説明

ノズル

本発明は、高圧スプレー技術によりウェブ状の材料をコーティングする際に使用するためのノズルに関する。ノズル(1)は、閉じた先端で終わっているテーパ状のダクトを有する一片を形成することにより作られる。その場合、その後で、横方向のV字形の溝(3)の先端が機械加工される。V字形の溝(3)の角度は35〜45°のような25〜50°の範囲内にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧技術による移動するウェブ状の材料のコーティング、またこのようなコーティングの際に使用するノズルに関する。本発明は、特に紙のコーティングの際に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
紙のコーティングの場合、コーティング組成物は、紙の印刷特性を改善するという特殊な目的のために紙の表面に塗布される。従来、コーティングのためには、プレス、ナイフ塗布装置およびフィルム転写デバイスが使用されてきた。これらの技術は、特に運転速度が速い場合または非常に薄い紙をコーティングしなければならない場合には、高い信頼性で実施するのが難しい。
【0003】
最新のコーティング技術としてスプレー・コーティングが開発された。スプレー・コーティングは、ウェブと接触する研磨用ナイフまたは回転ロッドのような機械的コーティング手段を全然必要としないという特別な利点を有する。高圧スプレー技術は、特に有望であることが分かっている。この場合、任意のガス状媒体を使用しなくても、コーティング組成物だけが、小さなオリフィスを有するノズルを通しての高圧により駆動され、組成物は小滴内に拡散される(霧状になる)。圧力は、例えば、1〜200MPaの範囲内であり、ノズルのオリフィスの面積は、例えば、0.02〜0.5mmの範囲内である。典型的な最大の小滴のサイズは約100μmである。このような装置は、経路を横切る1つまたは複数のノズルの列を有し、複数のノズルからなるノズル・アレイを備える。ノズルは、ウェブをジェットでできるだけ均一にカバーするように配置されている。それ故、ノズル列内の隣接するノズルにより形成されるジェットは、その縁部のところで適当に重なる。ノズルが形成するジェットの形は、ノズル・オリフィスの形により異なる。通常の目的は、ウェブの縦方向よりも横方向の方が大きいファン状のジェットにすることである。それ故、ノズル・オリフィスは楕円形をしている。均一なコーティングを行うために、好適には、ファンはウェブの走行方向に斜めに配置するのが好ましい。
【0004】
例えば、論文FI−B−108061(WO9717036号に対応する)(特許文献1)および2001年3月15日付けのフィンランドにおける、Nissinen Vの「OptiSpray, the New Low Impact Paper Coating Technology, OptiSpray Coating and Sizing Conference」(光学スプレー、新しい低衝撃紙コーティング技術、光学スプレー・コーティングおよびサイジング会議)(非特許文献1)に、紙のスプレー・コーティングについて記載されている。
ノズルは、例えば、高耐磨耗材料のような適当な材料の一片を作ることにより作ることができる。この一片は閉じた先端で終わっているテーパ状のダクトを有し、所望のノズル・オリフィスはその後で先端に機械加工される。先端に横方向のV字形の溝を機械加工すると、オリフィスは楕円形になる。ノズルの材料は、例えば、高耐磨耗炭化タングステン組成物(WC+Coなど)であってもよい。
【特許文献1】フィンランド特許第B−108061号(WO9717036号に対応する)
【非特許文献1】Nissinen Vの「OptiSpray, the New Low Impact Paper Coating Technology, OptiSpray Coating and Sizing Conference」に記載の論文
【発明の開示】
【0005】
ウェブ状の材料をコーティングの際に使用するために、請求項1に記載のノズルを発明した。他の請求項は、本発明のいくつかの好ましい実施形態を記述している。
【0006】
ノズルは、テーパ状のダクトの閉じた先端に、35〜45°のような25〜50°の範囲内の機械加工角度で、横方向のV字形の溝を機械加工することにより作られる。溝の角度は、このように形成された楕円形の流れの開口部の形、それ故、形成されるジェットの形に影響を与える。本発明のノズルは、軟らかい縁部を有するかなり丸いファン状のジェットを供給するので、最適に均一なコーティングを行うために、隣接するジェットを容易に重ねることができる。
好適には、流れダクトの断面は円形で、まっすぐであることが好ましい。好適には、機械加工する前は、ダクトの先端は球形面の形をしていることが好ましい。
【0007】
V字形の溝を拡大すると、ノズルの耐磨耗性が増大することが分かっている。高圧スプレーの場合には、流速は速く(例えば、約100m/s程度)、コーティング組成物は、通常、固体物質(例えば、炭酸カルシウム)を含んでいて、これがノズルの磨耗をかなり増大する。
ノズルは予備ノズルを備えることができる。この予備ノズルは、ジェットの予備拡散装置としての働きをする。予備ノズルは、特に先が広くなっている流れチャネルを備える。予備ノズルは、ノズルの耐磨耗性を改善するのに特に役に立つ。多数の実施形態において、予備ノズルの流れチャネルは、流れの方向に広がっているか、テーパ状に狭くなっている。
【0008】
予備ノズルのサイズ(オリフィスの直径)は、例えば、0.1〜1mmの範囲、通常、0.25〜0.55mmの範囲内にすることができる。予備ノズルのオリフィスの面積は、ノズル本体(二次ノズル)のオリフィスの面積の、例えば、せいぜい50%、通常、せいぜい20%とすることができる。
また、楕円形のオリフィスの最小直径に対する最大直径の比が1.2〜3、特に1.5〜2.5のように1よりかなり大きいノズルを発明した。ノズルのオリフィスは、例えば、1〜0.3mm×0.5〜0.1mm、通常、0.75〜0.4mm×0.35〜0.15mmの範囲内の寸法を有することができる。
【0009】
また、二次ノズル、テーパ状の流れダクトおよびその前部に接続している予備ノズルを備えていて、予備ノズルの流れ開口部の面積が二次ノズルの流れ開口部の横方向の面積のせいぜい1.1倍であるノズルも発明した。最適の場合、予備ノズルの流れ開口部の面積は、二次ノズルの流れ開口部の横方向の面積にほぼ等しい。このような予備ノズルを使用すれば、予備ノズルの耐磨耗性を改善することができる。
本発明のノズルは、例えば、印刷用紙、ボール紙のような紙をコーティングする際に使用することができる。
【0010】
(図面の簡単な説明)
以下に本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。添付の図面は説明に関連するものである。
図1は、本発明のノズルおよびこのノズルに接続する予備ノズルである。
図2は,時間の関数としての図1のノズルの組合せの体積流れである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1のノズルは、二次ノズル1および予備ノズル2を備える。
二次ノズル1は、最初に、断面が円形で球形面の形をしている閉じた先端を有するまっすぐなテーパ状の流れダクトを有する一片を作ることにより作られる。先端の中央には、横方向のV字形の溝が、所望の横方向の面積を有するノズル・オリフィス3を形成するように機械加工されている。ノズル・オリフィスは、楕円形で、ファン状のジェットを形成する。
予備ノズル2は、その供給オリフィス4が円形である先が広くなっている流れダクトを備える。
ノズル・オリフィス3の研磨角度は、ノズル・オリフィスおよびこれが形成するジェットの形に影響を与える。研磨角度が小さければ小さいほど、形が平らになり、形成されるファン状のジェットの縁部が鋭角になる。ファンの縁部は、さらに、前を向いているプロファイル・ピークを有することができる。研磨角度を大きくすると、流れの断面の形が楕円形に広がり、そのためもっと丸く、他のジェットのプロファイルによりよく適合するジェット・プロファイルが形成される。
【0012】
本発明によれば、研磨角度は、35〜45°のように25〜50°の範囲内にある。それ故、楕円形のオリフィスの長軸と短軸との比は、1.5〜2.5のように、1.2〜3の範囲内にある。このように形成されたジェットのファン角度は約90°である。研磨面と流れダクトの表面との間の角度は、好適には少なくとも90°であることが好ましいが、通常は100〜150°である。
コーティング・ステーションのところに、ウェブから約100mm離して、例えば、60mmの間隔で一列に整合しているノズルを設置することができる。好適には、ノズルは最適の均一な二重コーティングを行うために、適当な角度で重なるように配置するのが好ましい。
また、研磨側面の下縁部5のコーナーが、磨耗の点で一番重要であることも分かっている。このコーナーは、ノズルが磨耗している間に丸くなり、そのためオリフィスの面積が大きくなり、オリフィスの幾何学的形状が変化し、その結果ジェットの形も変化する。最初楕円形だったオリフィスは長方形に近づく。研磨角度が大きければ大きいほど、磨耗は小さくなる。
【0013】
10MPaの圧力下で、炭酸カルシウム・ペースト(50%は乾燥した物質)をスプレーすることにより、図1のノズルに対する磨耗の影響を研究した。図2は、時間(h)の関数としての体積流れ(ml/s)を示す。体積流れは、最初非常に強力に増大する。しかし、約95時間経過すると、増大速度ははっきりと安定する。336時間後に、予備ノズルを交換した。結果は体積流れが32%低減し、それでも最初のレベルより34%高かった。それ故、磨耗曲線は、2つの新しいノズルの磨耗曲線よりも若干緩やかである。これは、恐らく、新しい予備ノズルが、磨耗した二次ノズルのオリフィスよりも小さなオリフィスを有しているためと思われる。予備ノズルの磨耗面積が大きいので、二次ノズルはもっとゆっくりと磨耗する。磨耗曲線が安定すると、ノズルのオリフィスの面積の大きさは、相互に同じになる。二次ノズルを670時間経過後に交換した場合、体積流れは、再度大きく増大し始め、そのため上記仮説が裏付けられた。
【0014】
一回り小さい予備ノズルをノズルに取り付けたところ、磨耗ははっきりと遅くなった。2週間(336時間)の間に、体積流れは、25%だけ増大したが、これはポンプ圧力により容易に補償することができる。
予備ノズルの流れオリフィスの面積は、二次ノズルの流れオリフィスの横方向の面積の1.1倍以下でなければならない。好適には、予備ノズルの流れオリフィスの面積は、二次ノズルの流れオリフィスの横方向の面積にほぼ等しいことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のノズルおよびこのノズルに接続する予備ノズルである。
【図2】時間の関数としての図1のノズルの組合せの体積流れである。
【符号の説明】
【0016】
1 ノズル 2 予備ノズル
3 ノズル・オリフィス 4 供給オリフィス
5 研磨側面の下縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧スプレー技術によりウェブ状の材料をコーティングする際に使用するためのノズルであって、前記ノズル(1)が、閉じた先端で終わっているテーパ状のダクトを有する一片を形成することにより作られ、その後で、横方向のV字形の溝(3)の前記先端が機械加工され、前記V字形の溝(3)の角度が、35〜45°のような25〜50°の範囲内にあることを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記ノズル・オリフィスの前記横方向の面積が楕円形である請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記ノズル・オリフィスの最小直径に対する最大直径の比が、1.2〜3、特に1.5〜2.5の範囲内のように、はっきりと1より大きい請求項1または2に記載のノズル。
【請求項4】
前記ノズル・オリフィスの寸法が、0.75〜0.4mm×0.35〜0.15mmのように、1〜0.3mm×0.5〜0.1mmである請求項1〜3のいずれかに記載のノズル。
【請求項5】
前記ノズルが、予備ノズル(2)が接続している二次ノズル(1)である請求項1〜4のいずれかに記載のノズル。
【請求項6】
前記予備ノズル(2)が、先が広がっているかまたはテーパ状の流れダクトを備える請求項5に記載のノズル。
【請求項7】
前記予備ノズル(2)の前記流れオリフィスの前記面積が、前記二次ノズル(1)の前記流れオリフィスの前記横方向の面積のせいぜい1.1倍であり、好適には、前記ノズル本体の前記流れオリフィスの前記横方向の面積にほぼ等しいことが好ましい請求項5または6に記載のノズル。
【請求項8】
前記予備ノズル(2)の前記オリフィスの前記直径が、0.25〜0.55mmのように、0.1〜1mmの範囲内にある請求項5〜7のいずれかに記載のノズル。
【請求項9】
前記予備ノズル(2)の前記オリフィスの前記面積が、前記二次ノズル(1)の前記オリフィスの前記面積のせいぜい20%のように、せいぜい50%である請求項5〜8のいずれかに記載のノズル。
【請求項10】
紙をコーティングするための請求項1〜9のいずれかに記載のノズルの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−500207(P2006−500207A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−539097(P2004−539097)
【出願日】平成15年9月26日(2003.9.26)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000702
【国際公開番号】WO2004/028701
【国際公開日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(505108823)メッツオ ペーパ、インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】