説明

ハウジング形管継手

【課題】継手の適当な締結具合を確認可能とするとともに締結作業の負担を軽減する。
【解決手段】一対の継手セグメント1と弾性シールリング2と前記一対の継手セグメント1同士を締結する締結手段を具備し、前記継手セグメント1は、円弧部10と円弧部両端から延出するフランジ部20と円弧部内周面に形成され前記弾性シールリング2が嵌め込まれる凹溝を有し、前記締結手段により両継手セグメント1のフランジ間を接近させることにより前記円弧部10の曲率半径が小さくなるように撓み、その撓みによって円弧部10の周端縁が連結すべき管外面に一致することにより管同士の連結が完了されるように構成されたハウジング形管継手において、前記円弧部周端縁部に目印10Mを有し、この目印10Mに対応する円弧部周端縁が管外面に接した際に管同士の連結が完了するように構成されていることを特徴とするハウジング形管継手。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管端同士をシールしつつ連結するハウジング形管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のハウジング形管継手100Hを図13に示す。このハウジング形管継手は、管端部に周方向溝151,151を有する管150,150の管端を互いに同心に突き合わせ、接合部に環状の弾性シールリング102を外嵌するなどしたのち、前記弾性シールリング102を介して管端部に、一対の略半円状の継手セグメント101,101をその内周面に形成された凸条113,113が前記周方向溝151,151に収まるようにして被せ、前記継手セグメント101,101の互いに対向するフランジ部120,120に設けられたボルト挿通孔121,121にボルト103,103及びナット104,104からなる締結手段を螺着させることにより2つの管を一体的に連結する。
また、この連結にあたっては、前記締結手段103,104によって一対の継手セグメント101,101の対面するフランジ部120,120を接近させることにより、継手セグメント101,101の曲率半径が小さくなるように撓ませ、その周端縁114,114が各管外面(図示例では周方向溝151の底であるが必ずしもこの態様に限らない)152,152を押持することにより、両管の管軸のズレの変位が防止される。
そして、この連結にあたり、ハウジング形管継手100Hにおける連結の完了の確認については、前記継手セグメント101,101の周端縁114,114の全範囲が管外面152,152と一致したとき、或いは予め設定したトルクレンチを用いて指定された締付けトルクとなったときとしている。
しかし、ハウジング形管継手100Hによる管同士の連結にあたって、例えば、各管150,150の管軸のズレの動きを周端縁114,114により防止するにしても、上述の管同士がハウジング形管継手100Hによって、当該動きが十分に規制されていればよく、周端縁114,114の全範囲が管外周面152,152に一致している必要はない。
従来のハウジング形管継手100Hでは、適当な締結具合、すなわち継手セグメント101,101をどの程度撓ませ、周端縁114,114のどの程度の範囲までが管外面152,152に一致したときに連結機能が十分に発揮されるのかが理解できず、結果的に継手セグメント101,101の撓みが最大限可能となる周端縁114、114の全範囲が管外面152,152に一致するまで、対面する継手セグメント101,101のフランジ部120,120間を接近させる必要があり、極めて煩雑かつ無駄な操作を要している。
また、トルクレンチによる締付けトルクの指定は、正確な締結を達成できるものの、トルクレンチを用意する必要等の煩雑な操作を要する。
【0003】
他方、かかる従来のハウジング形管継手100Hの取り付けを行うにあたっては、一旦ボルト103,103とナット104,104を継手セグメント101,101のフランジ部120,120から取り外し、環状の弾性シールリング102を接合部に装着したのち、次いで係止片113,113が周方向溝内に収まるように目視にて確認しつつ、継手セグメント101,101を弾性シールリング102に外嵌し、再度ボルト103,103を対向するフランジ部120,120のそれぞれのボルト挿通孔121,121に挿通させナット104,104を螺合させるという極めて煩雑な操作を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−241793
【特許文献2】特開平11−241794
【特許文献3】特開2008−019976
【特許文献4】特開2008−019975
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、ボルトナット等の締結手段により円弧部の曲率半径が小さくなるように撓むことで管同士の連結を行なうハウジング形管継手において、締結作業の軽減及び確実に管同士が連結される締結終了位置の確認を可能とし、また、ハウジングを一度も分解することなく簡易に管端間の適当位置に設置することを可能にして管同士の連結作業を極めて簡易な操作なものとし、さらに、連結すべき管の周方向溝の深さに誤差があっても、両管を確実に連結固定することが可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明およびその作用効果は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
対面する管同士を連結するハウジング形管継手であって、
一対の継手セグメントと弾性シールリングと前記一対の継手セグメント同士を締結する締結手段を具備し、
前記継手セグメントは、円弧部と円弧部両端から延出するフランジ部と円弧部内周面に形成され前記弾性シールリングが嵌め込まれる凹溝を有し、
前記締結手段により両継手セグメントのフランジ間を接近させることにより前記円弧部の曲率半径が小さくなるように撓み、その撓みによって円弧部の周端縁が連結すべき管外面に一致することにより管同士の連結が完了されるように構成されたハウジング形管継手において、
円弧部周端縁部に目印を有し、この目印に対応する円弧部周端縁の部位が管外面に接した際に管同士の連結が完了するように構成され、
かつ、そのハウジング形管継手は、管端部に周方向溝を有する管同士を連結固定するものであり、
前記継手セグメントは、円弧部の内周面に前記周方向溝内に位置される凸条部を有し、かつ、前記締結手段による対面フランジ間の接近に伴って各継手セグメントがそれぞれ反対方向に回転され、
この回転により、前記目印に対応する円弧部周端縁の部位が管外面に接した際に、前記凸条部が周方向溝の遠位端側壁及び近位端側壁に押接されることを特徴とするハウジング形管継手。
【0007】
<請求項2記載の発明>
前記目印は、前記円弧部周端縁部の両円弧端部に設けられている請求項1記載のハウジング形管継手。
【0008】
<請求項3記載の発明>
前記目印は、円弧部の円弧中心から円弧部の中央に向かう垂線に対して15〜60度の位置にある請求項1又は2記載のハウジング形管継手。
【0009】
<請求項4記載の発明>
継手セグメントは、円弧部周端縁部が両フランジ部側端を基点として所定範囲切り欠かれており、その切り欠き部の終端が前記目印とされている請求項1〜3の何れか1項に記載のハウジング形管継手。
【0010】
<請求項5記載の発明>
前記弾性シールリングは内周側に延出する、連結すべき管の管端面間に位置される環状片を有し、かつ、その環状片の軸心がセグメント継手の軸心に対して非平行な状態で凹溝に予め嵌め込まれている請求項1〜4の何れか1項に記載のハウジング形管継手。
【0011】
<請求項6記載の発明>
円弧部の外周側弧端部は、L字型凸堤とこのL字型凸堤に連続して形成されたL字型欠損部とからなる段差部を有し、前記連結手段による対面フランジ間の接近およびセグメント継手の回転にともなって対面するL字型凸堤とL字型欠損部とが嵌合され、かつ、目印が管外面に実質的に接した際に完全に嵌まり合い、互いの移動を規制する印籠結合を形成する、請求項1〜5の何れか1項に記載のハウジング形管継手。
【0012】
(作用効果)
従来のハウジング形管継手では、適当な締結具合、すなわち円弧部の撓み量が理解できないため、結果的に円弧部の撓みが最大限可能な円弧部の周端縁全長が管外面に一致するまで、対面するセグメントのフランジ間を接近させる必要があり、極めて煩雑かつ無駄な操作を要するものであったが、本発明のハウジング形管継手は、目印を有することから、連結に十分な周端縁の当接範囲が予め理解でき、必要以上の過度の円弧部の撓みが必要なくなり、適当な締結作業を行なうことができるようになる。もって締結作業の負担が軽減される。また、各端側に目印を位置させれば左右ズレを防止することが可能となる。
なお、この目印に対応するとは、目印自体が完全に管外面に接することだけではなく、例えば、目印が矢印等でありその矢印等が指し示す位置が、管外面に接することを含むことを意味するものである。
【0013】
また、目印の位置が円弧部の中央に向かう垂線に対して15〜60度の位置にある場合、円弧部周端縁は管外面に対して、その周端縁の円弧部の円弧中心から円弧部の中央に向かう垂線に対して30〜120度の範囲で接することができる。そして、この範囲が接すれば連結固定に十分であり、また、締結作業負担の軽減も十分なものとなる。
円弧部周端縁部が両フランジ部側端を基点として所定範囲切り欠かれ、その切り欠き部の終端が前記目印とされている場合、フランジ間を接近させるための力が低減され、また、接する円弧部周端縁の量及び位置が目視にて確認しやすいものとなり締結作業の負担軽減が確実なものとなる。
【0014】
本発明のハウジング形管継手は、ハウジング内に保持される弾性シールリングが環状片を有する。この環状片は弾性シールリングの内周側に延出するものであれば、環状片の両サイド(弾性シールリングの両端縁側)から管端面を当接させることができ、目視の確認がなくともハウジング形管継手を所望の位置に弾性シールリングを確実に位置せしめることができる。
【0015】
また、かかる弾性シールリングが継手セグメントの凹溝内に予め支持された状態であるから、環状片の両サイド(弾性シールリングの両端縁側)に管端面を当接させると、継手セグメントが管端部間に位置せしめられるので、極めて簡易に締め付け準備を完了することができる。
【0016】
さらに、本発明のハウジング形管継手は、環状片の軸心が継手セグメントの軸心に対して非平行な状態、つまり前記環状片の軸心が継手セグメントの軸心に対して傾斜されて保持されているから、環状片の両サイドに管端面を当接させただけで継手セグメントが所定の回転前の状態となり設置準備が完了する。
【0017】
ここで、本発明のハウジング形管継手では、弾性シールリングが凹溝内に支持されており、継手セグメントを回転させる場合、その回転にともなって弾性シールリングが凹溝壁により押圧されることになるが、弾性シールリングの変形性により、継手セグメントの回転が規制されることはないし、継手セグメントの回転による弾性シールリングのねじれも生じない。
【0018】
さらに、弾性シールリングが、環状片と両端開口縁との間に溝部を有し、当該溝部へ流通される流体の圧によって前記溝幅が拡張されるリップシール機構を有するものとすれば、弾性シールリングが管に対して常に加圧をもって接触されていなくとも、必要時に環状片と両端開口縁との間に溝部の幅が拡張されてシール機能が発揮されるため、弾性シールリングの経時的な劣化が小さく耐久性の高いハウジング形管継手となる。
【0019】
本発明のハウジング形管継手は、L字型凸堤とこのL字型凸堤に連続して形成されたL字型欠損部とが完全に嵌まり合い、互いの移動を規制する印籠結合を形成するので、継手セグメントが過回転することがなく、ハウジング形管継手が所望の位置で確実にセットできるほか、過回転にともなう弾性シールリングのねじれ、凸条部の破損、管の破損が防止される。
【0020】
さらに、本発明のハウジング形管継手においては、前記目印に対応する円弧部周端縁の部位が管外面に接した際に、前記凸条部が周方向溝の遠位端側壁及び近位端側壁に押接されるので、ハウジング形管継手の締結後には、連結すべき管が近づく方向或いは遠ざかる方向に移動することが規制された状態で確実に固定される。
【発明の効果】
【0021】
発明の具体的な作用効果は上記のとおりであるが、本発明のハウジング形管継手は共通して、ボルトナット等の締結手段により円弧部の曲率半径が小さくなるように撓むことで管同士の連結を行なうハウジング形管継手における締結作業の軽減及び確実な締結完了位置の確認が可能となり、さらに、ハウジングを一度も分解することなく簡易に管端間の適当位置に設置することを可能にして管同士の連結作業を極めて簡易な操作なものとするとともに、連結すべき管の周方向溝の深さに誤差があっても、凸条部が周方向溝の遠位端側壁及び近位端側壁の押圧による固定により両管を確実に連結固定することが可能な、ハウジング形管継手が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のハウジング形管継手の分解正面図である。
【図2】本発明のハウジング形管継手の締め付け後の正面図である。
【図3】本発明の継手セグメントの締結前後の態様を示す正面模式図である。
【図4】本発明の他の形態の継手セグメントの正面模式図である。
【図5】本発明の別の形態の継手セグメントの正面模式図である。
【図6】本発明の継手セグメントの内面図である。
【図7】本発明の継手セグメントの一部断面図である。
【図8】本発明にかかる弾性シールリングの一部断面図である。
【図9】本発明のハウジング形管継手の締結前の平面図である。
【図10】本発明のハウジング形管継手の締結後の凸条部と周方向溝の位置関係を示す平面図である。
【図11】本発明のハウジング形管継手の締結後の平面図である。
【図12】本発明のハウジング形管継手の側面図である。
【図13】従来のハウジング形管継手の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次いで、本発明の実施の形態を図1〜12を参照しながら、周方向溝51,51を有する管50,50同士を連結する形態を以下に詳述する。
<構造>
本形態のハウジング形管継手Hは、一対の継手セグメント1,1と、環状の弾性シールリング2と、継手セグメント1,1同士を締結する締結手段であるボルト3及びナット4とを具備する。ここで、一対の各継手セグメント1,1の形状は同様である。従って、形状の説明にあたっては一方の継手セグメント1を例に説明する。
【0024】
前記継手セグメント1は、対面する管50,50の端部が収容される略円弧形状の円弧部10と、この円弧部10の両端からそれぞれ外方に延出するフランジ部20,20とを有し、このフランジ部20,20には前記ボルトを挿通すためのボルト挿通孔21,21が形成されている。ボルト挿通孔21は、継手セグメント1の円弧部軸心方向が長軸となる楕円型の長穴に形成され、短軸方向も挿通されたボルトの螺子部に対して適当な余裕を有する幅に形成されており、もって前記ボルト3は当該ボルト挿通孔21に対して遊挿可能とされている。
【0025】
前記円弧部10は全体として、予め対象となる連結すべき管50の管径よりも若干大きい曲率半径で形成され、連結すべき管50の管端を簡易かつ確実に円弧部10内に位置せしめることできるように構成される。この円弧部10は、前記フランジ部20を介したボルト3に対するナット4の締め付けにより撓んでその曲率半径が若干小さくなり、かかる撓みによって、円弧部周端縁10Eが円弧部内に位置せしめられている管の外面へ当接される部位が増加されるように構成されている。ここで、本発明における円弧部周縁の外面への当接は、ハウジング形継手の管への移動の規制、確実な締結をその本質的な機能の一つとしているため、円弧部の内周面は、その円弧部周縁から凹溝に至るまで(凸条部を有する場合はその凸条部まで)滑らかな円弧面とされているのが望ましい。
【0026】
なお、本形態の継手セグメント1,1は、図1に示す正面視から明らかになるとおり、特に前記フランジ20,20が円弧部10,10端に対して若干鋭角をもって一体的に形成されており、円弧部10,10の曲率半径が小さくなるように撓ませる力が加わりやすいように構成されている。
【0027】
ここで、本発明の継手セグメント1においては、特徴的にその円弧部周端縁部10eの両円弧端部に目印10Mが形成されており、その目印10Mに対応する円弧部周端縁10Eが管50の外面に接した際に管同士の連結が完了するように構成されている。ここで、円弧部周端縁部10eとは、円弧部周端縁10Eの近傍であり、少なくともハウジング形継手の正面視において視認できる部位である。
【0028】
この目印10Mは、図示の好ましい形態においては、継手セグメント1の円弧部周端縁部10eの両フランジ部側端を基点11aとして所定範囲切り欠かれ、その切り欠き部11の終端11bが前記目印10Mとされている。このように切り欠きの終端11bを目印とすると、切り欠き部11の存在によってフランジ部間を接近させるための力が低減されるとともに、接する円弧部周端縁10Eの量(長さ)及び位置が目視にて極めて確認しやすいものとなり締結作業の負担軽減が確実なものとなる。また、切り欠き部11に基づく目印10Mは、塗装等による目印と比較して、塗装剥離等のおそれがなく耐久性の観点からも望ましい。さらに、切り欠き部11に基づく目印10Mとすることで、手などによる触確によっても確認できる点でも望ましい。
【0029】
もっとも、この目印10Mは、その位置を確認することができれば十分であり、この切り欠きの形態に限らず、例えば、図4及び5に示すように三角印や丸点等、或いは図示はしないが周縁部全週或いは一部に目盛りや文字を設けるなどの態様であってもよい。もちろん、この場合においてもその具体的な構成については、塗装(印刷)、突起など目視或いは触角により確認できるものとすることができる、
【0030】
この目印10Mのより具体的な好ましい位置は、円弧部10の円弧中心10cから円弧部の中央に向かう垂線L1に対して15〜60度の範囲(この範囲を図3中αで示す)の位置である。この位置であると、締結完了時に少なくとも円弧部端縁10Eの30〜120度の範囲(この範囲を図中βで示す)が接続すべき管50の外面に一致して当接することになり、通常、この範囲β程度一致していればは、締結完了後に管50と継手セグメント1がずれることはない。また、60度以上の位置としても、すなわち、円弧部周端縁10Eの120度以上の範囲で接続すべき管50の外面に一致してもその管50と継手セグメント1のずれ防止効果の高まりは小さく、それにもかかわらず締結のための力が過度に高まり、不必要な作業量力を要することとなる。
【0031】
他方、本形態のハウジング形管継手Hは、上記特徴的な目印10Mを有しつつ、以下の好ましい構成を採る。
まず、前記円弧部10は、その内周面には、特に図6、7に示されるように、弾性シールリング2を収容するための凹溝13が一方円弧端から他方円弧端に向かって延在するように形成されており、その凹溝13の幅は弾性シールリング2の幅とほぼ同等かそれより若干広く、また弾性シールリング2が嵌まる深さに形成されている。
【0032】
そして、その凹溝13の対面する各側壁には、点対称にフランジ部側が凹溝内側に向かって膨出する一対の膨出部13Aが形成されている。なお、前記点対称の基準点は、基本的には円弧部10の幅方向及び軸心方向の中点であるが設計上の誤差及び凹溝の構造、他の構成により適宜の基準点を設定することができる。この膨出部13Aの存在により、弾性シールリング2はその軸心が、継手セグメント1の円弧部10の軸心と所定角度を有して、前記凹溝13内に嵌め込まれることになる。ここで前記膨出部13Aは、一般的な継手セグメント1が鋳物として製造さていることを考慮すれば、凹溝13部分の鋳型から抜きを良好にすべく、好ましくは凹溝側壁の非膨出部分13Bから連続壁的に、さらに好ましくは滑らかな連続面で形成される。また、このように連続壁的に、或いは滑らかな連続面で形成することで、凹溝13内に弾性シールリング2を納めたときに、当該凹溝11の側壁に沿って弾性変形し、凹溝壁全体で弾性シールリング2を支持する態様となる。従って、弾性シールリング2が部分的に支持されて不安定な凹溝内へ収納となったり、部分的な支持によって局所的にストレスが加わるようなことがなくなる。従って、かかる膨出部13Aの形態は、弾性シールリングの耐久性の点からも好ましい。
【0033】
他方、前記凹溝13の両側それぞれに円弧部10の半径方向に向かって起立された凸条部14,14を有する。これら凸条部14,14は、前記円弧部10の円弧に沿って形成され、円弧部10内に接続すべき管50,50の管端を収容したときに各管の周方向溝51,51内にそれぞれ位置される。凸条部14,14同士の離間距離は周方向溝51と管端との離間距離を考慮して任意に選択される。なお、この凸条部14,14は、周方向溝を有さない管同士を接続する継手セグメントとする場合には不要な構成である。
【0034】
さらに、前記凹溝13内に収容される弾性シールリング2は、特に図8に示されるように、自身の両端面間の略中央に内周側に延出された環状片2Aを有する。この環状片2Aは前記凹溝13内に収容された状態において円弧部10の内周面より軸心側に突出される長さを有し、管50の連結時には当該管の管端面間に位置される。また、前記弾性シールリング2は、環状片2Aと両端開口縁との間に溝部2Bを有し、いわゆるリップシール機能を奏する。特に、本形態の弾性シールリング2では、溝部2Bの両端側縁が環状片方向に若干戻るようにして形成された舌片部2Cを有し、前記溝部2Bへ流通される流体の圧によって前記溝幅が拡張されたときに、記舌片部2Cが管外面に圧接されるように構成されており、より好適なシール効果が奏される。ここで弾性シールリング2は、上述のとおり前記各膨出部13,13により、少なくともその環状片2Aの軸心と円弧部10の軸心とが非平行のずれた状態に保持される。
【0035】
さらに、円弧部端の軸方向一方端からL字型に配されたL字型凸堤15とこのL字型凸堤15から円弧部10の軸方向他方端に連続的に形成されたL字型欠損部16を有する。このL字型欠損部16は前記L字型凸堤15の形状とほぼ同形状に欠損されており、一方の継手セグメント1に形成されたL字型凸堤15と他方の継手セグメントに形成されたL字型欠損部16とを嵌合させることで印籠結合を形成するように構成されている。
【0036】
そして、以上の本形態のこの好ましい形態のハウジング形管継手Hは、対面する一対の継手セグメント1,1間のボルト挿通孔21,21にボルト3,3を架橋させた状態で当該ボルト3,3に対してナット4,4を取り付けただけの仮結合状態においては、前記ボルト挿通孔21,21がボルト3の螺子部に対して余裕があり、また、一対の継手セグメント1,1同士は、図9に示されるように、ねじれの関係を維持しつつ相対的に回転可能な状態となっている。
【0037】
したがって、この本形態のハウジン形管継手Hでは、上述の膨出部13,13による弾性シールリング2の凹溝内への保持態様によって、円弧部10内周面より突出している環状片2Aに対して連結すべき管50,50の管端面を当接させたときに、各継手セグメント1,1は、図9に示すように、各継手セグメント1,1が管軸L2に対してずれた状態となる。
【0038】
そして、本発明のハウジング形管継手Hは、上記好ましい構成のもと、前述前記ボルト3に対するナット4の締め付けによる円弧部10の曲率半径の小径化とともに、図9の矢印で示すように各継手セグメント1,1が反対方向に回転され、前記目印10Mが管外面に実質的に接した際に、図10に示すように、前記凸条部14が管の周方向溝51の遠位端側壁51A及び近位端側壁51Bに押接され回転完了位置、すなわち締結完了位置となるように構成されている。
【0039】
これにより、上述のとおり、例えば管径の誤差や周方向溝の深さの誤差の有無にかかわらず前記凸条部14によって管同士が確実に連結固定され、また、当該締結完了位置において、管同士が接近及び離間しようとする移動が規制された状態で両管端がシールされつつ連結される。
【0040】
なお、具体的な継手セグメント1の回転量と目印10Mとの位置の関係は、接続すべき管の管径、凸条部14の形状、回転機構等に応じて適宜設計する。また、図11に示す例では、好ましい例として円弧部10の軸心と管軸L2とが平行或いは同軸となる位置において、目印10Mが管50の外面に一致して締結が完了する態様としているがこの限りではない。
【0041】
ここで、本形態のハウジング形管継手Hにおける継手セグメント1の回転機構を例示すると、特開2008−019976(特許文献3)、特開2008−019975(特許文献4)に開示される回転機構を採用することができる。より具体的には、(1)ボルト3にナット4を締付けることにより、各ボルト軸同士が平行をなすように各ボルト3がボルト挿通孔21にガイドされて移動されるとともに、当該ボルト3及びナット4がボルト挿通孔21の縁部あるいはその近傍を押圧して、継手セグメント1,1に回転力を与る機構、(2)対面するフランジ部20に回転を促すガイド凸部を設けボルト3に対するナット4の締め付けによるフランジ間の接近に従って当該ガイド凸部が機能して回転するようにした構成、(3)前記L字型凸部とL字型欠損部をこれらが嵌合するに従って継手セグメントが回転されるようにガイド機能を有するようにした構成が例示できる。もちろん、その他の既知の回転機構を採用することができるし、回転機構を複数併用することもできる。
【0042】
<使用方法>
次いで、本形態のハウジング形管継手Hの使用方法を説明する。
上記本形態のハウジング形管継手Hは、その構造からして、凹溝13内に弾性シールリング2を保持しつつ一対の継手セグメント1,1同士をボルト3,3及びナット4,4で仮結合した状態とすることができる。この仮結合状態は、ボルト3,3及びナット4,4により一対の継手セグメント1,1同士が連結されているものの対面するフランジ部20,20間が遠近可能な状態である。
【0043】
管50,50同士を連結するにあたっては、まず、連結すべき管50,50の管端を、仮結合状態された両継手セグメント1,1によって保持されている弾性シールリング2の環状片2Aにその管端面を当接させるとともに、凸条部14を管端部に形成された周方向溝51内に位置されるようにして、ハウジング形管継手Hを仮設置する。なお、管端面が環状片2Aに当接されたことは、そのときの感触や音など視覚以外の感覚をもって容易にその事が察知できる。
【0044】
管端にハウジング形管継手Hを仮設置したならば、次いで、前記ボルト3,3に対してナット4,4を締付けていき、両継手セグメント1,1のフランジ20,20間を接近させる。このとき、図3からも理解されるように、まず継手セグメント1,1同士の接近にともなって円弧部10,10の円弧中央部10s或いはその近傍を含む部分が管50の外面に当接し、その後に継手セグメント1,1の前記円弧部中央部10s等の部位からフランジ部20側に向かって、その円弧部周端縁10Eが管50の外面に近くなるようにして撓み、当該円弧部10,10の曲率半径が小さくなる。
【0045】
そして、そのナット4,4の締付けにともなうフランジ部20,20間の接近にともなって、各継手セグメント1,1が反対方向に回転され、それによりL字型凸堤15,15と対面するL字型欠損部16,16とが嵌合し始める。
【0046】
そして、図12にも示されるように、継手セグメント1,1に形成した前記目印10Mに対応する部位が管50の外面に接したときに、対面するL字型凸堤15とL字型欠損部16とが完全に嵌合されて印籠結合を形成し、対面する継手セグメント1,1同士の回転が規制されるとともに、図10に示されるように、前記凸条部14が周方向溝51の遠位端側壁51A及び近位端側壁51Bに押接され締結が完了される。
【0047】
このように、本形態のハウジング形管継手Hはハウジングを一度も分解することなく簡易に管端間の適当位置に仮設置でき、しかも、締結作業の軽減及び確実な管同士が連結される目印10Mの管50の外面への一致をもって締結終了位置の確認が可能とされ、さらに、連結すべき管の周方向溝の深さに誤差があっても、両管を確実に連結固定することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、水道管、ガス管、プラント用配管等の各種流体管を密封状態に保持しつつ連結する分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…継手セグメント、2…弾性シールリング、2A…環状片、2B…溝部、2C…舌片部、3…ボルト、4…ナット、10…円弧部、10E…円弧部端縁、10e…円弧部端縁部、10M…目印、10c…円弧中心、10s…円弧中央部、L1…円弧中心から円弧部の中央(円弧部中央)に向かう垂線、11…切り欠き部、11a…切り欠きの基点、11b…切り欠きの基点、13…凹溝、13A…膨出部、13B…非膨出部分、14…凸条部、15…L字型凸部、16…L字型欠損部、20…フランジ部、21…ボルト挿通孔、50…管、51…周方向溝、51A…周方向溝遠位側壁、51B…周方向溝近位側壁、L2…管軸、H…ハウジング形管継手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面する管同士を連結するハウジング形管継手であって、
一対の継手セグメントと弾性シールリングと前記一対の継手セグメント同士を締結する締結手段を具備し、
前記継手セグメントは、円弧部と円弧部両端から延出するフランジ部と円弧部内周面に形成され前記弾性シールリングが嵌め込まれる凹溝を有し、
前記締結手段により両継手セグメントのフランジ間を接近させることにより前記円弧部の曲率半径が小さくなるように撓み、その撓みによって円弧部の周端縁が連結すべき管外面に一致することにより管同士の連結が完了されるように構成されたハウジング形管継手において、
円弧部周端縁部に目印を有し、この目印に対応する円弧部周端縁の部位が管外面に接した際に管同士の連結が完了するように構成され、
かつ、そのハウジング形管継手は、管端部に周方向溝を有する管同士を連結固定するものであり、
前記継手セグメントは、円弧部の内周面に前記周方向溝内に位置される凸条部を有し、かつ、前記締結手段による対面フランジ間の接近に伴って各継手セグメントがそれぞれ反対方向に回転され、
この回転により、前記目印に対応する円弧部周端縁の部位が管外面に接した際に、前記凸条部が周方向溝の遠位端側壁及び近位端側壁に押接されることを特徴とするハウジング形管継手。
【請求項2】
前記目印は、前記円弧部周端縁部の両円弧端部に設けられている請求項1記載のハウジング形管継手。
【請求項3】
前記目印は、円弧部の円弧中心から円弧部の中央に向かう垂線に対して15〜60度の位置にある請求項1又は2記載のハウジング形管継手。
【請求項4】
継手セグメントは、円弧部周端縁部が両フランジ部側端を基点として所定範囲切り欠かれており、その切り欠き部の終端が前記目印とされている請求項1〜3の何れか1項に記載のハウジング形管継手。
【請求項5】
前記弾性シールリングは内周側に延出する、連結すべき管の管端面間に位置される環状片を有し、かつ、その環状片の軸心がセグメント継手の軸心に対して非平行な状態で凹溝に予め嵌め込まれている請求項1〜4の何れか1項に記載のハウジング形管継手。
【請求項6】
円弧部の外周側弧端部は、L字型凸堤とこのL字型凸堤に連続して形成されたL字型欠損部とからなる段差部を有し、前記連結手段による対面フランジ間の接近およびセグメント継手の回転にともなって対面するL字型凸堤とL字型欠損部とが嵌合され、かつ、目印が管外面に実質的に接した際に完全に嵌まり合い、互いの移動を規制する印籠結合を形成する、請求項1〜5の何れか1項に記載のハウジング形管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−237011(P2011−237011A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110830(P2010−110830)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【特許番号】特許第4637269号(P4637269)
【特許公報発行日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000230526)日本ヴィクトリック株式会社 (39)
【Fターム(参考)】