説明

ハニカム構造体及び接合型ハニカム構造体

【課題】アイソスタティック強度に優れるハニカム構造体を提供する。
【解決手段】流体の流路となる複数のセル1を区画形成する多孔質の隔壁2と最外周に位置する外周壁3とを有し、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止された第1のセル1aと、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口された第2のセル1bとが交互に配設され、中心軸に直交する断面において第1のセル1aの面積が第2のセル1bの面積より大きく、中心軸に直交する断面において、外周形状の重心Oから、重心Oから外周壁3までの距離の50%の距離の位置より内側の領域を中心部11とし、中心部11の外側の領域を外周部12としたときに、外周部12における最外周から少なくとも1セルを形成する隔壁の厚さが中心部11の隔壁厚さの1.1〜3.0倍であるハニカム構造体100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体及び接合型ハニカム構造体に関し、さらに詳しくは、アイソスタティック強度に優れるハニカム構造体及び接合型ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用される触媒装置用の担体、又はフィルタとして、耐熱性、耐食性に優れるセラミック製のハニカム構造体が採用されている。特に、近時では、ハニカム構造体は、両端面のセル開口部を交互に目封止して目封止ハニカム構造体とし、ディーゼル機関等から排出される粒子状物質(PM:パティキュレートマター)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)として盛んに用いられている。
【0003】
このようなDPFとして、排ガスの流入するセルの表面積を大きくして粒子状物質による閉塞を抑制し、粒子状物質の捕集量を増大させるため、中心軸に直交する断面において、一方の端部(排ガス流入側の端部)が開口し他方の端部が目封止された第1のセルの面積が、一方の端部(排ガス流入側の端部)が目封止され他方の端部が開口する第2のセルの面積より大きく形成されたハニカム構造体が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−896号公報
【特許文献2】特開昭56−124418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような、ハニカム構造体は、排ガス中の粒子状物質を多く捕集することができるが、セル構造が均一ではないためアイソスタティック強度が低いという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、アイソスタティック強度に優れるハニカム構造体及び接合型ハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のハニカム構造体及び接合型ハニカム構造体を提供する。
【0008】
[1] 流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有し、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止された第1のセルと、前記一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口された第2のセルとが交互に配設され、中心軸に直交する断面において前記第1のセルの面積が前記第2のセルの面積より大きく、中心軸に直交する断面において、外周形状の重心から、前記重心から外周壁までの距離の50%の距離の位置より内側の領域を中心部とし、前記中心部の外側の領域を外周部としたときに、前記外周部における最外周から少なくとも1セルを形成する前記隔壁の厚さが前記中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍であるハニカム構造体。
【0009】
[2] 前記ハニカム構造体の前記外周部における最外周から20セル以下のセルを形成する前記隔壁の厚さが前記中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍である[1]に記載のハニカム構造体。
【0010】
[3] [1]又は[2]に記載のハニカム構造体を複数個備え、前記複数個のハニカム構造体が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されると共に、前記対向する側面同士が接合部により接合された接合型ハニカム構造体。
【0011】
[4] 前記ハニカム構造体の前記外周壁が、前記第1のセルの外形に沿う部分が凸状に形成されると共に前記第2のセルの外形に沿う部分が凹状に形成された[3]に記載の接合型ハニカム構造体。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハニカム構造体によれば、外周部の隔壁厚さが中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍であるため、アイソスタティック強度を向上させることができる。また、本発明のハニカム構造体を複数個接合して形成される接合型ハニカム構造体においても、同様にアイソスタティック強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明のハニカム構造体の一の実施形態の一方の端面を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の接合型ハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図4A】本発明の接合型ハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【図4B】本発明の接合型ハニカム構造体の他の実施形態を構成するハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の接合型ハニカム構造体の他の実施形態の一方の端面の一部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1)ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、図1、図2に示すように、流体の流路となる複数のセル1を区画形成する多孔質の隔壁2と最外周に位置する外周壁3とを有し、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止された第1のセル1aと、一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口された第2のセル1bとが交互に配設され、中心軸に直交する断面において第1のセル1aの面積が第2のセル1bの面積より大きく、中心軸に直交する断面において、外周形状の重心Oから、「重心Oから外周壁3までの距離」の50%の距離の位置(重心から50%の位置13)より、内側の領域を中心部(中心領域)11とし、中心部11の外側の領域(重心から50%の位置13より外側の領域)を外周部(外周領域)12としたときに、外周部12における最外周から少なくとも1セルを形成する隔壁の厚さが中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍である。このように、外周部12における最外周から少なくとも1セルを形成する隔壁の厚さが中心部11の隔壁厚さの1.1〜3.0倍であるため、アイソスタティック強度を向上させることができる。図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の一方の端面を模式的に示す平面図である。
【0016】
本実施形態のハニカム構造体100においては、外周部における最外周から(中心方向に向かって)少なくとも1セルを形成する隔壁の厚さが中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍であり、1.4〜2.3倍が好ましい。外周部の隔壁厚さが中心部の隔壁厚さの1.1倍より薄いと、アイソスタティック強度をあまり向上させることができない。外周部の隔壁厚さが中心部の隔壁厚さの3.0倍より厚いと、排ガスを浄化するときに圧力損失が上昇するため好ましくない。また、ハニカム構造体の外周部における最外周から(中心方向に向かって)20セル以下のセルを形成する隔壁の厚さが、中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍であることが好ましい。また、外周部における厚い隔壁(中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍の厚さの隔壁)は、外周部を構成する隔壁全体であってもよいし、外周部を構成する隔壁の一部であってもよい。外周部における厚い隔壁が外周部を構成する隔壁の一部である場合、外周部を構成する残りの隔壁の厚さは、特に限定されないが、中心部の隔壁厚さと同じであることが好ましい。尚、ハニカム構造体の最外周からセルの個数を数えるときは、最外周においてハニカム構造体の外周形状の影響によりセル形状の一部が欠けたような不完全な形状のセルを除いてセルの個数を数える。
【0017】
本実施形態のハニカム構造体は、中心軸に直交する断面において第1のセル1aの面積(第1のセルの断面積)が第2のセル1bの面積(第2のセルの断面積)より大きいものである。そして、第1のセル1aの開口端部側(一方の端部側)から排ガスを流入させ、多孔質の隔壁2を透過させて、第2のセル1bの開口端部側(他方の端部側)から排ガスを排出することにより、第1のセル1a内部の表面積の大きな隔壁2表面に排ガス中の粒子状物質を捕集することができるため、粒子状物質による流入側セルの閉塞を抑制することができるのである。そして、本実施形態のハニカム構造体を構成するハニカムセグメントにおいて、第1のセルの断面積は、第2のセルの断面積に対して、120〜300%であることが好ましく、140〜250%であることが更に好ましい。第1のセルの断面積が第2のセルの断面積の120%より小さい場合は、流入側セル(第1のセル)の閉塞防止効果が低下することがあり、第1のセルの断面積が第2のセルの断面積の300%より大きい場合は、流出側のセル(第2のセル)の断面積が小さくなるため、圧力損失が大きくなることがある。尚、第1のセルの一方の端部及び第2のセルの一方の端部は、いずれもハニカム構造体100の一方の端面4側に位置するものであり、第1のセルの他方の端部及び第2のセルの他方の端部は、いずれもハニカム構造体100の他方の端面5側に位置するものである。
【0018】
また、本実施形態のハニカム構造体100においては、中心軸に直交する断面において、第1のセルの幅W1(図5を参照)が0.8〜3mmであることが好ましい。また、第2のセルの幅W2(図5を参照)が0.7〜2.8mmであることが好ましい。
【0019】
本実施形態のハニカム構造体の材料(隔壁及び外周壁の材料)としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れることより、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。これらの中でも、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料が特に好ましい。
【0020】
本実施形態のハニカム構造体(隔壁及び外周壁)は、多孔質であることが好ましい。ハニカム構造体の気孔率は30〜80%であり、40〜65%であることが好ましい。気孔率をこのような範囲とすることにより、強度を維持しながら圧力損失を小さくすることができる。気孔率が30%未満であると、圧力損失が上昇することがある。気孔率が80%を超えると、強度が低下したり、熱伝導率が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0021】
本実施形態のハニカム構造体(隔壁及び外周壁)は、平均細孔径が5〜50μmであることが好ましく、7〜35μmであることが更に好ましい。平均細孔径をこのような範囲とすることにより、粒子状物質(PM)を効果的に捕集することができる。平均細孔径が5μm未満であると、粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすくなることがある。平均細孔径が50μmを超えると、粒子状物質(PM)がフィルターに捕集されず通過することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0022】
また、ハニカム構造体のセル密度は、特に制限されないが、0.9〜311セル/cmであることが好ましく、7.8〜62セル/cmであることが更に好ましい。
【0023】
本実施形態のハニカム構造体のセル形状(ハニカム構造体の中心軸方向(セルが延びる方向)に対して垂直な断面におけるセル形状)としては、特に制限はなく、第1のセル及び第2のセルのいずれについても、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。これらの中でも、図2に示すように、断面積の大きい第1のセル1aが八角形で、断面積の小さい第2のセル1bが四角形であることが好ましい。また、第1のセルが角部がR状に丸く形成された四角形で、第2のセルが四角形であることも好ましい。
【0024】
本実施形態のハニカム構造体の大きさは、特に限定されないが、例えば、底面が正方形の筒形状の場合、底面の一辺の長さが15〜450mmであることが好ましく、25〜350mmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜450mmであることが好ましく、100〜350mmであることが更に好ましい。
【0025】
本実施形態のハニカム構造体は、図1、図2に示すように、ハニカムセグメント4の、第2のセルの一方の端部と、第1のセルの他方の端部とに目封止部を有し、第1のセルと第2のセルとが、ハニカムセグメントの端面に市松模様が形成されるように、交互に配置されている。また、後述する接合型ハニカム構造体と同じように、焼成後、外周部分を切削して所望の形状にした後、外周コート部を配設しても良い。
【0026】
(2)接合型ハニカム構造体:
(2−1)接合型ハニカム構造体の一の実施形態;
本発明の接合型ハニカム構造体の一の実施形態は、上記本発明のハニカム構造体の一実施形態(ハニカム構造体100)を複数個備え、複数個のハニカム構造体100が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されると共に、対向する側面同士が接合部21により接合されたものである。このように、本実施形態の接合型ハニカム構造体200は、複数のハニカム構造体100を接合部21により接合して形成されているため、耐熱衝撃性に優れたものである。図3は、本発明の接合型ハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0027】
また、本実施形態の接合型ハニカム構造体の中心軸方向に直交する断面において、配置されているハニカム構造体の個数は、4〜144個であることが好ましく、16〜100個であることが更に好ましい。接合型ハニカム構造体を構成するハニカム構造体の大きさは、中心軸に直交する断面の面積が3〜16cmであることが好ましく、7〜13cmであることが更に好ましい。3cmより小さいと、ハニカム構造体にガスが流通するときの圧力損失が大きくなることがあり、16cmより大きいと、ハニカム構造体の破損防止効果が小さくなることがある。
【0028】
本実施形態の接合型ハニカム構造体200を構成する接合部21は、隣接するハニカム構造体100間に配置され、ハニカム構造体100が接合部21により接合されている。接合部21は、隣接するハニカム構造体100の対向する側面の全体に配置されることが好ましい。接合部21の材質は、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したスラリー等が好ましい。
【0029】
本実施形態の接合型ハニカム構造体は、図3に示すように、複数個のハニカム構造体100全体を取り囲むように形成された外周コート部22を備えることが好ましい。外周コート部22を備えることにより、外形形状の真円度が向上する等の効果を奏する。本実施形態の接合型ハニカム構造体の外周コート部22の厚さは、0.1〜4.0mmであることが好ましく、0.3〜1.0mmであることが更に好ましい。0.1mmより薄いと、外周コートを行うときにクラックが発生し易くなることがある。4.0mmより厚いと、圧力上昇することがある。外周コート部の厚さというときは、外周コート部の外周面から、最も近い位置にあるセルまでの距離をいう。
【0030】
本実施形態の接合型ハニカム構造体の全体の形状は特に限定されず、例えば、円筒形状、オーバル形状等所望の形状とすることができる。また、接合型ハニカム構造体の大きさは、例えば、円筒形状の場合、底面の直径が50〜450mmであることが好ましく、100〜350mmであることが更に好ましい。また、接合型ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜450mmであることが好ましく、100〜350mmであることが更に好ましい。
【0031】
(2−2)接合型ハニカム構造体の他の実施形態;
本発明の接合型ハニカム構造体の他の実施形態は、図4A、図4B、図5に示すように、本発明のハニカム構造体(ハニカム構造体110)の外周壁3が、第1のセル1aの外形に沿う部分(凸状部3a)が凸状に形成されると共に第2のセル1bの外形に沿う部分(凹状部3b)が凹状に形成されたものである。他の構成は、上記本発明の接合型ハニカム構造体の一の実施形態と同様である。図4Aは、本発明の接合型ハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す斜視図である。図4Bは、本発明の接合型ハニカム構造体の他の実施形態を構成するハニカム構造体の一方の端面を模式的に示す平面図である。図5は、本発明の接合型ハニカム構造体の他の実施形態の一方の端面の一部を模式的に示す平面図である。尚、図5においては、接合部は省略されている。
【0032】
本実施形態の接合型ハニカム構造体300は、このように構成されているため、ハニカム構造体110と接合部との接触面積が大きくなり、捕集した粒子状物質を燃焼する操作(再生)を繰り返したときに、ハニカム構造体と接合部とが剥がれることを防止することができる。
【0033】
本実施形態の接合型ハニカム構造体300においては、ハニカム構造体110の外周壁3の凹状に形成された部分(凹状部3b)を基準にして外周壁3の凸状に形成された部分(凸状部3a)の高さH(図5を参照)が0.1〜1.0mmであることが好ましい。凸状部3aの高さHをこのような範囲とすることにより、ハニカム構造体110と接合部との接合強度をより強くすることが可能となる。凸状部3aの高さHが、0.1mmより小さいと、ハニカム構造体110と接合部との接合強度を強くする効果が低下することがあり、凸状部3aの高さHが1.0mmより大きいと、成形及び焼成時におけるハニカム構造体の変形等に特に注意を要するため、生産性が低下することがある。
【0034】
また、本実施形態の接合型ハニカム構造体300においては、隣接するハニカム構造体の対向する一対の外周壁において、一方の外周壁の凹状に形成された部分(凹状部)から、他方の外周壁の凹状に形成された部分(凹状部)までの距離(凹状部3b,3b間の距離)D2が、0.3〜3.0mmであることが好ましい。D2が、0.3mmより短いと、複数のハニカム構造体110を組み立てて接合型ハニカム構造体300を形成するときに、接合材の厚さを制御し難いため生産性が低下することがある。D2が、3.0mmより長いと、複数のハニカム構造体110を組み立てて接合型ハニカム構造体300を形成するときに、接合材の厚さを制御し難いため生産性が低下することがあり、更に圧力損失が上昇傾向になることがある。「一方の外周壁の凹状に形成された部分から、他方の外周壁の凹状に形成された部分までの距離D2」は、一方の外周壁の凹状に形成された部分から、他方の外周壁の凹状に形成された部分に垂線をひいたときの当該垂線の長さである。従って、一方の外周壁の凹状に形成された部分と、他方の外周壁の凹状に形成された部分とが対向せずに、ずれた位置に配置された場合にも、一方の外周壁の凹状に形成された部分の延長線上に、他方の外周壁の凹状に形成された部分から垂線を下ろしたときの当該垂線の長さになる。
【0035】
また、本実施形態の接合型ハニカム構造体300においては、隣接するハニカム構造体110の対向する一対の外周壁3,3において、凸状部3a,3a間の距離D1が0.1〜1.0mmであることが好ましい。凸状部3a,3a間の距離D1が、0.1mmより短いと、再生時の応力により接合部が変形し、外周壁同士が衝突することがあり、1.0mmより長いと、ハニカム構造体に排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。「凸状部3a,3a間の距離」は、一方の外周壁の凸状部から、他方の外周壁の凸状部に垂線をひいたときの当該垂線の長さである。また、凹状部3b,3b間の距離(凹状部3b,3b間の距離)D2は、D1に、Hを2倍した値を加えた値である。
【0036】
本実施形態の接合型ハニカム構造体300は、図5に示すように、隣接するハニカム構造体110において、凸状部同士が対向するとともに、凹状部同士が対向している。本発明の接合型ハニカム構造体は、このように、隣接するハニカム構造体110の凸状部同士、及び凹状部同士が対向することが好ましいが、隣接するハニカム構造体110の凸状部3aと凹状部3bとが対向するように形成されることも好ましい態様である。
【0037】
また、第1のセルと第2のセルとの間に位置する隔壁の厚さ(隔壁厚さ)t1(図5を参照)は、傾斜隔壁の厚さt2(図5を参照)以下の厚さであることが好ましく、t2より薄いことが更に好ましい。「傾斜隔壁」とは、図5に示すように、ハニカム構造体110の中心軸に直交する断面において、第1のセルと第2のセルとが交互に並ぶ方向に対して傾斜した方向に延びる隔壁であり、第2のセルの対角線の延長上に位置し、当該対角線を延長した方向に延びる隔壁である。図5に示すハニカム構造体においては、傾斜隔壁は、第1のセルと第2のセルとが交互に並ぶ方向に対して45°傾斜した方向に延びている。隔壁厚さt1は、0.075〜1.5mmであることが好ましい。また、傾斜隔壁の厚さt2は、0.09〜1.6mmであることが好ましい。
【0038】
また、凸状部3aの隔壁(外周壁)厚さT1は、隔壁厚さt1以上の厚さであることが好ましく、t1より厚いことが更に好ましい。また、凹状部3bの隔壁(外周壁)厚さT2は、隔壁厚さt1以上の厚さであることが好ましく、t1より厚いことが更に好ましい。また、外周傾斜隔壁の厚さT3は、傾斜隔壁の厚さt2以上の厚さであることが好ましく、t2より厚いことが更に好ましい。「外周傾斜隔壁」とは、図5に示すように、ハニカム構造体110の中心軸に直交する断面において、外周壁3の中で、第1のセルと第2のセルとが交互に並ぶ方向に対して傾斜した方向に延びる隔壁である。換言すれば、外周壁3の中で、凸状部3aの隔壁(外周壁)と凹状部3bの隔壁(外周壁)とを斜め(凸状部3aの隔壁及び凹状部3bの隔壁の延びる方向に対して斜め)に繋ぐ隔壁である。凸状部3aの隔壁厚さT1は、0.2〜1.5mmであることが好ましい。また、凹状部3bの隔壁厚さT2は、0.2〜1.5mmであることが好ましい。また、外周傾斜隔壁の厚さT3は、0.2〜1.5mmであることが好ましい。
【0039】
(3)ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の一実施形態の製造方法について説明する。
【0040】
まず、セラミック原料にバインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料とする。セラミック原料としては、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、コージェライト、ムライト、アルミナ、スピネル、炭化珪素−コージェライト系複合材料、リチウムアルミニウムシリケート、チタン酸アルミニウム、鉄−クロム−アルミニウム系合金からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、炭化珪素又は珪素−炭化珪素系複合材料が好ましい。珪素−炭化珪素系複合材料とする場合、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末を混合したものをセラミック原料とする。セラミック原料の含有量は、成形原料全体に対して30〜90質量%であることが好ましい。
【0041】
セラミック原料が炭化珪素である場合、炭化珪素粒子の平均粒径が5〜100μmであることが好ましい。このような平均粒径とすることにより、フィルターに好適な気孔率、気孔径に制御しやすいという利点がある。平均粒径が5μmより小さいと、気孔径が小さくなり過ぎ、100μmより大きいと気孔率が大きくなり過ぎる。気孔径が小さ過ぎると粒子状物質(PM)により目詰まりを起こしやすくなることがあり、気孔率が大き過ぎると圧力損失が上昇することがある。原料の平均粒径は、JIS R 1629に準拠して測定した値である。
【0042】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜20質量%であることが好ましい。
【0043】
水の含有量は、成形原料全体に対して5〜50質量%であることが好ましい。
【0044】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して0〜5質量%であることが好ましい。
【0045】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して0〜20質量%であることが好ましい。
【0046】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0047】
次に、坏土を押出成形して、図4Bに示すハニカム構造体(目封止部を除く)のような形状のハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有し、中心軸方向に直交する断面において面積の大きな第1のセルと面積の小さな第2のセルとが交互に並び、外周壁が、第1のセルの外形に沿う部分(凸状部)が凸状に形成されると共に第2のセルの外形に沿う部分(凹状部)が凹状に形成された構造である。また、図1、図2に示すように外周が平面状で底面の形状が四角形のハニカム構造体でも良い。底面の形状は、筒状でも楕円状でも良いことは言うまでもない。
【0048】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0049】
得られたハニカム成形体について、焼成前に乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜90質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0050】
次に、ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0051】
次に、ハニカム成形体を焼成して、ハニカム焼成体を作製することが好ましい。焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1300〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。
【0052】
次に、得られたハニカム焼成体の、中心軸に直交する断面における面積の小さい第2のセルの一方の端部と、中心軸に直交する断面における面積の大きい第1のセルの他方の端部とに目封止を施し(目封止部を形成し)、目封止ハニカム焼成体を作製することが好ましい。目封止部を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。ハニカム焼成体の一方の端面にシートを貼り付けた後、当該シートの目封止部を形成しようとするセル(第2のセル)に対応した位置に穴を開ける。そして、目封止部の構成材料をスラリー化した目封止用スラリーに、ハニカム焼成体の当該シートを貼り付けた端面に浸漬し、シートに開けた孔を通じて、目封止部を形成しようとするセル(第2のセル)の開口端部内に目封止用スラリーを充填する。そして、ハニカム焼成体の他方の端面については、一方の端面において目封止を施さなかったセル(第1のセル)について、上記一方の端面に目封止部を形成した方法と同様の方法で目封止部を形成する(目封止スラリーを充填する)。目封止部の構成材料としては、ハニカム成形体の材料と同じものを用いることが好ましい。目封止部を形成した後に、上記焼成条件と同様の条件で焼成を行うことが好ましい。また、目封止部の形成は、ハニカム成形体を焼成する前に行ってもよい。
【0053】
そして、得られた目封止ハニカム焼成体を乾燥、焼成することにより、目封止部を乾燥、焼成し、ハニカム構造体を得ることが好ましい。目封止ハニカム焼成体の乾燥、焼成条件は、上記ハニカム成形体の乾燥、焼成条件と同様であることが好ましい。得られたハニカム構造体の隔壁厚さ等の条件は、上記本発明のハニカム構造体の一の実施形態における隔壁厚さ等の条件と同じであることが好ましい。
【0054】
(4)接合型ハニカム構造体の製造方法:
次に接合型ハニカム構造体の一の実施形態の製造方法について説明する。
【0055】
上記ハニカム構造体の製造方法によりハニカム構造体を複数個作製する。そして、所定数のハニカム構造体を接合材で接合して、複数個のハニカム構造体が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されると共に、対向する側面同士が接合部により接合されたハニカムセグメント接合体を形成する。このハニカムセグメント接合体を最終的に得られる接合型ハニカム構造体としてもよい。ここで、図4A、図4B、図5に示すような本発明の接合型ハニカム構造体の他の実施形態(接合型ハニカム構造体300)を作製する場合には、ハニカム構造体を作製するときに、口金形状を、図4Bに示すハニカム構造体110(目封止部を除く)のような形状のハニカム成形体が得られるような形状にすることが好ましい。
【0056】
接合部は、対向する側面全体に配設されることが好ましい。接合部は、ハニカムセグメントが熱膨張、熱収縮したときに、体積変化分を緩衝する(吸収する)役割を果たすとともに、各ハニカムセグメントを接合する役割を果たす。
【0057】
接合材をハニカムセグメントの側面に塗布する方法は、特に限定されず、刷毛塗り等の方法を用いることができる。
【0058】
接合材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したスラリー等を挙げることができる。
【0059】
次に、ハニカムセグメント接合体の外周部分を切削して、所望の形状にすることが好ましい。そして、その後に、外周コート処理を行い、最外周に外周コート部が配設された接合型ハニカム構造体を得ることが好ましい。
【0060】
外周コート処理としては、外周コート材をハニカムセグメント接合体の最外周に塗布して、乾燥させる方法を挙げることができる。外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤、水等を混合したもの等を用いることができる。それぞれの原料の含有量は、上記接合材の原料の含有量の好ましい範囲と同様の範囲が好ましい。また、外周コート材を塗布する方法は、特に限定されず、ハニカム構造体をろくろ上で回転させながらゴムへら等でコーティングする方法等を挙げることができる。
【0061】
例えば、図3に示す接合型ハニカム構造体200を製造する場合には、16個の四角柱状のハニカム構造体を接合してハニカムセグメント接合体を作製し、ハニカムセグメント接合体の外周を切削して円柱状のハニカムセグメント接合体とし、外周コート部を配設してハニカム構造体200としている。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
セラミックス原料として、SiC粉、金属Si粉を80:20の質量割合で混合し、これに、成形助材としてメチルセルロース及びヒドロキシプロポキシメチルセルロース、造孔材として澱粉と吸水性樹脂、界面活性剤及び水を添加して混練し、真空土練機により四角柱状の坏土を作製した。
【0064】
得られた四角柱状の坏土を押出成形機を用いて、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁2と最外周に位置する外周壁とを有し、中心軸方向に直交する断面において面積の大きな第1のセルと面積の小さな第2のセルとが交互に並び、外周壁が、平面状のハニカム成形体を形成した。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断した。
【0065】
得られたハニカム成形体を、熱風乾燥機を用いて120℃で5時間乾燥し、その後、大気雰囲気にて脱臭装置付き大気炉を用いて約450℃で5時間かけて脱脂し、その後、Ar不活性雰囲気にて約1450℃で5時間焼成して、SiC結晶粒子がSiで結合された、多孔質のハニカム焼成体を得た。ハニカム焼成体の平均細孔径は13μmであり、気孔率は41%であった。平均細孔径及び気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0066】
得られたハニカム焼成体について、第2のセルの一方の端部と、第1のセルの他方の端部とに目封止部を形成した。目封止用の充填材には、ハニカム成形体と同様の材料を用いた。ハニカム焼成体に目封止部を形成した後に、上記焼成条件と同じ条件でハニカム焼成体を焼成し、ハニカム構造体を形成した。得られたハニカム構造体は、底面が正方形で一辺の長さが144mm、中心軸方向長さが155mmであった。また、中心部における、第1のセルの幅W1は1.24mmであり、第2のセルの幅W2は0.92mmで、第1のセルの断面積は第2のセルの断面積の1.75倍であった。また、中心部の隔壁厚さtは0.38mmであり、外周部における1セルの隔壁厚さTは0.418mmであった。尚、外周部において、肉厚にしない隔壁は、中心部の隔壁と同じ厚さとした。ここで、「外周部における1セルの隔壁厚さT」とは、ハニカム構造体の最外周に位置する完全セル1つを形成する隔壁厚さをいう。なお、完全セルとは、外周部においてハニカム構造体の外周形状の影響によりセル形状の一部が欠けたような不完全な形状のセルではなく、セル形状が完全に維持されているセルのことをいう。このように、隔壁厚さを厚くすることは、押出成形における口金の構造、具体的には坏土が押し出されてくるスリットの幅を変えることにより可能である。
【0067】
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、「アイソスタティック強度(アイソ強度)」、「圧力損失」及び「再生限界値」の評価を行った。結果を表1に示す。尚、表1の「アイソスタティック強度」、「再生限界値」及び「圧力損失」の欄は、実施例1〜23、比較例2については、比較例1についての結果を基準として比較例1に対する増減を示し、実施例24〜28については、比較例3についての結果を基準として比較例3に対する増減を示し、実施例29〜33については、比較例4についての結果を基準として比較例4に対する増減を示している。
【0068】
(アイソスタティック強度)
社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505−87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定した。
【0069】
(圧力損失)
特開2005−172652号公報に記載の「フィルタの圧力損失測定装置」を用いて、ハニカム構造体の圧力損失を測定した。測定条件としては、流体の流量を10Nm/分とし、実験時温度を25℃とした。
【0070】
(再生限界値)
ハニカム構造体をDPFとして用い、順次、煤の堆積量を増加させて、再生(煤の燃焼)を行い、クラックが発生する限界を確認する。先ず、得られたハニカム構造体の外周に、保持材としてセラミック製非熱膨張性マットを巻き、SUS409製のキャニング用缶体に押し込んで、キャニング構造体とする。その後、ディーゼル燃料(軽油)の燃焼により発生させた煤を含む燃焼ガスを、ハニカム構造体の第1セルが開口する側の端面(一の端面)より流入させ、他の端面より流出させることによって、煤をハニカム構造体内に堆積させる。そして、一旦、室温まで冷却した後、ハニカム構造体の上記一の端面より、680℃で一定割合の酸素を含む燃焼ガスを流入させ、ハニカム構造体の圧力損失が低下したときに燃焼ガスの流量を減少させることによって、煤を急燃焼させ、その後の目封止ハニカム構造体におけるクラックの発生の有無を確認する。この試験は、煤の堆積量がハニカム構造体の容積1リットル当り4g(以下4g/リットル等と表記)から始め、クラックの発生が認められるまで、0.5(g/リットル)ずつ増加して、繰り返し行う。各ハニカム構造体について、再生限界値(初期クラック発生時の煤量)(g/リットル)の測定結果(各ハニカム構造体をそれぞれ5個について(N=5)測定した時の平均値)から求めた。
【0071】
(加熱振動試験)
入口ガス温度を900℃、振動加速度を50G、振動周波数を200Hzとし、排ガス浄化装置に加熱した排気ガスを流入させながら、ハニカム構造体の軸方向に、排ガスによる振動を与えた。評価は、300時間後の「ハニカム構造体」の移動量(ずれた量)が、0.2mm未満の場合に「◎」、0.2〜0.4mmの場合に「○」、0.4〜0.6mm(0.4mmを含まず)の場合に「△」とした。300時間後の当接面の移動量が、0.6mm以下であれば実用上問題ないが、0.4mm以下が好ましい。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
(実施例2〜28、比較例1〜3)
第1のセルの幅W1、第2のセルの幅W2、中心部の隔壁厚さt、外周部の隔壁厚さT、外周厚肉部のセル数を表1,2に示すように変えた以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。実施例1の場合と同様にして、「アイソスタティック強度(アイソ強度)」、「圧力損失」及び「再生限界値」の評価を行った。結果を表1,2に示す。なお、「外周厚肉部のセル数」とは、ハニカム構造体の最外周のセルの一部が欠けた不完全セルを除いて、隔壁を肉厚としたセルの数をいう。隔壁を肉厚としたセル(肉厚の隔壁により形成されたセル)の数は、最外周のセルから中心に向かって連続して並ぶセルの数である。即ち、外周厚肉部のセル数が4とは、最外周の不完全セルを除き、これにハニカム構造体の最外周から中心に向けて連なる4セルを形成する隔壁が全周に亘り厚さTになっていることをいう。
【0075】
(実施例29)
実施例1の方法で正方形で一辺が36mmのハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体を、4個×4個の並びになるようにして、それぞれの側面同士を接合材で接合し、ハニカムセグメント接合体を得た。接合材としては、アルミノシリケート無機繊維とSiC粒子との混合物を用いた。なお、個々のハニカム構造体について外周厚肉部のセル数が3であった。
【0076】
得られたハニカムセグメント接合体の外周を研削して円筒状に形成した。その後、外周コート処理を行い、ハニカムセグメント接合体の最外周に外周コート部を配設し、図3に示すような構造の直径144mm、中心軸方向長さが155mmの接合型ハニカム構造体を作製した。外周コート材としては無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤、水を混合したものを用いた。得られた接合型ハニカム構造体において、ハニカム構造体間の距離は0.5mmであった。表2においては、D1、D2の欄に示している。また、ハニカム構造体の外周壁の厚さは0.38mmであった。表2においては、T1、T2の欄に示している。得られた接合型ハニカム構造体について、実施例1の場合と同様にして、「アイソスタティック強度(アイソ強度)」、「圧力損失」及び「再生限界」の評価を行い、上記方法で、「加熱振動試験」を行った。結果を表2に示す。
【0077】
(実施例30〜33)
外周壁の形状を、図4Bに示すように、第1のセルの外形に沿う部分が凸状に形成されると共に第2のセルの外形に沿う部分が凹状に形成された形状とした以外は実施例29と同様にしてハニカム構造体を作製した。ハニカム構造体を作製した後は、実施例29と同様にして接合型ハニカム構造体を作製した。得られた接合型ハニカム構造体の、外周壁の凸状部の高さH(凹状部を基準にした凸状部の高さH)は、0.16mmであった。また、凸状部間の距離D1、凹状部間の距離D2、凸状部の隔壁厚さT1、凹状部の隔壁厚さT2は表2の通りであった。得られた接合型ハニカム構造体について、実施例29の場合と同様にして、「アイソスタティック強度(アイソ強度)」、「圧力損失」、「再生限界」及び「加熱振動試験」の評価を行った。結果を表2に示す。
【0078】
(比較例4)
ハニカム構造体の隔壁厚さを0.38mmで均一にした以外は、実施例29と同様にして接合型ハニカム構造体を作製した。得られた接合型ハニカム構造体について、実施例29の場合と同様にして、「アイソスタティック強度(アイソ強度)」、「圧力損失」、「再生限界」及び「加熱振動試験」の評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
表1,2より、実施例1〜28のハニカム構造体は、アイソスタティック強度、圧力損失及び再生限界の各評価について良好な結果であることがわかる。特に、アイソスタティック強度の評価において良好な結果を示している。また、実施例29〜33の接合型ハニカム構造体は、アイソスタティック強度、圧力損失、再生限界及び加熱振動試験の各評価について良好な結果であることがわかる。特に、アイソスタティック強度の評価において良好な結果を示している。また、実施例30〜33の接合型ハニカム構造体は、加熱振動試験の評価結果が特に良好であった。これに対し、比較例1〜3のハニカム構造体及び比較例4の接合型ハニカム構造体は、外周部の隔壁の厚さが薄いため、アイソスタティック強度に劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のハニカム構造体の製造方法は、化学、電力、鉄鋼等の様々な分野において、環境対策や特定物資の回収等のために使用されるフィルタ又は触媒装置用の担体として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1:セル、1a:第1のセル、1b:第2のセル、2:隔壁、3:外周壁、3a:凸状部、3b:凹状部、4:一方の端面、5:他方の端面、6:目封止部、11:中心部、12:外周部、13:重心から50%の位置、21:接合部、22:外周コート部、100,110:ハニカム構造体、200,300:接合型ハニカム構造体、O:重心、H:凸状部の高さ、D1:凸状部間の距離、D2:凹状部間の距離、W1:第1のセルの幅、W2:第2のセルの幅、t1:隔壁厚さ、t2:傾斜隔壁の厚さ、T1:凸状部の隔壁厚さ、T2:凹状部の隔壁厚さ、T3:外周傾斜隔壁の厚さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有し、一方の端部が開口され且つ他方の端部が目封止された第1のセルと、前記一方の端部が目封止され且つ他方の端部が開口された第2のセルとが交互に配設され、中心軸に直交する断面において前記第1のセルの面積が前記第2のセルの面積より大きく、
中心軸に直交する断面において、外周形状の重心から、前記重心から外周壁までの距離の50%の距離の位置より内側の領域を中心部とし、前記中心部の外側の領域を外周部としたときに、前記外周部における最外周から少なくとも1セルを形成する前記隔壁の厚さが前記中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍であるハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカム構造体の前記外周部における最外周から20セル以下のセルを形成する前記隔壁の厚さが前記中心部の隔壁厚さの1.1〜3.0倍である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のハニカム構造体を複数個備え、
前記複数個のハニカム構造体が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置されると共に、前記対向する側面同士が接合部により接合された接合型ハニカム構造体。
【請求項4】
前記ハニカム構造体の前記外周壁が、前記第1のセルの外形に沿う部分が凸状に形成されると共に前記第2のセルの外形に沿う部分が凹状に形成された請求項3に記載の接合型ハニカム構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−229909(P2010−229909A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79068(P2009−79068)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】