説明

ハイドロフルオロカーボン製造プロセスから水を除去する方法

1またはそれ以上のフッ素化プロセス組成物に、その組成物中の水の量を減少させるのに有効な量および条件下で水反応性物質を導入することを含む、改善されたフッ素化プロセス、および、フッ素を含む組成物を開示する。水反応性物質は、好ましくは、組成物中で比較的低い水の濃度を生じるのに有効な量および条件下で、好ましくはフッ素化プロセスの間中、フッ素化反応の部位の近くの場所またはフッ素化反応の上流で、フッ素化反応プロセスに導入される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、フッ素化有機化合物の製造プロセスに関する。より具体的には、本発明は、含まれる水の量が有利に低いフッ素を含む組成物の製造方法に関する。
【0002】
発明の背景
フッ素化有機化合物、および、このような化合物を含む組成物の製造を目的とした多数のプロセスがある。これらのプロセスの多くは、フッ素化触媒の存在下で、クロロアルカンまたはクロロアルケンのような有機化合物とフッ化水素(HF)とを反応させることが必要である。これらのプロセスのいくつかにおいて、望ましいフッ素化有機化合物を含む反応生成物流(reaction product stream)の1またはそれ以上に水が存在する。この水は、反応物またはその他の出発原料中の不純物から生じる場合がある。また、この水は、HFと触媒との反応などの反応プロセスからの副生成物として、および、/または、触媒再生プロセスの生成物として形成される場合もある。
【0003】
具体的には、水とフッ化水素の混合物は腐蝕性であり、さらに、この組み合わせは扱いが難しく、かつ費用がかかることが認識されている。結果として、典型的には、生成物流(product stream)、副生成物流(byproduct stream)、反応物流(reactant stream)およびリサイクル流(recycle stream)などにおけるフッ素化プロセスのHFと接触する部分から水を除去することが望ましい。その上、フッ素化プロセス中に存在する水は、少量でも触媒毒として作用する可能性があり、それによってフッ素化反応の有効性、効率、選択性および/または収率に有害な作用を与える可能性がある。
【0004】
これまで、フッ素化プロセス流(process stream)から水を除去する、または水の量を減少させる数種の方法が提唱されている。例えば、米国特許第5,334,784号(Blake等)、および、第6,103,944号(Blake等)は、フッ素化プロセス流から水を物理的に除去するための方法として、蒸留を提案している。米国特許第6,111,151号(Ewing等)は、プロセス流から不要な水を物理的に除去する代替法として、相分離を開示している。加えて、乾燥剤、例えばナトリウムポリアクリレート(米国特許第6,101,818号,Thomas等)、および、塩化カルシウム(米国特許第5,723,702,Kwon等)も、プロセス流から水を吸収する手段として示唆されている。当業界においてBlake、Ewingなどが、フッ素化反応装置より下流の器具および方法(例えば上述のものなど)を用いることによって反応生成物から水を除去することを試みてきたが、これらのプロセスは本質的に費用がかかる。その上、フッ素化反応に適する既知の吸収剤は水に対して選択的ではないため、フッ素化プロセスの際に一般的に用いて役立たせることはできない。また、上述の方法はそれぞれ、プロセス反応下流の水しか除去できないため、反応部位での水の除去としては有効ではなく、触媒毒作用を予防することができないという点でさらなる不利点も生じる。
【0005】
典型的には、フッ素化反応下流のプロセス流は、望ましいフッ素化化合物に加えて未反応の有機物質と未反応のHFを含む。生成物の収率を高めるために、生成物流から未反応の出発成分を分離し、HFおよび/または下流のフッ素化成分を反応工程にリサイクルすることが一般的である。リサイクルは、フッ素化反応中に存在する水の濃度を増加させる傾向があるため、リサイクルの前に生成物流から全ての水を除去することが有利である。
【0006】
発明の要約
本発明者等は、当業界において、改善されたフッ素化プロセス、および、改善されたフッ素を含む組成物、好ましくは、約2〜約5個の炭素原子を有するフッ素で置換された有機分子が必要であることを認識した。我々は、1またはそれ以上のフッ素化プロセス組成物に、その組成物中の水の量を減少させるのに有効な量および条件下で水反応性物質を導入することによって、この必要性を満たすことができることを発見した。この教示を適用することによって、フッ素化プロセス、および、それによって製造された生成物を改善することができる。その上、本発明者等は、水は、反応装置下流の反応生成物の加工の際だけでなく、フッ素化反応そのものにおいても有害な作用を有する可能性があることを認識している。この認識を考慮して、出願人は、好ましくは、反応混合物中に、好ましくはフッ素化プロセスの間中、水の濃度を比較的低くするのに有効な量および条件下で、フッ素化反応プロセスに、好ましくはフッ素化反応部位の近くの場および/または、または、フッ素化反応の上流で、水反応性物質を導入することを含むフッ素化プロセスを発見した。
【0007】
本明細書で用いられる用語「水反応性物質」は、フッ素化プロセス中の1またはそれ以上の場に存在する水と、中間化合物の製造を介して直接的または間接的に反応し、それによりプロセス流または組成物中に存在する水を効果的に減少させることができる1種またはそれ以上の成分および/または化合物を意味する。本明細書で用いられる用語「フッ素化プロセス」は、フッ素化反応そのものを意味し、同様に、上流の加工(例えば予熱、触媒処理など)、および、下流の加工(例えば成分の分離など)を含むものとする。従って、用語「フッ素化プロセス」は、フッ素化反応の場または部位を含み、さらに、反応部位または容器に供給される、または、引き出される流れも含む。好ましい実施形態において、水反応性物質は、フッ素化プロセス中の1またはそれ以上の場に存在するという条件下で反応性を有する。言い換えれば、水反応性物質は、好ましくは、フッ素化反応条件のいかなる実質的な変更を必要とせずにフッ素化プロセス中の1またはそれ以上の場でフッ素化プロセスに添加され、さらにより好ましくは、上流および下流のプロセス条件のいかなる実質的な変更も必要とせずに添加される。
【0008】
また、一般的には、本発明の方法により、プロセスに新規の有害化合物を何らかの実質的な量で直接的に、または反応生成物として導入することなく、フッ素化プロセス中の1またはそれ以上の場で水の量を効果的に減少させることも好ましい。本明細書で用いられる「有害化合物」は、プロセスから容易に除去されない化合物、または、フッ素化反応のオペレーションに負の作用を有する化合物のいずれかである。例えば、プロセスで用いられる触媒に対する毒である、または、触媒毒の形成を引き起こす水反応性物質は、有害化合物とみなされると予想される。そうではなく、プロセス中にすでに存在する化合物は、一般的に有害化合物とはみなされないと予想される。具体的な実施形態において、本発明の水反応性物質が存在することにより、フッ素化プロセスに新規の反応生成物を何らかの実質的な量で存在させないことが好ましい。本明細書で用いられる用語「新規の反応生成物」は、本来、フッ素化反応の生成物流中に通常存在しない化合物または成分、または、適応させるためにプロセスの実質的な変更を必要とすると予想される化合物または成分を意味する。従って、一般的に、水反応性物質そのものは、好ましくは、反応生成物流に本来すでに存在する化合物、または、そのような化合物および/または成分の組み合わせを含むことが好ましい。
【0009】
好ましい実施形態の詳細な説明
好ましい実施形態において、具体的には、例えばペンタフルオロエタン(HFC−125)、および、テトラフルオロエタン(HFC−134)のような、2〜約5個の炭素原子を有するHFCの製造を目的とした実施形態において、水反応性物質は、塩素置換されたビニル化合物、例えば塩素置換されたエチレン、具体的にはトリクロロエチレン(TCE)を含む。このような水反応性物質の使用は、フッ素化反応が、塩素置換されたビニル成分、より好ましくは少なくとも2個の塩素置換されたビニル成分、さらにより好ましくは少なくとも3個の塩素置換されたビニル成分を含む反応性有機化合物のフッ素化に基づくプロセスで使用するのに非常に好ましい。例えば、本発明は特に、ペルクロロエチレン(PCE)のフッ素化と合わせて用いられる場合によく適し、優れた結果を得ることができる。任意であるが好ましい実施形態において、水反応性物質は、酸素をさらに含む。
【0010】
本明細書に記載されている教示から、当業者は、余計な実験を行うことなく、本発明の方法に関連して使用するのに適切な多数の水反応性物質を同定することができると考えられ、このような反応性物質は全て、本発明の広い範囲に含まれる。好ましい実施形態において、具体的には、フッ素化反応においてTCEが副生成物として生成する実施形態において、水反応性物質は、実質的にTCEと酸素とからなり、本方法は、好ましくは、フッ素化プロセスへ、水反応性物質を、フッ素化反応のおよその部位に導入する、さらにより好ましくは反応容器中に含まれる反応混合物に導入する工程を含む。当業者には当然と思われるが、水反応性物質の様々な成分は、必ずしも、一緒に、または、同時に、または、同じ方法でフッ素化プロセス導入されなくてもよい。これに関する唯一の必要条件は、多成分の水反応性物質が用いられる場合、それらが最終的には協調して系の外で過量の水と反応できるように、最も好ましくは、いかなる新規の反応生成物を実質的な量で系に導入することなく、プロセスに導入されることである。このプロセスは、水の発生源に関係なく、プロセスに存在する水の量を減少させるのに有効であると考えられる。好ましい水を除去する物質や水に結合する反応生成物は、フルオロカーボン製造プロセス中にすでに見出される化学成分、および/または、フルオロカーボン製造プロセスから容易に除去される化学成分であり得るため、通常みられない混合物は導入されない。好ましい実施形態において、本発明のプロセスは、水を実質的な量で含まない生成物流、さらにより好ましくは、実質的に水を含まない生成物流を製造する。
【0011】
また、当然ながら、水反応性物質をプロセスに導入する工程は、本明細書において特に他の規定がない限り、概して、例えばフッ素化プロセスの間に水反応性物質に変換される水反応性物質の前駆体をプロセスに導入する工程を含むと解釈されることとする。例えば、具体的な実施形態において、トリクロロエチレンエポキシドのようなポリハロエポキシドを、TCEを含む好ましい水反応性物質の形成が起こるような条件下でプロセスに導入してもよい。
【0012】
従って、本発明の好ましい実施形態は、反応混合物の組成物中の水を実質的に減少させるのに十分な量で、かつそれに有効な条件下で、水反応性物質、好ましくはトリクロロエチレン(TCE)、または、酸素と組み合わされたTCEをフッ素化反応混合物に導入することによって、フッ素化反応プロセスによって生成した反応生成物流中の水の濃度を減少させる方法を提供する。好ましい実施形態において、水反応性物質は、別個の流れとして、または、反応装置への1またはそれ以上の供給流の成分として反応混合物に導入される。当業者であれば当然と思われるが、水反応性物質は、反応装置からの1またはそれ以上の排水流の代わりに導入されてもよいし、または、それに加えて導入されてもよいが、このような実施形態は、一般的にはあまり好ましくはないとみなされると予想される。
【0013】
本発明の第一の形態によれば、フッ化水素(HF)、反応性有機化合物、および、湿気の形態またはそれ以外の形態の水を含むフッ素化プロセス流中の水の量を減少させる方法が提供される。また、上記プロセス流は、フッ素化反応、場合によってはフッ素化有機化合物のリサイクルされた副生成物を含んでいてもよい。好ましくは、トリクロロエチレン(TCE)、または、TCEおよび酸素は、好ましくは、プロセス流に本来存在する条件を実質的に変更することなく、さらに、反応条件を実質的に変更することなく、反応装置の有機反応物を含む供給流に導入される。
【0014】
出願人は、オペレーションに関するあらゆる特定の理論に拘束または限定されることは必ずしも望んではいないが、本発明の好ましい反応性物質、具体的にはTCEは、フッ素化反応条件下で、酸の存在下で酸素と結合すると、カルボカチオンを形成するか、またはそれを含み、続いてこのカルボカチオンが加水分解されてフッ素化プロセスから水分子が除去されると考えられる。それゆえに、好ましい実施形態において、反応性物質は、フッ素化プロセスの間に、中間体および/または化合物および/またはラジカル、具体的にはカルボカチオンを含む中間体および/または化合物および/またはラジカルを含む、および/または、それらに変換される化合物またはラジカルである。その後、この中間体、化合物またはラジカルは、水の存在下で加水分解反応によって減少する。それによって、実質的な部分の水がプロセス流から除去される。水(以下、「プロセス」水という)を除去する一つの可能性のある反応メカニズムは、第一工程として、TCEと酸素とが反応してトリクロロエチレンオキサイドを形成するメカニズムに関与すると考えられる。第二の工程において、酸の存在によって、水とトリクロロエチレンオキサイドとの反応が容易になる。第二の工程の生成物は、CO、COおよびクロロメタンのような一つの炭素からなる化学種を形成する反応条件下で分解する。その他の考えられる反応メカニズムにおいて、TCEは、好ましくは酸の存在下で、水と一緒の方向に進む。これらの二つの考えられるスキームは、以下のように説明される:
【0015】
【化1】

【0016】
上記からわかるように、仮定の考えられる反応メカニズムはいずれも、エポキシド中間体を介して水反応性物質TCEが生成し、適切なプロセス条件下でプロセスにとって有害ではない一つの炭素からなる化学種に変換する一連の比較的不安定な化合物が生成する。その上、より有力な反応スキームの1つは、上記で示したように、水の消費、それによる系からの効果的な水の除去を含むと考えられる。
【0017】
好ましくは、水を除去する反応メカニズムは、約100℃(212°F)〜約540℃(1004°F)の温度範囲内で、約0psia〜約500psiaの圧力で生じる。より好ましくは、これらの反応は、約200℃(392°F)〜約425℃(800°F)、さらにより好ましくは約260℃(500°F)〜約370℃(700°F)の温度範囲内で生じる。好ましいTCEの濃度は、それが添加されるプロセス中に存在する有機物質の総量に基づき約0.01〜約95モルパーセントである。より好ましくは、TCEの濃度は、反応媒体中の有機物質に基づき約0.05〜約50モルパーセントである。さらにより好ましくは、TCEの濃度は、有機物質の総量に基づき0.1〜約20モルパーセントである。加えて、好ましい酸素の濃度は、それが添加されるプロセス中の有機物質と酸素の総量に基づき、約0.01〜約50モルパーセント、より好ましい濃度は、約0.1〜約10モルパーセントである。
【0018】
本発明の第二の形態によれば、実質的に水を含まないフッ素化有機化合物のプロセス流を製造する方法が提供される。このプロセス流は、少なからず水を含むフッ素化プロセス流へ、第一のTCEの共供給、および、任意であるが好ましくは第二の酸素の共供給を与えることによって製造される。このようなプロセス流において、TCE、および、好ましくは酸素が本発明の第一の形態に従って反応し、プロセス流から水を減少させるか、または、実質的に除去することができる。フッ素化プロセス、同様に、水の除去方法は、多種多様な環境およびバッチで、連続的および/または半連続的なオペレーションで行うことができる。しかしながら、本方法は、連続的または半連続的なオペレーションで行われることが一般的に好ましい。さらに、水は、反応性有機化合物がフッ素化している時間に、またはほぼその時間に、すなわちフッ素化反応の間中に除去されることが一般的に好ましい。
【0019】
好ましいフッ素化プロセスの原則的なオペレーションは、フッ化水素(HF)のようなフッ素化剤と、反応性有機化合物、より好ましくはハロゲン化炭化水素、さらにより好ましくは塩素化した炭化水素(CHC類)、最も好ましくは塩素化したアルカンおよびアルケンとを反応させることである。好ましい塩素化したアルカンおよびアルケンの例としては、これらに限定されないが、ジクロロメタン、トリクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロプロパン、ペンタクロロプロパン、ヘキサクロロプロパン、トリクロロプロピレン、テトラクロロプロピレンなどが挙げられる。一般的に、本発明の好ましいフッ素化プロセスから得られた生成物は、クロロフルオロカーボン(CFC類)、ハイドロフルオロカーボン(HFC類)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC類)、および、これらの組み合わせを含む。必要に応じて、プロセス中で2種以上のハイドロフルオロカーボンを、その他のハイドロフルオロカーボンと共同製造することによって製造してもよい。
【0020】
多くの適切な触媒活性化合物が当業界周知であり、例えば、様々な無機化合物、例えば酸化物、および、アルミニウム、コバルト、マンガン、鉄およびクロムのような金属のハロゲン化物が挙げられる。本発明の好ましい実施形態は、フッ素化プロセスにおいて、クロムをベースとした触媒を利用する。本発明の、クロムをベースとした触媒が用いられる一実施形態において、フッ素化反応は、約200℃(392°F)〜約400℃(752°F)、より好ましくは約320℃(608°F)〜約375℃(707°F)、さらにより好ましくは約350℃(662°F)の温度範囲で起こる。オペレーション圧力は、好ましくは約50psig〜約200psigであり、具体的な実施形態においてもっとも好ましくは、約100psigである。
【0021】
プロセス流から除去しようとする水は、1またはそれ以上の源(source)から導入されてもよく、例えば、1またはそれ以上の反応物に存在する水、触媒に含まれる、または本来存在する水、1またはそれ以上の反応物と触媒との相互作用の結果として生成した水(新しく生成したか、または再生したかのいずれか)、触媒の調整/再生の際に生成した水、または、反応の過程で導入されるその他のあらゆる媒体に含まれる水が挙げられる。典型的には、プロセス流の含水量は、水およびHFの重量に基づき約0.05〜約5重量%と予想される。通常、HFと接触させる前では、有機性の出発原料が、HFの出発成分中に不純物として存在するあらゆる水の露点を超える温度で、ガス状の生成物流として存在すると予想される。多くの実施形態において、水の除去を最大化するために、水反応性物質は、100℃(212°F)〜550℃(1022°F)の温度のフッ素化プロセス流と接触することがが好ましい。
【0022】
典型的には、フッ素化プロセスの副生成物として製造された水の量は、反応プロセスが進行するにつれて徐々に増加する。好ましくは、本発明は、フッ素化反応に関連する1またはそれ以上の組成物および/またはプロセス流に、TCEを添加することによって、好ましくは共供給としてさらに酸素も添加することによって、このような水を除去する。好ましい具体的な実施形態によれば、一般的には水反応性物質、および、具体的にはTCEおよび/または酸素は、共供給として反応混合物に導入される。これは、水反応性物質を反応容器への1またはそれ以上の供給に添加すること、または、上記の物質を別々に反応容器に導入することによって達成できる。好ましい実施形態において、水反応性物質、例えばTCEおよび/または酸素が反応して反応物を形成し、この反応物は、水の存在下で加水分解されるため、プロセス流から水が除去される。例えば、クロムをベースとした触媒の存在下で有機化合物がフッ素化される場合、TCEと酸素が反応して、それらと反応する中間化合物が形成され、それによって、水の一部、好ましくは実質的な部分をプロセス流から除去する。好ましくは、反応した生成物はプロセス流から分離され、未反応の生成物はフッ素化反応装置に戻されリサイクルされる。プロセス流から抽出された反応した生成物は、好ましくは、実質的に水を含まない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素化プロセスから水を除去する方法であって:
a)2〜約5個の炭素原子を有する塩素置換されたビニル化合物を含む、少なくとも1種の水反応性物質を提供すること;
b)該フッ素化プロセスに、反応性有機化合物、フッ素化剤および水を含む組成物を提供すること;および、
c)該組成物中の水の濃度を実質的に減少させるのに有効な条件下で、該組成物に、該水反応性物質を導入すること、
を含む、上記方法。
【請求項2】
フッ素化プロセス流から水を除去する方法であって:
a)有機化合物、フッ化水素および水を含むプロセス流を提供すること;
b)該プロセス流に、2〜約5個の炭素原子を有する塩素置換されたビニル化合物を導入すること;
c)該塩素置換されたビニル化合物を反応させ、水と反応する中間体を形成させること;および、
d)該中間体を該水で加水分解することによって、該プロセス流から水を除去すること、
を含む、上記方法。
【請求項3】
前記中間化合物が、カルボカチオンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記塩素置換されたビニル化合物が、トリクロロエチレンを含み、前記中間体は、置換されたアセトアルデヒドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記中間体が、トリクロロエチレンオキサイドを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記反応工程c)が、酸素の存在下で、前記塩素置換されたビニル化合物を反応させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記反応工程c)が、酸素の存在下で、前記塩素置換されたビニル化合物を反応させ、トリクロロエチレンオキサイドを含む中間体を形成させることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プロセス流の温度が、約100℃〜約550℃である、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記プロセス流の圧力が、約50psig〜約100psigである、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記2,2−ジクロロアセトアルデヒドが2,2−ジクロロヒドロキシアセトアルデヒドを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記カルボカチオンが、式Cl−C−Rを有し、ここで、Rは、メチルアルデヒド、メチルヒドロキシクロライド、および、これらの組み合わせからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
フッ素化有機化合物の製造方法であって:
a.)少なくとも1種の有機反応性化合物を、該有機反応性化合物をフッ素化するのに有効な条件下で反応させ、反応混合物を製造する工程、ここで、該反応混合物は水を含む;および、
b.)該反応混合物に、2〜約5個の炭素原子を有する塩素置換されたビニル化合物を含む水反応性物質を導入する工程、ここで、該水反応性物質は、工程a)のフッ素化条件下で該反応混合物から該水の少なくとも実質的な部分を除去するのに有効である、
を含む、上記方法。
【請求項13】
前記反応性有機化合物が、塩素化したビニル化合物である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記塩素化したビニルが、少なくとも1個の塩素置換基を有するエチレンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記塩素化したビニル化合物が、トリクロロエチレンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記水反応性物質が、有機物質の総重量と水反応性物質の重量との合計に基づき、前記反応混合物の約0.05モル%〜50モル%を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
フッ素化有機化合物の生成物流中に存在するあらゆる水の実質的な部分が、トリクロロエチレン、酸素、トリクロロエチレンの反応によって生成した中間生成物、酸の存在下でトリクロロエチレンと酸素との反応によって生成した中間生成物、および、これらの2種またはそれ以上の組み合わせからなる群より選択される化合物と反応させた後に除去される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記反応工程a)が、フッ素化触媒の存在下で、前記反応性有機化合物とフッ化水素とを反応させ、水の副生成物を含むフッ素化有機化合物の生成物流を形成させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記導入工程b)が、前記反応混合物に酸素を導入することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記フッ素化触媒が、クロムを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記フッ素化有機化合物が、ハイドロフルオロカーボンである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記フッ素化有機化合物が、ハイドロクロロフルオロカーボンである、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
反応性有機化合物、フッ素化剤および水を含むプロセス流を有するタイプのフッ素化プロセスから水を除去する方法であって、
該プロセスにおける水の濃度を実質的に減少させるのに有効な条件下で、該プロセス流に、2〜約5個の炭素原子を有する塩素置換されたビニル化合物を含む水反応性物質を少なくとも1種導入することを含む、上記方法。

【公表番号】特表2007−510749(P2007−510749A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539805(P2006−539805)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/037501
【国際公開番号】WO2005/049535
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】