説明

ハイブリッド式駆動装置、クレーン制御装置、及びクレーン装置

【課題】ハイブリッド式駆動装置(クレーン制御装置)において、エンジン発電機の燃費の向上を図り、また、エンジンの回転数制御を簡単にする。
【解決手段】クレーン制御装置では、運転モードを、バッテリ52から負荷40に電力を供給する運転モードA、負荷30から回生される回生電力によりバッテリ52を充電する運転モードB、エンジン発電機21及びバッテリ52から負荷30及び40に電力を供給する運転モードC、エンジン発電機21からバッテリ52を充電する運転モードDのいずれかに切り替える。また、エンジン発電機21を駆動するエンジン22の回転数を「アイドリング(低回転数)」または「出力(定格回転数)」のいずれかの状態のみで運転する。そして、運転モードAにおいては、エンジン22を「アイドリング」にし、運転モードB、C、Dにおいては、エンジン22を「出力」にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン発電機と蓄電装置とによりモータ等の負荷を駆動するハイブリッド式駆動装置に関し、特に、コンテナ等の荷物の積み降ろし、積み込み等の運搬時に用いられるクレーン装置のクレーン制御装置、及びクレーン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾等においては、クレーン装置によって船舶或いはトレーラへのコンテナの積み込み及び船舶或いはトレーラからのコンテナの積み降ろし等の運搬作業(荷役作業)が行われている。この種のクレーン装置としては、車輪によって路面上を自走するクレーンが知られている。このクレーンは、上部に昇降装置を有する門型に構成された架台の両下端部に車輪が設けられ、この車輪によって走行可能とされたものであり、車輪を駆動させるための走行モータ、コンテナを吊り上げるための巻き取りモータ、吊り上げたコンテナを水平方向へ移動させる横行モータを有している。そして、このクレーンには、エンジン発電機が搭載されており、このエンジン発電機によって発電した電力を各モータへ供給している。
【0003】
ところで、エンジン発電機によって発電した電力により各モータを駆動する場合、クレーン作業の中で、実際に吊り作業を行っていない荷役待機中の場合であっても、エンジンの運転を継続しなければならない。すなわち、荷役待機中であっても、照明装置、空調設備等の補機を駆動し、巻上クラッチ、巻上ブレーキ等の補機の油圧ポンプ等を駆動するためにエンジン発電機の運転を継続することが必要とされる。このように、荷役待機中においても、エンジン発電機は、エンジンを所謂アイドリング状態にして発電し続けなければならない。
【0004】
この荷役待機中においては、効率(燃料消費率)の悪い低負荷領域でエンジンを運転することになり、エネルギーロスが大きく燃費が悪いというだけでなく、排気ガス、騒音等が生じていた。そこで、省エネルギー化、環境保全対策を図るために蓄電池装置を備えるクレーンの開発が進められている。
【0005】
なお、関連するクレーン装置(図8)及びクレーン制御方法がある(特許文献1を参照)。この特許文献1のクレーン装置は、蓄電装置の蓄電電力を補機設備で利用することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−247591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のクレーン装置は、エンジン発電装置又はインバータから共通母線に出力された余剰電力を蓄電装置に蓄電して、直流電力の不足時に当該蓄電電力を共通母線へ出力し、インバータにより、共通母線上の直流電力を交流電力に変換して当該クレーン装置の設備へ電力を供給している。所謂、ハイブリッド型のクレーン装置である。
【0008】
しかしながら、図8に示す特許文献1のクレーン装置では、負荷が小さい場合はエンジンの回転数を抑えてエンジンの燃費の改善を図っている。このため、エンジンの回転数が低い場合には直流発電機12の出力電圧も低くなり、発電した電圧を上げるための昇圧装置13が必要となり、機器構成が複雑となるという問題があった。また、エンジン発電機を制御するためのコントローラ7において、エンジン発電機の回転数を細かく制御する必要があり、エンジン回転数の制御ロジックが複雑となるという問題があった。さらに、エンジン回転数を細かく制御することにより、エンジン回転数を定格回転数以外の領域(エンジンの燃費効率の悪い領域)で運転する期間が長くなり、その分、エンジン発電機の燃費効率を低下させるという問題があった。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、発電機から負荷側に電力を供給する際には、エンジン(原動機)を常に高出力(例えば、定格回転数)で運転することによりエンジンの燃費を向上させ、さらには、エンジンの回転数制御を簡単にできる、ハイブリッド式駆動装置、クレーン制御装置、及びクレーン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のハイブリッド式駆動装置は、原動機と、前記原動機によって駆動される発電機と、前記発電機から電力の供給を受ける負荷であって、第1の負荷と、この第1の負荷より小さい第2の負荷とを含む負荷と、前記発電機に接続され前記負荷に電力を供給するバッテリを有する蓄電装置と、前記発電機、第1の負荷、第2の負荷、及び蓄電装置を相互に接続する回路の動作を制御するとともに、前記原動機の出力を高低いずれかの状態に切り替える制御部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のハイブリッド式駆動装置は、前記第1の負荷は、所定の値より負荷が大きい高負荷状態と、該所定の値より負荷が小さい低負荷状態との間で負荷が変動する負荷であり、前記制御部は、前記第1の負荷が高低いずれの負荷状態であるかによって前記原動機の出力及び前記回路の動作状態を切り替えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のハイブリッド式駆動装置は、前記制御部は、前記蓄電装置のバッテリ充電率SOCの大きさによって切り替えられる第1のフラグと、前記負荷が高低いずれの負荷状態であるかによって切り替えられる第2のフラグと、前記回路側に前記第1の負荷から回生電流が供給されるか否かによって切り替えられる第3のフラグと、の状態がいずれの組み合わせにあるかによって前記原動機の出力及び前記回路の動作を切り替えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のハイブリッド式駆動装置は、前記第3のフラグに代えて、負荷電力と、発電機の発電電力と、回生電力との大小比較によって制御を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のハイブリッド式駆動装置は、前記第2のフラグによる制御において、外部から供給される制御指令に応じて切り替えタイミングを変更することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のハイブリッド式駆動装置は、前記制御部は、前記発電機からの電力を遮断して前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給するバッテリ給電モードである運転モードA、前記発電機からの電力を遮断して前記負荷から回生される回生電力により前記バッテリを充電する負荷回生モードである運転モードB、前記発電機及び前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給する並列給電モードである運転モードC、前記発電機から前記バッテリを充電する運転モードDのいずれかの制御モードに切り替える機能を有し、さらに、前記制御部は、前記運転モードAでは、前記原動機を所定のアイドリング回転数で運転するアイドリング状態にし、前記運転モードB、C、Dにおいては、前記原動機を定格回転数で運転する出力状態にすることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のハイブリッド式駆動装置は、前記運転モードDは、さらに2つの運転モードD1と運転モードD2とに分けられ、前記運転モードD1は、前記負荷が前記所定の値より大きい高負荷状態であり、かつ前記負荷が前記第1の負荷から回生される回生電力より大きく、かつ所定の放電判定電力より小さい状態において選択され、前記運転モードD2は、前記負荷が前記所定の値より小さい低負荷状態であり、かつ前記第1のフラグにより蓄電装置への充電が要求されている状態において選択されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のハイブリッド式駆動装置は、前記運転モードD1及び運転モードD2においては前記バッテリへCC−CV充電が行われ、前記運転モードD1におけるバッテリへの第1の充電電圧設定値は、前記運転モードD1におけるバッテリへの第2の充電電圧設定値より小さく設定され(第1の充電電圧設定値<第2の充電電圧設定値)、前記運転モードD1における前記バッテリへの充電速度が、前記運転モードD2における前記バッテリへの充電速度よりも遅くなるように設定されることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のクレーン制御装置は、荷役作業を行うクレーン装置のクレーン制御装置であって、上記のいずれかのハイブリッド式駆動装置を備えることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のクレーン装置は、上記クレーン制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハイブリッド式駆動装置(例えば、クレーン制御装置)は、エンジン発電機を駆動する原動機の出力(回転数)を、低出力(例えば、アイドリング回転数)と高出力(例えば、定格回転数)のいずれかの状態で運転する。そして、発電機から負荷に電力を供給する際には、原動機を常に高出力(例えば、定格回転数)で運転させる。これにより、原動機の燃費を向上させることができる。さらには、原動機を低出力(例えば、アイドリング回転数)と高出力(例えば、定格回転数)のいずれかの状態で運転することにより、原動機(発電機)の回転数制御を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係わるクレーン装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成を示す図である。
【図3】運転モードについて説明するための図である。
【図4】エンジンの燃費特性を示す図である。
【図5】運転モードCについて説明するための図である。
【図6】運転モードとそのモード遷移について説明するための図である。
【図7】CC−CV充電について説明するための模式図である。
【図8】従来のエンジン発電機を備えるクレーン制御装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に、本発明のクレーン制御装置が用いられるクレーン装置の例について説明しておく。
図1は、本発明の実施形態に係わるクレーン装置の一例を示す概略構成図であり、トランスファクレーン(エンジン発電機付きクレーン)としてのクレーン装置1の全体構成を示す斜視図である。このクレーン装置1は、タイヤ式クレーン装置(RTG;Rubber−Tired−Gantrycrane )と呼ばれ、軌道のないコンテナヤード等を走行して荷役作業を行うため、動力用電源及び制御用電源等を供給する1台のエンジン発電機21を備えている。
このクレーン装置1は、クレーン走行機体2のガーダ3に沿って水平方向に移動するトロリー4を有し、コンテナCを把持するスプレッダと呼ばれる吊具5がトロリー4から垂れ下がる複数本の吊ロープ6によって吊り下げられている。吊具5は、トロリー4上に搭載された巻上装置7による吊ロープ6の巻き上げ、繰り出し動作によって昇降可能とされている。また、吊具5は、トロリー4の横行移動に追従してクレーン走行機体2のガーダ3に沿って平行移動可能とされている。
【0023】
(クレーン制御装置の構成の説明)
図2は、本発明の実施形態に係わるクレーン制御装置の構成図であり、クレーン装置(トランスファクレーン)1の駆動を制御するクレーン制御装置100のシステム構成を示している。なお、クレーン制御装置100は、エンジン発電機21とバッテリ52とを駆動源としてモータ等の負荷30及び40を駆動する、すなわち、クレーン制御装置100は、エンジン発電機21とバッテリ52との2種類の駆動源を組み合わせて使用するためハイブリッド式の駆動装置(「ハイブリッド式駆動装置」)とも呼ばれる。
【0024】
図2に示すクレーン制御装置100は、エンジン発電機21と、コントローラ11と、蓄電装置50(DC/DCコンバータ51とバッテリ52等)と、エンジン発電機21及びバッテリ52の両方から電力の供給を受ける負荷30及び40とを有して構成される。ここで、負荷30は、インバータ31、32、33、34、35及びモータM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7を含んで形成される、力行と回生を行う負荷である。また、負荷40は、補機を駆動するための専用の補機用インバータ41と補機42とを含んで形成される、力行のみで回生を行わない負荷である。
【0025】
エンジン発電機21は、エンジン(E)22と、このエンジン22により回転駆動される発電機(G)23とで構成される。このエンジン発電機21で発電された電力は、クレーン装置1の各種の駆動源となる負荷装置、補機などに給電して使用される。
発電機23は交流発電機(例えば、3相交流発電機)であり、発電機23の出力側には整流部24が接続されている。発電機23の交流出力電力は、整流部24により直流電力に変換される。この整流部24として、例えば、ダイードの3相ブリッジ回路と平滑用のコンデンサ(図示せず)を用いて構成することができる。なお、この整流部24としては、入力される交流電圧を位相制御して所望の電圧値の直流電圧を出力するコンバータを使用することもできる。
【0026】
この整流部24は、複数のインバータ31、32、33、34、35、41等の負荷装置全体に対して、直流母線DCLを通して直流電力を供給する共通コンバータとなる。また、直流母線DCLの電圧は電圧検出部26により検出され、この直流母線DCLの電圧検出値の信号が信号Vdcとしてコントローラ11に出力される。整流部24では、直流母線DCLの電圧が所定の電圧値を下回った場合、すなわち、直流母線DCLの電圧が、エンジン22が定格回転数で運転される場合のエンジン発電機21の出力電圧(より正確には整流部24の出力電圧)より小さくなった場合に、エンジン発電機21から直流母線DCLに直流電力が出力される。
【0027】
直流母線DCLには、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ31、32、33、34、35、及び41が接続される。インバータ31は、横行用のモータM1を駆動するインバータである。このインバータ31は、直流母線DCLに供給される直流電力を、コントローラ11内の負荷装置制御部12から出力される速度指令信号に応じた周波数と、電圧による、モータ回転方向に応じた相順の交流電力(3相交流電圧)に変換して横行用のモータM1を駆動する。
【0028】
また、インバータ32は、走行No.3用モータM2と小旋回用モータM3とを駆動するためのインバータであり、コンタクタk1により小旋回用モータM3を選択し、コンタクタk2により走行No.3用モータM2を選択して駆動する。このインバータ32は、直流母線DCLに供給される直流電力を、コントローラ11内の負荷装置制御部12から出力される速度指令信号に応じた周波数と、電圧による、モータ回転方向に応じた相順の交流電力(3相交流電圧)に変換して走行用モータM2または小旋回用モータM3を駆動する。
インバータ33は、走行No.4用モータM4を駆動するためのインバータであり、このインバータ33は、直流母線DCLに供給される直流電力を、コントローラ11内の負荷装置制御部12から出力される速度指令信号に応じた周波数と、電圧による、モータ回転方向に応じた相順の交流電力(3相交流電圧)に変換して走行No4用モータM4を駆動する。
【0029】
インバータ34は、走行No.2用モータM6または巻き用モータM5を駆動するためのインバータであり、コンタクタk4により走行No.2用モータM6を選択し、コンタクタk3により巻き用モータM5を選択して駆動する。また、インバータ35は、走行No.1用モータM7または巻き用モータM5を駆動するためのインバータであり、コンタクタk5により走行No.1用モータM7を選択し、コンタクタk3により巻き用モータM5を選択して駆動する。このように、インバータ34及び35は、巻き用モータM5を駆動する際には、コンタクタk3を閉じて、並列構成のインバータとして動作する。
【0030】
インバータ34は、直流母線DCLの直流電力を、コントローラ11内の負荷装置制御部12から出力される速度指令信号に応じた周波数と、電圧による、モータ回転方向に応じた相順の交流電力(3相交流電圧)に変換して巻き用モータM5、または走行No.2用モータM6を駆動する。インバータ35は、直流母線DCLの直流電力を、コントローラ11内の負荷装置制御部12から出力される速度指令信号に応じた周波数と、電圧による、モータ回転方向に応じた相順の交流電力(3相交流電圧)に変換して巻き用モータM5、または走行No.1用モータM7を駆動する。
【0031】
また、各インバータ31〜35は、駆動するモータの回転数ωrとトルク電流It(いずれも図示せず)の検出機能を備えており、このモータの回転数ωrとトルク電流Itの信号をコントローラ11内の負荷電力判定部14に向けて出力する。負荷電力判定部14では、モータの回転数ωrとトルク電流Itの信号を乗算することにより、各モータM1〜M7における負荷の大きさ(負荷電力∝ωr×It)を算出する。なお、市販のインバータ(例えば、ベクトル制御用のインバータ)については、モータトルク信号及びモータ回転数の信号を外部出力するように構成されているものが多い。
【0032】
また、インバータ31、32、33、34、35及びモータM1〜M7を含んで形成される負荷30は、運転状態に応じて、力行モード又は回生モードで動作する負荷である。
例えば、横行用モータM1、及び走行用モータM2、M4、M6、M7における回生動作は、横行または走行速度の減速時(モータ回転数の減速時)において一時的に行われるものであり、その回生エネルギーは、走行の場合にはクレーン装置全体の慣性エネルギーGDにより決まり、横行の場合には、トロリー4と吊具5とコンテナCの慣性エネルギーGDにより決まる。しかしながら、横行用モータM1、及び走行用のモータM2、M4、M6、M7における回生エネルギーは、走行抵抗(より正確には減速機の機械的な損失も含む)があるため、後述する巻き用のモータM5に比べて少ない。
【0033】
一方、巻き用のモータM5では、コンテナCの巻き下げ時において、コンテナの重量と移動距離(巻き下げ距離)とにより決まる位置エネルギーの減少分に応じた回生エネルギーが、巻き用のモータM5から連続して回生される。この巻き用のモータM5による回生エネルギーは、横行用モータM1や走行用モータM2、M4、M6、M7のように走行抵抗がなく、コンテナの重量と移動距離(巻き下げ距離)とに応じた大きな回生パワーが連続して得られる。このための、クレーン制御装置100において負荷30からの回生パワーが還されるのは、主に巻き下げの場合である。
【0034】
補機用インバータ41は、補機(照明装置や、油圧ポンプ等)42用の電源を生成するインバータであり、直流母線DCLの直流電力を、商用周波数の交流電力(3相交流電圧)に変換する。なお、インバータ41及び補機42を含んで形成される負荷40は、回生モードの動作を行わない負荷である。
【0035】
また、回生抵抗R25は、IGBT等のパワートランジスタTrを介して直流母線DCLに接続される電力消費用の抵抗器である。この回生抵抗R25は、直流母線DCLの電圧が過電圧になることを防ぐために設けられている。この直流母線DCLの電圧が、インバータ側から返される回生エネルギーの増加により所定の電圧値以上(過電圧検出値)に上昇した場合に、トランジスタTrが導通し、回生抵抗R25に電流を流して電力を消費させ、直流母線DCLの電圧を低下させる。
【0036】
また、直流母線DCLには、蓄電装置50が接続される。この蓄電装置50は、DC/DCコンバータ51とバッテリ52とを有し、バッテリ52はDC/DCコンバータ51を介して直流母線DCLに接続されている。このDC/DCコンバータ51は、コントローラ11内のDC/DCコンバータ制御部16により制御される両方向性のコンバータであり、バッテリ52に対して直流母線DCL側から充電電流を流すとともに、バッテリ52から直流母線DCL側に放電電流を流すDC/DCコンバータである。
【0037】
クレーン装置1において、補機のみを運転するなどの軽負荷時には、エンジン発電機21内のエンジン22をアイドリング状態(アイドリング回転数)にし、バッテリ52のみから負荷40に電力を供給する。また、荷役作業中の重負荷時においては、エンジン発電機21を定格回転数で運転して負荷30及び40に電力を供給するとともに、バッテリ52からも電力を供給する。これにより、クレーン装置1の待機中の軽負荷時には、バッテリ52から負荷40に電力を供給してエンジン22のアイドリング時間を長くできるようにし、また、重負荷時荷役作業中にはバッテリ52からも電力を供給するようにして、エンジン発電機21の燃費を全体として向上させている。また、エンジン排気ガス等による環境への影響を少なくするようにしている。
【0038】
また、バッテリ52のバッテリ充電率SOC(state of charge:充電率)を検出するためのSOC検出部53が設けられている。このSOC検出部53では、例えば、バッテリ52の電池電圧(開路電圧)を基にバッテリ充電率SOCを検出する。バッテリ52の開路電圧は、バッテリ52に充放電電流が流れない状態、例えば、バッテリ52への充電と放電が切り替わる際などに検出することができる。また、例えば、バッテリ52への充電電流と充電時間と、バッテリ52からの放電電流と放電時間とを監視しておき、この監視データを基に、バッテリ充電率SOCを検出することもできる。
このSOC検出部53により検出されたバッテリ充電率SOCの情報は、信号SOCとしてコントローラ11内の運転モード制御部13に出力される。
【0039】
また、コントローラ11は、クレーン装置内のエンジン発電機21や、蓄電装置50や、インバータ31、32、33、34、35及びモータM1〜M7で形成される負荷30(回生を行う負荷)や、補機用インバータ41及び補機42で形成される負荷40(回生を行わない負荷)の駆動を制御するコントローラである。なお、図2に示す例では、コントローラ11の構成として、図面の見易さのために、本発明に直接関係する部分のみを示したものである。このコントローラ11は、PLC(Programmable Logic Controller、シーケンサとも呼ばれる)で構成され、DC/DCコンバータ51、エンジン発電機21、各インバータ31〜35、及び補機用インバータ41との間で各種の制御信号をやりとりすることにより、これらの機器を制御する。
【0040】
コントローラ11内には、負荷装置制御部12と、運転モード制御部13と、この運転モード制御部13により制御されるエンジン制御部15と、同じく運転モード制御部13により制御されるDC/DCコンバータ制御部16とが含まれる。また、コントローラ11には、クレーン操作部11Aからの操作信号が入力される。このクレーン操作部11Aは、クレーン運転者が、荷役作業の態様(巻き上げ、横行、走行、巻き下げ等)に応じてクレーン装置を運転操作するための操作部である。このクレーン操作部11Aは、クレーン運転者が行うノッチ操作(あるいはレバー操作やスイッチ操作)に応じた操作信号を生成して、コントローラ11内の負荷装置制御部12に出力する。
【0041】
負荷装置制御部12は、クレーン操作部11Aから出力される操作信号を入力し、この操作信号に基づいて、インバータ31、32、33、34、35及びモータM1〜M7の駆動を制御する。例えば、モータM1〜M7の起動/停止、及び回転(回転速度と回転方向)を制御する。また、負荷装置制御部12は、補機用インバータ41及び補機42の駆動を制御する。
【0042】
運転モード制御部13は、負荷装置制御部12から出力される負荷30及び40の駆動信号(負荷の運転状態)や、バッテリ充電率SOCや、負荷30及び40の要求動力に応じて、後述する運転モードを判定し、エンジン制御部15を通してエンジン22を制御し、DC/DCコンバータ制御部16を通してDC/DCコンバータ51を制御する。すなわち、運転モード制御部13は、DC/DCコンバータ制御部16を通して、DC/DCコンバータ51を制御し、バッテリ52の充電動作及び放電動作を制御する。
この運転モード制御部13では、エンジン22をアイドリング状態(あるいはアイドリングストップ(エンジン停止)状態)、または定格回転数の運転状態になるように制御する。なお、アイドリングとは、補機42にのみ電力を供給する軽負荷の場合や、無負荷に近い状態等において、エンジン22の回転を維持するために低回転(または所定の回転数)で回転させている状態のことを意味している。エンジン制御部15は、運転モード制御部13から出力される指令信号に従い、エンジン22を、アイドリン回転数(あるいはアイドリングストップ)、または定格回転数のいずれかの運転状態になるように制御する。
また、この運転モード制御部13には、駆動する負荷30及び40の負荷電力の大きさを判定する負荷電力判定部14が含まれる。この負荷電力判定部14の動作については後述する。
【0043】
DC/DCコンバータ制御部16は、運転モード制御部13から出力される制御信号を入力とし、この制御信号に従い、DC/DCコンバータ51の動作を制御する。DC/DCコンバータ51は、所定の運転モード(例えば、後述する運転モードA)において、DC/DCコンバータ制御部16から入力される電流指令信号Irefに応じて、直流母線DCLからバッテリ52に流す充電電流を制御する。この運転モードAにおいては、DC/DCコンバータ制御部16は、直流母線DCLの電圧Vdcが一定となるように電流指令信号Irefを生成してDC/DCコンバータ51を制御する。すなわち、運転モードAにおいて、DC/DCコンバータ51は、DC/DCコンバータ制御部16から出力される電流指令信号Irefによりバッテリ52から直流母線DCLに流す放電電流を制御することにより、直流母線DCLの電圧Vdcが所定の一定値になるように定電圧制御する。これにより負荷40等に必要な電力が自動的に供給される。
【0044】
また、DC/DCコンバータ制御部16内には、CC−CV充電制御部17を有している。このCC−CV充電制御部17は、所定の運転モード(例えば、後述する運転モードD)において、直流母線DCL側からバッテリ52に充電電流を流して充電行う場合に、定電流定電圧充電(CC−CV充電)が行われるように、DC/DCコンバータ51を制御する。このDC/DCコンバータ制御部16からDC/DCコンバータ51に向けて充電電圧設定値Vset及び充電電流設定値Isetの信号が出力される。この充電電圧設定値Vsetの信号は、バッテリ52を充電する際にバッテリ52に印加する充電電圧を設定するための信号であり、この充電電圧設定値Vsetを変化させることにより、バッテリ52を充電する際の充電速度を変化させる。また、CC充電を行う際に、充電電流(定電流CC)を充電電流設定値Isetにより設定する。なお、充電電圧設定値Vsetの詳細については後述する。
【0045】
(運転モードの説明)
図3は、クレーン制御装置100における運転モードについて説明するための図である。この図では、各運転モードA〜Dに対応させて、エンジン発電機21の動作モード、DC/DCコンバータ51の動作モードと制御内容、及び各機器間における電力の流れを表で示している。
この図に示すように、クレーン制御装置100において行われる運転モードには、負荷30(横行用モータM1、走行用モータM2及びM4、小旋回用モータM3、巻き用モータM5、走行用モータM6及びM7)と、負荷40(補機)の運転状態に応じて、4つの運転モード、すなわち、運転モードA、運転モードB、運転モードC、及び運転モードDがある。
【0046】
この運転モードA〜Dにおいて、エンジン発電機21の動作モードについては、「アイドリング」と「出力」の2つの動作モードのいずれかが適用される。「アイドリング」は、負荷が小さい場合にエンジン発電機21の回転数を低減し、エンジン発電機21側からの電力供給を停止することにより、燃料消費を低減するためのモードである。なお「アイドリング」においては、エンジン発電機21(より正確にはエンジン22)のアイドリング回転数を維持する運用方法の他に、エンジン発電機21を停止する運用方法を用いてもよい。また、「出力」は、エンジン22を定格回転数で回転させる状態であり、エンジン発電機21側からの直流母線DCL側に電力供給が可能な動作モードである。
【0047】
このように、エンジン発電機21(エンジン22)は、アイドリング(低回転数)の状態と、定格回転数の状態のいずれかの状態で運転される。これは、一般的にエンジンは、定格回転数で運転され、またエンジン出力が大きいほど燃費が良い特性を持っているため、エンジン発電機21から電力を出力する場合は、エンジン22をできるだけ定格回転数で運転する。
図4は、エンジンの燃費特性について説明するための図であり、横軸にエンジン回転数、縦軸にエンジン出力をとり、縦軸方向にエンジンの燃費特性を示している。この図に示すように、エンジンの定格回転数Nnにおいて燃費特性が最大となり、また、負荷が大きい運転ポイントほど燃費が向上する。従って、本実施形態では、エンジン発電機21から直流母線DCL側に電力を出力する際には、エンジン制御部15によりエンジン22の回転数が定格回転数(一定回転)になるように制御する。また、エンジン22を定格回転数で運転することにより、エンジン発電機21の出力電圧を一定に保つことができる。
【0048】
DC/DCコンバータ51の動作モードについては、「放電」と「充電」の2つの動作モードのいずれかが適用される。また、これに伴う2つの制御内容(「定電圧制御」と「電力指令制御」)のいずれかが適用される。「放電」は、バッテリ52から直流母線DCL側に放電電流を供給する動作モードであり、「充電」は、直流母線DCL側からバッテリ52に充電電流を供給する動作モードである。
【0049】
そして、運転モードAにおいては、エンジン発電機21の動作モードは「アイドリング」となり、DC/DCコンバータ51の動作モードは「放電」となり、DC/DCコンバータ51の制御内容は「定電圧制御」となる。この運転モードAは、負荷が小さい場合の給電モードであり、エンジン22をアイドリング状態にしてエンジン発電機21から直流母線DCLへの電力の供給を遮断して、バッテリ52のみを使用して直流母線DCLに電力を供給する。
この運転モードAにおいては、バッテリ52から、主には負荷40(補機用インバータ41及び補機42)に電力を供給し、所望の場合にはさらに負荷30(インバータ31、32、33、34、35及びモータM1〜M7)に電力を供給する。なお、この運転モードAにおいて負荷30に電力を供給する場合は、負荷30が巻き用モータ等を駆動しない軽負荷の状態であり、バッテリ52から電力供給が可能な範囲の負荷の場合である。
【0050】
また、DC/DCコンバータ51の「定電圧制御」は、DC/DCコンバータ51が、直流母線DCLの電圧Vdcが一定値となるように、バッテリ52から直流母線DCLに流す電流(放電電流)を制御する動作モードである。この「定電圧制御」を行う場合、コントローラ11内のDC/DCコンバータ制御部16は、直流母線DCLの電圧Vdcを電圧検出部20を通して検出し、この直流母線DCLの電圧Vdcが一定となるように電流指令信号Irefを生成してDC/DCコンバータ51を制御する。
【0051】
運転モードBは、負荷30から回生される回生電力によりバッテリ52を充電するとともに、負荷40(補機)に電力を供給する負荷回生モードである。この運転モードBにおいては、エンジン発電機21の動作モードは「出力」となり、DC/DCコンバータ51の動作モードは「充電」となり、DC/DCコンバータ51の制御内容は「電力指令制御」となる。
【0052】
なお、運転モードBにおいてエンジン発電機21を「出力」、すなわち、エンジン22を定格回転数で運転するが、負荷30から回生電力が出力されることにより直流母線DCLが上昇するため、エンジン発電機21からの出力は遮断される。この運転モードBにおけるDC/DCコンバータ51の制御内容「電力指令制御」では、運転モード制御部13は、負荷電力判定部14により負荷40における要求負荷と、負荷30から回生される回生電力の現在値を算出し、この回生電力と要求負荷(負荷40の要求負荷)の大きさを比較し、バッテリ52への充電電力を制御する。すなわち、運転モードBにおけるDC/DCコンバータ51の「電力指令制御」では、負荷電力(負荷30の回生電力から負荷40(補機)の電力を差し引いた電力値)を基に、バッテリ52への充電電力(充電電圧及び充電電流)を制御する。例えば、DC/DCコンバータ制御部16からDC/DCコンバータ51に出力する充電電圧設定値Vset及び充電電流設定値Isetによりバッテリ52への充電電力を制御する。
【0053】
運転モードCは、負荷30及び40が大きい高負荷状態の場合の給電モードであり、エンジン発電機21とバッテリ52の両方から負荷30及び負荷40に電力を供給する並列給電モードである。この運転モードCでは、エンジン発電機21は「出力」になり、エンジン22が定格回転数で運転される。DC/DCコンバータ51は「放電」で運転され、その制御内容は「電力指令制御」となる。
【0054】
この運転モードCでは、図5に示すように、エンジン発電機21及び整流部24からの出力電流Igと、バッテリ52から流れる放電電流Idと加算した電流ILが、負荷30及び40を形成するインバータINVに流れる。この運転モードCでは、エンジン発電機21からは許容最大電力(定格出力電力)又は許容最大電力より必要なマージン分を低減した設定電力に相当する電流Igが出力され、不足分をバッテリ52からの電流Idで補う。
【0055】
この運転モードCにおける「電力指令制御」では、負荷30及び40における負荷を負荷電力判定部14により判定し、エンジン発電機21からの出力電力、及びDC/DCコンバータ51(バッテリ52)からの出力電力を制御する。すなわち、運転モードCにおけるDC/DCコンバータ51の電力指令制御では、負荷30及び40の電力(要求電力)からエンジン発電機21の設定電力を差し引いた電力を算出し、この算出した電力分をバッテリ52から出力するようにDC/DCコンバータ51に指令する。例えば、電流指令信号Irefにより、バッテリ52から直流母線DCL側に供給する放電電力を制御する。なお、算出した電力が負の場合(負荷電力がエンジン発電機21の設定電力より小さい場合)は、DC/DCコンバータ51への電力出力指令値はゼロとする。このように、運転モードCにおけるDC/DCコンバータ51の「電力指令制御」では、エンジン発電機21を定格出力(定格回転数)で運転するため、エンジン発電機21から出力される電力を主とし、不足分をバッテリ52からの放電電力で賄うようにする。
【0056】
運転モードDは、エンジン発電機21のみから電力を供給する運転モードである。この運転モードDにおいては、エンジン発電機21から負荷40(補機)に電力を供給するとともに、バッテリ52に充電電流を供給する。この運転モードDにおいて、エンジン発電機21の動作モードは「出力」となりエンジン22が定格回転数で運転される。また、DC/DCコンバータ51の動作モードは「充電」となり、DC/DCコンバータ51の制御内容は「CCCV制御」となる。
【0057】
このDC/DCコンバータ51における「CCCV制御」では、バッテリ52に対して、前述した定電流定電圧充電(CC−CV充電)が行われる。定電流モード(CCモード)では、充電電圧が設定電圧に達していない場合は、DC/DCコンバータ51は、最大電流(設定電流値)を出力する(定電流制御)。また、定電圧モード(CVモード)では、バッテリ52の充電電圧が設定電圧に達していれば、充電電圧を設定電圧に保持し出力電流を次第に減少させるように制御する(定電圧制御)。
なお、この運転モードDは、後述するようにクレーン装置の待機状態における運転モードD1と、クレーン装置の操作状態(稼動中)における運転モードD2の2つの運転モードに分けられる。
【0058】
上記構成のクレーン制御装置100においては、バッテリ52により負荷30及び40に電力を供給することが可能な場合には、できるだけバッテリ52から負荷30及び40に放電電流を流すように運転モードを切り替える。例えば、バッテリ給電モードである運転モードAにおいては、バッテリ52から負荷40に電力を供給する。また、並列給電モードである運転モードCにおいては、エンジン発電機21から負荷30及び40に放電電流を流すとともに、残りの必要な負荷電流をDC/DCコンバータ51(バッテリ52)から負荷30及び40に供給する。また、エンジン発電機21のエンジン回転数を、アイドリング回転数と定格回転数の2通りとし、エンジン発電機21から直流母線DCLに電力を供給する場合には、エンジン22の回転数を常に定格回転数とする。
これにより、エンジン発電機21に接続された蓄電装置50(バッテリ52)を有効に活用して、エンジン22のアイドリング時間を長くするとともに、エンジン発電機21から負荷に電力を供給する際に、エンジン22を燃費効率の高い領域で運転することができる。このため、エンジン発電機21の燃費の向上を図り、クレーン装置における燃費の改善を図ることができる。また、エンジン22の回転数の制御を簡単にできる。
【0059】
次に、上述した運転モードA、運転モードB、運転モードC、及び運転モードD(運転モードD1及びD2)との間における状態遷移について説明する。本実施形態では、後述する充電フラグと待機判定フラグの内容、及び負荷電力判定部14における負荷電力判定の結果により各運転モードへの移行(遷移)を行い、各運転モードに応じてエンジン発電機21とDC/DCコンバータ51を制御する。
【0060】
(運転モード遷移の判定に使用されるフラグ、及び負荷電力判定についての説明)
図6は、運転モードとそのモード遷移について説明するための図である。この図において、充電フラグは、バッテリ充電率SOCによって状態が遷移する際に使用されるフラグである。充電フラグは、バッテリ充電率SOCが低下するなどバッテリ52が充電すべき状態にあるときにON(例えば、論理“1”の状態)、バッテリ充電率SOCが上昇するなどバッテリ52へ充電すべきでない状態にあるときにOFF(例えば、論理“0”の状態)となるフラグである。
【0061】
充電フラグの初期値はONとし、バッテリ充電率SOCが所定の放電判定SOCを上回った場合に、充電フラグをONからOFF(ON→OFF)に遷移させる。また、後述する待機フラグがOFFからON(OFF→ON)に変化した場合に、充電フラグをONからOFFに遷移させる。
また、充電フラグがOFFからON(OFF→ON)に遷移するのは、バッテリ充電率SOCが所定の充電判定SOCを下回った場合である。また、後述する待機フラグがONからOFF(ON→OFF)に変化した場合に、充電フラグをOFFからONに遷移させる。
【0062】
なお、上述した放電判定SOCとしてバッテリ充電率SOCの上限目安値を設定する。例えば、放電判定SOCをバッテリ充電率SOCが60%の場合とする。また、充電判定SOCとしてバッテリ充電率SOCの下限目安値を設定する。例えば、充電判定SOCをバッテリ充電率SOCが40%の場合とする。すなわち、バッテリ52におけるバッテリ充電率SOCの運用幅を40%〜60%とする。
【0063】
待機フラグは、荷役作業や走行の際に、クレーン操作部11Aに設けられた巻き、横行、走行ノッチ(あるいはレバー等)をオペレータが操作することによって状態が遷移するフラグである。この待機フラグの初期値はONとし、以下の条件で遷移させる。
待機フラグがONからOFF(ON→OFF)に遷移するのは、巻き、横行、走行ノッチのいずれかがONした場合に、待機フラグをONからOFFに遷移させる。また、この待機フラグがOFFからON(OFF→ON)に遷移するのは、巻き、横行、走行ノッチのすべてがOFFした後、一定時間(例えば、30秒)が経過しても次のノッチ操作がONしない場合に、待機フラグをOFFからONに遷移させる。
【0064】
また、負荷電力判定部14により行われる負荷電力判定においては、直流母線DCLから各インバータ31〜35に入力される電力の総計を負荷電力として定義する。各インバータ31〜35は、コントローラ11から制御情報(例えば、モータ回転方向及び回転数等)を入力して、それぞれに接続されたモータを駆動する。この場合に、各インバータ31〜35は、駆動するモータのトルクと回転数等の情報を検出し、この情報を制御情報としてコントローラ11にフィードバック信号として出力する。
【0065】
コントローラ11では、各インバータ31〜35から入力したモータトルク、回転数などの情報を基に、モータM1〜M7における負荷電力を算出する。また、補機用インバータ41における負荷電力を、例えば、補機の運転状態に応じて算出し、モータM1〜M7における負荷電力と加算して、負荷30及び40に於ける負荷電力の合計を算出する。そして、この負荷電力を所定の電力(放電判定電力及び回生判定電力)と比較することにより負荷電力判定を実施する。なお、放電判定電力は、エンジン発電機21の設定電力に相当する電力であり、バッテリ52からの放電を行うべきか否かを判定するため使用される電力である。また、回生判定電力は、負荷30から回生される回生電力の現在値であり、負荷30及び40(主には負荷40)がこの回生電力を以下であるかを判定するために使用される。
この負荷電力判定においては、負荷電力が所定の放電判定電力(例えば、エンジン発電機21の設定電力)を上回ると判定された場合に、エンジン発電機21とバッテリ52の双方から直流母線DCLに電力を供給すると判定する。また、負荷電力が、回生判定電力(負荷30から供給される回生電力の現在値)を下回ると判定された場合に、回生電力をバッテリ52により吸収すると判定する。
【0066】
なお、負荷30における負荷電力の算出には、前述したように、各インバータ31〜35からフィードバックされたモータトルク、回転数などの信号を基に負荷電力を算出する方法を用いているが、この負荷電力の算出には、他の方法を用いることもできる。例えば、クレーン操作部11Aにおける操作状態(例えば、横行、走行、及び巻き用ノッチの操作状態)に応じて負荷電力を算出することもできる。負荷30及び負荷40に対する制御は、クレーン操作部11Aを通してコントローラ11により行われる。このため、コントローラ11内に保持された負荷30及び40の制御情報(負荷の駆動状態の信号)を基に、負荷の要求動力の大きさを算出することもできる。なお、より精密には、直流母線DCLから負荷側に流れる直流電流を計測し、この直流電流と直流母線電圧とを基に負荷電力を計測するようにしてもよい。
【0067】
(運転モードD1と運転モードD2についての説明)
運転モードD1とD2は、DC/DCコンバータ51の制御内容が同じであるが、バッテリ充電の際の充電電圧設定値Vsetを変える。この場合に、クレーン操作中(クレーン稼動中)の運転モードD1では、充電フラグがOFFになってもCC−CV制御により充電が継続されるため、バッテリ52に流れる充電電流値を制限しバッテリ充電率SOCが急速に上昇しないようにする。これは、バッテリ充電率SOCを上昇させ過ぎると、次に運転モードBに移行した場合に回生電力を吸収できない事態が生じる(回生電力を有効に利用できない)ので、これを回避するために運転モードD1ではバッテリ52への充電速度を低く抑える。
【0068】
図7は、CC−CV充電について説明するための模式図である。
図7(A)は、横軸にバッテリ充電率SOC[%]をとり、縦軸にOCV値(バッテリ開放電圧)をとり、運転モードD1及びD2における充電電圧設定値Vset1及びVset2と、バッテリ充電率SOCとの関係を模式的に示したものである。
この図に示すように、運転モードD1では、例えば、充電電圧設定値Vset1[V]を充電判定SOC(40%)に該当するOCV値にする。すなわち、バッテリ52では、バッテリ充電率SOCが上昇すると運転モードBに移行した場合に回生電力を受け入れられなくなるため低めの充電電圧設定値Vset1に設定する。
一方、待機中の運転モードD2では、待機中のエンジン発電機21のアイドリング時間を長くするためバッテリ52の充電速度を早くする。このため、バッテリ52を急速充電できるように充電電圧設定値Vset2[V]を高くする。例えば、図7(A)に示すように、充電電圧設定値Vset2を放電判定SOC(60%)に該当するOCV値にする。すなわち、運転モードD2では、バッテリ52をバッテリ充電率SOCが60%になるように急速充電する。
【0069】
図7(B)は、バッテリ52に対する充電電圧設定値と、充電電圧の関係を示す図であり、横軸に時間tをとり、縦軸にバッテリ充電電圧Vbatをとり、充電電圧設定値Vset1と充電電圧設定値Vset2のそれぞれに対応する充電電圧カーブを並べて示したものである。また、図7(C)は、横軸に時間tをとり、縦軸にバッテリ充電電流Ichgをとり、充電電圧設定値Vset1と充電電圧設定値Vset2のそれぞれに対応する充電電流の変化を示したものである。
【0070】
充電電圧設定値Vset1の場合は、図7(B)に示すように、時刻t0においてバッテリ52への充電が開始されると、充電電圧曲線d1で示す充電カーブによりバッテリ52が充電され、時刻t1において、バッテリ充電電圧が概略電圧設定値Vset1のレベル(充電電圧設定値Vset1よりやや低いレベル)まで充電される。この充電電圧設定値Vset1の場合、図7(C)に示すように、時刻t0から時刻t1の間はCC充電(定電流Iccによる充電)が、時刻t1以降はCV充電(定電圧充電)が行われる。この時刻t1以後のCV充電では、充電電流曲線d1で示す充電電流カーブのように、時間tの経過とともに次第に充電電流が減少する。
【0071】
また、充電電圧設定値Vset2(Vset2>Vset1)の場合は、図7(B)に示すように、時刻t0においてバッテリ52への充電を開始されると、充電電圧曲線d2で示す充電カーブによりバッテリ52が充電され、時刻t2(t2>t1)において、バッテリ充電電圧が概略電圧設定値Vset2のレベル(充電電圧設定値Vset2よりやや低いレベル)まで充電される。この充電電圧設定値Vset1の場合、図7(C)に示すように、時刻t0から時刻t2の間はCC充電(定電流Iccによる充電)が、時刻t2以降はCV充電(定電圧充電)が行われ、この時刻t2以後のCV充電では、充電電流曲線d2で示す充電電流カーブのように、時間tの経過とともに次第に充電電流が減少する。
【0072】
このように、バッテリ充電電圧を充電電圧設定値Vset1のように低く設定すると、CC充電期間が短くなり、放電判定SOC(例えば、60%)に到達するまでCV充電期間が長くなり、バッテリ充電率SOCが急速に上昇しないようにすることができる。一方、バッテリ充電電圧を充電電圧設定値Vset2のように高く設定すると、CC充電期間が長くなり、放電判定SOC(例えば、60%)に到達するまでCV充電期間が短くなり、バッテリ52を急速充電することができる。
【0073】
(充電フラグ、待機フラグ、負荷電力判定による運転モードの状態遷移の説明)
上記、充電フラグ、待機フラグ、及び負荷電力判定を用いた運転モードの状態遷移について、図6を参照して説明する。クレーン制御装置が起動されると、最初に、待機中である運転モードD2に移行し、充電フラグをONにし、待機フラグをONにし、エンジン発電機21の動作モードを「出力(定格回転数で運転)」にして、バッテリ52への充電を開始する。
この運転モードD2では、バッテリ充電電圧の電圧設定値Vsetを高く設定し、バッテリ52へ急速充電を行う。そして、この運転モードD1の状態において、充電フラグがOFF、すなわち、バッテリ52への充電が完了すると運転モードAに移行し(ステップS8)、エンジン発電機21の動作モードを「アイドリング(アイドリング回転数)」にして待機する(ステップS8)。
【0074】
この運転モードAでは、バッテリ52から負荷40(補機)に電力が供給される(負荷30が軽負荷の場合には、負荷30へも電力が供給される)。そして、運転モードAにおいて、充電フラグがON、すなわち、待機中においてバッテリ52への充電が必要になった場合は、運転モードD2に再度移行し(ステップS2)、エンジン発電機21の動作モードを「出力」にしてバッテリ52への充電を行う。
【0075】
また、待機中の運転モードD2において、待機フラグがOFFになった場合、すなわち、クレーン操作が開始された場合は、運転モードD1に移行する(ステップS9)。同様に、待機中の運転モードAにおいて、待機フラグがOFFになった場合、すなわち、クレーン操作が開始された場合は、運転モードD1に移行する(ステップS1)。
【0076】
この運転モードD1では、待機フラグがOFF(クレーン稼動中)の状態あり、また、エンジン発電機21の動作モードは「出力」になっている。この運転モードD1の状態において、負荷電力判定部14により負荷電力判定が行われる。この負荷電力判定では、負荷電力と回生判定電力との比較、及び負荷電力と放電判定電力との比較が行われる。
この運転モードD1における負荷電力判定において、負荷電力が回生判定電力より小さい(負荷電力<回生判定電力)と判定された場合は、バッテリ52から負荷への電力供給が可能であるため、運転モードBに移行する(ステップS6)。また、負荷電力が放電判定電力より大きい(負荷電力>放電判定電力)と判定された場合は、エンジン発電機21とバッテリ52に両方から負荷に電力供給を行う必要があるため、運転モードCに移行する(ステップS7)。
【0077】
また、運転モードD1において、負荷電力が、回生判定電力より大きく、放電判定電力より小さい(回生判定電力≦負荷電力≦放電判定電力)と判定された場合は運転モードD1の状態を維持し、エンジン発電機21から負荷40(負荷30が軽負荷の場合は負荷30にも)に電力を供給するとともに、バッテリ52への低速充電を行う。
また、運転モードD1の状態において、横行、走行、及び巻き等のノッチ操作が全て停止した場合は、所定時間(例えば、30秒)が経過するのを待って待機フラグをONにする。この待機フラグがONになることにより、運転モードD1から待機中である運転モードAに移行する(ステップS5)。
【0078】
なお、負荷電力判定部14における負荷電力判定結果のデータは、充電フラグや待機フラグと同様に、フラグの形式で保持するようにしてもよい。例えば、回生判定フラグ(第3のフラグ)や、放電判定フラグを設け、負荷30から直流母線DCL側に回生電力が供給される場合(「負荷電力<回生判定電力」の場合)に、回生判定フラグ(第3のフラグ)をONにし、また、負荷電力が「負荷電力>放電判定電力」の場合に、放電判定フラグをONにする。
【0079】
運転モードBは、負荷からの回生電力により、補機である負荷40に電力を供給するとともに、バッテリ52へ充電を行うモードである。この運転モードBの状態においては、エンジン発電機21の動作モードは「出力」であるが、負荷30からの回生電力が直流母線DCLに供給されており、直流母線DCLの電圧が整流部24の出力電圧以上であるため、エンジン発電機21から直流母線DCLへの電力供給は停止される。
この運転モードBにおいては、負荷電力と回生判定電力とを比較する負荷電力判定が常に行われる。そして、負荷電力が回生判定電力以上(負荷電力≧回生判定電力)になった場合は、モードD1に移行し(ステップS6)、エンジン発電機21から負荷30及び負荷40へ電力を供給し、また、エンジン発電機21からバッテリ52に充電電流を供給する。
【0080】
運転モードCは、エンジン発電機21とバッテリ52の両方から負荷30及び40に電力を供給するモードである。この運転モードCにおいては、負荷電力と放電判定電力とを比較する負荷電力判定が常に行われる。そして、負荷電力が放電判定電力以下(負荷電力≦放電判定電力)になった場合は、運転モードD1に移行し(ステップS4)、エンジン発電機21から負荷30及び負荷40へ電力を供給し、また、エンジン発電機21からバッテリ52に充電電流を供給する。
このように、本発明のクレーン制御装置100では、待機フラグ及び充電フラグの内容と、負荷電力判定部14における負荷判定結果とに基づき、適宜に運転モードを選択して、エンジン発電機21およびDC/DCコンバータ51を制御することができる。
【0081】
以上説明したように、本発明のクレーン制御装置では、エンジン発電機21の動作モードは「アイドリング(アイドリング回転数での運転)」と「出力(定格回転数での運転)」の2つの状態のみのため、エンジン発電機21から負荷に電力を供給する際には、エンジン発電機21(より正確にはエンジン22)を燃費効率の高い定格回転数で運転することができ、エンジン発電機21の燃費効率が向上する。また、待機中は、バッテリ52への充電速度を速めて、エンジン22のアイドリング(または発電機オフ)の期間を長くするため、さらにエンジン発電機21の燃費が向上する。さらに、エンジン発電機21の回転数は、「アイドリング回転数」と「定格回転数」のみとなり、エンジン発電機21の複雑な回転数制御が不要となる。またさらに、エンジン発電機21の出力電圧は一定となり、またエンジン発電機21の出力は整流部24内の整流器に直結するため電圧昇圧装置が不要となる。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここで、本発明と上述した実施形態との対応関係について補足して説明しておく。
本発明におけるクレーン装置は、図1に示すクレーン装置(トランスファクレーン)1が対応する。また、本発明におけるハイブリッド式駆動装置及びクレーン制御装置は、図2に示すクレーン制御装置100が対応する。また、本発明における原動機は、エンジン発電機21内のエンジン22が対応し、本発明における発電機は、エンジン発電機21(より正確には発電機23と整流部24)が対応する。また、本発明における蓄電装置は、DC/DCコンバータ51とバッテリ52とを含む蓄電装置50が対応する。また、本発明におけるバッテリはバッテリ52が対応する。
【0083】
また、本発明における第1の負荷は、図2に示す負荷30が対応し、この負荷30には、横行用のインバータ31及びモータM1と、走行用(及び小旋回用)のインバータ32及びモータM2、M3と、走行用のインバータ33とモータM4と、巻き用(及び走行用)のインバータ34、35及びモータM5、M6、M7と、が含まれる。また、第2の負荷は、補機専用の補機用インバータ41及び補機42等の負荷40が対応する。なお、ここで、負荷30は回生動作を行う負荷であり、負荷40は回生動作を行わない負荷である。
【0084】
また、本発明における制御部は、コントローラ11が対応する。また、本発明における高負荷状態は、クレーン装置の稼動中(横行、走行、巻き上げ等を行う状態)における第1の負荷30の負荷状態が対応し、本発明における低負荷状態は、クレーン装置の待機中(横行、走行、巻き上げ等を行わない状態)における第1の負荷30の負荷状態が対応する。また、本発明における発電機の発電電力は、エンジン発電機21の設定電力が対応し、本発明における所定の放電判定電力は、エンジン発電機21の設定電力が対応する。
【0085】
また、本発明における回路(発電機、第1の負荷、第2の負荷、及び蓄電装置を相互に接続する回路)は、図2に示すように、直流母線DCLで相互に接続される回路60(インバータ31〜35と、補機用インバータ41と、整流部24と、DC/DCコンバータ51)が対応する。また、本発明における第1のフラグは充電フラグが対応し、この充電フラグは、バッテリ充電率SOCを基に、バッテリ52への充電が必要であること、あるいはバッテリ52へ充電を行うべきでないことを示すフラグである。また、本発明における第2のフラグは待機フラグが対応し、この待機フラグは、クレーン装置が待機中であるか、または稼動中(荷役作業や走行中)であるかを示すフラグである。また、本発明における第3のフラグは、負荷電力判定部14における負荷判定結果を示すフラグであり、例えば、負荷30から直流母線DCL側に回生電流が供給されているか否かを示す回生判定フラグである。
【0086】
(1)そして、上記実施形態において、ハイブリッド式駆動装置(クレーン制御装置100)は、エンジン22と、エンジン22によって駆動されるエンジン発電機21と、エンジン発電機21から電力の供給を受ける、第1の負荷30と、この第1の負荷30より小さい第2の負荷40と、エンジン発電機21に接続され負荷30及び40に電力を供給するバッテリ52を有する蓄電装置50と、エンジン発電機21、第1の負荷30、第2の負荷40、及び蓄電装置50を相互に接続する回路60の動作を制御するとともに、エンジン22の出力を高低いずれかの状態に切り替える制御部(コントローラ11)と、を備えて構成される。
このような構成のハイブリッド式駆動装置(例えば、クレーン制御装置100)では、エンジン発電機21を駆動するエンジン22の出力(回転数)を、低出力(例えば、アイドリング回転数)と高出力(例えば、定格回転数)のいずれかの状態で運転する。そして、エンジン発電機21から負荷側(直流母線DCL側)に電力を供給する際には、エンジン22の出力を常に高出力(例えば、定格回転数)にする。
これにより、エンジン発電機21から負荷側に電力を供給する際には、エンジン22を高出力(例えば、定格回転数)で運転させてエンジン22の燃費を向上させることができる。さらには、エンジン22を低出力(例えば、アイドリング回転数)と高出力(例えば、定格回転数)のいずれか2つの状態だけで運転することにより、エンジン発電機21の回転数制御を簡単にできる。
【0087】
(2)また、上記実施形態において、第1の負荷30は、所定の値より負荷が高い高負荷状態と、該所定の値より負荷が低い低負荷状態との間で負荷が変動する負荷であり、制御部(コントローラ11)は、第1の負荷30が高低いずれの負荷状態であるかによってエンジン22の出力及び回路60の動作状態を切り替える。
このような構成のハイブリッド式駆動装置は、第1の負荷30は、高負荷状態(例えば、クレーン稼動中(荷役作業や走行中)の負荷)と、低負荷状態(例えば、クレーン待機中の負荷)との間で負荷が変動する負荷であり、制御部(コントローラ11)は、第1の負荷30が高低いずれの負荷状態であるかによってエンジン22の出力及び回路60の動作を切り替える。
これにより、負荷30が高負荷状態(例えば、クレーン稼動中)であるか、または、低負荷状態(例えば、クレーン待機中)であるかに応じて、第1の負荷30及び第2の負荷40への電力供給を、エンジン発電機21で行うか、エンジン発電機21と蓄電装置50とで行うか、あるいは蓄電装置50で行うかを選択することができる。さらに、エンジン発電機21から負荷電力に電力を供給する際には、エンジン22を常に高出力(例えば、定格回転数)で運転させてエンジン22の燃費を向上させることができる。
【0088】
(3)また、上記実施形態において、制御部(コントローラ11)は、蓄電装置50のバッテリ充電率SOCの大きさによって切り替えられる第1のフラグ(充電フラグ)と、負荷が高低いずれの負荷状態であるかによって切り替えられる第2のフラグ(待機フラグ)と、回路側(直流母線DCL側)に第1の負荷30から回生電流が供給されるか否かによって切り替えられる第3のフラグ(例えば、負荷電力判定部14における負荷電力判定結果のデータにより生成される回生判定フラグ)と、の状態がいずれの組み合わせにあるかによってエンジンの出力及び回路60の動作を切り替える。
このような構成のハイブリッド式駆動装置では、バッテリ52への充電が必要か否かを示す第1のフラグ(充電フラグ)と、負荷が高低いずれの負荷状態であるか(例えば、クレーン装置が稼動中であるか待機中であるかを)を示す第2のフラグ(待機フラグ)と、回路側(直流母線DCL側)に第1の負荷30から回生電流が供給されるか否かによって切り替えられる第3のフラグ(回生判定フラグ)との、各フラグの内容に応じてエンジン22の出力及び回路60の動作を切り替える。
これにより、バッテリ52への充電が必要であるか否かと、負荷30及び40の負荷状態と、負荷30から回生電力が供給されるか否かに応じて変化するフラグの内容に応じて、適宜に運転モードを選択して、エンジン22の出力(アイドリングにするか定格回転数で運転するか)を切り替え、また、回路60の動作状態を切り替えることができる。
【0089】
(4)また、上記実施形態において、第3のフラグに代えて、負荷電力と、発電機の発電電力(エンジン発電機21の設定電力)と、回生電力との大小比較によって制御を行う。
このような構成のハイブリッド式駆動装置では、バッテリへの充電が必要か否かを示す第1のフラグ(充電フラグ)と、負荷が高低いずれの負荷状態であるか(例えば、クレーン装置が稼動中か待機中かを)を示す第2のフラグ(待機フラグ)と、負荷電力判定部14による負荷電力判定結果(負荷電力と、エンジン発電機21の設定電力と、回生電力との比較結果)との内容に応じてエンジン22の出力及び回路60の動作を切り替える。
これにより、バッテリへの充電が必要であるか否かと、負荷30及び40の負荷状態と、負荷電力判定部14による負荷電力判定結果に応じて、適宜に運転モードを選択して、エンジン22の出力(アイドリングにするか定格回転数で運転するか)を切り替え、また、回路60の動作を切り替えることができる。
【0090】
(5)また、上記実施形態において、第2のフラグ(待機フラグ)による制御において、外部から供給される制御指令(例えば、ノッチ操作信号)に応じてエンジン22の出力、及び回路60の動作状態の切り替えタイミングを変更する。
このような構成のハイブリッド式駆動装置では、例えば、横行、走行、及び巻き等のノッチ操作が行われなくなった場合(負荷が高負荷状態から低負荷状態に移行した場合)に待機フラグがONになるが、この場合に、所定時間(例えば、30秒)が経過した後に待機フラグをONにし、この後に運転モードを選択し、エンジン22の出力、及び回路60の動作を低負荷状態である動作に切り替える。すなわち、ノッチ操作を終了し、負荷が高負荷状態から低負荷状態に移行した場合において、エンジン22の出力や回路60の動作状態を、所定時間だけ高負荷状態に対応する運転モード(例えば、エンジン22を定格回転数で運転)に維持する。
これにより、負荷が高負荷状態から低負荷状態に移行し、すぐに高負荷状態に戻る場合において、エンジン22の出力をアイドリング状態にすることなく、定格回転数での運転状態を維持することができる。このため、エンジン22の再起動に要する時間を省略でき、負荷が増大する際にエンジン発電機21の即応性を向上させることができる。
【0091】
(6)また、上記実施形態において、制御部(コントローラ11)は、エンジン発電機21からの電力を遮断して蓄電装置50から負荷30及び40(主には負荷40)に電力を供給するバッテリ給電モードである運転モードA、エンジン発電機21からの電力を遮断して負荷30から回生される回生電力によりバッテリ52を充電する負荷回生モードである運転モードB、エンジン発電機21及び蓄電装置50から負荷30、40に電力を供給する並列給電モードである運転モードC、エンジン発電機21からバッテリ52を充電する運転モードDのいずれかの制御モードに切り替える機能を有し、さらに、制御部(コントローラ11)は、運転モードAでは、エンジン22を所定のアイドリング回転数で運転するアイドリング状態にし、運転モードB、C、Dにおいては、エンジン22を定格回転数で運転する出力状態にする。
このような構成のハイブリッド式駆動装置では、運転モードAでは、エンジン22を所定のアイドリング回転数で運転するアイドリング状態にし、運転モードB、C、Dにおいては、エンジン22を定格回転数で運転する出力状態にする。
これにより、エンジン発電機21から負荷側に電力を供給する際には、エンジン22を常に高出力(例えば、定格回転数)で運転させてエンジン22の燃費を向上させることができる。さらには、エンジン22を低出力(アイドリング回転数)と高出力(定格回転数)のいずれか2つの状態だけで運転することにより、エンジン発電機21の回転数制御を簡単にできる。
【0092】
(7)また、上記実施形態において、運転モードDは、さらに2つの運転モードD1と運転モードD2とに分けられ、運転モードD1は、負荷30及び40が所定の値より大きい高負荷状態であり、かつ負荷30及び40が第1の負荷30から回生される回生電力より大きく、かつ所定の放電判定電力(エンジン発電機21の設定電力)より小さい状態において選択され、運転モードD2は、負荷30及び40が所定の値より小さい低負荷状態であり、かつ第1のフラグ(充電フラグ)によりバッテリ52への充電が要求されている状態において選択される。
このような構成のハイブリッド式駆動装置では、バッテリ52を充電する際には、負荷の状態と、第1のフラグ(充電フラグ)の状態とに応じて、2つの運転モードD1及びD2のいずれかを選択する。
これにより、負荷が高負荷状態にある場合と、負荷が低負荷状態にある場合とのそれぞれの場合に応じて、バッテリ52への充電速度を変化させることができる。
【0093】
(8)また、上記実施形態において、運転モードD1及び運転モードD2においてはバッテリ52へCC−CV充電が行われ、運転モードD1におけるバッテリへの第1の充電電圧設定値Vset1は、運転モードD2におけるバッテリへの第2の充電電圧設定値Vset2より小さく設定され(第1の充電電圧設定値Vset1<第2の充電電圧設定値Vset2)、運転モードD1におけるバッテリ52への充電速度が、運転モードD2における前記バッテリへの充電速度よりも遅くなるように設定される。
このような構成のハイブリッド式駆動装置では、運転モードD1(高負荷状態におけるバッテリ充電モード)における充電速度を、運転モードD2(低負荷状態におけるバッテリ充電モード)より遅くする。
これにより、運転モードD2(低負荷状態)では、バッテリ52へ急速充電を行うことによりバッテリ52への充電を速やかに完了させ、エンジン22のアイドリング時間を長くできる。また、運転モードD1(高負荷状態)では、バッテリ52への充電速度を遅くしてバッテリ充電率SOCの上昇を抑え、負荷30から回生電力が還される際に、この回生電力を吸収できない事態が生じることを抑止できる。
【0094】
(9)また、クレーン制御装置100は、上記ハイブリッド式駆動装置を備える。
これにより、クレーン制御装置において、エンジン発電機21から負荷側に電力を供給する際には、エンジン22を常に高出力(例えば、定格回転数)で運転させてエンジン22の燃費を向上させることができる。さらには、エンジン22を低出力(アイドリング回転数)と高出力(定格回転数)のいずれか2つの状態だけで運転することにより、エンジン発電機21の回転数制御が簡単になる。
【0095】
(10)また、クレーン装置1は、上記クレーン制御装置100を備える。
これにより、クレーン装置1において、エンジン発電機21の燃費を向上させることができる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明のクレーン制御装置及びクレーン装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0097】
1 クレーン装置
100 クレーン制御装置
11 コントローラ
11A クレーン操作部
12 負荷装置制御部
13 運転モード制御部
14 負荷電力判定部
15 エンジン制御部
16 DC/DCコンバータ制御部
17 CC−CV充電制御部
21 エンジン発電機
22 エンジン
23 発電機
24 整流部
25 回生抵抗
26 電圧検出部
30 回生を行う負荷
31、32、33、34、35 インバータ
40 回生を行わない負荷
41 補機用インバータ
42 補機
50 蓄電装置
51 DC/DCコンバータ
52 バッテリ(蓄電池)
53 SOC検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
前記原動機によって駆動される発電機と、
前記発電機から電力の供給を受ける負荷であって、第1の負荷と、この第1の負荷より小さい第2の負荷とを含む負荷と、
前記発電機に接続され前記負荷に電力を供給するバッテリを有する蓄電装置と、
前記発電機、第1の負荷、第2の負荷、及び蓄電装置を相互に接続する回路の動作を制御するとともに、前記原動機の出力を高低いずれかの状態に切り替える制御部と、
を備えることを特徴とするハイブリッド式駆動装置。
【請求項2】
前記第1の負荷は、
所定の値より負荷が大きい高負荷状態と、該所定の値より負荷が小さい低負荷状態との間で負荷が変動する負荷であり、
前記制御部は、
前記第1の負荷が高低いずれの負荷状態であるかによって前記原動機の出力及び前記回路の動作状態を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記蓄電装置のバッテリ充電率SOCの大きさによって切り替えられる第1のフラグと、
前記負荷が高低いずれの負荷状態であるかによって切り替えられる第2のフラグと、
前記回路側に前記第1の負荷から回生電流が供給されるか否かによって切り替えられる第3のフラグと、
の状態がいずれの組み合わせにあるかによって前記原動機の出力及び前記回路の動作を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド式駆動装置。
【請求項4】
前記第3のフラグに代えて、負荷電力と、発電機の発電電力と、回生電力との大小比較によって制御を行うことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド式駆動装置。
【請求項5】
前記第2のフラグによる制御において、
外部から供給される制御指令に応じて切り替えタイミングを変更する
ことを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド式駆動装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記発電機からの電力を遮断して前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給するバッテリ給電モードである運転モードA、
前記発電機からの電力を遮断して前記負荷から回生される回生電力により前記バッテリを充電する負荷回生モードである運転モードB、
前記発電機及び前記蓄電装置から前記負荷に電力を供給する並列給電モードである運転モードC、
前記発電機から前記バッテリを充電する運転モードDのいずれかの制御モードに切り替える機能を有し、
さらに、前記制御部は、
前記運転モードAでは、前記原動機を所定のアイドリング回転数で運転するアイドリング状態にし、前記運転モードB、C、Dにおいては、前記原動機を定格回転数で運転する出力状態にする
ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド式駆動装置。
【請求項7】
前記運転モードDは、さらに2つの運転モードD1と運転モードD2とに分けられ、
前記運転モードD1は、
前記負荷が前記所定の値より大きい高負荷状態であり、
かつ前記負荷が前記第1の負荷から回生される回生電力より大きく、かつ所定の放電判定電力より小さい状態において選択され、
前記運転モードD2は、
前記負荷が前記所定の値より小さい低負荷状態であり、
かつ前記第1のフラグにより蓄電装置への充電が要求されている状態において選択される
ことを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド式駆動装置。
【請求項8】
前記運転モードD1及び運転モードD2においては前記バッテリへCC−CV充電が行われ、
前記運転モードD1におけるバッテリへの第1の充電電圧設定値は、前記運転モードD1におけるバッテリへの第2の充電電圧設定値より小さく設定され(第1の充電電圧設定値<第2の充電電圧設定値)、
前記運転モードD1における前記バッテリへの充電速度が、前記運転モードD2における前記バッテリへの充電速度よりも遅くなるように設定される
ことを特徴とする請求項7に記載のハイブリッド式駆動装置。
【請求項9】
荷役作業を行うクレーン装置のクレーン制御装置であって、前記請求項1から8のいずれか1項に記載のハイブリッド式駆動装置
を備えることを特徴とするクレーン制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載のクレーン制御装置
を備えることを特徴とするクレーン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−71903(P2012−71903A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215899(P2010−215899)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】