説明

ノルボルネン誘導体の製造方法

【課題】置換フェニル基等の置換基の立体配置がexo配置となる特定のノルボルネン誘導体(exo体)を選択的に高い収率で製造方法を提供すること。
【解決手段】ビフェニルホスフィン等とパラジウムとの存在下、ノルボルナジエン誘導体と、芳香族ブロマイドとを反応し、一般式(5)で表されるノルボルネン誘導体を得る。


[式(5)中、R14、R15、R16、R17、R18、R19は、それぞれ独立に、水素原子等を示し、Zはフェニレン基等を示し、l、m、nは0又は1の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン類をモノマーとして用いて製造される環状オレフィン系重合体は、主鎖骨格に脂環構造を有することから非晶性となりやすく、優れた透明性、耐熱性を示し、光弾性係数が小さく、かつ、低吸水性、耐酸性、耐アルカリ性、高い電気絶縁性等の性状を有する。そのため、環状オレフィン系重合体を、ディスプレイ用途(位相差フィルム、拡散フィルム、液晶基板、タッチパネル用フィルム、導光板、偏光板保護フィルム等)、光学レンズ用途、光ディスク用途(CD、MD、CD−R、DVD等)、光ファイバー用途、光学フィルム/シート用途、光半導体封止用途等に利用することが検討されてきた。そして、このような環状オレフィン系重合体の中でも、特に、ノルボルネン誘導体の開環メタセシス重合で得られた環状オレフィン系重合体の水素化物は、優れた透明性、耐熱性を示し、光弾性係数が小さいという特性を有することが知られており、ポリカーボネートとともに液晶ディスプレイ(LCD)等の位相差フィルムとして利用されてきた。そのため、近年では、ノルボルネン誘導体を用いて得られる環状オレフィン系重合体の開発が行われてきている。
【0003】
このような状況の下、環状オレフィン系重合体の原料となるノルボルネン誘導体の様々な製造方法が研究されている。例えば、特表2000−506183号公報(特許文献1)においては、Diels−Alder反応を利用したノルボルネン誘導体の製造方法であって、環状ジエンとオレフィン化合物とを反応させてノルボルネン化合物を生成することを含んで成り、環状ジエンを反応中に徐々に加える方法が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のようなDiels−Alder反応を利用したノルボルネン誘導体の製造方法を、5位にフェニル基を有するノルボルネン誘導体を製造する方法として利用した場合には、得られるノルボルネン誘導体が、フェニル基の立体配置がendo配置となるendo体とexo配置となるexo体との混合物(endo:exo=6〜8:4〜2、かかる比率は反応温度により変化する)となり、exo体を選択的に製造することができなかった。また、このようなendo体とexo体は安定性にほとんど差がないため、得られた混合物に対して熱や酸、塩基触媒によって異性化を試みてもexo体のみを得ることはできなかった。なお、従来のDiels−Alder反応を利用したノルボルネン誘導体の製造方法を下記反応式(I)に示す。
【0004】
【化1】

【0005】
また、2000年に発行されたAngew.Chem.Int.Ed(vol.39、no.11)の1946〜1949頁(非特許文献1)においては、パラジウムと下記一般式(6):
【0006】
【化2】

【0007】
(式(6)中、nは1又は2を示す。)
で表されるリン系化合物とからなる触媒の存在下、ノルボルナジエン系化合物と式:X−R(式中Xはハロゲンを示し、Rはフェニル基を示す)で表される化合物とを反応させて、5−フェニル−2−ノルボルネン誘導体を得る方法が開示されている。非特許文献1に記載のようなノルボルネン誘導体の製造方法は、フェニル基(5位の置換基)の立体配置がexo配置となるノルボルネン誘導体を選択的に収率よく製造することが可能である。しかしながら、非特許文献1に記載のようなノルボルネン誘導体の製造方法は、5位の置換基にt−ブチル基等の置換基を有する置換フェニル基等を導入しようとした場合には、置換フェニル基の立体配置がexo配置となるノルボルネン誘導体を収率よく製造することができなかった。
【0008】
さらに、1989年に発行されたJ.CHEM.SOC.,CHEM.COMMUN.の1368項〜1370項(非特許文献2)においては、触媒系として酢酸パラジウム、テトラn−ブチルアンモニウムクロライド及びギ酸カリウムを用いてノルボルナジエンとフェニルアイオダイドとを反応させてノルボルネン誘導体を得るノルボルネン誘導体の製造方法が開示されている。しかしながら、上記非特許文献2に記載のようなノルボルネン誘導体の製造方法においては、フェニルアイオダイドの代わりにフェニルブロマイドを反応基質として用いると全く反応が進行しなかった。
【特許文献1】特表2000−506183号公報
【非特許文献1】Jean Michel Brunel et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2000年発行,vol.39,no.11,1946〜1949頁
【非特許文献2】Richard C.Larock et al.,J.CHEM.SOC.,CHEM.COMMUN.,1989年発行,1368項〜1370項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、置換フェニル基等の置換基の立体配置がexo配置となる特定のノルボルネン誘導体(exo体)を選択的に、しかも十分に高い収率で製造することが可能なノルボルネン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)〜(2)で表されるリン系化合物の中から選択される少なくとも1種と、パラジウムとの存在下、下記一般式(3)で表されるノルボルナジエン誘導体と、下記一般式(4)で表されるブロム化合物とを反応せしめることにより、下記一般式(5)で表され且つ下記一般式(5)中の置換基Zの立体配置がexo配位であるノルボルネン誘導体を選択的に、しかも十分に高い収率で製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明のノルボルネン誘導体の製造方法は、下記一般式(1)〜(2):
【0012】
【化3】

【0013】
[式(1)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜8の環状の飽和炭化水素基、炭素原子数1〜10のジアルキルアミノ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基及びスルホン酸アルカリ金属塩基の中から選択されるいずれか1種を示し、R、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜8の環状の飽和炭化水素基、フェニル基、トリル基、ビフェニル基及びナフチル基の中から選択されるいずれか1種を示す。]
【0014】
【化4】

【0015】
[式(2)中、Rは、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基を示す。]
で表されるリン系化合物の中から選択される少なくとも1種と、パラジウムとの存在下、下記一般式(3):
【0016】
【化5】

【0017】
[式(3)中、R、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示し、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表されるノルボルナジエン誘導体と、下記一般式(4):
【0018】
【化6】

【0019】
[式(4)中、Zは、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基の中から選択されるいずれか1種を示し、R13は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示す。]
で表されるブロム化合物とを反応せしめ、下記一般式(5)
【0020】
【化7】

【0021】
[式(5)中、R14、R15、R16、R17、R18は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示し、Zはフェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基の中から選択されるいずれか1種を示し、R19は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示し、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表され且つ前記一般式(5)中のZで表される置換基の立体配置がexo配位であるノルボルネン誘導体を得ることを特徴とする方法である。
【0022】
上記本発明のノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記一般式(1)中のR、R、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数1〜3の直鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基及びスルホン酸アルカリ金属塩基の中から選択されるいずれか1種であり、Rが水素原子であり、且つR、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数5〜8の環状の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0023】
また、上記本発明のノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記一般式(2)中のRが、それぞれ独立に、炭素原子数3〜5の分岐鎖状の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0024】
さらに、上記本発明のノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記一般式(3)及び(5)中のmが0であり且つnが0であることが好ましい。
【0025】
また、上記本発明のノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記一般式(4)中のZがフェニレン基であり、前記一般式(4)中のR13が炭素原子数3〜5の分岐鎖状の炭化水素基であり、前記一般式(5)中のZがフェニレン基であり且つ前記一般式(5)中のR19が炭素原子数3〜5の分岐鎖状の炭化水素基であることが好ましい。
【0026】
また、上記本発明のノルボルネン誘導体の製造方法においては、前記ノルボルナジエン誘導体と前記ブロム化合物とを反応せしめる際に、塩基を更に共存せしめることが好ましい。このような塩基としては、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、NaOH、NaCO、KOH及びKCOの中から選択される少なくとも1種がより好ましい。このような塩基を用いることで、副生成物の生成をより十分に抑制することが可能となり、より効率よく目的とするノルボルネン誘導体を製造することが可能となる。
【0027】
さらに、上記本発明のノルボルネン誘導体の製造方法における前記塩基の含有量としては、前記ブロム化合物の含有量に対するモル比([塩基]:[ブロム化合物])が1:1〜10:1の範囲となる量であることが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、置換フェニル基等の置換基の立体配置がexo配置となる特定のノルボルネン誘導体(exo体)を選択的に、しかも十分に高い収率で製造することが可能なノルボルネン誘導体の製造方法を提供することが可能となる。
【0029】
なお、このような本発明のノルボルネン誘導体の製造方法によれば、特定のノルボルネン誘導体(exo体)の製造工程の簡略化が可能となり、特定のノルボルネン誘導体(exo体)を低コストで製造することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0031】
本発明のノルボルネン誘導体の製造方法は、上記一般式(1)〜(2)で表されるリン系化合物の中から選択される少なくとも1種と、パラジウムとの存在下、上記一般式(3)で表されるノルボルナジエン誘導体と、上記一般式(4)で表される化合物とを反応せしめ、上記一般式(5)で表され且つ上記一般式(5)中のZで表される置換基の立体配置がexo配位であるノルボルネン誘導体を得ることを特徴とする方法である。
【0032】
先ず、本発明において用いられる各化合物について説明する。本発明において用いられるリン系化合物としては、下記一般式(1):
【0033】
【化8】

【0034】
で表されるリン系化合物が挙げられる。
【0035】
上記一般式(1)中のR、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜8の環状の飽和炭化水素基、炭素原子数1〜10のジアルキルアミノ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基及びスルホン酸アルカリ金属塩基の中から選択されるいずれか1種を示す。
【0036】
このようなR、R、R、Rとして選択され得る炭素原子数1〜10の直鎖状の飽和炭化水素基としては、炭素原子数が1〜5のものが好ましく、1〜3のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、上記一般式(5)で表され且つ上記一般式(5)中のZで表される置換基の立体配置がexo配位であるノルボルネン誘導体(exo−ノルボルネン誘導体)の収率が低下する傾向にある。このような炭素原子数1〜10の直鎖状の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
【0037】
また、R、R、R、Rとして選択され得る炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基としては、炭素原子数が3〜7のものが好ましく、3〜5のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。このような炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基としては、例えばt−ブチル基等が挙げられる。
【0038】
また、R、R、R、Rとして選択され得る炭素原子数3〜8の環状の飽和炭化水素基としては、炭素原子数が5〜7のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。このような環状の飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基が挙げられる。
【0039】
また、R、R、R、Rとして選択され得る炭素原子数1〜10のジアルキルアミノ基としては、炭素原子数が1〜5のものが好ましく、1〜3のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。なお、このようなジアルキルアミノ基においては、アミノ基に結合するアルキル基は、直鎖状のものであっても分岐鎖状のものであってもよく、直鎖状のものがより好ましい。
【0040】
さらに、R、R、R、Rとして選択され得る炭素原子数1〜10のアルコキシ基としては、炭素原子数が1〜5のものが好ましく、1〜3のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。
【0041】
また、R、R、R、Rとして選択され得るスルホン酸アルカリ金属塩基としては、合成及び精製の容易さの観点から、アルカリ金属としてナトリウムを含有するものがより好ましい。
【0042】
また、上記一般式(1)中のR、R、R、Rとしては、合成及び精製の容易さの観点から、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の飽和炭化水素基、スルホン酸アルカリ金属塩基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基のうちのいずれか1種であることが好ましい。更に、上記一般式(1)で表されるリン系化合物としては、R、R、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数1〜3の直鎖状の飽和炭化水素基(特に好ましくはメチル基)、炭素原子数1〜3のアルコキシ基(特に好ましくはメトキシ基)及びスルホン酸アルカリ金属塩基の中から選択されるいずれか1種であり且つRが水素原子であるものがより好ましい。
【0043】
さらに、上記一般式(1)中のR、Rは同一でも又は異なっていてもよく、それぞれ、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜8の環状の飽和炭化水素基、フェニル基、トリル基、ビフェニル基及びナフチル基の中から選択されるいずれか1種である。
【0044】
このようなR、Rとして選択され得る炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基としては、炭素原子数が3〜7のものが好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。
【0045】
また、R、Rとして選択され得る炭素原子数3〜8の環状の飽和炭化水素基数としては、炭素原子数が5〜8のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。
【0046】
さらに、上記一般式(1)中のR、Rとしては、合成及び精製の容易さの観点から、炭素原子数5〜8の環状の飽和炭化水素基(特に好ましくはシクロヘキシル基)であることがより好ましい。
【0047】
また、本発明において用いられるリン系化合物としては、下記一般式(2):
【0048】
【化9】

【0049】
で表されるリン系化合物が挙げられる。
【0050】
上記一般式(2)中のRは同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基である。このようなRとして選択され得る炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基としては、炭素原子数が3〜7のものが好ましく、3〜5のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えるとexo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような飽和炭化水素基としては、収率と選択率との観点から、t−ブチル基が特に好ましい。
【0051】
次に、本発明において用いられるパラジウムについて説明する。このようなパラジウムは特に制限されないが、前記リン系化合物をリガンドとして容易に錯体を形成し得るという観点から、パラジウムの塩として用いることが好ましい。このようなパラジウムの塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、シアン化パラジウム、硫酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナト、トリフルオロ酢酸パラジウム、パラジウムカーボンなどが挙げられ、リン化合物(配位子)との錯体形成がより容易であることから、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナト等がより好ましい。
【0052】
次に、本発明にかかるノルボルナジエン誘導体について説明する。このようなノルボルナジエン誘導体は、下記一般式(3):
【0053】
【化10】

【0054】
で表されるものである。
【0055】
上記一般式(3)中のR、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種である。
【0056】
このようなR、R、R10、R11、R12として選択され得る炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基としては、炭素原子数が1〜5のものが好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような直鎖状の炭化水素基としては、直鎖状の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0057】
また、R、R、R10、R11、R12として選択され得る炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基としては、炭素原子数が3〜5のものが好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような分岐鎖状の炭化水素基としては、分岐鎖状の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0058】
また、このようなR、R、R10、R11、R12としては、exo−ノルボルネン誘導体の収率の観点から、水素原子、フッ素原子、塩素原子であることがより好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0059】
また、上記一般式(3)中において、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。このようなm、nの値が前記上限を超えると、ノルボルネン誘導体を製造する際に、高純度化が難しくなったり、収率が低下したりして製造が困難となる場合や、得られるノルボルネン誘導体のガラス転移温度(Tg)が高くなりすぎて、延伸加工等の熱加工性が低下する場合が生じる。また、目的とするノルボルネン誘導体をより高収率で得ることが可能となるという観点から、mの値が0で且つnの値が0であることが好ましい。また、lの値としては、これにより目的物を比較的容易に合成できるという観点から、0であることが好ましい。
【0060】
次に、本発明において用いられる下記一般式(4):
【0061】
【化11】

【0062】
で表されるブロム化合物について説明する。
【0063】
上記一般式(4)中のZは、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基の中から選択されるいずれか1種を示す。このようなZとしては、exo−ノルボルネン誘導体の収率の観点から、フェニレン基が特に好ましい。
【0064】
また、上記一般式(4)中のR13は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種である。
【0065】
このようなR13として選択され得る炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基としては、炭素原子数が1〜5のものが好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような直鎖状の炭化水素基としては、直鎖状の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0066】
また、R13として選択され得る炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基としては、炭素原子数が3〜7のものが好ましく、3〜5のものがより好ましい。このような炭素原子数が前記上限を超えると、exo−ノルボルネン誘導体の収率が低下する傾向にある。また、このような分岐鎖状の炭化水素基としては、分岐鎖状の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0067】
また、下記一般式(4)で表されるブロム化合物としては、exo−ノルボルネン誘導体の収率という観点から、前記一般式(4)中のZがフェニレン基であり且つ前記一般式(4)中のR13が炭素原子数3〜5の分岐鎖状の炭化水素基(特に好ましくはt−ブチル基)であることが好ましい。
【0068】
次に、上記ノルボルナジエン誘導体と上記ブロム化合物とを反応せしめる工程について説明する。このような工程は、前記リン系化合物と前記パラジウムとの存在下、上記ノルボルナジエン誘導体と上記ブロム化合物とを反応せしめる工程である。このような反応工程は、いわゆる還元的Heck反応(ハイドロアリレーション反応)を利用したものである。なお、このような反応工程においては、前記リン系化合物とパラジウムとによって、前記リン系化合物をリガンドとするパラジウム錯体が形成され、そのパラジウム錯体が触媒として上記ノルボルナジエン誘導体と上記ブロム化合物とが反応するため、目的とするノルボルネン誘導体を選択的に得ることが可能となるものと推察される。
【0069】
このような反応工程に用いる上記一般式(1)で表されるリン系化合物の量としては、用いるリン系化合物の種類等によっても異なるものであり、特に制限されないが、前記パラジウムを完全に錯体(前記リン系化合物をリガンドとする錯体)とすることが可能な量以上とすることが好ましく、リン系化合物の含有比率を、パラジウム1mol(金属換算)に対して1〜1000molの範囲とすることがより好ましい。また、このようなリン系化合物の含有量としては、反応系中の全化合物に対して、10〜0.00001モル%とすることが好ましい。このようなリン系化合物の含有比率が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
【0070】
また、上記一般式(3)で表されるノルボルナジエン誘導体の含有量としては、反応系中の全化合物に対して、0.1〜50モル%とすることが好ましく、1〜20モル%とすることがより好ましい。このようなノルボルナジエン誘導体の含有量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
【0071】
また、上記一般式(3)で表されるノルボルナジエン誘導体及び上記一般式(4)で表されるブロム化合物の含有比率としては、上記一般式(3)で表されるノルボルナジエン誘導体と上記一般式(4)で表されるブロム化合物とのモル比([前記ノルボルナジエン誘導体]:[前記ブロム化合物])が20:1〜1:1となる範囲とすることが好ましく、10:1〜2:1となる範囲とすることがより好ましい。このようなノルボルナジエン誘導体の含有比率が前記下限未満では、副反応が増加する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応速度が低下する傾向にある。
【0072】
さらに、前記パラジウムの含有量としては、反応系中の全化合物に対して、0.0000001〜10モル%とすることが好ましく、0.000001〜1モル%とすることがより好ましい。このようなパラジウムの含有量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
【0073】
また、反応系中に含有されるパラジウムの金属換算によるモル量と、上記一般式(3)で表されるノルボルナジエン誘導体のモル量との比([パラジウム]:[ノルボルナジエン誘導体])としては、0.00000001:1〜0.1:1の範囲であることが好ましく、0.0000001:1〜0.001:1の範囲であることがより好ましい。このようなパラジウムの使用量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、副反応が増加する傾向にある。
【0074】
また、このような反応工程においては、溶媒を用いることが好ましい。このような溶媒としては、用いるノルボルナジエン誘導体や上記一般式(4)で表される化合物等の反応基質や、用いるリン系化合物等を溶解させることが可能なものであればよく、公知の有機溶媒を適宜用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒や、テトラハイドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリルやベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒等が挙げられる。
【0075】
さらに、このような溶媒の量としては、反応系中の全化合物の濃度が0.1〜2.0mol/Lとなる量であることが好ましく、0.2〜1.0mol/Lとなる量であることがより好ましい。このような溶媒の使用量に関して、前記全化合物の濃度が前記下限未満では、反応速度が低下し転化率が低下する傾向にあり、他方、前記全化合物の濃度が前記上限を超えると、ノルボルナジエン誘導体どうしの反応が起きて副生成物が生成される傾向にある。
【0076】
また、このような反応工程においては、より効率よく反応を進行させることができ、副生成物の生成を効率よく抑制できるという観点から、還元剤を共存させることが好ましい。このような還元剤としては、例えば、亜鉛;水素化ホウ素ナトリウム;ギ酸;ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸ルビジウム、ギ酸セシウム等のギ酸のアルカリ金属塩;ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、ギ酸ストロンチウム、ギ酸バリウム等のギ酸のアルカリ土類金属塩;ギ酸アンモニウム等のギ酸のアンモニウム塩;ギ酸亜鉛、ギ酸鉄等のギ酸の金属塩;等が挙げられる。
【0077】
このような還元剤の含有量としては、前記ブロム化合物の含有量に対するモル比([還元剤]:[ブロム化合物])が1:1〜1:10の範囲となる量であることが好ましく、1:1〜1:5の範囲となる量であることがより好ましい。このような還元剤の含有量が前記下限未満では、転化率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、目的物であるノルボルネンが水素化された副生物(ノルボルナン)が生成される傾向にある。
【0078】
さらに、このような反応工程においては、上記一般式(3)で表されるノルボルナジエン誘導体と、上記一般式(4)で表されるブロム化合物とを反応せしめることにより発生するハロゲン化水素を中和するために、中和剤として塩基を共存させることが好ましい。このような塩基としては、有機塩基や無機塩基などを使用することが可能であり、特に制限されず、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン;ピリジン、ジメチルアミノピリジン等のピリジン類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ炭酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等の金属アルコキシド;などが挙げられる。
【0079】
また、このような塩基の中でも、副生成物の生成をより十分に抑制できるという観点から、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、前記アルカリ金属塩としては、アルカリ金属の炭酸塩がより好ましい。更に、このような塩基としては、副生成物の生成をより高度に抑制できることから、水酸化ナトリウム(NaOH)、炭酸ナトリウム(NaCO)、水酸化カリウム(KOH)及び炭酸化リウム(KCO)の中から選択される少なくとも1種がより好ましく、KOH及びKCOの中から選択される少なくとも1種が更に好ましく、中でもより高い収率で目的とするノルボルネン誘導体を製造できるという観点から、KOHが特に好ましい。
【0080】
さらに、このような塩基の含有量としては、前記ブロム化合物の含有量に対するモル比([塩基]:[ブロム化合物])が1:1〜1:10の範囲となる量であることが好ましく、1:1〜1:5の範囲となる量であることがより好ましい。このような塩基の含有量が前記下限未満では、転化率が低下し、副生物が増える傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応速度が低下し、収率が低くなる傾向にある。
【0081】
また、このような反応工程における温度条件としては、20〜180℃の範囲であることが好ましく、60〜150℃の範囲であることがより好ましく、80〜140℃の範囲であることが更に好ましく、通常80〜120℃の範囲であることが特に好ましい。このような反応温度が前記下限未満では、反応速度が低下し転化率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、前記ノルボルナジエン誘導体同士の反応が起きて副生成物が生成されてしまう傾向にある。
【0082】
また、このような反応の反応時間としては0.1〜100時間であることが好ましく、1〜20時間の範囲であることがより好ましい。このような反応時間が前記下限未満では、転化率が低下して収率良く生成物を得ることができなくなる傾向にあり、他方、反応時間が前記上限を超えると、パラジウムとリガンド(前記リン系化合物)が酸素で失活しやすくなり、転化率が頭打ちとなる現象が見られる傾向にある。
【0083】
このようにして、上記一般式(1)〜(2)で表されるリン系化合物の中から選択される少なくとも1種と、パラジウムとの存在下、上記一般式(3)で表されるノルボルナジエン誘導体と、上記一般式(4)で表されるブロム化合物とを反応せしめることにより、下記一般式(5):
【0084】
【化12】

【0085】
[式(5)中、R14、R15、R16、R17、R18は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示し、Zはフェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基の中から選択されるいずれか1種を示し、R19は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示し、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表され且つ上記一般式(5)中の置換基Zの立体配置がexo配位であるノルボルネン誘導体(exo−ノルボルネン誘導体)を選択的に製造することができる。なお、本発明によって、exo−ノルボルネン誘導体を選択的に製造することが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明においては、前記リン系化合物(リガンド)とパラジウムの存在下において前記ノルボルナジエン誘導体と前記ブロム化合物を反応させるハイドロアリレーション反応を利用する。そして、本発明においては、パラジウムとリン系化合物(リガンド)の組合せによって、exo体を選択的に製造するのに適したパラジウム錯体触媒が形成され、その錯体触媒の存在下で前記ノルボルナジエン誘導体と前記ブロム化合物の反応を進行せしめることが可能となるためexo体が選択的に製造されるものと推察される。
【0086】
また、上記一般式(5)中のR14、R15、R16、R17、R18は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種である。また、上記一般式(5)中のlは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。
【0087】
さらに、上記一般式(5)中のR14、R15、R16、R17、R18、l、m、nは、上記一般式(3)中のR、R、R10、R11、R12、l、m、nと同様のものである。また、上記一般式(5)中のZは、上記一般式(4)中のZと同様のものである。更に、上記一般式(5)中のR19は、上記一般式(4)中のR13と同様のものである。
【0088】
また、上記一般式(5)で表されるexo−ノルボルネン誘導体としては、比較的容易に合成でき、しかも、そのexo−ノルボルネン誘導体を開環重合して得られる重合体のフィルムがネガティブA性と耐熱性を兼ね備えたものとすることが可能であるという観点から、上記一般式(5)中のmが0であり且つnが0であることがより好ましい。
【0089】
また、上記一般式(5)で表されるexo−ノルボルネン誘導体としては、適度なネガティブA性と実用的な耐熱性を発現させるという観点から、Zがフェニレン基であり且つR19が炭素原子数3〜5の分岐鎖状の炭化水素基(特に好ましくはt−ブチル基)であることが好ましい。
【0090】
さらに、上記一般式(5)で表されるexo−ノルボルネン誘導体としては、例えば、下記一般式(i)〜(xv)で表されるexo−ノルボルネン誘導体が挙げられる。なお、下記一般式(i)〜(xv)中、置換フェニル基又は置換ナフチル基の立体配置は、それぞれexo配位である。
【0091】
【化13】

【0092】
【化14】

【0093】
本発明のノルボルネン誘導体の製造方法を採用して得られるノルボルネン誘導体は、開環重合、開環重合とそれに続く水素添加反応、付加重合、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等によって、所望の重合体とすることができる。また、このようなノルボルネン誘導体を、必要に応じて任意の共重合可能な化合物と共重合反応させて共重合体を得ることも可能である。そして、このようなノルボルネン誘導体から合成した重合体は、優れた透明性、耐熱性、低吸水性を示し、かつ用途に応じて任意に複屈折値の大きさやその波長分散性を制御できることから、光ディスク、光磁気ディスク、光学レンズ(Fθレンズ、ピックアップレンズ、レーザープリンター用レンズ、カメラ用レンズ等)、眼鏡レンズ、光学フィルム/シート(ディスプレイ用フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム、偏光板保護フィルム、拡散フィルム、反射防止フィルム、液晶基板、EL基板、電子ペーパー用基板、タッチパネル基板、PDP前面板等)、透明導電性フィルム用基板、光ファイバー、導光板、光カード、光ミラー、IC,LSI,LED封止材などの成形材料として好適に応用することができる。また、このようなノルボルネン誘導体は、exo体からなるものであるため、これを位相差フィルムの材料として用いることで、負の複屈折性の中でも特異的なネガティブAとしての光学特性を有する位相差フィルムや、複屈折の波長分散特性が逆分散となる位相差フィルム等を形成することが可能となる。
【実施例】
【0094】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、各実施例及び各比較例で得られた生成物の分子構造の同定は、超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、VARIAN社製、商品名:UNITY INOVA−600及びUNITY INOVA−400)を用いて、重水素化クロロホルム中で、各実施例及び各比較例で得られた生成物のH、13C−NMR、二次元NMR(HH−COSY、CH−COSY、DEPT)を測定することにより行った。
【0095】
(実施例1)
先ず、1.0Lの三口フラスコに、窒素雰囲気下、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチルビフェニル(リン系化合物:258mg:0.708mmol)、酢酸パラジウム(13.3mg:0.059mmol)、ジメチルスルホキシド(DMSO:250ml)、ノルボルナジエン(19.0ml:190mmol)、4−tert−ブチル−ブロモベンゼン(10.0ml:59mmol)、トリエチルアミン(NEt:26.7ml:192mmol)、ギ酸(5.9ml:154mmol)を投入した後、80℃の温度条件で4時間加熱攪拌を行い、反応溶液を得た。なお、このような反応溶液中において、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対する酢酸パラジウムの含有比率は0.1モル%であり、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対するリン系化合物の含有比率が1.2モル%であり、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対するノルボルナジエンのモル当量は3.22当量であり、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対するNEtのモル当量は3.25当量であり、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対するギ酸のモル当量は2.61当量である。
【0096】
次に、前記反応溶液を25℃に冷却した後、300mlの氷水中に注ぎ、分液ロートを用いてn−へキサン(50ml×3回)で抽出を行い、n−へキサン溶液を得た。次いで、前記n−へキサン溶液を、水及び飽和食塩水で洗浄した。そして、洗浄後の後n−へキサン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、濃縮して粗生成物(12.4g)を得た。
【0097】
このようにして得られた粗生成物に対して、ガスクロマト分析を行った結果、exo−5−(p−tert−ブチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(化合物A)と、endo−5−(p−tert−ブチルフェニル)トリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタン(化合物B)と、tert−ブチルベンゼン(化合物C)の混合物であることが確認された。なお、このような粗生成物の生成工程を下記反応式(II)に示す。また、下記反応式(II)中の化合物Dは、endo−5−(p−tert−ブチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンである。
【0098】
【化15】

【0099】
次に、前記粗生成物を蒸留精製し、104℃/1mmHgの留分として生成物を得た。このような生成物の収量は11.7g(収率87.1%)であった。また、前記生成物に対してガスクロマト分析及びNMR分析を行った結果、前記生成物は化合物A(収率80.6%)と化合物B(収率6.5%)との混合物であることが確認され、前記生成物中には化合物Dが含まれていないことが確認された。その後、化合物Aと化合物Bの分離を、リサイクル分取HPLC(日本分析工業製LC−918)を用いて行った。このような分離工程においては、20時間程度のリサイクル分離を行い、これにより両者をほぼ完全に分離することができた。
【0100】
このようにして得られた化合物Aと化合物Bを、それぞれNMRによって構造解析し、各化合物の構造を同定した。実施例1で得られた化合物Aの二次元NMRスペクトルを図1に示し、実施例1で得られた化合物AのH−NMRスペクトルを図2に示し、実施例1で得られた化合物Aの13C−NMRスペクトルを図3に示す。また、実施例1で得られた化合物Bの二次元NMRスペクトルを図4に示し、実施例1で得られた化合物BのH−NMRスペクトルを図5に示し、実施例1で得られた化合物Bの13C−NMRスペクトルを図6に示す。このような構造解析の結果から、化合物Aがexo−5−(p−tert−ブチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンであることが確認され、化合物Bがendo−5−(p−tert−ブチルフェニル)トリシクロ[2.2.1.02,6]ヘプタンであることが確認された。
【0101】
また、実施例1で使用したリン系化合物の種類、粗生成物の生成工程の反応温度、転化率([転化率]={[反応系中に添加した4−tert−ブチル−ブロモベンゼンの量]−[反応後に残存している4−tert−ブチル−ブロモベンゼンの量]}/[反応系中に添加した4−tert−ブチル−ブロモベンゼンの量])、及び、各化合物の収率をそれぞれ表1に示す。
【0102】
(実施例2〜4)
2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチルビフェニルの代わりに下記表1に記載のリン系化合物を用い、実施例1と同様にして生成物を得た。なお、反応溶液中の各成分の含有比率は実施例1と同様とした。各実施例で使用したリン系化合物の種類、粗生成物の生成工程の反応温度、転化率、及び、各化合物の収率をそれぞれ表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
(比較例1〜4)
2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチルビフェニルの代わりに下記表2に記載のリン系化合物を用い、反応温度条件を下記表2に記載の条件とした以外は実施例1と同様にして比較のための各生成物を得た。なお、反応溶液中の各成分の含有比率は実施例1と同様とした。各比較例で使用したリン系化合物の種類、粗生成物の生成工程の反応温度、転化率、及び、各化合物の収率をそれぞれ表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
(比較例5)
2Lのオートクレーブに、4−tBu−スチレン(856g:5.36mol)、ジシクロペンタジエン(709g:5.36mol)、4−tBu−カテコール(44.6g:0.27mol)、トルエン(200ml)を投入し、185℃で4時間加熱攪拌を行った。反応初期は0.4MPaの圧力を示したが、時間の経過とともに圧力が減少し最終的に0.2MPaを示した。その後、加熱を停止し、自然放冷を行ってオートクレーブ内の温度を室温(25℃)まで下げた後、オートクレーブを開蓋し、反応物を取り出した。そして、得られた反応物を蒸留精製し、118〜120℃/1mmHgの留分として生成物を取得した。前記生成物の収量は640g(収率53%、tBu−スチレンベース)であり、前記生成物に対してガスクロマト分析及びNMR分析を行った結果、5−(p−tBuフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンのendo異性体とexo異性体の混合物(異性体比率=79/21)であることが確認された。次に、前記混合物の一部(1.2g)をリサイクル分取HPLC(日本分析工業製LC−918)にかけて分離精製を行った結果、一方の異性体が97.1%の純度で得られた(収量:0.23g)。このようにして得られた異性体を、NMRによって構造解析した結果、endo−5−(p−tBuフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(化合物D)であることが確認された。従って、得られた生成物は、endo/exo=79/21の5−(p−tBuフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテンであることが確認された。なお、比較例5で得られた化合物Dの二次元NMRスペクトルを図7に示し、比較例5で得られた化合物DのH−NMRスペクトルを図8に示し、比較例5で得られた化合物Dの13C−NMRスペクトルを図9に示す。
【0107】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のノルボルネン誘導体の製造方法を採用して得られた生成物(実施例1〜4)においては、endo−5−(p−tBuフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(化合物D)が存在しないことが確認された。従って、本発明のノルボルネン誘導体の製造方法によれば、exo−5−(p−tert−ブチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(化合物A)を選択的に製造できることが確認された。また、表1に示す結果からも明らかなように、本発明のノルボルネン誘導体の製造方法によれば、化合物Aを十分に高い収率で製造できることが確認された。
【0108】
一方、表2に示す結果からも明らかなように、リン系化合物として表2に示すものを使用した場合(比較例1〜4)においては、化合物Aの収率が十分なものとならないことが分かった。また、比較例5で得られた生成物の分析結果からも明らかなように、Diels−Alder反応を利用した場合(比較例5)においては、化合物Aを選択的に製造することができないことが分かった。
【0109】
(実施例5)
0.1Lの三口フラスコに、窒素雰囲気下、トリ−tert−ブチルリン(リン系化合物[実施例3で用いたものと同様のリン系化合物]:14.3mg:0.071mmol)、酢酸パラジウム(1.3mg:0.006mmol)、ジメチルスルホキシド(DMSO:25ml)、ノルボルナジエン(1.8ml:19.0mmol)、4−tert−ブチル−ブロモベンゼン(1.0ml:5.9mmol)、水酸化ナトリウム(NaOH:0.77g:19.2mmol)、ギ酸(0.6ml:15.4mmol)を投入した後、80℃の温度条件で4時間加熱攪拌を行い、反応溶液を得た。なお、このような反応溶液中において、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対する酢酸パラジウムの含有比率は0.1モル%であり、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対するリン系化合物の含有比率が1.2モル%であり、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対するノルボルナジエンのモル当量は3.22当量であり、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対するNaOHのモル当量は3.25当量であり、4−tert−ブチル−ブロモベンゼンに対するギ酸のモル当量は2.61当量であった。
【0110】
次に、前記反応溶液を25℃に冷却した後、30mlの氷水中に注ぎ、分液ロートを用いてn−へキサン(5ml×3回)で抽出を行い、n−へキサン溶液を得た。次いで、前記n−へキサン溶液を、水及び飽和食塩水で洗浄した。そして、洗浄後のn−へキサン溶液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ろ過、濃縮して粗生成物(1.2g)を得た。
【0111】
そして、得られた粗生成物に対してガスクロマト分析を行った結果、得られた生成物は、実施例1で得られた粗生成物と同様に、上記反応式(II)中の化合物A〜Cを含有する混合物であることが確認された。
【0112】
このようにして得られた粗生成物を蒸留精製し、104℃/1mmHgの留分として生成物を得た。このような生成物の収量は1.1g(収率82.6%)であった。得られた生成物に対してガスクロマト分析を行った結果、得られた生成物は、化合物A(収率55.3%)と化合物B(収率27.3%)を含有する混合物であることが確認された。
【0113】
本実施例で使用した塩基の種類、粗生成物の生成工程の反応温度、転化率([転化率]={[反応系中に添加した4−tert−ブチル−ブロモベンゼンの量]−[反応後に残存している4−tert−ブチル−ブロモベンゼンの量]}/[反応系中に添加した4−tert−ブチル−ブロモベンゼンの量])及び、上記反応式(II)中の化合物A〜Dの収率をそれぞれ表3に示す。
【0114】
(実施例6〜11)
用いる塩基を水酸化ナトリウムから下記表3に記載の塩基に変更し、ブロム化合物に対する塩基の含有量を下記表3に記載した割合に変更した以外は、実施例5と同様にして生成物を得た。なお、反応溶液中の塩基以外の各成分の含有比率は実施例5と同様とした。また、このようにして得られた生成物に対して、それぞれガスクロマト分析を行った。各実施例で使用した塩基の種類、粗生成物の生成工程の反応温度、転化率、及び、各化合物の収率をそれぞれ表3に示す。
【0115】
【表3】

【0116】
表3に示す結果及び表1の実施例3の結果からも明らかなように、リン系化合物としてトリ−tert−ブチルリンを用いた反応系(実施例3及び実施例5〜11)について検討すると、塩基としてアルカリ金属塩又はアルカリ金属水酸化物を塩基として用いた場合(実施例5〜11)に、化合物Bの生成がより抑制されていることが確認された。このような結果から、反応系中に塩基としてアルカリ金属塩又はアルカリ金属水酸化物を共存させることで、副生成物の生成をより十分に抑制できることが分かった。また、リン系化合物としてトリ−tert−ブチルリンを用いた反応系において、反応溶液に同じモル当量で塩基を含有させた場合(実施例3及び実施例5〜8)について検討すると、塩基として水酸化カリウム(KOH)を用いた場合(実施例7)に、副生成物の生成をより高度に抑制できるとともに目的とするノルボルネン誘導体(化合物A)の収率をより向上させることが可能となることが分かった。さらに、KOHの含有量を変化させた場合(実施例8〜11)について検討すると、ブロム化合物に対するKOHのモル当量の値をより大きな値とするほど、副生成物の生成がより高い水準で抑制されることが確認され、転化率及び収率の向上と副生成物の生成の抑制とをより高い水準でバランスよく図るためには、ブロム化合物に対するKOHのモル当量の値(KOHの含有量)を1当量以上とすることが好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上説明したように、本発明によれば、置換フェニル基等の置換基の立体配置がexo配置となる特定のノルボルネン誘導体(exo体)を選択的に、しかも十分に高い収率で製造することが可能なノルボルネン誘導体の製造方法を提供することが可能となる。
【0118】
したがって、本発明のノルボルネン誘導体の製造方法は、特異な構造を有し且つ光ディスク、光磁気ディスク、光学レンズ、眼鏡レンズ、光学フィルム等を製造するのに好適に利用可能なノルボルネン誘導体を製造する方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】実施例1で得られた化合物Aの二次元NMRスペクトルのグラフである。
【図2】実施例1で得られた化合物AのH−NMRスペクトルのグラフである。
【図3】実施例1で得られた化合物Aの13C−NMRスペクトルのグラフである。
【図4】実施例1で得られた化合物Bの二次元NMRスペクトルのグラフである。
【図5】実施例1で得られた化合物BのH−NMRスペクトルのグラフである。
【図6】実施例1で得られた化合物Bの13C−NMRスペクトルのグラフである。
【図7】比較例5で得られた化合物Dの二次元NMRスペクトルのグラフである。
【図8】比較例5で得られた化合物DのH−NMRスペクトルのグラフである。
【図9】比較例5で得られた化合物Dの13C−NMRスペクトルのグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)〜(2):
【化1】

[式(1)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜8の環状の飽和炭化水素基、炭素原子数1〜10のジアルキルアミノ基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基及びスルホン酸アルカリ金属塩基の中から選択されるいずれか1種を示し、R、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数3〜8の環状の飽和炭化水素基、フェニル基、トリル基、ビフェニル基及びナフチル基の中から選択されるいずれか1種を示す。]
【化2】

[式(2)中、Rは、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の飽和炭化水素基を示す。]
で表されるリン系化合物の中から選択される少なくとも1種と、パラジウムとの存在下、下記一般式(3):
【化3】

[式(3)中、R、R、R10、R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示し、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表されるノルボルナジエン誘導体と、下記一般式(4):
【化4】

[式(4)中、Zは、フェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基の中から選択されるいずれか1種を示し、R13は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示す。]
で表されるブロム化合物とを反応せしめ、下記一般式(5)
【化5】

[式(5)中、R14、R15、R16、R17、R18は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示し、Zはフェニレン基、ナフチレン基及びビフェニレン基の中から選択されるいずれか1種を示し、R19は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜10の直鎖状の炭化水素基、及び、炭素原子数3〜10の分岐鎖状の炭化水素基の中から選択されるいずれか1種を示し、lは0又は1の整数を示し、mは0又は1の整数を示し、nは0又は1の整数を示す。]
で表され且つ前記一般式(5)中のZで表される置換基の立体配置がexo配位であるノルボルネン誘導体を得ることを特徴とするノルボルネン誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(1)中のR、R、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数1〜3の直鎖状の飽和炭化水素基、炭素原子数1〜3のアルコキシ基及びスルホン酸アルカリ金属塩基の中から選択されるいずれか1種であり、Rが水素原子であり、且つR、Rが、それぞれ独立に、炭素原子数5〜8の環状の飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項1に記載のノルボルネン誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(2)中のRが、炭素原子数3〜5の分岐鎖状の飽和炭化水素基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のノルボルネン誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(3)及び(5)中のmが0であり且つnが0であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のノルボルネン誘導体の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(4)中のZがフェニレン基であり、前記一般式(4)中のR13が炭素原子数3〜5の分岐鎖状の炭化水素基であり、前記一般式(5)中のZがフェニレン基であり且つ前記一般式(5)中のR19が炭素原子数3〜5の分岐鎖状の炭化水素基であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のノルボルネン誘導体の製造方法。
【請求項6】
前記ノルボルナジエン誘導体と前記ブロム化合物とを反応せしめる際に、塩基を更に共存せしめることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載のノルボルネン誘導体の製造方法。
【請求項7】
前記塩基がアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物の中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載のノルボルネン誘導体の製造方法。
【請求項8】
前記塩基がNaOH、NaCO、KOH及びKCOの中から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載のノルボルネン誘導体の製造方法。
【請求項9】
前記塩基の含有量が、前記ブロム化合物の含有量に対するモル比([塩基]:[ブロム化合物])が1:1〜10:1の範囲となる量であることを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載のノルボルネン誘導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−51819(P2009−51819A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169339(P2008−169339)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】