説明

ハイブリッド充電器およびハイブリッド蓄電装置

【課題】自然エネルギーに基づいた発電によって得られる電力を最大限かつ有効的に利用しつつも、バッテリーを傷めずに充電することができるハイブリッド充電器を提供する。
【解決手段】自然エネルギー発電機からの電力の供給を受ける不安定電源制御部と、安定的電源からの電力の供給を受ける安定電源制御部とを備え、不安定電源制御部及び安定電源制御部は、少なくとも2つのバッテリーに対して充電出力を切り替えるための出力切替スイッチが設けられており、バッテリーの充電状態が、終期状態ではないと判定された場合には、不安定電源制御部からバッテリーに対して充電を行うように出力切替スイッチが切り替わり、バッテリーの充電状態が、終期状態であると判定された場合には、安定電源制御部からバッテリーに対して充電を行うように出力切替スイッチが切り替わるように、不安定電源制御部及び安定電源制御部によって出力切替スイッチを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自然エネルギーなどの不安定な発電に基づく電力と、商用電源などの安定した電力をハイブリッドに利用することによって、環境への負荷を低減するとともに、バッテリーへの負荷も低減することができるハイブリッド充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料(石油、天然ガス、オイルサンドなど)やウラン等の枯渇への対策や、地球温暖化の緩和などのために、太陽光や風力、地熱などの再生可能なエネルギーの活用が求められている。
【0003】
しかしながら、太陽光や風力、地熱など自然現象に由来した自然エネルギーは、天候などに依存し極めて不安定であり、自然エネルギーに基づいた発電によって得られる電力をそのまま送電網などに流すことは望ましくない。
【0004】
このため、不安定な電力を一度、バッテリーに蓄電することによって、必要なときにバッテリーから送電網へ電力を送るようにすることで、送電網の負荷の平準化を図り、送電網の電力を安定化することが重要となってくる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、バッテリーの充電に際しては、充電の初期(すなわち、バッテリーの充電量が少ない場合)には、大電流によって充電しても何ら問題は生じないが、充電の終期(すなわち、バッテリーの充電がほとんど完了している状態)では、充電電流を抑えて小電流による均等充電を行わないと、バッテリーを傷め、バッテリーの寿命を短くしてしまう恐れがある。
【0006】
このため、不安定な自然エネルギーに基づいた発電によって得られる電力だけによって、バッテリーの充電を行うと、充電の終期にバッテリーに大電流が流れ込むこともあり、バッテリーを傷めてしまう可能性があった。
【0007】
また、バッテリーの保護のため、充電の終期にバッテリーに大電流が流れ込まないようにした場合、余分な電力を別途設けられた負荷などによって消費し、発電した電力を無駄に捨てることになっていた。
【0008】
本発明は、このような現状に鑑み、自然エネルギーに基づいた発電によって得られる電力を最大限かつ有効的に利用しつつも、バッテリーを傷めずに充電することができるハイブリッド充電器を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、自然エネルギーに基づいた発電によって得られる電力を最大限かつ有効的に充電することができ、必要なときに、外部装置(外部負荷)に対して、電力を供給することができるハイブリッド蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明のハイブリッド充電器は、自然エネルギー発電機からの電力の供給を受ける不安定電源制御部と、
安定的電源からの電力の供給を受ける安定電源制御部と、を備え、
前記不安定電源制御部及び前記安定電源制御部は、少なくとも2つのバッテリーに対して充電出力を切り替えるための出力切替スイッチが設けられており、
前記バッテリーの充電状態が、終期状態ではないと判定された場合には、不安定電源制御部からバッテリーに対して充電を行うように前記出力切替スイッチが切り替わり、
前記バッテリーの充電状態が、終期状態であると判定された場合には、安定電源制御部からバッテリーに対して充電を行うように前記出力切替スイッチが切り替わるように、前記不安定電源制御部及び前記安定電源制御部によって出力切替スイッチの制御が行われることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のハイブリッド充電器は、前記安定電源制御部が、AC/DC変換器を備え、
前記バッテリーの充電状態が、終期状態であると判定された場合には、安定電源制御部によって小電流かつ定電圧の電力による充電が行われるように制御されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のハイブリッド充電器は、前記不安定電源制御部ならびに安定電源制御部と、前記バッテリーとの間にDC/AC変換器またはパワーコンディショナーが備えられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のハイブリッド充電器は、前記自然エネルギー発電機がソーラーパネルであるとともに、
前記不安定電源制御部が、DC/DC変換器を備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のハイブリッド充電器は、前記自然エネルギー発電機から不安定電源制御部に対する電力の供給が低下している場合に、前記不安定電源制御部からバッテリーに対する充電を停止し、前記安定電源制御部のみによって、前記バッテリーの充電を行うように前記出力切替スイッチが切り替わるように、前記不安定電源制御部及び前記安定電源制御部によって出力切替スイッチの制御が行われることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のハイブリッド蓄電装置は、
上述するハイブリッド充電器と、
少なくとも2つのバッテリーと、
前記不安定電源制御部及び前記安定電源制御部と、前記少なくとも2つのバッテリーとの間に設けられたDC/AC変換器と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、自然エネルギーに由来する電力の供給状態およびバッテリーの充電状態に基づいて、複数のバッテリーに対して最適な充電を行うことができるため、自然エネルギーに基づいた発電によって得られる電力を最大限かつ有効的に利用しつつも、バッテリーを傷めずに充電することができる。
【0017】
また、少なくとも2つのバッテリーに対して切り替えながら充電を行っているため、電力を無駄に捨てるようなこともなく、自然エネルギーに由来する電力の利用効率(充電効率)を1.5倍から2倍に向上させることができる。
【0018】
さらに、バッテリーを傷めずに効率よく充電することができるため、従来の充電方法と比べてバッテリーの寿命を大きく改善させることができ、具体的には、バッテリー寿命を1.5倍から2倍に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明のハイブリッド充電器の概略回路構成図である。
【図2】図2は、本発明のハイブリッド蓄電装置の実施例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明のハイブリッド充電器の概略回路構成図である。
図1に示すように、本発明のハイブリッド充電器10は、例えば、ソーラーパネルや風力発電機などの自然エネルギー発電機30からの入力を受ける不安定電源制御部12と、例えば、商用電源などの安定的電源32からの入力を受ける安定電源制御部14とを備えている。
【0021】
不安定電源制御部12は、本実施例においては、ソーラーパネルからの入力を受けることを想定して、DC/DC変換器16を備えているが、交流電流の入力を受けることが想定される場合には、AC/DC変換器を備えるようにすればよい。
【0022】
また、安定電源制御部14は、本実施例においては、商用電源からの入力を受けることを想定して、AC/DC変換器18を備えているが、商用電源などの安定的電源32から電力が供給されず、別のバッテリーから電力の供給を受けることが想定される場合には、DC/DC変換器を備えるようにすればよい。
【0023】
また、不安定電源制御部12および安定電源制御部14には、それぞれ、出力切替スイッチ20a,20b、22a,22bが設けられており、2つのバッテリー24,26への充電出力を切り替えられるように構成されている。
【0024】
なお、本実施例においては、2つのバッテリー24,26への充電が行えるように2系統の充電回路が構成されているが、少なくとも2つのバッテリーへの充電が行えるように構成されていればよく、3つ以上のバッテリーへの充電が行えるように構成されていても構わない。
【0025】
また、本明細書において「バッテリー」とは、単独のバッテリー装置であってもよいし、例えば、複数のバッテリー装置からなる組バッテリーなどであっても構わず、後述するように、少なくとも2つのバッテリー24,26に対して、切り替えながら充電できるように構成されていればよい。
【0026】
また、本発明のハイブリッド充電器10で充電を行うバッテリー24,26としては、特に限定されるものではないが、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素二次電池、リチウム電池などを用いることができる。
【0027】
なお、近年使われるようになってきた再生バッテリーなどを用いることも可能である。このように、再生バッテリーを用いることによって、後述するような、本発明のハイブリッド充電器10を備えたハイブリッド蓄電装置のコストを低減することができる。
【0028】
このように構成された本発明のハイブリッド充電器10では、測定機器15を用いて、バッテリー24,26の電圧や残容量などバッテリー充電情報を測定しながら、不安定電源制御部12からの充電と、安定電源制御部14からの充電を自動的に制御するように構成されている。
【0029】
具体的には、要充電のバッテリー24,26を本発明のハイブリッド充電器10に接続した状態で、ハイブリッド充電器10を起動させることによって、出力切替スイッチ20aがオン状態となり、20b,22a,22bがオフ状態となる。
【0030】
これによって、バッテリー24が、自然エネルギー発電機30によって発電された電力によって充電されることになる。
バッテリー24の充電中は、バッテリー24のバッテリー充電情報が逐次測定され、不安定電源制御部12および安定電源制御部14によって、バッテリー24の充電状態(すなわち、充電の初期段階なのか、中盤段階なのか、終期段階なのかの判定が行われている。
【0031】
なお、バッテリー24の充電状態の判定については、例えば、バッテリー24の電圧値が所定の電圧値を超えたか否かによって判定したり、バッテリー24の残容量が所定の容量を超えたか否かによって判定したりすることができる。
【0032】
このようにして、バッテリー24の充電状態が終期段階であると判定された場合には、スイッチ20b,22aがオン状態となり、スイッチ20a,22bがオフ状態となる。
このようにスイッチ20a,20b,22a,22bが切り替わることによって、バッテリー24が、安定的電源32によって充電されることになり、バッテリー26が自然エネルギー発電機30によって発電された電力によって充電されることになる。
【0033】
このとき、バッテリー24は、安定電源制御部14によって比較的小電流・定電圧の充電が行われる。このように、小電流・定電圧の充電を行うことによって、バッテリー24にストレス無く、かつ、効率的に充電することができる。
【0034】
なお、このように充電の終期において、小電流・定電圧の充電を行うことによって、バッテリーのセルバランスの安定化が図れ、経時劣化などによってセルバランスの崩れたバッテリーを回復させることもできる。
【0035】
また、上述するように、安定的電源32から電力の供給が受けられず、別のバッテリーから電力の供給を受けるような場合であっても、バッテリー24,26の充電には比較的小電流の電力が充電の終期段階にのみ用いられるため、1つのバッテリーによって、複数のバッテリーの充電を行うことが可能である。
【0036】
一方で、バッテリー26には、自然エネルギー発電機30によって発電された電力によって充電が開始される。このため、自然エネルギー発電機30によって発電された電力が無駄にならず、自然エネルギーに基づいた電力を最大限充電に活用することができる。
【0037】
なお、バッテリー26は、バッテリー24と同様に、測定機器15によって、バッテリー充電情報が逐次測定され、バッテリー26の充電状態が、充電の終期段階であると判定されるまで、自然エネルギー発電機30によって発電された電力によって充電がなされ、充電の終期段階であると判定された後は、安定的電源32によって小電流・定電圧による充電が行われる。
【0038】
ところで、自然エネルギー発電機30として、例えば、ソーラーパネルを用いた場合には、夜間などには発電を行うことができず、不安定電源制御部12によってバッテリー24,26の充電が行えないことになる。
【0039】
このような場合、すなわち、自然エネルギー発電機30から不安定電源制御部12に対する電力の供給が低下している場合には、スイッチ20a,20bがオフ状態となり、スイッチ22a,22bがオン状態となる。
【0040】
そして、安定電源制御部14によって、バッテリー24,26ごとの充電状態に合わせた充電、すなわち、充電状態が、充電の初期段階から中盤段階であると判定されたバッテリーに対しては、比較的大電流の電圧を印加することによって充電を行い、充電の終期段階であると判定されたバッテリーに対しては、比較的小電流・定電圧による充電が行われることになる。
【0041】
図2は、本発明のハイブリッド蓄電装置50の実施例を示す概略構成図である。
なお、この実施例のハイブリッド蓄電装置50は、図1に示したハイブリッド充電器10を含んだ構成となっており、同一の構成部材には、同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0042】
この実施例のハイブリッド蓄電装置50は、図1に示したハイブリッド充電器10と、複数のバッテリー24,26とを備え、ハイブリッド充電器10の不安定電源制御部12、安定電源制御部14と、バッテリー24,26との間に、外部負荷に接続するためのDC/AC変換器28が接続されている。
【0043】
DC/AC変換器28を設けることによって、バッテリー24,26がともに、安定電源制御部14によって、小電流・定電圧による充電が行われている場合には、出力切替スイッチ20a,20b,22a,22bを全てオン状態とするとともに、外部負荷切替スイッチ23a,23bをオン状態とすることによって、自然エネルギー発電機30によって発電された電力を、例えば、本発明のハイブリッド蓄電装置50が設置されている工場や倉庫の電灯などの外部負荷に供給することができる。
【0044】
なお、自然エネルギー発電機30によって、バッテリー24,26を充電するには過分の発電量が得られた場合にも同様にして、バッテリー24,26への充電を行いながら、外部負荷に過分の電力を供給することもできる。
【0045】
さらに、バッテリー24,26への充電が完了している場合には、本発明のハイブリッド蓄電装置50を、自然エネルギー発電機30および安定的電源32から切断することによって、ポータブル式のハイブリッド蓄電装置50とすることができる。
【0046】
このように、本発明のハイブリッド蓄電装置50をポータブル式とすることによって、上述するような工場や倉庫の電灯などの外部負荷だけではなく、例えば、電飾や農業用途など既知の外部負荷にも電力を供給できる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、DC/AC変換器28を介して外部負荷と接続されるように構成したが、パワーコンディショナーなどを介して商用電力網などを接続して、自然エネルギー発電機30によって発電された余剰な電力を、電力会社などに売却するように構成しても構わないなど、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 ハイブリッド充電器
12 不安定電源制御部
14 安定電源制御部
15 測定機器
16 DC/DC変換器
18 AC/DC変換器
20a,20b,22a,22b 出力切替スイッチ
23a,23b 外部負荷切替スイッチ
24 バッテリー
26 バッテリー
28 DC/AC変換器
30 自然エネルギー発電機
32 安定的電源
50 ハイブリッド蓄電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギー発電機からの電力の供給を受ける不安定電源制御部と、
安定的電源からの電力の供給を受ける安定電源制御部と、を備え、
前記不安定電源制御部及び前記安定電源制御部は、少なくとも2つのバッテリーに対して充電出力を切り替えるための出力切替スイッチが設けられており、
前記バッテリーの充電状態が、終期状態ではないと判定された場合には、不安定電源制御部からバッテリーに対して充電を行うように前記出力切替スイッチが切り替わり、
前記バッテリーの充電状態が、終期状態であると判定された場合には、安定電源制御部からバッテリーに対して充電を行うように前記出力切替スイッチが切り替わるように、前記不安定電源制御部及び前記安定電源制御部によって出力切替スイッチの制御が行われることを特徴とするハイブリッド充電器。
【請求項2】
前記安定電源制御部が、AC/DC変換器を備え、
前記バッテリーの充電状態が、終期状態であると判定された場合には、安定電源制御部によって小電流かつ定電圧の電力による充電が行われるように制御されることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド充電器。
【請求項3】
前記不安定電源制御部ならびに安定電源制御部と、前記バッテリーとの間にDC/AC変換器またはパワーコンディショナーが備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載のハイブリッド充電器。
【請求項4】
前記自然エネルギー発電機がソーラーパネルであるとともに、
前記不安定電源制御部が、DC/DC変換器を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハイブリッド充電器。
【請求項5】
前記自然エネルギー発電機から不安定電源制御部に対する電力の供給が低下している場合に、前記不安定電源制御部からバッテリーに対する充電を停止し、前記安定電源制御部のみによって、前記バッテリーの充電を行うように前記出力切替スイッチが切り替わるように、前記不安定電源制御部及び前記安定電源制御部によって出力切替スイッチの制御が行われることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハイブリッド充電器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のハイブリッド充電器と、
少なくとも2つのバッテリーと、
前記不安定電源制御部及び前記安定電源制御部と、前記少なくとも2つのバッテリーとの間に設けられたDC/AC変換器と、
を備えることを特徴とするハイブリッド蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−99125(P2013−99125A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240029(P2011−240029)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(508092130)有限会社オーエイチケー研究所 (6)
【Fターム(参考)】