文献1の技術では、洗浄液を均一に含浸させることができるものの、微量の洗浄液を払拭部材に供給しているため、払拭部材上で均一にぬれ広がるまでの時間がかかるという欠点がある。さらに、ミストが浮遊するため装置内を汚染してしまうという問題点もある。
【0012】
また特許文献2の技術では、払拭部材中の洗浄液の均一性や洗浄液過多による液ダレの問題を解決することができない。また、洗浄液を供給しないで払拭した場合は、ヘッドノズル面の撥液膜にキズをつけてしまうという問題点もある。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ノズル面払拭時のノズルへの洗浄液の進入や液ダレを抑制することができ、吐出安定性を向上させることができるノズル面清掃装置及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために本発明に係るノズル面清掃装置は、インクジェットヘッドのノズル面を清掃するノズル面清掃装置において、吸収性を有する長尺状の払拭部材を長手方向に所定の搬送経路に沿って走行させる払拭部材走行駆動手段と、前記払拭部材に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、前記洗浄液が付与された払拭部材から余剰な洗浄液を回収することで払拭部材を前記インクジェットヘッドの払拭に適した量の洗浄液により湿潤された状態とする回収手段と、前記洗浄液が回収された払拭部材を前記ノズル面に押圧当接させる押圧手段と、前記ノズル面に押圧当接された払拭部材が前記払拭部材走行駆動手段により走行しながら前記ノズル面に沿って摺動するように前記払拭部材と前記インクジェットヘッドとを相対的に移動させることで、前記ノズル面を前記洗浄液が回収された払拭部材で順次払拭する払拭手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノズル面払拭時のノズルへの洗浄液の進入や液ダレを抑制することができ、吐出安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インクジェット記録装置の要部の構成を示す正面図
【図2】インクジェット記録装置の要部の構成を示す平面図
【図3】インクジェット記録装置の要部の構成を示す側面図
【図4】ヘッドのノズル面の平面透視図
【図5】第1の実施形態に係る払拭ユニットの概略構成を示す模式図
【図6】第2の実施形態に係る払拭ユニットの概略構成を示す模式図
【図7】第3の実施形態に係る払拭ユニットの概略構成を示す模式図
【図8】その他の変形例に係る払拭ユニットの概略構成を示す模式図
【図9】その他の変形例に係る払拭ユニットの概略構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
〈インクジェット記録装置の装置構成〉
図1〜図3は、本実施の形態のインクジェット記録装置の要部の構成を示す正面図、平面図、側面図である。
【0019】
同図に示すように、このインクジェット記録装置10は、シングルパス方式のラインプリンタであり、主として、記録媒体である用紙(枚葉紙)Pを搬送する用紙搬送機構20と、用紙搬送機構20によって搬送される用紙Pに向けてシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)、クロ(K)の各色インク滴を吐出するヘッドユニット30と、ヘッドユニット30に装着された各ヘッドのメンテナンスを行うメンテナンスユニット40と、ヘッドユニット30に装着された各ヘッドのノズル面を清掃するノズル面清掃装置80とで構成される。
【0020】
用紙搬送機構20は、ベルト搬送機構で構成され、走行するベルト22に用紙Pを吸着させて、用紙Pを水平に搬送する。
【0021】
ヘッドユニット30は、主として、シアンのインク滴を吐出するヘッド32Cと、マゼンタのインク滴を吐出するヘッド32Mと、イエロのインク滴を吐出するヘッド32Yと、クロのインク滴を吐出するヘッド32Kと、各ヘッド32C、32M、32Y、32Kが取り付けられるヘッド支持フレーム34と、ヘッド支持フレーム34を移動させるヘッド支持フレーム移動機構(不図示)とで構成される。
【0022】
ヘッド(インクジェットヘッド)32C、32M、32Y、32Kは、印刷対象とする用紙Pの最大用紙幅に対応したラインヘッドで構成される。なお、各ヘッド32C、32M、32Y、32Kの構成は同じなので、以下においては、特に区別する場合を除いて、ヘッド32と記載する。
【0023】
ヘッド32(32C、32M、32Y、32K)は、矩形のブロック状に形成され、その底部にノズル面33(33C、33M、33Y、33K)が形成される。
【0024】
図4は、ヘッドのノズル面の平面透視図である。
【0025】
ノズル面33は、長方形状に形成され、その長手方向に沿ってノズル列が形成される。本実施の形態のヘッド32は、いわゆるマトリックスヘッドで構成され、ノズルNは、二次元マトリクス状に配置される。マトリックスヘッドでは、ヘッド32の長手方向に投影される実質的なノズルNの間隔を狭めることができ、ノズルNの高密度化を図ることができる。
【0026】
また、本実施の形態のヘッド32は、いわゆるピエゾ方式でノズルNからインクの液滴を吐出させる。各ノズルNは、それぞれ圧力室に連通されており、この圧力室の壁面をピエゾ素子で振動させることにより、ノズルNからインクの液滴が吐出される。なお、インクの吐出方式は、これに限らずサーマル方式で吐出させる構成とすることもできる。
【0027】
ヘッド支持フレーム34は、各ヘッド32を取り付けるためのヘッド取付部(不図示)を備えている。各ヘッド32は、このヘッド取付部に着脱自在に取り付けられる。
【0028】
ヘッド支持フレーム34に取り付けられた各ヘッド32は、用紙Pの搬送方向に対して直交して配置される。また、用紙Pの搬送方向に沿って所定の順で一定の間隔をもって配置される(本例では、シアン、マゼンタ、イエロ、クロの順で配置される。)。
【0029】
また、ヘッド取付部は、ヘッド支持フレーム34に昇降自在に設けられており、図示しない昇降機構によって昇降する。ヘッド取付部に取り付けられた各ヘッド32は、この昇降機構によって、用紙Pの搬送面に対して垂直に昇降する。
【0030】
ヘッド支持フレーム移動機構は、用紙搬送機構20の上方位置でヘッド支持フレーム34を用紙Pの搬送方向に対して直交する方向に水平にスライド移動させる。
【0031】
このヘッド支持フレーム移動機構は、例えば、用紙搬送機構20を跨いで水平に設置される天井フレームと、その天井フレームに敷設されるガイドレールと、ガイドレール上をスライド移動する走行体と、その走行体をガイドレールに沿って移動させる駆動手段(例えば、送りねじ機構など)で構成される。ヘッド支持フレーム34は、走行体に取り付けられて、水平にスライド移動する。
【0032】
ヘッド支持フレーム34は、このヘッド支持フレーム移動機構に駆動されて、所定の「画像記録位置」と「メンテナンス位置」との間を移動可能に設けられる。
【0033】
ヘッド支持フレーム34は、画像記録位置に位置すると、用紙搬送機構20の上方に配置される。これにより、用紙搬送機構20によって搬送される用紙Pに対して印刷可能になる。
【0034】
一方、メンテナンス位置に位置すると、メンテナンスユニット40の設置位置に配置される。
【0035】
メンテナンスユニット40には、各ヘッド32のノズル面33を覆うキャップ42(42C、42M、42Y、42K)が備えられる。装置を長時間停止する場合などは、このメンテナンスユニット40の設置位置(メンテナンス位置)にヘッド32を移動させ、ノズル面33をキャップ42で覆う。これにより、乾燥による不吐出が防止される。
【0036】
このキャップ42には、ノズル内を加圧・吸引するための加圧・吸引機構(不図示)、及び、キャップ42内に洗浄液を供給するための洗浄液供給機構(不図示)が備えられる。また、キャップ42の下方位置には廃液トレイ44が配置される。キャップ42に供給された洗浄液は、この廃液トレイ44に廃棄され、廃液トレイ44から廃液回収配管46を介して廃液タンク48に回収される。
【0037】
ノズル面清掃装置80は、用紙搬送機構20とメンテナンスユニット40との間に配置される。ノズル面清掃装置80は、ヘッド支持フレーム34が、画像記録位置からメンテナンス位置に移動する際に、洗浄液が付与された払拭ウェブでヘッド32のノズル面33を払拭することで、ノズル面33を清掃する。
【0038】
〈ノズル面清掃装置の装置構成〉
ノズル面清掃装置80は、主として、払拭装置本体フレーム82に取り付けられる払拭ユニット100C、100M、100Y、100Kと、払拭装置本体フレーム82を昇降させる払拭装置本体昇降機構(不図示)とから構成される。
【0039】
払拭ユニット100C、100M、100Y、100Kは、帯状に形成された払拭ウェブ(図5の112)を走行させながらヘッド32のノズル面33に当接させて、ノズル面33を払拭する。払拭ユニット100C、100M、100Y、100Kは、ヘッドごとに設けられ、ヘッド32の設置間隔に合わせて、払拭装置本体フレーム82に設置される。なお、各払拭ユニット100C、100M、100Y、100Kの構成は同じなので、ここでは払拭ユニット100として、その構成を説明する。
【0040】
図5は、払拭ユニット100の概略構成を示す模式図である。同図に示すように、払拭ユニット100は、払拭ウェブ112を搬送する搬送部110と、払拭ウェブ112に洗浄液を供給する洗浄液付与部140と、洗浄液が供給された払拭ウェブ112から余剰な洗浄液を回収する洗浄液回収部150と、を備えている。
【0041】
(搬送部の構成)
搬送部110は、払拭前の払拭ウェブ112を送出する送出側ウェブコア114と、巻取モータ(不図示)により回転駆動されることで、払拭済みの払拭ウェブ112を巻き取る巻取側ウェブコア116と、送出側ウェブコア114から送出された払拭ウェブ112に当接して回転し、洗浄液付与部140へガイドする第1ガイドロール118と、洗浄液付与部140から送出された払拭ウェブ112に当接して回転し、押圧ロール122へガイドする第2ガイドロール120と、払拭ウェブ112をヘッド32のノズル面33に所定の圧力で当接させる押圧ロール122と、を備えて構成される。
【0042】
払拭ウェブ112は、例えば、PET、PE、NY等の極微細繊維を用いた編み又は織りからなるシートで構成され、ヘッド32のノズル面33の幅に対応した幅を有する帯状に形成される。この払拭ウェブ112は、送出側ウェブコア114にロール状に巻かれ、先端が巻取側ウェブコア116に固定された状態で提供される。
【0043】
送出側ウェブコア114は、一端が固定されて水平に支持された送出軸(不図示)に嵌められて装着されている。この送出軸は二重管構造とされ、内筒の周りを外筒が回転可能に支持される。内筒と外筒との間には、逆回転防止機構及びフリクション機構が配置され、外筒は一定の抵抗をもって一方向(払拭ウェブ112の送出方向)にのみ回転するように構成される。
【0044】
巻取側ウェブコア116は、回転自在に水平に支持された巻取軸(不図示)に嵌めて装着されている。巻取軸には巻取モータが連結され、巻取側ウェブコア116は巻取モータに駆動されて一方向(払拭ウェブ112の巻取方向)に回転する。
【0045】
この巻取軸は、二重構造とされ、内筒の周りを外筒が回転可能に支持される。内筒と外筒との間には、トルクリミッタが配置され、一定以上の負荷(トルク)が掛かると、内筒に対して外筒が滑るように構成される。これにより、払拭ウェブ112に過剰な張力が掛かるのを防止できる。
【0046】
第1ガイドロール118は、水平に設置された軸(不図示)に回転自在に支持され、送出側ウェブコア114から送出された払拭ウェブ112を洗浄液付与部140へ向けてガイドする。
【0047】
第2ガイドロール120は、水平に設置された軸(不図示)に回転自在に支持され、洗浄液付与部140から送出された払拭ウェブ112を押圧ロール122へ向けてガイドする。
【0048】
押圧ロール122は、その軸部の一端が回転自在に支持されて水平に設置される。押圧ロール122は、払拭ウェブ112の幅に対応したゴムロールで構成され、払拭ウェブ112をヘッド32のノズル面33に所定の圧力で当接させる。
【0049】
なお、上記のように、払拭ウェブ112は、送出側ウェブコア114にロール状に巻かれた状態で提供されるので、払拭ユニット100への装着(交換)もこの状態で行われる。具体的には、送出側ウェブコア114を送出軸に嵌めて装着したのち、第1ガイドロール118、第2ガイドロール120、押圧ロール122に順に巻き掛け、巻取側ウェブコア116を巻取軸に嵌めて、装着を完了する。
【0050】
(洗浄液付与部の構成)
洗浄液付与部140は、主として、洗浄液ノズル142と、洗浄液が貯留される洗浄液タンク144と、洗浄液タンク144と洗浄液ノズル142とを繋ぐ洗浄液配管146と、洗浄液タンク144から洗浄液ノズル142に洗浄液を送液する洗浄液ポンプ148と、を備えて構成される。
【0051】
洗浄液ノズル142は、払拭ウェブ112の幅に対応した幅を有する噴出口を有しており、この噴出口から洗浄液を噴き出す。洗浄液ノズル142は、上方に向けて洗浄液を噴射するように設置される。
【0052】
払拭ウェブ112は、この洗浄液ノズル142の上を通過する際、噴出口から噴き出される洗浄液が付与される。これにより、払拭ウェブ112内に洗浄液が吸収される。
【0053】
洗浄液ノズル142は、洗浄液配管146を介して洗浄液タンク144に接続される。洗浄液ポンプ148は、洗浄液配管146の途中に設けられ、洗浄液タンク144に貯留された洗浄液を洗浄液ノズル142に送液する。
【0054】
なお、ここでは洗浄液タンク144及び洗浄液ポンプ148を払拭ユニット100ごとに設ける構成としているが、1つの洗浄液タンクと洗浄液ポンプを各払拭ユニット100C、100M、100Y、100Kで共通して使用する構成としてもよい。この場合、1つの洗浄液ポンプにより送液された洗浄液は、各払拭ユニット100C、100M、100Y、100Kの洗浄液ノズル142C、142M、142Y、142Kに供給され、それぞれの洗浄液ノズル142から噴射される。
【0055】
(洗浄液回収部の構成)
洗浄液回収部150は、主として、洗浄液が付与された払拭ウェブ112に当接する回収ロール152と、回収ロール152と払拭ウェブ112の接触面積を増やすように払拭ウェブ112をガイドする第3ガイドロール154、第4ガイドロール156と、回収ロール152と洗浄液タンク144とを繋ぐ洗浄液回収配管158と、回収ロール152に当接した払拭ウェブ112を吸引することで洗浄液を回収し、回収した洗浄液を洗浄液タンク144に送液する回収ポンプ160と、回収ポンプ160により回収された洗浄液内の異物を除去する回収液フィルタ162と、洗浄液が回収された後の払拭ウェブ112に含まれる(吸収された)洗浄液の量を計測する水分計164と、を備えて構成される。
【0056】
洗浄液付与部140により洗浄液が付与された払拭ウェブ112は、第3ガイドロール154にガイドされて回収ロール152に当接される。
【0057】
回収ロール152は、ロール表面に多数の穴を有するとともに、その内部が中空に構成されている。回収ロール152としては、例えばポリオレフィン、ポリウレタン等の多孔質ロールや、多数の穴を有する金属ロールが用いられる。
【0058】
回収ロール152は、その軸心が洗浄液回収配管158を介して洗浄液タンク144に接続される。また洗浄液回収配管158の途中には、回収ポンプ160、回収液フィルタ162が設けられている。
【0059】
回収ポンプ160は、回収ロール152に当接された払拭ウェブ112から洗浄液を吸引する。回収ポンプ160の吸引により、払拭ウェブ112から余剰な洗浄液が回収される。回収された洗浄液は回収液フィルタ162を介して洗浄液タンク144に送液される。このように、回収ロール152と回収ポンプ160は、払拭ウェブ112から洗浄液を吸引する吸引手段として動作する。
【0060】
回収ロール152において洗浄液が回収された払拭ウェブ112は、第4ガイドロール156によって搬送部110の第2ガイドロール120へガイドされる。ここで、回収ロール152の下流側には、払拭ウェブ112の洗浄液量を計測する計測手段としての水分計164が配置される。払拭ウェブ112は、水分計164によりその洗浄液量が計測される。
【0061】
(ノズル面清掃装置の作用)
次に、以上のように構成されたノズル面清掃装置80の作用について説明する。
【0062】
ノズル面清掃装置80の動作は、インクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置(不図示)によって制御される。制御装置は、ヘッド32を画像記録位置からメンテナンス位置へ移動させる過程において、ノズル面清掃装置80によってノズル面33を払拭清掃する。
【0063】
ノズル面清掃装置80は、払拭装置本体昇降機構により全体が昇降自在に構成されている。ノズル面清掃装置80は、清掃時以外においては所定の待機位置に位置しており、清掃時には待機位置から所定量上昇した位置である所定の作動位置に位置する。
【0064】
ノズル面清掃装置80が作動位置に位置した状態では、各払拭ユニット100によって各ヘッド32のノズル面33を払拭することが可能になる。すなわち、ヘッド32が、各払拭ユニット100を通過する際、そのノズル面33に押圧ロール122に巻き掛けられた払拭ウェブ112を押圧当接することが可能になる。
【0065】
制御装置は、各ヘッド32が払拭ユニット100に到達するタイミングに合わせて、搬送部110による払拭ウェブ112の搬送を制御する。即ち、巻取モータの駆動を開始する。これにより、払拭ウェブ112は、送出側ウェブコア114から繰り出されて走行し、巻取側ウェブコア116に巻き取られる。
【0066】
このとき、送出側ウェブコア114の送出軸は、フリクション機構によってフリクションが付与される一方、巻取側ウェブコア116の巻取軸は、トルクリミッタによって一定の負荷が掛かると滑るので、払拭ウェブ112に一定の張力を付与して走行させることができる。
【0067】
また制御部は、この払拭ウェブ112の走行と同時に、洗浄液付与部140を制御し、払拭ウェブ112を洗浄液によって湿潤させる。
【0068】
洗浄液ノズル142は、洗浄液ポンプ148により洗浄液タンク144から送液された洗浄液を上方に向けて噴射する。払拭ウェブ112は、洗浄液ノズル142の上を通過する際に、この噴射された洗浄液が付与される。これにより、払拭ウェブ112内に洗浄液が吸収される。このとき、払拭ウェブ112には、ノズル面33を払拭清掃するのに適した洗浄液の量よりも多い所定量の洗浄液が付与される。例えば、払拭ウェブ112の吸収能力が飽和する量の洗浄液が付与される。
【0069】
さらに制御部は、この払拭ウェブ112の走行と同時に、洗浄液回収部150を制御し、洗浄液が付与された払拭ウェブ112から洗浄液を回収する。
【0070】
洗浄液が付与された払拭ウェブ112は、第3ガイドロール154、第4ガイドロール156により、回収ロール152に当接される。
【0071】
回収ポンプ160が駆動されると、回収ロール152の内部は、回収ポンプ160の吸引力により負圧になる。したがって、回収ロール152に当接した払拭ウェブ112からは、払拭ウェブ112に吸収された洗浄液が回収ロール152の穴を通して吸引される。これにより、払拭ウェブ112から余剰な洗浄液が回収され、払拭ウェブ112は適量(ノズル面33を払拭するのに適した量)の洗浄液により湿潤された状態となる。
【0072】
このように、余剰な洗浄液を回収して払拭ウェブ112を適量の洗浄液により湿潤された状態とすることで、払拭ウェブ112の吸収能力が最適な状態となる。その結果、ノズル面33の払拭時におけるノズルNへの洗浄液の進入や液ダレを抑制することができる。
【0073】
なお、払拭ウェブ112の吸収能力が最適な状態とは、払拭ウェブ112の材質や厚さ、ノズル径やインクの組成等により異なる。また、適量の洗浄液量は、インクジェットヘッド32C、32M、32Y、32Kによっても異なる。したがって、回収ロール152からの洗浄液の回収量は適宜設定される。
【0074】
この回収された洗浄液は、洗浄液回収配管158に導かれ、経路中にある回収液フィルタ162を通過することでゴミ等の不純物が取り除かれる。その後、洗浄液タンク144に送液され、再利用される。
【0075】
回収ロール152により洗浄液が回収された払拭ウェブ112は、水分計164により洗浄液量が計測される。この計測された洗浄液量に応じて、回収ポンプ160を制御することにより、回収ロール152からの洗浄液の回収量を調整し、洗浄液回収後の払拭ウェブ112の洗浄液量を適切な量にコントロールすることができる。
【0076】
即ち、水分計164で計測した洗浄液量が適量よりも多いときは、回収ポンプ160の吸引力を大きくするように制御する。逆に、水分計164で計測した洗浄液量が適量よりも少ないときは、回収ポンプ160の吸引力を小さくするように制御する。このようにフィードバック制御を行うことにより、さらに精度の高い払拭ウェブ112の吸収能力制御が可能となる。
【0077】
このように洗浄液が付与された払拭ウェブ112は、巻取モータの駆動による走行により押圧ロール122においてノズル面33に押圧当接され、ノズル面33が払拭洗浄される。
【0078】
この際、払拭ウェブ112は、ノズル面33の移動方向と逆方向に走行して、ノズル面33を払拭する。これにより、効率よくノズル面33を払拭することができる。また、常に払拭ウェブ112の新しい面(未使用領域)を使ってノズル面33を払拭することができる。
【0079】
ノズル面33を払拭した払拭ウェブ112は、巻取側ウェブコア116に巻取られる。また、ヘッド32は、メンテナンス位置に移動され、ノズル面33がキャップ42で覆われる。
【0080】
前述のように、払拭ウェブ112に含まれる洗浄液が多い場合には、ノズル面払拭時にノズル内部に洗浄液が進入してしまう。逆に洗浄液が少ない場合には、ノズル面払拭時にノズルから多量のインクを引き出してしまう。本実施形態では、回収ロール152と回収ポンプ160によって払拭ウェブ112から余剰な洗浄液を回収し、払拭ウェブ112を最適な吸収能力に保つことで、これらの不具合を解消することができる。
【0081】
ここでは、ノズル面33を1回だけ払拭清掃したが、ノズル面33の汚れの状態に応じて、払拭回数を制御するように構成してもよい。ノズル面33の汚れの状態は、前回のノズル面清掃からの経過時間やヘッド32の吐出数、印刷枚数等から推測する。
【0082】
前回のノズル面清掃からの経過時間が所定時間より長い、又はヘッド32のノズルの吐出数や印刷枚数が所定数より多い場合には、ノズル面33の汚れが多いと判断し、複数回払拭を実施する。
【0083】
複数回払拭は、汚れを除去するための払拭を行った後、最後にノズル面33のメニスカスを整える仕上げ払拭を実施する。例えば3回の払拭を行う場合であれば、1回目、2回目は汚れを除去するための払拭を行い、3回目に仕上げ払拭を行う。
【0084】
汚れを除去するための払拭は、回収ポンプ160の吸引力を弱める制御を行うことにより、洗浄液の回収量を少なくした払拭とする。例えば、払拭ウェブ112に含まれる洗浄液量を適量よりも増やす。払拭ウェブ112に含まれる洗浄液量を増やすことで、ノズル面33の汚れが多い状態でも、適切に汚れを除去することができる。
【0085】
また仕上げ払拭は、回収ポンプ160の吸引力を強める制御を行うことで洗浄液の回収を多目にし、払拭ウェブ112に含まれる洗浄液量を適量よりも減らす。払拭ウェブ112に含まれる洗浄液量を減らすことで、払拭ウェブ112の吸収能力を生かすことができ、その結果、ノズル内部に入り込んだ洗浄液を払拭ウェブ112で吸収することが可能となる。
【0086】
なお、複数回払拭を実施するときは、払拭を行うたびに段階的に回収量を増やすことで、徐々に払拭ウェブ112に含まれる洗浄液量を減らしてもよい。
【0087】
また、ノズル面33の汚れの状態を判断し、汚れが多いと判断した場合は洗浄液の回収量を少なくした払拭とし、汚れが少ないと判定された場合は回収量を多くするように構成してもよい。
【0088】
このように払拭ウェブ112に含まれる洗浄液量を制御することで、ノズル面33の汚れに応じて適切に払拭清掃することができる。
【0089】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。第1の実施形態では、回収ポンプで吸引することで払拭ウェブの余剰な洗浄液を回収したが、第2の実施形態では、圧搾手段で圧搾することで払拭ウェブの余剰な洗浄液を回収する。
【0090】
図6は、本実施形態に係る払拭ユニット100の概略構成を示す模式図である。同図に示すように、払拭ユニット100の洗浄液回収部150は、第1の実施形態の洗浄液回収部150の回収ロール152、第3ガイドロール154、第4ガイドロール156の代わりに、スクイズロール対170、押圧調整機構172、及び回収受け部材174を備えて構成される。
【0091】
スクイズロール対170は、対向する2つのロールから構成される圧搾手段である。各スクイズロールは、払拭ウェブ112の幅に対応した幅を有しており、シリコン、EPDM等の洗浄液によって犯されないゴムや、SUS等の金属で構成される。
【0092】
スクイズロール対170は、払拭ウェブ112の搬送経路中、洗浄液ノズル142の下流側に配置される。スクイズロール対170は、洗浄液が付与された払拭ウェブ112を挟持・押圧し、払拭ウェブ112から洗浄液を搾り出す。これにより、払拭ウェブ112から余剰な洗浄液が回収され、払拭ウェブ112は適量の洗浄液により湿潤された状態となる。
【0093】
押圧調整機構172は、カム(不図示)の変位でスクイズロールの押圧を調整する。これにより、押圧を上げることにより払拭ウェブ112から回収する洗浄液を増やすことができ、また押圧を下げることで回収する洗浄液を減らすことができる。
【0094】
したがって、水分計164により計測された洗浄液量に応じて押圧調整機構172を制御することで、洗浄液回収後の払拭ウェブ112の洗浄液量を適切な量にコントロールすることができる。また、複数回払拭を行う場合に、押圧調整機構172を制御することで、前述の汚れを除去するための払拭と仕上げ払拭を実施することができる。
【0095】
またスクイズロール対179の下方には、スクイズした洗浄液を回収する回収受け部材174が設けられている。
【0096】
回収受け部材174に回収された洗浄液は、回収ポンプ160に吸引されて洗浄液回収配管158に導かれる。この洗浄液は、回収液フィルタ162において不純物が取り除かれた後、洗浄液タンク144に送液され、再利用される。
【0097】
このように適量の洗浄液により湿潤された状態とされた払拭ウェブ112は、押圧ロール122においてノズル面33に押圧当接され、順次未使用領域でノズル面33を払拭する。
【0098】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。本実施形態では、送風手段及び昇温手段により蒸発させることで余剰な洗浄液を回収する。
【0099】
図7は、本実施形態に係る払拭ユニット100の概略構成を示す模式図である。同図に示すように、払拭ユニット100の洗浄液回収部150は、送風ファン180、吸引ファン182、及び加温板184を備えて構成される。
【0100】
送風ファン180は、払拭ウェブ112に付与された洗浄液を蒸発させるための送風手段である。送風ファン180は、払拭ウェブ112の幅に対応した幅を有しており、払拭ウェブ112の上部に配置され、下向きに送風可能に構成されている。送風ファン180は、乾燥した空気を払拭ウェブ112に供給することで、払拭ウェブ112に付与された洗浄液の蒸発を促進する。
【0101】
吸引ファン182は、払拭ウェブ112の幅に対応した幅を有しており、加温板184の下部に配置されている。吸引ファン182は、上部の空気を下部に吸引可能に構成されており、払拭ウェブ112から蒸発した洗浄液を下部に吸引する。
【0102】
加温板184も同様に、払拭ウェブ112の幅に対応した幅を有しており、払拭ウェブ112と吸引ファン182との間に配置されている。加温板184の裏面には、テープ状のヒータ(不図示)が配置されている。このヒータは、払拭ウェブ112に付与された洗浄液を蒸発させるための昇温手段であり、加温板184はこのヒータにより約60度に加温されている。また加温板184には複数の貫通孔が設けられており、吸引ファン182が上部の空気を吸引することにより、払拭ウェブ112が加温板184に張り付くように構成されている。
【0103】
したがって、吸引ファン182により加温板184に張り付いた払拭ウェブ112には、ヒータの熱が伝播し、この熱により払拭ウェブ112の余剰な洗浄液が蒸発する。これにより、払拭ウェブ112は適量の洗浄液により湿潤された状態となる。
【0104】
また、払拭ウェブ112に含まれる洗浄液が加熱されることで、洗浄液の化学変化が活性化される。これにより、ノズル面33の払拭時に、汚れの除去性能の向上が期待できる。
【0105】
なお、送風ファン180の送風量及び加温板184の加温温度により、払拭ウェブ112からの洗浄液の蒸発量を調整することができる。即ち、送風ファン180の送風量を上げることで払拭ウェブ112から回収する洗浄液を増やすことができ、また送風量を下げることで回収する洗浄液を減らすことができる。また加温板184の加熱温度を上げることで払拭ウェブ112から回収する洗浄液を増やすことができ、また加熱温度を下げることで回収する洗浄液を減らすことができる。なお、加温板184による加温温度は、洗浄液が分解して化学的機能が低下しない範囲で調整することに留意する。
【0106】
したがって、水分計164により計測された洗浄液量に応じてこれらを制御することで、洗浄液回収後の払拭ウェブ112の洗浄液量を適切な量にコントロールすることができる。また、複数回払拭を行う場合に、前述の汚れを除去するための払拭と仕上げ払拭を実施することができる。
【0107】
また吸引ファン182の下部には、払拭ウェブ112から蒸発させた洗浄液を液化して溜める回収受け部材174が設けられている。
【0108】
回収受け部材174に溜められた洗浄液は、回収ポンプ160に吸引されて洗浄液回収配管158に導かれる。この洗浄液は、回収液フィルタ162において不純物が取り除かれた後、洗浄液タンク144に送液され、再利用される。
【0109】
このように適量の洗浄液により湿潤された状態とされた払拭ウェブ112は、押圧ロール122においてノズル面33に押圧当接され、順次未使用面でノズル面33を払拭する。
【0110】
なお、ここでは送風と加温の両方を行って払拭ウェブ112の余剰な洗浄液を蒸発させているが、いずれか一方だけを用いることも可能である。
【0111】
例えば、図8に示すように、加温板184を用いずに送風ファン180を用いて蒸発させる構成や、図9に示すように、送風ファン180を用いずに加温板184によって蒸発させる構成が考えられる。
【0112】
以上説明したように、本発明によれば、払拭ウェブに洗浄液を付与後、払拭ウェブ内の余剰な洗浄液を回収することで、払拭ウェブの吸収能力を適切な状態に保ちつつ、ヘッドのノズル面を払拭することが可能となる。これにより、ノズル面払拭時のノズルからの洗浄液の進入や液ダレを抑制することができるので、ノズルの吐出安定性が向上し、また装置内の汚染を防止することができる。
【0113】
また、回収した洗浄液を再利用する回収経路を備えることで、洗浄液が無駄になることがなく、有効活用できる。さらに、回収する洗浄液の量をノズル面の汚れ具合や払拭頻度によって変更することで、払拭性の向上と洗浄液の使用量との両立を図ることが可能となる。
【0114】
上記実施形態では、払拭ウェブ112に洗浄液を付与する方法として、洗浄液ノズル142から払拭ウェブ112に向けて洗浄液を噴射する方法を採用しているが、払拭ウェブ112に洗浄液を付与する方法は、これに限定されるものではない。例えば、払拭ウェブ112を洗浄液に浸漬させる方法や、所定の面上を流れる洗浄液に払拭ウェブ112を触れさせる方法、ノズルから洗浄液を溢れ出させて払拭ウェブ112に触れさせる方法などを採用することができる。
【0115】
また上記実施形態では、ヘッド32を画像記録位置からメンテナンス位置へ移動させる過程において、ノズル面33を払拭清掃したが、メンテナンス位置から画像記録位置へ移動させる過程において払拭清掃してもよい。
【0116】
さらに上記実施形態では、払拭ウェブ112は、ヘッド32のノズル面33の短手方向の幅に対応した幅を有し、ノズル面33を長手方向に払拭したが、払拭する方向はこの方向に限られるものではない。即ち、ノズル面の長手方向の幅に対応した幅を有する払拭ウェブを用いて、ノズル面を短手方向に払拭してもよい。
【0117】
また上記実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【0118】
<付記>
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0119】
(発明1):インクジェットヘッドのノズル面を清掃するノズル面清掃装置において、吸収性を有する長尺状の払拭部材を長手方向に所定の搬送経路に沿って走行させる払拭部材走行駆動手段と、前記払拭部材に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、前記洗浄液が付与された払拭部材から余剰な洗浄液を回収することで払拭部材を前記インクジェットヘッドの払拭に適した量の洗浄液により湿潤された状態とする回収手段と、前記洗浄液が回収された払拭部材を前記ノズル面に押圧当接させる押圧手段と、前記ノズル面に押圧当接された払拭部材が前記払拭部材走行駆動手段により走行しながら前記ノズル面に沿って摺動するように前記払拭部材と前記インクジェットヘッドとを相対的に移動させることで、前記ノズル面を前記洗浄液が回収された払拭部材で順次払拭する払拭手段とを備えたことを特徴とするノズル面清掃装置。
【0120】
発明1によれば、吸収性を有する払拭部材に洗浄液を付与した後に余剰な洗浄液を回収し、ノズル面を前記洗浄液が回収された払拭部材の未使用領域で順次払拭するようにしたので、ノズル面払拭時のノズルからの洗浄液の進入や液ダレを抑制することができ、吐出安定性を向上させることができる。
【0121】
(発明2):発明1のノズル面清掃装置において、前記回収手段は、前記洗浄液が付与された払拭部材から洗浄液を吸引する吸引手段を含むことを特徴とする。
【0122】
これにより、適切に余剰な洗浄液を回収することができる。なお吸引手段としては、表面に多数の穴を有し、その内部が中空に構成され、払拭部材と当接して搬送方向に回転可能なロールと、該ロールの中空の内部に接続され、内部を吸引する吸引ポンプを用いることができる。
【0123】
(発明3):発明1又は2のノズル面清掃装置において、前記回収手段は、前記洗浄液が付与された払拭部材から洗浄液を搾り出す圧搾手段を含むことを特徴とする。
【0124】
これにより、適切に余剰な洗浄液を回収することができる。なお圧搾手段としては、払拭部材を狭持して搾る1対のスクイズロールを用いることができる。
【0125】
(発明4):発明1から3のいずれかのノズル面清掃装置において、前記回収手段は、前記洗浄液が付与された払拭部材に送風して洗浄液を蒸発させる送風手段を含むことを特徴とする。
【0126】
これにより、適切に余剰な洗浄液を回収することができる。なお送風手段としては、送風ファンを用いることができる。
【0127】
(発明5):発明1から4のいずれかのノズル面清掃装置において、前記回収手段は、前記洗浄液が付与された払拭部材を昇温して洗浄液を蒸発させる昇温手段を含むことを特徴とする。
【0128】
これにより、適切に余剰な洗浄液を回収することができる。なお昇温手段としては、払拭部材と当接する加温板と、加温板を加温するヒータを用いることができる。
【0129】
(発明6):発明1から5のいずれかのノズル面清掃装置において、前記洗浄液付与手段は、前記回収手段により回収された洗浄液を再利用することを特徴とする。
【0130】
洗浄液を再利用することにより、洗浄液が無駄になることがなく、有効活用することができる。
【0131】
(発明7):発明1から6のいずれかのノズル面清掃装置において、前記洗浄液が回収された払拭部材に含まれる洗浄液量を計測する計測手段を備え、前記回収手段は、前記計測される洗浄液量が一定となるように前記洗浄液が付与された払拭部材から洗浄液を回収することを特徴とする。
【0132】
計測結果に基づいて回収量を制御することにより、常に払拭部材を最適な吸収能力に維持することができる。
【0133】
(発明8):発明1から7のいずれかのノズル面清掃装置において、前記払拭手段は、前記払拭部材と前記インクジェットヘッドとを相対的に複数回移動させることで前記ノズル面を複数回払拭し、前記回収手段は、前記複数回の払拭のうち最後の払拭時にはそれ以前の払拭時よりも洗浄液の回収量を多くすることを特徴とする。
【0134】
このように洗浄液の回収量を制御することにより、ノズル面の汚れが多い状態でも、適切に汚れを除去することができる。
【0135】
(発明9):発明1から8のいずれかのノズル面清掃装置において、前記ノズル面の汚れの程度を判定する判定手段を備え、前記回収手段は、前記判定手段により汚れが多いと判定された場合は回収量を所定量より少なく、汚れが少ないと判定された場合は回収量を前記所定量より多くすることを特徴とする。
【0136】
これにより、ノズル面の汚れの程度に応じた洗浄液量で払拭清掃することができる。
【0137】
(発明10):メディアを搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送されるメディアにインク滴を吐出して画像を記録するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドのノズル面を清掃する発明1から9のいずれかのノズル面清掃装置とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【0138】
上記ノズル面清掃装置を備えることで、吐出安定性を高めたインクジェット記録装置が提供できる。
【0139】
(発明11):発明10のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドは、前記メディアの搬送経路上に複数配置されるとともに、前記インクジェットヘッドごとに前記ノズル面清掃装置が設けられることを特徴とする。
【0140】
インクジェットヘッドごとに前記ノズル面清掃装置を設けることで、各インクジェットヘッドを適切に払拭することができる。
【符号の説明】
【0141】
10…インクジェット記録装置、20…用紙搬送機構、30…ヘッドユニット、32(32C、32M、32Y、32K)…ヘッド、40…メンテナンスユニット、80…ノズル面清掃装置、100(100C、100M、100Y、100K)…払拭ユニット、110…搬送部、112…払拭ウェブ、114…送出側ウェブコア、116…巻取側ウェブコア、122…押圧ロール、140…洗浄液付与部、142…洗浄液ノズル、144…洗浄液タンク、146…洗浄液配管、148…洗浄液ポンプ、152…回収ロール、164…水分計、158…洗浄液回収配管、160…回収ポンプ、162…回収液フィルタ、170…スクイズロール対、172…押圧調整機構、174…回収受け部材、180…送風ファン、182…吸引ファン、184…加温板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル面を清掃するノズル面清掃装置において、
吸収性を有する長尺状の払拭部材を長手方向に所定の搬送経路に沿って走行させる払拭部材走行駆動手段と、
前記払拭部材に洗浄液を付与する洗浄液付与手段と、
前記洗浄液が付与された払拭部材から余剰な洗浄液を回収することで払拭部材を前記インクジェットヘッドの払拭に適した量の洗浄液により湿潤された状態とする回収手段と、
前記洗浄液が回収された払拭部材を前記ノズル面に押圧当接させる押圧手段と、
前記ノズル面に押圧当接された払拭部材が前記払拭部材走行駆動手段により走行しながら前記ノズル面に沿って摺動するように前記払拭部材と前記インクジェットヘッドとを相対的に移動させることで、前記ノズル面を前記洗浄液が回収された払拭部材で順次払拭する払拭手段と、
を備えたことを特徴とするノズル面清掃装置。
【請求項2】
前記回収手段は、前記洗浄液が付与された払拭部材から洗浄液を吸引する吸引手段を含むことを特徴とする請求項1に記載のノズル面清掃装置。
【請求項3】
前記回収手段は、前記洗浄液が付与された払拭部材から洗浄液を搾り出す圧搾手段を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のノズル面清掃装置。
【請求項4】
前記回収手段は、前記洗浄液が付与された払拭部材に送風して洗浄液を蒸発させる送風手段を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のノズル面清掃装置。
【請求項5】
前記回収手段は、前記洗浄液が付与された払拭部材を昇温して洗浄液を蒸発させる昇温手段を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のノズル面清掃装置。
【請求項6】
前記洗浄液付与手段は、前記回収手段により回収された洗浄液を再利用することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のノズル面清掃装置。
【請求項7】
前記洗浄液が回収された払拭部材に含まれる洗浄液量を計測する計測手段を備え、
前記回収手段は、前記計測される洗浄液量が一定となるように前記洗浄液が付与された払拭部材から洗浄液を回収することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のノズル面清掃装置。
【請求項8】
前記払拭手段は、前記払拭部材と前記インクジェットヘッドとを相対的に複数回移動させることで前記ノズル面を複数回払拭し、
前記回収手段は、前記複数回の払拭のうち最後の払拭時にはそれ以前の払拭時よりも洗浄液の回収量を多くすることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のノズル面清掃装置。
【請求項9】
前記ノズル面の汚れの程度を判定する判定手段を備え、
前記回収手段は、前記判定手段により汚れが多いと判定された場合は回収量を所定量より少なく、汚れが少ないと判定された場合は回収量を前記所定量より多くすることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のノズル面清掃装置。
【請求項10】
メディアを搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送されるメディアにインク滴を吐出して画像を記録するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドのノズル面を清掃する請求項1から9のいずれか1項に記載のノズル面清掃装置と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記インクジェットヘッドは、前記メディアの搬送経路上に複数配置されるとともに、前記インクジェットヘッドごとに前記ノズル面清掃装置が設けられることを特徴とする請求項10に記載のインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−171345(P2012−171345A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38910(P2011−38910)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】