説明

ハウスダストアレルギーの原因となるダニ・カビ類の検出・識別用マイクロアレイ

【課題】専門的な知識を必要とせず、簡便な操作で、短時間で正確にアレルゲンを一括して同定可能なシステムを提供する
【解決手段】本発明は、検査対象から採取したダニ類及びカビ類由来のゲノムDNA又はRNAを鋳型とし、ダニ遺伝子特異的プライマーセット及びカビ遺伝子特異的プライマーセットを用いて増幅された検出対象領域に対してハイブリダイズ可能である核酸プローブが担体に固定化されてなるダニ類又はカビ類の検出又は識別用マイクロアレイに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウスダストアレルギーの原因となるダニ・カビ類を同時に検出・識別できるマイクロアレイ及び該マイクロアレイを用いた検出・識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハウスダストアレルギーは通年性アレルギーであり、主にダニ・カビ類がアレルゲンとなる。ハウスダストアレルギーを持つ患者は年々増加しており、ダニ・カビの評価と有効な対策のニーズが高まっている。通常、ダニ・カビの検出・同定は、専門家による顕微鏡鑑定で行われるため、非常に多くの時間と労力が必要となる。近年、ダニ類が持つアレルゲンとされるタンパク質に対する特異的な抗体を用いて免疫学的にアレルゲンを検出する技法が試みられているが、本手法ではダニ類の種の識別が困難であるといった問題がある。その上、本手法では、カビ類を検出することができず、マイクロアレイを包括的に評価することができないといった問題もある。
【0003】
また、現在、アレルゲンとなるダニ・カビを検査するためには、一度カビ類を培養し、顕微鏡観察により同定を行う必要があるため、一定の期間と、分類に関する高度な知識が必要となる。このため、多くの検査サービスではカビ類については属レベルの調査に留まっている。これらのサービスは時間と手間と専門知識を要するため、コストが高価になり、容易に検査を依頼できるものではない。
【0004】
現状でも簡便・短時間でアレルゲンを識別するシステムは存在するが、対象がダニ1〜2種のみであり、カビについては検出ができない(例えば、商品名『マイティーチェッカー』シントーファイン社製)。現状におけるハウスダスト中のダニ・カビの検査はユーザーが手軽に利用でき、満足の行く結果を受け取ることができると言える状態ではない。
【0005】
【特許文献1】特開平6-16695号公報
【特許文献2】特開2000-171464号公報
【特許文献3】特開2000-146964号公報
【特許文献4】特開2000-88848号公報
【特許文献5】特開平11-248705号公報
【特許文献6】特開2003-66045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は上述したような実状に鑑み、専門的な知識を必要とせず、簡便な操作で、短時間で正確にアレルゲンを同定可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成した本発明は、以下を包含する。
(1)検査対象から採取したダニ類又はカビ類由来のゲノムDNA又はRNAを鋳型として増幅された検出対象領域に対してハイブリダイズ可能である核酸プローブが担体に固定化されてなるダニ類又はカビ類の検出又は識別用マイクロアレイ。
(2)核酸プローブが、前記ダニ類としてDermatophagoides farinae(コナヒョウヒダニ)、Dermatophagoides pteronyssinus(ヤケヒョウヒダニ)又はTyrophagus pterescentiae(ケナガコナダニ)に由来し、前記カビ類としてAlternaria alternata、Aspergills restrictus、Aspergills versicolor、Candida albicans、Cladosporium sphaerosporum、Eurotium herboriorum、Aspergillus nigar、Penicillium chrysogenum、Fusarium sp.又はWallemia sebiに由来するゲノムDNA又はRNAを鋳型として増幅された検出対象領域に対してハイブリダイズ可能である、(1)記載のマイクロアレイ。
【0008】
(3)検出対象領域が、ダニ遺伝子特異的プライマーセット又はカビ遺伝子特異的プライマーセットを用いて増幅されるものである、(1)又は(2)記載のマイクロアレイ。
(4)ダニ遺伝子特異的プライマーセット又はカビ遺伝子特異的プライマーセットが連続した15〜30塩基の配列を有する、(1)〜(3)のいずれかに記載のマイクロアレイ。
【0009】
(5)前記ダニ遺伝子特異的プライマーセットが以下の(a)、(b)又は(c):
(a)配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーとのセット
(b)配列番号56に示す塩基配列において1〜5個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるプライマーと配列番号57塩基配列において1〜5個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるからなるプライマーとからなり、前記(a)のプライマーセットと同一の領域を増幅できるプライマーのセット
(c)配列番号56に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーとからなり、前記(a)のプライマーセットと同一の領域を増幅できるプライマーのセット
である、(3)記載のマイクロアレイ。
【0010】
(6)前記カビ遺伝子特異的プライマーセットが以下の(a)、(b)又は(c):
(a)配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーとのセット
(b)配列番号58に示す塩基配列において1〜5個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるプライマーと配列番号59塩基配列において1〜5個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるからなるプライマーとからなり、前記(a)のプライマーセットと同一の領域を増幅できるプライマーのセット
(c)配列番号58に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーとからなり、前記(a)のプライマーセットと同一の領域を増幅できるプライマーのセット
である、(3)記載のマイクロアレイ。
【0011】
(7)核酸プローブが、配列番号1、5、9、13、17及び21からなる群より選ばれる少なくとも1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含む、(1)又は(2)記載のマイクロアレイ。
(8)核酸プローブが、配列番号24、28、32、36、40、44、48〜53及び114〜121からなる群より選ばれる少なくとも1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含む、(1)又は(2)記載のマイクロアレイ。
【0012】
(9)少なくとも1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部が、連続した10〜30塩基の配列である(7)又は(8)記載のマイクロアレイ。
(10)前記担体が、表面にカーボン層と化学修飾基とを有するものである(1)〜(9)のいずれかに記載のマイクロアレイ。
(11)カーボン層がダイヤモンドライクカーボン層であり、化学修飾基が活性エステル基である、(10)記載のマイクロアレイ。
【0013】
(12)検査対象から塵芥を採取する工程と、
採取した塵芥からダニ類及びカビ類を分離し、分離されたダニ類及びカビ類からゲノムDNA又はRNAを抽出する工程と、
抽出したゲノムDNA又はRNAを鋳型とし、検出対象領域を増幅する工程と、
(1)〜(11)いずれかに記載のマイクロアレイを用いて検出対象領域を検出する工程と
を含む、ダニ類又はカビ類の検出又は識別方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、専門的な知識を必要とせず、簡便な操作で、短時間で正確にアレルゲンを同定可能なシステムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係るダニ・カビ類の検出・識別システムは、ハウスダストアレルギーの原因となるダニ類及びカビ類を検出又は識別できるシステムである。本システムにおいて検出又は識別対象のダニ類としては、Dermatophagoides farinae(コナヒョウヒダニ)、Dermatophagoides pteronyssinus(ヤケヒョウヒダニ)、Tyrophagus pterescentiae(ケナガコナダニ)、Hirstia domicola(イエチリダニ)、Malayoglyphus intermedius(ニセチリダニ)、Euroglyphus maynei(シワダニ)、Acarus siro(アシブトコナダニ)、Acarus immobilis(オソアシブトコナダニ)、Aleuroglyphus ovatus(ムギコナダニ)、Lardoglyphus konoi(コウノホシカダニ)、Suidasia nesbitti(チビコナダニ)、Calvolia domicola(ゴミウスケダニ)、Carpoglyphus lactis(サトウダニ)、Chortoglyphus domicola(イエマルニクダニ)、Glycyphagus destructor(サヤアシニクダニ)、Glycyphagus domesticus( イエニクダニ)、Glycyphagus privates(チリニクダニ)、Gohieria fusca(キナコダニ)、Sarcoptes scabiei (ヒゼンダニ)、Notoedres cati(ネコショウヒゼンダニ)、Dermanyssus hirundinis(スズメサシダニ)、Ornithonyssus sylviarum(トリサシダニ)、Ornithonyssus bacoti(イエダニ)、Cheyletus eruditus(ホソツメダニ)、Cheyletus malaccensis(フトツメダニ)、Chelacaropsis moorei(ミナミツメダニ)、Cheyletus malaccensis(クワガタツメダニ)、Chelatomorpha lepidopterorum(アシナガツメダニ)、Demodex folliculorum(ニキビダニ)、Pyemotes tritici(ムギシラミダニ)、Tarsonemus granaries(ナミホコリダニ)、Haplochthonius simplex(イエササラダニ)、Cosmochthonius reticulates(カザリヒワダニ)等を挙げることができる。本システムにおいて検出又は識別対象のカビ類としては、Alternaria alternata、Aspergills restrictus、Aspergills versicolor、Candida albicans、Cladosporium sphaerosporum、Eurotium herboriorum、Wallemia sebi、Botrytis cinerea、Mucor racemosus、Rhizopus stolonifer、Stachybotrys chartarum、Trichoderma viride Fusarium solani、Aspergillus fumigatus、Aspergillus niger、Aureobasidium pullulans、Cladosporium cladosporioides、Cladosporium herbarum、Epicoccum nigrum、Paecilomyces variotii、Penicillium chrysogenum、Penicillium citrinum、Ulocladium chartarum、Penicillium brevi-compactum、Penicillium aurantiogriseum、Aspergillus amstelodami(Eurotium amstelodami)、Aspergillus chevalieri(Eurotium chevalieri)、Acremonium strictum、Phoma glomerata、Scopulariopsis brevicaulis、Chaetomium globosum等を挙げることができる。
【0016】
本システムでは、先ず、検査対象の室内から塵芥を採取する。採取した塵芥には、検出又は識別対象のダニ虫体、カビ菌糸及び胞子が含まれることとなる。塵芥を採取する手段としては、特に限定されないが、一般的な家庭用掃除機に対して容易に脱着可能なフィルターを使用することができる。フィルターとしては、家庭用掃除機の吸引能力を妨げることなく、効率的にダニ虫体、カビ菌糸及び胞子を捕捉することが可能であることが望ましい。フィルターとしては、例えば、合成樹脂材料からなる不織布を使用することができる。なお、検査対象としては、室内全般、エアコン内部、家具、寝具等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0017】
本システムでは、次に、検査対象から採取したダニ虫体、カビ菌糸及び胞子から核酸(DNA及びRNAを含む)、好ましくはDNAを抽出する。核酸抽出の手段としては、特に限定されないが、前記塵芥から直接的に核酸成分を分離し、精製して回収できる手段であることが好ましい。核酸抽出手段としては、例えば、塵芥からダニ虫体、カビ菌糸及び胞子を分離するための装置、分離されたダニ虫体、カビ菌糸及び胞子から核酸成分を抽出する抽出用溶液、核酸成分を精製するための溶液及び精製用のカラム、精製後の核酸成分を保存するための緩衝液等を挙げることができる。
【0018】
特に、ダニ虫体、カビ菌糸及び胞子から核酸を分離する際には、先ず始めに、例えば、ホモジナイズ装置を使用して破砕してもよいし、乳鉢・乳棒を使用して破砕してもよい。次に、ダニ虫体、カビ菌糸及び胞子を破砕した後、蛋白質分解酵素で処理する。また、蛋白質分解酵素で処理した後もしくは蛋白質分解酵素処理を省いて、界面活性剤(例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等)で処理してもよい。
【0019】
本システムでは、次に、抽出した核酸を用いて核酸増幅反応を行い、採取したダニ及びカビに由来する検出対象領域を増幅させる。核酸増幅反応としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)等を適用することができる。また、検出対象領域とは、検出対象のダニ又はカビを種レベルで同定することができる程度に特異性を有する領域であり、好ましくはDNA領域である。より好ましくは、検出対象領域としては、Internal Transcribed Spacer 領域(以下、ITS領域)や非翻訳領域を挙げることができる。より好ましくは、検出対象領域としては、ITS1領域及びITS2領域を含む領域、又はその転写領域(転写配列)である。本明細書において、ITS領域、例えばITS1領域及びITS2領域とは、それぞれ、ITS1領域又はITS2領域の全体をさす場合及び一部をさす場合の双方を包含する。また、本発明においてITS領域を増幅することには、ITS領域の転写領域を増幅することも包含される。
【0020】
また、検出対象領域を増幅させる際には、増幅後の領域を識別できるように標識を付加することが望ましい。このとき、増幅された核酸を標識する方法としては、特に限定されないが、例えば核酸増幅反応に使用するプライマーをあらかじめ標識しておく方法を使用してもよいし、核酸増幅反応に修飾ヌクレオチドを基質として使用する方法を使用してもよい。標識物質としては、特に限定されないが、放射性同位元素や蛍光色素、あるいはジゴキシゲニン(DIG)やビオチンなどの有機化合物などを使用することができる。
【0021】
特に、検出対象領域を増幅させる際には、検出又は識別対象としているダニ類及びカビ類由来の検出対象領域を1つの反応系で増幅させることが好ましい。すなわち、検出又は識別対象としているダニ類及びカビ類がそれぞれ複数種に亘っていたとしても、複数種のダニ類及び複数種のカビ類由来の検出対象領域を1つの反応容器内で同時に増幅することが望ましい。このような反応系は、核酸増幅反応としてPCRを適用する場合には「1-tube PCR」と呼ばれる。
【0022】
またこの反応系は、核酸増幅・標識に必要な緩衝剤、耐熱性DNAポリメラーゼ、検出対象領域特異的プライマー、修飾型ヌクレオチド三燐酸(具体的にはDIGラベル等を付加したヌクレオチド三燐酸)、ヌクレオチド三燐酸及び塩化マグネシウム等を含む反応系キットとして提供することができる。
【0023】
特に、ダニ類由来の検出対象領域を増幅する際には、プライマーとしユニバーサルプライマーを使用することもできるが、複数のダニ類の全てに共通して使用できる一対のプライマー(ダニ遺伝子特異的プライマー)を使用することが好ましい。ダニ遺伝子特異的プライマーとしては、具体的には、配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーのセットを挙げることができる。これらダニ遺伝子特異的プライマーによれば、少なくとも、Dermatophagoides farinae、Dermatophagoides pteronyssinus及びTyrophagus pterescentiae由来のITS領域を検出対象領域として増幅することができる。
【0024】
また、ダニ遺伝子特異的プライマーとしては、配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーのセットに限定されず、前記ITS領域を増幅することができるならばこれら塩基配列において1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるプライマーのセットであってもよい。さらに、ダニ遺伝子特異的プライマーとしては、前記ITS領域を増幅することができるならば、配列番号56に示す塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマー、及び配列番号57に示す塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーのセットであってもよい。ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、High stringency buf.(0.5xSSC, 0.1% SDS)、65℃、15分間程度の洗い条件を指す。
【0025】
また、カビ類由来の検出対象領域を増幅する際には、同様に、ユニバーサルプライマーを使用することもできるが、複数のカビ類の全てに共通して使用できる一対のプライマー(カビ遺伝子特異的プライマー)を使用することが好ましい。カビ遺伝子特異的プライマーとしては、具体的には、配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーのセットを挙げることができる。これらダニ遺伝子特異的プライマーによれば、少なくとも、Alternaria alternata、Aspergills restrictus、Aspergills versicolor、Candida albicans、Cladosporium sphaerosporum及びEurotium herboriorum由来のITS領域を検出対象領域として増幅することができる。
【0026】
なお、本明細書においては、「ダニ遺伝子特異的プライマー」が、複数のダニ類の全てに共通して使用できる一対のプライマーを指し、「カビ遺伝子特異的プライマー」が、複数のカビ類の全てに共通して使用できる一対のプライマーを指すのに対し、「ユニバーサルプライマー」は、ダニやカビに限らず生物全般に共通して使用できるプライマーをさす。
【0027】
また、カビ遺伝子特異的プライマーとしては、配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーのセットに限定されず、前記ITS領域を増幅することができるならばこれら塩基配列において1〜5個、好ましくは1〜3個、より好ましくは1〜2個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるプライマーのセットであってもよい。さらに、カビ遺伝子特異的プライマーとしては、前記ITS領域を増幅することができるならば、配列番号58に示す塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマー、及び配列番号59に示す塩基配列に対して完全に相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーのセットであってもよい。
【0028】
次に、本システムでは、増幅した検出対象領域を、特定の塩基配列を有する核酸プローブによって検出する。本システムにおいては、検出又は識別対象のダニ類及びカビ類それぞれについて核酸プローブを準備する。核酸プローブは、検出又は識別対象のダニ類及びカビ類からゲノムDNA又はRNA(例えば、mRNA)を抽出し、抽出したゲノムDNA又はRNAを鋳型としてPCR等の核酸増幅反応を利用してクローニングすることができる。
【0029】
例えば、Dermatophagoides farinae(コナヒョウヒダニ)を検出又は識別対象のダニ類とする場合、核酸プローブは、配列番号1に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と配列番号5に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Dermatophagoides farinaeから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号2に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号3に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号4に示す塩基配列からなるDermatophagoides farinae由来ITS1領域の一部を増幅することができる。また、Dermatophagoides farinaeから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号6に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号7に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号8に示す塩基配列からなるDermatophagoides farinae由来ITS2領域の一部を増幅することができる。すなわち、配列番号4に示す塩基配列からなる核酸プローブ及び配列番号8に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Dermatophagoides farinaeの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0030】
また、配列番号1又は5に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Dermatophagoides farinaeの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号62に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号63に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号64に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号65に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号122に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号123に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号124に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号125に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号174に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号175に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号176に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号177に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Dermatophagoides farinaeの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをDermatophagoides farinaeの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号62〜65、122〜125、174〜177のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0031】
Dermatophagoides pteronyssinus(ヤケヒョウヒダニ)を検出又は識別対象のダニ類とする場合、核酸プローブは、配列番号9に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と配列番号13に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Dermatophagoides pteronyssinusから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号10に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号11に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号12に示す塩基配列からなるDermatophagoides pteronyssinus由来ITS1領域の一部を増幅することができる。また、Dermatophagoides pteronyssinusから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号14に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号15に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号16に示す塩基配列からなるDermatophagoides pteronyssinus由来ITS2領域の一部を増幅することができる。すなわち、配列番号12に示す塩基配列からなる核酸プローブ及び配列番号16に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Dermatophagoides pteronyssinusの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0032】
また、上記配列番号9又は13に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Dermatophagoides pteronyssinusの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号66に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号67に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号68に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号69に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号126に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号127に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号128に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号129に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号178に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号179に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号180に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号181に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Dermatophagoides pteronyssinusの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをDermatophagoides pteronyssinusの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号66〜69、126〜129、178〜181のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0033】
Tyrophagus pterescentiae(ケナガコナダニ)、を検出又は識別対象のダニ類とする場合、核酸プローブは、配列番号17に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と配列番号21に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Tyrophagus pterescentiaeから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号18に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号19に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号20に示す塩基配列からなるTyrophagus pterescentiae由来ITS1領域の一部を増幅することができる。また、Tyrophagus pterescentiaeから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号22に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号23に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号21に示す塩基配列からなるTyrophagus pterescentiae由来ITS2領域を増幅することができる。すなわち、配列番号20に示す塩基配列からなる核酸プローブ及び配列番号21に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Tyrophagus pterescentiaeの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0034】
また、上記配列番号17又は21に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Tyrophagus pterescentiaeの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号70に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号71に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号72に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号73に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号130に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号131に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号132に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号133に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号182に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号183に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号184に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号185に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Tyrophagus pterescentiaeの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをTyrophagus pterescentiaeの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号70〜73、130〜133、182〜185のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0035】
一方、Alternaria alternataを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号24に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号48に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Alternaria alternataから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号25に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号26に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号27に示す塩基配列からなるAlternaria alternata由来ITS1領域の一部を増幅することができる。すなわち、配列番号27に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Alternaria alternataの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0036】
また、上記配列番号24又は48に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Alternaria alternataの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号74に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号75に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号76に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号77に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号134に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号135に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号136に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号137に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号186に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号187に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号188に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号189に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Alternaria alternataの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをAlternaria alternataの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号74〜77、134〜137、186〜189のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0037】
Aspergills restrictusを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号28に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号49に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Aspergills restrictusから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号29に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号30に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号31に示す塩基配列からなるAspergills restrictus由来ITS1領域の一部を増幅することができる。すなわち、配列番号31に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Aspergills restrictusの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0038】
また、上記配列番号28又は49に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Aspergills restrictusの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号78に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号79に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号80に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号81に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号138に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号139に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号140に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号141に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号190に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号191に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号192に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号193に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Aspergills restrictusの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをAspergills restrictusの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号78〜81、138〜141、190〜193のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0039】
Aspergills versicoloを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号32に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号50に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Aspergills versicoloから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号33に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号34に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号35に示す塩基配列からなるAspergills versicolo由来ITS1領域の一部を増幅することができる。すなわち、配列番号35に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Aspergills versicoloの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0040】
また、上記配列番号32又は50に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Aspergills versicoloの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号82に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号83に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号84に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号85に示す塩基配列からなる核酸プローブを、配列番号142に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号143に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号144に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号145に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号194に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号195に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号196に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号197に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Aspergills versicoloの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをAspergills versicoloの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号82〜85、142〜145、194〜197のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0041】
Candida albicansを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号36に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号51に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Candida albicansから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号37に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号39に示す塩基配列からなるCandida albicans由来ITS1領域の一部を増幅することができる。すなわち、配列番号39に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Candida albicansの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0042】
また、上記配列番号36又は51に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Candida albicansの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号86に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号87に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号88に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号89に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号146に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号147に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号148に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号149に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号198に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号199に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号200に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号201に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Candida albicansの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをCandida albicansの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号86〜89、146〜149、198〜201のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0043】
Cladosporium sphaerospermumを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号40に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号52に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Cladosporium sphaerospermumから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号41に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号43に示す塩基配列からなるCladosporium sphaerospermum由来ITS1領域の一部を増幅することができる。すなわち、配列番号43に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Cladosporium sphaerospermumの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0044】
また、上記配列番号40又は52に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Cladosporium sphaerospermumの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号90に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号91に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号92に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号93に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号150に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号151に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号152に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号153に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号202に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号203に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号204に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号205に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Cladosporium sphaerospermumの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをCladosporium sphaerospermumの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号90〜93、150〜153、202〜205のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0045】
Eurotium herbariorumを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号44に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号53に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。より具体的には、Eurotium herbariorumから抽出したゲノムDNAを鋳型として、配列番号45に示す塩基配列からなるプライマー及び配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーを使用したPCRによって、配列番号47に示す塩基配列からなるEurotium herbariorum由来ITS1領域の一部を増幅することができる。すなわち、配列番号47に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Eurotium herbariorumの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。
【0046】
また、上記配列番号44又は53に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Eurotium herbariorumの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号94に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号95に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号96に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号97に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号154に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号155に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号156に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号157に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号206に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号207に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号208に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号209に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Eurotium herbariorumの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをEurotium herbariorumの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号94〜97、154〜157、206〜209のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0047】
配列番号48〜53に示したカビ類由来のITS2領域は、全て配列番号54に示すプライマー及び配列番号55に示すプライマーにより増幅することができる。
【0048】
Aspergillus nigarを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号114に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号115に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。上記配列番号114又は115に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Aspergillus nigarの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号98に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号99に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号100に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号101に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号158に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号159に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号160に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号161に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号210に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号211に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号212に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号213に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Aspergillus nigarの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをAspergillus nigarの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号98〜101、158〜161、210〜213のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0049】
Penicillium chrysogenumを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号116に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号117に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。上記配列番号116又は117に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Penicillium chrysogenumの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号102に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号103に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号104に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号105に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号162に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号163に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号164に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号165に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号214に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号215に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号216に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号217に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Penicillium chrysogenumの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをPenicillium chrysogenumの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号102〜105、162〜165、214〜217のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0050】
Fusarium sp.を検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号118に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号119に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。上記配列番号118又は119に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Fusarium sp.の検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号106に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号107に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号108に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号109に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号166に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号167に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号168に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号169に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号218に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号219に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号220に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号221に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Fusarium sp.の検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをFusarium sp.の検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号106〜109、166〜169、218〜221のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0051】
Wallemia sebiを検出又は識別対象のカビ類とする場合、核酸プローブは、配列番号120に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS1領域と、配列番号121に示す塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含むITS2領域とすることができる。一部とは、好ましくは、各塩基配列における連続した塩基配列からなる領域をさす。上記配列番号120又は121に示す塩基配列における、10〜30塩基、好ましくは15〜25塩基、より好ましくは20塩基の連続した塩基配列、又は該塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸プローブを、Wallemia sebiの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。具体的には、配列番号110に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号111に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号112に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号113に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号170に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号171に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号172に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号173に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号222に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号223に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号224に示す塩基配列からなる核酸プローブ、配列番号225に示す塩基配列からなる核酸プローブを、Wallemia sebiの検出又は識別用の核酸プローブとすることができる。これらの核酸プローブと機能的に同等の核酸プローブをWallemia sebiの検出又は識別用の核酸プローブとしてもよい。機能的に同等の核酸プローブとしては、各塩基配列(配列番号110〜113、170〜173、222〜225のいずれか)において1又は数個の核酸が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなり、対応する塩基配列からなる核酸プローブがハイブリダイズするDNAとハイブリダイズできる核酸プローブが挙げられる。
【0052】
本発明のマイクロアレイは、各種ダニ類及びカビ類を検出又は識別するための核酸プローブの1種のみが固定化されていてもよいし、複数種が固定化されていてもよい。ダニ類を検出又は識別するための核酸プローブのみが固定化されていてもよいし、カビ類を検出又は識別するための核酸プローブのみが固定化されていてもよい。好ましくは複数種のダニ類又はカビ類を検出又は識別するための複数種の核酸プローブが固定化される。少なくとも、ダニ類としてDermatophagoides farinae、Dermatophagoides pteronyssinus、Tyrophagus putrescentiae、カビ類としてAlternaria alternata、Aspergillus restrictus、Aspergillus versicolor、Candida albicans、Cladosporium sphaerospermum、Eurochium harbariorumを検出又は識別するための核酸プローブが固定化されていることが好ましい。
【0053】
特に、検出又は識別対象のダニ類及びカビ類を、検出対象領域としてITS1領域及びITS2領域を含むDNA断片を増幅する場合、上述したように、各ダニ類及び各カビ類についてそれぞれ、ITS1領域及びITS2領域をともに核酸プローブとして使用することが好ましい。核酸プローブとしてITS1領域及びITS2領域をともに使用することによって、上述した工程で増幅した検出対象領域の検出精度を向上させることができる。すなわち、ITS1領域を含む核酸プローブ及びITS2領域を含む核酸プローブのうち一方のみにハイブリダイズが生じても、他方に対してハイブリダイズが認められない場合には、一方に生じたハイブリダイズを非特異的ハイブリダイズによる擬陽性であると結論付けることができる。これにより、非特異的ハイブリダイズによる誤判定の生じる可能性を非常に低く抑えることができるため、検出対象領域の存在すなわち、特定のダニ類又はカビ類の検出又は識別を高精度に行うことができる。
【0054】
ところで、核酸プローブとしては、上述したように検出対象領域とのハイブリダイズに寄与する塩基配列のみからなる核酸断片に限定されず、例えば、当該ハイブリダイズに寄与しない塩基配列が含まれていてもよい。さらに、核酸プローブは、上述したように一対のプライマーを使用した核酸増幅反応により増幅されたものに限定されず、核酸合成装置によって化学的に合成することで取得することもできる。核酸合成装置としては、DNAシンセサイザー、全自動核酸合成装置、核酸自動合成装置等と呼ばれる装置を使用することができる。
【0055】
本発明のダニ類又はカビ類の検出又は識別用マイクロアレイは、担体に、前記核酸プローブが固定化されてなる。担体の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されない。例えば、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステン及びそれらの化合物などの貴金属、及びグラファイト、カ−ボンファイバ−に代表される炭素などの導電体材料;単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素などに代表されるシリコン材料、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)などに代表されるこれらシリコン材料の複合素材;ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラスなどの無機材料;ポリエチレン、エチレン、ポリプロビレン、環状ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイド及びポリスルホンなどの有機材料等が挙げられる。担体の形状も特に制限されないが、好ましくは平板状である。
【0056】
本発明においては、担体として、好ましくは表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体を用いる。表面にカーボン層と化学修飾基とを有する担体には、基板の表面にカーボン層と化学修飾基とを有するもの、及びカーボン層からなる基板の表面に化学修飾基を有するものが包含される。基板の材料としては、当技術分野で公知のものを使用でき、特に制限されず、上述の担体材料と同様のものを使用できる。
【0057】
本発明は、微細な平板状の構造を有する担体に対し好適に用いられる。形状は、長方形、正方形及び丸形など限定されないが、通常、1〜75mm四方のもの、好ましくは1〜10mm四方のもの、より好ましくは3〜5mm四方のものを用いる。微細な平板状の構造の担体を製造しやすいことから、シリコン材料や樹脂材料からなる基板を用いるのが好ましく、特に単結晶シリコンからなる基板の表面にカーボン層及び化学修飾基を有する担体がより好ましい。単結晶シリコンには、部分部分でごくわずかに結晶軸の向きが変わっているものや(モザイク結晶と称される場合もある)、原子的尺度での乱れ(格子欠陥)が含まれているものも包含される。
【0058】
本発明において基板上に形成させるカーボン層としては、特に制限されないが、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、炭素系物質(例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ)のいずれか、それらの混合物、又はそれらを積層させたものを用いることが好ましい。また、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、炭化珪素、炭化タンタル、炭化トリウム、炭化チタン、炭化ウラン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化バナジウム等の炭化物を用いてもよい。ここで、軟ダイヤモンドとは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)等の、ダイヤモンドとカーボンとの混合体である不完全ダイヤモンド構造体を総称し、その混合割合は、特に限定されない。カーボン層は、化学的安定性に優れておりその後の化学修飾基の導入や分析対象物質との結合における反応に耐えることができる点、分析対象物質と静電結合によって結合するためその結合が柔軟性を持っている点、UV吸収がないため検出系UVに対して透明性である点、及びエレクトロブロッティングの際に通電可能な点において有利である。また、分析対象物質との結合反応において、非特異的吸着が少ない点においても有利である。前記のとおり基板自体がカーボン層からなる担体を用いてもよい。
【0059】
本発明においてカーボン層の形成は公知の方法で行うことができる。例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical vapor deposit)法、ECRCVD(Electric cyclotron resonance chemical vapor deposit)法、ICP(Inductive coupled plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric cyclotron resonance)スパッタリング法、イオン化蒸着法、アーク式蒸着法、レーザ蒸着法、EB(Electron beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法などが挙げられる。
【0060】
高周波プラズマCVD法では、高周波によって電極間に生じるグロー放電により原料ガス(メタン)を分解し、基板上にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)層を合成する。イオン化蒸着法では、タングステンフィラメントで生成される熱電子を利用して、原料ガス(ベンゼン)を分解・イオン化し、バイアス電圧によって基板上にカーボン層を形成する。水素ガス1〜99体積%と残りメタンガス99〜1体積%からなる混合ガス中で、イオン化蒸着法によりDLC層を形成してもよい。
【0061】
アーク式蒸着法では、固体のグラファイト材料(陰極蒸発源)と真空容器(陽極)の間に直流電圧を印加することにより真空中でアーク放電を起こして陰極から炭素原子のプラズマを発生させ蒸発源よりもさらに負のバイアス電圧を基板に印加することにより基板に向かってプラズマ中の炭素イオンを加速しカーボン層を形成することができる。
【0062】
レーザ蒸着法では、例えばNd:YAGレーザ(パルス発振)光をグラファイトのターゲット板に照射して溶融させ、ガラス基板上に炭素原子を堆積させることによりカーボン層を形成することができる。
【0063】
基板の表面にカーボン層を形成する場合、カーボン層の厚さは、通常、単分子層〜100μm程度であり、薄すぎると下地基板の表面が局部的に露出する可能性があり、逆に厚くなると生産性が悪くなるので、好ましくは2nm〜1μm、より好ましくは5nm〜500nmである。
【0064】
カーボン層が形成された基板の表面に化学修飾基を導入することにより、核酸プローブを担体に強固に固定化できる。導入する化学修飾基は、当業者であれば適宜選択することができ、特に制限されないが、例えば、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、ホルミル基、ヒドロキシル基及び活性エステル基が挙げられる。
【0065】
アミノ基の導入は、例えば、カーボン層をアンモニアガス中で紫外線照射することにより又はプラズマ処理することにより実施できる。又は、カーボン層を塩素ガス中で紫外線を照射して塩素化し、さらにアンモニアガス中で紫外線照射することにより実施できる。又は、メチレンジアミン、エチレンジアミンで等の多価アミン類ガス中を、塩素化したカーボン層と反応させることによって実施することもできる。
【0066】
カルボキシル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な化合物を反応させることにより実施できる。カルボキシル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X-R1-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R1は炭素数10〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるハロカルボン酸、例えばクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2-クロロプロピオン酸、3-クロロプロピオン酸、3−クロロアクリル酸、4−クロロ安息香酸;式:HOOC-R2-COOH(式中、R2は単結合又は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;式:R3-CO-R4-COOH(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜12の2価の炭化水素基、R4は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるケト酸又はアルデヒド酸;式:X-OC-R5-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R5は単結合又は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)で示されるジカルボン酸のモノハライド、例えばコハク酸モノクロリド、マロン酸モノクロリド;無水フタル酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物が挙げられる。
【0067】
エポキシ基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に適当な多価エポキシ化合物を反応させることによって実施できる。あるいは、カーボン層が含有する炭素=炭素2重結合に有機過酸を反応させることにより得ることができる。有機過酸としては、過酢酸、過安息香酸、ジペルオキシフタル酸、過ギ酸、トリフルオロ過酢酸などが挙げられる。
【0068】
ホルミル基の導入は、例えば、前記のようにアミノ化したカーボン層に、グルタルアルデヒドを反応させることにより実施できる。
【0069】
ヒドロキシル基の導入は、例えば、前記のように塩素化したカーボン層に、水を反応させることにより実施できる。
【0070】
活性エステル基は、エステル基のアルコール側に酸性度の高い電子求引性基を有して求核反応を活性化するエステル群、すなわち反応活性の高いエステル基を意味する。エステル基のアルコール側に、電子求引性の基を有し、アルキルエステルよりも活性化されたエステル基である。活性エステル基は、アミノ基、チオール基、水酸基等の基に対する反応性を有する。さらに具体的には、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、シアノメチルエステル、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等がアルキルエステル等に比べてはるかに高い活性を有する活性エステル基として知られている。より具体的には、活性エステル基としては、たとえばp-ニトロフェニル基、N−ヒドロキシスクシンイミド基、コハク酸イミド基、フタル酸イミド基、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド基等が挙げられ、特に、N-ヒドロキシスクシンイミド基が好ましく用いられる。
【0071】
活性エステル基の導入は、例えば、前記のように導入したカルボキシル基を、シアナミドやカルボジイミド(例えば、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN-ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物で活性エステル化することにより実施できる。この処理により、アミド結合を介して炭化水素基の末端に、N-ヒドロキシスクシンイミド基等の活性エステル基が結合した基を形成することができる(特開2001-139532)。
本発明のマイクロアレイには、通常1〜100種、好ましくは5〜50種、より好ましくは10〜30種の核酸プローブが固定化される。
【0072】
本発明の核酸プローブを、スポッティング用バッファーに溶解してスポッティング用溶液を調製し、これを96穴もしくは384穴プラスチックプレートに分注し、分注した溶液をスポッター装置等によって担体上にスポッティングすることにより、核酸プローブが担体に固定化されたマイクロアレイを製造することができる。又は、スポッティング溶液をマイクロピペッターにて手動でスポッティングしてもよい。
【0073】
スポッティング後、核酸プローブが担体に結合する反応を進行させるため、インキュベーションを行うことが好ましい。インキュベーションは、通常−20〜100℃、好ましくは0〜90℃の温度で、通常0.5〜16時間、好ましくは1〜2時間にわたって行う。インキュベーションは、高湿度の雰囲気下、例えば、湿度50〜90%の条件で行うのが望ましい。インキュベーションに続き、担体に結合していない核酸を除去するため、洗浄液(例えば、50mM TBS/0.05% Tween20)を用いて洗浄を行うことが好ましい。
【0074】
さらに、検出対象領域とハイブリする核酸プローブは、DNA量を段階的に変化させた複数のスポットとして固定されていてもよい。例えば、個々の核酸プローブについて、DNA量を1ngとしたスポット、100pgとしたスポット及び10pgとしたスポットというように複数のスポットを形成してもよい。これにより、検出対象領域を半定量することができ、検査対象に存在するアレルゲンについて半定量的な評価が可能となる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
〔実施例1〕
本実施例では、Dermatophagoides farinae(コナヒョウヒダニ)、Dermatophagoides pteronyssinus(ヤケヒョウヒダニ)、Tyrophagus pterescentiae(ケナガコナダニ)の3種のダニを識別できるPCR条件について検討した。
【0077】
本例では、Dermatophagoides pteronyssinus由来のITS1領域をPCRにより増幅するため、特異的なプライマーDP-ITS1F及びDP-ITS1Rを設計した。また、Dermatophagoides pteronyssinus由来のITS2領域をPCRにより増幅するため、特異的なプライマーDP-ITS2F及びDP-ITS2Rを設計した。
DP-ITS1F:5'- TTC TTg AgC ATT TAT TTg C -3'(配列番号10)
DP-ITS1R:5'- TTT gTA TCA ATg TTT ATg g -3'(配列番号11)
DP-ITS2F:5'- TAT CAA ATT ATg ACC AAA C -3'(配列番号14)
DP-ITS2R:5'- TAC ATT gAT TTg TCA ACC -3'(配列番号15)
前記プライマーを用いて表1及び2に示す条件でPCRを行った。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
鋳型DNAとしてDermatophagoides farinaeのゲノムDNA、Dermatophagoides pteronyssinusのゲノムDNA又はTyrophagus pterescentiaeのゲノムDNAを使用してそれぞれPCRを行った後、反応液を電気泳動にかけた結果を図1Aに示す。
【0081】
また、本実施例では、Dermatophagoides farinae由来のITS1領域をPCRにより増幅するため、特異的なプライマーDF-ITS1F及びDF-ITS1Rを設計した。また、Tyrophagus pterescentiae由来のITS2領域をPCRにより増幅するため、特異的なプライマーTP-ITS2F及びTP-ITS2Rを設計した。
DF-ITS1F:5'- TTg AAC AAT gAA ACA CTT g -3'(配列番号2)
DF-ITS1R:5'- TTg TTT CAA TgA TAC Tgg C -3'(配列番号3)
TP-ITS2F:5'- ATA TgC CAA ACA CCA TgC -3'(配列番号22)
TP-ITS2R:5'- gAA AgT TAA CAA CAA CTg C -3'(配列番号23)
前記プライマーを用いて表3及び4に示す条件でPCRを行った。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
鋳型DNAとしてDermatophagoides farinaeのゲノムDNA、Dermatophagoides pteronyssinusのゲノムDNA又はTyrophagus pterescentiaeのゲノムDNAを使用してそれぞれPCRを行った後、反応液を電気泳動にかけた結果を図1Bに示す。
【0085】
さらに、本実施例では、Dermatophagoides pteronyssinus由来のITS2領域をPCRにより増幅するための、特異的なプライマーDP-ITS2F及びDP-ITS2Rを用いて表5及び6に示す条件でPCRを行った。
【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
鋳型DNAとしてDermatophagoides farinaeのゲノムDNA、Dermatophagoides pteronyssinusのゲノムDNA又はTyrophagus pterescentiaeのゲノムDNAを使用してそれぞれPCRを行った後、反応液を電気泳動にかけた結果を図1Cに示す。
【0089】
以上、図1A〜Cに示したように、本実施例で設計したプライマーは全て特異的にITS領域を増幅することができ、他のダニ類のITS領域等の非特異的な領域を増幅しないことが明らかとなった。
【0090】
〔実施例2〕
本実施例では、検出及び標識対象のダニ類からのゲノムDNAを抽出する方法について検討した。また、カビ類からのゲノムDNAを抽出する方法についても検討した。本実施例では、供試ダニとしてアレルゲンの原因ダニとして知られるコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)を用いた。虫体の破砕には、ホモジナイゼーションペッスル(フナコシ株式会社)もしくは乳鉢・乳棒を用いた。Proteinase KはMERCK社の製品を用い、酵素反応は定法に従い0.5% SDSの存在下37℃で1時間行った。全ての手法において最終的にCTAB処理を行い、イソプロパノールにてDNAを沈殿させた。遠心分離を行い、上清を除去した後、10μLの滅菌水に溶解した。そのうち4μLを用いてrDNA ITS領域のPCRにより増幅を行った。
【0091】
本例のPCRでは以下のプライマーセットを使用し、表7及び8に示す条件とした。
Arthro-ITSF:5'- TAg Agg AAg TAA Aag TCG-3'(配列番号60)
Inaect-ITSR:5'- CCT TAg Atg gAg TTT ACC-3'(配列番号61)
【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】
PCR終了後アガロースゲルにてPCR産物の電気泳動を行い確認した。上述した処理を表9にまとめた。
【0095】
【表9】

【0096】
PCR産物の電気泳動の結果を図2に示す。Arthro-ITSF及びInaect-ITSRを使用した場合、コナヒョウヒダニのrDNA ITS領域の全長は約1,200bpである。どの手法を用いてもほぼ同量のPCR産物が得られた。今回の条件では50個体からでもPCRが可能な量のDNAを抽出することが可能であった。液体窒素未使用の場合でも満足できるといった結果が得られており、操作を簡便化・迅速化することが可能となった。虫体の粉砕法については、ペッスル、乳鉢・乳棒いずれの場合においても大きな差は見られなかった。また、Proteinase Kを用いた場合でも顕著な差は認められなかった。このことから、通常1時間〜1日といった長時間を要するProteinase K処理は必ずしも必要な処理ではないことが明らかとなった。
【0097】
カビ類については下記の方法でゲノムDNAを抽出した。まず、採取したカビを液体窒素で凍結し、凍結したカビとステンレスビーズをチューブに入れ、激しく撹拌した。次に、50ml遠心管に移し、5mlの2 x CTAB(2% (w/v) Cetyl trimethyl ammonium bromide (以後、CTABと記す)、0.1M Tris-HCl、1.4M NaCl、1%(w/v) ポリビニルピロリドン、pH 8.0)を加え、55℃で10分間インキュベートした。次いで、5mlのクロロホルム/イソアミルアルコール溶液(クロロホルム:イソアミルアルコール=24:1)を加え、室温で30分間振盪し、更に、10,000rpm、室温で15分間遠心した。その後、上層を別の50ml遠心管に移し、等容のクロロホルム/イソアミルアルコール溶液を加え、室温で10分間振盪し、更に、10,000rpm、室温で10分間遠心した。次いで、上層を別の50 ml遠心管に移し、1/10容の10%CTAB(10% (w/v) CTAB、0.7M NaCl)を加え、完全に溶かした。
【0098】
次に、等量のBuffer(1% CTAB、5 mM Tris-HCl、10 mM EDTA、pH 8.0)を加え、撹拌し、30分間放置した後、10,000rpm、室温で10分間遠心した。上層を捨て、1/4量の1 M NaCl-TE(1 M NaCl、10 mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH 8.0)を加え、55℃でインキュベートした。
【0099】
等量のイソプロパノールを加え、撹拌し、更に、10,000rpm、室温で10分間遠心した。沈澱が溶解するのに適量のTEを加えるとRNAとDNAの混合物が得られる。DNAのみを抽出するために、次いで55℃で溶解させ、更に1/10量の10μg/ml RNase Aを加え、55℃で30分間インキュベートした。次いで、フェノール/クロロホルム抽出、クロロホルム抽出、エタノール沈澱、リンス後、適量のTEに溶かし、カビのDNAを抽出した。
【0100】
〔実施例3〕
本実施例では、ダニ遺伝子特異的プライマー又はカビ遺伝子特異的プライマーを使用した、いわゆる1-tube PCRについて検討した。
【0101】
本実施例では、ダニ遺伝子特異的プライマーとして、配列番号56に示す塩基配列からなるプライマー(Acari ITS1)と配列番号57に示す塩基配列からなるプライマー(Acari ITS2 R)を設計した。
Acari ITS1:5'- CAA ggT TTC CgT Agg TgA AC -3' (Tm: 55.4 ℃)(配列番号56)
Acari ITS2 R:5'- gCT TgA TCT gAg gTC gA -3' (Tm: 52.2 ℃)(配列番号57)
【0102】
また、カビ遺伝子特異的プライマーとして、配列番号58に示す塩基配列からなるプライマー(ITS1-F)と配列番号59に示す塩基配列からなるプライマー(FO514)を設計した。
ITS1-F:5'- CTT GGT CAT TTA GAG GAA GTA A -3' (Tm: 53.0 ℃)(配列番号58)
FO514:5'- TAT GCT TAA GTT CAG CGG GTA GTC C -3' (Tm: 60.5 ℃)(配列番号59)
これらプライマーセットにより増幅される領域はITS1〜5.8S〜ITS2である。
【0103】
また、本実施例では、鋳型DNAとしてpXcmkn12のXcm I部位に標的領域となるITS領域をクローニングしたサブクローン2種(ダニ1種、カビ1種)をそれぞれ最終濃度0.5ng/μlになるように添加した。コントロールにはDNAの代わりに滅菌水を加えたものを用意した。各反応に供したクローンが含む遺伝子供与生物の組み合わせは以下の通り。
1:Alternaria alternata+Dermatophagoides farinae
2:Cladsporium sphaerospermum+Dermatophagoide pteronyssinus
3:Eurotium herbariorum +Tyrophagus putrescentiae
【0104】
本実施例において、1-tube PCR における増幅断片の標識にはDIG ラベルを使用した。本実施例では、表10及び11に示す条件でPCRを行った。
【0105】
【表10】

【0106】
【表11】

【0107】
本実施例で行った1-tube PCRの後、反応液を電気泳動に供した結果を図3に示す。図3に示すように、カビ由来の鋳型DNAとダニ由来の鋳型DNAが共存した場合であっても、それぞれ目的とするDNA断片が増幅されていることが確認された。また、図3に示すように、ダニ遺伝子特異的プライマー(Acari ITS1及びAcari ITS2 R)を使用することによって、複数種のダニおいて所望のDNA断片が増幅されていることが確認された。同様に、カビについても、カビ遺伝子特異的プライマー(ITS1-F及びFO514)を使用することによって、複数種のカビにおいて所望のDNA断片が増幅されていることが確認された。したがって、本実施例で使用したダニ遺伝子特異的プライマー及びカビ遺伝子特異的プライマーは、本発明に係るシステムにおいて検査及び識別対象のダニ類及びカビ類に由来する検査対象DNA領域を増幅するのに使用できることが明らかとなった。これらダニ遺伝子特異的プライマー及びカビ遺伝子特異的プライマーは、複数種類のダニ類及びカビ類に対して使用することができる非常に有用なプライマーであるといえる。
【0108】
〔実施例4〕
3mm角のシリコン基板にイオン化蒸着法を用いて、下記の条件で2層のDLC層の製膜を行った。
【0109】
【表12】

【0110】
得られた表面にDLC層を有するシリコン基板上に、下記の条件でアンモニアプラズマを用いて、アミノ基を導入した。
【0111】
【表13】

【0112】
140mM 無水コハク酸及び0.1M ホウ酸ナトリウムを含む1-メチル-2-ピロリドン溶液に30分間浸漬し、カルボキシル基を導入した。0.1M リン酸カリウムバッファー、0.1M 1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、20mM N-ヒドロキシスクシイミドを含む溶液に30分間浸漬し、活性化を行い、シリコン基板表面にDLC層及び化学修飾基としてのN-ヒドロキシスクシイミド基を有する担体を得た。
【0113】
ダニ種(Dermatophagoides farinae、Dermatophagoides pteronyssinus、Tyrophagus putrescentiae)及びカビ種(Alternaria alternata、Cladosporium sphaerospermum、Eurochium harbariorum、Candida、Aspergillus nigar、Aspergillus versicolor、Penicillium chrysogenum、Fusarium sp.、Wallemia sebi)において、3箇所のrDNA領域に挟まれた2箇所のITS(Internal Transcribed Spacer)領域、ITS1及びITS2からダニ種及びカビ種のそれぞれを検出するための核酸プローブ配列を設計した。そして、5'末端をアミノ基修飾した10mer、20mer及び30merの核酸プローブを合成した。これらに対して相補的な配列を有する核酸プローブも合成した。合成した核酸プローブの配列を図4に示す。
【0114】
核酸プローブをSol.6で10μMに溶解し、前記で得られた担体上にスポットした。80℃で1時間、ベーキングを行い、2×SSC/0.2%SDSで洗浄した後、超純水で洗浄し、遠心乾燥を行うことにより、担体に核酸プローブが固定化されたマイクロアレイを得た。
【0115】
〔実施例5〕
ダニ種(Dermatophagoides farinae、Dermatophagoides pteronyssinus、Tyrophagus putrescentiae)及びカビ種(Alternaria alternata、Cladosporium sphaerospermum、Eurochium harbariorum、Candida albicans、Aspergillus versicolor)のゲノムDNAを鋳型とし、ダニ遺伝子特異的プライマーセット又はカビ遺伝子特異的プライマーセットを用いてそれぞれPCRを行い、ターゲット溶液を調製した。標識は、Cy dyeを用いて行った。PCR溶液の組成は以下のとおりとした。
【0116】
【表14】

【0117】
本実施例では、ダニ遺伝子特異的プライマーとして、上記配列番号56に示す塩基配列からなるプライマー(Acari ITS1)と配列番号57に示す塩基配列からなるプライマー(Acari ITS2 R)を用いた。また、カビ遺伝子特異的プライマーとして、上記配列番号58に示す塩基配列からなるプライマー(ITS1-F)と配列番号59に示す塩基配列からなるプライマー(FO514)を用いた。
【0118】
ターゲット溶液を実施例4で作製したマイクロアレイに滴下し、ハイブリダイズカバーを被せた。50℃で30分間静置し、湿箱に入れて反応を行った。カバーを洗浄液中で外し、2×SSC/0.2%SDSで洗浄した。さらに2×SSCで洗浄し、遠心乾燥した(1500rpm、1分)。
FLA 8000(富士写真フィルム株式会社)で蛍光画像を撮影した(20merの核酸プローブのみ)。
【0119】
ダニ種検出用の核酸プローブが固定化されたマイクロアレイにおける核酸プローブの配置及び該マイクロアレイにおいてハイブリダイゼーションを行った後の蛍光画像を図5に示す。カビ種検出用の核酸プローブが固定化されたマイクロアレイにおける核酸プローブの配置及び該マイクロアレイにおいてハイブリダイゼーションを行った後の蛍光画像を図6に示す。なお、10mer及び30merの核酸プローブについては蛍光画像を図示しないが、20merの場合と同様の蛍光画像が得られた。
【0120】
以上から、本発明のマイクロアレイによって、ダニ類又はカビ類の検出又は識別が可能であることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】実施例1で設計したプライマーを用いたPCRの結果を示す電気泳動写真である。
【図2】実施例2で抽出したゲノムDNAを鋳型としたPCRの結果を示す電気泳動写真である。
【図3】実施例3で設計したダニ遺伝子特異的プライマー及びカビ遺伝子特異的プライマーを使用したPCRの結果を示す電気泳動写真である。
【図4】ダニ種及びカビ種のゲノムDNAにおいて、3箇所のrDNA領域に挟まれた2箇所のITS領域(ITS1及びITS2)から設計した、ダニ種及びカビ種を検出するための核酸プローブの配列を示す。
【図5】ダニ種検出用の核酸プローブが固定化されたマイクロアレイにおける核酸プローブの配置及び該マイクロアレイにおいてハイブリダイゼーションを行った後の蛍光画像を示す。
【図6】カビ種検出用の核酸プローブが固定化されたマイクロアレイにおける核酸プローブの配置及び該マイクロアレイにおいてハイブリダイゼーションを行った後の蛍光画像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象から採取したダニ類又はカビ類由来のゲノムDNA又はRNAを鋳型として増幅された検出対象領域に対してハイブリダイズ可能である核酸プローブが担体に固定化されてなるダニ類又はカビ類の検出又は識別用マイクロアレイ。
【請求項2】
核酸プローブが、前記ダニ類としてDermatophagoides farinae(コナヒョウヒダニ)、Dermatophagoides pteronyssinus(ヤケヒョウヒダニ)又はTyrophagus pterescentiae(ケナガコナダニ)に由来し、前記カビ類としてAlternaria alternata、Aspergills restrictus、Aspergills versicolor、Candida albicans、Cladosporium sphaerosporum、Eurotium herboriorum、Aspergillus nigar、Penicillium chrysogenum、Fusarium sp.又はWallemia sebiに由来するゲノムDNA又はRNAを鋳型として増幅された検出対象領域に対してハイブリダイズ可能である、請求項1記載のマイクロアレイ。
【請求項3】
検出対象領域が、ダニ遺伝子特異的プライマーセット又はカビ遺伝子特異的プライマーセットを用いて増幅されるものである、請求項1又は2記載のマイクロアレイ。
【請求項4】
ダニ遺伝子特異的プライマーセット又はカビ遺伝子特異的プライマーセットが連続した15〜30塩基の配列を有する、請求項1〜3のいずれか1項記載のマイクロアレイ。
【請求項5】
前記ダニ遺伝子特異的プライマーセットが以下の(a)、(b)又は(c):
(a)配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーとのセット
(b)配列番号56に示す塩基配列において1〜5個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるプライマーと配列番号57塩基配列において1〜5個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるからなるプライマーとからなり、前記(a)のプライマーセットと同一の領域を増幅できるプライマーのセット
(c)配列番号56に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーと配列番号57に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーとからなり、前記(a)のプライマーセットと同一の領域を増幅できるプライマーのセット
である、請求項3記載のマイクロアレイ。
【請求項6】
前記カビ遺伝子特異的プライマーセットが以下の(a)、(b)又は(c):
(a)配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーとのセット
(b)配列番号58に示す塩基配列において1〜5個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるプライマーと配列番号59塩基配列において1〜5個の塩基を置換、欠失又は付加した塩基配列からなるからなるプライマーとからなり、前記(a)のプライマーセットと同一の領域を増幅できるプライマーのセット
(c)配列番号58に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーと配列番号59に示す塩基配列に対して相補的な塩基配列からなる核酸断片に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズできる核酸断片からなるプライマーとからなり、前記(a)のプライマーセットと同一の領域を増幅できるプライマーのセット
である、請求項3記載のマイクロアレイ。
【請求項7】
核酸プローブが、配列番号1、5、9、13、17及び21からなる群より選ばれる少なくとも1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含む、請求項1又は2記載のマイクロアレイ。
【請求項8】
核酸プローブが、配列番号24、28、32、36、40、44、48〜53及び114〜121からなる群より選ばれる少なくとも1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部又は全部を含む、請求項1又は2記載のマイクロアレイ。
【請求項9】
少なくとも1の塩基配列又は該塩基配列に相補的な塩基配列の一部が、連続した10〜30塩基の配列である請求項7又は8記載のマイクロアレイ。
【請求項10】
前記担体が、表面にカーボン層と化学修飾基とを有するものである請求項1〜9のいずれか1項記載のマイクロアレイ。
【請求項11】
カーボン層がダイヤモンドライクカーボン層であり、化学修飾基が活性エステル基である、請求項10記載のマイクロアレイ。
【請求項12】
検査対象から塵芥を採取する工程と、
採取した塵芥からダニ類及びカビ類を分離し、分離されたダニ類及びカビ類からゲノムDNA又はRNAを抽出する工程と、
抽出したゲノムDNA又はRNAを鋳型とし、検出対象領域を増幅する工程と、
請求項1〜11いずれか1項記載のマイクロアレイを用いて検出対象領域を検出する工程と
を含む、ダニ類又はカビ類の検出又は識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−35773(P2008−35773A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213552(P2006−213552)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】