ノロウイルスワクチン製剤
本発明は、ノロウイルス抗原およびアジュバント、詳細には1価VLPの混合物および多価VLPの混合物を含む抗原およびワクチン組成物、ならびに1価および多価両方のVLPを生成するための方法に関し、VLPは1つ以上のノロウイルスの遺伝子型由来のカプシドタンパク質を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、2006年9月29日出願の米国特許出願第60/847,912号、および2007年9月18日出願の米国特許出願第60/973,392号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ワクチンの分野のもの、詳細にはノロウイルスのワクチンの分野のものである。さらに、本発明は、ワクチン組成物を調製する方法、および免疫原性反応を誘発する方法に関する。
【0003】
(政府支援の陳述)
本発明は、契約番号DAMD17−01−C−0400およびW81XWH−05−0135の下で、米国陸軍医学研究及び材料司令(United States Army Medical Research and Material Command)からの政府支援を受けてもたらされたものである。政府は、本発明に対してある種の権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
ノロウイルスは、非細菌性胃腸炎の集団発生の唯一の最も重要な原因として出現した、培養不可能なヒトカリシウイルスである(Glassら、2000年、Hardyら、1999年)。ノロウイルスの臨床上の重要性は、高感度の分子診断アッセイの開発前は過小評価されていた。プロトタイプの遺伝子型Iノーウォークウイルス(NV)ゲノムのクローニングおよび組換えバキュロウイルス発現系からのウイルス様粒子(VLP)の生成により、広範なノロウイルス感染を明らかにするアッセイが開発された(Jiangら、1990年、1992年)。
【0005】
ノロウイルスは、非分節型(non-segmented)RNAゲノムを含む、1本鎖のポシティブセンスRNAウイルスである。ウイルスのゲノムは3つのオープンリーディングフレームをコードしており、その中では後の2つが、各々大きい方のカプシドタンパク質および小さい方の構造タンパク質の生成をそれぞれ特定している(Glassら、2000年)。真核細胞の発現系において高レベルで発現される場合は、NVのカプシドタンパク質およびある種の他のノロウイルスは自己集合して、天然(native)ノロウイルスビリオンを構造的に模倣するVLPになる。透過型電子顕微鏡によって観察した場合、VLPは、ヒト糞便サンプルから単離された感染性のビリオンと形態学的に区別できない。
【0006】
ノロウイルスに対する免疫反応は複雑であり、保護作用の関連性は、今や解明されつつある。天然ウイルスで行ったヒト志願者の試験は、粘膜由来の記憶免疫反応により感染から短期の保護作用がもたらされることを実証し、ワクチン媒介性の保護作用が実現可能であることを示唆していた(Lindesmithら、2003年;Parrinoら、1997年;Wyattら、1974年)。
【0007】
ノロウイルスはin vitroで培養することができないが、VLPの利用可能性およびそれらが大量に生成される能力によって、ノロウイルスのカプシドの抗原のおよび構造上のトポグラフィーを規定する上でかなりの進歩がなされている。VLPはウイルスのカプシドタンパク質の真正の確証は保持しているが、感染性の遺伝物質は欠いている。その結果、VLPは、細胞受容体とのウイルスの機能的な相互作用を模倣し、それによって適切な宿主の免疫反応は誘発するが、感染を再現または引き起こす能力は欠いている。NIHと連携して、Baylor College of Medicineは、学問的な医師主導の第I相臨床試験で、ヒト志願者におけるNV VLPに対する体液、粘膜、および細胞の免疫反応を試験した。経口投与したVLPは安全であり、健常成人において免疫原性であった(Ballら、1999年、Tacketら、2003年)。他の学術的機関では、動物モデルにおける前臨床実験により、細菌外毒素アジュバントとともに鼻腔内投与した場合に、VLPに対する免疫反応の増強が実証された(Guerreroら、2001年、Nicollier−Jamotら、2004年、Periwalら、2003年)。まとめると、これらのデータは、適切に製剤化されたVLPからなるワクチンは、ノロウイルス感染に対して免疫化するための実行可能な戦略となることを示唆している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ノロウイルス抗原を含む抗原製剤およびワクチン製剤を提供する。一実施形態では、製剤は少なくとも1つのアジュバントをさらに含む。ノロウイルス抗原は、遺伝子型Iまたは遺伝子型IIのウイルス配列またはコンセンサスウイルス配列に由来し得る。ノロウイルス製剤は、抗原のペプチド、タンパク質、またはウイルス様粒子(VLP)を含む。一実施形態では、VLPは変性していてよい。別の実施形態では、抗原のペプチドおよびタンパク質は、カプシドモノマー、カプシドマルチマー、タンパク質凝集体、およびそれらの組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、ノロウイルス抗原は、重量で約0.01%から約80%までの濃度で存在する。ノロウイルス抗原の投与量は、投与1回あたり約1μgから約100mgまでの量で存在する。
【0009】
別の実施形態では、ノロウイルスVLPは、少なくとも1つのカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードするノロウイルス核酸配列を用いた発現系で生成した組換えのVLPである。カプシドタンパク質は、VP1およびVP2またはその組合せからなる群から選択される。発現系は、酵母、細菌、昆虫、哺乳動物の発現系などの組換え細胞発現系でもよく、またはバキュロウイルス感染細胞発現系でもよい。
【0010】
さらに別の実施形態では、組成物は、貯蔵効果をもたらすことによって抗原の取込みを増強し、送達部位で抗原保持時間を増大し、または送達部位で細胞の緊密な接合を緩和することによって免疫反応を増強するように機能する送達剤をさらに含む。送達剤は生物付着剤(bioadhesive)でよく、好ましくはグリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸コンドロイチン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン)、炭水化物ポリマー(例えば、ペクチン、アルギン酸塩、グリコーゲン、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、スタキオース、ウヌリン(unulin)、デキストリン、デキストラン)、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖(ムチン、および他のムコ多糖を含む)セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、タンパク質(例えば、レクチン、線毛タンパク質)、およびデオキシリボ核酸からなる群から選択される粘膜付着剤(mucoadhesive)でよい。粘膜付着剤が多糖であることが好ましい。粘膜付着剤が、キトサン、またはキトサン塩もしくはキトサン塩基などのキトサンを含む混合物であることがより好ましい。
【0011】
さらに別の実施形態では、本発明はアジュバントをさらに含む組成物を提供する。アジュバントは、トール様受容体(TLR)作用薬、一リン酸化脂質A(MPL(登録商標))、合成脂質A、脂質Aミメティックまたは類似体、アルミニウム塩、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、ポリホスファゼン、乳剤、ビロゾーム、コクリエート(cochleate)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマー粒子、微粒子、細菌外毒素などの外毒素、およびリポソームからなる群から選択される。アジュバントがトール様受容体(TLR)作用薬であることが好ましい。アジュバントがMPL(登録商標)であることがより好ましい。
【0012】
本発明の組成物は、液体製剤または乾燥粉末製剤として提供することができる。本発明の乾燥粉末製剤は、直径約10から約500マイクロメートルまでの平均粒子サイズを含むことができる。一実施形態では、組成物は抗原製剤である。別の実施形態では、組成物は、ワクチンとして投与するために製剤化される。好適な投与経路には、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、真皮下、または経皮が含まれる。特に、投与経路は筋肉内または粘膜であってよく、粘膜投与の好ましい経路には鼻腔内、経口、または膣内の投与経路が含まれる。別の実施形態では、組成物は、鼻内噴霧、点鼻薬、または乾燥粉末として製剤化され、この場合、製剤を、鼻の通路に近接して保持されまたは通路中に挿入する製剤を含む装置から鼻の通路内に速やかに沈着させることによって投与する。別の実施形態では、製剤を一方または両方の鼻孔に投与する。
【0013】
本発明は、ノロウイルス組成物を含む抗原製剤またはワクチンを対象に投与することを含む、対象におけるノロウイルスに対する免疫反応を生じさせるための方法も提供する。一実施形態では、ノロウイルス組成物を含む抗原製剤およびワクチンは、1つ以上のノロウイルス抗原に対する抗体を産生することにおける使用を見出す。別の実施形態では、ノロウイルスのワクチン製剤を用いてノロウイルス感染症を治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】in vivoのVLP10μgでの鼻腔内免疫化後の、ネズミ頸部リンパ節細胞のin vitroの抗原特異的増殖アッセイを示す図である。
【図2】in vivoのVLP10μgでの鼻腔内免疫化後の、脾細胞のin vitroの抗原特異的増殖アッセイを示す図である。
【図3】in vivoのVLP25μgでの鼻腔内免疫化後の、脾細胞のin vitroの抗原特異的増殖アッセイを示す図である。
【図4】ELISPOTアッセイによって測定した抗体分泌細胞(ASC)由来のVLP特異的なIgGまたはIgAを示す図である。
【図5】ELISAによって測定したVLP特異的なIgGを示す図である。
【図6】ノーウォークVLPに対する血清IgG反応に対する効力アッセイの結果を示す図である。
【図7】抗原の液体製剤または乾燥粉末から再構成した製剤のいずれかで免疫化したマウスにおける、ノーウォークVLPに対する血清IgG反応を比較する効力アッセイの結果を示す図である。グラフは様々な製剤におけるノーウォークVLPの効力対濃度を示す。
【図8】ノロウイルスVLPワクチンの様々な製剤を投与後、21日目(左パネル)および42日目(右パネル)のウサギにおける血清IgG反応を示す図である。
【図9】ノーウォークVLPの液体製剤または乾燥粉末製剤のいずれかで鼻腔内免疫化したウサギにおける血清IgG反応を示す図である。
【図10】定量的SDS−PAGE分析およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した乾燥粉末製剤の安定性を示す図である。回帰分析は、1年超、乾燥粉末10mgあたり全てのまたは完全ないずれかのVLPμgにおいて統計的趨勢がないことを示している。パーセント凝集は、SECによって検出されなかったVLPタンパク質は、定量的SDS−PAGEによって検出された全VLPタンパク質に比べて凝集していることを仮定した計算値である。
【図11】複数のノロウイルス抗原で腹腔内免疫化したマウスにおける、抗ノロウイルス抗体反応のELISAアッセイの結果を示す図である。細矢印は、ノーウォークVLPだけを含む製剤でのブースター注射を示している。太矢印は、ノーウォークおよびヒューストンのVLP両方を含む製剤でのブースター注射を示している。
【図12】ノーウォークVLP、ヒューストンVLP、またはノーウォークおよびヒューストンのVLPの組合せのいずれかで腹腔内免疫化したマウスにおける抗ノロウイルス抗体反応のELISAアッセイを示す図である。
【図13】マウスにおいてノーウォークVLPでの鼻腔内免疫化114日後の、マウスにおける脾細胞(A)、頸部リンパ節(B)、および骨髄(C)におけるノーウォークVLP特異的な長寿命の形質細胞の存在を示す図である。
【図14】ノーウォークVLPで鼻腔内免疫化したマウスの脾細胞における、ノーウォーク特異的記憶B細胞反応を示す図である。パネルAは、ノーウォークVLPを用いた培養における0日目(左グラフ)および4日目(右グラフ)のIgA抗体分泌細胞を示す。パネルBは、ノーウォークVLPを用いた培養における0日目(左グラフ)および4日目のIgG抗体分泌細胞を示す。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の拡大および分化のレベルを示すものである。
【図15】ノーウォークVLPワクチン製剤で鼻腔内免疫化したウサギから単離した末梢血単核細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。左パネルは、0日目(組織回収日)のノーウォークVLP特異的抗原分泌細胞(ASC)の数を示し、右パネルは、ノーウォークVLPを用いた培養における4日後のノーウォークVLP特異的ASCの数を示す。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の反応を示すものである。
【図16】ノーウォークVLPワクチン製剤で鼻腔内免疫化したウサギから回収した脾細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。左パネルは、0日目(組織回収日)のノーウォークVLP特異的抗原分泌細胞(ASC)の数を示し、右パネルは、ノーウォークVLPを用いた培養における4日後のノーウォークVLP特異的ASCの数を示す。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の反応を示すものである。
【図17】ノーウォークVLPワクチン製剤で鼻腔内免疫化したウサギの脛骨から回収した骨髄細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。左パネルは、0日目(組織回収日)のノーウォークVLP特異的抗原分泌細胞(ASC)の数を示し、右パネルは、ノーウォークVLPを用いた培養における4日後のノーウォークVLP特異的ASCの数を示す。0日目にASCが存在することは長寿命の形質細胞の存在を示すものである。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の反応を示すものである。
【図18】ノーウォークVLPワクチン製剤で鼻腔内免疫化したウサギから回収した腸間膜リンパ節細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。パネルAは、ノーウォークVLPに特異的なIgGポジティブ抗体分泌細胞(ASC)を示す。パネルBは、ノーウォークVLPに特異的なIgAポジティブASCを示す。左パネルは、0日目(組織回収日)のノーウォークVLPに特異的なASCの数を示し、右パネルは、ノーウォークVLPを用いた培養物における4日後のノーウォークVLPに特異的なASCの数を示す。0日目にASCが存在することは長寿命の形質細胞の存在を示すものである。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の反応を示すものである。
【図19】ウサギにおいてin vivoで鼻腔内免疫化した後の、脾細胞のin vitroの抗原特異的増殖アッセイを示す図である。左パネルは、非分画化の脾細胞においてノーウォークVLPで再刺激したときのT細胞の増殖を示し、右パネルは、ノーウォークVLPで再刺激したときのCD4+T細胞の増殖を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ノロウイルスの抗原およびワクチンの組成物、ならびに組成物を調製する方法に関する。特に、本発明は、ノロウイルス抗原および少なくとも1つのアジュバントを含む組成物を提供する。さらに、またはあるいは、組成物は、少なくとも1つの送達剤をさらに含んでもよい。本発明は、ノロウイルス抗原に対する免疫反応を生成し、または抗体を産生するために、動物に組成物を投与する方法も提供する。
【0016】
(ノロウイルス抗原)
本発明は、1つ以上のノロウイルス抗原を含む組成物を提供する。「ノロウイルス(Norovirus)」、「ノロウイルス(NOR)」、「ノロウイルス(norovirus)」、および本明細書における文法上の同等物は、カリシウイルス科ノロウイルス属のメンバーを意味する。いくつかの実施形態では、ノロウイルスは、ヒトまたは非ヒトの哺乳動物の種に感染し得る、関連するポシティブセンス1本鎖RNAの非エンベロープ(nonenveloped)ウイルスの群を含むことができる。いくつかの実施形態では、ノロウイルスはヒトに急性胃腸炎を引き起こすことができる。ノロウイルスは、電子顕微鏡で観察した場合に明確な表面構造またはデコボコの変縁を有する、小型球形ウイルス(SRSV)と称することもできる。ノロウイルス内には、15の遺伝子群を含む、核酸およびアミノ酸配列によって定義される少なくとも4つの遺伝子型(GI〜IV)が含まれる。主な遺伝子型はGIおよびGIIである。GIIIおよびGIVは提唱されているが、一般に認められている。代表的なGIIIは、ウシのイエナ(Jena)株である。GIVは、現時点では1つのウイルスであるアルファトロン型を含んでいる。ノロウイルスのさらなる記載は、Vinjeら、J.Clin.Micro.、41巻、1423〜1433頁(2003年)を参照されたい。「ノロウイルス」は、本明細書における組換えのノロウイルスウイルス様粒子(rNOR VLP)も意味する。いくつかの実施形態では、組換えのノロウイルスVLPは、少なくとも1つのカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードするノロウイルス核酸配列を用いた発現系において生成される。他の実施形態では、細胞におけるORF2によってコードされる少なくともノロウイルスのカプシドタンパク質の組換えの発現、例えばSf9細胞においてバキュロウイルスのベクターからの発現は、カプシドタンパク質のVLPへの自発的な自己集合をもたらすことができる。さらに他の実施形態では、ORF1およびORF2によってコードされる少なくともノロウイルスのタンパク質の組換えの発現、例えばSf9細胞においてバキュロウイルスのベクターからの発現は、カプシドタンパク質のVLPへの自発的な自己集合をもたらすことができる。ノロウイルス核酸配列は、様々なノロウイルス株、あるいは収量もしくは安定性を増強するように、またはコードされる抗原の抗原性もしくは免疫原性の性質を改善するように改変された合成構築物を含むコンセンサス配列であってもよい。VLPは、構造的にノロウイルスに類似しているが、ウイルスのRNAゲノムを欠いており、それゆえ感染性ではない。したがって、「ノロウイルス」は、不完全な粒子を含む、感染性または非感染性の粒子であり得るビリオンを含む。
【0017】
ノロウイルスの非限定的な例には、ノーウォークウイルス(NV、ジーンバンク M87661、NP056821)、サザンプトンウイルス(SHV、ジーンバンク L07418)、デザートシールドウイルス(DSV、U04469)、ヘッセウイルス(HSV)、チバウイルス(CHV、ジーンバンク AB042808)、ハワイウイルス(HV、ジーンバンク U07611)、スノーマウンテンウイルス(SMV、ジーンバンク U70059)、トロントウイルス(TV、Leiteら、Arch.Virol.、141巻、865〜875頁)、ブリストルウイルス(BV)、イエナウイルス(JV、AJ01099)、メリーランドウイルス(MV、AY032605)、セトウイルス(SV、ジーンバンク AB031013)、キャンバーウェル(CV、AF145896)、ローズスデールウイルス(LV、ジーンバンク X86557)、グリムズビーウイルス(GrV、AJ004864)、メキシコウイルス(MXV、ジーンバンク U22498)、ボクサー(AF538679)、C59(AF435807)、VA115(AY038598)、BUDS(AY660568)、ヒューストンウイルス(HoV)、ミネルバ株(EF126963.1)、ローレンス株(EF126966.1)、MOH(AF397156)、パリスアイランド(PiV;AY652979)、VA387(AY038600)、VA207(AY038599)、およびオペレーションイラクフリーダム(Operation Iraqi Freedom)(OIF、AY675554)が含まれる。核酸、および対応するアミノ酸配列の各々は、その全てが参照により全て組み入れられる。いくつかの実施例では、暗号を同定の目的に用いることができ、組織化される:それからウイルスが単離される宿主の種/属の略語/種の略語/株名/発生年/起源の国(Greenら、Human Caliciviruses、「Fields Virology」、1巻、841〜874頁(KnipeおよびHowley編集長、第4版、Lippincott Williams&Wilkins、2001年)。ある実施形態では、遺伝子型I.1(ノーウォークウイルス)およびII.4(ヒューストンウイルス)などのノロウイルスの遺伝子型の組合せ、または他の一般的に流通している株、またはそれらの組合せもしくは部分を表す合成構築物の使用が好ましい。ノロウイルスの新規な株は、日常的に同定されており(Centers for Disease Control、Morbidity and Mortality Weekly Report、56巻(33)、842〜846頁(2007年))、2つ以上のウイルス株のコンセンサス配列を用いてノロウイルス抗原をまた発現してもよい。
【0018】
ノロウイルス抗原は、ペプチド、タンパク質、またはウイルス様粒子(VLP)の形態であってよい。好ましい実施形態では、ノロウイルス抗原はVLPを含む。本明細書で用いる場合、「ウイルス様粒子またはVLP」は、ノロウイルスのカプシドタンパク質コード配列から生成され、感染性のノロウイルス粒子のこれらに類似の抗原の特徴を含む、ウイルス様粒子、フラグメント、凝集体、またはそれらの部分を意味する。ノロウイルス抗原は、カプシドモノマー、カプシドマルチマー、VLPのタンパク質もしくはペプチドフラグメント、または凝集体もしくはそれらの混合物の形態であってもよい。ノロウイルス抗原のタンパク質またはペプチドは、当技術分野で知られている方法を用いて生成された、変性した形態であってもよい。
【0019】
ノロウイルス抗原は、本発明のVLP上で、またはVLPにおいて発現された、前記カプシドタンパク質の変異体またはそのフラグメントを含んでもよい。変異体は、構成タンパク質のアミノ酸配列における変更を含むことができる。ポリペプチドに関する「変異体」という用語は、参照配列に関して1つ以上のアミノ酸が変化しているアミノ酸配列を意味する。変異体は「保存的な」変化を有していてよく、この場合置換されたアミノ酸は類似の構造上のまたは化学的な性質を有する(例えば、イソロイシンでのロイシンの置換)。あるいは、変異体は「非保存的な」変化を有することができる(例えば、トリプトファンでのグリシンの置換)。類似のマイナーな変異体は、アミノ酸の欠失もしくは挿入、または両方を含むこともできる。生物学的または免疫学的活性を排除せずに、どのアミノ酸残基を置換し、挿入し、または欠失することができるかを決定する手引きは、DNASTARソフトウエアなど、当技術分野ではよく知られているコンピュータープログラムを用いて見出すことができる。
【0020】
クローニング、突然変異など、本発明に適用可能である分子生物学の技術を記載している一般的な教科書には、BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques、Methods in Enzymology、152巻、Academic Press、Inc.、San Diego、カリフォルニア州(Berger);Sambrookら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、2000年(「Sambrook」)、ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編集、Current Protocols、a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley&Sons,Inc.、(「Ausubel」)が含まれる。これらの教科書には、突然変異誘発、ベクターの使用、プロモーター、ならびに、例えばノロウイルスのカプシドタンパク質のクローニングおよび突然変異に関する他の多くの関連の話題が記載されている。したがって、本発明は、本発明のVLP上に、またはVLPにおいて発現されるタンパク質の特徴を改善または変更するための、タンパク質工学および組換えDNA技術の知られている方法の使用も包含する。様々なタイプの突然変異誘発を用いて、タンパク質分子をコードするコンセンサス配列を含む変異体の核酸を生成および/もしくは単離し、かつ/または本発明のVLPにおける、またはVLP上のタンパク質をさらに修飾する/突然変異させることができる。これらには、それだけには限定されないが、部位特異的、ランダム点突然変異、相同的組換え(DNAシャフリング)、ウラシル含有テンプレートを用いた突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、ホスホロチオエート修飾DNA突然変異誘発、ギャップを有する2本鎖DNA(gapped duplex DNA)を用いた突然変異誘発などが含まれる。さらなる好適な方法には、点ミスマッチ修復、修復欠損宿主株を用いた突然変異誘発、制限選択および制限精製、欠失突然変異誘発、全体の遺伝子合成による突然変異誘発、2本鎖切断修復などが含まれる。
【0021】
本発明のVLPは、当技術分野では標準の方法を用いて、VP1および/もしくはVP2タンパク質などの全長のノロウイルスカプシドタンパク質またはある種のVP1もしくはVP1誘導体のいずれかから形成することができる。あるいは、VLPを形成するために用いられるカプシドタンパク質は、切断されたカプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、例えば、少なくとも1つのVLPは切断されたVP1タンパク質を含む。他の実施形態では、全てのVLPは切断されたVP1タンパク質を含む。切断は、N−またはC−末端切断であってよい。切断されたカプシドタンパク質は、機能的なカプシドタンパク質誘導体であることが好適である。機能的なカプシドタンパク質誘導体は、全長のカプシドタンパク質からなるVLPによって生じる免疫反応と同じ方法で、免疫反応(必要な場合には、好適にアジュバント化されている場合)を生じさせることができる。
【0022】
VLPは、大きい方のVP1タンパク質および/または小さい方のVP2タンパク質を含むことができる。各VLPは、1価VLPを生じるたった1つのノロウイルス遺伝子型由来のVP1および/またはVP2タンパク質を含むことが好ましい。本明細書で用いられる「1価」の用語は、抗原タンパク質が単一のノロウイルス遺伝子型に由来することを意味する。例えば、VLPは、遺伝子型Iのウイルス株由来のVP1および/またはVP2タンパク質を含む(例えば、ノーウォークウイルス由来のVP1およびVP2)。VLPが、主にVP1タンパク質からなることが好ましい。本発明の一実施形態では、抗原は1価VLPの混合物であり、この場合、組成物は、複数のウイルス株(例えば、ノーウォークウイルスおよびヒューストンウイルス)から取った異なるノロウイルスの遺伝子型由来のVP1および/またはVP2からなるVLPと混合した、単一のノロウイルスの遺伝子型由来のVP1および/またはVP2からなるVLPを含む。単に例示として、組成物は、ノロウイルスの遺伝子型Iの1つ以上の株由来の1価VLPを、ノロウイルスの遺伝子型IIの1つ以上の株由来の1価VLPと一緒に含むことができる。ノロウイルスVLPの混合物が、ノーウォークおよびヒューストンのノロウイルスの株からなることが好ましい。
【0023】
しかし、本発明の代替の実施形態では、VLPは、例えば、第2のノロウイルスの遺伝子型由来のVP1および/またはVP2タンパク質と混合したノロウイルスの1つの遺伝子型由来のVP1および/またはVP2タンパク質を含む多価VLPであってよく、この場合異なるVP1およびVP2タンパク質はキメラのVP1およびVP2タンパク質ではなく、同じカプシド構造内で一緒に会合して免疫原性のVLPを形成する。本明細書で用いられる「多価」という語は、抗原タンパク質が2つ以上のノロウイルス遺伝子型に由来することを意味する。多価VLPは、2つ以上のウイルス株から取ったVLP抗原を含むことができる。単に例示として、組成物は、ノロウイルス遺伝子型Iの1つ以上の株由来のカプシドモノマーまたはマルチマーからなる多価VLPを、ノロウイルス遺伝子型IIの1つ以上の株由来のカプシドモノマーまたはマルチマーと一緒に含むことができる。多価VLPが、ノーウォークおよびヒューストンのノロウイルスの株由来のカプシドタンパク質を含むことが好ましい。
【0024】
組成物内の1価または多価VLPの組合せが、各VLP型の免疫原性を阻止しないことが好ましい。特に、組み合わされた本発明のVLP組成物が、ワクチンで表されるノロウイルスの各遺伝子型による感染に対して免疫性を誘発することができるように、本発明の組合せにおけるノロウイルスVLPの間に干渉が存在しないことが好ましい。組合せにおける所与のVLP型に対する免疫反応は、個々に測定した場合、同じVLP型に対する免疫反応の少なくとも50%、好ましくは100%、または実質的に100%であるのが好適である。免疫反応は、例えば、本明細書の実施例で説明するように、抗体の反応によって好適に測定することができる。
【0025】
多価VLPは、個々のカプシドタンパク質を別々に発現し、その後VLPを形成するように組み合わせることによって生成することができる。あるいは、多数のカプシドタンパク質を、1つ以上のDNA構築物から、同じ細胞内で発現させてもよい。例えば、複数のDNA構築物を、各々のベクターが異なるカプシドタンパク質をコードする、宿主細胞内に形質転換または形質移入してもよい。あるいは、共有するプロモーターまたは多数の個々のプロモーターによって制御される多数のカプシド遺伝子を有する単一のベクターを用いてもよい。適当な場合には、IRESエレメントをベクター内に組み入れてもよい。このような発現の戦略を用いて、同時発現されたカプシドタンパク質を、その後のVLP形成用に同時精製してもよく、またはその後精製することができる多価VLPを自発的に形成してもよい。
【0026】
多価VLPを生成するための好ましいプロセスは、ノロウイルスの異なる遺伝子型由来の、VP1および/またはVP2タンパク質などのVLPカプシドタンパク質または誘導体の調製、タンパク質の混合、および多価VLPを生成するためのタンパク質の構築を含む。カプシドタンパク質は、部分的に精製され、または混合前に精製される粗製抽出物の形態であってよい。構築された異なる遺伝子型の1価VLPを、分解し、一緒に混合し、多価VLPに再構築してもよい。タンパク質またはVLPは、少なくとも部分的に精製し、その後組み合わせることが好ましい。場合により、多価VLPのさらなる精製を、構築後に行ってもよい。
【0027】
本発明のVLPは、均一かつ純粋なVLPを提供するために、分解および再構築により作製するのが好適である。一実施形態では、多価VLPは、2つ以上のVLPを分解し、その後再構築前のあらゆる好適な時点で、分解したVLPの構成成分を組み合わせることによって作製することができる。この取り組みは、例えばいくつかの酵母菌株で起こるように、VLPが、発現されたVP1タンパク質から自発的に形成する場合に好適である。VP1タンパク質の発現が自発的なVLPの形成をもたらさない場合は、VP1タンパク質またはカプソメアの調製を、VLPへの構築前に組み合わせることができる。
【0028】
多価VLPを用いる場合は、VLPの構成成分を、最終の混合したVLPにおいてそれらが所望される割合で混合することが好ましい。例えば、ノーウォークおよびヒューストンウイルス(または他のノロウイルス株)からの部分的に精製したVP1タンパク質の同量の混合物により、各タンパク質がおよそ等しい量で多価VLPがもたらされる。
【0029】
多価VLPを含む組成物は、参照として本明細書に組み入れられるWO98/44944、WO0045841のものなど、当技術分野では知られている溶液によって安定化してもよい。
【0030】
本発明の組成物は、VP1およびVP2タンパク質または誘導体の他に、他のタンパク質またはタンパク質フラグメントを含むことができる。他のタンパク質またはペプチドを、本発明の組成物と一緒に投与してもよい。場合により、組成物を、非ノロウイルス抗原と製剤化し、または同時投与してもよい。これらの抗原が、他の疾患からの保護を提供することができるのが好適である。
【0031】
VP1タンパク質または機能上のタンパク質誘導体は、VLPを好適に形成することができ、VLPの形成は、例えば、電子顕微鏡および動的レーザー光散乱などの標準の技術によって評価することができる。
【0032】
(抗原の調製)
本発明の抗原分子を、それらが天然に存在する生物体から単離および精製することによって調製することもでき、またはそれらを組換え技術によって調製することもできる。ノロウイルスVLP抗原を、Sf9またはH5細胞などの昆虫細胞から調製することが好ましいが、大腸菌または酵母菌の細胞(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)、分裂酵母(S.pombe)、ピキアパストリ(Pichia pastori)、もしくは他のピキアの発現系)などのあらゆる好適な細胞、CHOもしくはHEKなどの哺乳動物細胞の発現系も用いてもよい。組換え法によって、または合成によって調製する場合は、ペプチドを構成するアミノ酸の1つ以上の挿入、欠失、逆位、または置換がなされていてよい。上述の抗原は各々、実質的に純粋な状態で用いることが好ましい。
【0033】
昆虫細胞の培養でノロウイルスVLPを生成する手順は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6942865号に先に開示されている。簡潔に述べると、ウイルスのカプシド遺伝子(ORF2)および小さい方の構造遺伝子(ORF3)を含むゲノムの3’終端からcDNAをクローニングした。ウイルスのカプシド遺伝子を保有する組換えのバキュロウイルスを、クローニングしたcDNAから構築した。ノロウイルスVLPを、Sf9またはH5昆虫細胞の培養物で生成した。
【0034】
(アジュバント)
本発明は、ノロウイルス抗原と使用するためのアジュバントを含む組成物をさらに提供する。殆どのアジュバントは、抗原を速やかな異化作用から保護するように設計されている物質(例えば、水酸化アルミニウムまたは鉱油)、および免疫反応の刺激薬(例えば、百日咳菌(Bordatella pertussis)または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質)を含んでいる。好適なアジュバントは、例えば、フロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Pifco Laboratories、Detroit、Mich)、Merckアジュバント65(Merck and Company,Inc.、Rahway、N.J.)、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、カルシウム、鉄、または亜鉛の塩、アシル化したチロシンの不溶性懸濁液、アシル化した糖、陽イオン性または陰イオン性に誘導体化した多糖、ポリホスファゼン、生分解性ミクロスフェア、ならびにQuil Aなどが市販されている。
【0035】
好適なアジュバントには、それだけには限定されないが、トール様受容体(TLR)作用薬、一リン酸化脂質A(MPL)、合成脂質A、脂質Aミメティックまたは類似体、アルミニウム塩、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、ポリホスファゼン、乳剤、ビロゾーム、コクリエート、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマー粒子、微粒子、およびリポソームも含まれる。アジュバントが細菌由来の外毒素ではないことが好ましい。好ましいアジュバントは、3DMPLまたはQS21など、Th1型反応を刺激するものである。
【0036】
サルモネラ由来の脂質Aの非毒性誘導体である一リン酸化脂質A(MPL)は、ワクチンのアジュバントとして開発されている強力なTLR−4作用薬である(Evansら、2003年)。ネズミの前臨床試験では、鼻腔内のMPLは分泌性および全身性の体液性反応を増強することが示されている(Baldridgeら、2000年、Yangら、2002年)。これは、120,000名を超える患者の臨床試験において、ワクチンのアジュバントとして安全かつ有効であることも証明されている(Baldrickら、2002年、2004年)。MPLは、TLR−4受容体によって自然免疫の誘発を刺激し、したがって、グラム陰性およびグラム陽性両方の細菌、ウイルス、および寄生体を含めた広範な感染性病原体に対する非特異的な免疫反応を誘発することが可能である(Baldrickら、2004年、Persingら、2002年)。鼻腔内製剤にMPLを含めることにより、生得的な反応の速やかな誘発をもたらし、ウイルス暴露からの非特異的な免疫反応を誘発し、一方ワクチンの抗原性の構成成分によって産生される特異的な反応は増強するはずである。
【0037】
したがって、一実施形態では、本発明は、適応性のおよび自然免疫の増強剤として、一リン酸化脂質A(MPL(登録商標))または3De−O−アシル化一リン酸化脂質A(3D−MPL(登録商標))を含む組成物を提供する。化学的には、3D−MPL(登録商標)は、3De−O−アシル化一リン酸化脂質Aの、4、5、または6アシル化鎖との混合物である。好ましい形態の3De−O−アシル化一リン酸化脂質Aは、本明細書に参照として組み入れられる、欧州特許第0689454B1(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。別の実施形態では、本発明は、合成脂質A、脂質Aのミメティックまたは類似体(例えば、BioMiraのPET Lipid A)、またはTLR−4作用薬のように機能するように設計されている合成の誘導体を含む組成物を提供する。
【0038】
「有効なアジュバントの量」または「有効な量のアジュバント」という用語は、当業者であれば十分理解され、投与された抗原に対する免疫反応を刺激することが可能な1つ以上のアジュバントの量、すなわち、鼻の洗浄物におけるIgAレベル、血清IgGもしくはIgMレベル、またはB細胞およびT細胞の増殖に関して測定して、投与した抗原組成物の免疫反応を増大する量が含まれる。免疫グロブリンレベルの好適に有効な増大には、いかなるアジュバントなしの同じ抗原組成物に比べて、5%を超える、好ましくは25%を超える、特に50%を超える増大が含まれる。
【0039】
(送達剤(delivery agent))
本発明は、限定するものではないが、宿主のムコ多糖の部分的脱水の単一効果または組合せ効果、送達剤の物理的性質、または送達剤と貯蔵効果をもたらす暴露部位の宿主の組織との間のイオン性の相互作用による液体の粘性の増大に基づく、抗原の取込みを増強するように機能する送達剤を含む組成物も提供する。あるいは、送達剤は、送達部位の抗原保持時間を増大することができる(例えば、抗原の排出を遅らせる)。このような送達剤は、生物付着剤であってよい。特に、生物付着剤は、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸コンドロイチン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン)、炭水化物ポリマー(例えば、ペクチン、アルギン酸塩、グリコーゲン、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、スタキオース、ウヌリン(unulin)、デキストリン、デキストラン)、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖(ムチン、および他のムコ多糖を含む)セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、タンパク質(例えば、レクチン、線毛タンパク質)、およびデオキシリボ核酸からなる群から選択される粘膜付着剤であってよい。粘膜付着剤が、キトサン、キトサン塩、またはキトサン塩基(例えば、キトサングルタメート)などの多糖であることが好ましい。
【0040】
キトサンは、甲殻類の殻におけるキチンに由来する正に荷電した直鎖状の多糖であり、上皮細胞およびその表面を覆う粘液層の生物付着剤である。抗原のキトサンとの製剤は抗原の鼻粘膜との接触時間を増大し、したがって貯蔵効果のおかげで取込みを増大する(Illumら、2001年、2003年;Davisら、1999年;Baconら、2000年;van der Lubbenら、2001年、2001年;Limら、2001年)。キトサンは、動物モデルおよびヒトの両方で、インフルエンザ、百日咳、およびジフテリアを含めたいくつかのワクチンに対する経鼻の送達系として試験されている(Illum、2001年、2003年;Baconら、2000年;Jabbal−Gillら、1998年;Millsら、2003年;McNeelaら、2004年)。これらの治験では、キトサンは全身の免疫反応を、非経口のワクチン接種と等しいレベルに増強することが示されている。さらに、著しい抗原特異的なIgAレベルが、粘膜性の分泌においてやはり測定された。このように、キトサンは経鼻のワクチンの有効性を大幅に増強することができる。さらに、キトサンはその物理的特徴により、粉末剤として製剤化された鼻腔内ワクチンに特によく適している(van der Lubbenら、2001年;Miksztaら、2005年;Huangら、2004年)。
【0041】
したがって、一実施形態では、本発明は、鼻腔内投与に適合される抗原またはワクチンの組成物を提供し、組成物は抗原、および任意選択で有効な量のアジュバントを含む。好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのキトサンなどの送達剤、および少なくとも1つのMPL(登録商標)などのアジュバント、CPG、イミキモド、ガーディキモド(gardiquimod)、あるいは合成の脂質Aまたは脂質Aミメティックもしくは類似体などの送達剤と組み合わせた、ノロウイルスVLPなどのノロウイルス抗原を含む抗原またはワクチンの組成物を提供する。
【0042】
キトサンの分子量は10kDaと800kDaとの間、好ましくは100kDaと700kDaとの間、より好ましくは200kDaと600kDaとの間であってよい。組成物におけるキトサンの濃度は、典型的には最高約80%(w/w)であり、例えば、5%、10%、30%、50%、70%、または80%である。キトサンは、少なくとも75%脱アセチル化されていることが好ましく、例えば、80〜90%、より好ましくは82〜88%脱アセチル化されており、特定の例では83%、84%、85%、86%、および87%脱アセチル化されている。
【0043】
(ワクチンおよび抗原製剤)
本発明の組成物を、ワクチンまたは抗原製剤として投与するために製剤化することができる。本明細書で用いられる場合、「ワクチン」という用語は、上記に記載したような本発明のノロウイルスVLPまたは他のノロウイルス抗原を含む製剤、脊椎動物に投与するのが可能である形態における製剤、および感染を軽減するために、かつ/または感染の少なくとも1つの症状を低減するために、かつ/または別の投与量のVLPもしくは抗原の有効性を増強するために治療上の免疫を誘発するのに十分な免疫反応を誘発する製剤を意味する。本明細書で用いられる「抗原製剤(antigenic formulation)」または「抗原組成物」という用語は、哺乳動物などの脊椎動物に投与した場合に免疫反応を誘発する製剤を意味する。本明細書で用いられる「免疫反応」という用語は、体液性免疫反応および細胞媒介性免疫反応の両方を意味する。体液性免疫反応は、例えば、感染性物質を中和し、感染性物質が細胞に入るのを阻止し、前記感染性物質の複製を阻止し、かつ/または宿主細胞を感染および破壊から保護するBリンパ球による抗体の生成の刺激を伴う。細胞媒介性免疫反応は、脊椎動物(例えばヒト)が表す、感染を防止もしくは軽減し、または少なくとも1つのその症状を低減する、Tリンパ球および/またはマクロファージなどの他の細胞によって媒介される感染性物質に対する免疫反応を意味する。ワクチン製剤は、Vaccine Design(「The subunit and adjuvant approach」(Powell M.F.およびNewman M.J.編集)(1995年)Plenum Press New York)に概ね記載されている。本発明の組成物は、例えば、経口の、胃腸の、および呼吸器(例えば、鼻の)粘膜の1つ以上に送達するために製剤化することができる。
【0044】
組成物を呼吸器(例えば、鼻の)粘膜に送達することが企図される場合、典型的には、これをエアロゾルまたは点鼻薬として投与するための水溶液として製剤化し、あるいは、例えば、鼻道内に速やかに沈着させるための乾燥粉末として製剤化する。点鼻薬として投与するための組成物は、例えば、保存剤、粘度調整剤、等張化剤、緩衝剤など、通常このような組成物に含まれるタイプの1つ以上の賦形剤を含むことができる。粘度調整剤は、微結晶性セルロース、キトサン、デンプン、多糖などであってよい。乾燥粉末として投与するための組成物は、例えば、粘膜付着剤、増量剤、および適当な粉末の流動およびサイズの特徴を送達するための物質など、このような組成物に通常含まれる1つ以上の賦形剤も含むことができる。増量剤および粉末流動剤およびサイズ剤には、マンニトール、ショ糖、トレハロース、およびキシリトールが含まれ得る。
【0045】
一実施形態では、本発明のノロウイルスのワクチンまたは抗原製剤を、免疫原として1つ以上のノロウイルスの遺伝子型の抗原、MPL(登録商標)などのアジュバント、粘膜表面への接着を促進するためのキトサンなどの生体高分子、ならびにマンニトールおよびショ糖などの増量剤を含む乾燥粉末として製剤化してもよい。例えば、ノロウイルスのワクチンを、1つ以上のノロウイルスの遺伝子型の抗原(例えば、ノーウォークウイルス、ヒューストンウイルス、スノーマウンテンウイルス)、MPL(登録商標)アジュバント、キトサン粘膜接着性、ならびに増量剤としておよび適当な流動の特徴を提供するためのマンニトールおよびショ糖を含む乾燥粉末10mgとして製剤化してもよい。製剤は、キトサン約7.0mg(25から90%w/wの範囲)、マンニトール約1.5mg(0から50%w/wの範囲)、ショ糖約1.5mg(0から50%w/wの範囲)、MPL(登録商標)約25μg(0.1から5%w/wの範囲)、およびノロウイルス抗原約100μg(0.05から5%w/wの範囲)を含むことができる。
【0046】
ノロウイルス抗原は約0.01%(w/w)から約80%(w/w)までの濃度で存在することができる。一実施形態では、ノロウイルス抗原を、両方の鼻孔中に投与するために乾燥粉末製剤10mgあたり約5μg、約15μg、および約50μg(0.025、0.075、および0.25%w/w)の投与量で、または一方の鼻孔中に投与するために約10μg、約30μg、および約100μg(0.1、0.3、および1.0%w/w)の投与量で製剤化することができる。製剤を、各投与の間に一方または両方の鼻孔に投与することができる。免疫反応を増強するために、第1の投与の後1から12週のブースター投与も存在し得る。ワクチンおよび抗原製剤におけるノロウイルス抗原の含量は、1μgから100mgの範囲、好ましくは1〜500μgの範囲、より好ましくは5〜200μg、最も典型的には10〜100μgの範囲であってよい。各投与量で投与するノロウイルスの全抗原は、両方の鼻孔に投与する場合は乾燥粉末全20mgにおいて約10μg、約30μg、または約100μgのいずれかであり、または一方の鼻孔に投与する場合は乾燥粉末10mgである。乾燥粉末の特徴は、粒子の10%未満は直径10μm未満であることである。平均粒子サイズは、直径10から500μmの範囲である。
【0047】
別の実施形態では、抗原およびワクチン組成物は、対象に引き続き投与するための液体として製剤化することができる。鼻腔内投与を企図した液体製剤は、ノロウイルスの遺伝子型の抗原、アジュバント、およびキトサンなどの送達剤を含む。筋肉内(i.m.)または経口投与のための液体製剤は、ノロウイルス遺伝子型の抗原、アジュバント、およびバッファーを含み、送達剤(例えば、キトサン)を含まない。
【0048】
本明細書上記に記載した抗原およびワクチン組成物は、凍結乾燥され、無水で貯蔵されてから使用に準備され、その時点で、液体製剤で用いる場合は希釈剤で再構成されることが好ましい。あるいは、組成物の様々な成分を、キットまたは装置において別々に貯蔵してもよい(あらゆるまたは全ての構成成分を凍結乾燥する)。構成成分は、乾燥製剤では凍結乾燥の形態のままでもよく、または液体製剤では再構成されていてもよく、混合してから使用または患者に別々に投与する。乾燥粉末を投与するためには、ワクチンまたは抗原製剤を、鼻腔内送達装置または局所(例えば、経皮)送達パッチ中に予め充填し、使用まで貯蔵してもよい。このような送達装置および付随する包装は、その内容物を保護し、安定性を確実にすることが好ましい。
【0049】
抗原製剤およびワクチンの凍結乾燥は、当技術分野ではよく知られている。典型的には、凍結乾燥のプロセスの間抗原を保護するための、および望ましい特徴の粉末を得るための物質の存在下で液体の抗原を凍結乾燥する。タンパク質の抗原を凍結保護および溶解保護するために、かつ望ましい特徴の凍結乾燥したケークまたは粉末を得るために、ショ糖、マンニトール、トレハロース、またはラクトースなどの糖(初期濃度10〜200mg/mLで存在する)を通常用いる。凍結乾燥した組成物は、理論的にはより安定である。噴霧乾燥または噴霧凍結乾燥などの他の乾燥技術も用いることができる。殆どの製剤のプロセスの目標はタンパク質の凝集および分解を最小にすることであり、本発明者らは、凝集した抗原が存在すると、ノロウイルスVLPに対する免疫反応を増強することを実証した(動物モデルにおける実施例3および4を参照されたい)。したがって、本発明者らは、凝集した抗原の完全な抗原に対する最適な比率を生成して動物モデルにおいて最大の免疫反応を誘発するために、それによって凍結乾燥プロセスの間に抗原の凝集の百分率を制御することができる方法を開発した。
【0050】
このように、本発明は、ノロウイルス抗原製剤を作製する方法であって、(a)ショ糖とキトサンとの比が約0:1から約10:1までである、ノロウイルス抗原、ショ糖、およびキトサンを含む凍結乾燥前溶液を調製することと、(b)前記溶液を凍結することと、(c)凍結溶液を30〜72時間凍結乾燥することであって、凍結乾燥最終生成物がある百分率の凝集形態の前記ノロウイルス抗原を含むこととを含む方法も包含する。凍結乾燥は、周囲の温度で行ってもよく、低温で行ってもよく、または様々な温度の循環で進めてもよい。例示のみの目的では、凍結乾燥は、例えば、−69℃で開始し、3時間かけて−24℃に徐々に調節し、次いでこの温度を18時間保持し、次いで1時間かけて−16℃に徐々に調節し、次いでこの温度を6時間保持し、次いで3時間かけて+34℃に徐々に調節し、最後に9時間にわたってこの温度を保持するサイクルの、一連の工程にわたって行ってよい。一実施形態では、凍結乾燥前溶液は増量剤をさらに含む。別の実施形態では、前記増量剤はマンニトールである。
【0051】
望ましい百分率の凝集をもたらすのに適当なショ糖とキトサンとの比率は、以下の指針によって決定することができる。約2:1から約10:1までの範囲の重量比のショ糖とキトサンとを含む凍結乾燥前混合物から、凍結乾燥前溶液濃度に応じて、約50%から100%までの範囲の完全なノロウイルス抗原(すなわち、0%から50%の凝集した抗原)の凍結乾燥後物が得られる(実施例13を参照されたい)。ショ糖とキトサンとの重量比0:1で、30%未満の完全なノロウイルス抗原(すなわち、70%を超える凝集した抗原)が生成される。ショ糖およびキトサンを両方とも省略し、マンニトールなどの増量剤だけを用いると、10%未満の完全な抗原を生成する(すなわち、凍結乾燥前溶液濃度に応じて凝集した抗原の90%を超える)。これらの指針を用いれば、当業者であれば、最適の免疫反応を生成するのに必要な望ましい量の凝集物を得るために、凍結乾燥前混合物におけるショ糖とキトサンとの重量比および濃度を調節することができる。
【0052】
さらに、凍結乾燥前溶液にショ糖、キトサン、およびマンニトールを含んでも、長時間にわたる完全なノロウイルス抗原の安定性に負の作用はなく、すなわち、製剤における凝集した抗原/完全な抗原の比率は、約12カ月以上の期間乾燥粉末として貯蔵した場合に増大しない(実施例10を参照されたい)。このように、この凍結乾燥手順により、予想可能かつ制御可能な、完全なノロウイルス抗原に対する凝集体の比率を有する安定な製剤が確実となる。
【0053】
(免疫反応を刺激する方法)
各々の抗原またはワクチン製剤の投与量における抗原の量は、重大な、有害な副作用なしに強力な免疫反応を誘発する量として選択される。このような量は、どの特異的な抗原を使用するか、投与経路、および用いるアジュバントに応じて変化する。一般には、本発明の状況では、患者に投与する投与量は、長時間にわたって患者に有益な治療反応をもたらすのに十分でなければならず、または抗原に特異的な抗体の生成を誘発するのに十分でなければならない。したがって、特異的な抗原に対する免疫反応を誘発するのに、かつ/または疾患もしくは感染症からの症状および/もしくは合併症を軽減し、低減し、もしくは治療するのに十分な量の組成物を患者に投与する。これを遂行するのに十分な量を、「治療上有効な投与量」と定義する。
【0054】
実質的に純粋な形態のノロウイルス抗原では、各投与量は、製剤における各ノロウイルス抗原に対して、約1μgから10mg、好ましくは約2〜50μgを含むことが予想される。本発明の抗原製剤を使用する典型的な免疫化計画では、製剤を、各投与量が各抗原1〜100μgを含む、いくつかの投与量(例えば、1〜4投与量)で投与することができる。投与量は、組成物が生成する免疫学的活性および患者の状態、ならびに治療する患者の体重または体表面積によって決定する。投与量のサイズは、特定の患者における特定の組成物の投与に付随し得る、あらゆる有害な副作用の存在、性質、および程度によっても決定される。
【0055】
本発明の抗原およびワクチン製剤を、非粘膜の、または粘膜の経路によって投与してもよい。これらの投与には、非経口の注射(例えば、静脈内、皮下、および筋肉内)によるin vivoの投与、または、バッカル/舌下、直腸、経口、経鼻、局所(例えば、経皮および目薬)、膣内、肺内、動脈内、腹腔内、眼内、もしくは鼻腔内の経路などの他の伝統的な直接経路、あるいは直接特定の組織内が含まれ得る。あるいは、本発明のワクチンを、経口、局所、皮下、粘膜、静脈内、筋肉内、鼻腔内、舌下、経皮、真皮下、皮内などの様々な経路のいずれかによって、および坐剤によって投与してもよい。投与は、単に、パッチ、針、カテーテル、または関連の装置を用いた直接投与によって、単一の時間点で、または複数の時間点で遂行してもよい。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明の抗原およびワクチン製剤を、粘膜表面に投与する。粘膜表面による免疫化は、他の免疫化の経路に勝る多くの潜在的な利点を提供する。最も明らかな利点は、1)粘膜の免疫化は、投与に針または高度な訓練を受けた人員を必要とせず、2)免疫反応が、病原体が侵入した部位で、および全身的に生じることである(Isakaら、1999年;Kozlowskiら、1997年;Mesteckyら、1997年;Wuら、1997年)。
【0057】
さらなる一態様では、本発明は、1つ以上のノロウイルス抗原、少なくとも1つの有効なアジュバント、および/または少なくとも1つの送達剤を含む抗原またはワクチン組成物を、患者の粘膜表面に投与(好ましくは、鼻腔内または経口)することによって、IgAの粘膜性の免疫反応およびIgGの全身の免疫反応を誘発する方法を提供する。
【0058】
本発明は、本明細書上記に定義したノロウイルス抗原、および本明細書上記に定義した少なくとも1つのアジュバント、または少なくとも1つの送達剤の鼻腔内製剤を投薬するための手段の提供も企図するものである。投薬装置は、例えば、エアロゾルの送達系の形態をとってよく、単回投与量のみまたは多数の投与量を投薬するように配列されていてよい。このような装置は、定量のワクチンまたは抗原製剤を鼻道に送達する。適当な装置の他の例には、それだけには限定されないが、ドロッパ、スワブ、エアロゾライザー(aerosolizer)、空気吸入器(例えば、Valois Monopowder Nasal Administration Device、Bespak UniDose DP)、ネブライザー、および吸入器が含まれる。装置は、対象が鼻の孔中に製剤を吸入することを必要とする受動的な方法によって抗原性またはワクチン製剤を送達することができる。あるいは、装置は、投与量を鼻の孔中に供給または噴射することによって製剤を積極的に送達することができる。抗原製剤またはワクチンを、1つ以上のこのような装置によって一方または両方の鼻孔中に送達することができる。投与は、対象1人あたり2つの装置を含むことができる(鼻孔1つにつき1装置)。有効成分(ノロウイルス抗原)の実際の投与量は、約5〜1000μgである。好ましい実施形態では、抗原またはワクチン製剤を、鼻の通路近くに保持し、または通路内に挿入した製剤を含んでいる装置から鼻の通路内に速やかに沈着させることによって、鼻粘膜に投与する。
【0059】
本発明は、1つ以上のノロウイルス抗原に対する抗体を産生する方法も提供し、前記方法は、上記に記載した本発明のワクチンまたは抗原製剤を対象に投与することを含む。これら抗体は、当技術分野における日常的な方法によって、単離および精製することができる。ノロウイルス抗原に特異的な単離抗体を、診断上の免疫学的アッセイの開発に用いることができる。これらのアッセイを用いて、臨床サンプルにおいてノロウイルスを検出し、感染を引き起こす特定のウイルス(例えば、ノーウォーク、ヒューストン、スノーマウンテンなど)を同定することができる。あるいは、単離した抗体を、ノロウイルスウイルス感染が疑われる対象に投与して、受動免疫または短期免疫を付与することができる。
【0060】
上記に記載したように、本発明のワクチン製剤を対象に投与してノロウイルス感染の症状を治療することができる。ノロウイルス感染の症状は、当技術分野ではよく知られており、悪心、嘔吐、下痢、および胃痙攣が含まれる。さらに、ノロウイルスに感染した患者は、低度の発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、および疲労感を有することがある。本発明は、ノロウイルス感染に付随する少なくとも1つの症状を緩和および/または低減するように、本発明のワクチン製剤を対象に投与することによって、ノロウイルス感染を経験している対象における免疫反応を誘発する方法を包含する。症状の低減は、例えば、生活の質の評価、ノロウイルス感染またはさらなる症状の進行の減速、ノロウイルスの症状の重症度の低減、または好適なアッセイ(例えば、抗体の力価および/またはT細胞活性化アッセイ)を含めた、例えば、対象による自己評価によって、医師の評価によって、または好適なアッセイもしくは測定(例えば、体温)を行うことによって主観的または客観的に決定することができる。客観的な評価は、動物およびヒトの評価両方を含む。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を、以下の実施例に記載する特定の実施形態を参考にしてさらに詳しく説明する。実施例は、単に本発明の説明を意図するものであり、決してその範囲を制限しようとするものではない。
【0062】
[実施例1]
(様々なノロウイルス抗原形態に対する免疫反応についての調査)
ワクチン製剤の有効性を調査するために、マイクロピペットによって液体懸濁液ワクチン製剤でマウスを鼻腔内(i.n.)免疫化した。マウスに、単回のワクチン投与量のみを与えた(初回抗原刺激)。
【0063】
実験用に、ワクチン製剤を3つ調製した。第1は100%凝集と呼び、VLPの天然の構造を破壊し、凝集を誘発する条件下でVLPを凍結乾燥することによって調製した。第2は100%完全(intact)であり、非凍結乾燥のVLPストックから100%天然の単分散のVLPを加えた、再水和した凍結乾燥のプラセボで調製した。第3の製剤は、50/50混合であり、先の2つの製剤を1:1の比で混合することによって、または〜50%完全および50%凝集のVLPを産生する条件下で凍結乾燥することによって作製する。完全な天然のVLPの構造上の状態および濃度を、サイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)および紫外部(UV)吸光度によってアッセイした。製剤の全タンパク質濃度(凝集体を含む)を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)溶解したタンパク質の定量的染色によって決定した。凝集/完全のパーセントを、全タンパク質に対する完全な天然VLPの比として計算した。
【0064】
【表1】
【0065】
この実験は、様々なノロウイルスVLP製剤に対するマウスにおける免疫反応を測定するものである。マウスの群(1群あたり5匹)に、表1に示した再水和した乾燥粉末製剤を1回鼻腔内(i.n.)ワクチン接種した。VLP含有製剤でワクチン接種した動物に、同量の全タンパク質を投与した。100%凝集(100%凝集したVLPタンパク質)、100%完全(100%天然、単分散のVLP)、50/50混合(単分散および凝集のVLPの1:1混合物)、無処置(naive)(VLPタンパク質なし)。i.n.免疫化後14日目にマウスを安楽死させ、頸部リンパ節および脾臓を回収し、in vitroの抗原特異的な細胞増殖アッセイ用に単一細胞懸濁液を調製した。これらのアッセイにおいては、頸部リンパ節細胞または脾細胞の反応をアッセイして、in vivo免疫化後の抗原に対する免疫原性反応を判定した。頸部リンパ節細胞または脾細胞を、天然の単分散VLP(天然のVLP、黒線)または熱変性したVLPタンパク質(ΔVLP、白線)のいずれかで再刺激し、各抗原の形態(100%凝集、100%完全、50/50混合、または無処置)からの細胞増殖の程度を、縦軸上に示すようにトリチウム標識したチミジンの取込み(CPM)によって測定した(図1、頸部リンパ節細胞;図2、脾細胞)。
【0066】
[実施例2]
(in vitro抗原特異的増殖アッセイ)
ワクチン製剤の効力をさらに調査するために、マウスを、液体懸濁液ワクチン製剤で腹腔内(i.p.)免疫化した。マウスに、単回のみのワクチンの投与量を与えた(初回抗原刺激)。
【0067】
実施例1と同様、マウスの群(1群あたり5匹)にワクチン接種をしたが、今回は表2に示す再水和した乾燥粉末製剤を1回腹腔内(i.p.)投与した。繰り返すと、VLP含有製剤でワクチン接種した動物に、同量の全タンパク質を投与した。100%凝集(100%凝集したVLPタンパク質)、100%完全(100%天然、完全なVLP)、50/50混合(完全および凝集のVLPの1:1混合物)、無処置(VLPタンパク質なし)。
【0068】
【表2】
【0069】
このアッセイでは、in vivo免疫化後のVLPに対する様々なネズミ細胞の反応を測定した。免疫化後14日目にマウスを安楽死させ、脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。完全な天然のVLP(天然VLP、点線)、または熱変性したVLPタンパク質(ΔVLP、白線)のいずれかで脾細胞を再刺激し、各抗原の形態(100%凝集、100%完全、50/50混合、または無処置)からの細胞増殖の程度を、縦軸上に示すように(CPM)トリチウム標識したチミジンの取込みによって測定した(図3)。これらのデータは、ワクチン製剤において調製した様々な生物物理学的形態のVLPは、同程度のT細胞反応を誘発することを示している。
【0070】
[実施例3]
(VLP特異的ELISPOTアッセイ)
VLP特異的抗体分泌細胞(ASC)の反応を、実施例2に記載した様々なNV−VLP製剤で腹腔内免疫化したマウスから測定した。マウスの群(1群あたり5匹)を、表2に示した(実施例2)再水和した乾燥粉末製剤で1回i.p.ワクチン接種した。VLP含有製剤でワクチン接種した動物に、同量のタンパク質を投与した。100%凝集(100%凝集したVLPタンパク質)、100%完全(100%天然、完全なVLP)、50/50混合(完全および凝集のVLPの1:1混合物)、無処置(VLPタンパク質なし)。14日目にマウスを安楽死させ、頸部リンパ節を回収した。頸部リンパ節細胞を、天然の完全なVLPでコーティングしたELISPOTプレート上で一夜培養し、適当なHRPコンジュゲートした2次抗体を用いて、IgGまたはIgAいずれかに特異的なELISPOT用に発色させた(図4)。これらのデータは、3つのVLP抗原製剤は全て、抗原特異的なB細胞反応を誘発することを示している。100%凝集VLPで免疫化した群は最大の免疫反応を表した。
【0071】
[実施例4]
(VLP特異的ELISA)
血清IgGレベルを、様々なNV−VLP製剤でi.p.免疫化したマウスから測定した。マウスの群(1群あたり5匹)に、表2に示した(実施例2)再水和した乾燥粉末製剤を1回i.p.ワクチン接種した。VLP含有製剤でワクチン接種した動物に、同量の全タンパク質を投与した。100%凝集(100%凝集したVLPタンパク質)、100%完全(100%天然の、完全なVLP)、50/50混合(完全および凝集のVLPの1:1混合物)、無処置(VLPタンパク質なし)。14日目に血清を回収し、抗VLP特異的血清IgGに対してELISAによってアッセイした(図5)。これらのデータは、実施例3に示した結果と相関しており、3つのVLP抗原製剤は全て、抗原特異的なB細胞反応を誘発することを示している。繰り返すと、100%凝集VLPで免疫化した群は最大の免疫反応を表した。
【0072】
[実施例5]
(ウサギにおけるワクチン製剤)
Valois Monopowder Nasal Administration Deviceを用いて、ウサギに製剤を鼻腔内(i.n.)投与した。乾燥粉末製剤を、表3および4に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
[実施例6]
(マウスにおけるノロウイルスワクチン製剤の効力のアッセイ)
C57B16メスマウスを、0日目に、様々な希釈の再構成したノーウォークVLP乾燥粉末ワクチン(ノーウォークVLP、MPL、およびキトサンを含む)で腹腔内(i.p.)免疫化した。各動物に、示した製剤100μLを注射した。血清を毎週回収し、血清抗VLP IgGをELISAによって測定した。免疫化後3週間回収した血清に対する値を図6に示す。
【0076】
各個体のマウスに対する値を表し、バーは群の平均値を示す。血清抗VLP IgG値は、示したワクチンの投与量と相関していた。この実験設計を、ヒト臨床試験用にGMP製造したワクチンの放出に必要とされる効力アッセイとして、改良し、開発した(図6)。
【0077】
[実施例7]
(マウスにおける、液体対再構成したノロウイルス製剤の効力)
C57B16メスマウスを、0日目に、体積100μLの、キトサン、マンニトール、MPL、および様々な濃度のノーウォークVLP(表5)を含む製剤でi.p.免疫化した。乾燥粉末マトリックス(マンニトール、MPL、およびキトサン)10mg/mLを純水に可溶化し、特定の量の液体ノーウォークVLPを加えることによって、内部検量線を作成した(群1〜5)。一方、GMP VLPのロットを予め凍結乾燥し、次いで純水1.0mlに可溶化した(群6〜8)。14、21、および30日目にマウスから血清を回収し、血清抗ノーウォークVLP IgIをELISAによって測定した。
【0078】
【表5】
【0079】
各製剤に対する相対的な効力を以下の式:Inv Log(平均値−Y切片/勾配)を用いて計算した。効力を、製剤におけるVLP濃度に対してプロットし、マトリックスのバックグラウンド中に既知量のVLPを加えたものを用いて作成した検量線に関して報告する(図7)。示した結果は、3つの別々の血清回収時間点を表している。これらのデータは、乾燥粉末から再構成したノーウォークVLP製剤は、液体製剤よりも全体に高い効力を有することを示している。
【0080】
[実施例8]
(ウサギにおける乾燥粉末製剤の効力)
ニュージーランドシロウサギのメス43羽に、乾燥粉末中に製剤化したノーウォークVLP5μg(低)または25μg(高)のいずれか±MLPおよび±キトサンで、Valois monopowder Nasal Administration Deviceを用いて鼻腔内(i.n.)免疫化した。1群には、液体として製剤化した高投与量のVLPおよびMPLを投与し、筋肉内投与した(i.m.)。0日目および21日目に、ウサギにワクチン接種した。MLPを用いる場合は、VLPと同じ投与量を用いた(すなわち、ノーウォークVLP5μgおよびMPL5μg)。キトサンを用いる場合は、7mg/投与量であった。
【0081】
ノーウォークのVLPに特異的な血清IgG(ELISAによって決定して)を、図8に示す。各処置群に対する平均値を、21日目(左パネル、追加免疫化の投与の直前に回収)、および42日目(右パネル)に対して示す。値を、1Uを1μgと見積もり、VLP特異的IgGのU/mLで報告する。標準偏差をバーによって示す。ネガティブコントロール群(ウサギ3羽)および筋肉内免疫化群(4羽)以外は、処置群の動物は全て6羽であった。これらのデータは、一般的に、VLP投与量が高いほど、より高い血清抗VLP IgGレベルがもたらされることを示している。特にキトサンは鼻腔内ワクチンに対する反応を増強する。i.m.免疫化した群は、最も大きな反応を示した。しかし、鼻腔内免疫化した群におけるVLP特異的IgGレベルは、やはりかなり強力であった。
【0082】
[実施例9]
(ウサギに鼻腔内投与した液体対乾燥ノロウイルス製剤の効力)
ニュージーランドシロウサギのメスに、乾燥粉末または液体のいずれかに製剤化したノーウォークVLP50μg+MLP50μg+キトサン14mgで、Valois monopowder Nasal Administration Deviceを用いて鼻腔内免疫化した。ワクチンの内容は、物理的状態以外は同一であった。0日目および21日目(0週目および3週目)に免疫化し、最初のワクチン接種後3週間および6週間に再び、追加免疫前に血清を回収した。ノーウォークVLPに特異的な血清IgGをELISAによって測定し、結果を図9に示す。
【0083】
群平均を示し、バーは標準偏差を表す。乾燥粉末免疫化群のウサギは6羽であり、液体免疫化群のウサギは10羽であった。ネガティブコントロールを表すウサギは8羽であった。3週間では液体と乾燥粉末との免疫化群間では違いは殆んど見られなかった。しかし、最初の免疫化6週間後に、乾燥粉末製剤で免疫化したウサギは、液体免疫化群に比べて優れた血清抗VLP IgG反応を有していた。
【0084】
[実施例10]
(ノロウイルス乾燥粉末製剤の安定性)
乾燥粉末VLP製剤の安定性を調査するために、(薬物生成物10mgあたり)遺伝子型IのVLP25μgの溶液を、MPL25μg、キトサングルタメート700μg、マンニトール1.475mg、およびショ糖1.475mgと混合することによってバルクの薬物生成物を調製した。溶液を凍結乾燥し、さらなるキトサングルタメート6.3mg(薬物生成物10mgあたり)と混和し、名目上10mgの乾燥粉末でBespak unidose装置中に充填し、乾燥剤のカプセルとともに密封したホイル袋に貯蔵した。全VLP含量をImperial染色したSDS−PAGEおよびスキャニングデンシトメトリーを用いて測定し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて完全なVLP含量を定量した。これらの測定値は、実験誤差内では、12カ月の期間にわたって全VLPまたは完全なVLPのいずれかにおいて変化が検出されなかったことを示していた(図10)。SDS−PAGEの結果と比べた場合、SECによるVLPタンパク質の回復が低いのは凝集のためであったと仮定すると、%凝集の計算値は時間とともに増大せず、むしろ12カ月の貯蔵を通して一定のまま、または低減した。タンパク質にいっそう一般的な安定性の問題の一つは、貯蔵での凝集の増大である。図10における結果に基づくと、製剤は、完全なVLPの安定な百分率をもたらし、生成物を製造し、少なくとも1年間にわたって使用することができると結論付けることができる。
【0085】
[実施例11]
(複数のノロウイルス抗原)
C57B1/6マウス(メス、9週齢)8匹を、キトサン0.7mg、MPL2.5μg、およびマンニトール0.3mgを水で0.1mLにして製剤化したノーウォークVLP2.5μgで、0日目および14日目に腹腔内(IP)免疫化した。コントロールのマウス2匹を食塩水で免疫化した。28日目および49日目に、これらを、キトサン0.7mg、MPL2.5μg、およびマンニトール0.3mgを水で0.1mLにして製剤化したノーウォークVLP2.5μg+ヒューストンVLP2.5μgで再びIP免疫化した。コントロールのマウスには再び食塩水を与えた。血清サンプルを、5週目(35日目)に開始して毎週回収し、ノーウォークVLPまたはヒューストンVLPとの反応性に対してELISAによって分析した。ノーウォークだけの混合物で追加免疫した時間を、細矢印によって示し、ノーウォーク+ヒューストンVLP混合物で追加免疫した時間を太矢印で示す。U/mL(1UをIgG1μgに近似させる)における、ノーウォークVLP(上パネル)およびヒューストンVLP(下パネル)に特異的な個々の血清IgG反応を示す。平均値をバーによって示す。抗ノーウォーク反応は、0日目および14日目(0週目および2週目)の先の2回の免疫化によって非常に強力であったので、Y軸のスケールが異なることに留意されたい。しかし、ヒューストンVLPに対する反応は極めて強力であり、追加免疫後2週目に大幅な増大が出現している。これらのデータは、同じ免疫化混合物におけるノロウイルスVLPの様々な抗原株に対して特異的な免疫反応が産生され得ることを実証するものである(図11)。
【0086】
[実施例12]
(様々なノロウイルス抗原に対する免疫反応)
C57B16メスマウスを、0日目および14日目に、ノーウォークVLP25μg、ヒューストンVLP25μg、またはノーウォークおよびヒューストンVLP各25μgの組合せで、腹腔内(IP)免疫化した。血清を毎週回収し、血清抗VLP IgGをELISAによって測定した。免疫化後4週に回収した血清に対する値を図12に示す。
【0087】
免疫化のVLP含量をX軸上に示す。各個体のマウスに対する値を表し、バーは群平均を示す。抗体レベルをU/mLで表し、1Uを血清IgGの1μgに近似させる。左パネルにおける値は捕捉剤としてノーウォークVLPを用いて決定したものであり、右パネル上の値を測定するためにヒューストンVLPを用いてELISAプレートをコーティングした。これらのデータは、ノーウォークVLPで免疫化しても、ヒューストンVLPを認識することができる血清抗体をもたらすことはなく、または逆も同じであることを示している。
【0088】
[実施例13]
(ショ糖およびキトサンの混合物は乾燥粉末製剤においてノロウイルスVLP構造を保存する)
以下の実験は、凍結乾燥前溶液における、ショ糖、キトサン、およびマンニトールの、単独または組合せの、凍結乾燥中の天然のノーウォークVLPの4次構造に対する作用を調べたものである。表6は、対象の成分の凍結乾燥前溶液濃度、混合物の全体積、および対応する重量比を示すいくつかの実験の複合である。溶液は全て手操作で回転し、穏やかにボルテックスして均一にし、次いで液体窒素中シェル凍結し、約30から60時間までの範囲の時間サイドアーム付き容器を用いてユニットの外側に凍結乾燥した。
【0089】
【表6】
【0090】
表7は、表6に示した凍結乾燥した試料の、サイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)分析の結果を示している。凍結乾燥した試料を水で再構成し、SE−HPLCによって分析した。未処理のNV−VLPを同時に分析し、再構成した試験試料のNV−VLP含量を定量するための参照基準として用いた。UVおよび蛍光検出器の両方を定量に用いた(示したデータは、蛍光検出器からのものである)。SE−HPLCを、Superose(商標)6 10−300カラムを用いて行い、移動相はリン酸ナトリウム10mM、クエン酸10mM、pH5、およびNaCl500mMからなり、流速は0.5mL/分であった。溶出したピークの積分面積を用いてタンパク質濃度を定量した。「VLP」は、約15分にカラムから溶出したピークであり、あらゆる先行するショルダーおよび/またはピークテイルは同時に分析した参照基準のNV−VLPのおよその溶出時間ウインドウ内にあった。約32分にカラムから溶出したVLPフラグメントは、VLPの不安定化および結果としての分解に起因する高度に安定な単一の種である。中間体およびより小さなフラグメントは観察されなかった。
【0091】
結果は、ショ糖およびキトサンの組合せは、最高の(約100%の回復)凍結乾燥後物(試料LG10−LG12)を含む、広範囲の天然の単分散NV−VLPの回復をもたらすことを示していた。さらに、これらのサンプルからのNV−VLP溶出ピークの形状は、未処理のNV−VLPの参照基準と同一であり、天然構造が高度に保存されていたことを示していた。ショ糖のみを含む試料は、参照基準に類似のピークの形状を表したが、NV−VLP回復は低かった(約60%の回復(試料LG13))。マンニトールのみを含む試料は、VLPの殆んど完全な凝集をもたらした(試料LE1−LE6およびLIG1d−S3)。NV−VLP構造に対するマンニトールの有害作用は、キトサンおよびショ糖の存在によって対抗された(試料LIG1d−S2およびLIG1d−SB)。
【0092】
【表7】
【0093】
[実施例14]
(鼻腔内免疫化したマウスにおけるノロウイルス特異的長寿命形質細胞および記憶B細胞の誘発)
A.ノーウォークVLP特異的長寿命形質細胞
BALB/cマウスを、ノロウイルスVLPおよびアジュバントで鼻腔内免疫化した。無処置のコントロールにはアジュバント単独を投与した。免疫化114日後、両群のマウスから脾臓、頸部リンパ節、および骨髄を収集した。組織を収集した日(0日目)、細胞を、ELISPOTアッセイを用いて抗原特異的な抗体分泌細胞(ASC)の存在に対してアッセイした。結果を、様々な組織に対して図13A〜Cに表す。これらの組織において免疫グロブリン(IgG、IgA、およびIgM)が検出されると、ノロウイルス特異的長寿命形質細胞の存在が示される。
【0094】
B.ノーウォークVLP特異的記憶B細胞
ノーウォークVLPで鼻腔内免疫化したマウスからノーウォークVLP特異的記憶B細胞の存在を検出するためのin vitroのアッセイを開発した。様々なリンパ組織、または全血(末梢血単核細胞、脾細胞、リンパ節細胞など)を、このアッセイを用いて記憶B細胞の存在に対してアッセイすることができる細胞の供給源として使用することができる。
【0095】
この実験では、免疫化した動物および無処置の動物(コントロール)から脾臓を収集および処理し、脾細胞を、ノーウォークVLP(20μg/ml)の存在下または非存在下(コントロール)で4日間培養した。組織を収集する日(0日目)に最初のVLP特異的ELISPOTアッセイを行ってASC(上記セクションAを参照されたい)のバックグラウンドレベルを確立した。培養4日後、細胞を回収し、ELISPOTアッセイで再びアッセイしてVLP特異的ASCの数を定量した。0日目と4日目のアッセイとの間のVLP特異的ASCの数における違いが、抗原特異的記憶B細胞の集団を表している。この実験の結果を、図14AおよびBに示す。
【0096】
[実施例15]
(ウサギにおけるノロウイルス記憶B細胞反応)
ニュージーランドシロウサギのメス2羽を、Valois Mark4鼻腔内送達装置中に充填した乾燥粉末10mgあたりノーウォークVLP25μg、MPL25μg、マンニトール1.5mg、ショ糖1.5mg、およびキトサン7.0mgからなる乾燥粉末製剤で鼻腔内免疫化した。ウサギ2羽には、14日間隔で全3回の免疫化を与えた。この実験では、非免疫化のメスウサギを無処置のコントロールとして用いた。
【0097】
A.ウサギ組織の回収および処理
末梢血単核細胞(PBMC):凝固を防ぐためにEDTAを含む採血管に、ウサギから全血(〜50mL)を得た。全血を滅菌D−PBSで1:3に希釈し、希釈した全血〜35mLを、50mL滅菌遠心管中のリンパ球分離液15mL上に重層した。管を室温で20分間、800×gで遠心分離した。PBMCを含むバフィーコート層を、5mL滅菌ピペットを用いて注意深く除去し、細胞をD−PBSで2回洗浄した。必要に応じて、汚染性の赤血球をACK溶解によって除去した。細胞を、RPMI−1640−10%FBS(1640−C)に再懸濁し、トリパン排除法を用いて血球計算機で計数した。
【0098】
腸間膜リンパ節細胞:各ウサギを安楽死させた後、別々に、リンパ節を無菌的に回収した。組織を、〜10mLのRPMI−1640−無血清(1640−NS)を含むプラスチック製滅菌ペトリ皿に維持した。リンパ節を、滅菌乳棒を用いて滅菌網目スクリーンを押して通過させて組織を分散させ、リンパ節細胞の単一細胞懸濁液を得た。細胞を回収し、1640−NSで2回洗浄し、最後に70μmの滅菌ろ紙を通してろ過して凝集塊および残骸を除去した。細胞を1640−Cに再懸濁し、トリパンブルー排除法を用いて血球計算機で計数した。
【0099】
脾細胞:安楽死後、各ウサギから脾臓を無菌的に得た。脾臓を1640−NS約10mLを含む滅菌ペトリ皿に配置した。22ゲージの滅菌針およびシリンジを用いて、培地を組織中に繰り返し注入して脾皮膜を破壊し、細胞を浮遊させた。次いで、滅菌ピンセットを用いて残りの組織フラグメントを細かく裂いて引き離した。ペトリ皿の内容物を滅菌遠心管に移し、細胞懸濁液および破壊した脾臓組織を6〜8分間寝かせて、大きな組織フラグメントを沈澱させた。単一細胞の懸濁液を第2の滅菌遠心管に移し、細胞を1640−NSで1回洗浄した。脾細胞製剤における赤血球を、ACK溶解(ACKバッファー8mL、8分、室温)によって除去し、細胞を1640−NSでもう1回洗浄し、最後に70μmの滅菌ろ紙を通してろ過して凝集塊および残骸を除去した。最終の細胞ペレットを1640−完全培地に再懸濁し、トリパンブルー排除法を用いて血球計算機で計数した。
【0100】
骨髄細胞:安楽死後、個々のウサギから下腿における脛骨を除去した。骨髄細胞を除去するには、骨鋸を用いて骨の終端を無菌的に切り落とし、骨の内容物を、1640−NS培地を繰り返し注入することによって流し出した。骨髄細胞をピペットで繰り返し吸い上げ、吐き出して、細胞の凝集塊をばらばらにし、分散させた。細胞を1640−NSで1回洗浄し、赤血球をACKで溶解し、細胞を1640−NSでもう1回洗浄した。最後に、細胞を70μmの滅菌ろ紙を通してろ過して凝集塊および残骸を除去した。最終の細胞ペレットを1640−完全培地に再懸濁し、トリパンブルー排除法を用いて血球計算機で計数した。
【0101】
B.ELISPOTアッセイ
96ウェルのMillipore PVDFフィルタープレートを予め湿潤し、洗浄した後、40μg/mlの濃度の天然ノーウォークVLPの滅菌溶液で最終体積50μl/ウェルにコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベートし、D−PBSで洗浄し、1640−Cを添加してブロックした。免疫化したウサギからの、および無処置のコントロールのウサギからの、腸間膜リンパ節細胞、脾細胞、および骨髄細胞を、様々な濃度で(1×106、5×105、2×105、および1×105細胞/ウェル)ウェルに加え、プレートを37℃で一夜インキュベートした。プレートをPBS−Tweenで徹底的に洗浄し、ウサギIgGおよびIgAに特異的な2次試薬をウェルに加え、室温でさらに2時間インキュベートした。広範に洗浄した後、プレートをDABクロマゲン(chromagen)/基質で発色させ、ELISPOTプレートリーダーで読み取った。無処置のコントロールの動物からのウェル上に表れたスポットを、実験群から差し引いた。データを、ノーウォークVLP特異的抗体分泌細胞(ASC)として表し、1×106細胞あたりで標準化した。
【0102】
C.ノーウォークVLP特異的記憶B細胞アッセイ
上記に記載した様々な組織から単離したリンパ細胞を、ノーウォークVLP(10μg/mL)存在下、1640−C培地に1mLあたり5×106細胞の密度で再懸濁した。細胞を1mLの体積で24ウェルプレート中、37℃で4日間インキュベートした。VLP特異的ELISPOTアッセイを、培養時にこれらの細胞に対して行った。培養4日後、細胞を収集し、1640−NS培地で2回洗浄し、1640−完全培地に再懸濁し、トリパンブルー排除法を用いて血球計算機で計数した。細胞を、ノーウォークVLP特異的ELISPOTアッセイでもう1回試験した。組織収集日に行ったELISPOTアッセイから得たデータを、0日目(バックグラウンド)のASC活性と呼ぶ。0日目の時間点に検出されたあらゆるスポットを、活発に分泌している形質細胞または長寿命形質細胞(LLPC)と仮定した。4日間培養細胞に対して行ったELISPOTアッセイから得られたデータを4日目ASC活性と呼び、記憶B細胞の活性を、4日目ASC活性と0日目ASC活性との間の違いによって表す。
【0103】
D.ノーウォークVLP特異的記憶B細胞は鼻腔内免疫化したウサギの末梢血に存在する
上記に記載したノーウォークVLPを含む乾燥粉末製剤ワクチンで、3回鼻腔内免疫化した最後の141日後、免疫化したウサギ(RB735、RB1411)2羽から全血を得た。非免疫化の無処置のウサギからも血液を得た。血液を処理して、末梢血単核細胞(PBMC)を得、PBMCをノーウォークVLP特異的記憶B細胞アッセイ(上記セクションC)に配置した。結果を図15に示す。左パネルは、組織収集時(0日目ASC)の最初のELISPOTアッセイの結果を示す。右パネルは、ノーウォークVLPと培養4日後のELISPOTアッセイの結果を示す(4日目ASC)。
【0104】
0日目のELISPOTの結果(図15、左パネル)は、ノーウォークVLP乾燥粉末ワクチンで最後に追加免疫した約140日後には、末梢血にVLP特異的形質細胞は残存しないことを図示している。図15の右パネルは、ノーウォークVLPとin vitroで4日培養したPBMCからのELISPOTアッセイの結果を示している。免疫化した2羽のウサギでは、おそらく記憶B細胞の亜集団であるPBMCの著しい数が、活性のIgG分泌性ノーウォークVLP特異的形質細胞に成熟する。IgA分泌性記憶B細胞に対するアッセイを行ったが、PBMCの集団でIgG分泌性記憶B細胞だけが検出された。予想通り、無処置の動物は抗原特異的記憶B細胞を示さなかった。このようにVLP特異的記憶B細胞は、3回の鼻腔内免疫化の最後の後140+日のウサギの末梢循環に見出された。
【0105】
E.ノーウォークVLP特異的記憶B細胞は鼻腔内免疫化したウサギの脾臓に存在する
ワクチン免疫化した2羽のウサギ、および非免疫化のコントロールのウサギの脾臓から脾細胞を得た。ノーウォークVLP特異的記憶B細胞アッセイ(上記に記載)を、これらの細胞に対して行い、結果を図16に示す。PBMCの集団に観察されるように、0日目のELISPOTアッセイでは、抗原特異的な形質細胞が脾臓には存在しないことが示された(図16、左パネル)。しかし、ノーウォークVLPとin vitroで4日インキュベート後は、IgG分泌性ノーウォークVLP特異的記憶B細胞が脾細胞集団において明らかである。このように、脾臓は、鼻腔内免疫化後の記憶B細胞の遊走に対する一部位を代表している。
【0106】
F.ノーウォークVLP特異的長寿命形質細胞の集団は骨髄に見出されるが、記憶B細胞は存在しない
実験用ウサギの脛骨から骨髄細胞を得、長寿命形質細胞および記憶B細胞の存在に対してアッセイした。結果を図17に表す。図17の左パネルは、ウサギ1411は、骨髄に著しい集団の抗原特異的形質細胞を有していたことを示している。免疫化後、骨髄に遊走し、そこに長期間存在する形質細胞を、長寿命形質細胞(LLPC)と呼ぶ。ウサギ735は、高数値のLLPCを示さなかった。無処置のウサギの骨髄にはLLPCは見出されなかった。骨髄細胞を記憶B細胞アッセイで培養し、記憶B細胞の存在に対して再試験した。図17の右パネルは、骨髄には抗原特異的記憶B細胞が本質的に存在しないことを示している。このように、長寿命形質細胞は骨髄に遊走するが、記憶B細胞はそこに見出されない。
【0107】
G.IgG分泌性およびIgA分泌性ノーウォークVLP特異的記憶B細胞は両方とも鼻腔内免疫化したウサギの腸間膜リンパ節に存在する
実験用ウサギ全てから腸間膜リンパ節を得て、単離した細胞をLLPCおよび記憶B細胞に対してアッセイした。このアッセイからの結果を図18Aに示す。骨髄以外の、分析した殆どのリンパ組織と同様、腸間膜節にLLPCは見出されなかった(図18A、左パネル)。ノーウォークVLPとのin vitroのインキュベート後に、非常に高い数値のIgG分泌性VLP特異的記憶B細胞が、腸間膜リンパ節の集団に明らかであった(図18A、右パネル)。腸間膜リンパ節に観察された記憶B細胞の数は、アッセイした他のリンパ組織に観察されたものよりも有意に高かった。
【0108】
多くの研究者たちが、鼻の通路または腸などの粘膜の誘導部位を免疫化することで、いわゆる粘膜免疫反応を誘発できることを示していた。この反応は、一般的には、粘膜のリンパ組織に局在しているIgA+B細胞およびIgA分泌性形質細胞の存在を特徴とする。この理由から、腸間膜リンパ節細胞を、また、IgA分泌性LLPCまたは記憶B細胞の存在に対してアッセイした。これらのアッセイからの結果を図18Bに示す。繰り返すと、IgA+LLPCは腸間膜リンパ節の集団には見出されなかった(図18B、左パネル)。しかし、IgA分泌性記憶B細胞はこの組織に検出された(図18B、右パネル)。このように、乾燥粉末ノーウォークVLPワクチン製剤での鼻腔内免疫化により、IgG+およびIgA+両方の抗原特異的記憶B細胞の、腸関連のリンパ組織への遊走をもたらす粘膜免疫反応が誘発される。ノーウォークワクチン製剤での免疫化が誘発する抗原特異的記憶B細胞の生成は、ワクチンの有効性の考えられる指標である。記憶B細胞の存在は、長寿命免疫の1つのマーカーである。
【0109】
H.VLP特異的CD4+記憶T細胞
免疫化したウサギから収集した脾細胞を、完全なノーウォークVLPで再刺激し、細胞の増殖の度合いを、縦軸上に示すように(CPM)トリチウム標識したチミジンの取り組みによって測定した(図19)。左パネルは、脾細胞の非分画化集団の細胞の増殖を示し、右パネルはCD4+T細胞の細胞集団を示す。
【0110】
本発明は、本発明の個々の態様を単に例示するものとして企図される、記載される特定の実施形態によって範囲を限定しようとするものではなく、機能上同等の方法および構成成分は本発明の範囲内である。実際、前述の説明および添付の図面から、当業者には、わずかな日常的実験を用いれば、本明細書に示し、記載したものの他にも、本発明の様々な改変は明らかになるであろう。そのような改変や等価物は添付の特許請求の範囲内にあるものとする。
【0111】
本明細書において言及した全ての出版物、特許、および特許出願は、各個々の出版物、特許、または特許出願が、特に、かつ個々に、本明細書に参照として組み入れられるように示されるがごとく、本明細書において本明細書中に同程度に参照として組み入れられる。
【0112】
本明細書における参考文献の引用または考察は、このようなものが本発明に対する先行技術であることを認めるものと解釈してはならない。
【0113】
参照
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39. Centers for Disease Control, Morbidity and Mortality Weekly Report 2007; 56(33):842-846.
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その全文が本明細書に参照として組み入れられる、2006年9月29日出願の米国特許出願第60/847,912号、および2007年9月18日出願の米国特許出願第60/973,392号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ワクチンの分野のもの、詳細にはノロウイルスのワクチンの分野のものである。さらに、本発明は、ワクチン組成物を調製する方法、および免疫原性反応を誘発する方法に関する。
【0003】
(政府支援の陳述)
本発明は、契約番号DAMD17−01−C−0400およびW81XWH−05−0135の下で、米国陸軍医学研究及び材料司令(United States Army Medical Research and Material Command)からの政府支援を受けてもたらされたものである。政府は、本発明に対してある種の権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
ノロウイルスは、非細菌性胃腸炎の集団発生の唯一の最も重要な原因として出現した、培養不可能なヒトカリシウイルスである(Glassら、2000年、Hardyら、1999年)。ノロウイルスの臨床上の重要性は、高感度の分子診断アッセイの開発前は過小評価されていた。プロトタイプの遺伝子型Iノーウォークウイルス(NV)ゲノムのクローニングおよび組換えバキュロウイルス発現系からのウイルス様粒子(VLP)の生成により、広範なノロウイルス感染を明らかにするアッセイが開発された(Jiangら、1990年、1992年)。
【0005】
ノロウイルスは、非分節型(non-segmented)RNAゲノムを含む、1本鎖のポシティブセンスRNAウイルスである。ウイルスのゲノムは3つのオープンリーディングフレームをコードしており、その中では後の2つが、各々大きい方のカプシドタンパク質および小さい方の構造タンパク質の生成をそれぞれ特定している(Glassら、2000年)。真核細胞の発現系において高レベルで発現される場合は、NVのカプシドタンパク質およびある種の他のノロウイルスは自己集合して、天然(native)ノロウイルスビリオンを構造的に模倣するVLPになる。透過型電子顕微鏡によって観察した場合、VLPは、ヒト糞便サンプルから単離された感染性のビリオンと形態学的に区別できない。
【0006】
ノロウイルスに対する免疫反応は複雑であり、保護作用の関連性は、今や解明されつつある。天然ウイルスで行ったヒト志願者の試験は、粘膜由来の記憶免疫反応により感染から短期の保護作用がもたらされることを実証し、ワクチン媒介性の保護作用が実現可能であることを示唆していた(Lindesmithら、2003年;Parrinoら、1997年;Wyattら、1974年)。
【0007】
ノロウイルスはin vitroで培養することができないが、VLPの利用可能性およびそれらが大量に生成される能力によって、ノロウイルスのカプシドの抗原のおよび構造上のトポグラフィーを規定する上でかなりの進歩がなされている。VLPはウイルスのカプシドタンパク質の真正の確証は保持しているが、感染性の遺伝物質は欠いている。その結果、VLPは、細胞受容体とのウイルスの機能的な相互作用を模倣し、それによって適切な宿主の免疫反応は誘発するが、感染を再現または引き起こす能力は欠いている。NIHと連携して、Baylor College of Medicineは、学問的な医師主導の第I相臨床試験で、ヒト志願者におけるNV VLPに対する体液、粘膜、および細胞の免疫反応を試験した。経口投与したVLPは安全であり、健常成人において免疫原性であった(Ballら、1999年、Tacketら、2003年)。他の学術的機関では、動物モデルにおける前臨床実験により、細菌外毒素アジュバントとともに鼻腔内投与した場合に、VLPに対する免疫反応の増強が実証された(Guerreroら、2001年、Nicollier−Jamotら、2004年、Periwalら、2003年)。まとめると、これらのデータは、適切に製剤化されたVLPからなるワクチンは、ノロウイルス感染に対して免疫化するための実行可能な戦略となることを示唆している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ノロウイルス抗原を含む抗原製剤およびワクチン製剤を提供する。一実施形態では、製剤は少なくとも1つのアジュバントをさらに含む。ノロウイルス抗原は、遺伝子型Iまたは遺伝子型IIのウイルス配列またはコンセンサスウイルス配列に由来し得る。ノロウイルス製剤は、抗原のペプチド、タンパク質、またはウイルス様粒子(VLP)を含む。一実施形態では、VLPは変性していてよい。別の実施形態では、抗原のペプチドおよびタンパク質は、カプシドモノマー、カプシドマルチマー、タンパク質凝集体、およびそれらの組合せからなる群から選択される。別の実施形態では、ノロウイルス抗原は、重量で約0.01%から約80%までの濃度で存在する。ノロウイルス抗原の投与量は、投与1回あたり約1μgから約100mgまでの量で存在する。
【0009】
別の実施形態では、ノロウイルスVLPは、少なくとも1つのカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードするノロウイルス核酸配列を用いた発現系で生成した組換えのVLPである。カプシドタンパク質は、VP1およびVP2またはその組合せからなる群から選択される。発現系は、酵母、細菌、昆虫、哺乳動物の発現系などの組換え細胞発現系でもよく、またはバキュロウイルス感染細胞発現系でもよい。
【0010】
さらに別の実施形態では、組成物は、貯蔵効果をもたらすことによって抗原の取込みを増強し、送達部位で抗原保持時間を増大し、または送達部位で細胞の緊密な接合を緩和することによって免疫反応を増強するように機能する送達剤をさらに含む。送達剤は生物付着剤(bioadhesive)でよく、好ましくはグリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸コンドロイチン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン)、炭水化物ポリマー(例えば、ペクチン、アルギン酸塩、グリコーゲン、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、スタキオース、ウヌリン(unulin)、デキストリン、デキストラン)、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖(ムチン、および他のムコ多糖を含む)セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、タンパク質(例えば、レクチン、線毛タンパク質)、およびデオキシリボ核酸からなる群から選択される粘膜付着剤(mucoadhesive)でよい。粘膜付着剤が多糖であることが好ましい。粘膜付着剤が、キトサン、またはキトサン塩もしくはキトサン塩基などのキトサンを含む混合物であることがより好ましい。
【0011】
さらに別の実施形態では、本発明はアジュバントをさらに含む組成物を提供する。アジュバントは、トール様受容体(TLR)作用薬、一リン酸化脂質A(MPL(登録商標))、合成脂質A、脂質Aミメティックまたは類似体、アルミニウム塩、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、ポリホスファゼン、乳剤、ビロゾーム、コクリエート(cochleate)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマー粒子、微粒子、細菌外毒素などの外毒素、およびリポソームからなる群から選択される。アジュバントがトール様受容体(TLR)作用薬であることが好ましい。アジュバントがMPL(登録商標)であることがより好ましい。
【0012】
本発明の組成物は、液体製剤または乾燥粉末製剤として提供することができる。本発明の乾燥粉末製剤は、直径約10から約500マイクロメートルまでの平均粒子サイズを含むことができる。一実施形態では、組成物は抗原製剤である。別の実施形態では、組成物は、ワクチンとして投与するために製剤化される。好適な投与経路には、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、真皮下、または経皮が含まれる。特に、投与経路は筋肉内または粘膜であってよく、粘膜投与の好ましい経路には鼻腔内、経口、または膣内の投与経路が含まれる。別の実施形態では、組成物は、鼻内噴霧、点鼻薬、または乾燥粉末として製剤化され、この場合、製剤を、鼻の通路に近接して保持されまたは通路中に挿入する製剤を含む装置から鼻の通路内に速やかに沈着させることによって投与する。別の実施形態では、製剤を一方または両方の鼻孔に投与する。
【0013】
本発明は、ノロウイルス組成物を含む抗原製剤またはワクチンを対象に投与することを含む、対象におけるノロウイルスに対する免疫反応を生じさせるための方法も提供する。一実施形態では、ノロウイルス組成物を含む抗原製剤およびワクチンは、1つ以上のノロウイルス抗原に対する抗体を産生することにおける使用を見出す。別の実施形態では、ノロウイルスのワクチン製剤を用いてノロウイルス感染症を治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】in vivoのVLP10μgでの鼻腔内免疫化後の、ネズミ頸部リンパ節細胞のin vitroの抗原特異的増殖アッセイを示す図である。
【図2】in vivoのVLP10μgでの鼻腔内免疫化後の、脾細胞のin vitroの抗原特異的増殖アッセイを示す図である。
【図3】in vivoのVLP25μgでの鼻腔内免疫化後の、脾細胞のin vitroの抗原特異的増殖アッセイを示す図である。
【図4】ELISPOTアッセイによって測定した抗体分泌細胞(ASC)由来のVLP特異的なIgGまたはIgAを示す図である。
【図5】ELISAによって測定したVLP特異的なIgGを示す図である。
【図6】ノーウォークVLPに対する血清IgG反応に対する効力アッセイの結果を示す図である。
【図7】抗原の液体製剤または乾燥粉末から再構成した製剤のいずれかで免疫化したマウスにおける、ノーウォークVLPに対する血清IgG反応を比較する効力アッセイの結果を示す図である。グラフは様々な製剤におけるノーウォークVLPの効力対濃度を示す。
【図8】ノロウイルスVLPワクチンの様々な製剤を投与後、21日目(左パネル)および42日目(右パネル)のウサギにおける血清IgG反応を示す図である。
【図9】ノーウォークVLPの液体製剤または乾燥粉末製剤のいずれかで鼻腔内免疫化したウサギにおける血清IgG反応を示す図である。
【図10】定量的SDS−PAGE分析およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した乾燥粉末製剤の安定性を示す図である。回帰分析は、1年超、乾燥粉末10mgあたり全てのまたは完全ないずれかのVLPμgにおいて統計的趨勢がないことを示している。パーセント凝集は、SECによって検出されなかったVLPタンパク質は、定量的SDS−PAGEによって検出された全VLPタンパク質に比べて凝集していることを仮定した計算値である。
【図11】複数のノロウイルス抗原で腹腔内免疫化したマウスにおける、抗ノロウイルス抗体反応のELISAアッセイの結果を示す図である。細矢印は、ノーウォークVLPだけを含む製剤でのブースター注射を示している。太矢印は、ノーウォークおよびヒューストンのVLP両方を含む製剤でのブースター注射を示している。
【図12】ノーウォークVLP、ヒューストンVLP、またはノーウォークおよびヒューストンのVLPの組合せのいずれかで腹腔内免疫化したマウスにおける抗ノロウイルス抗体反応のELISAアッセイを示す図である。
【図13】マウスにおいてノーウォークVLPでの鼻腔内免疫化114日後の、マウスにおける脾細胞(A)、頸部リンパ節(B)、および骨髄(C)におけるノーウォークVLP特異的な長寿命の形質細胞の存在を示す図である。
【図14】ノーウォークVLPで鼻腔内免疫化したマウスの脾細胞における、ノーウォーク特異的記憶B細胞反応を示す図である。パネルAは、ノーウォークVLPを用いた培養における0日目(左グラフ)および4日目(右グラフ)のIgA抗体分泌細胞を示す。パネルBは、ノーウォークVLPを用いた培養における0日目(左グラフ)および4日目のIgG抗体分泌細胞を示す。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の拡大および分化のレベルを示すものである。
【図15】ノーウォークVLPワクチン製剤で鼻腔内免疫化したウサギから単離した末梢血単核細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。左パネルは、0日目(組織回収日)のノーウォークVLP特異的抗原分泌細胞(ASC)の数を示し、右パネルは、ノーウォークVLPを用いた培養における4日後のノーウォークVLP特異的ASCの数を示す。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の反応を示すものである。
【図16】ノーウォークVLPワクチン製剤で鼻腔内免疫化したウサギから回収した脾細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。左パネルは、0日目(組織回収日)のノーウォークVLP特異的抗原分泌細胞(ASC)の数を示し、右パネルは、ノーウォークVLPを用いた培養における4日後のノーウォークVLP特異的ASCの数を示す。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の反応を示すものである。
【図17】ノーウォークVLPワクチン製剤で鼻腔内免疫化したウサギの脛骨から回収した骨髄細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。左パネルは、0日目(組織回収日)のノーウォークVLP特異的抗原分泌細胞(ASC)の数を示し、右パネルは、ノーウォークVLPを用いた培養における4日後のノーウォークVLP特異的ASCの数を示す。0日目にASCが存在することは長寿命の形質細胞の存在を示すものである。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の反応を示すものである。
【図18】ノーウォークVLPワクチン製剤で鼻腔内免疫化したウサギから回収した腸間膜リンパ節細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。パネルAは、ノーウォークVLPに特異的なIgGポジティブ抗体分泌細胞(ASC)を示す。パネルBは、ノーウォークVLPに特異的なIgAポジティブASCを示す。左パネルは、0日目(組織回収日)のノーウォークVLPに特異的なASCの数を示し、右パネルは、ノーウォークVLPを用いた培養物における4日後のノーウォークVLPに特異的なASCの数を示す。0日目にASCが存在することは長寿命の形質細胞の存在を示すものである。0日目と4日目との間の細胞数における違いは、記憶B細胞の反応を示すものである。
【図19】ウサギにおいてin vivoで鼻腔内免疫化した後の、脾細胞のin vitroの抗原特異的増殖アッセイを示す図である。左パネルは、非分画化の脾細胞においてノーウォークVLPで再刺激したときのT細胞の増殖を示し、右パネルは、ノーウォークVLPで再刺激したときのCD4+T細胞の増殖を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ノロウイルスの抗原およびワクチンの組成物、ならびに組成物を調製する方法に関する。特に、本発明は、ノロウイルス抗原および少なくとも1つのアジュバントを含む組成物を提供する。さらに、またはあるいは、組成物は、少なくとも1つの送達剤をさらに含んでもよい。本発明は、ノロウイルス抗原に対する免疫反応を生成し、または抗体を産生するために、動物に組成物を投与する方法も提供する。
【0016】
(ノロウイルス抗原)
本発明は、1つ以上のノロウイルス抗原を含む組成物を提供する。「ノロウイルス(Norovirus)」、「ノロウイルス(NOR)」、「ノロウイルス(norovirus)」、および本明細書における文法上の同等物は、カリシウイルス科ノロウイルス属のメンバーを意味する。いくつかの実施形態では、ノロウイルスは、ヒトまたは非ヒトの哺乳動物の種に感染し得る、関連するポシティブセンス1本鎖RNAの非エンベロープ(nonenveloped)ウイルスの群を含むことができる。いくつかの実施形態では、ノロウイルスはヒトに急性胃腸炎を引き起こすことができる。ノロウイルスは、電子顕微鏡で観察した場合に明確な表面構造またはデコボコの変縁を有する、小型球形ウイルス(SRSV)と称することもできる。ノロウイルス内には、15の遺伝子群を含む、核酸およびアミノ酸配列によって定義される少なくとも4つの遺伝子型(GI〜IV)が含まれる。主な遺伝子型はGIおよびGIIである。GIIIおよびGIVは提唱されているが、一般に認められている。代表的なGIIIは、ウシのイエナ(Jena)株である。GIVは、現時点では1つのウイルスであるアルファトロン型を含んでいる。ノロウイルスのさらなる記載は、Vinjeら、J.Clin.Micro.、41巻、1423〜1433頁(2003年)を参照されたい。「ノロウイルス」は、本明細書における組換えのノロウイルスウイルス様粒子(rNOR VLP)も意味する。いくつかの実施形態では、組換えのノロウイルスVLPは、少なくとも1つのカプシドタンパク質またはそのフラグメントをコードするノロウイルス核酸配列を用いた発現系において生成される。他の実施形態では、細胞におけるORF2によってコードされる少なくともノロウイルスのカプシドタンパク質の組換えの発現、例えばSf9細胞においてバキュロウイルスのベクターからの発現は、カプシドタンパク質のVLPへの自発的な自己集合をもたらすことができる。さらに他の実施形態では、ORF1およびORF2によってコードされる少なくともノロウイルスのタンパク質の組換えの発現、例えばSf9細胞においてバキュロウイルスのベクターからの発現は、カプシドタンパク質のVLPへの自発的な自己集合をもたらすことができる。ノロウイルス核酸配列は、様々なノロウイルス株、あるいは収量もしくは安定性を増強するように、またはコードされる抗原の抗原性もしくは免疫原性の性質を改善するように改変された合成構築物を含むコンセンサス配列であってもよい。VLPは、構造的にノロウイルスに類似しているが、ウイルスのRNAゲノムを欠いており、それゆえ感染性ではない。したがって、「ノロウイルス」は、不完全な粒子を含む、感染性または非感染性の粒子であり得るビリオンを含む。
【0017】
ノロウイルスの非限定的な例には、ノーウォークウイルス(NV、ジーンバンク M87661、NP056821)、サザンプトンウイルス(SHV、ジーンバンク L07418)、デザートシールドウイルス(DSV、U04469)、ヘッセウイルス(HSV)、チバウイルス(CHV、ジーンバンク AB042808)、ハワイウイルス(HV、ジーンバンク U07611)、スノーマウンテンウイルス(SMV、ジーンバンク U70059)、トロントウイルス(TV、Leiteら、Arch.Virol.、141巻、865〜875頁)、ブリストルウイルス(BV)、イエナウイルス(JV、AJ01099)、メリーランドウイルス(MV、AY032605)、セトウイルス(SV、ジーンバンク AB031013)、キャンバーウェル(CV、AF145896)、ローズスデールウイルス(LV、ジーンバンク X86557)、グリムズビーウイルス(GrV、AJ004864)、メキシコウイルス(MXV、ジーンバンク U22498)、ボクサー(AF538679)、C59(AF435807)、VA115(AY038598)、BUDS(AY660568)、ヒューストンウイルス(HoV)、ミネルバ株(EF126963.1)、ローレンス株(EF126966.1)、MOH(AF397156)、パリスアイランド(PiV;AY652979)、VA387(AY038600)、VA207(AY038599)、およびオペレーションイラクフリーダム(Operation Iraqi Freedom)(OIF、AY675554)が含まれる。核酸、および対応するアミノ酸配列の各々は、その全てが参照により全て組み入れられる。いくつかの実施例では、暗号を同定の目的に用いることができ、組織化される:それからウイルスが単離される宿主の種/属の略語/種の略語/株名/発生年/起源の国(Greenら、Human Caliciviruses、「Fields Virology」、1巻、841〜874頁(KnipeおよびHowley編集長、第4版、Lippincott Williams&Wilkins、2001年)。ある実施形態では、遺伝子型I.1(ノーウォークウイルス)およびII.4(ヒューストンウイルス)などのノロウイルスの遺伝子型の組合せ、または他の一般的に流通している株、またはそれらの組合せもしくは部分を表す合成構築物の使用が好ましい。ノロウイルスの新規な株は、日常的に同定されており(Centers for Disease Control、Morbidity and Mortality Weekly Report、56巻(33)、842〜846頁(2007年))、2つ以上のウイルス株のコンセンサス配列を用いてノロウイルス抗原をまた発現してもよい。
【0018】
ノロウイルス抗原は、ペプチド、タンパク質、またはウイルス様粒子(VLP)の形態であってよい。好ましい実施形態では、ノロウイルス抗原はVLPを含む。本明細書で用いる場合、「ウイルス様粒子またはVLP」は、ノロウイルスのカプシドタンパク質コード配列から生成され、感染性のノロウイルス粒子のこれらに類似の抗原の特徴を含む、ウイルス様粒子、フラグメント、凝集体、またはそれらの部分を意味する。ノロウイルス抗原は、カプシドモノマー、カプシドマルチマー、VLPのタンパク質もしくはペプチドフラグメント、または凝集体もしくはそれらの混合物の形態であってもよい。ノロウイルス抗原のタンパク質またはペプチドは、当技術分野で知られている方法を用いて生成された、変性した形態であってもよい。
【0019】
ノロウイルス抗原は、本発明のVLP上で、またはVLPにおいて発現された、前記カプシドタンパク質の変異体またはそのフラグメントを含んでもよい。変異体は、構成タンパク質のアミノ酸配列における変更を含むことができる。ポリペプチドに関する「変異体」という用語は、参照配列に関して1つ以上のアミノ酸が変化しているアミノ酸配列を意味する。変異体は「保存的な」変化を有していてよく、この場合置換されたアミノ酸は類似の構造上のまたは化学的な性質を有する(例えば、イソロイシンでのロイシンの置換)。あるいは、変異体は「非保存的な」変化を有することができる(例えば、トリプトファンでのグリシンの置換)。類似のマイナーな変異体は、アミノ酸の欠失もしくは挿入、または両方を含むこともできる。生物学的または免疫学的活性を排除せずに、どのアミノ酸残基を置換し、挿入し、または欠失することができるかを決定する手引きは、DNASTARソフトウエアなど、当技術分野ではよく知られているコンピュータープログラムを用いて見出すことができる。
【0020】
クローニング、突然変異など、本発明に適用可能である分子生物学の技術を記載している一般的な教科書には、BergerおよびKimmel、Guide to Molecular Cloning Techniques、Methods in Enzymology、152巻、Academic Press、Inc.、San Diego、カリフォルニア州(Berger);Sambrookら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual(第3版)、1〜3巻、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、2000年(「Sambrook」)、ならびにCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M.Ausubelら編集、Current Protocols、a joint venture between Greene Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley&Sons,Inc.、(「Ausubel」)が含まれる。これらの教科書には、突然変異誘発、ベクターの使用、プロモーター、ならびに、例えばノロウイルスのカプシドタンパク質のクローニングおよび突然変異に関する他の多くの関連の話題が記載されている。したがって、本発明は、本発明のVLP上に、またはVLPにおいて発現されるタンパク質の特徴を改善または変更するための、タンパク質工学および組換えDNA技術の知られている方法の使用も包含する。様々なタイプの突然変異誘発を用いて、タンパク質分子をコードするコンセンサス配列を含む変異体の核酸を生成および/もしくは単離し、かつ/または本発明のVLPにおける、またはVLP上のタンパク質をさらに修飾する/突然変異させることができる。これらには、それだけには限定されないが、部位特異的、ランダム点突然変異、相同的組換え(DNAシャフリング)、ウラシル含有テンプレートを用いた突然変異誘発、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、ホスホロチオエート修飾DNA突然変異誘発、ギャップを有する2本鎖DNA(gapped duplex DNA)を用いた突然変異誘発などが含まれる。さらなる好適な方法には、点ミスマッチ修復、修復欠損宿主株を用いた突然変異誘発、制限選択および制限精製、欠失突然変異誘発、全体の遺伝子合成による突然変異誘発、2本鎖切断修復などが含まれる。
【0021】
本発明のVLPは、当技術分野では標準の方法を用いて、VP1および/もしくはVP2タンパク質などの全長のノロウイルスカプシドタンパク質またはある種のVP1もしくはVP1誘導体のいずれかから形成することができる。あるいは、VLPを形成するために用いられるカプシドタンパク質は、切断されたカプシドタンパク質である。いくつかの実施形態では、例えば、少なくとも1つのVLPは切断されたVP1タンパク質を含む。他の実施形態では、全てのVLPは切断されたVP1タンパク質を含む。切断は、N−またはC−末端切断であってよい。切断されたカプシドタンパク質は、機能的なカプシドタンパク質誘導体であることが好適である。機能的なカプシドタンパク質誘導体は、全長のカプシドタンパク質からなるVLPによって生じる免疫反応と同じ方法で、免疫反応(必要な場合には、好適にアジュバント化されている場合)を生じさせることができる。
【0022】
VLPは、大きい方のVP1タンパク質および/または小さい方のVP2タンパク質を含むことができる。各VLPは、1価VLPを生じるたった1つのノロウイルス遺伝子型由来のVP1および/またはVP2タンパク質を含むことが好ましい。本明細書で用いられる「1価」の用語は、抗原タンパク質が単一のノロウイルス遺伝子型に由来することを意味する。例えば、VLPは、遺伝子型Iのウイルス株由来のVP1および/またはVP2タンパク質を含む(例えば、ノーウォークウイルス由来のVP1およびVP2)。VLPが、主にVP1タンパク質からなることが好ましい。本発明の一実施形態では、抗原は1価VLPの混合物であり、この場合、組成物は、複数のウイルス株(例えば、ノーウォークウイルスおよびヒューストンウイルス)から取った異なるノロウイルスの遺伝子型由来のVP1および/またはVP2からなるVLPと混合した、単一のノロウイルスの遺伝子型由来のVP1および/またはVP2からなるVLPを含む。単に例示として、組成物は、ノロウイルスの遺伝子型Iの1つ以上の株由来の1価VLPを、ノロウイルスの遺伝子型IIの1つ以上の株由来の1価VLPと一緒に含むことができる。ノロウイルスVLPの混合物が、ノーウォークおよびヒューストンのノロウイルスの株からなることが好ましい。
【0023】
しかし、本発明の代替の実施形態では、VLPは、例えば、第2のノロウイルスの遺伝子型由来のVP1および/またはVP2タンパク質と混合したノロウイルスの1つの遺伝子型由来のVP1および/またはVP2タンパク質を含む多価VLPであってよく、この場合異なるVP1およびVP2タンパク質はキメラのVP1およびVP2タンパク質ではなく、同じカプシド構造内で一緒に会合して免疫原性のVLPを形成する。本明細書で用いられる「多価」という語は、抗原タンパク質が2つ以上のノロウイルス遺伝子型に由来することを意味する。多価VLPは、2つ以上のウイルス株から取ったVLP抗原を含むことができる。単に例示として、組成物は、ノロウイルス遺伝子型Iの1つ以上の株由来のカプシドモノマーまたはマルチマーからなる多価VLPを、ノロウイルス遺伝子型IIの1つ以上の株由来のカプシドモノマーまたはマルチマーと一緒に含むことができる。多価VLPが、ノーウォークおよびヒューストンのノロウイルスの株由来のカプシドタンパク質を含むことが好ましい。
【0024】
組成物内の1価または多価VLPの組合せが、各VLP型の免疫原性を阻止しないことが好ましい。特に、組み合わされた本発明のVLP組成物が、ワクチンで表されるノロウイルスの各遺伝子型による感染に対して免疫性を誘発することができるように、本発明の組合せにおけるノロウイルスVLPの間に干渉が存在しないことが好ましい。組合せにおける所与のVLP型に対する免疫反応は、個々に測定した場合、同じVLP型に対する免疫反応の少なくとも50%、好ましくは100%、または実質的に100%であるのが好適である。免疫反応は、例えば、本明細書の実施例で説明するように、抗体の反応によって好適に測定することができる。
【0025】
多価VLPは、個々のカプシドタンパク質を別々に発現し、その後VLPを形成するように組み合わせることによって生成することができる。あるいは、多数のカプシドタンパク質を、1つ以上のDNA構築物から、同じ細胞内で発現させてもよい。例えば、複数のDNA構築物を、各々のベクターが異なるカプシドタンパク質をコードする、宿主細胞内に形質転換または形質移入してもよい。あるいは、共有するプロモーターまたは多数の個々のプロモーターによって制御される多数のカプシド遺伝子を有する単一のベクターを用いてもよい。適当な場合には、IRESエレメントをベクター内に組み入れてもよい。このような発現の戦略を用いて、同時発現されたカプシドタンパク質を、その後のVLP形成用に同時精製してもよく、またはその後精製することができる多価VLPを自発的に形成してもよい。
【0026】
多価VLPを生成するための好ましいプロセスは、ノロウイルスの異なる遺伝子型由来の、VP1および/またはVP2タンパク質などのVLPカプシドタンパク質または誘導体の調製、タンパク質の混合、および多価VLPを生成するためのタンパク質の構築を含む。カプシドタンパク質は、部分的に精製され、または混合前に精製される粗製抽出物の形態であってよい。構築された異なる遺伝子型の1価VLPを、分解し、一緒に混合し、多価VLPに再構築してもよい。タンパク質またはVLPは、少なくとも部分的に精製し、その後組み合わせることが好ましい。場合により、多価VLPのさらなる精製を、構築後に行ってもよい。
【0027】
本発明のVLPは、均一かつ純粋なVLPを提供するために、分解および再構築により作製するのが好適である。一実施形態では、多価VLPは、2つ以上のVLPを分解し、その後再構築前のあらゆる好適な時点で、分解したVLPの構成成分を組み合わせることによって作製することができる。この取り組みは、例えばいくつかの酵母菌株で起こるように、VLPが、発現されたVP1タンパク質から自発的に形成する場合に好適である。VP1タンパク質の発現が自発的なVLPの形成をもたらさない場合は、VP1タンパク質またはカプソメアの調製を、VLPへの構築前に組み合わせることができる。
【0028】
多価VLPを用いる場合は、VLPの構成成分を、最終の混合したVLPにおいてそれらが所望される割合で混合することが好ましい。例えば、ノーウォークおよびヒューストンウイルス(または他のノロウイルス株)からの部分的に精製したVP1タンパク質の同量の混合物により、各タンパク質がおよそ等しい量で多価VLPがもたらされる。
【0029】
多価VLPを含む組成物は、参照として本明細書に組み入れられるWO98/44944、WO0045841のものなど、当技術分野では知られている溶液によって安定化してもよい。
【0030】
本発明の組成物は、VP1およびVP2タンパク質または誘導体の他に、他のタンパク質またはタンパク質フラグメントを含むことができる。他のタンパク質またはペプチドを、本発明の組成物と一緒に投与してもよい。場合により、組成物を、非ノロウイルス抗原と製剤化し、または同時投与してもよい。これらの抗原が、他の疾患からの保護を提供することができるのが好適である。
【0031】
VP1タンパク質または機能上のタンパク質誘導体は、VLPを好適に形成することができ、VLPの形成は、例えば、電子顕微鏡および動的レーザー光散乱などの標準の技術によって評価することができる。
【0032】
(抗原の調製)
本発明の抗原分子を、それらが天然に存在する生物体から単離および精製することによって調製することもでき、またはそれらを組換え技術によって調製することもできる。ノロウイルスVLP抗原を、Sf9またはH5細胞などの昆虫細胞から調製することが好ましいが、大腸菌または酵母菌の細胞(例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)、分裂酵母(S.pombe)、ピキアパストリ(Pichia pastori)、もしくは他のピキアの発現系)などのあらゆる好適な細胞、CHOもしくはHEKなどの哺乳動物細胞の発現系も用いてもよい。組換え法によって、または合成によって調製する場合は、ペプチドを構成するアミノ酸の1つ以上の挿入、欠失、逆位、または置換がなされていてよい。上述の抗原は各々、実質的に純粋な状態で用いることが好ましい。
【0033】
昆虫細胞の培養でノロウイルスVLPを生成する手順は、その全文が参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第6942865号に先に開示されている。簡潔に述べると、ウイルスのカプシド遺伝子(ORF2)および小さい方の構造遺伝子(ORF3)を含むゲノムの3’終端からcDNAをクローニングした。ウイルスのカプシド遺伝子を保有する組換えのバキュロウイルスを、クローニングしたcDNAから構築した。ノロウイルスVLPを、Sf9またはH5昆虫細胞の培養物で生成した。
【0034】
(アジュバント)
本発明は、ノロウイルス抗原と使用するためのアジュバントを含む組成物をさらに提供する。殆どのアジュバントは、抗原を速やかな異化作用から保護するように設計されている物質(例えば、水酸化アルミニウムまたは鉱油)、および免疫反応の刺激薬(例えば、百日咳菌(Bordatella pertussis)または結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のタンパク質)を含んでいる。好適なアジュバントは、例えば、フロイントの不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Pifco Laboratories、Detroit、Mich)、Merckアジュバント65(Merck and Company,Inc.、Rahway、N.J.)、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、カルシウム、鉄、または亜鉛の塩、アシル化したチロシンの不溶性懸濁液、アシル化した糖、陽イオン性または陰イオン性に誘導体化した多糖、ポリホスファゼン、生分解性ミクロスフェア、ならびにQuil Aなどが市販されている。
【0035】
好適なアジュバントには、それだけには限定されないが、トール様受容体(TLR)作用薬、一リン酸化脂質A(MPL)、合成脂質A、脂質Aミメティックまたは類似体、アルミニウム塩、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、ポリホスファゼン、乳剤、ビロゾーム、コクリエート、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマー粒子、微粒子、およびリポソームも含まれる。アジュバントが細菌由来の外毒素ではないことが好ましい。好ましいアジュバントは、3DMPLまたはQS21など、Th1型反応を刺激するものである。
【0036】
サルモネラ由来の脂質Aの非毒性誘導体である一リン酸化脂質A(MPL)は、ワクチンのアジュバントとして開発されている強力なTLR−4作用薬である(Evansら、2003年)。ネズミの前臨床試験では、鼻腔内のMPLは分泌性および全身性の体液性反応を増強することが示されている(Baldridgeら、2000年、Yangら、2002年)。これは、120,000名を超える患者の臨床試験において、ワクチンのアジュバントとして安全かつ有効であることも証明されている(Baldrickら、2002年、2004年)。MPLは、TLR−4受容体によって自然免疫の誘発を刺激し、したがって、グラム陰性およびグラム陽性両方の細菌、ウイルス、および寄生体を含めた広範な感染性病原体に対する非特異的な免疫反応を誘発することが可能である(Baldrickら、2004年、Persingら、2002年)。鼻腔内製剤にMPLを含めることにより、生得的な反応の速やかな誘発をもたらし、ウイルス暴露からの非特異的な免疫反応を誘発し、一方ワクチンの抗原性の構成成分によって産生される特異的な反応は増強するはずである。
【0037】
したがって、一実施形態では、本発明は、適応性のおよび自然免疫の増強剤として、一リン酸化脂質A(MPL(登録商標))または3De−O−アシル化一リン酸化脂質A(3D−MPL(登録商標))を含む組成物を提供する。化学的には、3D−MPL(登録商標)は、3De−O−アシル化一リン酸化脂質Aの、4、5、または6アシル化鎖との混合物である。好ましい形態の3De−O−アシル化一リン酸化脂質Aは、本明細書に参照として組み入れられる、欧州特許第0689454B1(SmithKline Beecham Biologicals SA)に開示されている。別の実施形態では、本発明は、合成脂質A、脂質Aのミメティックまたは類似体(例えば、BioMiraのPET Lipid A)、またはTLR−4作用薬のように機能するように設計されている合成の誘導体を含む組成物を提供する。
【0038】
「有効なアジュバントの量」または「有効な量のアジュバント」という用語は、当業者であれば十分理解され、投与された抗原に対する免疫反応を刺激することが可能な1つ以上のアジュバントの量、すなわち、鼻の洗浄物におけるIgAレベル、血清IgGもしくはIgMレベル、またはB細胞およびT細胞の増殖に関して測定して、投与した抗原組成物の免疫反応を増大する量が含まれる。免疫グロブリンレベルの好適に有効な増大には、いかなるアジュバントなしの同じ抗原組成物に比べて、5%を超える、好ましくは25%を超える、特に50%を超える増大が含まれる。
【0039】
(送達剤(delivery agent))
本発明は、限定するものではないが、宿主のムコ多糖の部分的脱水の単一効果または組合せ効果、送達剤の物理的性質、または送達剤と貯蔵効果をもたらす暴露部位の宿主の組織との間のイオン性の相互作用による液体の粘性の増大に基づく、抗原の取込みを増強するように機能する送達剤を含む組成物も提供する。あるいは、送達剤は、送達部位の抗原保持時間を増大することができる(例えば、抗原の排出を遅らせる)。このような送達剤は、生物付着剤であってよい。特に、生物付着剤は、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸コンドロイチン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン)、炭水化物ポリマー(例えば、ペクチン、アルギン酸塩、グリコーゲン、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、スタキオース、ウヌリン(unulin)、デキストリン、デキストラン)、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖(ムチン、および他のムコ多糖を含む)セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、タンパク質(例えば、レクチン、線毛タンパク質)、およびデオキシリボ核酸からなる群から選択される粘膜付着剤であってよい。粘膜付着剤が、キトサン、キトサン塩、またはキトサン塩基(例えば、キトサングルタメート)などの多糖であることが好ましい。
【0040】
キトサンは、甲殻類の殻におけるキチンに由来する正に荷電した直鎖状の多糖であり、上皮細胞およびその表面を覆う粘液層の生物付着剤である。抗原のキトサンとの製剤は抗原の鼻粘膜との接触時間を増大し、したがって貯蔵効果のおかげで取込みを増大する(Illumら、2001年、2003年;Davisら、1999年;Baconら、2000年;van der Lubbenら、2001年、2001年;Limら、2001年)。キトサンは、動物モデルおよびヒトの両方で、インフルエンザ、百日咳、およびジフテリアを含めたいくつかのワクチンに対する経鼻の送達系として試験されている(Illum、2001年、2003年;Baconら、2000年;Jabbal−Gillら、1998年;Millsら、2003年;McNeelaら、2004年)。これらの治験では、キトサンは全身の免疫反応を、非経口のワクチン接種と等しいレベルに増強することが示されている。さらに、著しい抗原特異的なIgAレベルが、粘膜性の分泌においてやはり測定された。このように、キトサンは経鼻のワクチンの有効性を大幅に増強することができる。さらに、キトサンはその物理的特徴により、粉末剤として製剤化された鼻腔内ワクチンに特によく適している(van der Lubbenら、2001年;Miksztaら、2005年;Huangら、2004年)。
【0041】
したがって、一実施形態では、本発明は、鼻腔内投与に適合される抗原またはワクチンの組成物を提供し、組成物は抗原、および任意選択で有効な量のアジュバントを含む。好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1つのキトサンなどの送達剤、および少なくとも1つのMPL(登録商標)などのアジュバント、CPG、イミキモド、ガーディキモド(gardiquimod)、あるいは合成の脂質Aまたは脂質Aミメティックもしくは類似体などの送達剤と組み合わせた、ノロウイルスVLPなどのノロウイルス抗原を含む抗原またはワクチンの組成物を提供する。
【0042】
キトサンの分子量は10kDaと800kDaとの間、好ましくは100kDaと700kDaとの間、より好ましくは200kDaと600kDaとの間であってよい。組成物におけるキトサンの濃度は、典型的には最高約80%(w/w)であり、例えば、5%、10%、30%、50%、70%、または80%である。キトサンは、少なくとも75%脱アセチル化されていることが好ましく、例えば、80〜90%、より好ましくは82〜88%脱アセチル化されており、特定の例では83%、84%、85%、86%、および87%脱アセチル化されている。
【0043】
(ワクチンおよび抗原製剤)
本発明の組成物を、ワクチンまたは抗原製剤として投与するために製剤化することができる。本明細書で用いられる場合、「ワクチン」という用語は、上記に記載したような本発明のノロウイルスVLPまたは他のノロウイルス抗原を含む製剤、脊椎動物に投与するのが可能である形態における製剤、および感染を軽減するために、かつ/または感染の少なくとも1つの症状を低減するために、かつ/または別の投与量のVLPもしくは抗原の有効性を増強するために治療上の免疫を誘発するのに十分な免疫反応を誘発する製剤を意味する。本明細書で用いられる「抗原製剤(antigenic formulation)」または「抗原組成物」という用語は、哺乳動物などの脊椎動物に投与した場合に免疫反応を誘発する製剤を意味する。本明細書で用いられる「免疫反応」という用語は、体液性免疫反応および細胞媒介性免疫反応の両方を意味する。体液性免疫反応は、例えば、感染性物質を中和し、感染性物質が細胞に入るのを阻止し、前記感染性物質の複製を阻止し、かつ/または宿主細胞を感染および破壊から保護するBリンパ球による抗体の生成の刺激を伴う。細胞媒介性免疫反応は、脊椎動物(例えばヒト)が表す、感染を防止もしくは軽減し、または少なくとも1つのその症状を低減する、Tリンパ球および/またはマクロファージなどの他の細胞によって媒介される感染性物質に対する免疫反応を意味する。ワクチン製剤は、Vaccine Design(「The subunit and adjuvant approach」(Powell M.F.およびNewman M.J.編集)(1995年)Plenum Press New York)に概ね記載されている。本発明の組成物は、例えば、経口の、胃腸の、および呼吸器(例えば、鼻の)粘膜の1つ以上に送達するために製剤化することができる。
【0044】
組成物を呼吸器(例えば、鼻の)粘膜に送達することが企図される場合、典型的には、これをエアロゾルまたは点鼻薬として投与するための水溶液として製剤化し、あるいは、例えば、鼻道内に速やかに沈着させるための乾燥粉末として製剤化する。点鼻薬として投与するための組成物は、例えば、保存剤、粘度調整剤、等張化剤、緩衝剤など、通常このような組成物に含まれるタイプの1つ以上の賦形剤を含むことができる。粘度調整剤は、微結晶性セルロース、キトサン、デンプン、多糖などであってよい。乾燥粉末として投与するための組成物は、例えば、粘膜付着剤、増量剤、および適当な粉末の流動およびサイズの特徴を送達するための物質など、このような組成物に通常含まれる1つ以上の賦形剤も含むことができる。増量剤および粉末流動剤およびサイズ剤には、マンニトール、ショ糖、トレハロース、およびキシリトールが含まれ得る。
【0045】
一実施形態では、本発明のノロウイルスのワクチンまたは抗原製剤を、免疫原として1つ以上のノロウイルスの遺伝子型の抗原、MPL(登録商標)などのアジュバント、粘膜表面への接着を促進するためのキトサンなどの生体高分子、ならびにマンニトールおよびショ糖などの増量剤を含む乾燥粉末として製剤化してもよい。例えば、ノロウイルスのワクチンを、1つ以上のノロウイルスの遺伝子型の抗原(例えば、ノーウォークウイルス、ヒューストンウイルス、スノーマウンテンウイルス)、MPL(登録商標)アジュバント、キトサン粘膜接着性、ならびに増量剤としておよび適当な流動の特徴を提供するためのマンニトールおよびショ糖を含む乾燥粉末10mgとして製剤化してもよい。製剤は、キトサン約7.0mg(25から90%w/wの範囲)、マンニトール約1.5mg(0から50%w/wの範囲)、ショ糖約1.5mg(0から50%w/wの範囲)、MPL(登録商標)約25μg(0.1から5%w/wの範囲)、およびノロウイルス抗原約100μg(0.05から5%w/wの範囲)を含むことができる。
【0046】
ノロウイルス抗原は約0.01%(w/w)から約80%(w/w)までの濃度で存在することができる。一実施形態では、ノロウイルス抗原を、両方の鼻孔中に投与するために乾燥粉末製剤10mgあたり約5μg、約15μg、および約50μg(0.025、0.075、および0.25%w/w)の投与量で、または一方の鼻孔中に投与するために約10μg、約30μg、および約100μg(0.1、0.3、および1.0%w/w)の投与量で製剤化することができる。製剤を、各投与の間に一方または両方の鼻孔に投与することができる。免疫反応を増強するために、第1の投与の後1から12週のブースター投与も存在し得る。ワクチンおよび抗原製剤におけるノロウイルス抗原の含量は、1μgから100mgの範囲、好ましくは1〜500μgの範囲、より好ましくは5〜200μg、最も典型的には10〜100μgの範囲であってよい。各投与量で投与するノロウイルスの全抗原は、両方の鼻孔に投与する場合は乾燥粉末全20mgにおいて約10μg、約30μg、または約100μgのいずれかであり、または一方の鼻孔に投与する場合は乾燥粉末10mgである。乾燥粉末の特徴は、粒子の10%未満は直径10μm未満であることである。平均粒子サイズは、直径10から500μmの範囲である。
【0047】
別の実施形態では、抗原およびワクチン組成物は、対象に引き続き投与するための液体として製剤化することができる。鼻腔内投与を企図した液体製剤は、ノロウイルスの遺伝子型の抗原、アジュバント、およびキトサンなどの送達剤を含む。筋肉内(i.m.)または経口投与のための液体製剤は、ノロウイルス遺伝子型の抗原、アジュバント、およびバッファーを含み、送達剤(例えば、キトサン)を含まない。
【0048】
本明細書上記に記載した抗原およびワクチン組成物は、凍結乾燥され、無水で貯蔵されてから使用に準備され、その時点で、液体製剤で用いる場合は希釈剤で再構成されることが好ましい。あるいは、組成物の様々な成分を、キットまたは装置において別々に貯蔵してもよい(あらゆるまたは全ての構成成分を凍結乾燥する)。構成成分は、乾燥製剤では凍結乾燥の形態のままでもよく、または液体製剤では再構成されていてもよく、混合してから使用または患者に別々に投与する。乾燥粉末を投与するためには、ワクチンまたは抗原製剤を、鼻腔内送達装置または局所(例えば、経皮)送達パッチ中に予め充填し、使用まで貯蔵してもよい。このような送達装置および付随する包装は、その内容物を保護し、安定性を確実にすることが好ましい。
【0049】
抗原製剤およびワクチンの凍結乾燥は、当技術分野ではよく知られている。典型的には、凍結乾燥のプロセスの間抗原を保護するための、および望ましい特徴の粉末を得るための物質の存在下で液体の抗原を凍結乾燥する。タンパク質の抗原を凍結保護および溶解保護するために、かつ望ましい特徴の凍結乾燥したケークまたは粉末を得るために、ショ糖、マンニトール、トレハロース、またはラクトースなどの糖(初期濃度10〜200mg/mLで存在する)を通常用いる。凍結乾燥した組成物は、理論的にはより安定である。噴霧乾燥または噴霧凍結乾燥などの他の乾燥技術も用いることができる。殆どの製剤のプロセスの目標はタンパク質の凝集および分解を最小にすることであり、本発明者らは、凝集した抗原が存在すると、ノロウイルスVLPに対する免疫反応を増強することを実証した(動物モデルにおける実施例3および4を参照されたい)。したがって、本発明者らは、凝集した抗原の完全な抗原に対する最適な比率を生成して動物モデルにおいて最大の免疫反応を誘発するために、それによって凍結乾燥プロセスの間に抗原の凝集の百分率を制御することができる方法を開発した。
【0050】
このように、本発明は、ノロウイルス抗原製剤を作製する方法であって、(a)ショ糖とキトサンとの比が約0:1から約10:1までである、ノロウイルス抗原、ショ糖、およびキトサンを含む凍結乾燥前溶液を調製することと、(b)前記溶液を凍結することと、(c)凍結溶液を30〜72時間凍結乾燥することであって、凍結乾燥最終生成物がある百分率の凝集形態の前記ノロウイルス抗原を含むこととを含む方法も包含する。凍結乾燥は、周囲の温度で行ってもよく、低温で行ってもよく、または様々な温度の循環で進めてもよい。例示のみの目的では、凍結乾燥は、例えば、−69℃で開始し、3時間かけて−24℃に徐々に調節し、次いでこの温度を18時間保持し、次いで1時間かけて−16℃に徐々に調節し、次いでこの温度を6時間保持し、次いで3時間かけて+34℃に徐々に調節し、最後に9時間にわたってこの温度を保持するサイクルの、一連の工程にわたって行ってよい。一実施形態では、凍結乾燥前溶液は増量剤をさらに含む。別の実施形態では、前記増量剤はマンニトールである。
【0051】
望ましい百分率の凝集をもたらすのに適当なショ糖とキトサンとの比率は、以下の指針によって決定することができる。約2:1から約10:1までの範囲の重量比のショ糖とキトサンとを含む凍結乾燥前混合物から、凍結乾燥前溶液濃度に応じて、約50%から100%までの範囲の完全なノロウイルス抗原(すなわち、0%から50%の凝集した抗原)の凍結乾燥後物が得られる(実施例13を参照されたい)。ショ糖とキトサンとの重量比0:1で、30%未満の完全なノロウイルス抗原(すなわち、70%を超える凝集した抗原)が生成される。ショ糖およびキトサンを両方とも省略し、マンニトールなどの増量剤だけを用いると、10%未満の完全な抗原を生成する(すなわち、凍結乾燥前溶液濃度に応じて凝集した抗原の90%を超える)。これらの指針を用いれば、当業者であれば、最適の免疫反応を生成するのに必要な望ましい量の凝集物を得るために、凍結乾燥前混合物におけるショ糖とキトサンとの重量比および濃度を調節することができる。
【0052】
さらに、凍結乾燥前溶液にショ糖、キトサン、およびマンニトールを含んでも、長時間にわたる完全なノロウイルス抗原の安定性に負の作用はなく、すなわち、製剤における凝集した抗原/完全な抗原の比率は、約12カ月以上の期間乾燥粉末として貯蔵した場合に増大しない(実施例10を参照されたい)。このように、この凍結乾燥手順により、予想可能かつ制御可能な、完全なノロウイルス抗原に対する凝集体の比率を有する安定な製剤が確実となる。
【0053】
(免疫反応を刺激する方法)
各々の抗原またはワクチン製剤の投与量における抗原の量は、重大な、有害な副作用なしに強力な免疫反応を誘発する量として選択される。このような量は、どの特異的な抗原を使用するか、投与経路、および用いるアジュバントに応じて変化する。一般には、本発明の状況では、患者に投与する投与量は、長時間にわたって患者に有益な治療反応をもたらすのに十分でなければならず、または抗原に特異的な抗体の生成を誘発するのに十分でなければならない。したがって、特異的な抗原に対する免疫反応を誘発するのに、かつ/または疾患もしくは感染症からの症状および/もしくは合併症を軽減し、低減し、もしくは治療するのに十分な量の組成物を患者に投与する。これを遂行するのに十分な量を、「治療上有効な投与量」と定義する。
【0054】
実質的に純粋な形態のノロウイルス抗原では、各投与量は、製剤における各ノロウイルス抗原に対して、約1μgから10mg、好ましくは約2〜50μgを含むことが予想される。本発明の抗原製剤を使用する典型的な免疫化計画では、製剤を、各投与量が各抗原1〜100μgを含む、いくつかの投与量(例えば、1〜4投与量)で投与することができる。投与量は、組成物が生成する免疫学的活性および患者の状態、ならびに治療する患者の体重または体表面積によって決定する。投与量のサイズは、特定の患者における特定の組成物の投与に付随し得る、あらゆる有害な副作用の存在、性質、および程度によっても決定される。
【0055】
本発明の抗原およびワクチン製剤を、非粘膜の、または粘膜の経路によって投与してもよい。これらの投与には、非経口の注射(例えば、静脈内、皮下、および筋肉内)によるin vivoの投与、または、バッカル/舌下、直腸、経口、経鼻、局所(例えば、経皮および目薬)、膣内、肺内、動脈内、腹腔内、眼内、もしくは鼻腔内の経路などの他の伝統的な直接経路、あるいは直接特定の組織内が含まれ得る。あるいは、本発明のワクチンを、経口、局所、皮下、粘膜、静脈内、筋肉内、鼻腔内、舌下、経皮、真皮下、皮内などの様々な経路のいずれかによって、および坐剤によって投与してもよい。投与は、単に、パッチ、針、カテーテル、または関連の装置を用いた直接投与によって、単一の時間点で、または複数の時間点で遂行してもよい。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明の抗原およびワクチン製剤を、粘膜表面に投与する。粘膜表面による免疫化は、他の免疫化の経路に勝る多くの潜在的な利点を提供する。最も明らかな利点は、1)粘膜の免疫化は、投与に針または高度な訓練を受けた人員を必要とせず、2)免疫反応が、病原体が侵入した部位で、および全身的に生じることである(Isakaら、1999年;Kozlowskiら、1997年;Mesteckyら、1997年;Wuら、1997年)。
【0057】
さらなる一態様では、本発明は、1つ以上のノロウイルス抗原、少なくとも1つの有効なアジュバント、および/または少なくとも1つの送達剤を含む抗原またはワクチン組成物を、患者の粘膜表面に投与(好ましくは、鼻腔内または経口)することによって、IgAの粘膜性の免疫反応およびIgGの全身の免疫反応を誘発する方法を提供する。
【0058】
本発明は、本明細書上記に定義したノロウイルス抗原、および本明細書上記に定義した少なくとも1つのアジュバント、または少なくとも1つの送達剤の鼻腔内製剤を投薬するための手段の提供も企図するものである。投薬装置は、例えば、エアロゾルの送達系の形態をとってよく、単回投与量のみまたは多数の投与量を投薬するように配列されていてよい。このような装置は、定量のワクチンまたは抗原製剤を鼻道に送達する。適当な装置の他の例には、それだけには限定されないが、ドロッパ、スワブ、エアロゾライザー(aerosolizer)、空気吸入器(例えば、Valois Monopowder Nasal Administration Device、Bespak UniDose DP)、ネブライザー、および吸入器が含まれる。装置は、対象が鼻の孔中に製剤を吸入することを必要とする受動的な方法によって抗原性またはワクチン製剤を送達することができる。あるいは、装置は、投与量を鼻の孔中に供給または噴射することによって製剤を積極的に送達することができる。抗原製剤またはワクチンを、1つ以上のこのような装置によって一方または両方の鼻孔中に送達することができる。投与は、対象1人あたり2つの装置を含むことができる(鼻孔1つにつき1装置)。有効成分(ノロウイルス抗原)の実際の投与量は、約5〜1000μgである。好ましい実施形態では、抗原またはワクチン製剤を、鼻の通路近くに保持し、または通路内に挿入した製剤を含んでいる装置から鼻の通路内に速やかに沈着させることによって、鼻粘膜に投与する。
【0059】
本発明は、1つ以上のノロウイルス抗原に対する抗体を産生する方法も提供し、前記方法は、上記に記載した本発明のワクチンまたは抗原製剤を対象に投与することを含む。これら抗体は、当技術分野における日常的な方法によって、単離および精製することができる。ノロウイルス抗原に特異的な単離抗体を、診断上の免疫学的アッセイの開発に用いることができる。これらのアッセイを用いて、臨床サンプルにおいてノロウイルスを検出し、感染を引き起こす特定のウイルス(例えば、ノーウォーク、ヒューストン、スノーマウンテンなど)を同定することができる。あるいは、単離した抗体を、ノロウイルスウイルス感染が疑われる対象に投与して、受動免疫または短期免疫を付与することができる。
【0060】
上記に記載したように、本発明のワクチン製剤を対象に投与してノロウイルス感染の症状を治療することができる。ノロウイルス感染の症状は、当技術分野ではよく知られており、悪心、嘔吐、下痢、および胃痙攣が含まれる。さらに、ノロウイルスに感染した患者は、低度の発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、および疲労感を有することがある。本発明は、ノロウイルス感染に付随する少なくとも1つの症状を緩和および/または低減するように、本発明のワクチン製剤を対象に投与することによって、ノロウイルス感染を経験している対象における免疫反応を誘発する方法を包含する。症状の低減は、例えば、生活の質の評価、ノロウイルス感染またはさらなる症状の進行の減速、ノロウイルスの症状の重症度の低減、または好適なアッセイ(例えば、抗体の力価および/またはT細胞活性化アッセイ)を含めた、例えば、対象による自己評価によって、医師の評価によって、または好適なアッセイもしくは測定(例えば、体温)を行うことによって主観的または客観的に決定することができる。客観的な評価は、動物およびヒトの評価両方を含む。
【実施例】
【0061】
次に、本発明を、以下の実施例に記載する特定の実施形態を参考にしてさらに詳しく説明する。実施例は、単に本発明の説明を意図するものであり、決してその範囲を制限しようとするものではない。
【0062】
[実施例1]
(様々なノロウイルス抗原形態に対する免疫反応についての調査)
ワクチン製剤の有効性を調査するために、マイクロピペットによって液体懸濁液ワクチン製剤でマウスを鼻腔内(i.n.)免疫化した。マウスに、単回のワクチン投与量のみを与えた(初回抗原刺激)。
【0063】
実験用に、ワクチン製剤を3つ調製した。第1は100%凝集と呼び、VLPの天然の構造を破壊し、凝集を誘発する条件下でVLPを凍結乾燥することによって調製した。第2は100%完全(intact)であり、非凍結乾燥のVLPストックから100%天然の単分散のVLPを加えた、再水和した凍結乾燥のプラセボで調製した。第3の製剤は、50/50混合であり、先の2つの製剤を1:1の比で混合することによって、または〜50%完全および50%凝集のVLPを産生する条件下で凍結乾燥することによって作製する。完全な天然のVLPの構造上の状態および濃度を、サイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)および紫外部(UV)吸光度によってアッセイした。製剤の全タンパク質濃度(凝集体を含む)を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)溶解したタンパク質の定量的染色によって決定した。凝集/完全のパーセントを、全タンパク質に対する完全な天然VLPの比として計算した。
【0064】
【表1】
【0065】
この実験は、様々なノロウイルスVLP製剤に対するマウスにおける免疫反応を測定するものである。マウスの群(1群あたり5匹)に、表1に示した再水和した乾燥粉末製剤を1回鼻腔内(i.n.)ワクチン接種した。VLP含有製剤でワクチン接種した動物に、同量の全タンパク質を投与した。100%凝集(100%凝集したVLPタンパク質)、100%完全(100%天然、単分散のVLP)、50/50混合(単分散および凝集のVLPの1:1混合物)、無処置(naive)(VLPタンパク質なし)。i.n.免疫化後14日目にマウスを安楽死させ、頸部リンパ節および脾臓を回収し、in vitroの抗原特異的な細胞増殖アッセイ用に単一細胞懸濁液を調製した。これらのアッセイにおいては、頸部リンパ節細胞または脾細胞の反応をアッセイして、in vivo免疫化後の抗原に対する免疫原性反応を判定した。頸部リンパ節細胞または脾細胞を、天然の単分散VLP(天然のVLP、黒線)または熱変性したVLPタンパク質(ΔVLP、白線)のいずれかで再刺激し、各抗原の形態(100%凝集、100%完全、50/50混合、または無処置)からの細胞増殖の程度を、縦軸上に示すようにトリチウム標識したチミジンの取込み(CPM)によって測定した(図1、頸部リンパ節細胞;図2、脾細胞)。
【0066】
[実施例2]
(in vitro抗原特異的増殖アッセイ)
ワクチン製剤の効力をさらに調査するために、マウスを、液体懸濁液ワクチン製剤で腹腔内(i.p.)免疫化した。マウスに、単回のみのワクチンの投与量を与えた(初回抗原刺激)。
【0067】
実施例1と同様、マウスの群(1群あたり5匹)にワクチン接種をしたが、今回は表2に示す再水和した乾燥粉末製剤を1回腹腔内(i.p.)投与した。繰り返すと、VLP含有製剤でワクチン接種した動物に、同量の全タンパク質を投与した。100%凝集(100%凝集したVLPタンパク質)、100%完全(100%天然、完全なVLP)、50/50混合(完全および凝集のVLPの1:1混合物)、無処置(VLPタンパク質なし)。
【0068】
【表2】
【0069】
このアッセイでは、in vivo免疫化後のVLPに対する様々なネズミ細胞の反応を測定した。免疫化後14日目にマウスを安楽死させ、脾臓を回収し、単一細胞懸濁液を調製した。完全な天然のVLP(天然VLP、点線)、または熱変性したVLPタンパク質(ΔVLP、白線)のいずれかで脾細胞を再刺激し、各抗原の形態(100%凝集、100%完全、50/50混合、または無処置)からの細胞増殖の程度を、縦軸上に示すように(CPM)トリチウム標識したチミジンの取込みによって測定した(図3)。これらのデータは、ワクチン製剤において調製した様々な生物物理学的形態のVLPは、同程度のT細胞反応を誘発することを示している。
【0070】
[実施例3]
(VLP特異的ELISPOTアッセイ)
VLP特異的抗体分泌細胞(ASC)の反応を、実施例2に記載した様々なNV−VLP製剤で腹腔内免疫化したマウスから測定した。マウスの群(1群あたり5匹)を、表2に示した(実施例2)再水和した乾燥粉末製剤で1回i.p.ワクチン接種した。VLP含有製剤でワクチン接種した動物に、同量のタンパク質を投与した。100%凝集(100%凝集したVLPタンパク質)、100%完全(100%天然、完全なVLP)、50/50混合(完全および凝集のVLPの1:1混合物)、無処置(VLPタンパク質なし)。14日目にマウスを安楽死させ、頸部リンパ節を回収した。頸部リンパ節細胞を、天然の完全なVLPでコーティングしたELISPOTプレート上で一夜培養し、適当なHRPコンジュゲートした2次抗体を用いて、IgGまたはIgAいずれかに特異的なELISPOT用に発色させた(図4)。これらのデータは、3つのVLP抗原製剤は全て、抗原特異的なB細胞反応を誘発することを示している。100%凝集VLPで免疫化した群は最大の免疫反応を表した。
【0071】
[実施例4]
(VLP特異的ELISA)
血清IgGレベルを、様々なNV−VLP製剤でi.p.免疫化したマウスから測定した。マウスの群(1群あたり5匹)に、表2に示した(実施例2)再水和した乾燥粉末製剤を1回i.p.ワクチン接種した。VLP含有製剤でワクチン接種した動物に、同量の全タンパク質を投与した。100%凝集(100%凝集したVLPタンパク質)、100%完全(100%天然の、完全なVLP)、50/50混合(完全および凝集のVLPの1:1混合物)、無処置(VLPタンパク質なし)。14日目に血清を回収し、抗VLP特異的血清IgGに対してELISAによってアッセイした(図5)。これらのデータは、実施例3に示した結果と相関しており、3つのVLP抗原製剤は全て、抗原特異的なB細胞反応を誘発することを示している。繰り返すと、100%凝集VLPで免疫化した群は最大の免疫反応を表した。
【0072】
[実施例5]
(ウサギにおけるワクチン製剤)
Valois Monopowder Nasal Administration Deviceを用いて、ウサギに製剤を鼻腔内(i.n.)投与した。乾燥粉末製剤を、表3および4に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
[実施例6]
(マウスにおけるノロウイルスワクチン製剤の効力のアッセイ)
C57B16メスマウスを、0日目に、様々な希釈の再構成したノーウォークVLP乾燥粉末ワクチン(ノーウォークVLP、MPL、およびキトサンを含む)で腹腔内(i.p.)免疫化した。各動物に、示した製剤100μLを注射した。血清を毎週回収し、血清抗VLP IgGをELISAによって測定した。免疫化後3週間回収した血清に対する値を図6に示す。
【0076】
各個体のマウスに対する値を表し、バーは群の平均値を示す。血清抗VLP IgG値は、示したワクチンの投与量と相関していた。この実験設計を、ヒト臨床試験用にGMP製造したワクチンの放出に必要とされる効力アッセイとして、改良し、開発した(図6)。
【0077】
[実施例7]
(マウスにおける、液体対再構成したノロウイルス製剤の効力)
C57B16メスマウスを、0日目に、体積100μLの、キトサン、マンニトール、MPL、および様々な濃度のノーウォークVLP(表5)を含む製剤でi.p.免疫化した。乾燥粉末マトリックス(マンニトール、MPL、およびキトサン)10mg/mLを純水に可溶化し、特定の量の液体ノーウォークVLPを加えることによって、内部検量線を作成した(群1〜5)。一方、GMP VLPのロットを予め凍結乾燥し、次いで純水1.0mlに可溶化した(群6〜8)。14、21、および30日目にマウスから血清を回収し、血清抗ノーウォークVLP IgIをELISAによって測定した。
【0078】
【表5】
【0079】
各製剤に対する相対的な効力を以下の式:Inv Log(平均値−Y切片/勾配)を用いて計算した。効力を、製剤におけるVLP濃度に対してプロットし、マトリックスのバックグラウンド中に既知量のVLPを加えたものを用いて作成した検量線に関して報告する(図7)。示した結果は、3つの別々の血清回収時間点を表している。これらのデータは、乾燥粉末から再構成したノーウォークVLP製剤は、液体製剤よりも全体に高い効力を有することを示している。
【0080】
[実施例8]
(ウサギにおける乾燥粉末製剤の効力)
ニュージーランドシロウサギのメス43羽に、乾燥粉末中に製剤化したノーウォークVLP5μg(低)または25μg(高)のいずれか±MLPおよび±キトサンで、Valois monopowder Nasal Administration Deviceを用いて鼻腔内(i.n.)免疫化した。1群には、液体として製剤化した高投与量のVLPおよびMPLを投与し、筋肉内投与した(i.m.)。0日目および21日目に、ウサギにワクチン接種した。MLPを用いる場合は、VLPと同じ投与量を用いた(すなわち、ノーウォークVLP5μgおよびMPL5μg)。キトサンを用いる場合は、7mg/投与量であった。
【0081】
ノーウォークのVLPに特異的な血清IgG(ELISAによって決定して)を、図8に示す。各処置群に対する平均値を、21日目(左パネル、追加免疫化の投与の直前に回収)、および42日目(右パネル)に対して示す。値を、1Uを1μgと見積もり、VLP特異的IgGのU/mLで報告する。標準偏差をバーによって示す。ネガティブコントロール群(ウサギ3羽)および筋肉内免疫化群(4羽)以外は、処置群の動物は全て6羽であった。これらのデータは、一般的に、VLP投与量が高いほど、より高い血清抗VLP IgGレベルがもたらされることを示している。特にキトサンは鼻腔内ワクチンに対する反応を増強する。i.m.免疫化した群は、最も大きな反応を示した。しかし、鼻腔内免疫化した群におけるVLP特異的IgGレベルは、やはりかなり強力であった。
【0082】
[実施例9]
(ウサギに鼻腔内投与した液体対乾燥ノロウイルス製剤の効力)
ニュージーランドシロウサギのメスに、乾燥粉末または液体のいずれかに製剤化したノーウォークVLP50μg+MLP50μg+キトサン14mgで、Valois monopowder Nasal Administration Deviceを用いて鼻腔内免疫化した。ワクチンの内容は、物理的状態以外は同一であった。0日目および21日目(0週目および3週目)に免疫化し、最初のワクチン接種後3週間および6週間に再び、追加免疫前に血清を回収した。ノーウォークVLPに特異的な血清IgGをELISAによって測定し、結果を図9に示す。
【0083】
群平均を示し、バーは標準偏差を表す。乾燥粉末免疫化群のウサギは6羽であり、液体免疫化群のウサギは10羽であった。ネガティブコントロールを表すウサギは8羽であった。3週間では液体と乾燥粉末との免疫化群間では違いは殆んど見られなかった。しかし、最初の免疫化6週間後に、乾燥粉末製剤で免疫化したウサギは、液体免疫化群に比べて優れた血清抗VLP IgG反応を有していた。
【0084】
[実施例10]
(ノロウイルス乾燥粉末製剤の安定性)
乾燥粉末VLP製剤の安定性を調査するために、(薬物生成物10mgあたり)遺伝子型IのVLP25μgの溶液を、MPL25μg、キトサングルタメート700μg、マンニトール1.475mg、およびショ糖1.475mgと混合することによってバルクの薬物生成物を調製した。溶液を凍結乾燥し、さらなるキトサングルタメート6.3mg(薬物生成物10mgあたり)と混和し、名目上10mgの乾燥粉末でBespak unidose装置中に充填し、乾燥剤のカプセルとともに密封したホイル袋に貯蔵した。全VLP含量をImperial染色したSDS−PAGEおよびスキャニングデンシトメトリーを用いて測定し、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて完全なVLP含量を定量した。これらの測定値は、実験誤差内では、12カ月の期間にわたって全VLPまたは完全なVLPのいずれかにおいて変化が検出されなかったことを示していた(図10)。SDS−PAGEの結果と比べた場合、SECによるVLPタンパク質の回復が低いのは凝集のためであったと仮定すると、%凝集の計算値は時間とともに増大せず、むしろ12カ月の貯蔵を通して一定のまま、または低減した。タンパク質にいっそう一般的な安定性の問題の一つは、貯蔵での凝集の増大である。図10における結果に基づくと、製剤は、完全なVLPの安定な百分率をもたらし、生成物を製造し、少なくとも1年間にわたって使用することができると結論付けることができる。
【0085】
[実施例11]
(複数のノロウイルス抗原)
C57B1/6マウス(メス、9週齢)8匹を、キトサン0.7mg、MPL2.5μg、およびマンニトール0.3mgを水で0.1mLにして製剤化したノーウォークVLP2.5μgで、0日目および14日目に腹腔内(IP)免疫化した。コントロールのマウス2匹を食塩水で免疫化した。28日目および49日目に、これらを、キトサン0.7mg、MPL2.5μg、およびマンニトール0.3mgを水で0.1mLにして製剤化したノーウォークVLP2.5μg+ヒューストンVLP2.5μgで再びIP免疫化した。コントロールのマウスには再び食塩水を与えた。血清サンプルを、5週目(35日目)に開始して毎週回収し、ノーウォークVLPまたはヒューストンVLPとの反応性に対してELISAによって分析した。ノーウォークだけの混合物で追加免疫した時間を、細矢印によって示し、ノーウォーク+ヒューストンVLP混合物で追加免疫した時間を太矢印で示す。U/mL(1UをIgG1μgに近似させる)における、ノーウォークVLP(上パネル)およびヒューストンVLP(下パネル)に特異的な個々の血清IgG反応を示す。平均値をバーによって示す。抗ノーウォーク反応は、0日目および14日目(0週目および2週目)の先の2回の免疫化によって非常に強力であったので、Y軸のスケールが異なることに留意されたい。しかし、ヒューストンVLPに対する反応は極めて強力であり、追加免疫後2週目に大幅な増大が出現している。これらのデータは、同じ免疫化混合物におけるノロウイルスVLPの様々な抗原株に対して特異的な免疫反応が産生され得ることを実証するものである(図11)。
【0086】
[実施例12]
(様々なノロウイルス抗原に対する免疫反応)
C57B16メスマウスを、0日目および14日目に、ノーウォークVLP25μg、ヒューストンVLP25μg、またはノーウォークおよびヒューストンVLP各25μgの組合せで、腹腔内(IP)免疫化した。血清を毎週回収し、血清抗VLP IgGをELISAによって測定した。免疫化後4週に回収した血清に対する値を図12に示す。
【0087】
免疫化のVLP含量をX軸上に示す。各個体のマウスに対する値を表し、バーは群平均を示す。抗体レベルをU/mLで表し、1Uを血清IgGの1μgに近似させる。左パネルにおける値は捕捉剤としてノーウォークVLPを用いて決定したものであり、右パネル上の値を測定するためにヒューストンVLPを用いてELISAプレートをコーティングした。これらのデータは、ノーウォークVLPで免疫化しても、ヒューストンVLPを認識することができる血清抗体をもたらすことはなく、または逆も同じであることを示している。
【0088】
[実施例13]
(ショ糖およびキトサンの混合物は乾燥粉末製剤においてノロウイルスVLP構造を保存する)
以下の実験は、凍結乾燥前溶液における、ショ糖、キトサン、およびマンニトールの、単独または組合せの、凍結乾燥中の天然のノーウォークVLPの4次構造に対する作用を調べたものである。表6は、対象の成分の凍結乾燥前溶液濃度、混合物の全体積、および対応する重量比を示すいくつかの実験の複合である。溶液は全て手操作で回転し、穏やかにボルテックスして均一にし、次いで液体窒素中シェル凍結し、約30から60時間までの範囲の時間サイドアーム付き容器を用いてユニットの外側に凍結乾燥した。
【0089】
【表6】
【0090】
表7は、表6に示した凍結乾燥した試料の、サイズ排除−高速液体クロマトグラフィー(SE−HPLC)分析の結果を示している。凍結乾燥した試料を水で再構成し、SE−HPLCによって分析した。未処理のNV−VLPを同時に分析し、再構成した試験試料のNV−VLP含量を定量するための参照基準として用いた。UVおよび蛍光検出器の両方を定量に用いた(示したデータは、蛍光検出器からのものである)。SE−HPLCを、Superose(商標)6 10−300カラムを用いて行い、移動相はリン酸ナトリウム10mM、クエン酸10mM、pH5、およびNaCl500mMからなり、流速は0.5mL/分であった。溶出したピークの積分面積を用いてタンパク質濃度を定量した。「VLP」は、約15分にカラムから溶出したピークであり、あらゆる先行するショルダーおよび/またはピークテイルは同時に分析した参照基準のNV−VLPのおよその溶出時間ウインドウ内にあった。約32分にカラムから溶出したVLPフラグメントは、VLPの不安定化および結果としての分解に起因する高度に安定な単一の種である。中間体およびより小さなフラグメントは観察されなかった。
【0091】
結果は、ショ糖およびキトサンの組合せは、最高の(約100%の回復)凍結乾燥後物(試料LG10−LG12)を含む、広範囲の天然の単分散NV−VLPの回復をもたらすことを示していた。さらに、これらのサンプルからのNV−VLP溶出ピークの形状は、未処理のNV−VLPの参照基準と同一であり、天然構造が高度に保存されていたことを示していた。ショ糖のみを含む試料は、参照基準に類似のピークの形状を表したが、NV−VLP回復は低かった(約60%の回復(試料LG13))。マンニトールのみを含む試料は、VLPの殆んど完全な凝集をもたらした(試料LE1−LE6およびLIG1d−S3)。NV−VLP構造に対するマンニトールの有害作用は、キトサンおよびショ糖の存在によって対抗された(試料LIG1d−S2およびLIG1d−SB)。
【0092】
【表7】
【0093】
[実施例14]
(鼻腔内免疫化したマウスにおけるノロウイルス特異的長寿命形質細胞および記憶B細胞の誘発)
A.ノーウォークVLP特異的長寿命形質細胞
BALB/cマウスを、ノロウイルスVLPおよびアジュバントで鼻腔内免疫化した。無処置のコントロールにはアジュバント単独を投与した。免疫化114日後、両群のマウスから脾臓、頸部リンパ節、および骨髄を収集した。組織を収集した日(0日目)、細胞を、ELISPOTアッセイを用いて抗原特異的な抗体分泌細胞(ASC)の存在に対してアッセイした。結果を、様々な組織に対して図13A〜Cに表す。これらの組織において免疫グロブリン(IgG、IgA、およびIgM)が検出されると、ノロウイルス特異的長寿命形質細胞の存在が示される。
【0094】
B.ノーウォークVLP特異的記憶B細胞
ノーウォークVLPで鼻腔内免疫化したマウスからノーウォークVLP特異的記憶B細胞の存在を検出するためのin vitroのアッセイを開発した。様々なリンパ組織、または全血(末梢血単核細胞、脾細胞、リンパ節細胞など)を、このアッセイを用いて記憶B細胞の存在に対してアッセイすることができる細胞の供給源として使用することができる。
【0095】
この実験では、免疫化した動物および無処置の動物(コントロール)から脾臓を収集および処理し、脾細胞を、ノーウォークVLP(20μg/ml)の存在下または非存在下(コントロール)で4日間培養した。組織を収集する日(0日目)に最初のVLP特異的ELISPOTアッセイを行ってASC(上記セクションAを参照されたい)のバックグラウンドレベルを確立した。培養4日後、細胞を回収し、ELISPOTアッセイで再びアッセイしてVLP特異的ASCの数を定量した。0日目と4日目のアッセイとの間のVLP特異的ASCの数における違いが、抗原特異的記憶B細胞の集団を表している。この実験の結果を、図14AおよびBに示す。
【0096】
[実施例15]
(ウサギにおけるノロウイルス記憶B細胞反応)
ニュージーランドシロウサギのメス2羽を、Valois Mark4鼻腔内送達装置中に充填した乾燥粉末10mgあたりノーウォークVLP25μg、MPL25μg、マンニトール1.5mg、ショ糖1.5mg、およびキトサン7.0mgからなる乾燥粉末製剤で鼻腔内免疫化した。ウサギ2羽には、14日間隔で全3回の免疫化を与えた。この実験では、非免疫化のメスウサギを無処置のコントロールとして用いた。
【0097】
A.ウサギ組織の回収および処理
末梢血単核細胞(PBMC):凝固を防ぐためにEDTAを含む採血管に、ウサギから全血(〜50mL)を得た。全血を滅菌D−PBSで1:3に希釈し、希釈した全血〜35mLを、50mL滅菌遠心管中のリンパ球分離液15mL上に重層した。管を室温で20分間、800×gで遠心分離した。PBMCを含むバフィーコート層を、5mL滅菌ピペットを用いて注意深く除去し、細胞をD−PBSで2回洗浄した。必要に応じて、汚染性の赤血球をACK溶解によって除去した。細胞を、RPMI−1640−10%FBS(1640−C)に再懸濁し、トリパン排除法を用いて血球計算機で計数した。
【0098】
腸間膜リンパ節細胞:各ウサギを安楽死させた後、別々に、リンパ節を無菌的に回収した。組織を、〜10mLのRPMI−1640−無血清(1640−NS)を含むプラスチック製滅菌ペトリ皿に維持した。リンパ節を、滅菌乳棒を用いて滅菌網目スクリーンを押して通過させて組織を分散させ、リンパ節細胞の単一細胞懸濁液を得た。細胞を回収し、1640−NSで2回洗浄し、最後に70μmの滅菌ろ紙を通してろ過して凝集塊および残骸を除去した。細胞を1640−Cに再懸濁し、トリパンブルー排除法を用いて血球計算機で計数した。
【0099】
脾細胞:安楽死後、各ウサギから脾臓を無菌的に得た。脾臓を1640−NS約10mLを含む滅菌ペトリ皿に配置した。22ゲージの滅菌針およびシリンジを用いて、培地を組織中に繰り返し注入して脾皮膜を破壊し、細胞を浮遊させた。次いで、滅菌ピンセットを用いて残りの組織フラグメントを細かく裂いて引き離した。ペトリ皿の内容物を滅菌遠心管に移し、細胞懸濁液および破壊した脾臓組織を6〜8分間寝かせて、大きな組織フラグメントを沈澱させた。単一細胞の懸濁液を第2の滅菌遠心管に移し、細胞を1640−NSで1回洗浄した。脾細胞製剤における赤血球を、ACK溶解(ACKバッファー8mL、8分、室温)によって除去し、細胞を1640−NSでもう1回洗浄し、最後に70μmの滅菌ろ紙を通してろ過して凝集塊および残骸を除去した。最終の細胞ペレットを1640−完全培地に再懸濁し、トリパンブルー排除法を用いて血球計算機で計数した。
【0100】
骨髄細胞:安楽死後、個々のウサギから下腿における脛骨を除去した。骨髄細胞を除去するには、骨鋸を用いて骨の終端を無菌的に切り落とし、骨の内容物を、1640−NS培地を繰り返し注入することによって流し出した。骨髄細胞をピペットで繰り返し吸い上げ、吐き出して、細胞の凝集塊をばらばらにし、分散させた。細胞を1640−NSで1回洗浄し、赤血球をACKで溶解し、細胞を1640−NSでもう1回洗浄した。最後に、細胞を70μmの滅菌ろ紙を通してろ過して凝集塊および残骸を除去した。最終の細胞ペレットを1640−完全培地に再懸濁し、トリパンブルー排除法を用いて血球計算機で計数した。
【0101】
B.ELISPOTアッセイ
96ウェルのMillipore PVDFフィルタープレートを予め湿潤し、洗浄した後、40μg/mlの濃度の天然ノーウォークVLPの滅菌溶液で最終体積50μl/ウェルにコーティングした。プレートを4℃で一夜インキュベートし、D−PBSで洗浄し、1640−Cを添加してブロックした。免疫化したウサギからの、および無処置のコントロールのウサギからの、腸間膜リンパ節細胞、脾細胞、および骨髄細胞を、様々な濃度で(1×106、5×105、2×105、および1×105細胞/ウェル)ウェルに加え、プレートを37℃で一夜インキュベートした。プレートをPBS−Tweenで徹底的に洗浄し、ウサギIgGおよびIgAに特異的な2次試薬をウェルに加え、室温でさらに2時間インキュベートした。広範に洗浄した後、プレートをDABクロマゲン(chromagen)/基質で発色させ、ELISPOTプレートリーダーで読み取った。無処置のコントロールの動物からのウェル上に表れたスポットを、実験群から差し引いた。データを、ノーウォークVLP特異的抗体分泌細胞(ASC)として表し、1×106細胞あたりで標準化した。
【0102】
C.ノーウォークVLP特異的記憶B細胞アッセイ
上記に記載した様々な組織から単離したリンパ細胞を、ノーウォークVLP(10μg/mL)存在下、1640−C培地に1mLあたり5×106細胞の密度で再懸濁した。細胞を1mLの体積で24ウェルプレート中、37℃で4日間インキュベートした。VLP特異的ELISPOTアッセイを、培養時にこれらの細胞に対して行った。培養4日後、細胞を収集し、1640−NS培地で2回洗浄し、1640−完全培地に再懸濁し、トリパンブルー排除法を用いて血球計算機で計数した。細胞を、ノーウォークVLP特異的ELISPOTアッセイでもう1回試験した。組織収集日に行ったELISPOTアッセイから得たデータを、0日目(バックグラウンド)のASC活性と呼ぶ。0日目の時間点に検出されたあらゆるスポットを、活発に分泌している形質細胞または長寿命形質細胞(LLPC)と仮定した。4日間培養細胞に対して行ったELISPOTアッセイから得られたデータを4日目ASC活性と呼び、記憶B細胞の活性を、4日目ASC活性と0日目ASC活性との間の違いによって表す。
【0103】
D.ノーウォークVLP特異的記憶B細胞は鼻腔内免疫化したウサギの末梢血に存在する
上記に記載したノーウォークVLPを含む乾燥粉末製剤ワクチンで、3回鼻腔内免疫化した最後の141日後、免疫化したウサギ(RB735、RB1411)2羽から全血を得た。非免疫化の無処置のウサギからも血液を得た。血液を処理して、末梢血単核細胞(PBMC)を得、PBMCをノーウォークVLP特異的記憶B細胞アッセイ(上記セクションC)に配置した。結果を図15に示す。左パネルは、組織収集時(0日目ASC)の最初のELISPOTアッセイの結果を示す。右パネルは、ノーウォークVLPと培養4日後のELISPOTアッセイの結果を示す(4日目ASC)。
【0104】
0日目のELISPOTの結果(図15、左パネル)は、ノーウォークVLP乾燥粉末ワクチンで最後に追加免疫した約140日後には、末梢血にVLP特異的形質細胞は残存しないことを図示している。図15の右パネルは、ノーウォークVLPとin vitroで4日培養したPBMCからのELISPOTアッセイの結果を示している。免疫化した2羽のウサギでは、おそらく記憶B細胞の亜集団であるPBMCの著しい数が、活性のIgG分泌性ノーウォークVLP特異的形質細胞に成熟する。IgA分泌性記憶B細胞に対するアッセイを行ったが、PBMCの集団でIgG分泌性記憶B細胞だけが検出された。予想通り、無処置の動物は抗原特異的記憶B細胞を示さなかった。このようにVLP特異的記憶B細胞は、3回の鼻腔内免疫化の最後の後140+日のウサギの末梢循環に見出された。
【0105】
E.ノーウォークVLP特異的記憶B細胞は鼻腔内免疫化したウサギの脾臓に存在する
ワクチン免疫化した2羽のウサギ、および非免疫化のコントロールのウサギの脾臓から脾細胞を得た。ノーウォークVLP特異的記憶B細胞アッセイ(上記に記載)を、これらの細胞に対して行い、結果を図16に示す。PBMCの集団に観察されるように、0日目のELISPOTアッセイでは、抗原特異的な形質細胞が脾臓には存在しないことが示された(図16、左パネル)。しかし、ノーウォークVLPとin vitroで4日インキュベート後は、IgG分泌性ノーウォークVLP特異的記憶B細胞が脾細胞集団において明らかである。このように、脾臓は、鼻腔内免疫化後の記憶B細胞の遊走に対する一部位を代表している。
【0106】
F.ノーウォークVLP特異的長寿命形質細胞の集団は骨髄に見出されるが、記憶B細胞は存在しない
実験用ウサギの脛骨から骨髄細胞を得、長寿命形質細胞および記憶B細胞の存在に対してアッセイした。結果を図17に表す。図17の左パネルは、ウサギ1411は、骨髄に著しい集団の抗原特異的形質細胞を有していたことを示している。免疫化後、骨髄に遊走し、そこに長期間存在する形質細胞を、長寿命形質細胞(LLPC)と呼ぶ。ウサギ735は、高数値のLLPCを示さなかった。無処置のウサギの骨髄にはLLPCは見出されなかった。骨髄細胞を記憶B細胞アッセイで培養し、記憶B細胞の存在に対して再試験した。図17の右パネルは、骨髄には抗原特異的記憶B細胞が本質的に存在しないことを示している。このように、長寿命形質細胞は骨髄に遊走するが、記憶B細胞はそこに見出されない。
【0107】
G.IgG分泌性およびIgA分泌性ノーウォークVLP特異的記憶B細胞は両方とも鼻腔内免疫化したウサギの腸間膜リンパ節に存在する
実験用ウサギ全てから腸間膜リンパ節を得て、単離した細胞をLLPCおよび記憶B細胞に対してアッセイした。このアッセイからの結果を図18Aに示す。骨髄以外の、分析した殆どのリンパ組織と同様、腸間膜節にLLPCは見出されなかった(図18A、左パネル)。ノーウォークVLPとのin vitroのインキュベート後に、非常に高い数値のIgG分泌性VLP特異的記憶B細胞が、腸間膜リンパ節の集団に明らかであった(図18A、右パネル)。腸間膜リンパ節に観察された記憶B細胞の数は、アッセイした他のリンパ組織に観察されたものよりも有意に高かった。
【0108】
多くの研究者たちが、鼻の通路または腸などの粘膜の誘導部位を免疫化することで、いわゆる粘膜免疫反応を誘発できることを示していた。この反応は、一般的には、粘膜のリンパ組織に局在しているIgA+B細胞およびIgA分泌性形質細胞の存在を特徴とする。この理由から、腸間膜リンパ節細胞を、また、IgA分泌性LLPCまたは記憶B細胞の存在に対してアッセイした。これらのアッセイからの結果を図18Bに示す。繰り返すと、IgA+LLPCは腸間膜リンパ節の集団には見出されなかった(図18B、左パネル)。しかし、IgA分泌性記憶B細胞はこの組織に検出された(図18B、右パネル)。このように、乾燥粉末ノーウォークVLPワクチン製剤での鼻腔内免疫化により、IgG+およびIgA+両方の抗原特異的記憶B細胞の、腸関連のリンパ組織への遊走をもたらす粘膜免疫反応が誘発される。ノーウォークワクチン製剤での免疫化が誘発する抗原特異的記憶B細胞の生成は、ワクチンの有効性の考えられる指標である。記憶B細胞の存在は、長寿命免疫の1つのマーカーである。
【0109】
H.VLP特異的CD4+記憶T細胞
免疫化したウサギから収集した脾細胞を、完全なノーウォークVLPで再刺激し、細胞の増殖の度合いを、縦軸上に示すように(CPM)トリチウム標識したチミジンの取り組みによって測定した(図19)。左パネルは、脾細胞の非分画化集団の細胞の増殖を示し、右パネルはCD4+T細胞の細胞集団を示す。
【0110】
本発明は、本発明の個々の態様を単に例示するものとして企図される、記載される特定の実施形態によって範囲を限定しようとするものではなく、機能上同等の方法および構成成分は本発明の範囲内である。実際、前述の説明および添付の図面から、当業者には、わずかな日常的実験を用いれば、本明細書に示し、記載したものの他にも、本発明の様々な改変は明らかになるであろう。そのような改変や等価物は添付の特許請求の範囲内にあるものとする。
【0111】
本明細書において言及した全ての出版物、特許、および特許出願は、各個々の出版物、特許、または特許出願が、特に、かつ個々に、本明細書に参照として組み入れられるように示されるがごとく、本明細書において本明細書中に同程度に参照として組み入れられる。
【0112】
本明細書における参考文献の引用または考察は、このようなものが本発明に対する先行技術であることを認めるものと解釈してはならない。
【0113】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのノロウイルス抗原および少なくとも1つのアジュバントを含む組成物。
【請求項2】
前記ノロウイルス抗原がペプチド、タンパク質、ノロウイルスウイルス様粒子(VLP)、変性したVLP、カプシドモノマー、カプシドマルチマー、凝集体、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ノロウイルス抗原がノロウイルス遺伝子型Iおよび遺伝子型IIウイルス株からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ノロウイルスVLPが、ノロウイルス核酸配列を用いた発現系で生成される組換えVLPである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記核酸配列がカプシドタンパク質をコードする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カプシドタンパク質がVP1およびVP2からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記VLPが1価VLPである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記VLPが多価VLPである、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記多価VLPが遺伝子型Iおよび遺伝子型IIのノロウイルスからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記発現系が組換え細胞発現系またはバキュロウイルス感染細胞発現系である、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞発現系が、酵母、細菌、昆虫、および哺乳動物の発現系からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
第2のノロウイルス抗原をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1および第2のノロウイルス抗原が、異なる遺伝子型由来の1価VLPである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
送達剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記送達剤が、抗原の取込みを増強し、貯蔵効果をもたらし、または送達部位で抗原保持時間を増大するように機能する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記送達剤が生物付着剤である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記生物付着剤が粘膜付着剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記粘膜付着剤が、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸コンドロイチン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン)、炭水化物ポリマー(例えば、ペクチン、アルギン酸塩、グリコーゲン、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、スタキオース、ウヌリン、デキストリン、デキストラン)、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖(ムチン、および他のムコ多糖を含む)、ポリイオン、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、タンパク質(例えば、レクチン、線毛タンパク質)、およびデオキシリボ核酸からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記粘膜付着剤が多糖である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記多糖が、キトサン、キトサン塩、またはキトサン塩基である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ノロウイルス抗原がノロウイルスVLPであり、前記アジュバントがMPLであり、前記送達剤がキトサン、キトサン塩、またはキトサン塩基である、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
前記アジュバントが、トール様受容体(TLR)作用薬、一リン酸化脂質A(MPL)、合成脂質A、脂質Aミメティックまたは類似体、アルミニウム塩、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、ポリホスファゼン、乳剤、ビロゾーム、コクリエート、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマー粒子、微粒子、およびリポソームからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記アジュバントがトール様受容体(TLR)作用薬である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記アジュバントがMPLである、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
アジュバントが毒素アジュバントではない、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が液体製剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が粉末製剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が直径約10から500マイクロメートルまでの平均粒子サイズを有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
1つ以上の投与量の前記組成物を投与するための1つ以上の装置と組み合わせた、請求項27に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項30】
前記1つ以上の投与量が単位投与量である、請求項29に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項31】
前記装置が単回使用経鼻投与装置である、請求項29に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項32】
前記組成物が前記装置に貯えられている、請求項29に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の組成物を含む抗原製剤。
【請求項34】
請求項1に記載の組成物を含むワクチン製剤。
【請求項35】
前記製剤を、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、真皮下、および経皮の投与経路からなる群から選択される経路によって対象に投与する、請求項33または34に記載の製剤。
【請求項36】
前記投与経路が筋肉内である、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
前記粘膜の投与経路が、鼻腔内、経口、または膣内である、請求項35に記載の製剤。
【請求項38】
前記製剤が、鼻内噴霧、点鼻薬、または乾燥粉末の形態である、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
鼻の通路に近接して保持されまたは鼻の通路中に挿入される製剤の装置から鼻の通路内に速やかに沈着させることによって製剤を鼻粘膜に投与する、請求項38に記載の製剤。
【請求項40】
前記製剤を一方または両方の鼻孔に投与する、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
前記ノロウイルス抗原が約0.01%(w/w)から約80%(w/w)までの濃度で存在する、請求項33または34に記載の組成物。
【請求項42】
前記ノロウイルス抗原の投与量が、投与1回あたり約1μgから約100mgまでの量で存在する、請求項33または34に記載の組成物。
【請求項43】
前記ノロウイルス抗原の投与量が、投与1回あたり約1μgから約1mgまでである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記ノロウイルス抗原の投与量が、投与1回あたり約1μgから約500μgまでである、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記ノロウイルス抗原の投与量が、投与1回あたり約1μgから約100μgまでである、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
請求項33に記載の抗原製剤を対象に投与することを含む、ノロウイルス抗原に対する抗体を産生する方法。
【請求項47】
ノロウイルス感染を経験している対象における免疫反応を誘発する方法であって、請求項34に記載のワクチン製剤を対象に投与することを含み、前記免疫反応が治療的である、方法。
【請求項48】
ノロウイルス抗原製剤を作製する方法であって、
(a)ショ糖とキトサンとの質量比が約0:1から約10:1までである、ノロウイルス抗原、ショ糖、およびキトサンを含む凍結乾燥前溶液を調製することと、
(b)前記溶液を凍結することと、
(c)前記凍結溶液を30〜72時間凍結乾燥することであって、凍結乾燥最終生成物が、ある百分率の凝集形態の前記ノロウイルス抗原を含むことと、
を含む方法。
【請求項49】
前記凍結乾燥前溶液が増量剤をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記増量剤がマンニトールである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記凍結乾燥前溶液がマンニトールおよびノロウイルス抗原からなり、前記凝集したノロウイルス抗原の百分率が90%を超える、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ショ糖とキトサンとの前記質量比が約2:1から約10:1までであり、前記凝集したノロウイルス抗原の百分率が約0%から約50%までである、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
ショ糖とキトサンとの前記重量比が約0:1であり、前記凝集したノロウイルス抗原の百分率が70%を超える、請求項48に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも1つのノロウイルス抗原および少なくとも1つのアジュバントを含む組成物。
【請求項2】
前記ノロウイルス抗原がペプチド、タンパク質、ノロウイルスウイルス様粒子(VLP)、変性したVLP、カプシドモノマー、カプシドマルチマー、凝集体、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ノロウイルス抗原がノロウイルス遺伝子型Iおよび遺伝子型IIウイルス株からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ノロウイルスVLPが、ノロウイルス核酸配列を用いた発現系で生成される組換えVLPである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記核酸配列がカプシドタンパク質をコードする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カプシドタンパク質がVP1およびVP2からなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記VLPが1価VLPである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記VLPが多価VLPである、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
前記多価VLPが遺伝子型Iおよび遺伝子型IIのノロウイルスからなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記発現系が組換え細胞発現系またはバキュロウイルス感染細胞発現系である、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞発現系が、酵母、細菌、昆虫、および哺乳動物の発現系からなる群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
第2のノロウイルス抗原をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記第1および第2のノロウイルス抗原が、異なる遺伝子型由来の1価VLPである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
送達剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記送達剤が、抗原の取込みを増強し、貯蔵効果をもたらし、または送達部位で抗原保持時間を増大するように機能する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記送達剤が生物付着剤である、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記生物付着剤が粘膜付着剤である、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記粘膜付着剤が、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸コンドロイチン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン)、炭水化物ポリマー(例えば、ペクチン、アルギン酸塩、グリコーゲン、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、スタキオース、ウヌリン、デキストリン、デキストラン)、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖(ムチン、および他のムコ多糖を含む)、ポリイオン、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、タンパク質(例えば、レクチン、線毛タンパク質)、およびデオキシリボ核酸からなる群から選択される、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記粘膜付着剤が多糖である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記多糖が、キトサン、キトサン塩、またはキトサン塩基である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ノロウイルス抗原がノロウイルスVLPであり、前記アジュバントがMPLであり、前記送達剤がキトサン、キトサン塩、またはキトサン塩基である、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
前記アジュバントが、トール様受容体(TLR)作用薬、一リン酸化脂質A(MPL)、合成脂質A、脂質Aミメティックまたは類似体、アルミニウム塩、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、ポリホスファゼン、乳剤、ビロゾーム、コクリエート、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマー粒子、微粒子、およびリポソームからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記アジュバントがトール様受容体(TLR)作用薬である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記アジュバントがMPLである、請求項22に記載の組成物。
【請求項25】
アジュバントが毒素アジュバントではない、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が液体製剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が粉末製剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が直径約10から500マイクロメートルまでの平均粒子サイズを有する、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
1つ以上の投与量の前記組成物を投与するための1つ以上の装置と組み合わせた、請求項27に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項30】
前記1つ以上の投与量が単位投与量である、請求項29に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項31】
前記装置が単回使用経鼻投与装置である、請求項29に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項32】
前記組成物が前記装置に貯えられている、請求項29に記載の乾燥粉末組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の組成物を含む抗原製剤。
【請求項34】
請求項1に記載の組成物を含むワクチン製剤。
【請求項35】
前記製剤を、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、皮内、真皮下、および経皮の投与経路からなる群から選択される経路によって対象に投与する、請求項33または34に記載の製剤。
【請求項36】
前記投与経路が筋肉内である、請求項35に記載の製剤。
【請求項37】
前記粘膜の投与経路が、鼻腔内、経口、または膣内である、請求項35に記載の製剤。
【請求項38】
前記製剤が、鼻内噴霧、点鼻薬、または乾燥粉末の形態である、請求項37に記載の製剤。
【請求項39】
鼻の通路に近接して保持されまたは鼻の通路中に挿入される製剤の装置から鼻の通路内に速やかに沈着させることによって製剤を鼻粘膜に投与する、請求項38に記載の製剤。
【請求項40】
前記製剤を一方または両方の鼻孔に投与する、請求項39に記載の製剤。
【請求項41】
前記ノロウイルス抗原が約0.01%(w/w)から約80%(w/w)までの濃度で存在する、請求項33または34に記載の組成物。
【請求項42】
前記ノロウイルス抗原の投与量が、投与1回あたり約1μgから約100mgまでの量で存在する、請求項33または34に記載の組成物。
【請求項43】
前記ノロウイルス抗原の投与量が、投与1回あたり約1μgから約1mgまでである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記ノロウイルス抗原の投与量が、投与1回あたり約1μgから約500μgまでである、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
前記ノロウイルス抗原の投与量が、投与1回あたり約1μgから約100μgまでである、請求項42に記載の組成物。
【請求項46】
請求項33に記載の抗原製剤を対象に投与することを含む、ノロウイルス抗原に対する抗体を産生する方法。
【請求項47】
ノロウイルス感染を経験している対象における免疫反応を誘発する方法であって、請求項34に記載のワクチン製剤を対象に投与することを含み、前記免疫反応が治療的である、方法。
【請求項48】
ノロウイルス抗原製剤を作製する方法であって、
(a)ショ糖とキトサンとの質量比が約0:1から約10:1までである、ノロウイルス抗原、ショ糖、およびキトサンを含む凍結乾燥前溶液を調製することと、
(b)前記溶液を凍結することと、
(c)前記凍結溶液を30〜72時間凍結乾燥することであって、凍結乾燥最終生成物が、ある百分率の凝集形態の前記ノロウイルス抗原を含むことと、
を含む方法。
【請求項49】
前記凍結乾燥前溶液が増量剤をさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記増量剤がマンニトールである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記凍結乾燥前溶液がマンニトールおよびノロウイルス抗原からなり、前記凝集したノロウイルス抗原の百分率が90%を超える、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
ショ糖とキトサンとの前記質量比が約2:1から約10:1までであり、前記凝集したノロウイルス抗原の百分率が約0%から約50%までである、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
ショ糖とキトサンとの前記重量比が約0:1であり、前記凝集したノロウイルス抗原の百分率が70%を超える、請求項48に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2010−505766(P2010−505766A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530639(P2009−530639)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/079929
【国際公開番号】WO2008/042789
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(507028479)リゴサイト ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/079929
【国際公開番号】WO2008/042789
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(507028479)リゴサイト ファーマスーティカルズ,インコーポレイテッド (6)
【Fターム(参考)】
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