説明

ハイドロタルサイト型粒子粉末、農業フィルム用保温剤、農業フィルム用マスターバッチ及び農業用フィルム

【課題】 本発明は、農業フィルム用保温剤に要求される透明性と、樹脂への分散性やハンドリング共に高いレベルで両立したハイドロタルサイト型粒子粉末からなる農業フィルム用保温剤に関するものである。
【解決手段】 吸油量が35ml/100g以下で、吸油量/板面径の値が140〜190であることを特徴とするハイドロタルサイト型粒子粉末であって、該粒子粉末からなる農業フィルム用保温剤、及び当該農業フィルム用保温剤を含有する農業用フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用フィルムに含有させた場合に優れた保温性と透明性を示す農業フィルム用保温剤、該化合物を有効成分とする農業フィルム用マスターバッチ及び農業用フィルムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、農作物のハウスやトンネル栽培等に合成樹脂を用いた農業用フィルムが広く使用されている。これらに用いる農業用フィルムは昼間に太陽光線をハウス、トンネル内に高い透過率で透過させる一方、夜間には地面や植物から放出される赤外線を吸収や反射等により、ハウス、トンネル外に放出させない特性(保温性)が要求される。具体的な保温剤粒子として、農業用フィルムの昼間の太陽光線の透過性を高めるため樹脂の屈折率1.45〜1.55付近に近く無色イオンで構成された化合物であること、地面や植物から放射される赤外線のエネルギー分布である波長5〜30μmの範囲の赤外線吸収能力が高い粒子であること、農業用フィルムに配合した際に機械的強度などを損なわないように微粒子で分散性が良いこと等が要望される。
【0003】
以上のような農業フィルム用保温剤の要望に対して、樹脂に添加した際に透明性の優れたハイドロタルサイト化合物であるためには、粒子径が小さいほど有利である。しかし、粒子径の小さい粒子はマスターバッチおよびフィルムへ均一に分散させることが難しく、分散不良が問題であった。また、微粒子になるほど嵩密度が低くなり、ハンドリングの悪化や樹脂へのなじみの悪さが問題となっていた。
【0004】
従来、樹脂製品の生産工程でのハイドロタルサイト粉体の供給における流動性を改善するため、真空脱気によるハイドロタルサイトの減容によって嵩密度を調整する技術が提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、農業フィルム用保温剤に使用されるハイドロタルサイトにさらなる保温性と透明性を付与するために、オキシシリケート化合物やリン酸化合物で被覆することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−106620号公報
【特許文献2】特開2003−231778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、農業用フィルムに含有した場合に透明性を低下させず、樹脂へのなじみやすさが良好であり、分散性が非常に高い農業フィルム用保温剤、またこれを有効成分とした農業用マスターバッチ及び農業用フィルムを提供することにある。
【0008】
従来の農業フィルム用保温剤は、要求される保温性は満足するものの、フィルムに含有した際に透明性の低下を引き起こしていた。また、樹脂と混練して高濃度のマスターバッチを作る際には、保温剤が樹脂へなじみにくく、マスターバッチの生産性を下げるほか、装置などへの付着性が高いことが問題になっていた。
【0009】
そして、特許文献1の技術は、減容によるかさ比重の調整によってハイドロタルサイト粉体の供給時の流動性を改善するものであるが、ハイドロタルサイト自体は従来公知の製造方法によって得られるものであって、樹脂へのなじみやすさを改善するものではなく、フィルムに含有した際の透明性や樹脂への分散性は不十分であった。
【0010】
また、特許文献2の技術は、ハイドロタルサイト粒子表面をオキシシリケート化合物やリン酸化合物で被覆し、保温性を付与するものであるが、ハイドロタルサイト自体は従来公知の製造方法によって得られるものであって、アスペクト比が高く、良好な流動性を実現できるものではなく、フィルムに含有した際の分散性は不十分であった。
【0011】
本発明は、農業フィルム用保温剤に要求される透明性と、樹脂への分散性やハンドリングとを共に高いレベルで両立したハイドロタルサイト系農業フィルム用保温剤粒子を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0013】
即ち、本発明は、吸油量が35ml/100g以下で、吸油量/板面径の値が140〜190であることを特徴とするハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明1)。
【0014】
また、見掛け密度ρaが0.25g/cc以上であることを特徴とする本発明1に記載のハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明2)。
【0015】
また、タップ密度ρtが0.55g/cc以上であることを特徴とする本発明1または2に記載のハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明3)。
【0016】
また、板面径が0.25μm以下、BET比表面積が30m/g以下、且つアスペクト比が2.5以下であることを特徴とする本発明1〜3のいずれかに記載のハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明4)。
【0017】
また、層間水を一部もしくは全部除去した本発明1〜4のいずれかに記載のハイドロタルサイト型粒子粉末である(本発明5)。
【0018】
また、本発明1〜5のいずれかに記載のハイドロタルサイト型粒子粉末からなる農業フィルム用保温剤である(本発明6)。
【0019】
また、本発明6に記載の農業フィルム用保温剤をオレフィン系樹脂中に含有する農業フィルム用マスターバッチである(本発明7)。
【0020】
また、本発明6に記載の農業フィルム用保温剤を含有する農業用フィルムである(本発明8)。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末を用いた農業フィルム用保温剤は、フィルム化の際に透明性及び樹脂への分散性を高いレベルで両立する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0023】
先ず、本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末について述べる。
【0024】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は下記式(1)に表される化合物である。
2+1−x Al(OH)n− mHO (1)
(1)式におけるM2+はMgおよびZnよりなる群から選ばれた少なくとも一種の金属元素を示す。An−はn価のアニオンを示し、nは該アニオンの価数を示す。
0.2≦x≦0.5
0≦m≦1
p=x/n
【0025】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末に含有されているアニオン(An−)の種類は、水酸イオン(OH)、炭酸イオン(CO2−)及び硫酸イオン(SO2−)などであり、特に好ましくは炭酸イオンである。その他、りん系,珪素系,ホウ素系の酸素酸アニオンの場合は赤外線吸収能力の向上も見込める。
【0026】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、吸油量が35ml/100g以下である。好ましくは25〜33ml/100gである。吸油量が35ml/100gを超える場合は、樹脂に添加したときのなじみが悪く、分散不良を起こしやすい。吸油量は、ハイドロタルサイト型粒子粉末の凝集状態、すなわち、二次粒子の形成について判断する尺度となるものである。ハイドロタルサイト型粒子が凝集して二次粒子を形成すると、凝集粒子の隙間に油が吸収されるため、吸油量が大きいということは、ハイドロタルサイト型粒子の二次粒子の形成量が多く、すなわちハイドロタルサイト型粒子の分散性が悪く凝集しやすいということを意味する。
【0027】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、吸油量/板面径の値が140〜190である。吸油量/板面径の値が140未満の場合は吸油量に対して粒子の板面径が大きく、フィルムにした際に透明性を低下させやすくなる。また、吸油量/板面径の値が190を超える場合は、粒子が樹脂になじみにくくなり、分散性不良や生産性の悪化の原因となる。好ましい吸油量/板面径の値は142〜188、より好ましくは145〜185である。なお、吸油量(ml/g)/板面径(μm)の単位は、(ml/g/μm=m/g)であるが、本発明においては単位を省略して表記する。
【0028】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は板状であって、板面径が0.25μm以下であることが好ましい。より好ましい板面径は0.1〜0.25μm、さらにより好ましくは0.1〜0.2μmである。板面径が0.1μm未満の場合には、樹脂に練り込む際の分散性が不十分となる傾向がある。逆に板面径が0.25μmを超える場合には、樹脂中に均一に分散できたとしても、透明性が低下する恐れがある。
【0029】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、見掛け密度(ρ)が0.25g/cc以上であることが好ましい。0.25g/cc未満の場合は流動性が悪化する原因となる恐れがある。より好ましくは0.3g/cc以上である。
【0030】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、タップ密度(ρ)が0.55g/cc以上であることが好ましい。0.55g/cc未満の場合は、流動性が悪化する原因となる恐れがある。より好ましくは0.6g/cc以上である。
【0031】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、BET比表面積が30m/g以下であることが好ましい。より好ましくは20m/g以下である。30m/gを超える場合は微粒子となり、粒子凝集を起こしやすいので、分散不良の原因となる恐れがある。BET比表面積の下限値は5m/g程度である。
【0032】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、アスペクト比が2.5以下であることが好ましい。アスペクト比が2.5以下の等方的な粒子形状にすることにより嵩密度が高くなり、流動性が向上する。より好ましくは1.0〜2.4である。
【0033】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末の樹脂へのなじみやすさは、後述する実施例における方法で測定したトルク差の値が小さいほど樹脂に対してなじみやすいと判断でき、トルク差の値が0.21kg・m以下であることが好ましい。また、ハイドロタルサイト型粒子の分散性は、後述する実施例における方法で測定した未分散粒子の凝集物の数の平均値が4以下(評価が○又は△)であることが好ましい。
【0034】
次に本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末の製造方法について述べる。
【0035】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、アニオンを含有したアルカリ性水溶液とマグネシウム塩水溶液とアルミニウム塩水溶液とを混合し、pH値が9〜12、80〜100℃の温度範囲で、2〜8時間熟成し、Mg−Al系ハイドロタルサイト型粒子である中間生成物1を生成させる1次反応と、該中間生成物1を含む水性懸濁液に、該中間生成物1の生成時に添加した前記マグネシウムと前記アルミニウムの合計モル数に対して、合計モル数が0.25〜0.5となる割合でマグネシウム及びアルミニウムを含有するマグネシウム塩水溶液とアルミニウム塩水溶液とを添加した後、pHが9〜12の範囲、温度範囲が80〜100℃で1〜3時間熟成し、Mg−Al系ハイドロタルサイト型粒子である中間生成物2を生成させる2次反応と、さらに該中間生成物2を含む水性懸濁液を水熱反応容器に移してpH値が9〜12、120〜160℃の温度範囲で、2〜9時間熟成して被処理粒子粉末とし、当該被処理粒子粉末に表面処理を行うことによって得られる。
【0036】
また、前記製造方法の1次反応及び/又は2次反応のいずれかにおいて、必要に応じて亜鉛塩水溶液を添加することによって、所望量の亜鉛を含有するMg−Zn−Al系ハイドロタルサイト型粒子粉末を得ることも可能である。
【0037】
本発明におけるアニオンを含むアルカリ性水溶液としては、アニオンを含む水溶液と水酸化アルカリ水溶液との混合アルカリ水溶液が好ましい。
【0038】
アニオンを含む水溶液としては、炭酸ナトリウム水溶液が好ましい。
【0039】
水酸化アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0040】
本発明におけるマグネシウム塩水溶液としては、硫酸マグネシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液及び硝酸マグネシウム水溶液などを使用することができ、好ましくは硫酸マグネシウム水溶液、塩化マグネシウム水溶液である。
【0041】
本発明における亜鉛塩水溶液としては、硫酸亜鉛水溶液、塩化亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液などを使用することができ、好ましくは硫酸亜鉛水溶液、塩化亜鉛水溶液である。
【0042】
本発明におけるアルミニウム塩水溶液としては、硫酸アルミニウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液及び硝酸アルミニウム水溶液などを使用することができ、好ましくは硫酸アルミニウム水溶液、塩化アルミニウム水溶液である。
【0043】
1次反応において、アニオンを含有するアルカリ水溶液、マグネシウム塩水溶液及びアルミニウム塩水溶液の混合順序は、特に限定されるものではなく、また、各水溶液を同時に混合してもよい。好ましくは、アニオンを含有するアルカリ水溶液に、あらかじめマグネシウム塩水溶液及びアルミニウム塩水溶液を混合した水溶液を添加する。
【0044】
また、各水溶液を添加する場合には、該水溶液を一度に添加する場合、又は連続的に滴下する場合のいずれで行ってもよい。
【0045】
1次反応におけるアニオンを含有するアルカリ水溶液、マグネシウム塩水溶液及びアルミニウム塩水溶液を混合した反応溶液中の濃度は、マグネシウム塩は0.1〜1.5mol/lが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2mol/l、アルミニウム塩は0.1〜1.0mol/lが好ましく、より好ましくは、0.2〜0.8mol/l、アニオンは0.1〜1.5mol/lが好ましく、より好ましくは、0.2〜1.2mol/l、水酸化アルカリ水溶液は0.5〜8mol/lが好ましく、より好ましくは1〜6mol/lである。添加するマグネシウムとアルミニウムとのモル比(Mg/Al)は0.8〜5.0が好ましく、より好ましくは0.9〜4.5である。
【0046】
1次反応における熟成反応中の温度は80〜100℃であり、好ましくは85〜100℃である。80℃未満の場合にもハイドロタルサイト型粒子は生成するが、微粒子となり、樹脂混練に適した板面径の大きさの中間生成物1を得ることができない。
【0047】
1次反応における熟成反応中のpH値は9〜12であり、好ましくは9.5〜11.5である。pH値が9未満の場合、適度な厚みを有した中間生成物1が得られない。一方pH値が12を超える場合、板面径が大きくなりやすく、等方的な形状の粒子が得られない。
【0048】
1次反応における熟成反応の反応時間は2〜8時間が好ましい。熟成時間が2時間未満の場合には、板面径が大きく、適度な厚みを有した中間生成物1が得られ難い。また、8時間を超える熟成は経済的ではない。
【0049】
1次反応終了時点で、マグネシウムとアルミニウムは反応懸濁液中に残存しておらず、全て中間生成物1の生成に寄与している。従って、中間生成物1の組成は仕込み組成と同一になるものと推定される。
【0050】
1次反応で得られた中間生成物1は、板面径は0.04〜0.20μmが好ましく、より好ましくは0.10〜0.20μmであり、厚みは0.01〜0.07μmが好ましく、より好ましくは0.01〜0.05μmであり、アスペクト比は、4以下が好ましく、BET比表面積値は8〜70m/gが好ましい。
【0051】
2次反応において、添加するマグネシウムとアルミニウムの合計モル数は、1次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数に対して0.25〜0.5である。好ましくは0.3〜0.4である。工業的にある程度収量を確保できる濃度で反応することを前提とすると、2次反応で添加するマグネシウムとアルミニウムの合計モル数が1次反応の合計モル数に対して0.25未満の場合、1次反応のスラリー粘度が非常に高くなり、撹拌が不十分になりやすく、結果的に粒度分布が揃った粒子が得られない。一方0.5を超える場合も、微細な粒子が多量に析出し、粒度分布が揃った粒子が得られない。
【0052】
2次反応において、マグネシウム塩水溶液、アルミニウム塩水溶液の添加順序は、特に限定されるものではなく、また、各水溶液を同時に添加してもよい。好ましくは、あらかじめマグネシウム塩水溶液及びアルミニウム塩水溶液を混合した水溶液を添加する。
【0053】
また、2次反応において、あらかじめマグネシウム塩水溶液及びアルミニウム塩水溶液を混合して添加する場合には、一度に添加するよりも徐々に添加する方が好ましい。一度に添加すると、微細な粒子が多量に析出し、粒度分布の揃った粒子を得ることが困難となる。
【0054】
2次反応におけるマグネシウム塩水溶液及びアルミニウム塩水溶液を混合した反応溶液中の濃度は、マグネシウム塩は0.2〜1.5mol/lが好ましく、より好ましくは0.5〜1.3mol/l、アルミニウム塩は0.1〜1mol/lが好ましく、より好ましくは、0.15〜0.5mol/lである。添加するマグネシウムとアルミニウムとのモル比(Mg/Al)は0.8〜5.0が好ましく、より好ましくは0.9〜4.5である。
【0055】
2次反応における熟成反応中の温度は80〜100℃であり、好ましくは85〜100℃である。80℃未満の場合にもハイドロタルサイト型粒子は生成するが、微粒子となり、樹脂混練に適した板面径の大きさの中間生成物2を得ることができない。
【0056】
2次反応における熟成反応中のpH値は9〜12であり、好ましくは9.5〜11.5である。pH値が9未満の場合、適度な厚みを有した中間生成物2が得られない。一方pH値が12を超える場合、板面径が大きくなりやすく、等方的な形状の粒子が得られない。
【0057】
2次反応における熟成反応の反応時間は1〜3時間が好ましい。熟成時間が1時間未満の場合には、板面径が大きく、適度な厚みを有した中間生成物2が得られ難い。また、3時間を超える熟成は経済的ではない。
【0058】
2次反応終了時点で、マグネシウムとアルミニウムは反応懸濁液中に残存しておらず、全て中間生成物2の生成に寄与している。従って、1次反応で得られた中間生成物1の表面に被覆されたハイドロタルサイト層の組成は2次反応における仕込み組成と同一になるものと推定される。
【0059】
2次反応で得られた中間生成物2は、板面径は0.06〜0.20μmが好ましく、より好ましくは0.10〜0.20μmであり、厚みは0.01〜0.07μmが好ましく、より好ましくは0.02〜0.06μmであり、アスペクト比は、3以下が好ましく、BET比表面積値は8〜70m/gが好ましい。
【0060】
水熱反応における熟成反応中の温度は120〜160℃であり、好ましくは130〜160℃である。120℃未満の場合にもハイドロタルサイト型粒子は生成するが、樹脂混練に適した板面径の大きさと、適度な厚みを持った、等方的な形状のハイドロタルサイト型被処理粒子を得ることができない。
【0061】
水熱反応における熟成反応中のpH値は9〜12であり、好ましく9.5〜11.5である。pH値が9未満の場合、板面径が大きく、適度な厚みを有した、等方的な形状のハイドロタルサイト型被処理粒子が得られない。
【0062】
水熱反応における熟成反応の反応時間は2〜9時間が好ましい。熟成時間が2時間未満の場合には、板面径が大きく、適度な厚みを有した、等方的な形状のハイドロタルサイト型被処理粒子が得られ難い。また、9時間を超える熟成は経済的ではない。
【0063】
水熱反応終了時点で、マグネシウムとアルミニウムは反応懸濁液中に残存しておらず、2次反応で得られた中間生成物2からの溶出は起こっていない。
【0064】
水熱反応で得られたハイドロタルサイト型被処理粒子は、板面径は0.25μm以下が好ましく、厚みは0.03〜0.10μmが好ましく、アスペクト比は2.5以下が好ましく、BET比表面積値は8〜50m/gが好ましい。
【0065】
水熱反応終了後においては、常法により水洗、乾燥すれば、ハイドロタルサイト型粒子の被処理粒子粉末が得られる。
【0066】
得られた被処理粒子粉末は、樹脂への分散性を良好にするために、親油性の表面処理を行うことが好ましい。表面処理剤としては高級脂肪酸、有機シラン化合物、ロジン等が用いられ、粒子表面の被覆は、乾式表面処理、湿式表面処理いずれでも行うことができる。
【0067】
高級脂肪酸、もしくは有機シラン化合物、ロジン等を使用して湿式表面処理を行う場合は、ハイドロタルサイト型被処理粒子粉末を分散して得られる水性懸濁液に、前述の表面処理剤のうちのいずれかを完全に溶解させた水溶液を添加して水温を20〜90℃に調整して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記ハイドロタルサイト型被処理粒子の粒子表面を、高級脂肪酸、もしくは有機シラン化合物、ロジン等で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。
【0068】
高級脂肪酸、もしくは有機シラン化合物、ロジン等を使用して乾式表面処理を行う場合は、ハイドロタルサイト型被処理粒子粉末をヘンシェルミキサー、サンドミル、エッジランナー、タニナカ式粉砕機、らいかい機等に入れ、前述の表面処理剤のうちのいずれかを添加して乾式混合する。
【0069】
高級脂肪酸類は、湿式表面処理を行う場合の高級脂肪酸としてはベヘニン酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル酸ベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等が使用できる。乾式表面処理を行う場合の高級脂肪酸としては、ベヘニン酸、ベヘン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸等が使用できる。
【0070】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末の表面被覆物のうち高級脂肪酸による被覆量は、ハイドロタルサイト型粒子粉末に対してC換算で0.2〜20.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜18.0重量%である。被覆量が0.2重量%未満の場合には、高級脂肪酸による被覆効果が得られない。20.0重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味がない。
【0071】
有機シラン化合物としては、湿式及び乾式表面処理共にデシルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が使用できる。好ましくはデシルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0072】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末の表面被覆物のうち有機シラン化合物による被覆量は、ハイドロタルサイト型粒子粉末に対してC換算で0.2〜18.0重量%が好ましく、より好ましくは0.4〜16.5重量%である。被覆量が0.2重量%未満の場合には、有機シラン化合物による被覆効果が得られない。18.0重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味がない。
【0073】
ロジン類としては、湿式表面処理を行う場合は水溶性ロジン、乾式表面処理を行う場合は、天然ロジン、水添ロジン等が使用できる。
【0074】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末の表面被覆物のうちロジン類による被覆量は、ハイドロタルサイト型粒子粉末に対してC換算で0.2〜25.0重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜20.0重量%である。被覆量が0.2重量%未満の場合には、ロジン類による被覆効果が得られない。25.0重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に被覆する意味がない。
【0075】
表面処理は一段階、または二段階で行うことができ、二段階の場合は湿式表面処理後に乾式表面処理を行うことが好ましい。
【0076】
また、本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、層間水の一部または全量を除去した場合でも、保温剤としての効果は変わることはない。むしろ、層間水の一部または全量を除去することによって、樹脂混練の際の発泡を抑制することができ、生産性の向上につながる。層間水の一部又は全部を除去したハイドロタルサイト型粒子粉末としては、前記式(1)におけるmの値が0〜0.6であることが好ましい。
【0077】
次に、本発明に係る農業フィルム用マスターバッチについて述べる。
【0078】
本発明に係る農業フィルム用マスターバッチに用いる樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、酢酸ビニル等のオレフィン類の重合体あるいは共重合体、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、酢酸ビニル含有量が25重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性、耐候性、価格面を考慮して好ましい。
【0079】
なお、マスターバッチに用いる樹脂の組成は、本発明に係る農業用フィルムの製造時に用いる希釈用樹脂と同一の樹脂を用いても良いし、異なる樹脂を用いても良い。異なる樹脂を用いる場合は、樹脂同士の相溶性により決まる諸特性を考慮することが好ましい。
【0080】
本発明に係る農業フィルム用マスターバッチ中のハイドロタルサイト型粒子粉末の含有量は、樹脂100重量部に対して10〜250重量部が好ましく、より好ましくは20〜220重量部である。10重量部未満の場合は樹脂混練時の溶融粘度が不足し、保温剤の良好な分散混合が難しい。250重量部を超える場合には、樹脂が不足するため、保温剤の良好な分散混合が困難となり、好ましくない。
【0081】
本発明に係る農業フィルム用マスターバッチは、樹脂と保温剤とをリボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で混合した後、周知の単軸混練押出機や二軸混練押出機等で混練・成型した後切断するか、上記混合物をバンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混練して得られた混練物を粉砕または成型、切断することにより製造される。
【0082】
本発明に係る農業フィルム用マスターバッチのペレットの製造に際しては、必要に応じて周知の滑剤、光安定剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防霧剤、防曇剤、顔料、染料、熱安定剤等を適宜添加することができる。
【0083】
本発明に係る農業フィルム用マスターバッチのペレットは、平均長径1〜6mmが好ましく、より好ましくは2〜5mmの範囲である。平均短径は2〜5mmが好ましく、より好ましくは2.5〜4mmである。平均長径が1mm未満の場合には、ペレット製造の作業性が悪く好ましくない。6mmを超える大きさの場合は、希釈用樹脂の大きさとの違いが大きく、十分に分散混合させることが困難となる。
また、ペレット形状は種々のものができ、不定形または球形等の粒状、円柱状、フレーク状等に加工可能である。
【0084】
次に、本発明に係る農業用フィルムについて述べる。
【0085】
本発明に係る農業用フィルムに用いる樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、酢酸ビニル等のオレフィン類の重合体あるいは共重合体、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、酢酸ビニル含有量が25重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が、透明性、耐候性、価格面を考慮して好ましい。
【0086】
本発明に係る農業用フィルムの製造に際しては、必要に応じて周知の滑剤、光安定剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防霧剤、防曇剤、顔料、染料、熱安定剤等を適宜添加することができる。
【0087】
本発明に係る農業用フィルムは、必要に応じて積層構造を有してもよい。
【0088】
本発明に係る農業用フィルム中のハイドロタルサイト型粒子粉末の含有量は、樹脂100重量部に対して1〜30重量部が好ましく、より好ましくは2〜25重量部である。1重量部未満の場合は保温性能向上の効果が不十分である。30重量部を超える場合には農業用フィルムの透明性が低下するため好ましくない。
【0089】
本発明に係る農業用フィルムの保温性は、後述する評価法に従って測定した保温性指数で、70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上である。
【0090】
本発明に係る農業用フィルムの透明性は、後述する評価法に従って測定したヘイズ値で評価される。ヘイズ値は、6.0%以下が好ましく、より好ましくは5.0%以下である。
【0091】
次に、本発明に係る農業用フィルムの製造法について述べる。
【0092】
本発明に係る農業用フィルムは、本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末及び樹脂を、常法に従って、たとえばリボンブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサーなどの混合機に投入し、混合後、押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて溶融混練した後、インフレーション法、Tダイ法等の方法により、フィルム状に製膜して製造することができる。
【0093】
また、本発明においては、あらかじめ前述した樹脂とハイドロタルサイト型粒子粉末を所定量混合したマスターバッチペレットを作製しておき、該ペレットを用いて前記農業用フィルムを作製してもよい。
【0094】
<作用>
本発明において重要な点は、共沈反応によりハイドロタルサイト型粒子である中間生成物1を生成させる1次反応と、該中間生成物1を含有する水性懸濁液にマグネシウム塩水溶液とアルミニウム塩水溶液を添加し熟成する2次反応を行うことにより、常圧下で板面径に対して適度な厚みを有する、等方的な形状のハイドロタルサイト型粒子である中間生成物2を得た上で、さらに水熱反応を行うことにより等方的な形状を保ちながら、樹脂分散に適した大きさまで成長させたハイドロタルサイト型粒子を得ることである。
【0095】
等方的な形状のハイドロタルサイト型粒子粉末が得られる理由について、本発明者は、1次反応でpHを12以下に保持することによって、生成する中間生成物1の板面の急激な成長を抑制し、板面径と厚みのバランスを等方的にすることが効果的であったと考えている。また、1次反応で生成した中間生成物1の表面に、2次反応で添加したマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンが共沈析出してハイドロタルサイト層をエピタキシャルに被覆形成する際にも、pHを12以下にすることによって、1次反応で得られた中間生成物1の等方的な形状を維持しながら粒子成長させることができたことも重要である。同様に、水熱反応においても、pHが12以下であることによって、板面方向への成長は抑制され、等方的な形状を保ちながら、樹脂混練に適した大きさまで成長させることができたと考えている。
【実施例】
【0096】
次に、実施例及び比較例を挙げる。
【0097】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末及び農業用フィルムの諸特性は、下記の方法により評価した。
【0098】
ハイドロタルサイト型粒子粉末の構成相同定は粉末X線回折装置(株式会社リガク製、RINT−2500)で行った。回折角2θが3〜80°、ステップ角0.03°、FT0.3secの条件で測定した。線源種はCuを使用した。
【0099】
ハイドロタルサイト型粒子粉末における組成式M2+1−x Al(OH)n− mHOにおける指数xは、ハイドロタルサイト型粒子粉末を酸で溶解し、プラズマ発光分光分析装置(サーモエレクトロン株式会社製、iCAP6500)でイットリウムを内部標準として用いて分析して求めた。
【0100】
吸油量に関してはJIS K5101−13−2に準じて、ハイドロタルサイト粒子粉末2.5gに吸収される煮あまに油の容量を測定し、粉末100gあたりに換算して表した。
【0101】
ハイドロタルサイト型粒子粉末の板面径は透過型電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示したものである。使用した透過型電子顕微鏡は「JEM−1200EX II(JEOL製)」である。ハイドロタルサイト粉末を水またはアルコールで分散させ、その溶液をメッシュ上に付着、乾燥させて観察試料を作成した。観察試料内で板面がメッシュに対して水平に付着している粒子(200点)を選び、板面径の測定を行った。
【0102】
ハイドロタルサイト型粒子粉末の粒子の厚みは、板面径と同様に、透過型電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示したものである。観察試料内で板面がメッシュに対して垂直に付着している粒子(100点)を選び、厚みの測定を行った。アスペクト比は板面径/厚みから計算される。
【0103】
密度に関しては見掛け密度(ρ)およびタップ密度(ρ)を測定した。測定方法はJIS Z2504:2000、JIS Z2512:2006に準じた。
【0104】
比表面積値は、B.E.T.法により測定した。測定装置は「モノソーブ MS−21(QUANTA CHROME製)」を使用した。
【0105】
ハイドロタルサイト型保温剤粒子粉末を40%濃度になるように2軸混練機を用いて、樹脂を混ぜてマスターバッチ化した。混練条件を予熱時間10分、混練温度120℃、回転速度120rpm、混練時間15分とし、ラボプラストミル((株)東洋精機製作所製)で混練した。
【0106】
保温剤粒子の樹脂へのなじみやすさは、ラボプラストミルのトルク測定値において、混練初期の最大トルクと、混練開始から5分経過後の安定トルクとの差を計算して指標とした。値が小さいほど、樹脂に対してなじみやすいことを意味している。
【0107】
フィルム化は保温剤40%のマスターバッチを熱間プレスで加圧成形処理し、膜厚100μmのプレスフィルムを得た。加圧条件は、プレス温度160℃、プレス圧150kg重/cm、プレス時間1分、処理量0.8gである。そのフィルムを用いて、ヘイズメーターによるヘイズ値(曇り度)の測定を行った。
【0108】
保温性は、保温指数で評価した。上記農業用フィルムの赤外線吸収スペクトルをフーリエ変換赤外分光光度計:FTIR−8700((株)島津製作所製)を用いて(2,000〜400cm−1の範囲で1cm−1毎に測定し、100μmの膜厚で補正して各波数の補正吸光率を求めた。この補正吸光率に各波数に対する15℃の相対黒体放射エネルギーをかけて、相対黒体放射エネルギー吸収率を計算した。各波数の相対黒体放射エネルギー吸収率を積算し、その値を2,000〜400cm−1の総相対黒体放射エネルギーで除して保温指数とした。
【0109】
樹脂への分散性は前述の膜厚100μmのプレスフィルムを5cm四方に切り取り、1cm間隔で格子状に印をつけたものを光学顕微鏡で観察した際に、1cm四方の一マスの範囲に存在する未分散粒子の凝集物の数の平均値で評価した。
○・・・1個以下
△・・・2個〜4個
×・・・5個以上
【0110】
実施例1
CO2−イオン濃度が3.17mol/lの炭酸ナトリウム水溶液200mlと9.57mol/lの水酸化ナトリウム水溶液300ml及び水400mlを混合し、全量を900mlとした後、60℃に保持して、反応容器中で撹拌しておく。ここに、Mg2+イオン濃度が2.07mol/lの硫酸マグネシウム水溶液350mlとAl3+イオン濃度が3mol/lの硫酸アルミニウム水溶液50mlの混合溶液を添加し、さらに水を100ml加えて、全量を1.4lとした。添加し終わったら加温し、pH値が10.7、95℃で5時間熟成して白色沈殿物を含むスラリーを生成した。得られた中間生成物1の板面径は0.08μm、比表面積は45.5m/gであった(1次反応)。
【0111】
次いで、上記スラリーにMg2+濃度が1.94mol/lの硫酸マグネシウム水溶液150mlとAl3+イオン濃度が3mol/lの硫酸アルミニウム水溶液20ml、および水130mlの混合溶液を30分間かけて徐々に添加した。添加終了後、pH値が9.4、95℃でさらに1時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを生成した。得られた中間生成物2の板面径は0.10μm、比表面積は38.1m/gであった(2次反応)。1次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数に対する、2次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数の比は0.4である。
【0112】
このスラリーをオートクレーブ反応容器に移し、pH値が9.8、145℃で5時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを得た(水熱反応)。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型被処理粒子の板面径は0.20μm、厚みは0.09μm、比表面積は15.3m/gであった(固形分量65.3g/l)。また、Alに対するMgのモル量は2.4倍であった。
【0113】
ステアリン酸ソーダ3.8gを300mlの温水に加えて、完全に溶解させた。オートクレーブ反応容器から取り出したスラリー1.53lを別の反応容器に移し、65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.04gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0114】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は32ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.34g/cc、ρtは0.64g/ccであった。また、吸油量/粒子径は160であった。
【0115】
上記ハイドロタルサイト型粒子粉末を40%濃度になるように2軸混練機を用いて、ポリエチレン樹脂(住友化学製 CX2001)を混ぜてマスターバッチ化した。混練初期の最大トルクと5分経過後の安定したトルクの差は0.17kg・mであった。
【0116】
得られたマスターバッチを熱間プレスで加圧成形処理し、膜厚100μmのプレスフィルムを得た。そのフィルムのヘイズ値(曇り度)は5.3、保温性指数は93.4であった。なお、ブランクフィルムのヘイズ値は0.5である。また、分散性は○であった。
【0117】
実施例2
実施例1で得られた、ステアリン酸で表面処理されたハイドロタルサイト型粒子粉末100gと、ステアリン酸1gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ステアリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0118】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は31ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.32g/cc、ρtは0.62g/ccであった。また、吸油量/粒子径は155であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.15kg・mで、フィルムのヘイズは5.4、保温性指数は93.3、分散性は○であった。
【0119】
実施例3
実施例1で得られた、ステアリン酸で表面処理されたハイドロタルサイト型粒子粉末100gと、ラウリン酸1.5gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0120】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は28ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.34g/cc、ρtは0.62g/ccであった。また、吸油量/粒子径は140であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.09kg・mで、フィルムのヘイズは5.3、保温性指数は93.5、分散性は○であった。
【0121】
実施例4
実施例1の水熱反応において、pH値が9.6、140℃で4時間熟成したところ、白色沈殿物を含むスラリーを得た。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型被処理粒子の板面径は0.18μm、厚みは0.08μm、比表面積は17.4m/gであった(固形分量65.3g/l)。また、Alに対するMgのモル量は2.4倍であった。
【0122】
ステアリン酸ソーダ4.30gを300mlの温水に加えて、完全に溶解させた。オートクレーブ反応容器から取り出したスラリー1.53lを別の反応容器に移し、65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.04gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0123】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は33ml/100g、比表面積は14m/g、アスペクト比は2.3、ρaは0.31g/cc、ρtは0.62g/ccであった。また、吸油量/粒子径は183であった。樹脂混練の際のトルク差は0.08kg・mで、フィルムのヘイズは5.5、保温性指数は93.5、分散性は○であった。
【0124】
実施例5
実施例1の水熱反応後のスラリーを濾過、水洗して得られた、ハイドロタルサイト被処理粒子粉末を、260℃に設定した電気炉に2時間入れて層間水の全てを除去した。層間水を除去したハイドロタルサイト型粒子100gとステアリン酸3.5gを、タニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ステアリン酸で被覆されたハイドロタルサイトの脱水粒子粉末を得た。
【0125】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は34ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.5、ρaは0.32g/cc、ρtは0.60g/ccであった。また、吸油量/粒子径は140であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.19kg・mで、フィルムのヘイズは5.6、保温性指数は95.4、分散性は△であった。
【0126】
実施例6
CO2−イオン濃度が2.82mol/lの炭酸ナトリウム水溶液200mlと9.28mol/lの水酸化ナトリウム水溶液300ml及び水400mlを混合し、全量を900mlとした後、60℃に保持して、反応容器中で撹拌しておく。ここに、Mg2+イオン濃度が2.07mol/lの硫酸マグネシウム水溶液350mlとAl3+イオン濃度が2.68mol/lの硫酸アルミニウム水溶液50mlの混合溶液を添加し、さらに水を100ml加えて、全量を1.4lとした。添加し終わったら加温し、pH値が10.5、95℃で3.5時間熟成して白色沈殿物を含むスラリーを生成した。得られた中間生成物1の板面径は0.10μm、比表面積は37.3m/gであった(1次反応)。
【0127】
次いで、上記スラリーにMg2+濃度が1.93mol/lの硫酸マグネシウム水溶液150mlとAl3+イオン濃度が2.7mol/lの硫酸アルミニウム水溶液20ml、および水130mlの混合溶液を30分間かけて徐々に添加した。添加終了後、pH値が9.7、95℃でさらに1時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを生成した。得られた中間生成物2の板面径は0.12μm、比表面積は34.1m/gであった(2次反応)。1次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数に対する、2次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数の比は0.4である。
【0128】
このスラリーをオートクレーブ反応容器に移し、pH値が9.8、140℃で5時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを得た(水熱反応)。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型被処理粒子の板面径は0.20μm、厚みは0.09μm、比表面積は14.9m/gであった(固形分量62.5g/l)。また、Alに対するMgのモル量は2.7倍であった。
【0129】
ステアリン酸ソーダ3.8gを300mlの温水に加えて、完全に溶解させた。オートクレーブ反応容器から取り出したスラリー1.6lを別の反応容器に移し、65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.04gをヘンシェルミキサーに入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0130】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は32ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.34g/cc、ρtは0.64g/ccであった。また、吸油量/粒子径は160であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.17kg・mで、フィルムのヘイズは4.3、保温性指数は94.0、分散性は○であった。
【0131】
実施例7
CO2−イオン濃度が3.01mol/lの炭酸ナトリウム水溶液200mlと11.2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液300ml及び水400mlを混合し、全量を900mlとした後、60℃に保持して、反応容器中で撹拌しておく。ここに、Mg2+イオン濃度が2.46mol/lの硫酸マグネシウム水溶液350mlとAl3+イオン濃度が2.9mol/lの硫酸アルミニウム水溶液50mlの混合溶液を添加し、さらに水を100ml加えて、全量を1.4lとした。添加し終わったら加温し、pH値が10.7、95℃で3時間熟成して白色沈殿物を含むスラリーを生成した。得られた中間生成物1の板面径は0.10μm、比表面積は37.2m/gであった(1次反応)。
【0132】
次いで、上記スラリーにMg2+濃度が2.29mol/lの硫酸マグネシウム水溶液150mlとAl3+イオン濃度が2.9mol/lの硫酸アルミニウム水溶液20ml、および水130mlの混合溶液を30分間かけて徐々に添加した。添加終了後、pH値が10.2、95℃でさらに1時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを生成した。得られた中間生成物2の板面径は0.12μm、比表面積は34.7m/gであった(2次反応)。1次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数に対する、2次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数の比は0.4である。
【0133】
このスラリーをオートクレーブ反応容器に移し、pH値が10.7、135℃で5時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを得た。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た(水熱反応)。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型被処理粒子の板面径は0.19μm、厚みは0.09μm、比表面積は15.9m/gであった(固形分量71.4g/l)。また、Alに対するMgのモル量は3倍であった。
【0134】
ステアリン酸ソーダ3.8gを300mlの温水に加えて、完全に溶解させた。オートクレーブ反応容器から取り出したスラリー1.4lを別の反応容器に移し、65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.04gをヘンシェルミキサーに入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0135】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は32ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.34g/cc、ρtは0.64g/ccであった。また、吸油量/粒子径は160であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.17kg・mで、フィルムのヘイズは3.7、保温性指数は94.3、分散性は○であった。
【0136】
実施例8
CO2−イオン濃度が3.62mol/lの炭酸ナトリウム水溶液200mlと10.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液300ml及び水400mlを混合し、全量を900mlとした後、60℃に保持して、反応容器中で撹拌しておく。ここに、Mg2+イオン濃度が2.07mol/lの硫酸マグネシウム水溶液350mlとAl3+イオン濃度が3.45mol/lの硫酸アルミニウム水溶液50mlの混合溶液を添加し、さらに水を100ml加えて、全量を1.4lとした。添加し終わったら加温し、pH値が10.7、95℃で5時間熟成して白色沈殿物を含むスラリーを生成した。得られた中間生成物1の板面径は0.10μm、比表面積は36.9m/gであった(1次反応)。
【0137】
次いで、上記スラリーにMg2+濃度が1.935mol/lの硫酸マグネシウム水溶液150mlとAl3+イオン濃度が3.5mol/lの硫酸アルミニウム水溶液20ml、および水130mlの混合溶液を30分間かけて徐々に添加した。添加終了後、pH値が9.4、95℃でさらに1時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを生成した。得られた中間生成物2の板面径は0.12μm、比表面積は34.3m/gであった(2次反応)。1次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数に対する、2次反応で添加したマグネシウムとアルミニウムの合計モル数の比は0.4である。
【0138】
このスラリーをオートクレーブ反応容器に移し、pH値が9.8、145℃で5時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを得た(水熱反応)。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型被処理粒子の板面径は0.20μm、厚みは0.1μm、比表面積は15.1m/gであった(固形分量68.3g/l)。また、Alに対するMgのモル量は2.1倍であった。
【0139】
ステアリン酸ソーダ3.8gを300mlの温水に加えて、完全に溶解させた。オートクレーブ反応容器から取り出したスラリー1.46lを別の反応容器に移し、65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.04gをヘンシェルミキサーに入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0140】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は32ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.34g/cc、ρtは0.64g/ccであった。また、吸油量/粒子径は160であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.17kg・mで、フィルムのヘイズは5.9、保温性指数は93.0、分散性は○であった。
【0141】
実施例9
実施例1で得られたラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を40%濃度になるように2軸混練機を用いて、EVA樹脂(日本ユニカー製 PES−400 VAコンテント15%)を混ぜてマスターバッチ化した。混練初期の最大トルクと5分経過後の安定したトルクの差は0.16kg・mで、フィルムのヘイズは8.6、保温性指数は96.8、分散性は○であった。なお、ブランクフィルムのヘイズは0.9である。
【0142】
実施例10
300mlの水に1.5mol/lの水酸化ナトリウム10mlを加えて60℃に加温したところに、ラウリン酸2.5gを加えて撹拌しながら完全に溶解させた。実施例1で水熱反応後に得られたスラリー1.53lを別の反応容器に移し、65℃に保持して撹拌しながら、ラウリン酸水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ラウリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とステアリン酸1.03gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ステアリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0143】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は35ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.33g/cc、ρtは0.63g/ccであった。また、吸油量/粒子径は175であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.21kg・mで、フィルムのヘイズは5.6、保温性指数は93.4、分散性は△であった。
【0144】
実施例11
300mlの水に1.5mol/lの水酸化ナトリウム10mlを加えて60℃に加温したところに、12ヒドロキシステアリン酸3.7gを加えて撹拌しながら完全に溶解させた。実施例1で水熱反応後に得られたスラリー1.53lを別の反応容器に移し、65℃に保持して撹拌しながら、12ヒドロキシステアリン酸水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、12ヒドロキシステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.04gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0145】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は34ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.32g/cc、ρtは0.63g/ccであった。また、吸油量/粒子径は170であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.2kg・mで、フィルムのヘイズは5.7、保温性指数は93.3、分散性は△であった。
【0146】
実施例12
実施例1で得られた、ステアリン酸で表面処理されたハイドロタルサイト型粒子粉末100gと、12ヒドロキシステアリン酸1gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ステアリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0147】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は34ml/100g、比表面積は11m/g、アスペクト比は2.2、ρaは0.33g/cc、ρtは0.64g/ccであった。また、吸油量/粒子径は170であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.18kg・mで、フィルムのヘイズは5.3、保温性指数は93.3、分散性は○であった。
【0148】
比較例1
CO2−イオン濃度が3.17mol/lの炭酸ナトリウム水溶液200mlと10mol/lの水酸化ナトリウム水溶液450ml及び水250mlを混合し、全量を900mlとした後、60℃に保持して、反応容器中で撹拌しておく。ここに、Mg2+イオン濃度が2.07mol/lの硫酸マグネシウム水溶液350mlとAl3+イオン濃度が3mol/lの硫酸アルミニウム水溶液50mlの混合溶液を添加し、さらに水を100ml加えて、全量を1.4lとした。添加し終わったら加温し、pH値が12.5、65℃で5時間熟成して白色沈殿物を含むスラリーを生成した。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型被処理粒子の板面径は0.045μm、比表面積は60m/gであった(固形分量65.3g/l)。また、Alに対するMgのモル量は2.4倍であった。
【0149】
得られたスラリー1.53lを65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ15.2gを1lの温水に完全に溶解させた水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.28gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0150】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は48ml/100g、比表面積は60m/g、アスペクト比は2.5、ρaは0.15g/cc、ρtは0.29g/ccであった。また、吸油量/粒子径は1067であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.30kg・mで、フィルムのヘイズは9.8、保温性指数は92.9、分散性は×であった。
【0151】
比較例2
実施例1の1次反応の反応時間を3.5時間として、それ以降は同様に2次反応を行い、白色沈殿物を含むスラリーを生成した。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型粒子の板面径は0.07μm、比表面積は39m/gであった(固形分量65.3g/l)。また、Alに対するMgのモル量は2.4倍であった。
【0152】
得られたスラリー1.53lを65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ9.4gを1lの温水に完全に溶解させた水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.09gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0153】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は44ml/100g、比表面積は37m/g、アスペクト比は2.7、ρaは0.17g/cc、ρtは0.32g/ccであった。また、吸油量/粒子径は629であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.28kg・mで、フィルムのヘイズは9.5、保温性指数は93.0、分散性は×であった。
【0154】
比較例3
CO2−イオン濃度が3.17mol/lの炭酸ナトリウム水溶液200mlと9.57mol/lの水酸化ナトリウム水溶液300ml及び水400mlを混合し、全量を900mlとした後、30℃に保持して、反応容器中で撹拌しておく。ここに、Mg2+イオン濃度が2.03mol/lの硫酸マグネシウム水溶液500mlとAl3+イオン濃度が1.06mol/lの硫酸アルミニウム水溶液200mlの混合溶液を添加し、さらに水を100ml加えて、全量を1.7lとした。このスラリーをオートクレーブ反応容器に移し、pH値が10.0、140℃で3時間熟成して、白色沈殿物を含むスラリーを得た。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型粒子の板面径は0.26μm、厚みは0.05μm、比表面積は17.3m/gであった(固形分量65.3g/l)。また、Alに対するMgのモル量は2.4倍であった。
【0155】
得られたスラリー1.53lを65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ4.4gを300mlの温水に完全に溶解させた水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.04gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0156】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は36ml/100g、比表面積は15m/g、アスペクト比は5.2、ρaは0.23g/cc、ρtは0.52g/ccであった。また、吸油量/粒子径は138であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.23kg・mで、フィルムのヘイズは8.7、保温性指数は93.3、分散性は△であった。
【0157】
比較例4
実施例1の水熱反応において反応条件をpH値が10.0、160℃、6時間で行い、白色沈殿物を含むスラリーを得た。この白色沈殿物を濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより白色粒子粉末を得た。この白色粒子粉末を同定した結果、ハイドロタルサイト型粒子粉末であることが認められた。得られたハイドロタルサイト型粒子の板面径は0.24μm、厚みは0.084μm、比表面積は13.2m/gであった(固形分量65.3g/l)。また、Alに対するMgのモル量は2.4倍であった。
【0158】
得られたスラリー1.53lを65℃に保持して撹拌しながら、ステアリン酸ソーダ3.3gを300mlの温水に完全に溶解させた水溶液を添加して、20分間保持することによって、表面処理を行った。スラリーを濾過、水洗の後、120℃にて乾燥することにより、ステアリン酸によって表面処理されたハイドロタルサイト型粒子を得た。得られたハイドロタルサイト型粒子とラウリン酸1.03gをタニナカ式粉砕機に入れ、5分間粉砕混合して、ラウリン酸で被覆されたハイドロタルサイト型粒子粉末を得た。
【0159】
得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の吸油量は39ml/100g、比表面積は9m/g、アスペクト比は2.9、ρaは0.21g/cc、ρtは0.49g/ccであった。また、吸油量/粒子径は163であった。ポリエチレン樹脂混練の際のトルク差は0.25kg・mで、フィルムのヘイズは8.8、保温性指数は93.2、分散性は△であった。
【0160】
比較例5
協和化学工業(株)製DHT−4Aを比較例5とした。
【0161】
比較例6
堺化学工業(株)製HT−Pを比較例6とした。
【0162】
実施例及び比較例の合成条件を表1に、得られたハイドロタルサイト型粒子粉末の諸特性を表2に示す。
【0163】
【表1】

【0164】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明に係るハイドロタルサイト型粒子粉末は、農業用フィルムに含有した場合に透明性を低下させず、樹脂へのなじみやすさが良好であり、分散性が非常に高いため、農業フィルム用保温剤として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸油量が35ml/100g以下で、吸油量/板面径の値が140〜190であることを特徴とするハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項2】
見掛け密度ρaが0.25g/cc以上であることを特徴とする請求項1に記載のハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項3】
タップ密度ρtが0.55g/cc以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項4】
板面径が0.25μm以下、BET比表面積が30m/g以下、且つアスペクト比が2.5以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項5】
層間水を一部もしくは全部除去した請求項1〜4のいずれかに記載のハイドロタルサイト型粒子粉末。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のハイドロタルサイト型粒子粉末からなる農業フィルム用保温剤。
【請求項7】
請求項6に記載の農業フィルム用保温剤をオレフィン系樹脂中に含有する農業フィルム用マスターバッチ。
【請求項8】
請求項6に記載の農業フィルム用保温剤を含有する農業用フィルム。


【公開番号】特開2011−68877(P2011−68877A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188874(P2010−188874)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】