説明

ハニカム構造体の製造装置

【課題】本発明は、ろう材の塗布量を減らすことができる排気ガス浄化用ハニカム構造体の製造装置を提供することを課題とする。
【解決手段】ハニカム構造体製造装置20は、平板に波板22を重ね、渦巻き状に巻いてなる排気ガス浄化用ハニカム構造体を製造するものである。ハニカム構造体製造装置20は、波板22に噛み合うギヤ形状の送りギヤ45と、この送りギヤ45で送られる波板22の移動方向に沿って上流側と下流側に送りギヤ45が配置される転写ギヤ40と、この転写ギヤ40にスラリー状のろう材を供給するスラリー供給手段61と、ろう材が塗布された波板22に平板が重ねられたものを渦巻き状に巻く巻取手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス浄化用ハニカム構造体の製造装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の平板と波板とを重ね合わせ巻回してなる排気ガス浄化用ハニカム構造体の製造装置が知られている(例えば、特許文献1(図2)参照。)。
【0003】
特許文献1の図2に示されるように、排気ガス浄化用ハニカム構造体の製造装置は、噛み合うように配置され波板(16)が通る一対のギヤ(18A、18A)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)と、これらの一対のギヤ(18A、18A)の歯底部(18a、18a)に設けられ波板(16)の頂部スラリー(19)を供給するスラリー供給手段(20A、20A)と、これらの一対のギヤ(18A、18A)の下流側に波板(16)と平板(15)とを重ね合わせ巻き回す巻回手段(17)と、を備えている。
【0004】
一対のギヤ(18A、18A)は駆動手段によって駆動される。これらの一対のギヤ(18A、18A)によって、波板(16)は、その頂部にスラリー(19)が塗布されると共に下流側に配置した巻回手段(17)へ送られる。
【0005】
特許文献1の技術では、スラリー(19)の塗布量は、波板の波の大きさ、板厚に無関係に決まる。従って、ハニカム構造体のセル数が多くなり、波板の波の大きさが細かくなった場合、波板の板厚を薄くすることはできるが、スラリー(19)の塗布量を減らすことができない。
波板の板厚を薄くした場合に、スラリーの塗布量(転写量)を減らすことができ、波板に均一で且つスピーデイに塗布することができる技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3811349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ろう材の塗布量を減らすことができる排気ガス浄化用ハニカム構造体の製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、金属製の平板に金属製の波板を重ね、渦巻き状に巻いてなる排気ガス浄化用ハニカム構造体を製造するためのハニカム構造体製造装置であって、波板の頂部にろう材を転写する転写ギヤと、この転写ギヤにスラリー状のろう材を供給するスラリー供給手段と、波板に噛み合うギヤ形状の送りギヤと、この送りギヤを駆動する駆動手段と、を備え、送りギヤは、波板の移動方向に沿って上流側と下流側のうちの少なくとも一方に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、転写ギヤと送りギヤの間で、転写ギヤと送りギヤとに噛み合う位置に波板を押さえる押さえギヤが備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、転写ギヤは、波板の外側面にろう材を塗布する第1転写ギヤと、波板の内側面にろう材を塗布する第2転写ギヤとを備え、第1転写ギヤと第2転写ギヤとは、互いに直接噛み合うことなく独立して配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、第1転写ギヤと第2転写ギヤとは、波板の一方の面と波板の他方の面とでろう材塗布位置が異なるように第1転写ギヤの軸方向又は第2転写ギヤの軸方向にオフセットされていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、転写ギヤの全てのギヤ溝にスラリー供給手段によりろう材が供給され、転写ギヤが一回転するときに、ギヤ溝は、波板の頂部に噛み合う溝と、波板の頂部に噛み合わない溝とからなることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、押さえギヤは、波板の移動方向に沿って、第1転写ギヤの上流側及び下流側に配置されると共に、第2転写ギヤの上流側及び下流側に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明では、転写ギヤと送りギヤは、波板への接触面が異なるように軸方向にオフセットされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、製造装置は、ろう材を波板に転写する転写ギヤと、この波板の移動方向に沿って転写ギヤの上流側と下流側のうちの少なくとも一方に配置され波板を送る送りギヤとを有する。
【0016】
従来、転写ギヤは、スラリー状のろう材を波板の頂部に転写するスラリー転写機能とこの波板を巻回手段へ送る波板送り機能とを有していた。転写ギヤにスラリー転写機能と波板送り機能とを併せもたせるために、転写ギヤのモジュールを大きくする必要があった。
【0017】
波板の板厚を薄くしたときに、転写ギヤのモジュールが大きいと、転写ギヤの歯底部のスペースが大きくなり、このスペースにスラリー状のろう材が収容される。そのため、波板に転写されるスラリー状のろう材の量を減らすことができなかった。
【0018】
この点、本発明では、スラリー状のろう材を転写する転写ギヤと、この転写ギヤとは別に波板を駆動して巻回手段へ送る送りギヤとを別個に設けた。転写ギヤで波板を駆動し送る必要がなくなるため、転写ギヤのモジュールを小さくすることができる。
【0019】
転写ギヤのモジュールが小さくなれば、転写ギヤの歯底のスペースが小さくなり、このスペースに収容されるスラリー状のろう材の量が少なくなる。スラリー状のろう材の量が少なくなれば、スラリーの転写量を減らすことができる。
また、波板を駆動して巻回手段に送る送りギヤを別個に設けたので、波板を円滑に駆動することができる。
この結果、波板の板厚を薄くしたときに、ろう材の転写量を減らすことができ、波板に均一に且つスピーデイに転写することができるハニカム構造体製造装置が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明では、転写ギヤと送りギヤの間にて転写ギヤと送りギヤとに噛み合う押さえギヤを設けた。波板は転写ギヤと押さえギヤの噛合い部分を通過する。そのため、波板を転写ギヤに密着させることができる。
【0021】
加えて、波板の板厚が薄くなり、波板が延び易くなったときでも、押さえギヤを設けたので、波板が転写ギヤから外れ難くなる。波板が転写ギヤから外れ難くなれば、波板の所定位置に正確にろう材を転写することができる。
【0022】
請求項3に係る発明では、第1転写ギヤと第2転写ギヤとは、互いに噛み合うことなく独立して配置されている。
このように互いに離間して配置されている第1転写ギヤと第2転写ギヤであれば、各ギヤの歯底に開けたスラリー吹出口のチェックがし易くなる等メンテナンス性を高めることができる。
【0023】
請求項4に係る発明では、第1転写ギヤと第2転写ギヤとは、ろう材転写位置が異なるように第1転写ギヤの軸方向又は第2転写ギヤの軸方向にオフセットされている。
ろう材転写位置が異なるように軸方向にオフセット配置されている第1転写ギヤと第2転写ギヤであれば、波板の両面に設けた頂部にろう材を千鳥状に転写することができる。
【0024】
請求項5に係る発明では、転写ギヤが一回転するときに、ギヤ溝は、波板の頂部に噛み合う溝と、波板の頂部に噛み合わない溝とからなる。
波板の板厚が薄くなり、波板が延ばされ、波板の頂部が転写ギヤから一時的に抜けて噛み合い位置に位相ずれが生じた場合であっても、全てのギヤ溝にろう材が供給されているため、ろう材の転写漏れが生ずる心配はない。
【0025】
請求項6に係る発明では、押さえギヤは、第1転写ギヤ及び第2転写ギヤの各々前後に配置される。
波板の一方の面にろう材が転写される直前に波板と転写ギヤとの密着度を高め、ろう材が転写された直後に波板と転写ギヤとの密着度を高めるようにした。
波板の一方の面にろう材転写される前後で波板と転写ギヤ間の密着度を高めたので、ろう材をより正確な位置に転写することができる。
【0026】
請求項7に係る発明では、転写ギヤと送りギヤは、波板への接触面が異なるように軸方向にオフセットされている。転写ギヤの下流側に送りギヤが配置されている場合であっても、波板に転写された転写面が損なわれる心配はない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るハニカム構造体製造装置で製造したハニカム構造体を金属外筒に圧入した排気ガス浄化用ハニカムユニットの斜視図である。
【図2】第1転写装置の平面図である。
【図3】第2転写装置の平面図である。
【図4】第2転写装置の側面図である。
【図5】図4の5(a)部拡大図及び図4の5(b)部拡大図である。
【図6】図4の6部拡大図である。
【図7】図4の7部拡大図である。
【図8】実施例及び比較例に係る転写ギヤの作用説明図である。
【図9】実施例及び比較例に係る波板に転写されたろう材を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0029】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、排気ガス浄化用ハニカムユニット10は、金属製のハニカム構造体11と、このハニカム構造体11の外周を囲む筒状の金属外筒12とからなる。金属製のハニカム構造体11は、本発明の製造装置により製造された部材であって、この金属製のハニカム構造体11が筒状の金属外筒12に圧入され、真空炉内で加熱されろう付け接合されたものである。
以下、金属製のハニカム構造体11の製造装置について詳細に説明する。
【0030】
先ず、ハニカム構造体製造装置の概要について説明する。
ハニカム構造体製造装置は、金属製の平板に金属製の波板を重ね、渦巻き状に巻いてなる排気ガス浄化用ハニカム構造体11を製造する装置である。
【0031】
ハニカム構造体製造装置は、平板をコイル状に巻したコイル材をほどいた平板を波板に加工する波付けギヤと、帯状の波板の向きを変える第1プーリギヤと、波板の移動方向であって、第1プーリギヤの下方に配置され波板の一方の面を構成する外側面の所定位置にろう材を転写する第1転写装置と、この第1転写装置の下流側で且つ下方に配置され、波板の他方の面を構成する内側面の所定位置にろう材を転写する第2転写装置と、この第2転写装置の下流側に配置され1つのハニカム構造体に必要な波板の巻き取り長さを確保する波板長さ確保装置と、この波板長さ確保装置の下流側に配置され供給された平板にろう材が転写された波板を重ねる重ね用プーリと、この重ね用プーリの下流側に配置され転写装置によりろう材が転写された波板に平板が重ねられたものを渦巻き状に巻く巻取手段とを備えている。
【0032】
第1転写装置に、波板の一方の面にろう材を転写する第1転写ギヤが備えられ、第2転写装置に、波板の他方の面にろう材を転写する第2転写ギヤが備えられる。
第1転写ギヤと第2転写ギヤとは、互いに噛み合うことなく独立して配置されている。
【0033】
次に、第1転写装置の概要を説明する。
図2に示すように、装置を上方から見たときに、第1転写装置31は、上方から下方に流れてくる波板22の向きを略90°変え図上下方向下向きから左右方向左向きへ波板22を向けると共にこの波板22を駆動して波板22の移動方向に沿って配置した第1転写ギヤ41へ送る第1送りギヤ43と、この第1送りギヤ43の下流側に配置され波板の一方の面22aにろう材を転写する第1転写ギヤ41と、この第1転写ギヤ41の波板流れ方向の上流側及び下流側に各々配置される第1押さえギヤ47及び第2押さえギヤ48とを有する。第1押さえギヤ47と第2押さえギヤ48とから押さえギヤ46が構成される。
【0034】
第1送りギヤ43は、波板22に噛み合う第1送り歯面43aと第2送り歯面43bとを有する。第1送りギヤ43に、この第1送りギヤ43を駆動する第1送りギヤ駆動手段51が設けられている。また、第1転写ギヤ41に、第1転写ギヤ41を駆動する第1転写ギヤ駆動手段53が設けられている。第1転写ギヤ駆動手段53と第1送りギヤ駆動手段51とはコントローラ54に接続され、このコントローラ54によって同期回転するようにした。
【0035】
第1送りギヤ43で矢印a方向に送られた波板の一方の面22aに第1転写ギヤ41でろう材が転写される。第1転写ギヤ41は、ろう材を転写する第1転写歯面41aと第2転写歯面41bとを有する。
波板の一方の面22aに、第1転写歯面41aで転写された第1転写部71が形成され、第2転写歯面41bで転写された第2転写部72が形成される。
【0036】
第2押さえギヤ48は、波板の第1転写部71と第2転写部72を避ける位置に押さえ歯面48aを有する。第1転写部71と第2転写部72を避ける位置に押さえ歯面48aを配置したので、転写面が乱れる心配はない。なお、この第2押さえギヤ48は、波板22を水平方向から下方に向きを変える機能も兼ね備えている。
【0037】
次に、第2転写装置の概要を説明する。
図3に示すように、装置を上方から見たときに、第2転写装置32は、上方から下方に流れる波板22の向きを略90°変え図上下方向下向きから左右方向右向きへ波板22を向けると共にこの波板22を駆動し波板の移動方向に沿って配置した第2転写ギヤ42へ波板22を送る第1送りギヤ43と、この第1送りギヤ43の下流側に配置され波板の他方の面22bにろう材を転写する第2転写ギヤ42と、この第2転写ギヤ42の前後に各々配置される第1押さえギヤ47及び第2押さえギヤ48からなる押さえギヤ46と、この押さえギヤ46の下流側に配置される第2送りギヤ44とからなる。
【0038】
第1送りギヤ43及び第2送りギヤ44に、これら第1送りギヤ43及び第2送りギヤ44を駆動する駆動手段51、52が各々設けられている。また、第2転写ギヤ42に、第2転写ギヤ42を駆動する転写ギヤ駆動手段56が設けられている。転写ギヤ駆動手段56と第1及び第2の送りギヤ駆動手段51、52はコントローラ55に接続され、このコントローラ55によって同期回転するようにした。
【0039】
第1送りギヤ43で矢印b方向に送られた波板の他方の面22bに第2転写ギヤ42でろう材が転写される。第2転写ギヤ42は、ろう材を転写する第3転写歯面42aと第4転写歯面42bとを有する。波板の他方の面22bには、第3転写歯面42aで転写された第3転写部73が形成され、第4転写歯面42bで転写された第4転写部74が形成される。
【0040】
第1送りギヤ43には、第1送り歯面43aと第2送り歯面43bとが配置されている。また、第1押さえギヤ47に、波板の第1転写部71と第2転写部72を避ける位置に押さえ歯面47aが設けられている。第1転写部71と第2転写部72を避ける位置に押さえ歯面47aを配置したので、転写面が乱れる心配はない。
【0041】
第2転写ギヤ42は、波板の他方の面であって、第1転写部71と第2転写部72から転写ギヤの軸方向にオフセットした位置にろう材を転写して、第3転写部73と第4転写部74とを形成する。
【0042】
第2押さえギヤ48には、波板の第1転写部71と第2転写部72を避ける位置に押さえ歯面48aが形成されている。第1転写部71及び第2転写部72を避ける位置に押さえ歯面48aを配置したので、転写面が乱れる心配はない。
【0043】
また、第2送りギヤ44には、第3転写部73と第4転写部74を避ける位置に送り歯面44aが形成されている。このように、第3転写部73と第4転写部74を避ける位置に送り歯面44aを配置したので、転写面が乱れる心配はない。
【0044】
図2及び図3を併せて参照して、第1転写ギヤ41と第2転写ギヤ42とは、波板の一方の面22aと波板の他方の面22bとでろう材転写位置が異なるように、第1転写歯面41a、第2転写歯面41bは第1転写ギヤ41の軸方向にオフセットされ、第3転写歯面42a、第4転写歯面42bは第2転写ギヤ42の軸方向にオフセットされている。
【0045】
以下図4〜8において、第2転写装置の構造及びその作用について詳細に説明する。
図4に示すように、第2転写装置32は、波板22の移動方向に沿って図左から右に波板に噛み合うギヤ形状の第1送りギヤ43が配置され、この第1送りギヤ43の下流側に第1押さえギヤ47が配置され、この第1押さえギヤ47の下流側に第2転写ギヤ42が配置され、この第2転写ギヤ42の下流側に第2押さえギヤ48が配置され、この第2押さえギヤ48の下流側に波板22に噛み合うギヤ形状の第2送りギヤ44が配置されている。第1送りギヤ43及び第2送りギヤ44は各々駆動手段(図3、符号51、52)にて駆動される。
【0046】
すなわち、押さえギヤ46を構成する第1押さえギヤ47と第2押さえギヤ48は、各々、波板22の移動方向に沿って、第1転写ギヤ41の上流側及び下流側に配置されると共に、第2転写ギヤ42の上流側及び下流側に配置されている。
【0047】
転写ギヤ40は、第1送りギヤ43及び第2送りギヤ44で送られる波板22の移動方向に沿って上流側と下流側に配置した第1送りギヤ43及び第2送りギヤ44の間に配置され、第1送りギヤ43及び第2送りギヤ44のモジュールを2以上の整数で除したモジュールを有する。この転写ギヤ40にスラリー状のろう材を供給するスラリー供給手段61が転写ギヤ40に付設されている。
【0048】
なお、本実施例では、転写ギヤの上流側及び下流側に送りギヤを設けたが、前述した第1転写装置のように転写ギヤの上流側のみに送りギヤを設けても良い。あるいは、転写ギヤの下流側のみに送りギヤを設けることは差し支えない。
【0049】
第2転写ギヤ42と第1送りギヤ43との間で、第2転写ギヤ42と第1送りギヤ43とに噛み合う位置に波板22を押さえる第1押さえギヤ47が備えられている。同様に、第2転写ギヤ42と第2送りギヤ44との間で、第2転写ギヤ42と第2送りギヤ44とに噛み合う位置に波板22を押さえる第2押さえギヤ48が備えられている。
【0050】
押さえギヤ46は、波板22の移動方向に沿って、第1転写ギヤ41の上流側及び下流側に配置されると共に、第2転写ギヤ42の上流側及び下流側に配置されている。
なお、第1転写装置31は、第2転写装置と較べて、波板の流れる方向が反対になっているために装置の向きが異なる点、前述した各転写部が重なることを避けるため歯面の位置が異なる点及び第2送りギヤを省いた点が異なっている以外には大きな相違点はなく説明を省略する。
以下説明では、構造が同一の第1転写ギヤ41と第2転写ギヤ42をまとめて転写ギヤ40と云うこととする。
【0051】
次に、送りギヤのピッチと転写ギヤのピッチとを比較する。
図5(a)に送りギヤ43が示され、図5(b)に転写ギヤ40が示されている。送りギヤ43のピッチをPとするとき、転写ギヤ40のピッチはP/4となるように設定されている。図4に戻って、送りギヤ46の各歯に波板が噛み合っている。
【0052】
次に、押さえギヤに波板が噛み合い密着した状態を説明する。
図6に示すように、押さえギヤ46の歯先67に波板の頂部75が合い、押さえギヤ46の歯底77に波板の他方の頂部76が合うようにして、押さえギヤ46に波板22が噛み合っている。
【0053】
次に、転写ギヤに充填したろう材を波板の頂部に転写する状態を説明する。
図7に示すように、波板22は押さえギヤ46の歯面に密着している。転写ギヤ駆動手段(図3、符号56)によって駆動される転写ギヤ40が回動し、この転写ギヤ40の回動と共に押さえギヤ46が回動し、波板の頂部75に転写ギヤ40のギヤ溝69に充填したろう材62が転写される。
転写ギヤ40が一回転するときに、ギヤ溝69は、波板の頂部76に噛み合う溝(ギヤ溝81)と、波板の頂部76に噛み合わない溝(ギヤ溝82)とからなる。
次の回転では、一回転目で波板の頂部76に噛み合わなかった溝に波板の頂部76が噛み合う。つまり、一回転ごとに波板の頂部76に噛み合う溝がずれるようになっている。
【0054】
図4を併せて参照して、転写ギヤ40と送りギヤ45の間にて、転写ギヤ40と送りギヤ45とに噛み合う押さえギヤ46を設けた。波板22は転写ギヤ40と押さえギヤ46の噛合い部分を通過する。そのため、波板22を転写ギヤ40に密着させることができる。
【0055】
加えて、波板22の板厚が薄くなり、波板が延び易くなったときでも、押さえギヤ46を設けたので、押さえギヤ46に波板22が密着し、波板22が転写ギヤ40から外れ難くなる。波板22が転写ギヤ40から外れ難くなれば、波板22の所定位置に正確にろう材62を転写することができる。
【0056】
以上に述べたハニカム構造体製造装置の作用を次に述べる。
図8(a)に示すように、実施例では、製造装置20は、ろう材62を波板22に転写する転写ギヤ40を有する。図4を併せて参照して、製造装置20には、波板22の移動方向に沿って転写ギヤ40の上流側及び下流側に配置され波板22を送る送りギヤが備えられている。
【0057】
図8(b)に示すように、比較例では、製造装置20Bは、ろう材の両面に噛み合うように配置した転写ギヤ40B、40Bを備えている。転写ギヤ40B、40Bは、スラリー状のろう材を波板22の頂部に転写するスラリー転写機能とこの波板22を巻回手段へ送る波板送り機能と併せもつものであった。転写ギヤ40B、40Bにスラリー転写機能と波板送り機能とを併せもたせるためには、転写ギヤ40B、40Bのモジュールを大きくする必要があった。
【0058】
波板22の板厚を薄くしたときに、転写ギヤ40B、40Bのモジュールが大きいと、転写ギヤ40B、40Bの歯底部のスペースが大きくなり、このスペースにスラリー状のろう材62が収容される。そのため、波板に転写されるスラリー状のろう材62の量を減らすことができなかった。
【0059】
図8(a)及び図4を併せて参照して、本発明では、スラリー状のろう材62を転写する転写ギヤ40と、この転写ギヤ40とは別に波板22を駆動して巻回手段へ送る送りギヤ45とを別個に設けた。転写ギヤ40で波板22を駆動し送る必要がなくなるため、転写ギヤ40のモジュールを小さくすることができる。
【0060】
転写ギヤ40のモジュールが小さくなれば、転写ギヤ40の歯底のスペースが小さくなり、このスペースに収容されるスラリー状のろう材62の量が少なくなる。スラリー状のろう材62の量が少なくなれば、ろう材の転写量を減らすことができる。
また、波板22を駆動して巻回手段(巻取手段)に送る送りギヤ45を別個に設けたので、波板22を円滑に駆動し巻取手段に送ることができる。
【0061】
加えて、転写ギヤ40のモジュールは、送りギヤ45のモジュールを2以上の整数で除したものにした。本実施例では、転写ギヤ40と送りギヤ45のピッチ円直径が同一であって、転写ギヤ40の歯数は、送りギヤ45の歯数の4倍であるから、転写ギヤ40のモジュールは、送りギヤ45のモジュールの1/4となり歯底のスペースは小さくなる。転写ギヤのモジュールを小さくする一方、送りギヤ45のモジュールを大きくしたので、波板22を確実に送ることができる。
【0062】
次に、本発明に係る装置で転写したろう材の量と比較例に係る装置で転写したろう材の量とを比較する。
図9(a)に示すように、実施例では、転写ギヤ40のモジュールを送りギヤ45のモジュールよりも小さくしたので、ろう材62の転写量を少なくすることができる。
【0063】
図9(b)に示すように、比較例では、転写ギヤにろう材転写機能に加えて送り機能をもたせたので、転写ギヤ40のモジュールを小さくすることには制約があった。転写ギヤ40のモジュールが小さくならなければ、歯底のスペースを小さくすることができず、歯底に充填されるろう材62Bの量が多くなる。
図9(a)に戻って、本発明では、ろう材62の転写量を減らすことができるので、波板22に均一に且つスピーデイに転写することができるようになる。
【0064】
波板の一方の面及び他方の面にろう材を転写する第1転写ギヤ41と第2転写ギヤ42とは、互いに噛み合うことなく独立して配置されている。
このように互いに離間して配置されている第1転写ギヤ41と第2転写ギヤ42であれば、各ギヤの歯底に開けたスラリー吹出口のチェックがし易くなる等メンテナンス性を高めることができる。
【0065】
図2及び図3に戻って、第1転写ギヤ41に設けた第1転写歯面41a、第2転写歯面41bと第2転写ギヤ42に設けた第3転写歯面42a、第4転写歯面42bとは、ろう材転写位置が異なるように第1転写ギヤの軸方向又は第2転写ギヤの軸方向にオフセットされている。
ろう材転写位置が異なるように軸方向にオフセット配置されている第1転写ギヤ41と第2転写ギヤ42であれば、波板22の両面に設けた頂部にろう材を千鳥状に転写することができる。
【0066】
第1転写装置31に備えられている第1転写ギヤ41の各々前後に押さえギヤ46が配置されている。このため、波板の一方の面22aにろう材転写される前後で波板22と転写ギヤ40間の密着度を高めたので、ろう材をより正確な位置に転写することができる。
【0067】
図4に戻って、押さえギヤ46は、第2転写ギヤ42の各々前後に配置される。
波板の他方の面22bにろう材(図8(a)、符号62)が転写される直前に波板22と転写ギヤ40との密着度を高め、ろう材62が転写された直後に波板22と転写ギヤ40との密着度を高めるようにした。
波板の他方の面22bにろう材転写される前後で波板22と転写ギヤ40間の密着度を高めたので、ろう材62をより正確な位置に転写することができる。
【0068】
尚、請求項1では、押さえギヤを省くことは差し支えない。
請求項2では、第1転写ギヤと前記第2転写ギヤとを互いに噛み合うように配置することは差し支えない。
【0069】
請求項3では、1転写ギヤと前記第2転写ギヤとは、波板の一方の面と波板の他方の面とでろう材転写位置が第1転写ギヤの軸方向又は第2転写ギヤの軸方向で同一となるようにすることは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、排気ガス浄化用ハニカム構造体の製造手段に好適である。
【符号の説明】
【0071】
11…排気ガス浄化用ハニカム構造体、20…ハニカム構造体製造装置、21…平板、22…波板、22a…波板の一方の面(外側面)、22b…波板の他方の面(内側面)、40…転写ギヤ、41…第1転写ギヤ、42…第2転写ギヤ、45…送りギヤ、46…押さえギヤ、50…駆動手段、61…スラリー供給手段、69…ギヤ溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の平板(21)に金属製の波板(22)を重ね、渦巻き状に巻いてなる排気ガス浄化用ハニカム構造体(11)を製造するためのハニカム構造体製造装置であって、
前記波板(22)の頂部にろう材を転写する転写ギヤ(40)と、
この転写ギヤ(40)にスラリー状のろう材を供給するスラリー供給手段(61)と、
前記波板(22)に噛み合うギヤ形状の送りギヤ(45)と、この送りギヤ(45)を駆動する駆動手段(50)と、を備え、
前記送りギヤ(45)は、前記波板(22)の移動方向に沿って前記転写ギヤ(40)の上流側と下流側のうちの少なくとも一方に配置されることを特徴とするハニカム構造体製造装置。
【請求項2】
前記転写ギヤ(40)と前記送りギヤ(45)の間で、前記転写ギヤ(40)と前記送りギヤ(45)とに噛み合う位置に前記波板(22)を押さえる押さえギヤ(46)が備えられていることを特徴とする請求項1記載のハニカム構造体製造装置。
【請求項3】
前記転写ギヤ(40)は、前記波板の外側面(22a)にろう材を塗布する第1転写ギヤ(41)と、前記波板の内側面(22b)にろう材を塗布する第2転写ギヤ(42)とを備え、
前記第1転写ギヤ(41)と前記第2転写ギヤ(42)とは、互いに直接噛み合うことなく独立して配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のハニカム構造体製造装置。
【請求項4】
前記第1転写ギヤ(41)と前記第2転写ギヤ(42)とは、前記波板の外側面(22a)と前記波板の内側面(22b)とでろう材塗布位置が異なるように前記第1転写ギヤ(41)の軸方向又は前記第2転写ギヤ(42)の軸方向にオフセットされていることを特徴とする請求項3記載のハニカム構造体製造装置。
【請求項5】
前記転写ギヤ(40)の全てのギヤ溝(69)に前記スラリー供給手段(61)によりろう材が供給され、
前記転写ギヤ(40)が一回転するときに、前記ギヤ溝(69)は、前記波板(22)の頂部に噛み合う溝と、前記波板(22)の頂部に噛み合わない溝とからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のハニカム構造体製造装置。
【請求項6】
前記押さえギヤ(46)は、前記波板(22)の移動方向に沿って、前記第1転写ギヤ(41)の上流側及び下流側に配置されると共に、前記第2転写ギヤ(42)の上流側及び下流側に配置されていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載のハニカム構造体製造装置。
【請求項7】
前記転写ギヤ(40)と前記送りギヤ(45)は、前記波板(22)への接触面が異なるように軸方向にオフセットされていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のハニカム構造体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−213684(P2012−213684A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79456(P2011−79456)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(591003312)合志技研工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】