説明

ハイブリッド作業車

【課題】ハイブリッド作業車がコントローラの異常で暴走するのを防いで作業の安全性を高める。
【解決手段】エンジン(1)の駆動力または電動モータ(2)の駆動力のうちのいずれか一方または両方で動力伝動装置(3)を駆動する構成とし、バッテリ(4)から電力コントローラ(6)を介してモータコントローラ(7)へ電流を供給し、モータコントローラ(7)からの出力電流で電動モータ(2)の出力回転速度を制御する構成とし、電力コントローラ(6)の入力側にポジションセンサ(5)を接続すると共に電力コントローラ(6)の出力側には電圧検出手段(8)を設け、電圧検出手段(8)で検出された電圧が正常値よりも低い場合にモータコントローラ(7)への電力供給を遮断する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源としてエンジンと電動モータを併用使用或いは切換使用するハイブリッド作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動と電動モータ駆動を併用したハイブリッド作業車は、燃料消費の低減を図ってコンバインやトラクタで提案されている。
例えば、下記特許文献1にはハイブリッド作業車としてのトラクタが記載され、エンジンの動力で駆動する発電機とこの発電機にて充電するバッテリを備え、エンジン出力で走行装置と作業機を駆動するエンジン駆動モードと前記バッテリからの電力で駆動する電動モータで走行装置と作業機を駆動するモータ駆動モードの切換が選択スイッチの切換で行えるようにしている。
【0003】
また、下記特許文献2にはハイブリッド作業車としてのコンバインが記載され、電動モータの動力で脱穀装置等各駆動部の駆動を補助するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−235572号公報
【特許文献2】特開2004−242558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記ハイブリッド作業車においてモータ駆動モードで走行作業する場合は、コントローラで電動モータの回転速度を制御しているので、コントローラに異常が生じると暴走することになる。
【0006】
そこで、本発明では、ハイブリッド作業車がコントローラの異常で暴走するのを防いで安全に走行作業を出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、動力伝動装置(3)へエンジン(1)の駆動力と電動モータ(2)の駆動力を入力し、該エンジン(1)の駆動力または電動モータ(2)の駆動力のうちのいずれか一方または両方で動力伝動装置(3)を駆動する構成としたハイブリッド作業車において、バッテリ(4)から電力コントローラ(6)を介してモータコントローラ(7)へ電流を供給し、該モータコントローラ(7)からの出力電流で電動モータ(2)の出力回転速度を制御する構成とし、前記電力コントローラ(6)の入力側にポジションセンサ(5)を接続すると共に該電力コントローラ(6)の出力側には電圧検出手段(8)を設け、該電圧検出手段(8)で検出された電圧が正常値よりも低い場合にモータコントローラ(7)への電力供給を遮断する構成としたことを特徴とするハイブリッド作業車とした。
【0008】
この構成で、ポジションセンサ(5)を操作してモータコントローラ(7)を介して電動モータ(2)の回転速度変更を行うが、電力コントローラ(6)の出力側に設ける電圧検出手段(8)で検出する電圧が異常に低い場合には電力コントローラ(6)とポジションセンサ(5)のどちらかに異状が生じている可能性があるので、モータコントローラ(7)への電力供給を遮断して電動モータ(2)を停止して動力伝動装置(3)の駆動を行わず走行を停止する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記電圧検出手段(8)の電圧検出を走行装置の駆動開始時に行う構成としたことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド作業車とした。
この構成で、動力伝動装置(3)の駆動開始時にポジションセンサ(5)の異状が検出され、動力伝動装置(3)が駆動されない。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記電圧検出手段(8)で検出される電圧が正常値よりも低い場合に警報を出力する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド作業車とした。
【0011】
この構成で、変速レバー等でポジションセンサ(5)を操作しても動力伝動装置(3)が駆動されない原因を作業者が直ちに知ることが出来る。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によると、電力コントローラ(6)とポジションセンサ(5)の異状を電圧検出手段(8)で出力電圧の低下として検出し、動力伝動装置(3)の駆動を停止するので、電力コントローラ(6)とポジションセンサ(5)の異常出力による動力伝動装置(3)の暴走を事前に防ぐことができ、安全性を高めることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、動力伝動装置(3)の駆動開始時にポジションセンサ(5)の異状が検出されるので、作業を開始することが無く、異常停止の対応を迅速に行なうことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によると、上記請求項1に記載の発明の効果に加え、電力コントローラ(6)とポジションセンサ(5)の異状を作業者が直ちに知って、異状停止の対応を素早く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明実施例の伝動機構線図である。
【図2】主変速レバーの側面図である。
【図3】制御回路線図である。
【図4】コンバインの平面図である。
【図5】コンバインの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
図1に示す伝動機構図で、動力伝動装置としてのミッションケース3の第一入力軸10に取り付けた入力プーリ11とエンジン1の出力軸12に取り付けた出力プーリ13をベルト14で連結し、クラッチプーリ15で動力伝動の断続を行う。
【0017】
さらに、ミッションケース3内で前記第一入力軸10の軸線上に電動モータ2の電動出力軸17を位置して電動モータ2をミッションケース3に取り付ける。この電動出力軸17と第一入力軸10は、ワンウエイクラッチ16で連結し、第一入力軸10の回転が低下すると電動出力軸17の回転で回転低下を防ぐ。第一入力軸10の回転は、ミッションケース3内の変速伝動機構19で変速されて出力駆動軸20を回転し、スプロケット18でクローラベルト(図示省略)を回転して走行する。
【0018】
図2は、主変速レバー22を示し、枢支軸21に枢支した取付円板26に主変速レバー22の基部を固着し、この取付円板26に隣接して機枠に固定したポジションセンサ5のアーム25に取付円板26のピン24を係合し、主変速レバー22の回動でポジションセンサ5のアーム25を回動して変速信号を入力する。
【0019】
図3は、電動モータ2の制御回路図で、電力コントローラ6にバッテリ31とモニタ30とポジションセンサ5を接続し、ポジションセンサ5の信号によって1.0Vから4.0Vの電力を電力コントローラ6に送り、モニタ30に異状表示信号を送る。27は起動スイッチである。
【0020】
電力コントローラ6の出力側にモータコントローラ7を接続し、この電力コントローラ6からモータコントローラ7に送る電力を検出する電圧検出手段として電圧計8を設け、起動スイッチ27を入れると、1.0V以上を電圧計8が検出する状態が正常で、それ以下或いは零であれば、故障としてモニタ30に異状表示を行い、リレーを介して起動スイッチ27を遮断し、電動モータ2の駆動を行わない。
【0021】
モータコントローラ7は、電動モータ2に送る周波数を制御してインバータモータとしての電動モータ2の回転を制御する。
なお、ミッションケース3の出力駆動軸20の回転を検出する回転センサを設けて、ポジションセンサ5の出力に応じた回転数が出ていない場合にもモニタ30に異状表示信号を送り電動モータ2を停止するようにしても良い。
【0022】
また、通常速度で走行する場合は電動モータ2の駆動で行い、最高速度で走行する場合にクラッチプーリ15を入れてエンジン1の駆動力を電動モータ2の駆動力と共にミッションケース3に入力するようにしても良い。
【0023】
ハイブリッド作業車としてコンバインに電動モータ2を装着する場合に、電動モータ2を刈取装置の駆動とミッションケース3の油圧無段変速装置とを駆動できるようにして、高・中・低の三段変速が行える副変速レバーを路上走行に使用する高速にした場合には、電動モータ2の刈取駆動を切って油圧無段変速装置への駆動補助クラッチを入れるようにし副変速レバーが高速以外では電動モータ2が刈取装置を駆動するようにすれば、電動モータ2の駆動力を有効に使って油圧無段変速装置を小型化出来る。
【0024】
また、刈取装置の駆動に電動モータ2を使用するハイブリッドコンバインにおいて、刈取中断を検出する手段(操向レバーを全ストロークの1/3以上倒して旋回する場合や刈取分草杆先端を地上高35mmよりも上昇させた場合や刈取搬送経路に設けた複数の穀稈センサが全てオフの場合等を検出する手段)を設け、刈取中断のときに刈取装置の駆動を切り、ミッションケース3内の伝動軸を駆動して走行するか走行補助をするようにしても良い。
【0025】
図4は、コンバイン34の平面図で、前側に刈取装置36を設け右側に座席35を設け左後に脱穀装置37を設けた機体の左側に平面視でくの字状に張り出し可能に設けるナローガイド38に穀稈センサ39をその接触子40が最外側に飛び出すように取り付けている。この穀稈センサ39の本体部41はナローガイド38の内側に位置して穀稈に直接接触することが無く、ボルト42で本体部41をナローガイド38に前後方向へ取付位置を変更可能である。
【0026】
刈り取り作業は、圃場の平面視で四角形刈り残しとなる左回りで行い、直進時に穀稈センサ39が穀稈に接触して直進刈取走行中を検出し、穀稈センサ39が穀稈から外れて所定の時間で刈取装置36の駆動を停止して上昇させ機体の左旋回を開始し、90°機体方向を左に向け所定距離後進した後に、再び刈取装置36降下し駆動して機体を前進して刈り取り作業を続行する。つまり、穀稈センサ39が穀稈なしを検出すると穀稈をクローラで踏みつけない最端距離で自動的に機体の旋回を開始するのである。
【0027】
上記は左回りで刈り取り作業を行う場合であって、右回りで刈り取り作業を行うコンバインの場合には、穀稈センサ39を機体の最右側に設ければ良い。
なお、穀稈センサ39は上下可能なナローガイド38のどのような高さの張り出し位置でもその接触子40を穀稈接触位置に突出させるようにしている。
【符号の説明】
【0028】
1 エンジン
2 電動モータ
3 動力伝動装置(ミッションケース)
4 バッテリ
5 ポジションセンサ
6 電力コントローラ
7 モータコントローラ
8 電圧検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝動装置(3)へエンジン(1)の駆動力と電動モータ(2)の駆動力を入力し、該エンジン(1)の駆動力または電動モータ(2)の駆動力のうちのいずれか一方または両方で動力伝動装置(3)を駆動する構成としたハイブリッド作業車において、バッテリ(4)から電力コントローラ(6)を介してモータコントローラ(7)へ電流を供給し、該モータコントローラ(7)からの出力電流で電動モータ(2)の出力回転速度を制御する構成とし、前記電力コントローラ(6)の入力側にポジションセンサ(5)を接続すると共に該電力コントローラ(6)の出力側には電圧検出手段(8)を設け、該電圧検出手段(8)で検出された電圧が正常値よりも低い場合にモータコントローラ(7)への電力供給を遮断する構成としたことを特徴とするハイブリッド作業車。
【請求項2】
前記電圧検出手段(8)の電圧検出を走行装置の駆動開始時に行う構成としたことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド作業車。
【請求項3】
前記電圧検出手段(8)で検出される電圧が正常値よりも低い場合に警報を出力する構成としたことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−155848(P2011−155848A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17563(P2010−17563)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】