説明

ハニカム構造体の目封止用マスク、目封止装置、目封止方法、及び製造方法

【課題】製造時間を短縮することにより製造コストを削減し、産業廃棄物の排出を抑制して目封止ハニカム構造体を得ることができるハニカム構造体の目封止用マスク、目封止装置、目封止方法、及び製造方法を提供する。
【解決手段】目封止装置10は、ハニカム構造体31のセル33の一方の開口端部と他方の開口端部とに互い違いに目封止部34を形成するための原料となるスラリーを貯留する貯留部11と、その貯留部11の上面側にマスク部1と、ハニカム構造体31をマスク部1に載置した後にセル33へスラリーを流入させるスラリー流入機構16と、を備える。マスク部1は、ハニカム構造体31の一部のセル33の開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部2と、残余のセル33の開口に対応するように開口し、スラリーを残余のセル33に流入させるための複数の開口部3と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体のセルの開口端部に目封止部を形成するためのハニカム構造体の目封止用マスク、目封止装置、目封止方法、及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、ボイラー等の排気ガス中の微粒子や有害物質は、環境への影響を考慮して排気ガス中から除去する必要性が高まっている。特に、ディーゼルエンジンから排出される微粒子(以下、PMということがある)の除去に関する規制は欧米、日本国内ともに強化される方向にあり、PMを除去するための捕集フィルタにハニカム構造体が用いられている。
【0003】
このような目的で使用されるフィルタとしては、多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、隔壁によって流体の流路となる複数のセルが区画形成されたハニカム構造体と、複数のセルの一方の開口端部及び他方の開口端部を互い違いに目封止する目封止部とを備えた目封止ハニカム構造体を利用したハニカムフィルタが挙げられる。このようなハニカムフィルタによれば、排ガス流入側端面からセル内に排ガスG1を流入させることにより、排ガスG1が隔壁を通過する際に排ガス中のパティキュレートが隔壁に捕集されるため、パティキュレートが除去された浄化ガスG2を浄化ガス流出側端面から流出させることが可能となる。
【0004】
そして、上記のような目封止ハニカム構造体の製造方法として、例えば、ハニカム構造体(未焼成のセラミック乾燥体)の一方の端面に、粘着シート等を貼着し、画像処理を利用したレーザ加工等によりその粘着シート等の目封止すべきセル(目封止セル)に対応する部分のみに孔開けをしてマスクとし、そのマスクが貼着されたハニカム構造体の端面をスラリー(セラミックスラリー)中に浸漬し、ハニカム構造体の目封止セルにスラリーを充填して目封止部を形成し、これと同様の工程をハニカム構造体の他方の端面についても行った後、乾燥し、焼成することにより目封止ハニカム構造体を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2001−300922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように粘着シートに孔開けを行い、この粘着シートをマスクとしてスラリー中にハニカム構造体を浸漬する方法によれば、作業時間を要するため、コストアップの要因となっていた。また、ハニカム構造体1基片面当たり、1枚の粘着シートが必要であり、これが産業廃棄物として排出されていた。
【0007】
本発明の課題は、製造時間を短縮することにより製造コストを削減し、産業廃棄物の排出を抑制して目封止ハニカム構造体を得ることができるハニカム構造体の目封止用マスク、目封止装置、目封止方法、及び製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ハニカム構造体のセルの一方の開口端部にあてがった場合に、一部のセルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、残余のセルの開口に対応するように開口し、目封止部を形成するための原料となるスラリーを残余のセルに流入させて目封止部を形成する複数の開口部と、を有する目封止用マスクを利用することにより、上記課題を解決しうることを見いだした。すなわち、本発明により、以下のハニカム構造体の目封止用マスク、目封止装置、目封止方法、及び製造方法が提供される。
【0009】
[1] 多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセルを備えたハニカム構造体の前記セルの一方の開口端部にあてがった場合に、一部の前記セルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、残余の前記セルの開口に対応するように開口し、目封止部を形成するための原料となるスラリーを残余の前記セルに流入させて前記目封止部を形成するための複数の開口部と、を有するハニカム構造体の目封止用マスク。
【0010】
[2] 前記凸状嵌合部は、その先端が細くなる先細の凸状に形成された前記[1]に記載のハニカム構造体の目封止用マスク。
【0011】
[3] 前記凸状嵌合部は、その突出する方向に垂直な断面の断面形状が、前記ハニカム構造体の前記セルの前記開口の形状に嵌合する相似形に形成された前記[2]に記載のハニカム構造体の目封止用マスク。
【0012】
[4] 前記凸状嵌合部は、角錐状または円錐状に形成された前記[2]または[3]に記載のハニカム構造体の目封止用マスク。
【0013】
[5] 多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセルを備えたハニカム構造体の前記セルの一方の開口端部と他方の開口端部とに互い違いに目封止部を形成するための原料となるスラリーを貯留する貯留部と、その貯留部の上面側に、前記ハニカム構造体を載置することにより、前記ハニカム構造体の一部の前記セルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、前記貯留部の前記スラリーが流通するように前記ハニカム構造体の残余の前記セルに対応して開口した複数の開口部と、を有するマスク部と、前記ハニカム構造体を前記マスク部に載置した後に、前記貯留部内の前記スラリーを上面側に流動させて前記マスク部の前記開口部から流出させ、前記凸状嵌合部に嵌合していない残余の前記セルへ前記スラリーを流入させるスラリー流入機構と、を備えるハニカム構造体の目封止装置。
【0014】
[6] 前記スラリー流入機構は、前記貯留部の下面側に、前記貯留部の内周面に嵌合して摺動可能に構成されて前記貯留部内の前記スラリーを前記マスク部の前記開口部から流出させるピストン部を備える前記[5]に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【0015】
[7] 前記貯留部は、前記スラリーをその内部に供給するために流入させる流入口を有する前記[5]または[6]に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【0016】
[8] 前記凸状嵌合部は、その先端が細くなる先細の凸状に形成された前記[5]〜[7]のいずれかに記載のハニカム構造体の目封止装置。
【0017】
[9] 前記凸状嵌合部は、その突出する方向に垂直な断面の断面形状が、前記ハニカム構造体の前記セルの前記開口の形状に嵌合する相似形に形成された前記[8]に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【0018】
[10] 前記凸状嵌合部は、角錐状または円錐状に形成された前記[8]または[9]に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【0019】
[11] 多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセルを備えたハニカム構造体の前記セルの一方の開口端部に、一部の前記セルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、残余の前記セルに対応するように開口した複数の開口部と、を有する目封止用マスクをあてがって、目封止部を形成するための原料となるスラリーを残余の前記セルに流入させて、前記セルに前記目封止部を形成するハニカム構造体の目封止方法。
【0020】
[12] 前記ハニカム構造体の前記開口端部に水分を付与した後に、前記目封止用マスクをあてがって前記目封止部を形成する前記[11]に記載のハニカム構造体の目封止方法。
【0021】
[13] 前記ハニカム構造体の前記開口端部を撮像し、その画像を画像処理することにより前記ハニカム構造体と前記目封止用マスクとの位置決めを行う前記[11]または[12]に記載のハニカム構造体の目封止方法。
【0022】
[14] 多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセルを備えたハニカム構造体の前記セルの一方の開口端部に、一部の前記セルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、残余の前記セルに対応するように開口した複数の開口部と、を有する目封止用マスクをあてがって、目封止部を形成するための原料となるスラリーを残余の前記セルに流入させて、前記セルに前記目封止部を形成するハニカム構造体の製造方法。
【0023】
[15] 前記ハニカム構造体の前記開口端部に水分を付与した後に、前記目封止用マスクをあてがって前記目封止部を形成する前記[14]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【0024】
[16] 前記ハニカム構造体の前記開口端部を撮像し、その画像を画像処理することにより前記ハニカム構造体と前記目封止用マスクとの位置決めを行う前記[14]または[15]に記載のハニカム構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
ハニカム構造体のセルの一方の開口端部にあてがった場合に、一部のセルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、残余のセルの開口に対応するように開口した複数の開口部と、を有するハニカム構造体の目封止用マスクを用いることにより、開口部からスラリーをセル内に流入させて、目封止部を形成することができる。このようにすることにより、製造時間を短縮することができる。また、従来使用されていた粘着シートを必要としないため、産業廃棄物の排出を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0027】
図1に本発明のハニカム構造体31の目封止用マスク1の平面図を示す。目封止用マスク1は、多孔質の隔壁32によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセル33を備えたハニカム構造体31のセル33の一方の開口端部にあてがった場合に、一部のセル33の開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部2と、残余のセル33の開口に対応するように開口し、目封止部34を形成するための原料となるスラリーを残余のセル33に流入させて目封止部34を形成する複数の開口部3と、を有する。
【0028】
図2に目封止用マスク(以下、マスク部ともいう)1を備えたハニカム構造体31の目封止装置10の断面図を示す。ハニカム構造体31のセル33の一方の開口端部と他方の開口端部とに互い違いに目封止部34を形成するための原料となるスラリーを貯留する貯留部11と、その貯留部11の上面側にマスク部1と、ハニカム構造体31をマスク部1に載置した後にセル33へスラリーを流入させるスラリー流入機構16と、を備える。
【0029】
貯留部11は、例えば、円筒形に形成され、上部にマスク部1、下部にスラリー流入機構16を備えて、その内部にスラリーを貯留することができる。また、その壁面には、スラリーをその内部に供給するために流入させる流入口12が形成されている。流入口12には、スラリーを流入させる場合に開状態とし、マスク部1からスラリーを流出させる場合に閉状態とする開閉弁13が設けられている。
【0030】
マスク部1は、ハニカム構造体31を載置することにより、ハニカム構造体31の一部のセル33の開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部2と、貯留部11のスラリーが流通するようにハニカム構造体31の残余のセル33に対応して開口した複数の開口部3と、を有する。凸状嵌合部2は、ハニカム構造体31のセル33の開口に嵌合するように、その先端が細くなる先細の凸状に形成されている。また、凸状嵌合部2は、その突出する方向に垂直な断面の断面形状が、ハニカム構造体31のセル33の開口の形状に嵌合する相似形に形成されると、セル33と凸状嵌合部2との間に隙間ができず、余剰目封止の発生を抑制できる。さらに、具体的には、凸状嵌合部2は、目封止するハニカム構造体31のセル33の形状に合わせて角錐状または円錐状に形成されている。このため、後述するように、凸状嵌合部2に嵌合したセル33にスラリーが流入することを防ぐことができる。なお、角錐状とは、四角錐のみならず、セル33の開口の形状に合わせて、その開口に嵌合する形状であれば六角錐や八角錐等であってもよく、例えば、セル3の開口の形状が四角形であれば、凸状嵌合部2が、四角錐に形成されれば、その突出する方向に垂直な断面の断面形状がセル3の開口の形状と相似形の四角形となり、セル33に凸状嵌合部2を密着させることができる。
【0031】
一方、マスク部1の開口部3は、マスク部1の一方の第一面と、他方の第二面とを貫通する貫通孔として形成されている。開口部3は、図1では、円形状に形成されているが、スラリーが通過すればよいため、この形状に限定されない。
【0032】
マスク部1は、例えば、金属、具体的には、SUS等を利用して作製することができるが、これに限定されない。
【0033】
スラリー流入機構16は、ハニカム構造体31をマスク部1に載置した後に、貯留部11内のスラリーを上面側に流動させてマスク部1の開口部3から流出させ、凸状嵌合部2に嵌合していないセル33へスラリーを流入させる機能を有する。具体的には、本実施形態においては、スラリー流入機構16は、貯留部11の下面側に、貯留部11の内周面に嵌合して摺動可能に構成されて貯留部11内のスラリーをマスク部1の開口部3から流出させるピストン部を備えるように構成されている。なお、スラリー流入機構16は、ピストン部として構成する場合に限られず、例えば、図8に示すように、外部から圧力を印加してスラリーをマスク部1の開口部3から流出されられる構造であってもよい。
【0034】
図3〜図6を用いて本発明の目封止装置10を用いた目封止工程について説明する。適当な粘度に調整した坏土を所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形し、乾燥後、両端面を切断して平滑面とすることにより目封止前のハニカム構造体31を製造する。ハニカム構造体31は、多孔質の隔壁32によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる多数のセル33を有し、例えば、コージェライトにより形成される。
【0035】
一方、目封止部34を形成するために使用したスラリーは、例えば、セラミック粉末としてコージェライト粉末、結合剤としてメチルセルロース、解膠剤として高分子界面活性剤を用い、これらを混合したものに、分散媒として水を加えて混合し、そのスラリー粘度を10〜500Pa・s、好ましくは200Pa・s程度に調製する。そして、目封止装置10の流入口12から開閉弁13を開状態として貯留部11へ供給して貯留する。
【0036】
ハニカム構造体31(目封止部34を有していないもの)は、通常、セラミック坏土の押出成形により製造されるため、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等が一様ではなく、歪みを生じている場合がある。その場合、同一ピッチで作成した前述のマスク部1(目封止成形用金型)を用いた場合、開口部3、凸状嵌合部2と、目封止セル、非目封止セルの位置ずれが生じ、過剰目封止や目封止不足が発生する。この歪によるハニカム構造体31とマスク部1の位置ずれを解決するため、図3に示すように、ハニカム構造体31にスチーム発生装置41を用いて水分を付与し軟化させ、変形させる。この際付与させる水分量は1.5〜3.0g/端面とすることが好ましい。水分量が不足するとセル軟化が不十分で位置ずれが解消しない。また水分が過多の場合、過剰にセル33が軟化しスラリー導入時に隔壁破壊及び乾燥工程でのクラックが生じる。適正水分量を付与し、セル33が十分軟化した3〜10分後にスラリーを導入する。
【0037】
セル33にスラリーを導入するために、マスク部1の開口部3、凸状嵌合部2の位置を予め記憶しておき、図4に示すように、ハニカム構造体31の端面をCCDカメラ42等で撮像し、目封止セル、非目封止セル位置を検出し、マスク部1の開口部3、凸状嵌合部2に合うように位置決めする。このようにすると、正確に、短いタクトで量産することができる。
【0038】
そして、上記マスク部1を貯留部11(シリンダ)の上部に設置し貯留部11内部にはスラリーを充填した目封止装置10に、撮像による画像を画像処理することにより、図5のように、セル軟化させたハニカム構造体31をマスク部1の凸状嵌合部2に嵌合させることによって固定する。このとき、図6に示すように、凸状嵌合部2は、セル33に押し当てられ、ピストン部を摺動させることにより、ハニカム構造体31の一部のセル33にスラリーを流入させる。このとき、凸状嵌合部2に嵌合するセル33内には、スラリーが流入しないため、目封止部34が形成されない。この際、マスク部1にハニカム構造体31を押圧することにより、軟化したハニカム構造体31が変形し、開口部3、凸状嵌合部2と、目封止セル、非目封止セルの位置ずれが解消し、確実な目封止ができる。
【0039】
ピストン部を所望の目封止深さが得られる位置まで押圧することにより、目封止セルのみに上記スラリーを圧入させて目封止部34を形成した後、ハニカム構造体31を取り外し、これと同様の工程をハニカム構造体31の他方の端面についても行う。そして、これを乾燥し、焼成することにより、図7に示すように、多数のセル33の一方の開口端部と他方の開口端部とを互い違いに目封止する目封止部34を備えた目封止ハニカム構造体31を製造することができる。
【0040】
以上のように、マスク部1の凸形状部(凸状嵌合部2)の先端を細くすることで、歪を持つハニカム構造体31であっても、マスク部1に対する位置的なずれを修正し、適合させて密着させることが可能となる。また、ハニカム構造体31への水分付加によりセル33を軟化させてマスク部1にフィットさせることが可能となる。この場合、セル33の形状の歪み(例えば、円形の歪)のみならず、平面度のばらつきも許容して、ハニカム構造体31とマスク部1とを密着させることができる。その結果、目封止材の漏れを防ぎ、洗浄が不要となる。
【0041】
さらに、ピストン部の変位をサーボモーター等で制御すれば、連続的に目封止が可能であり、量産が可能となる。数10個から数100個目封止した後、開閉弁13を開け、貯留部11に目封止材を補充すれば、再度連続的に目封止することが可能である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例、比較例において使用するハニカム構造体31として、多孔質の隔壁32によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる多数のセル33を有するハニカム構造体31を用意した。このハニカム構造体31は、コージェライトからなり、底面形状が140mmφの円形、長さが152mmの円筒状であり、セル形状は四角形、隔壁厚さは0.4mm、セル密度は300個/平方インチのものであった。
【0044】
上記のハニカム構造体31は、適当な粘度に調整した坏土を上記セル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形し、乾燥後、両端面を切断して平滑面とすることにより製造した。以下の実施例、比較例においては、このハニカム構造体31の多数のセル33の一方の開口端部と他方の開口端部とに互い違いに目封止部34を形成することによって目封止ハニカム構造体31を製造した。
【0045】
なお、以下の実施例、比較例において、目封止部34を形成するために使用したスラリーは全て、セラミック粉末としてコージェライト粉末、結合剤としてメチルセルロース、解膠剤として高分子界面活性剤を用い、これらを混合したものに、分散媒として水を加えて50分間混合し、そのスラリー粘度を200Pa・sに調製したものとした。
【0046】
(実施例)
上記ハニカム構造体31のセルピッチは1.45mmであるが、マスク部1とする目封止部成形用金型は乾燥収縮を考慮し、1.40mmピッチで作製した。以下に目封止成形用金型の作製について説明する。マシニングセンタを用いて、SUS板(厚み5mm)の目封止セルに対応する位置に、1.40mmピッチで総セル数×1/2箇所φ0.8mmの貫通穴を開けた。その後、上記ハニカム構造体31の外周壁部に対応する円弧を、マシニングセンタを用い、内径φ137mm幅3mm深さ0.6mmで加工した。次に精密研削盤を用いてV形状砥石(先端0.4mm平坦部を持ち、先端角60度)にて1.40mmピッチで溝加工し、非目封止セルに対応する位置に四角錐状(底面部0.74mm×0.74mm、高さ0.64mm)の凸状嵌合部2を作製し、かつ隔壁に対応する溝(幅0.4mm)を作製し、目封止成型用金型を作製した。
【0047】
ハニカム構造体31(目封止部34を有していないもの)は、通常、セラミック坏土の押出成形により製造されるため、歪みを生じている場合があり、歪みによるハニカム構造体31と目封止成形用金型の位置ずれを解決するため、ハニカム構造体31にスチームを用いて水分を付与し軟化させ、変形させた。この際付与させる水分量は1.5〜3.0g/端面とした。適正水分量を付与し、セル33が十分軟化した3〜10分後に、以下のようにスラリーを導入した。
【0048】
すなわち、上記目封止成形用金型をシリンダ(貯留部11)の上部に設置してマスク部1とし、図2に示した目封止装置10を用いて目封止した。シリンダ内部にスラリーを充填し、セル軟化させたハニカム構造体31を目封止成形用金型(マスク部1)の凸状嵌合部2に嵌合させることによって固定した。ピストン部を所望の目封止深さが得られる位置まで押圧することにより、目封止セルのみに上記スラリーを圧入させて目封止部34を形成した後、ハニカム構造体31を取り外し、これと同様の工程をハニカム構造体31の他方の端面についても行った。これを乾燥し、焼成することにより、多数のセル33の一方の開口端部と他方の開口端部とを互い違いに目封止する目封止部34を備えた目封止ハニカム構造体31を製造した。
【0049】
(比較例(従来例))
上記ハニカム構造体31の一方の端面に、市販の粘着シート(ポリエステル製、厚さ0.05mm)を貼着した後、そのハニカム構造体31の一方の端面をCCDカメラにより撮像し、表面画像のデータを取得した。次いで、その表面画像データを二値化処理することにより、目封止すべきセル(目封止セル)及び目封止する必要がないセル(非目封止セル)の位置を特定した。更に、同じ表面画像データから、ハニカム構造体31の中心座標を算出した。そして、レーザ加工によりその粘着シートの目封止セルに対応する部分のみに孔開けをして目封止部形成用マスクを作製した(この状態において、その一方の端面における非目封止セルのみがマスクされた)。
【0050】
次いで、そのハニカム構造体31のマスクされた側の端面を、上記スラリーが貯留された貯留容器中に浸漬し、貯留容器の内底面に対して押圧することにより、目封止セルのみに上記スラリーを圧入させて目封止部34を形成した。これと同様の工程をハニカム構造体31の他方の端面についても行った後、乾燥し、焼成することにより、多数のセル33の一方の開口端部と他方の開口端部とを互い違いに目封止する目封止部34を備えた目封止ハニカム構造体31を製造した。
【0051】
上記の比較例、及び実施例ついて、マスク作製時間、マスク作製サイクル、作業時間(10基両面当たり)、産業廃棄物の有無、目封止部34形成具合を評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
(評価)
比較例の製造方法では、粘着シートの孔開けに1基片面当り3分を要し、10基両面当りの作業時間は60分であった。これに対し、実施例の製造方法では、マスク作製をハニカム構造体31の成形、仕上げ加工と同時に行ったため、実質的なマスク作製時間は0時間とみなすことができ、作業時間は1基片面21秒という短時間で作業できた。10基両面当りの作業時間は7分であり、比較例の製造方法と比較して、作業時間が大幅に短縮された。また比較例の製造方法では、1基片面当り粘着シート1枚の産業廃棄物が排出され、その廃棄コストが必要であるが、実施例の製造方法では、マスクを繰り返し使用ため、産業廃棄物の排出量は著しく減少し、廃棄コストについても削減することが可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係るハニカム構造体の目封止装置及び目封止方法は、触媒装置用の担体又はDPF等のフィルタとして用いられる目封止ハニカム構造体を作製する手段として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のハニカム構造体の目封止用マスクを示す平面図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の目封止装置を示す断面図である。
【図3】ハニカム構造体の目封止工程を説明する模式図である。
【図4】図3に続く、ハニカム構造体の目封止工程を説明する模式図である。
【図5】図4に続く、ハニカム構造体の目封止工程を説明する模式図である。
【図6】目封止工程を説明する拡大断面図である。
【図7】目封止部が形成されたハニカム構造体の断面図である。
【図8】本発明のハニカム構造体の目封止装置の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1:目封止用マスク(マスク部)、2:凸状嵌合部、3:開口部、10:目封止装置、11:貯留部、12:流入口、13:開閉弁、16:スラリー流入機構、31:ハニカム構造体、32:隔壁、33:セル、34:目封止部、41:スチーム、42:CCDカメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセルを備えたハニカム構造体の前記セルの一方の開口端部にあてがった場合に、一部の前記セルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、残余の前記セルの開口に対応するように開口し、目封止部を形成するための原料となるスラリーを残余の前記セルに流入させて前記目封止部を形成するための複数の開口部と、を有するハニカム構造体の目封止用マスク。
【請求項2】
前記凸状嵌合部は、その先端が細くなる先細の凸状に形成された請求項1に記載のハニカム構造体の目封止用マスク。
【請求項3】
前記凸状嵌合部は、その突出する方向に垂直な断面の断面形状が、前記ハニカム構造体の前記セルの前記開口の形状に嵌合する相似形に形成された請求項2に記載のハニカム構造体の目封止用マスク。
【請求項4】
前記凸状嵌合部は、角錐状または円錐状に形成された請求項2または3に記載のハニカム構造体の目封止用マスク。
【請求項5】
多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセルを備えたハニカム構造体の前記セルの一方の開口端部と他方の開口端部とに互い違いに目封止部を形成するための原料となるスラリーを貯留する貯留部と、
その貯留部の上面側に、前記ハニカム構造体を載置することにより、前記ハニカム構造体の一部の前記セルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、前記貯留部の前記スラリーが流通するように前記ハニカム構造体の残余の前記セルに対応して開口した複数の開口部と、を有するマスク部と、
前記ハニカム構造体を前記マスク部に載置した後に、前記貯留部内の前記スラリーを上面側に流動させて前記マスク部の前記開口部から流出させ、前記凸状嵌合部に嵌合していない残余の前記セルへ前記スラリーを流入させるスラリー流入機構と、
を備えるハニカム構造体の目封止装置。
【請求項6】
前記スラリー流入機構は、前記貯留部の下面側に、前記貯留部の内周面に嵌合して摺動可能に構成されて前記貯留部内の前記スラリーを前記マスク部の前記開口部から流出させるピストン部を備える請求項5に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【請求項7】
前記貯留部は、前記スラリーをその内部に供給するために流入させる流入口を有する請求項5または6に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【請求項8】
前記凸状嵌合部は、その先端が細くなる先細の凸状に形成された請求項5〜7のいずれか1項に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【請求項9】
前記凸状嵌合部は、その突出する方向に垂直な断面の断面形状が、前記ハニカム構造体の前記セルの前記開口の形状に嵌合する相似形に形成された請求項8に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【請求項10】
前記凸状嵌合部は、角錐状または円錐状に形成された請求項8または9に記載のハニカム構造体の目封止装置。
【請求項11】
多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセルを備えたハニカム構造体の前記セルの一方の開口端部に、
一部の前記セルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、残余の前記セルに対応するように開口した複数の開口部と、を有する目封止用マスクをあてがって、
目封止部を形成するための原料となるスラリーを残余の前記セルに流入させて、前記セルに前記目封止部を形成するハニカム構造体の目封止方法。
【請求項12】
前記ハニカム構造体の前記開口端部に水分を付与した後に、前記目封止用マスクをあてがって前記目封止部を形成する請求項11に記載のハニカム構造体の目封止方法。
【請求項13】
前記ハニカム構造体の前記開口端部を撮像し、その画像を画像処理することにより前記ハニカム構造体と前記目封止用マスクとの位置決めを行う請求項11または12に記載のハニカム構造体の目封止方法。
【請求項14】
多孔質の隔壁によってハニカム状に区画されることにより形成された、ガスの流路となる複数のセルを備えたハニカム構造体の前記セルの一方の開口端部に、
一部の前記セルの開口に嵌合するように形成された複数の凸状嵌合部と、残余の前記セルに対応するように開口した複数の開口部と、を有する目封止用マスクをあてがって、
目封止部を形成するための原料となるスラリーを残余の前記セルに流入させて、前記セルに前記目封止部を形成するハニカム構造体の製造方法。
【請求項15】
前記ハニカム構造体の前記開口端部に水分を付与した後に、前記目封止用マスクをあてがって前記目封止部を形成する請求項14に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項16】
前記ハニカム構造体の前記開口端部を撮像し、その画像を画像処理することにより前記ハニカム構造体と前記目封止用マスクとの位置決めを行う請求項14または15に記載のハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−6628(P2009−6628A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171653(P2007−171653)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】