説明

ハイポイドギア測定装置

【課題】ハイポイド歯車に高負荷トルクを加えても安定した状態でハイポイド歯車の伝達特性の測定を確実に行なうことができるハイポイド測定装置を提供する。
【解決手段】第1のブロック10上にG軸方向にスライドするスライド台14を設けてそのスライド台14上にスライド自在にギア主軸15を設ける。また第1のブロック10上に第2のブロック11を立設してその第2のブロック11の側面にピニオン主軸13をV軸方向にスライドさせるためのスライドテーブル12を設ける。さらにピニオン主軸13をH軸方向にスライドさせるすべり案内部123をそのスライドテーブル12の側面に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに噛合するピニオンギアとリングギアとからなるハイポイド歯車のトルク伝達特性を測定するハイポイドギア測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、実車と同じ様な回転とトルクを負荷し、ピニオン主軸とギア主軸とに内蔵させたロータリーエンコーダを検出器として、回転速度や負荷トルクを変化させながら、ハイポイドギアが発生する回転角度伝達誤差をロータリーエンコーダのパルスより計測し、FFT解析器による次数比解析を行なうハイポイドギア測定装置が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
図1は、そのハイポイドギア測定装置2の構成を示す図である。
【0004】
図1を参照して従来のハイポイドギア測定装置2の構成を簡単に説明する。
【0005】
図1に示すハイポイドギア測定装置2が備える歯車保持具を有したピニオン主軸21及びギア主軸22に、測定担当者によってハイポイドギアを構成するピニオンギア201及びリングギア202がそれぞれ装着される。
【0006】
図1のハイポイド測定装置2には、ピニオンギア201とリングギア202とをピニオン主軸21とギア主軸22とにそれぞれ装着してそれぞれのギアを噛み合せることができるようにするために、ピニオンギア201をピニオン主軸21側の回転軸が延びる方向(以降H軸という)に沿ってスライドさせるスライド機構SAと、リングギア202をギア主軸22側の回転軸が延びる方向(以降G軸という)に沿ってスライドさせるスライド機構SBと、リングギア202をそのG軸に直交する方向(以降V軸という)に沿ってスライドさせるスライド機構SCとがそれぞれ設けられている。
【0007】
このため、ピニオンギア201やリングギア202が連結されるピニオン主軸21とギア主軸22が備える回転軸の内部にはスプラインギアが内蔵され、ピニオン主軸21やギア主軸22をH軸やG軸に沿って水平方向にスライドしても回転とトルクとが確実に伝えられる。そしてそれらの回転軸の端部にプーリーとベルトを介してACサーボモータが連結されて回転とトルクがピニオンギアとリングギアとの双方に別々に加えられる構成になっている。
【0008】
ピニオンギア201をH軸に沿ってスライドさせるスライド機構SAは、剛体となるベット20とそのベット20上に固定されたスライドベース210と、そのスライドベース210上をスライドするスライドテーブル211とで構成されている。
【0009】
測定担当者によって図1のスライドテーブル211上のピニオン主軸21にピニオンギア201が連結された後、ピニオンギア201とともにピニオン軸21をH軸に沿ってスライドさせることによりピニオンギア201のH軸方向の位置が調整される。
【0010】
また、リングギア202をG軸に沿ってスライドさせるスライド機構SBは、ベット20上に固定されたスライドベース220と、そのスライドベース220上をスライドするスライドテーブル221とで構成されている。
【0011】
測定担当者によって図1のスライドテーブル221上のギア主軸22にリングギア20
2が連結された後、リングギア202とともにこのスライドテーブル221をG軸に沿ってスライドさせることによりリングギア202のG軸方向の位置が調整される。
【0012】
さらにリングギア202をG軸に沿ってスライドさせるスライドテーブル221上に、リングギア202をV軸方向に沿ってスライドさせるためのスライド機構SCが設けられている。このスライド機構SCは、V軸方向に沿ってスライドするスライドテーブル221に連結されたコラム222とそのコラム222に沿ってスライドするスライドテーブル223とで構成されている。
【0013】
測定担当者によって図1のスライドテーブル221上のギア主軸22にリングギア202が連結された後、リングギア202とともにこのスライドテーブル223をV軸に沿ってスライドさせることによりリングギア202のV軸方向の位置が調整される。
【0014】
つまり、測定担当者は、これらのスライド機構SA,SB,SCを使って、ピニオン主軸21とギア主軸22に装着されたピニオンギア201とリングギア202とを噛み合わせてからハイポイド歯車の伝達特性の測定を行なうことになる。
【0015】
図2は、図1のハイポイド測定装置2を上方から見た図である。この図2には図1の構成に加えて、前述のハイポイド歯車に負荷を加える駆動部が示されている。
【0016】
ピニオン主軸21に負荷を加える駆動部には、プーリP1,P2とベルトV1を介しACサーボモータM1が連結され、またギア主軸22に負荷を加える駆動部にはプーリP3,P4とベルトV2を介しACサーボモータM2が連結されている。上記した様に各スライドテーブル211,221,223の位置調整が行なわれてピニオンギア201(図1参照)とリングギア202(図1参照)とが噛み合うとピニオン軸21のモータM1とギア軸22のモータM2とがハイポイド歯車を介して連結されることになるので、双方のACサーボモータM1,M2を使ってハイポイド歯車に負荷を加えることができるようになる。
【0017】
そしてハイポイド歯車に、ACサーボモータM1,M2によって実車と同じような回転やトルクが加えられて測定が開始されると、ピニオン主軸21とギア主軸22との双方に内蔵されたロータリーエンコーダ(不図示)からのパルスが不図示のFFT解析器に伝えられそのFFT解析器によってハイポイド歯車の伝達特性がどのようなものであるかが解析される。
【0018】
ところで、いままでの図2に示すハイポイド測定装置2は、主に中・小型車の巡航・緩加速のトルク領域(〜600Nm)の測定を行なうことを目的としていたが、近年においては大型車の発進・加速のトルク領域(〜1800Nm)である高負荷トルクをハイポイド歯車に加えてハイポイド歯車の伝達特性を測定する必要が出てきている。
【0019】
しかしながら国内においては高負荷トルクを加えることができるハイポイド測定装置の製作実績はまだなく、海外を含めてもその製作事例が無い。このような高負荷トルクを加えることができるハイポイド測定装置にあっては、高負荷トルクをハイポイド歯車に加えたときのハイポイド歯車からの反力によってハイポイド測定装置自身が出来るだけ変形しない構造になっていることが必要となる。
【0020】
しかし、図1のハイポイド測定装置2では上記した様に600Nmまでの測定レンジしか持たせていないので、1800Nmまでの高負荷トルクを加えると大きな変形が生じる恐れがある。
【0021】
ここで、図1のハイポイド測定装置2に高負荷トルクを加えると、どのような変形が生じる恐れがあるかを説明する。
【0022】
図3は、第1の主軸21側をV軸に沿って切断し切断した面を側方から見た図であり、図4は、第2の主軸22側をV軸に沿って切断し切断した面を側方から見た図である。
【0023】
今までよりも高い負荷トルクをハイポイド歯車に加えることを考えると、ハイポイド歯車を連結するピニオン主軸21やギア主軸22、さらにそれらが連結されるスライドベース211,220やコラム222には、変形を小さくおさえるためにより高い剛性が必要である。
【0024】
しかし図3、図4に示す現行のハイポイド歯車測定装置2ではピニオン主軸21やスライドベース210,220の内部に空間SP1,SP2,SP3が設けられており、スライドテーブル211,221の案内部2110,2210やピニオン主軸21とスライドテーブル211との連結部21Aやスライドベース210,220とベッド10との連結部210A,220Aの肉厚が薄く構成されている。
【0025】
つまり、ピニオン主軸21やスライドテーブル211,221やスライドベース210,220の連結部の剛性が低く、図1の現行のハイポイド歯車測定装置2に1800Nmの高負荷トルクを加えると、ピニオン主軸21やスライドベース211,220の空間部SP1〜SP3の周辺や、案内部2110,2210の周辺や各部を連結している薄肉部21A,210A,220Aの周辺に歯車からの反力により大きな変形が生じる恐れがある。
【0026】
また、コラム222がスライドベース221上に載せられてギア主軸22が剛体であるベッド20から離れた距離HAのところに設定されている。そのためスライドテーブル223の案内部2230には、歯車反力がより大きな力に増幅されて案内部2230に大きな変形を生じさせてしまう。
【0027】
このように測定中にハイポイド測定装置2に変形が生じると、ハイポイドの噛み合い位置がずれて測定を正確に行なうことができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】小野測器セレクションガイド「歯車測定システム」CAT.NO.1410−04Printed in Japan(074)1K‘074月改訂
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、ハイポイド歯車に高負荷トルクを加えても安定した状態でハイポイド歯車の伝達特性の測定を確実に行なうことができるハイポイド測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成する本発明のハイポイド測定装置は、互いに噛合するピニオンギアとリングギアとからなるハイポイド歯車のトルク伝達特性を測定するハイポイドギア測定装置において、
上面を有する第1ブロックと、
側面を有し前記第1ブロックに移動不能に固定されて立設した第2ブロックと、
上記第2ブロック側を向いた第1の側面とその第1の側面とは反対側の第2の側面とを
有し、その第1の側面が上記第2ブロックの側面にクランプにより移動不能に固定されアンクランプ時に上下方向にスライド自在なスライドテーブルと、
水平方向に延びる第1の回転軸を有し、上記ピニオンギアおよび上記リングギアの内の一方の第1のギアが取外し自在に装着され、装着された第1のギアにトルクを伝達する、上記スライドテーブルの上記第2の側面にクランプにより移動不能に固定され、アンクランプ時にその第1の回転軸の延びる方向にスライド自在な第1の主軸と、
上記第1ブロック上面に移動不能に固定されたスライド台と、
上記第1の主軸の上記第1の回転軸と交わる水平方向に延びる第2の回転軸を有し、上記ピニオンギアおよび上記リングギアのうちの上記第1のギアとは異なるもう一方の第2のギアが取外し自在に装着され、装着された第2のギアにトルクを伝達する、上記スライド台上面にクランプにより移動不能に固定され、アンクランプ時にその第2の回転軸の延びる方向にスライド自在な第2の主軸とを備えたことを特徴とする。
【0031】
上記本発明のハイポイド測定装置によれば、上記第2の主軸が上記第1ブロック上面に移動不能に固定されたスライド台上を上記第2の回転軸の延びる方向にスライドし、上記第1の主軸が、上記第1ブロックに移動不能に固定されて立設した第2のブロックの側面上を上下方向にスライドするとともに上記第1の回転軸の延びる方向にスライドする。
【0032】
つまり、本願発明のハイポイド測定装置では、例えば図1で説明したギア主軸202(上記第2の主軸)側のG軸方向のスライド機構SBはそのままにし、ベット10から離れた位置に配置されるという欠点を持つV軸(上下)方向のスライド機構SCを取り外してピニオン主軸(第1の主軸)側に移してそのV軸方向のスライド機構と図1で説明したピニオン主軸201のH軸方向のスライド機構とを上記第1ブロックに立設した第2ブロックの側面に設けることになる。
【0033】
このため、上記第1のブロックと上記第2のブロックとを一体化して一つの剛体としての機能を担わせ、その剛体としての機能を担う第1のブロックと第2のブロックとの少なくとも一方から近い位置に上記第1の主軸と上記第2の主軸とを配置することによって、本願発明のハイポイド歯車測定装置に従来よりも強い剛性力を持たせることができる。
【0034】
こうしてハイポイド歯車測定装置の剛性力の向上が図られると、ハイポイド歯車の伝達特性の測定を安定した状態で確実かつ正確に行なうことができる。
【0035】
また上記第2のブロックとの間に上記スライドテーブルと上記第1の主軸を挟んで上記第1ブロックに移動不能に固定され、上記スライドテーブルの上記第2ブロックからのアンクランプ時および上記第1の主軸の上記スライドテーブルからのアンクランプ時の、重力によるその第1の主軸の倒れを防止する第3のブロックをさらに備えた態様であることが好ましい。
【0036】
そうすると、上記スライドテーブルを上下方向にスライドさせているときの第1の主軸の倒れが上記第3のブロックによって防止され、スライドテーブルの安定したスライド動作が得られる。さらに上記第1のブロックと上記第2のブロックと上記第3のブロックとに一つの剛体としての機能を担わせることで更なる剛性力の向上を図ることができる。
【0037】
また、上記第2ブロックは、その第2ブロック側面が上記スライドテーブルの上記第1の側面に面接触したままスライドテーブルのスライドを案内するすべり案内構造を有することが好ましく、
上記スライドテーブルは、そのスライドテーブルの上記第2の側面が上記第1の主軸に面接触したまま第1の主軸のスライドを案内するすべり案内構造を有することが好ましく、
上記スライド台は、スライド台上面が上記第2の主軸に面接触したまま第2の主軸のスライドを案内するすべり案内構造を有することが好ましい。
【0038】
上記のように上記第2のブロックと上記スライドテーブルとの間のスライド面、上記スライドテーブルと上記第1の主軸との間のスライド面、上記スライド台と上記第2の主軸との間のスライド面をすべてすべり案内構造にすると、上記第2のブロックと上記スライドテーブルとの間に、また上記スライドテーブルと第1の主軸との間に、さらに上記スライド台と上記第2の主軸との間に隙間を生じさせることがなくなって、上記第2のブロックと上記スライドテーブルと上記第1の主軸と上記第1のブロックと上記スライド台と上記第2の主軸とをすべて一体構造にすることができ、更なる剛性力の向上を図ることができる。
【0039】
さらに、上記第1の主軸にトルクを与える第1のサーボモータと、上記第2の主軸にトルクを与える第2のサーボモータとを備え、上記第1の主軸と上記第1のサーボモータとの間、および第2の主軸と上記第2のサーボモータとの間は、各ベルトを介して連結されていることが好ましい。
【0040】
そうすると、ベルトを介して効率よくモータの回転が回転軸に伝えられ、ハイポイド歯車にモータからのトルクと回転が損失なく加えられる。
【発明の効果】
【0041】
以上、説明したように、ハイポイド歯車に高負荷トルクを加えているときに安定した状態でハイポイド歯車の伝達特性の測定を行なうことができるハイポイド測定装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来のハイポイドギア測定装置2の構成を示す図である。
【図2】図1のハイポイド測定装置2を上方から見た図である。
【図3】ピニオン主軸21側をV軸に沿って切断し切断した面を側方から見た図である。
【図4】ギア主軸22側をV軸に沿って切断し切断した面を側方から見た図である。
【図5】ハイポイド測定装置1を斜め上方から見た斜視図である。
【図6】図5のハイポイド測定装置のH軸方向にスライドするスライド機構によってピニオンギア101とリングギア102の噛み合いが調整されるときの状態を示す図である。
【図7】G軸方向にスライドするスライド機構によってリングギア101とピニオンギア102の噛み合いが調整されるときの状態を示す図である。
【図8】V軸方向にスライドするスライド機構によってリングギア101とピニオンギア102の噛み合いが調整されるときの状態を示す図である。
【図9】図5のハイポイド測定装置1を上方から見た図である。
【図10】ギア主軸側の構成を示す図である。
【図11】ピニオン主軸側の構成を示す図である。
【図12】スライドテーブル12やピニオン主軸13やギア主軸15をスライドさせて位置調整が終了した後、各調整機構SA,SB、SCが備えるスライドテーブル12やスライド台14やピニオン主軸13を移動不能にするためのクランプ機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0044】
図5には本実施形態のハイポイド測定装置1の構成を示す図が示されている。
【0045】
図5は、ハイポイド測定装置1を斜め上方から見た斜視図であり、また図6は、図5のハイポイド測定装置1が備えるH軸方向へのスライド機構SA1によってピニオンギア101とリングギア102の噛み合いが調整されるときの状態を示す図である。図7は、同様にG軸方向へのスライド機構SB1によってリングギア101とピニオンギア102の噛み合いが調整されるときの状態を示す図である。図8は、同様にV軸方向へのスライド機構SC1によってリングギア101とピニオンギア102の噛み合いが調整されるときの状態を示す図である。
【0046】
図5を参照して構成を説明する。
【0047】
まず図5に示す様にハイポイドギア測定装置1には、剛体としての機能を担うベッド10が備えられている。そのベッド10の上にコラム11が立設され、そのコラム11が多数のボルト(不図示)で移動不能にベッド10に固定されている。こうしてベッド10にコラム11を強固に連結してコラム11とベッド10とを一体構造にすることで、これらに剛体としての機能を担わせる。
【0048】
そのコラム11の側面110には、ピニオン主軸13をH軸方向にスライドさせるスライド機構SA1と、V軸方向にスライドさせるスライド機構SC1とが構成されている。
【0049】
またギア主軸15をG軸方向にスライドさせるスライド機構SB1は、剛体としての機能を担うベッド10上に強固に連結されたスライド台14上に構成されている。
【0050】
図5〜図8を参照して上記スライド機構SA1の構成と上記スライド機構SB1の構成と上記スライド機構SC1の構成とをそれぞれ説明する。
【0051】
まずピニオン主軸13をV軸方向にスライドさせるためのスライド機構SC1の構成を説明する。
【0052】
図8のピニオン主軸13をV軸方向にスライドさせるためのスライド機構SC1は、図5に示す様にスライドテーブル12によって構成され、そのスライドテーブル12はコラム11にV軸方向に移動自在に連結されている。このスライドテーブル12は、コラム11の側面110に面で接触してスライドする、いわゆるすべり案内構造を有する。
【0053】
このスライドテーブル12は、コラム11に取り付けられているシリンダ(後述する)のクランプナットが、係合部ENG1に係合しないアンクランプ状態のときには上下つまりV軸方向にスライドし、シリンダの先端のクランプナットがそのスライドテーブル12の係合部ENG1に係合するクランプ状態のときにはコラム11に移動不能に固定されるように構成されている。
【0054】
この様にスライドテーブル12を剛体とみなせるコラム11に移動不能に固定する構造にすることで、ブロックで構成されているコラム11にクランプされた後のスライドテーブル12にも剛体としての機能を担わせている。
【0055】
また、このスライドテーブル12の、コラム11側の第1の側面121とは反対側の第2の側面122は、主軸13の側面に面で接する、いわゆるすべり案内構造123を有する。このスライドテーブル12の第2の側面122にも上記係合部ENG1とは別の第2の係合部ENG2が設けられており、ピニオン主軸13は、そのピニオン主軸13に取り付けられているシリンダ(不図示)のクランプナットがその第2の係合部ENG2に係合
しないアンクランプ状態のときには図6に示す様にH軸方向に移動し、クランプナットがその第2の係合部ENG2に係合するクランプ状態のときにはスライドテーブル12に移動不能に固定される。
【0056】
この様にコラムに移動不能に固定されたスライドテーブル12にピニオン主軸13を移動不能に固定することで、スライドテーブル12とともにピニオン主軸13にも剛体としての機能を担わせている。
【0057】
一方、ギア主軸15には、ギア主軸15をG軸方向にスライドさせるスライド機構SB1を構成するスライド台14が備えられている。そのギア主軸15にも、ピニオン主軸と同様にシリンダが取り付けられており、スライド台14にはそのシリンダの先端のクランプナットが係合する第3の係合部(後述する)が設けられている。このシリンダのクランプナットがその第3の係合部に係合しないアンクランプ状態のときには、ギア主軸15が図7に示す様にG方向に移動し、シリンダ先端のクランプナットがスライド台内の第3の係合部に係合するクランプ状態にあるときにはギア主軸15がスライド台14に移動不能に固定される。
【0058】
こうしてクランプ機構によってスライドテーブル12がコラム11にクランプされ、ピニオン主軸13がスライドテーブル12にクランプされ、さらにギア主軸15がスライド台14にクランプされた後、ピニオン主軸13とギア主軸15とがそれぞれ備える回転軸の端部の回転受部(後述する)にモータM3,M4からの回転とトルクとが加えられて双方の回転軸が回転することによりギア伝達特性の測定が開始される。
【0059】
図9は、図5のハイポイド測定装置1を上方から見た図である。この図9には、ピニオン主軸13とギア主軸15とに回転を加えるための駆動部の構成が示されている。
【0060】
図2の従来のハイポイド測定装置2では負荷トルクがあまり大きくなかったのでベルト減速機を含むモータ駆動部をハイポイド測定装置2内に内蔵させることができたが、本実施形態においては、図9に示す様にベルト減速機Aを含むモータユニットが大きくなったことを理由にモータM3,M4をハイポイド測定装置1の外部に配置してベルトV3,V4,V5でモータM3,M4からの回転とトルクをピニオン主軸13の回転軸の端に設けられている回転受部R1とギア主軸15の回転軸の端に設けられている回転受部R2とに伝えることができる構成にしている。
【0061】
こうしてピニオンギア101とリングギア102が噛み合わされた後においては、モータM3,M4から前述した様に1800Nmに達する高負荷トルクがハイポイド歯車に加えられて測定が行なわれる。
【0062】
ここで、従来においては、図1〜図4で説明した様に、ピニオン主軸21やスライドベース等210に空間が設けられたり、コラム222がスライドベース221に載せられて唯一剛体と見なせるベッド20から離れたところにリングギア202が配置されたりしてしまうために、ハイポイド測定装置の剛性が低下して大きな変形が生じる恐れがあるという問題を抱えていた。
【0063】
そこでこの従来の問題を本願発明ではどのように解決したかを説明する。
【0064】
図10は、ギア主軸15側の構成を示す図であり、図11は、ピニオン主軸13側の構成を示す図である。
【0065】
図10、図11に示す様に。本実施形態では、図2、図3で説明したような肉厚の薄い
部分が廃止されて全体的に厚い肉厚で構成されて剛性力の向上が図られている。
【0066】
また図10(A)に示す様に、ギア主軸15を、本発明にいう第1のブロックとなるベッド10上に固定されたスライドベース14から短い距離H1のところに配置してギア主軸15を図10(B)に示すクランプ機構によりスライド台14にクランプすることで剛性力の向上が図られている。
【0067】
さらに図11に示す様に、ピニオン主軸13を、ベッド10と同様に剛体と見なせる第1のブロック11から短い距離H2のところに配置してクランプ機構によりクランプすることで剛性力の向上が図られている。なお、この図11には第3のブロック16を設けてアンクランプ状態のときのスライドにおけるピニオン主軸13の倒れや、その第3のブロック16とギブg1、ギブg2とを使ってピニオン主軸13のスライド時の精度確保が図られたこともあわせて示されている。
【0068】
こうして従来あった主軸やスライド台などの肉厚の薄い部分をなくして部材個々の強度の向上を図り、歯車に近いところに剛体とみなせるブロックを配置してそのブロックに各主軸をクランプすることで、より一層の剛性力の向上が図られている。
【0069】
ここで、ハイポイド歯車の伝達特性を測定している最中の剛性力の向上を図ることを目的として設けられたクランプ機構の構造を説明しておく。
【0070】
図12は、スライドテーブル12やピニオン主軸13やギア主軸15をスライドさせて位置調整が終了した後、各調整機構SA,SB、SCが備えるスライドテーブル12やスライド台14やピニオン主軸13を移動不能にするためのクランプ機構の構成を示す図である。
【0071】
この図12(a)には、図10と図11とに示されている第3の係合部ENG3,第2の係合部ENG2を含むクランプ機構の構成が示されている。また、図12(b)には、図11に示されている第1の係合部ENG1を含むクランプ機構の構成が示されている。
【0072】
図12(a)に示す様に、シリンダロッドSL1にはクランプボルトCLが取り付けられていて、そのシリンダロッドSL1の動きが油圧によって制御される様に構成されている。供給口Aに油圧をかけると、シリンダロッドSL1とともにクランプボルトCL、さらにはクランプナットCN1が図の右側にスライドし、クランプナットCN1がスライドテーブル12内の係合部ENG2に係合してピニオン主軸13がスライドテーブル12に強固に固定される。また、供給口Bに油圧をかけると、シリンダロッドSL1とともにクランプボルトCL、さらにはクランプナットCN1が左に移動し、スライドテーブル12の係合部ENG2からクランプナットCN1が外れてピニオン主軸13がスライドテーブル12からアンクランプされる。本実施形態では、図11に示すピニオン主軸13の図の上下の手前―真ん中―奥側の計6箇所にシリンダを配置してピニオン主軸13をスライドテーブル12にしっかりとクランプすることができる構成にしている。
【0073】
一方、ピニオン主軸13側のスライドテーブル12に図12(a)の構成を採用すると、電源オフ時には油圧も落ちるので時間の経過とともにクランプ力が低下してスライドテーブル12が自重で落下してしまう。そこで、ピニオン主軸13側については、図12(b)に示す様なクランプ機構にして皿バネSPRを設けてスライドテーブル12が自重方向には落ちない構成にしている。この図12(b)の構成においては、シリンダロッドSL1をアンクランプ状態にするときには、供給口Bに油圧をかけて皿バネのバネ付勢に逆らう力を発生させてシリンダロッドSL1をスライドさせる構成にしてある。
【0074】
この様な構成にすると、自動的にシリンダロッドをスライドさせる構造にしても、各主軸をスライドさせた後に各主軸を剛体とみなせる各ブロックに自動的にクランプして各主軸と各ブロックとの一体化を図ることができ、各主軸の剛性をできるだけ落とさないようにすることが可能となる。
【0075】
以上、説明したように、ハイポイド歯車に高負荷トルクを加えているときに安定した状態でハイポイド歯車の伝達特性の測定を行なうことができるハイポイド測定装置が実現する。
【0076】
なお、本実施形態においては、ピニオン軸を第1の主軸とし、ギア軸を第2の主軸として説明を行なったが、ギア軸を第2の主軸とし、ピニオン軸を第1の主軸としても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 2 ハイポイドギア測定装置
10 第1のブロック
11 第2のブロック
12 スライドテーブル
121 第1の側面
122 第2の側面
13 ピニオン主軸
14 スライド台
15 ギア主軸
16 第3のブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに噛合するピニオンギアとリングギアとからなるハイポイド歯車のトルク伝達特性を測定するハイポイドギア測定装置において、
上面を有する第1ブロックと、
側面を有し前記第1ブロックに移動不能に固定されて立設した第2ブロックと、
前記第2ブロック側を向いた第1の側面と該第1の側面とは反対側の第2の側面とを有し、該第1の側面が前記第2ブロックの側面にクランプにより移動不能に固定されアンクランプ時に上下方向にスライド自在なスライドテーブルと、
水平方向に延びる第1の回転軸を有し、前記ピニオンギアおよび前記リングギアの内の一方の第1のギアが取外し自在に装着され、装着された該第1のギアにトルクを伝達する、前記スライドテーブルの前記第2の側面にクランプにより移動不能に固定され、アンクランプ時に該第1の回転軸の延びる方向にスライド自在な第1の主軸と、
前記第1ブロック上面に移動不能に固定されたスライド台と、
前記第1の主軸の前記第1の回転軸と交わる水平方向に延びる第2の回転軸を有し、前記ピニオンギアおよび前記リングギアのうちの前記第1のギアとは異なるもう一方の第2のギアが取外し自在に装着され、装着された該第2のギアにトルクを伝達する、前記スライド台上面にクランプにより移動不能に固定され、アンクランプ時に該第2の回転軸の延びる方向にスライド自在な第2の主軸とを備えたことを特徴とするハイポイドギア測定装置。
【請求項2】
前記第2のブロックとの間に前記スライドテーブルと前記第1の主軸を挟んで前記第1ブロックに移動不能に固定され、前記スライドテーブルの前記第2ブロックからのアンクランプ時および前記第1の主軸の前記スライドテーブルからのアンクランプ時の、重力による該第1の主軸の倒れを防止する第3のブロックをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のハイポイドギア測定装置。
【請求項3】
前記第2ブロックは、該第2ブロック側面が前記スライドテーブルの前記第1の側面に面接触したまま該スライドテーブルのスライドを案内するすべり案内構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載のハイポイドギア測定装置。
【請求項4】
前記スライドテーブルは、該スライドテーブルの前記第2の側面が前記第1の主軸に面接触したまま該第1の主軸のスライドを案内するすべり案内構造を有することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1項記載のハイポイドギア測定装置。
【請求項5】
前記スライド台は、該スライド台上面が前記第2の主軸に面接触したまま該第2の主軸のスライドを案内するすべり案内構造を有することを特徴とする請求項1から4記載のうちのいずれか1項記載のハイポイドギア測定装置。
【請求項6】
前記第1の主軸にトルクを与える第1のサーボモータと、前記第2の主軸にトルクを与える第2のサーボモータとを備え、前記第1の主軸と前記第1のサーボモータとの間、および第2の主軸と前記第2のサーボモータとの間は、各ベルトを介して連結されていることを特徴とする請求項1から5記載のうちのいずれか1項記載のハイポイドギア測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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