説明

ハイブリッド車両の電力制御装置

【課題】サービスエリアなどの施設側の対策のための多大な投資を要することなく車両側だけの対策で実現できると共に、電気負荷への電力を確実に確保して駐車中に電気機器を作動させながらアイドルストップできるハイブリッド車両の電力制御装置を提供する。
【解決手段】バッテリ12のSOC及びエアコン14の電力使用量に基づき、駐車予定地点でエンジン1をアイドルストップしたままバッテリ電力でエアコン14の作動可能な駐車可能時間を算出してディスプレイ15に表示する(S6)。乗員は、駐車可能時間、自身の駐車の希望時間、及び駐車予定地点までの走行距離などを勘案した上で、適切なタイミングで駐車可能時間の延長指示を行う(S8)。この延長指示に応じてHEV運転モードから力行制御を禁止した充電量回復運転モードへの切換が行われ(S10,12)、バッテリ12の充電が促進されてエアコン作動のためのバッテリ電力が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド車両の電力制御装置に係り、詳しくはエンジンをアイドルストップさせながら車両に搭載された電気負荷を運転可能とした電力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では環境保護の観点から停車中や駐車中に車両のエンジンを停止させるアイドルストップが奨励されており、例えば、停車中にエンジンを自動的に停止及び始動するアイドルストップスタート機能を搭載した車両が実用化されている。しかしながら、停車時に比較して駐車時にはアイドルストップの期間が格段に長くなる。このため、例えば炎天下でのエアコン使用や庫内を低温に保つ必要がある冷蔵車などでは駐車中にエンジン運転を継続しなければならず、環境保護の要望に対応できないという問題がある。
その対策として、例えば特許文献1に記載された技術が提案されている。当該特許文献1の技術は、高速道路のサービスエリアなどに給電設備を設け、サービスエリアに駐車した車両に給電設備から給電するようになっている。この給電により駐車車両はエアコンや冷蔵装置などの電気負荷に供給するための電力を確保できるため、駐車中にアイドルストップを継続して環境保護の要望に対応可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−115028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、車両が駐車する可能性がある各地にそれぞれ給電設備を設ける必要がある上に、車両側には給電を受け入れるための受電装置の装備を要し、また、各駐車車両の電力使用量を計測して課金するためのネットワークを構築する必要がある。さらに、これら各要件を満たしていても、駐車車両が混雑して給電設備に空きがなければ給電を受けることができない。
従って、特許文献1の技術では実施のために多大な投資を必要とする上に、電気負荷への電力を確実に確保できず、より抜本的な対策が要望されていた。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、サービスエリアなどの施設側の対策のための多大な投資を要することなく車両側だけの対策で実現できると共に、電気負荷への電力を確実に確保して駐車中に電気機器を作動させながらアイドルストップを行うことができるハイブリッド車両の電力制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、車両の駆動源としてのエンジン及びモータの駆動力が変速機を介して駆動輪に伝達されるハイブリッド車両の電力制御装置において、車両の走行状態とバッテリの充電状態に基づき、モータ力行走行またはモータ回生走行を行うHEV運転モードを実行するHEV運転モード実行手段と、モータ力行走行を禁止し、モータ回生走行を許可する充電量回復運転モードを実行する充電量回復運転モード実行手段と、HEV運転モード実行手段によるHEV運転モードと充電量回復運転モード実行手段による充電量回復運転モードとを任意に乗員が切り換え可能な切換手段とを備えたものである。
請求項2の発明は、請求項1において、バッテリの充電状態と予め設定された車載の電気負荷の電力使用量に基づき、エンジンを停止させて電気負荷を作動させながら駐車可能な駐車可能時間を推定する駐車可能時間推定手段と、駐車可能推定手段により推定した駐車可能時間を乗員が視認可能な位置に表示する表示手段とを備えたものである。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または2において、HEV運転モードと充電量回復運転モードとを自動的に切り換える自動運転モード手段を実行する自動運転モード実行手段を備え、切換手段が、HEV運転モードと充電量回復運転モードとの間の切換に加えて、自動運転モード手段への切換も可能であり、さらに、切換手段により自動運転モードが選択されたとき、駐車を予定する駐車予定地点でエンジンを停止させて駐車する駐車時間、電気負荷の電力使用量、及び駐車予定地点に到達するまでに走行する予定距離を乗員が入力可能な入力手段と、入力手段により入力された駐車予定地点での駐車時間及び電気負荷の電力使用量に基づき、バッテリの目標充電量を推定する目標充電量推定手段と、を備え、自動運転モード実行手段が、予定距離を走行した時点で少なくともバッテリの充電量として目標充電量が確保されるように、HEV運転モードと充電量回復運転モードとの切換を実行するものである。
請求項4の発明は、請求項3において、自動運転モード実行手段が、HEV運転モードによる車両走行中において現在のバッテリの充電量及び目標充電量に基づき、現在の充電量を目標充電量まで到達させるために必要な充電量回復運転モードによる走行距離として充電走行距離を逐次算出し、車両の走行に伴って予定距離が減少して充電走行距離に達した時点でHEV運転モードから充電量回復運転モードに切り換えるものである。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように請求項1の発明のハイブリッド車両の電力制御装置によれば、モータ力行走行またはモータ回生走行するHEV運転モードと、モータ力行走行を禁止してモータ回生走行を許可する充電量回復運転モードとを、切換手段により乗員が任意に切り換え可能とした。モータ力行走行を禁止する充電量回復運転モードではバッテリを放電する機会がなくなることから、バッテリの充電が促進されて充電量が次第に増加する。このため、駐車予定地点で車両の電気負荷を使用したい場合、乗員は駐車予定地点に到達するまでの走行中に切換手段で充電量回復運転モードに切り換えることによりバッテリ電力を確保でき、駐車予定地点での駐車中にエンジンをアイドルストップしながら電気負荷を作動させることができる。
そして、本発明は車両側だけの対策により実現でき、例えば特許文献1の技術のようにサービスエリアなどの施設側の対策は一切必要としないことから、安価な投資により実施することができる。また、駐車車両の混雑などの外的要因に影響されることなく電気負荷への電力を確実に確保することができる。
【0008】
請求項2の発明のハイブリッド車両の電力制御装置によれば、請求項1に加えて、バッテリの充電状態と電気負荷の電力使用量から推定した駐車可能時間を表示手段に表示するようにした。従って、表示された駐車可能時間に基づき、乗員がより適切にHEV運転モードと充電量回復運転モードとを切り換えることができる。
請求項3の発明のハイブリッド車両の電力制御装置によれば、請求項1または2に加えて、自動運転モードにおいて、駐車予定地点での駐車時間、電気負荷の電力使用量、及び駐車予定地点までの予定距離を入力し、駐車予定地点での駐車時間及び電気負荷の電力使用量からバッテリの目標充電量を推定し、予定距離を走行した時点で少なくともバッテリに目標充電量が確保されるようにHEV運転モードと充電量回復運転モードを切り換えるようにした。
【0009】
従って、乗員が駐車時間、電力使用量及び予定距離を入力するだけで、他に何ら操作することなく自動的にモード切換が行われ、乗員の負担を軽減した上で電気負荷の作動に必要なバッテリ電力を確実に確保することができる。
請求項4の発明のハイブリッド車両の電力制御装置によれば、請求項3に加えて、HEV運転モードのときに現在のバッテリの充電量及び目標充電量から充電量回復運転モードによる充電走行距離を逐次算出し、車両走行に伴って予定距離が充電走行距離まで減少した時点で充電量回復運転モードに切り換えるようにした。このようにバッテリの充電量及び目標充電量から求めた充電走行距離だけ充電量回復運転モードが実行されるため、より確実にバッテリに目標充電量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態のハイブリッド車両の電力制御装置を示す全体構成図である。
【図2】ECUが実行するモード切換ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化したパラレル式ハイブリッド車両の電力制御装置の一実施形態を説明する。
例えばハイブリッド車両はトラックとして構成されており、図1の全体構成図に示すように、走行用動力源としてディーゼルエンジン(以下、エンジンという)1、及び例えば永久磁石式同期電動機のように発電も可能なモータ2が搭載されている。エンジン1の出力軸1aにはクラッチ3の入力側が連結されており、クラッチ3の出力側にモータ2の回転軸を介して変速機4の入力軸が連結されている。変速機4の出力軸は、プロペラシャフト5、差動装置6及び駆動軸7を介して左右の駆動輪8に連結されている。
従って、クラッチ3の接続時には、エンジン1の出力軸1aとモータ2の回転軸の両方が変速機4を介して駆動輪8と機械的に接続され、エンジン1の駆動力、或いはエンジン1及びモータ2の駆動力が変速機4による変速後に駆動輪8に伝達される。また、クラッチ3が切断されているときには、モータ2の回転軸のみが変速機4を介して駆動輪8と機械的に接続され、モータ2の駆動力が変速機4による変速後に駆動輪8に伝達される。
【0012】
本実施形態では変速機4として、手動の機械式変速機をベースとしてアクチュエータにより変速段を切り換える自動変速機が採用され、それに伴いクラッチ3もアクチュエータにより自動的に断接操作されるようになっている。但し、変速機4及びクラッチ3の形式はこれに限定されることなく、例えばトルクコンバータ式の自動変速機や無段変速機(CVT)、或いは手動式の変速機及びクラッチを用いてもよい。
エンジン1及びモータ2の運転、クラッチ3の断接操作、変速機4の変速操作などは、ECU11により統合制御される。このためにECU11には、エンジン1の図示しない燃料噴射弁や燃料噴射ポンプ、走行用のバッテリ12、モータ2の力行制御や回生制御のためにモータ2とバッテリ12との間で電力制御を行うインバータ13、変速機4及びクラッチ3を操作するための図示しないアクチュエータ、車室内の空調のためのエアコン14(電気負荷)、乗員が視認及び操作可能なように運転席に設けられたタッチパネル式のディスプレイ15(切換手段、表示手段、入力手段)、及び各種センサ類などが接続されている。
【0013】
エンジン1及びモータ2の制御に関して、ECU11は運転者のアクセル操作量から求めた要求トルクをエンジン1側及びモータ2側に割り当て、それぞれの要求トルクを達成すべくエンジン1及びモータ2を制御する。モータ2の運転中には、車両の走行状態及びバッテリ12のSOC(State Of Charge:充電状態、充電量)に基づきモータ2の力行制御や回生制御を実行する。例えば運転者によりアクセルが踏込み操作され、且つバッテリ12のSOCが所定値以上のときには、モータ2を力行制御して発生した駆動力を駆動輪8側に伝達して車両を走行させる。また、アクセルオフによる車両の減速時にはモータ2を回生制御し、駆動輪8側から伝達される駆動力によりモータ2を駆動して発電電力をバッテリ12に充電する。以下、このときの運転モードをHEV運転モードと称する(HEV運転モード実行手段)。
【0014】
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、特許文献1の技術では、高速道路のサービスエリアなどに給電設備を設けて車両に給電することにより駐車中にアイドルストップしながら車載の電気負荷を作動可能としているが、車両側だけの対策では実施できない上に、混雑時には給電を受けることができないという問題がある。
そこで、本実施形態では、通常時に実行するHEV運転モードとは別にバッテリ12への充電を優先(具体的にはモータ2の回生制御を許可、力行制御を禁止)した充電量回復運転モードを設定し、車両が駐車予定地点まで走行する間に充電量回復運転モードによりバッテリ12の充電を促進し、その後の駐車時には確保したバッテリ電力により電気負荷を作動させながらアイドルストップを継続可能としている(充電量回復運転モード実行手段)。以下、当該充電量回復運転モードによる対策について詳述する。なお、以下の例では電気負荷として駐車中のエアコン14の作動を想定しているが、エアコン14以外の電気負荷、例えば冷蔵車の冷蔵装置などを対象としてもよい。
【0015】
本実施形態では、充電量回復運転モードを実行せずにHEV運転モードのみを行うノーマルモード、乗員の操作に基づき充電量回復運転モードを実行するパワーリザーブモード、及びECU11の判断に基づき充電量回復運転モードを自動的に実行するオートモードが予め設定されている。これらの各モードは上記タッチパネル式のディスプレイ15により乗員が任意に選択できるようになっており、ディスプレイ15上に表示された各モードの何れかを乗員がタッチ操作すると、そのモードに基づきECU11が処理を実行するようになっている。
図2は運転者により選択されたモードに対応してHEV運転モードと充電量回復運転モードとの間で切換を実行するモード切換ルーチンを示すフローチャートであり、ECU11は車両の走行中に当該ルーチンを所定の制御インターバルで実行している。
【0016】
まず、ステップS2でディスプレイ15からの入力に基づき乗員により選択されたモードを判定する。ノーマルモードが選択されたときにはステップS4でHEV運転モードを実行した後に一旦ルーチンを終了する。従って、この場合には通常通りHEV運転モードが実行されて、モータ2の力行制御や回生制御が適宜行われる。なお、本実施形態のHEV運転モードでは、バッテリSOCを40〜60%の範囲内で制御しているが、これに限定されるものではなく任意に変更可能である。
また、ステップS2でパワーリザーブモードが選択されたときにはステップS6に移行し、ディスプレイ15に駐車可能時間を算出・表示する(駐車可能時間推定手段)。駐車可能時間とは、エンジン1をアイドルストップしたままバッテリ12の電力によりエアコン14の作動を継続可能な時間である。なお、本実施形態では、乗員が駐車予定地点で駐車を希望する時間(後述する希望時間)との比較が容易なように駐車可能時間を表示したが、これに限ることはなく、例えばバッテリ12のSOCなどを表示するようにしてもよい。
駐車可能時間の算出処理は、現在のバッテリ12のSOC、及びエアコン14の作動時の電力使用量に基づき実行される。駐車予定地点でのエアコン14の作動状態が如何なるものか予想不能なため、エアコン14を最大能力で作動させたときの電力使用量が駐車可能時間の算出処理に用いられる。よって、エアコン14の電力使用量は予め判明しているため、実際の算出処理では、バッテリ12のSOCから一義的に駐車可能時間が求められる。なお、本実施形態では、駐車可能時間の算出に用いる電力使用量としてエアコン14を最大能力で作動させたときの電力使用量を用いたが、これに限ることはなく、例えば、過去に駐車したときの電力使用量の情報をECU11に記憶させておき、電力使用量を当該情報で補正するようにしてもよい。
【0017】
なお、駐車予定地点においてアイドルストップ状態で駐車後の車両は、エンジン始動して走行を開始することになるため、駐車予定時間の算出処理では、スタータ駆動などに要する最低限のSCOがバッテリ12に残存するように配慮される。具体的には、現在のバッテリ12のSOCから所定の余裕分を減算した上で算出処理に適用することにより、当該SOCの余裕分に相当する電力をスタータ駆動に消費可能となる。
ECU11はステップS6の処理後にステップS8に移行し、駐車可能時間の延長指示が入力されたか否かを判定する。ディスプレイ15上の駐車可能時間の表示に基づき、アイドルストップ状態でエアコン14の作動を継続可能な時間、即ち駐車予定地点でエアコン14を作動させて休憩できる時間を把握でき、駐車可能時間が自身の希望時間よりも長い場合には何らディスプレイ15を操作しない。従って、この場合にはECU11はステップS8でNo(否定)の判定を下し、続くステップS10でHEV運転モードを実行した後にルーチンを終了する(切換手段)。このようにステップS8でNoの判定が下されている限り、HEV運転モードが継続される。
【0018】
また、表示された駐車可能時間が自身の希望時間よりも短い場合などには、乗員はディスプレイ15上で駐車可能時間の延長指示(実質的には、HEV運転モードから充電量回復運転モードへの切換によるバッテリ充電指示)を入力操作する。これによりステップS8の判定がYes(肯定)になり、ECU11はステップS12に移行してHEV運転モードから充電量回復運転モードへの切換を行った後にルーチンを終了する(切換手段)。従って、以降はステップS8でYesが判定され続けて、充電量回復運転モードが継続される。
上記のように充電量回復運転モードはバッテリ12への充電を優先したモードである。具体的には、HEV運転モードではモータ2を力行制御すべき運転状態であっても充電量回復運転モードでは力行制御を禁止し、一方でモータ2の回生制御はHEV運転モードと同様に許可している、このため、バッテリ12を充電する機会はHEV運転モードと同様にあるものの放電する機会がなくなり、充電量回復運転モードの実行中はバッテリ12の充電が促進されてSOCは次第に増加する。
【0019】
駐車予定地点に到達したときのバッテリ12のSOCは、ステップS8の判定に基づき充電量回復運転モードが開始されるタイミングによって相違する。そして、充電量回復運転モードではバッテリ12の充電を促進できる反面、本来のHEV運転モードに比較して効率が低下する。このため、希望時間のエアコン作動が可能なバッテリ電力を確保した上で、充電量回復運転モードの開始タイミングを可能な限り遅延させることが望ましい。乗員は過去の経験則に基づき、SOC確保のために要する充電量回復運転モードでの走行距離をある程度推測でき、特にトラックなどの定期便では高速道路上での経路が決まっているため、その判断はより容易且つ正確になる。
そこで、乗員はHEV運転モードでの走行中にディスプレイ15に表示された駐車可能時間、自身の希望時間、駐車予定地点までの残存の走行距離などを勘案した上で、適切なタイミングで駐車可能時間の延長指示を行う。
以上のようにパワーリザーブモードではディスプレイ15上に表示された駐車可能時間に基づき乗員が判断し、必要に応じて手動でHEV運転モードから充電量回復運転モードへの切換を行っている。そして、乗員の希望時間よりも駐車可能時間が長くて、エアコン14を作動させた希望時間の駐車が不可能な場合には、乗員による駐車可能時間の延長指示に基づき充電量回復運転モードが実行される。従って、バッテリ12の充電が促進されてSOCが次第に増加し、駐車予定地点に到達した時点では乗員の希望時間だけエアコン14の作動を継続させるバッテリ電力が確保される。よって、駐車中にはアイドルストップしながら希望時間だけエアコン14の作動を継続することができる。
【0020】
一方、ステップS2でオートモードが選択されたときにはステップS14に移行し、乗員による情報入力を行う。入力すべき情報としては、駐車予定地点での駐車時間、エアコン14の電力使用量、駐車予定地点までの予定距離があり、これらの情報の入力画面がディスプレイ15上に表示される。なお、電力使用量については入力の簡略化のために予め大、中、小の3段階に大別されている。但し、これに限ることはなく、具体的な電力使用量を入力するようにしてもよい。また、予定距離に代えて、駐車予定地点に到達する予定時刻や駐車予定地点に到達するまでの所要時間などを用いてもよい。
以上の情報入力を終えた後にステップS16に移行し、各情報に基づき目標SOCを算出する(目標充電量推定手段)。目標SOCとは、駐車予定地点に到達した時点で確保すべきバッテリ12のSOCであり、以下の表1に従って、駐車予定地点での駐車時間とエアコン14の電力使用量とから算出される。
【表1】

【0021】
全体的な傾向としては、駐車時間が短く且つ電力使用量が小であるほど、駐車中のエアコン作動による消費電力が少ないため、バッテリ電力をそれほど確保する必要がないとの観点から目標SOCとして小さな値が算出される。これとは逆に、駐車時間が長く且つ電力使用量が大であるほど、駐車中のエアコン作動による消費電力が多いため、バッテリ電力を十分に確保する必要があるとの観点から目標SOCとして大きな値が算出される。
何れにしても求められた目標SOCは、算出の基礎となった駐車時間及び電力使用量の条件の下で、エアコン14を継続して作動可能な電力をバッテリ12に確保可能な値である。なお、表1の設定は一例であり、当然ながら任意に変更可能である。
続くステップS18では目標SOCをバッテリSOCの制御範囲の下限値として設定した上で、HEV運転モードと充電量回復運転モードとを適宜切換ながら制御を実行する(自動運転モード実行手段)。当該処理は、上記予定距離を走行して駐車予定地点に到達した時点で少なくとも目標SOC以上のバッテリSOCを確保するためのものであり、この要件を達成できれば、車両走行中にどのようにモード切換を実行するものであってもよい。
【0022】
表1の例では、駐車時間が最も短く電力使用量が最も小のときに、HEV運転モードでのSOC制御範囲の下限と一致する40%が算出されるため、この場合には充電量回復運転モードへの切換は行われない。それ以外ではHEV運転モードでのSOC制御範囲の下限よりも高いSOC目標値が算出されるため、駐車予定地点に到達するまでの何れかのタイミングで充電量回復運転モードを実行してバッテリ12の充電を促進する必要がある。
例えばステップS18の処理としては、上記パワーリザーブモードで述べたように当初はHEV運転モードを実行し、所定のタイミングで充電量回復運転モードに切り換えることが考えられる。
ここで、目標SOCに対して現在のバッテリ12のSOCが小であるほど、目標SOCを達成するためにSOCを大きく増加させる必要がある。一方、上記のように充電量回復運転モードの実行中にはバッテリ12のSOCは増加方向に変化し、充電量回復運転モードによる走行距離が長いほどSOCの増加幅は大となる。
【0023】
そこで、ステップS18の具体的な処理としては、HEV運転モードによる車両走行中に現在のバッテリ12のSOCと目標SOCとを比較し、バッテリSOCが目標SOCを下回るときには、充電量回復運転モードの継続によりバッテリSOCを目標SOCまで増加させるために必要な走行距離を充電走行距離として算出する。モータ2の運転状態や走行路の起伏などに応じてバッテリ12のSOCは変動し、それに応じて充電走行距離も増減するため、この算出処理はHEV運転モードによる走行中に逐次実行する。
そして、HEV運転モードによる車両の走行に伴って予定距離は入力当初の値から次第に減少し、予定距離が充電走行距離に達した時点でHEV運転モードから充電量回復運転モードに切り換える。その後はモータ2の力行制御の禁止によりバッテリ12のSOCは次第に増加し、駐車予定地点に到達した時点ではバッテリSOCは目標SOCまで増加している。
【0024】
以上のようにオートモードでは乗員が入力した駐車予定地点での駐車時間、エアコン14の電力使用量、及び駐車予定地点までの予定距離に基づき、ECU11が自動的にHEV運転モードから充電量回復運転モードへの切換を行っている。駐車予定地点に到達した時点では目標SOC以上のバッテリSOCが確実に確保されため、駐車中にはアイドルストップしながら希望時間だけエアコン14の作動を継続できる。そして、乗員が駐車時間、電力使用量及び予定距離を入力するだけで、他に何ら操作することなく自動的にモード切換が行われるため、乗員の負担を軽減した上でエアコン14の作動に必要なバッテリ電力を確実に確保することができる。
以上の説明から明らかなように、パワーリザーブモードとオートモードとの何れでも本実施形態のハイブリッド車両の電力制御装置は車両側だけの対策により実現でき、特許文献1の技術のようにサービスエリアなどの施設側の対策は一切必要としない。また、車両側だけの対策である故に、駐車車両の混雑などの外的要因に影響されることなく、常に確実に駐車予定地点でエアコン14を作動可能なだけのバッテリ電力を確保でき、もって駐車中に電気機器を作動させながらアイドルストップを行うことができる。
【0025】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではトラックの電力制御装置として具体化したが、ハイブリッド車両であれば車種はこれに限るものではなく、バスや作業車両、或いは乗用車などに適用してもよい。
また、上記実施形態では、乗員による運転モードの選択をタッチパネル式のディスプレイ15にて操作することにしたが、乗員が操作可能な位置に運転モードを切り換え可能な切り換えスイッチを設ける構成にしてもよい。
また、上記実施形態では、通常のノーマルモードに加えてパワーリザーブモード及びオートモードを乗員が任意に切換可能としたが、ノーマルモードとパワーリザーブモード、或いはノーマルモードとオートモードとを切換可能なように構成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 エンジン
2 モータ
4 変速機
11 ECU(HEV運転モード実行手段、充電量回復運転モード実行手段、
自動運転モード実行手段、切換手段、駐車可能時間推定手段、目標充電量推定手段)
12 バッテリ
14 エアコン(電気負荷)
15 ディスプレイ(切換手段、表示手段、入力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源としてのエンジン及びモータの駆動力が変速機を介して駆動輪に伝達されるハイブリッド車両の電力制御装置において、
上記車両の走行状態とバッテリの充電状態に基づき、モータ力行走行またはモータ回生走行を行うHEV運転モードを実行するHEV運転モード実行手段と、
上記モータ力行走行を禁止し、上記モータ回生走行を許可する充電量回復運転モードを実行する充電量回復運転モード実行手段と、
上記HEV運転モード実行手段によるHEV運転モードと上記充電量回復運転モード実行手段による充電量回復運転モードとを任意に乗員が切り換え可能な切換手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両の電力制御装置。
【請求項2】
上記バッテリの充電状態と予め設定された車載の電気負荷の電力使用量に基づき、上記エンジンを停止させて当該電気負荷を作動させながら駐車可能な駐車可能時間を推定する駐車可能時間推定手段と、
上記駐車可能推定手段により推定した駐車可能時間を上記乗員が視認可能な位置に表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載ハイブリッド車両の電力制御装置。
【請求項3】
上記HEV運転モードと充電量回復運転モードとを自動的に切り換える自動運転モード手段を実行する自動運転モード実行手段を備え、
上記切換手段は、上記HEV運転モードと上記充電量回復運転モードとの間の切換に加えて、上記自動運転モード手段への切換も可能であり、
さらに、上記切換手段により上記自動運転モードが選択されたとき、駐車を予定する駐車予定地点で上記エンジンを停止させて駐車する駐車時間、上記電気負荷の電力使用量、及び上記駐車予定地点に到達するまでに走行する予定距離を上記乗員が入力可能な入力手段と、
上記入力手段により入力された駐車予定地点での駐車時間及び電気負荷の電力使用量に基づき、上記バッテリの目標充電量を推定する目標充電量推定手段と、を備え、
上記自動運転モード実行手段は、上記予定距離を走行した時点で少なくとも上記バッテリの充電量として上記目標充電量が確保されるように、上記HEV運転モードと上記充電量回復運転モードとの切換を実行することを特徴とする請求項1または2記載ハイブリッド車両の電力制御装置。
【請求項4】
上記自動運転モード実行手段は、上記HEV運転モードによる車両走行中において現在のバッテリの充電量及び上記目標充電量に基づき、現在の充電量を目標充電量まで到達させるために必要な充電量回復運転モードによる走行距離として充電走行距離を逐次算出し、上記車両の走行に伴って予定距離が減少して上記充電走行距離に達した時点で上記HEV運転モードから充電量回復運転モードに切り換えることを特徴とする請求項3記載ハイブリッド車両の電力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−86529(P2013−86529A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225747(P2011−225747)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】