説明

ハイブリッド車両の制御装置

【課題】駆動アシスト機能とエネルギー回収機能を発揮する車両のハイブリッド化を、安価なシステム構成により達成できるハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】主駆動源(エンジン)と、主駆動輪と、アシスト駆動源と、変速機と、アシスト駆動輪(後輪)4bと、アシスト制御手段と、を備えたハイブリッド車両の制御装置において、アシスト駆動源は、エアタンク103内の高圧エアエネルギーを利用して駆動するエアモータ101であり、変速機は、無段階の変速比を得る無段変速機10であり、アシスト駆動輪4bからの駆動エネルギーを高圧エアエネルギーに変換し、エアタンク103に蓄えるエアコンプレッサ102を設け、エアモータ101とエアコンプレッサ102を、無段変速機10の入力軸20に接続し、アシスト駆動輪4bを、無段変速機10の出力軸30に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主駆動源とアシスト駆動源を備え、アシスト駆動源からの駆動力により主駆動源の駆動力を補助するハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動源としてエンジンと電動モータを有すると共に、これら駆動源を無段変速機介して車両の駆動輪に連結し、エンジンの出力を電動モータの出力によって補助するハイブリッド車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-292114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のハイブリッド車両の制御装置にあっては、電動モータ(モータ/ジェネレータ)を用い、バッテリー放電によって駆動アシストすると共に、減速時等に回生によりバッテリー充電を行う構成になっている。このため、駆動アシストの必要最大継続時間等に基づき、電気エネルギーを必要量蓄える大型バッテリーの搭載が必要になり、コストが増大するという問題があった。さらに、大容量バッテリー搭載によって車両の総重量が増加し、結果的に燃費の悪化を招いていた。そして、このコスト増や燃費悪化の問題は、トラックやバス等の大型車両であるほど顕著である。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に着目してなされたものであり、駆動アシスト機能とエネルギー回収機能を発揮する車両のハイブリッド化を、安価なシステム構成により達成することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、主駆動源と、主駆動輪と、アシスト駆動源と、変速機と、アシスト駆動輪と、高負荷走行時、前記アシスト駆動源からの駆動力を、前記変速機を介して前記アシスト駆動輪に伝達する制御を行うアシスト制御手段と、を備えたハイブリッド車両の制御装置において、
前記アシスト駆動源は、エアタンク内の高圧エアエネルギーを利用して駆動するエアモータであり、
前記変速機は、無段階の変速比を得る無段変速機であり、
前記アシスト駆動輪からの駆動エネルギーを高圧エアエネルギーに変換し、前記エアタンクに蓄えるエアコンプレッサを設け、
前記エアモータと前記エアコンプレッサを、前記無段変速機の入力軸に接続し、前記アシスト駆動輪を、前記無段変速機の出力軸に接続したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明のハイブリッド車両の制御装置にあっては、アシスト駆動源がエアタンク内の高圧エアエネルギーを利用して駆動するエアモータであると共に、エアコンプレッサによってアシスト駆動輪からの駆動エネルギーが高圧エアエネルギーに変換されてエアタンクに蓄えられる。
すなわち、高圧エアエネルギーによって駆動したエアモータからの駆動力を、変速機を介してアシスト駆動輪に伝達すると共に、エアコンプレッサによって高圧エネルギーとしてエネルギー回収を行う。
このため、コスト増や燃費悪化を生じる大型バッテリーを必要とする電動モータ(モータ/ジェネレータ)が不要になり、駆動アシスト機能とエネルギー回収機能を発揮する車両のハイブリッド化を、安価なシステム構成により達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1のハイブリッド車両の制御装置を備えたフルトレーラトラックを示す外観図である。
【図2】実施例1のハイブリッド車両の制御装置の駆動アシスト機構を示す全体システム図である。
【図3】無段変速機を示す横断面図である。
【図4】無段変速機における入力側円錐ローラと出力側円錐ローラとパワーローラの位置関係を示す斜視図である。
【図5】パワーローラの説明図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は全体構造の一部破断説明図である。
【図6】ローラ軸傾斜変速機構を示す一部破断断面図である。
【図7】ローディングカム機構の説明図であり、(a)はトルク伝達がない状態を示し、(b)はトルク伝達がある状態を示す。
【図8】駆動アシスト機構のコントローラにて実行されるアシスト制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】傾斜閾値レベルの設定に使用するマップの一例である。
【図10】路面状態の判断に使用する判断表の一例である。
【図11】無段変速機においてパワーローラを移動させる際の説明図であり、(a)は位置固定状態を示し、(b)は出力側円錐ローラの大径側に移動する状態を示し、(c)は出力側円錐ローラの小径側に移動する状態を示す。
【図12】無段変速機における変速状態の説明図であり、(a)はロー変速比状態であり、(b)は中間変速比状態であり、(c)はハイ変速比状態である。
【図13】駆動アシスト走行モードにおけるトルク伝達方向を示す説明図である。
【図14】制動回収走行モードにおけるトルク伝達方向を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1のハイブリッド車両の制御装置を備えたフルトレーラトラックを示す外観図である。図2は、実施例1のハイブリッド車両の制御装置の駆動アシスト機構を示す全体システム図である。図3は、無段変速機を示す横断面図である。図4は、無段変速機における入力側円錐ローラと出力側円錐ローラとパワーローラの位置関係を示す斜視図である。図5は、パワーローラの説明図であり、(a)は斜視図を示し、(b)は全体構造の一部破断説明図である。図6は、ローラ軸傾斜変速機構を示す一部破断断面図である。図7は、ローディングカム機構の説明図であり、(a)はトルク伝達がない状態を示し、(b)はトルク伝達がある状態を示す。
【0011】
図1に示すフルトレーラトラック(ハイブリッド車両)1は、トラクター2と、トレーラ3を備えている。トラクター2は、自走可能な牽引車であり、エンジン(主駆動源)Eと、このエンジンEにより回転駆動する主駆動輪(ここでは前輪)2aと、を備えている。トレーラ3は、トラクター2に牽引される被牽引車であり、アシスト駆動機構100を搭載すると共に、アシスト駆動輪(ここでは後輪)4bを備えている。このトラクター2とトレーラ3は、トラクター後部に設けられた牽引装置2bと、トレーラ前部に設けられた被牽引装置3aを介して連結している。
【0012】
アシスト駆動機構100は、トレーラ3の一対の前輪4aと一対の後輪4bの間に搭載され、登坂路等の走行負荷が大きい高負荷走行時に変速を伴ってフルトレーラトラック1の駆動アシストを行う。このアシスト駆動機構100は、図2に示すように、エアモータ(アシスト駆動源)101と、エアコンプレッサ102と、エアタンク103と、コントローラ104と、無段変速機10と、を有している。
【0013】
エアモータ101は、高圧エアを利用して回転駆動する機能を有し、ハウジング、ハウジング内で回転するベーン付ロータ、ベーン付ロータに接続した出力軸101aを有している。そして、このエアモータ101の吸気口には、吸気管101bが接続し、モータ側電磁弁(以下、モータ側弁という)105を介してエアタンク103に連通している。一方、エアモータ101の出力軸101aには、無段変速機10の入力軸20の一端部20aが接続している。
【0014】
エアコンプレッサ102は、吸入した空気を圧縮して高圧エアを生成する機能を有し、シリンダ室、シリンダ室内を往復動するピストン、ピストンを駆動するクランク軸102aを有している。そして、このエアコンプレッサ102の吐出口には、供給管102bが接続し、コンプレッサ側電磁弁(以下、コンプレッサ側弁という)106を介してエアタンク103に連通している。一方、エアコンプレッサ102のクランク軸102aには、コンプレッサ側ドグクラッチ(以下、コンプレッサクラッチという)108を介して無段変速機10の入力軸20の他端部20bが接続している。
【0015】
エアタンク103は、エアコンプレッサ102で生成された高圧エアを貯留する機能を有し、エアモータ101に高圧エアを適宜供給すると共に、後述するローラ軸傾斜変速機構70に高圧エアを常時供給する。
【0016】
コントローラ104は、無段変速機10の入力軸20の回転数を検出する入力回転数センサ104aと、無段変速機10の出力軸30の回転数を検出する出力回転数センサ104bと、フルトレーラトラック1が走行している路面の傾斜角度を検出する路面傾斜センサ(路面傾斜角検出手段)104cと、トレーラ3の車高を検出する車高センサ(車重検出手段)104dと、エアタンク103の内部圧力を検出するタンク圧センサ104eと、トラクター2のシフト位置を検出するシフト位置センサ104fと、トラクター2のアクセル操作量を検出するアクセル操作量センサ104gと、トレーラ3のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量センサ104hからの情報が入力される。そして、路面傾斜角検出値と車高検出値及び減速要求に基づき、モータ側弁105、コンプレッサ側弁106、コンプレッサクラッチ108、ローラ軸傾斜変速機構70にそれぞれ制御指示を出力してアシスト制御処理を実行する。
【0017】
無段変速機10は、図2,図3に示すように、トランスミッションケース11と、入力軸20と、出力軸30と、入力軸20と一体回転する入力側円錐ローラ40(図4に示す入力ローラ軸をOinとする)と、出力軸30と一体回転する出力側円錐ローラ50(図4に示す出力ローラ軸をOoutとする)と、入力側円錐ローラ40と出力側円錐ローラ50の間の平行隙間Sに配置したパワーローラ60と、ローラ軸傾斜変速機構70と、ローディングカム機構80と、付勢機構90と、を備えている。
【0018】
ここで、「平行隙間」とは、一対の入力側円錐ローラ40と出力側円錐ローラ50が対応した位置の間に生じる隙間であり、各ローラ40,50の軸方向に間隔が一定になっており、対向する面が平行になっている。
【0019】
入力軸20は、トランスミッションケース11を貫通すると共に、ベアリング11a,11bを介してトランスミッションケース11に対し回転可能に支持される。そして、トランスミッションケース11から突出した一端部20aにはエアモータ101が接続し、他端部20bにはエアコンプレッサ102が接続する。また、この入力軸20は、入力側円錐ローラ40とスプライン結合して軸方向に相対移動且つ一体回転可能となっている。
【0020】
出力軸30は、入力軸20に対して平行に配置し、一端部30aはベアリング11cを介してトランスミッションケース11に対し回転可能に支持される。また、突出孔13を介してトランスミッションケース11から突出した他端部30bは、ローラ軸傾斜変速機構70により回転可能に支持されている。この出力軸30は、出力側円錐ローラ50の両端面と一体化しており、出力側円錐ローラ50と一体回転可能になっている。さらに、この他端部30bには、自在継手12を介してプロペラシャフトPSが接続している。なお、プロペラシャフトPSは、ファイナルギア(減速ギア)FG、ディファレンシャルギアDFを介して左右の後輪(アシスト駆動輪)4b,4bに接続している。
【0021】
入力側円錐ローラ40は、入力軸20が入力ローラ軸Oinに沿って貫通した円錐型のローラであり、入力軸20と同軸に配置している。また、この入力側円錐ローラ40は、ここでは、大径端部41がエアモータ101側に位置し、小径端部42がエアコンプレッサ102側に位置している。
【0022】
出力側円錐ローラ50は、入力側円錐ローラ40と同じテーパ角度を有する円錐型のローラであり、出力軸30と同軸に配置すると共に、入力側円錐ローラ40に対してテーパ面が逆になるように配置されている。すなわち、入力側円錐ローラ40と出力側円錐ローラ50は、互いのローラ軸Oin,Ooutが平行で逆向きに配置されている。さらに、この出力側円錐ローラ50は、出力軸30の他端部30b側の大径端部51が、出力軸30と共に揺動可能になっている。
【0023】
パワーローラ60は、平行隙間Sに配置し、入力側円錐ローラ40及び出力側円錐ローラ50により挟圧することで、入力軸20から出力軸30、あるいは出力軸30から入力軸20へとトルク伝達をする機能を有している。このパワーローラ60は、図5に示すように、第一ローラ(第1のパワーローラ)61aと、第二ローラ(第2のパワーローラ)61bと、枠体62と、スライドシャフト63と、を有している。
【0024】
第一,第二ローラ61a,61bは、同形の円筒形状を呈しており、各円錐ローラ40,50の各ローラ軸Oin,Ooutを通る面を挟んで対向している。図4において、第一ローラ61aは上記ローラ軸Oin,Ooutを通る面よりも上側で各円錐ローラ40,50に接し、第二ローラ61bは上記ローラ軸Oin,Ooutを通る面よりも下側で各円錐ローラ40,50に接している。
【0025】
枠体62は、第一,第二ローラ61a,61bを、支持間隔を保ったままでそれぞれ回動可能に支持する。ここで、各ローラ61a,61bの回転中心軸は、平行隙間Sの中心線Soと方向が一致している。この枠体62は、第一,第二ローラ61a,61bを取り囲む枠部62aと、スライドシャフト63が貫通する筒部62bと、を有している。枠部62aは、入力側円錐ローラ40側及び出力側円錐ローラ50側が開放し、それぞれの開放部分から第一,第二ローラ61a,61bの外周面が露出している。一方、両端が開放した中空の筒部62bは、枠部62aの中央部を貫通している。
【0026】
スライドシャフト63は、平行隙間Sの中心線Soに沿って延びると共に、両端が屈曲してトランスミッションケース11の底面11dに固定された、いわゆる門型シャフトである(図5(b)参照)。このスライドシャフト63は、筒部62bが円滑に移動するように筒部62bの内径よりも僅かに細くなっている。
【0027】
ローラ軸傾斜変速機構70は、パワーローラ60を平行隙間Sの中心線Soに沿って往復動させ、両円錐ローラ40,50との接触径を変えることで無段階に変速する機能を有する変速手段である。このローラ軸傾斜変速機構70は、揺動可能な出力側円錐ローラ50の一端部である大径端部51と、トランスミッションケース11の間に介装し、図6に示すように、両ロッドシリンダ71と、両ロッドシリンダ71に支持された軸受部72と、軸受部72の揺動を抑制する付勢部73と、を有している。
【0028】
両ロッドシリンダ71は、入力ローラ軸Oinと出力ローラ軸Ooutを平行に保つ中立位置と、入力ローラ軸Oinに対し出力ローラ軸Ooutを一方向に傾ける減速位置と、入力ローラ軸Oinに対し出力ローラ軸Ooutを他方向に傾ける増速位置と、を切り替える機能を有する変速アクチュエータである。この両ロッドシリンダ71は、シリンダケース71aと、このシリンダケース71aに内蔵されたピストン71b及び一対のスプリング71d,71dと、を有している。
【0029】
シリンダケース71aは、軸線が入力ローラ軸Oin及び出力ローラ軸Ooutに対して法線(垂直)方向に延びるように配置され、トランスミッションケース11の外面に固定されている。そして、このシリンダケース71aの、ピストン71bによって区画された両圧力室711a,712aは、それぞれ吸気管71e,71eを介してエアタンク103に接続されると共に、電磁弁71g,71gを介して大気に連通している。ここで、吸気管71e,71eはエアタンク103に常時連通しており、内側にエアの流量を規制するオリフィスを設けている。一方、電磁弁71g,71gは、コントローラ104からの制御信号によって開閉する。ピストン71bは、シリンダケース71aの両圧力室711a,712a間を気密に保ちつつ軸方向に移動するものであり、両側から延在してそれぞれシリンダケース71aから突出する一対のロッド71c,71cを有している。一対のロッド71c,71cの先端部には、軸受部72が接続している。一対のスプリング71d,71dは、ピストン71bを両側から中立位置に付勢するものであり、両圧力室711a,712a内に一つずつ配置している。
【0030】
軸受部72は、ピストン71bと一体に移動可能であり、出力軸30を回転可能に支持するベアリング72aと、ベアリング72aを支持する支持枠72bと、を有している。支持枠72bには、付勢部73の後述するボール73aが嵌合する嵌合凹部72cが形成されている。
【0031】
付勢部73は、ボール73aと、ボール73aを付勢するスプリング73bと、ボール73a及びスプリング73bを収容するケース73cと、を有している。ボール73aは、スプリング73bにより支持枠72b側に付勢され、ピストン71bが中立位置にあるとき嵌合凹部72cに嵌合する。ケース73cは、トランスミッションケース11の外面に固定されている。
【0032】
さらに、図6中一点鎖線により、トランスミッションケース11に形成された出力軸30が突出する突出孔13を示す。この突出孔13は、入力ローラ軸Oin及び出力ローラ軸Ooutに対して法線(垂直)方向に長い長孔となっている。
【0033】
ローディングカム機構80は、入力軸20又は出力軸30からの入力トルクの大きさに比例し、且つ、平行隙間Sの間隔を狭める方向の軸力により、入力側円錐ローラ40と出力側円錐ローラ50に対するパワーローラ60の接触力を発生する機能を有するローラ接触力発生手段である。このローディングカム機構80は、入力軸20と入力側円錐ローラ40の間に介装し、第一カム81と、第二カム82と、複数のカムローラ83と、を有している。
【0034】
第一カム81は、入力軸20からフランジ状に突出した円板形状を呈し、入力軸20と一体回転すると共に、入力側円錐ローラ40に面した内側面(軸方向片側面)81aに回転方向に傾斜した複数のV字状の傾斜面81bをもっている。
【0035】
第二カム82は、入力側円錐ローラ40の大径側端面43から軸方向に突出した円板形状を呈し、この入力側円錐ローラ40と一体回転すると共に、第一カム81に対向した内側(軸方向片側面)82aに回転方向に傾斜した複数のV字状の傾斜面82bをもっている。
【0036】
カムローラ83は、第一,第二カム81,82の径方向に沿って中心軸を配置すると共に、この第一カム81と第二カム82の間に挟持されている。ここで、第一カム81の傾斜面81bと第二カム82の傾斜面82bは対向しており、カムローラ83は、各傾斜面81b,82bの内側に配置されている(図7(a)参照)。
【0037】
付勢機構90は、平行隙間Sの間隔を広げる方向の軸力により、入力側円錐ローラ40と出力側円錐ローラ50に対するパワーローラ60の接触力を解除する機能を有するローラ接触力解除手段である。この付勢機構90は、トランスミッションケース11と入力側円錐ローラ40の小径端部42の間に介装され、入力側円錐ローラ40をエアモータ101側に常時付勢する。ここで、付勢機構90は、平行隙間Sの間隔を広げる方向のバネ軸力を付与するコイルスプリング(バネ)から構成されている。
【0038】
図8は、駆動アシスト機構のコントローラにて実行されるアシスト制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
【0039】
ステップS1では、車高センサ104dによりトレーラ3の車高を検出し、ステップS2へ移行する。
【0040】
ステップS2では、ステップS1で検出した車高データに基づいて車高差を演算し、ステップS3へ移行する。なお、車高差の演算は、予め無積載状態で検出しておいた車高から、ステップS1にて検出した車高を差し引くことにより行う。
【0041】
ステップS3では、ステップS2で求めた車高差に基づいて、傾斜閾値レベルを設定する。この「傾斜閾値レベル」とは、降坂路(低負荷走行)・平坦路(中負荷走行)・登坂路(高負荷走行)のそれぞれの設定閾値の区分である。なお、傾斜閾値レベルを設定する際には、例えば図9に示す設定マップを用いる。
【0042】
ステップS4では、路面傾斜センサ104cによりフルトレーラトラック1が走行している路面の傾斜角度を検出し、ステップS5へ移行する。
【0043】
ステップS5では、ステップS4での路面の傾斜角度の検出に続き、減速要求があるか否かを判断し、YES(減速要求あり)の場合はステップS10へ移行し、NO(減速要求なし)の場合はステップS6へ移行する。なお、減速要求の有無判断は、トラクター2におけるダウンシフト操作の有無、アクセル戻し操作の有無、ブレーキ操作の有無に基づいて判断し、各操作のいずれかがあった場合には、減速要求があったと判断する。なお、ダウンシフト操作の有無はシフト位置センサ104fによって検出し、アクセル戻し操作の有無はアクセル操作量センサ104gによって検出し、ブレーキ操作の有無はブレーキ操作量センサ104hによって検出する。
【0044】
ステップS6では、ステップS5での減速要求なしとの判断に続き、ステップS3で設定した傾斜閾値レベル及びステップS4で検出した路面傾斜角度に基づいて、走行中の路面が平坦路であるか否かを判断し、YES(平坦路)の場合はステップS7へ移行し、NO(平坦路でない)場合はステップS8へ移行する。なお、平坦路であるか否かの判断は、例えば図10に示す判断表を用いる。例えば、傾斜閾値レベルがBであって、傾斜角度が+1.2°であれば平坦路と判断する。また、傾斜角度が+1.2°であっても、傾斜閾値レベルがCであれば平坦路でないと判断する。
【0045】
ステップS7では、ステップS6での平坦路走行中との判断により、高圧エア維持が必要(ニュートラル走行モード)と判断し、コンプレッサクラッチ108を開放すると共に、モータ側弁105及びコンプレッサ側弁106を閉鎖し、エンドへ移行する。
【0046】
ステップS8では、ステップS6での平坦路でないとの判断に続き、ステップS3で設定した傾斜閾値レベル及びステップS4で検出した傾斜角度に基づいて、走行中の路面が登坂路であるか否かを判断し、YES(登坂路)の場合はステップS9へ移行し、NO(登坂路でない=降坂路)場合はステップS10へ移行する。なお、登坂路であるか否かの判断は、例えば図10に示す判断表を用いる。例えば、傾斜閾値レベルがBであって、傾斜角度が+2.2°であれば登坂路と判断する。また、傾斜閾値レベルがBであって、傾斜角度が−2.2°であれば登坂路でない(=降坂路)と判断する。
【0047】
ステップS9では、ステップS8での登坂路走行中との判断により、駆動アシストが必要(駆動アシスト走行モード)と判断し、モータ側弁105を開放し、一方、コンプレッサクラッチ108を開放すると共に、コンプレッサ側弁106を閉鎖し、ステップS11へ移行する。
【0048】
ステップS10では、ステップS5での減速要求ありとの判断、又は、ステップS8での降坂路走行中との判断により、車両制動及びエネルギー回収が必要(制動回収走行モード)と判断し、モータ側弁105を閉鎖し、一方、コンプレッサクラッチ108を締結すると共に、コンプレッサ側弁106を開放し、ステップS11へ移行する。
【0049】
ステップS11では、ステップS9又はステップS10でのコンプレッサクラッチ108,モータ側弁105,コンプレッサ側弁106の各制御に続き、入力軸20の回転数である入力回転数と、出力軸30の回転数である出力回転数を検出し、ステップS12へ移行する。なお、入力回転数は入力回転数センサ104aにより検出し、出力回転数は出力回転数センサ104bにより検出する。
【0050】
ステップS12では、ステップS11で検出した各回転数に基づいて所定の回転数で入力軸20が回転数するように無段変速機10の変速制御を実行し、エンドへ移行する。すなわち、駆動アシスト走行モードにおいては、車速に拘らず入力軸20の回転数をエアモータ101のモータ作動回転域に維持する変速制御を行う。また、制動回収走行モードにおいては、車速に拘らず入力軸20の回転数をエアコンプレッサ102のコンプレッサ作動回転域に維持する変速制御を行う。
【0051】
次に、作用を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置における「駆動アシスト作用」、「エネルギー回収作用」、「ニュートラル作用」、「その他特徴的作用」に分けて説明する。
【0052】
[駆動アシスト作用]
実施例1のフルトレーラトラック1では、走行中、図8に示すアシスト制御処理を一定のタイミング(例えば1秒に一回)で繰り返し行っている。
【0053】
このアシスト制御処理では、まず図8のフローチャートにおいて、ステップS1→ステップS2へと進み、車高差を求めることでトレーラ3の積載量に応じて変化する車両重量を推定する。つまり、積載量が多いほど車両重量は大きく(重く)なるが、この積載量に比例してトレーラ3の車高が低くなる。このため、車高差も積載量に比例して大きくなり、この結果、車高差に基づいて車両重量を推定できることとなる。
【0054】
そして、ステップS2で車高差を求めることで車両重量を推定したら、ステップS3へ進んで車高差に応じた傾斜閾値レベルを設定する。すなわち、トレーラ3は車両重量に応じて車両慣性力が大きく異なるため、車両重量に応じて降坂路(低負荷走行)・平坦路(中負荷走行)・登坂路(高負荷走行)のそれぞれの設定閾値の区分を変更することで、車両慣性力に応じて制御の許可領域を変更することができる。
【0055】
つまり、積載量が少なくて車高が高い(車高差が小さい)場合では、トレーラ3に作用する車両慣性力が小さくなるため、登坂路であっても比較的駆動アシストを必要とせず、また、傾斜が僅かな降坂路においては十分なエネルギー回収をすることができない。そのため、登坂路あるいは降坂路と判断する領域を縮小して、できるだけエアタンク103内の高圧エアを保つ制御が好ましい。一方、積載量が多くて車高が低い(車高差が大きい)場合では、トレーラ3に作用する車両慣性力が大きくなるため、僅かな傾斜の登坂路であっても駆動アシストを必要とし、また、僅かな傾斜の降坂路であっても十分なエネルギー回収が可能となる。そのため、登坂路あるいは降坂路と判断する領域を拡大して、駆動アシストやエネルギー回収を積極的に行う制御が好ましい。このように、車両慣性力の大きさによって好ましい制御が異なるため、車両慣性力に応じて制御許可領域を拡縮する。これにより、燃費の向上をさらに図ることができる。
【0056】
続いてステップS4→ステップS5へ進んで、走行している路面の傾斜角度を検出した後、減速要求の有無を判断する。そして、減速要求がない場合では、ステップS6へ進み、さらに平坦路を走行していなければステップS8へ進む。そして、登坂路を走行している場合には、走行中にトラクター2のエンジン(主駆動源)Eに高負荷がかかった高負荷走行であると判断され、ステップS9へ進んでアシスト駆動走行モードを設定する。すなわち、図13に示すように、モータ側弁105を開放し、一方、コンプレッサクラッチ108を開放すると共に、コンプレッサ側弁106を閉鎖する。
【0057】
これにより、エアモータ101からアシスト駆動輪である後輪4b,4bへとつながる動力伝達経路が無段変速機10を介してつながり、エアタンク103から供給された高圧エアエネルギーを利用して駆動したエアモータ101のトルクが、入力軸20から無段変速機10を介して出力軸30に伝達される。すなわち、エアモータ101において、エアタンク103から吸気管101b、吸気口を介して導入された高圧エアによりベーン付ロータが回転し、出力軸101aが回転して無段変速機10の入力軸20を回転駆動する。この入力軸20の回転駆動力は、入力側円錐ローラ40,パワーローラ60,出力側円錐ローラ50を順に介して出力軸30を回転駆動することとなる。
【0058】
そして、ステップS11→ステップS12へと進み、車速に拘らず無段変速機10の入力軸20の回転数をモータ作動回転領域に維持するよう、無段変速機10の変速制御を行う。なお、「モータ作動回転域」とは、エアモータ101において駆動アシストに必要なトルクの出力を可能とする回転数の領域である。
【0059】
そして、無段変速機10における変速は、ローラ軸傾斜変速機構70の一対の電磁弁71g,71gを開閉制御することにより行う。
【0060】
ここで、無段変速機10における変速比は、パワーローラ60と入力側円錐ローラ40及び出力側円錐ローラ50との接触径、つまりパワーローラ60が接触した位置での各円錐ローラ40,50の断面半径の比率によって決まる。
【0061】
そして、図11(a)に示すように、第一,第二ローラ61a,61bが入力側円錐ローラ40の小径端部42近傍に接し、出力側円錐ローラ50の大径端部51近傍に接した場合に、入力軸20から出力軸30へトルクが伝わる場合では、入力側断面半径Rinが出力側断面半径Routよりも小さくなり、変速比の値が大きくなる。このため、ロー変速比(減速)となる。
【0062】
また、図11(b)に示すように、第一,第二ローラ61a,61bが入力側円錐ローラ40及び出力側円錐ローラ50に接した位置での入力側断面半径Rinと出力側断面半径Routが同じ大きさになる場合に、入力軸20から出力軸30へトルクが伝わる場合では、変速比が1になる。このため、中間変速比(直結)となる。
【0063】
さらに、図11(c)に示すように、第一,第二ローラ61a,61bが入力側円錐ローラ40の大径端部41近傍に接し、出力側円錐ローラ50の小径端部52近傍に接した場合に、入力軸20から出力軸30へトルクが伝わる場合では、入力側断面半径Rinが出力側断面半径Routよりも大きくなり、変速比の値が小さくなる。このため、ハイ変速比(増速)となる。
【0064】
一方、出力軸30から入力軸20へトルクが伝わる場合には、上述の場合と変速比が逆になる。つまり、出力軸30から入力軸20へトルクが伝わるときには、図11(a)に示す状態でハイ変速比(増速)になり、図11(c)に示す状態でロー変速比(減速)となる。また、図11(b)に示す状態で中間変速比(直結)となることは同じである。
【0065】
そして、この無段変速機10において変速比を変化させるには、パワーローラ60と両円錐ローラ40,50との接触径を変えればよい。ここで、接触径を変えるには、第一,第二ローラ61a,61bと出力側円錐ローラ50との接触位置を変化させる。これにより、接触位置における出力側円錐ローラ50の断面が楕円形になるため、第一,第二ローラ61a,61bは出力側円錐ローラ50の外周面に対して螺旋状に接触することになり、第一,第二ローラ61a,61bが平行隙間Sの中心線Soに沿って往復動する。これにより、変速比が連続的(無段階)に変化する。
【0066】
そして、第一,第二ローラ61a,61bと出力側円錐ローラ50との接触位置を変化させるには、ローラ軸傾斜変速機構70により、入力ローラ軸Oinと出力ローラ軸Ooutを平行に保つ中立位置と、入力ローラ軸Oinに対し出力ローラ軸Ooutを一方向に傾ける減速位置と、入力ローラ軸Oinに対し出力ローラ軸Ooutを他方向に傾ける増速位置と、を切り替える。
【0067】
すなわち、図12(a)に示すように、ローラ軸傾斜変速機構70の両ロッドシリンダ71において電磁弁71g,71gがそれぞれ閉鎖し、ピストン71bが中立位置で維持されている場合には、入力ローラ軸Oinと出力ローラ軸Ooutは平行になる。このとき、第一,第二ローラ61a,61bと各円錐ローラ40,50との接触位置における各円錐ローラ40,50の断面は、どちらも円形になるため、第一,第二ローラ61a,61bは、各円錐ローラ40,50の同位置に接触しつづけるので移動しない。なお、このとき、付勢部73のボール73aは、軸受部72の嵌合凹部72cに嵌合し、振動等による支持枠72bの揺動を抑制する。
【0068】
そして、図12(b)に示すように、両ロッドシリンダ71において上側の電磁弁71gを開放すると、圧力室711a内の圧力が低下し、スプリング71dの付勢力に抗してピストン71bが上方に移動する。これにより、軸受部72はボール73aを乗り越えて上方に移動し、出力軸30を上方に押し上げる。この結果、出力ローラ軸Ooutが入力ローラ軸Oinに対して傾き、第一,第二ローラ61a,61bと出力側円錐ローラ50との接触位置がずれ、第一,第二ローラ61a,61bは出力側円錐ローラ50の外周面を螺旋状に接触する。そして、第一,第二ローラ61a,61bは、入力トルクを伝達しつつ出力側円錐ローラ50の小径端部52に向かって移動する。すなわち、このとき入力軸20から出力軸30へトルク伝達される場合には、これが増速位置になる。また、このとき出力軸30から入力軸20へトルク伝達される場合には、これが減速位置になる。
【0069】
また、図12(c)に示すように、両ロッドシリンダ71において下側の電磁弁71gを開放すると、圧力室712a内の圧力が低下し、スプリング71dの付勢力に抗してピストン71bが下方に移動する。これにより、軸受部72はボール73aを乗り越えて下方に移動し、出力軸30を下方に押し下げる。この結果、出力ローラ軸Ooutが入力ローラ軸Oinに対して傾き、第一,第二ローラ61a,61bと出力側円錐ローラ50との接触位置がずれ、第一,第二ローラ61a,61bは出力側円錐ローラ50の外周面を螺旋状に接触する。この結果、第一,第二ローラ61a,61bは、入力トルクを伝達しつつ出力側円錐ローラ50の大径端部51に向かって移動する。すなわち、このとき入力軸20から出力軸30へトルク伝達される場合には、これが減速位置になる。また、このとき出力軸30から入力軸20へトルク伝達される場合には、これが増速位置になる。
【0070】
そして、必要な変速比が得られたら、開放した電磁弁71gを閉鎖することで、両ロッドシリンダ71において圧力室711a,712a内の圧力が同等になり、ピストン71bが中立位置に維持される。これにより、入力ローラ軸Oinと出力ローラ軸Ooutが平行になって、第一,第二ローラ61a,61bの位置が固定される。
【0071】
このように、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、トラクター2のエンジン(主駆動源)Eの負荷が大きくなる登坂路における高負荷走行時、エアタンク103の高圧エアを消費することでエアモータ101にてトレーラ3の後輪(アシスト駆動輪)4bを駆動する。
【0072】
これにより、主駆動源であるトラクター2のエンジンEの出力を、エアモータ101の出力によってアシスト(補助)することができ、登坂路走行時等のトラクター2のエンジンEに負荷がかかる場合であっても、エンジンEの負担を軽減して、トラクター2のエンジンEを大型化する必要がなくなる。また、アシスト駆動源であるエアモータ101が、エアタンク103内の高圧エアエネルギーを利用して駆動するものであるため、バッテリー放電により駆動する電動モータを利用する場合のような大型バッテリーの搭載が不要となる。この結果、コストを低減すると共に、車両重量を大幅に軽量化することができる。
【0073】
[エネルギー回収作用]
実施例1のフルトレーラトラック1において、減速要求時または降坂路走行時、すなわち、走行中のトラクター2のエンジン負荷が低い場合には、図8に示すフローチャートにおいて、ステップS5→ステップS10又はステップS5→ステップS6→ステップS8→ステップS10へと進み、制動回収走行モードを設定する。すなわち、図14に示すように、モータ側弁105を閉鎖し、一方、コンプレッサクラッチ108を締結すると共に、コンプレッサ側弁106を開放する。
【0074】
これにより、アシスト駆動輪である後輪4b,4bからエアコンプレッサ102へとつながる動力伝達経路が無段変速機10を介してつながり、後輪4b,4bの駆動エネルギーは、出力軸30から無段変速機10を介して入力軸20へと伝達され、高圧エアエネルギーとしてエアタンク103に回収される。すなわち、エアコンプレッサ102において、入力軸20の回転によってクランク軸102aが移動してピストンを駆動して高圧エアを生成し、生成された高圧エアが、吐出口、供給管102bを介してエアタンク103に貯留される。
【0075】
そして、ステップS11→ステップS12へと進み、車速に拘らず無段変速機10の入力軸20の回転数をコンプレッサ作動回転領域に維持するよう、無段変速機10の変速制御を行う。なお、「コンプレッサ作動回転領域」とは、エアコンプレッサ102において高圧エアの生成を可能とする回転数の領域である。
このように、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、トラクター2のエンジン(主駆動源)Eの負荷が小さくなる降坂路における低負荷走行時、エアコンプレッサ102をアシスト駆動輪4bからの駆動エネルギーで駆動することで、この駆動エネルギーを高圧エアエネルギーに変換し、エアタンク103に回収するエネルギー回収を行う。
【0076】
これにより、高負荷走行時のアシスト駆動に必要な高圧エアエネルギーを、高圧エアとしてエアタンク103に蓄えることができ、エネルギー回収機能を発揮することができる。
【0077】
さらに、エアコンプレッサ102の駆動によってトレーラ3に制動力を作用することができるので、減速要求時に制動回収モードを設定することで、トラクター2の制動動作に追従するようにトレーラ3を制動することができる。このため、トラクター2の後部がトレーラ3に押されて折れ角が鋭角になるいわゆるジャックナイフ現象等の発生を防止することができる。
【0078】
そして、以上説明したように、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、駆動アシスト機能とエネルギー回収機能を発揮する車両のハイブリッド化を、高圧エアを利用することで安価なシステム構成により達成することができる。
【0079】
さらに、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、駆動アシスト時に無段変速機10の入力軸20をモータ回転作動域に維持する変速制御を行いながらエアモータ101にてアシスト駆動輪4bを駆動し、エネルギー回収時に無段変速機10の入力軸20をコンプレッサ回転作動域に維持する変速制御を行いながらエアコンプレッサ102からの高圧エアを回収する。このため、エアモータ101及びエアコンプレッサ102が適切な状態で駆動可能な時間を拡大することができ、駆動アシスト及びエネルギー回収をさらに効率よく行うことができる。
【0080】
[ニュートラル作用]
実施例1のフルトレーラトラック1において、平坦路走行時、すなわち、走行中のトラクター2のエンジン負荷が中程度の場合には、図8に示すフローチャートにおいて、ステップS5→ステップS6→ステップS7へと進み、ニュートラル走行モードを設定する。すなわち、図2に示すように、モータ側弁105及びコンプレッサ側弁106を閉鎖すると共に、コンプレッサクラッチ108を開放する。
【0081】
これにより、エアモータ101には高圧エアが供給されずにエアモータ101が駆動せず、同時にエアコンプレッサ102はアシスト駆動輪である後輪4b,4bにつながる動力伝達経路から切り離される。この結果、エアタンク103なの高圧エアは増減せず、維持される。
【0082】
なお、このとき、無段変速機10では、付勢機構90によって平行隙間Sの間隔を広げる方向の軸力により、入力側円錐ローラ40と出力側円錐ローラ50に対するパワーローラ60の接触力が解除されている。そのため、入力側円錐ローラ40と出力側円錐ローラ50によるパワーローラ60の第一,第二ローラ61a,61bの接触力(挟圧力)が低下、すなわち解除され、伝達トルクが小さい時にはパワーローラ60と両円錐ローラ40,50の間の接触面がスリップしてしまい、例えば出力側円錐ローラ50が回転しても、パワーローラ60が滑って入力側円錐ローラ40へトルクが伝達されることはない。
【0083】
[その他特徴的作用]
実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、無段変速機10が、入力軸20と一体回転する入力側円錐ローラ40と、出力軸30と一体回転する出力側円錐ローラ50と、両円錐ローラ40,50の間の平行隙間Sに配置され、両円錐ローラ40,50により挟圧することでトルク伝達を行うパワーローラ60とを備え、エアモータ101を入力軸20の一端部20aに接続し、エアコンプレッサ102を入力軸20の他端部20bに接続し、アシスト駆動輪であるトレーラ3の後輪4b,4bを出力軸30に接続した。
【0084】
これにより、駆動アシストやエネルギー回収、あるいはニュートラル状態に制御を切り替える際に、クラッチ機構や逆転機構が不要となり、簡易な構成とすることができる。
【0085】
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両の制御装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0086】
(1) 主駆動源(エンジン)Eと、主駆動輪2aと、アシスト駆動源と、変速機と、アシスト駆動輪(後輪)4bと、高負荷走行時に前記変速機を介して前記アシスト駆動源からの駆動力を前記アシスト駆動輪に伝達する制御を行うアシスト制御手段(図8)と、を備えたハイブリッド車両の制御装置において、前記アシスト駆動源は、エアタンク103内の高圧エアエネルギーを利用して駆動するエアモータ101であり、前記変速機は、無段階の変速比を得る無段変速機10であり、前記アシスト駆動源からの駆動エネルギーを高圧エアエネルギーに変換し、前記エアタンク103に蓄えるエアコンプレッサ102を設け、前記エアモータ101と前記エアコンプレッサ102を、前記無段変速機10の入力軸20に接続し、前記アシスト駆動輪4bを、前記無段変速機10の出力軸30に接続した構成とした。
これにより、駆動アシスト機能とエネルギー回収機能を発揮する車両のハイブリッド化を、安価なシステム構成により達成することができる。
【0087】
(2) 前記アシスト制御手段(図8)は、駆動アシスト時、車速に拘らず前記無段変速機10の入力軸20の回転数をモータ作動回転領域に維持する変速制御を行いながら、前記エアモータ101にて前記アシスト駆動輪4bを駆動し、エネルギー回収時、車速に拘らず前記無段変速機10の入力軸20の回転数をコンプレッサ作動回転領域に維持する変速制御を行いながら、前記エアコンプレッサ102からの高圧エアを前記エアタンク103に回収する構成とした。
これにより、エアモータ101及びエアコンプレッサ102が適切な状態で駆動可能な時間を拡大することができ、駆動アシスト及びエネルギー回収をさらに効率よく行うことができる。
【0088】
(3) 走行路面の傾斜角度を検出する路面傾斜角検出手段(路面傾斜センサ)104cを設け、前記アシスト制御手段(図8)は、路面傾斜角検出値に基づいて走行負荷を推定し(ステップS4)、登坂路における高負荷走行時、前記エアタンク103の高圧エアを消費する駆動アシスト(ステップS9)を行い、平坦路における中負荷走行時、前記無段変速機10をニュートラル状態にして前記エアタンク103の高圧エアを保ち(ステップS7)、降坂路における低負荷走行時、前記エアタンク103に高圧エアを回収するエネルギー回収を行う(ステップS10)構成とした。
これにより、高圧エアエネルギーの消費及び回収を適切に行うことができる。
【0089】
(4) 車両重量を検出する車重検出手段(車高センサ)104dを設け、前記アシスト制御手段(図8)は、車重検出値が大きいほど、高負荷走行及び低負荷走行における制御許可領域を拡大する(ステップS3)構成とした。
これにより、車重によって変化する車両慣性力に対応した制御を行うことができる。すなわち、車両慣性力が大きいほど積極的に駆動アシスト及びエネルギー回収を行うことができる。
【0090】
(5) 前記無段変速機10は、入力軸20と一体回転する入力側円錐ローラ40と、出力軸30と一体回転すると共に、前記入力側円錐ローラ40との間に間隔が一定の平行隙間Sを有する出力側円錐ローラ50と、前記平行隙間Sに配置し、前記両円錐ローラ40,50により挟圧することでトルク伝達を行うパワーローラ60と、を備えた円錐ローラ型の無段変速機であり、前記エアモータ101を、前記入力軸20の一端部20aに接続し、前記エアコンプレッサ102を、前記入力軸20の他端部20bに接続し、前記アシスト駆動輪4bを、前記出力軸30に接続した構成とした。
これにより、駆動アシストやエネルギー回収、あるいはニュートラル状態に制御を切り替える際に、クラッチ機構や逆転機構が不要となり、簡易な構成とすることができる。
【0091】
(6) 前記ハイブリッド車両は、前記主駆動源(エンジン)Eと前記主駆動輪2aを有するトラクター2と、該トラクター2に牽引され、前記アシスト駆動源(エアモータ)101と前記アシスト駆動輪(後輪)4bを有するトレーラ3と、を備えたトレーラトラック(フルトレーラトラック)1である構成とした。
これにより、トレーラ3の有無や積載量等によって主駆動源Eにかかる負担が大きく異なる場合であっても、主駆動源Eに係る負担を抑制し、主駆動源Eの出力を小さなものにすることができる。
【0092】
以上、本発明のハイブリッド車両の制御装置を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0093】
実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、高負荷走行時に駆動アシストを行い、低負荷走行時にエネルギー回収を行う構成としたが、エアタンク103の内部圧力に応じて制御内容を変更してもよい。
【0094】
つまり、タンク圧センサ104eにより検出されたエアタンク103の内部圧力が上限閾値以上であれば低負荷走行時であってもエネルギー回収を行わず、できるだけ高圧エアを消費する駆動アシストを行う。また、上記エアタンク103の内部圧力が下限閾値以下であれば高負荷走行時であっても駆動アシストを行わず、できるだけ高圧エアを回収するエネルギー回収を行う。これにより、エアタンク103の容量を小さく抑えることができ、システム構成のさらなる小型化を図ることができる。
【0095】
そして、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、車両重量検出手段として車高センサ104dを設け、車高差(=無積載時車高−車高検出値)に基づいて車両重量を推定しているが、例えば、サスペンションに変位センサを設けて、サスペンションの撓み量から車両重量を推定してもよいし、積載量に応じてその都度重量を設定してもよい。
【0096】
さらに、実施例1のハイブリッド車両の制御装置では、変速機として、一対の円錐ローラ40,50とパワーローラ60を有する無段変速機10としたが、これに限らず、いわゆるベルト式無段変速機やトロイダル型無段変速機を用いてもよい。
【0097】
そして、実施例1では、ハイブリッド車両の制御装置をフルトレーラトラック1に適用した例を示したが、普通乗用車やバス、トラック、セミトレーラトラックに適用しても良い。また、主駆動源もエンジンEに限らず、電動モータやハイブリッド駆動源(例えばエンジンと電動モータ)であってもよい。
【符号の説明】
【0098】
100 アシスト駆動機構
101 エアモータ(アシスト駆動源)
102 エアコンプレッサ
103 エアタンク
104 コントローラ
104c 路面傾斜センサ(路面傾斜角検出手段)
104d 車高センサ(車両重量検出手段)
1 フルトレーラトラック(ハイブリッド車両)
2 トラクター
E エンジン(主駆動源)
2a 主駆動輪
3 トレーラ
4b 後輪(アシスト駆動輪)
10 無段変速機(変速機)
20 入力軸
20a 一端部
20b 他端部
30 出力軸
40 入力側円錐ローラ
50 出力側円錐ローラ
60 パワーローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主駆動源と、主駆動輪と、アシスト駆動源と、変速機と、アシスト駆動輪と、高負荷走行時に前記変速機を介して前記アシスト駆動源からの駆動力を前記アシスト駆動輪に伝達する制御を行うアシスト制御手段と、を備えたハイブリッド車両の制御装置において、
前記アシスト駆動源は、エアタンク内の高圧エアエネルギーを利用して駆動するエアモータであり、
前記変速機は、無段階の変速比を得る無段変速機であり、
前記アシスト駆動源からの駆動エネルギーを高圧エアエネルギーに変換し、前記エアタンクに蓄えるエアコンプレッサを設け、
前記エアモータと前記エアコンプレッサを、前記無段変速機の入力軸に接続し、前記アシスト駆動輪を、前記無段変速機の出力軸に接続したことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記アシスト制御手段は、駆動アシスト時、車速に拘らず前記無段変速機の入力軸の回転数をモータ作動回転領域に維持する変速制御を行いながら、前記エアモータにて前記アシスト駆動輪を駆動し、エネルギー回収時、車速に拘らず前記無段変速機の入力軸の回転数をコンプレッサ作動回転領域に維持する変速制御を行いながら、前記エアコンプレッサからの高圧エアを前記エアタンクに回収することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
走行路面の傾斜角度を検出する路面傾斜角検出手段を設け、
前記アシスト制御手段は、路面傾斜角検出値に基づいて走行負荷を推定し、登坂路における高負荷走行時、前記エアタンクの高圧エアを消費する駆動アシストを行い、平坦路における中負荷走行時、前記無段変速機をニュートラル状態にして前記エアタンクの高圧エアを保ち、降坂路における低負荷走行時、前記エアタンクに高圧エアを回収するエネルギー回収を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
車両重量を検出する車重検出手段を設け、
前記アシスト制御手段は、車重検出値が大きいほど、高負荷走行及び低負荷走行における制御許可領域を拡大することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記無段変速機は、入力軸と一体回転する入力側円錐ローラと、出力軸と一体回転すると共に、前記入力側円錐ローラとの間に間隔が一定の平行隙間を有する出力側円錐ローラと、前記平行隙間に配置し、前記両円錐ローラにより挟圧することでトルク伝達を行うパワーローラと、を備えた円錐ローラ型の無段変速機であり、
前記エアモータを、前記入力軸の一端部に接続し、
前記エアコンプレッサを、前記入力軸の他端部に接続し、
前記アシスト駆動輪を、前記出力軸に接続したことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたハイブリッド車両の制御装置において、
前記ハイブリッド車両は、前記主駆動源と前記主駆動輪を有するトラクターと、該トラクターに牽引され、前記アシスト駆動源と前記アシスト駆動輪を有するトレーラと、を備えたトレーラトラックであることを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−56643(P2013−56643A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197103(P2011−197103)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(508280999)新庄自動車株式会社 (6)
【Fターム(参考)】