ハニカム構造体梱包用トレー
【課題】輸送中の振動によるハニカム構造体の損傷を効果的に防止できるとともに、多くの部材を使用せず低コストで作業性良くハニカム構造体の梱包が可能なハニカム構造体梱包用トレーを提供する。
【解決手段】複数の柱状のハニカム構造体をまとめて梱包する際に用いられるハニカム構造体梱包用トレーであって、10%ひずみ時の圧縮強度が0.1〜110kPaの材料からなり、前記ハニカム構造体の端部が嵌合する凹部5を有する複数の皿状のシート3と、プレート状を呈し、少なくともその片面にシート3が嵌合する凹部を複数有する土台7とを備えるハニカム構造体梱包用トレー1。
【解決手段】複数の柱状のハニカム構造体をまとめて梱包する際に用いられるハニカム構造体梱包用トレーであって、10%ひずみ時の圧縮強度が0.1〜110kPaの材料からなり、前記ハニカム構造体の端部が嵌合する凹部5を有する複数の皿状のシート3と、プレート状を呈し、少なくともその片面にシート3が嵌合する凹部を複数有する土台7とを備えるハニカム構造体梱包用トレー1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のハニカム構造体をまとめて梱包する際に、当該ハニカム構造体を支持し、固定するために用いるハニカム構造体梱包用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスを浄化するための触媒やフィルタとして、柱状のハニカム構造体が使用されている。このようなハニカム構造体を、製品として出荷する際には、輸送し易く、傷つけずに保管できるように、梱包がなされる。
【0003】
従来、ハニカム構造体を梱包するための梱包体として、特許文献1に示すような、プレート状を呈し、ハニカム構造体の端部を収容する複数の凹部(ポケット)が形成されたトレーを具備したものが知られている。このような構造を有するトレーを、ハニカム構造体の上下に配し、ハニカム構造体の上側の端部と下側の端部とが、それぞれトレーの凹部に収まるようにすることで、ハニカム構造体が支持、固定される。
【0004】
ところで、このような従来のハニカム構造体用梱包体に用いられていたトレーは、ハニカム構造体の端部を収容する複数の凹部と、それら凹部間を繋いでいる土台部分とが同材料で一体的に形成されたものであり、一般に、その構成材料には、トレー全体としての剛性等を考慮して、プラスチック材料が用いられている。
【0005】
そして、トレーの凹部の径は、梱包作業時にハニカム構造体の端部が収まり易いように、ハニカム構造体の端部の径に対し、ある程度余裕を持たせた径としているが、トレーの凹部の径とハニカム構造体の端部の径とに差があり、トレーの凹部の内周面とその凹部に収容されたハニカム構造体の端部の外周面とのクリアランスが大きいと、輸送中にハニカム構造体が動きやすく、損傷が発生しやすい。
【0006】
具体的には、輸送中の振動により、ハニカム構造体が鉛直方向や水平方向に移動し、鉛直方向移動時にはトレーの凹部に収容されているハニカム構造体の端面外周部が凹部の内底面にぶつかり、また、水平方向移動時にはハニカム構造体の端面外周部が凹部の内周面にぶつかって、欠けが発生する。また、同じく輸送中の振動により、ハニカム構造体が軸回りに回転し、その際、トレーの凹部に収容されているハニカム構造体の端面外周部とトレーの凹部の内周面とが擦れて、削れが発生する。
【0007】
また、特許文献1に開示された従来の梱包体は、トレーの他に、浅箱状のトレーパックや保護部材等を用いるため、梱包に要するコストが高くなるとともに、梱包作業の工数も多くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/093631号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、輸送中の振動によるハニカム構造体の損傷を効果的に防止できるとともに、多くの部材を使用せず低コストで作業性良くハニカム構造体の梱包が可能なハニカム構造体梱包用トレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下のハニカム構造体梱包用トレーが提供される。
【0011】
[1] 複数の柱状のハニカム構造体をまとめて梱包する際に用いられるハニカム構造体梱包用トレーであって、10%ひずみ時の圧縮強度が0.1〜110kPaの材料からなり、前記ハニカム構造体の端部が嵌合する凹部を有する複数の皿状のシートと、プレート状を呈し、少なくともその片面に前記シートが嵌合する凹部を複数有する土台とを備えるハニカム構造体梱包用トレー。
【0012】
[2] 前記土台が、その両面に前記シートが嵌合する凹部を複数有するものである[1]に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【0013】
[3] 前記シートとして、質量が1.45kgで、セルの端面開口部を除いた端面面積が0.008m2であるハニカム構造体の端面との摩擦係数が0.30〜1.00の材料からなるものを用いた[1]又は[2]に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【0014】
[4] 前記シートが、発泡樹脂、ゴム及びパルプからなる群より選択された何れか一種の材料にて構成される[1]〜[3]の何れかに記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【0015】
[5] 前記土台が、段ボール、ゴム、プラスチック、木材及び金属からなる群より選択された何れか一種の材料にて構成される[1]〜[4]の何れかに記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハニカム構造体梱包用トレーは、全体が同材料から構成された一体形成品ではなく、ハニカム構造体の端部が嵌合される凹部を有する皿状のシートと、当該シートが装着されるプレート状の土台とを複合して構成される複合トレーであり、ハニカム構造体と直接接触するシートの構成材料に、特定の圧縮強度を有する発泡材料等の柔軟で、好ましくは摩擦係数が大きい材料を用いている。そのため、輸送中の振動により、ハニカム構造体が鉛直方向や水平方向に移動したり、軸回りに回転したりして、シートの凹部に収容されているハニカム構造体の端面外周部が、シートの凹部の内底面や内周面にぶつかったり、シートの凹部の内周面と擦れたりしても、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0017】
また、シートが柔軟で容易に変形できるため、シートの凹部の径とハニカム構造体の端部の径とに殆ど差が無くても、ハニカム構造体の端部がシートの凹部に収まり易い。したがって、シートの凹部の内周面とその凹部に収容されたハニカム構造体の端部の外周面とのクリアランスをほぼゼロにすることが可能となり、それによって、輸送時の振動をシートで吸収、緩和し、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体を抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0018】
また、シートが柔軟で容易に変形できるため、ハニカム構造体の端部がシートに沈み込むことが可能になり、それによって、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体を抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0019】
また、好適な態様として、シートの構成材料に、摩擦係数が大きい材料を用いているため、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体をより抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が一層発生しにくくなる。
【0020】
更に、ハニカム構造体の梱包は、基本的に本発明のハニカム構造体梱包用トレーのみでも行うことが可能であり、梱包に多くの部材を必要としないので、梱包に要する材料のコストを抑えるとともに、梱包作業の工数も少なくすることができる。なお、必要に応じて、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いて梱包したハニカム構造体を、更に外箱に収容したり、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いて梱包したハニカム構造体の周囲をフィルム状のもので巻いて、多段に積み上げられたハニカム構造体及びトレーにおける段同士の固定や、ハニカム構造体及びトレーと、梱包の際に台座として用いたパレットとの固定を強固にしたりすることもできる。
【0021】
また、前記のとおり、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートと土台とは、一体的に形成したものではなく、所定の圧縮強度を有する柔軟な材料は、ハニカム構造体と直接接触するシートのみに用いているため、トレー全体として必要な剛性は確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のハニカム構造体梱包用トレーの実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面概要図である。
【図3】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成する土台の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いてハニカム構造体を梱包した状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図9】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図11】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成する土台の作製方法の一例を示す分解斜視図である。
【図12】複数の段ボール板を積層して作製された土台の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1は本発明のハニカム構造体梱包用トレーの実施形態の一例を示す斜視図であり、図2は図1のA−A断面概要図である。図3は本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す斜視図であり、図4は本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成する土台の一例を示す斜視図である。また、図5は本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いてハニカム構造体を梱包した状態を示す概略断面図である。
【0025】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1は、被梱包体であるハニカム構造体の端部が嵌合する凹部5を有する複数の皿状のシート3と、プレート状を呈し、少なくともその片面にシート3が嵌合する凹部9を複数有する土台7とを備える。なお、図2の例では、凹部9が土台7の両面に設けられており、それら両面の凹部9にそれぞれシート3が嵌合されているが、後述するように、ハニカム構造体を梱包する際に、ハニカム構造体梱包用トレー1を配置する位置によっては、土台7の片面側の凹部9のみにシート3が嵌合される場合や、凹部9自体が土台7の片面にのみ設けられる場合もある。
【0026】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1において、皿状のシート3は、ハニカム構造体梱包時に、その凹部5に嵌合(収容)されるハニカム構造体11の端部と直接接触する部材である。本発明では、このシート3の構成材料として、10%ひずみ時の圧縮強度が0.1〜110kPa、好ましくは、1〜50kPaの材料を用いる。
【0027】
ここで、本発明における「10%ひずみ時の圧縮強度」の測定は、厚さ3mmの試料を、JIS B 7733に規定する圧縮試験機にかけ、ISO 3386−1に基づいた圧縮応力試験にて行うことができる。
【0028】
ハニカム構造体11の端部と直接接触するシート3の構成材料として、このような圧縮強度を持つ柔軟な材料を用いると、シート3がクッション効果を発揮し、輸送中の振動でハニカム構造体11が鉛直方向や水平方向に移動したり、軸回りに回転したりして、シート3の凹部5に収容されているハニカム構造体の端面外周部が、凹部5の内底面や内周面にぶつかったり、凹部5の内周面と擦れたりしても、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0029】
また、このような柔軟な材料から構成されたシート3は、容易に変形できるため、シート3の凹部5の径とハニカム構造体11の端部の径とに殆ど差が無くても、梱包時にハニカム構造体11の端部が凹部5に収まり易い。したがって、シート3の凹部5の内周面とその凹部5に収容されたハニカム構造体11の端部の外周面とのクリアランスをほぼゼロにすることが可能となり、それによって、輸送時の振動をシートで吸収、緩和し、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体を抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0030】
なお、シート3の凹部5の径は、梱包しようとするハニカム構造体11の端部の径に対し、1mm小さい径から2mm大きい径までの範囲とすることが好ましい。シート3の柔軟性により、シート3の凹部5の径がハニカム構造体11の端部の径より若干小さくても、ハニカム構造体11の端部をシート3の凹部5に収めることは可能であるが、シート3の凹部5の径が、梱包しようとするハニカム構造体11の端部の径に対して1mmを超えるほど小さいと、ハニカム構造体11の端部の凹部5への挿入や凹部5からの取り外しに支障を来す場合がある。また、シート3の凹部5の径が、梱包しようとするハニカム構造体11の端部の径に対して2mmを超えるほど大きいと、輸送時の振動でハニカム構造体11が移動してしまい、損傷する場合がある。
【0031】
また、このような柔軟な材料から構成されたシート3は、容易に変形できるため、ハニカム構造体11の端部がシート3に沈み込むことが可能になり、それによって、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体を抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0032】
シート3の構成材料の10%ひずみ時の圧縮強度が、0.1kPa未満では、シートが柔らかすぎて、ハニカム構造体11を安定的に保持することが困難となり、また、110kPaを超えると、シート3の柔軟性が不足して、ハニカム構造体11の損傷を十分に防止することが困難となる。
【0033】
シート3の構成材料には、前記のような所定の圧縮強度を持つことに加え、好ましくは、質量が1.45kgで、セルの端面開口部を除いた端面面積が0.008m2であるハニカム構造体の端面との摩擦係数が0.30〜1.00、より好ましくは、前記のような質量及び端面面積を有するハニカム構造体の端面との摩擦係数が0.50〜0.80である材料を用いる。
【0034】
ここで、本発明における「摩擦係数」の測定は、摩擦係数試験にて行うことができる。具体的には、傾斜台の上に面積0.16m2のシートを載せて固定し、更にその上に、質量が1.45kg、セルの端面開口部を除いた端面面積が0.008m2のハニカム構造体をその端面がシートに接触するように置いた状態で、傾斜台を傾けて行き、ハニカム構造体が滑り出した時の傾斜台の傾き角度(θ)を測る。そして、得られたθから、下式(1)により摩擦係数を求める。
摩擦係数=tanθ ・・・・・・(1)
【0035】
このような摩擦係数が大きい材料から構成されたシート3を用いれば、振動によるハニカム構造体11の移動や回転自体をより抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が一層発生しにくくなる。
【0036】
シート3と前記のような質量及び端面面積を有するハニカム構造体の端面との摩擦係数が、0.30未満では、梱包対象であるハニカム構造体11がシート3上を滑りやすく、ハニカム構造体11の損傷を十分に防止することが困難となる場合がある。一方、摩擦係数が過剰に大きいと、ハニカム構造体11の端面を傷つける危険性が生じる場合もあるので、1.00以下が好ましい。
【0037】
前記のような圧縮強度、摩擦係数を持ち得るシート3の具体的な構成材料としては、例えば、発泡樹脂、ゴム、パルプが挙げられ、特に発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリウレタン等の発泡樹脂は、加工性が良いことから好ましい。
【0038】
このような材料からなるシート3の作製方法としては、例えば、発泡成形、真空成形といった成形方法が好適な方法として挙げられる。
【0039】
シート3のクッション効果を十分に発揮させるため、シート3の肉厚は、1〜10mm程度とすることが好ましい。また、シート3の高さは、シート3を土台7の凹部9に嵌合させた時に、シート3の開口端が土台7の表面からある程度突出した状態となるように、土台5の厚み以上の高さとすることが好ましい。シート3の形状は、基本的には、図6に示すように、底面と側面とによって、ハニカム構造体11の端部が嵌合する凹部5が形成されるような形状であればよいが、シート3の土台7への取り付けや、土台7からの取り外しの作業を容易にするため、必要に応じて、図7に示すように、側面外周の一部又は全周にわたって、径方向外方に張り出した鍔部4を設けるようにしてもよい。また、図6に示すように、側面が底面に対して垂直に形成されていてもよいが、梱包の際にハニカム構造体11の端部を凹部5に収容しやすくするため、図8、9に示すように、側面が底面と反対側に向かってテーパ状やラッパ状に拡径する形状としてもよい。テーパ状とする場合は、底面に垂直な線に対して、側面が3〜30゜程度の角度をなすようにすることが好ましい。また、図6に示すように、底面と側面とは、角部を持って繋がっていてもよいし、図10に示すように、底面と側面とが、丸味を持って連続的に繋がっていてもよい。
【0040】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1において、土台7は、シート3の位置を決めるとともに、シート3の動き(ズレ)を抑制するための凹部9を複数有しており、この凹部9にシート3が嵌合される。土台7の凹部9の径は、シート3の凹部9に嵌合される部分の外径に対し、1mm小さい径から2mm大きい径までの範囲とすることが好ましい。シート3の柔軟性により、土台7の凹部9の径が、シート3の凹部9に嵌合される部分の外径より若干小さくても、シート3を凹部9に嵌合することは可能であるが、土台7の凹部9の径が、シート3の凹部9に嵌合される部分の外径に対して1mmを超えるほど小さいと、シート3の凹部9への嵌合や凹部9からの取り外しに支障を来す場合がある。また、土台7の凹部9の径が、シート3の凹部9に嵌合される部分の外径に対して2mmを超えるほど大きいと、シート3のズレが発生してしまう場合がある。なお、凹部9へシート3を嵌合するだけでは、容易にシート3が土台7から外れ、取り扱いにくいので、シート3と土台7とは両面テープ、接着剤等を用いて接着することが好ましい。
【0041】
土台7は、本発明のハニカム構造体梱包用トレー1を用いて梱包作業するに際して、作業に支障が生じないよう、ある程度の剛性を持った材料から構成されている必要がある。このような剛性を持ち得る土台7の具体的な構成材料としては、例えば、段ボール、ゴム、プラスチック(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等)、木材及び金属(鉄、アルミニウム等)が挙げられ、特に段ボールは、安価で、土台7の作製が容易に行えることから好ましい。
【0042】
図11は、土台7の作製方法の一例であって、段ボールを用いた作製方法を示す分解斜視図である。段ボールを用いて土台7を作製する場合、まず、同寸法の段ボール板を3枚用意し、この内の2枚に同配列で複数の貫通孔を設ける。次いで、図11に示すように、貫通孔19を設けた2枚の段ボール板13、17の間に、貫通孔を設けていない残りの段ボール板15を配置して、これら3枚の段ボール板13、15、17を貼り合わせる。図12は、こうして作製された土台7の概略断面図であり、段ボール板13、17の貫通孔19と、この貫通孔19に露出している段ボール板15の表面とにより、土台7の凹部9が形成される。このように複数の段ボール板を積層する方法を用いれば、極めて安価かつ容易に土台7を作製することができる。
【0043】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1は、全体が同材料から構成された一体形成品ではなく、上述したようなシート3と土台7とを複合して構成される複合トレーであり、所定の圧縮強度を有する柔軟な材料は、ハニカム構造体11と直接接触するシート3のみに用い、土台7は一定の剛性を有する別の材料で構成することにより、ハニカム構造体11の損傷を防止しつつ、トレー全体として必要な剛性は確保することができる。なお、トレー全体を、本発明のハニカム構造体梱包用トレー1のシート3に用いているような柔軟な材料、例えば発泡樹脂で構成した場合には、トレー全体として必要な剛性が確保できず、梱包作業に支障が生じるとともに、高価な発泡樹脂を多く用いることから、材料コストも増大する。
【0044】
図5に示すように、本発明のハニカム構造体梱包用トレー1を用いたハニカム構造体11の梱包は、ハニカム構造体梱包用トレー1とハニカム構造体11とを、所望の段数となるよう交互に積み上げることによりなされる。なお、図5は、5枚のハニカム構造体梱包用トレー1a〜1eを用いて、ハニカム構造体11を4段に積み上げた梱包例を示しているが、各段に載置されるハニカム構造体の数や、積み上げられるハニカム構造体の段数には特に制限はなく、例えば、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを2枚だけ使用し、それら2枚のトレーの間にハニカム構造体を挟み込むようにして、一段のみの状態でハニカム構造体を梱包することも当然可能である。
【0045】
具体的な梱包手順の例としては、まず、梱包後に梱包体全体をフォークリフト等で移動できるよう、ハニカム構造体梱包用トレー1と同程度のサイズのパレット21を用意する。次に、このパレット21上に最下段のハニカム構造体梱包用トレー1aを載置する。そして、この最下段のハニカム構造体梱包用トレー1aの各シート3の凹部5に、ハニカム構造体11の下側の端部が嵌合するように、ハニカム構造体11を載置する。次いで、ハニカム構造体梱包用トレー1bを、その下面側のシート3の凹部5に、ハニカム構造体11の上側の端部が嵌合するように載置する。以降、同様の手順で、ハニカム構造体11と構造体梱包用トレー1c、1d、1eとを交互に積み上げて、所望の段数(図5の例では4段)にハニカム構造体11が梱包された梱包体を得る。
【0046】
なお、最下段に配置されるハニカム構造体梱包用トレー1aと、最上段に配置されるハニカム構造体梱包用トレー1eは、片面側においてのみハニカム構造体11と接するものであるため、土台7の当該片面側に存在する凹部9にのみシート3が嵌合されている。それ以外のハニカム構造体梱包用トレー1b、1c、1dは、両面側でそれぞれハニカム構造体11と接するものであるため、土台7の両面側に存在する凹部9にシート3が嵌合されている。また、最下段に配置されるハニカム構造体梱包用トレー1aと、最上段に配置されるハニカム構造体梱包用トレー1eについては、ハニカム構造体11と接していない側の面に凹部9を設ける必要性は無く、強度の観点からは寧ろ設けない方が好ましいが、トレーの形態を統一し、最下段や最上段以外の何れの位置でも使用できるような汎用性を持たせるという観点からは、土台7の両面側に凹部9を設けた形態とすることが好ましい。
【0047】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1を用いたハニカム構造体11の梱包は、基本的に本発明のハニカム構造体梱包用トレー1のみでも行うことが可能であり、梱包に多くの部材を必要としないので、梱包に要するコストを抑えるとともに、梱包作業の工数も少なくすることができる。なお、必要に応じ、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いて梱包したハニカム構造体を、更に段ボール等からなる外箱に収容したり、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いて梱包したハニカム構造体の周囲をフィルム状のもので巻いて、多段に積み上げられたハニカム構造体及びトレーにおける段同士の固定や、ハニカム構造体及びトレーと、梱包の際に台座として用いたパレットとの固定を強固にしたりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、自動車の排ガスを浄化するための触媒やフィルタとして使用されるセラミック製のハニカム構造体を、保管又は輸送するために梱包する手段として、好適に利用される。
【符号の説明】
【0049】
1:ハニカム構造体梱包用トレー、3:シート、4:鍔部、5:凹部、7:土台、9:凹部、11:ハニカム構造体、13:段ボール板、15:段ボール板、17:段ボール板、19:貫通孔、21:パレット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のハニカム構造体をまとめて梱包する際に、当該ハニカム構造体を支持し、固定するために用いるハニカム構造体梱包用トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の排ガスを浄化するための触媒やフィルタとして、柱状のハニカム構造体が使用されている。このようなハニカム構造体を、製品として出荷する際には、輸送し易く、傷つけずに保管できるように、梱包がなされる。
【0003】
従来、ハニカム構造体を梱包するための梱包体として、特許文献1に示すような、プレート状を呈し、ハニカム構造体の端部を収容する複数の凹部(ポケット)が形成されたトレーを具備したものが知られている。このような構造を有するトレーを、ハニカム構造体の上下に配し、ハニカム構造体の上側の端部と下側の端部とが、それぞれトレーの凹部に収まるようにすることで、ハニカム構造体が支持、固定される。
【0004】
ところで、このような従来のハニカム構造体用梱包体に用いられていたトレーは、ハニカム構造体の端部を収容する複数の凹部と、それら凹部間を繋いでいる土台部分とが同材料で一体的に形成されたものであり、一般に、その構成材料には、トレー全体としての剛性等を考慮して、プラスチック材料が用いられている。
【0005】
そして、トレーの凹部の径は、梱包作業時にハニカム構造体の端部が収まり易いように、ハニカム構造体の端部の径に対し、ある程度余裕を持たせた径としているが、トレーの凹部の径とハニカム構造体の端部の径とに差があり、トレーの凹部の内周面とその凹部に収容されたハニカム構造体の端部の外周面とのクリアランスが大きいと、輸送中にハニカム構造体が動きやすく、損傷が発生しやすい。
【0006】
具体的には、輸送中の振動により、ハニカム構造体が鉛直方向や水平方向に移動し、鉛直方向移動時にはトレーの凹部に収容されているハニカム構造体の端面外周部が凹部の内底面にぶつかり、また、水平方向移動時にはハニカム構造体の端面外周部が凹部の内周面にぶつかって、欠けが発生する。また、同じく輸送中の振動により、ハニカム構造体が軸回りに回転し、その際、トレーの凹部に収容されているハニカム構造体の端面外周部とトレーの凹部の内周面とが擦れて、削れが発生する。
【0007】
また、特許文献1に開示された従来の梱包体は、トレーの他に、浅箱状のトレーパックや保護部材等を用いるため、梱包に要するコストが高くなるとともに、梱包作業の工数も多くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/093631号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、輸送中の振動によるハニカム構造体の損傷を効果的に防止できるとともに、多くの部材を使用せず低コストで作業性良くハニカム構造体の梱包が可能なハニカム構造体梱包用トレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明によれば、以下のハニカム構造体梱包用トレーが提供される。
【0011】
[1] 複数の柱状のハニカム構造体をまとめて梱包する際に用いられるハニカム構造体梱包用トレーであって、10%ひずみ時の圧縮強度が0.1〜110kPaの材料からなり、前記ハニカム構造体の端部が嵌合する凹部を有する複数の皿状のシートと、プレート状を呈し、少なくともその片面に前記シートが嵌合する凹部を複数有する土台とを備えるハニカム構造体梱包用トレー。
【0012】
[2] 前記土台が、その両面に前記シートが嵌合する凹部を複数有するものである[1]に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【0013】
[3] 前記シートとして、質量が1.45kgで、セルの端面開口部を除いた端面面積が0.008m2であるハニカム構造体の端面との摩擦係数が0.30〜1.00の材料からなるものを用いた[1]又は[2]に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【0014】
[4] 前記シートが、発泡樹脂、ゴム及びパルプからなる群より選択された何れか一種の材料にて構成される[1]〜[3]の何れかに記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【0015】
[5] 前記土台が、段ボール、ゴム、プラスチック、木材及び金属からなる群より選択された何れか一種の材料にて構成される[1]〜[4]の何れかに記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【発明の効果】
【0016】
本発明のハニカム構造体梱包用トレーは、全体が同材料から構成された一体形成品ではなく、ハニカム構造体の端部が嵌合される凹部を有する皿状のシートと、当該シートが装着されるプレート状の土台とを複合して構成される複合トレーであり、ハニカム構造体と直接接触するシートの構成材料に、特定の圧縮強度を有する発泡材料等の柔軟で、好ましくは摩擦係数が大きい材料を用いている。そのため、輸送中の振動により、ハニカム構造体が鉛直方向や水平方向に移動したり、軸回りに回転したりして、シートの凹部に収容されているハニカム構造体の端面外周部が、シートの凹部の内底面や内周面にぶつかったり、シートの凹部の内周面と擦れたりしても、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0017】
また、シートが柔軟で容易に変形できるため、シートの凹部の径とハニカム構造体の端部の径とに殆ど差が無くても、ハニカム構造体の端部がシートの凹部に収まり易い。したがって、シートの凹部の内周面とその凹部に収容されたハニカム構造体の端部の外周面とのクリアランスをほぼゼロにすることが可能となり、それによって、輸送時の振動をシートで吸収、緩和し、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体を抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0018】
また、シートが柔軟で容易に変形できるため、ハニカム構造体の端部がシートに沈み込むことが可能になり、それによって、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体を抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0019】
また、好適な態様として、シートの構成材料に、摩擦係数が大きい材料を用いているため、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体をより抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が一層発生しにくくなる。
【0020】
更に、ハニカム構造体の梱包は、基本的に本発明のハニカム構造体梱包用トレーのみでも行うことが可能であり、梱包に多くの部材を必要としないので、梱包に要する材料のコストを抑えるとともに、梱包作業の工数も少なくすることができる。なお、必要に応じて、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いて梱包したハニカム構造体を、更に外箱に収容したり、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いて梱包したハニカム構造体の周囲をフィルム状のもので巻いて、多段に積み上げられたハニカム構造体及びトレーにおける段同士の固定や、ハニカム構造体及びトレーと、梱包の際に台座として用いたパレットとの固定を強固にしたりすることもできる。
【0021】
また、前記のとおり、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートと土台とは、一体的に形成したものではなく、所定の圧縮強度を有する柔軟な材料は、ハニカム構造体と直接接触するシートのみに用いているため、トレー全体として必要な剛性は確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のハニカム構造体梱包用トレーの実施形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A断面概要図である。
【図3】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す斜視図である。
【図4】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成する土台の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いてハニカム構造体を梱包した状態を示す概略断面図である。
【図6】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図7】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図9】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図10】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す概略断面図である。
【図11】本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成する土台の作製方法の一例を示す分解斜視図である。
【図12】複数の段ボール板を積層して作製された土台の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体的な実施形態に基づき説明するが、本発明は、これに限定されて解釈されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
【0024】
図1は本発明のハニカム構造体梱包用トレーの実施形態の一例を示す斜視図であり、図2は図1のA−A断面概要図である。図3は本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成するシートの一例を示す斜視図であり、図4は本発明のハニカム構造体梱包用トレーを構成する土台の一例を示す斜視図である。また、図5は本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いてハニカム構造体を梱包した状態を示す概略断面図である。
【0025】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1は、被梱包体であるハニカム構造体の端部が嵌合する凹部5を有する複数の皿状のシート3と、プレート状を呈し、少なくともその片面にシート3が嵌合する凹部9を複数有する土台7とを備える。なお、図2の例では、凹部9が土台7の両面に設けられており、それら両面の凹部9にそれぞれシート3が嵌合されているが、後述するように、ハニカム構造体を梱包する際に、ハニカム構造体梱包用トレー1を配置する位置によっては、土台7の片面側の凹部9のみにシート3が嵌合される場合や、凹部9自体が土台7の片面にのみ設けられる場合もある。
【0026】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1において、皿状のシート3は、ハニカム構造体梱包時に、その凹部5に嵌合(収容)されるハニカム構造体11の端部と直接接触する部材である。本発明では、このシート3の構成材料として、10%ひずみ時の圧縮強度が0.1〜110kPa、好ましくは、1〜50kPaの材料を用いる。
【0027】
ここで、本発明における「10%ひずみ時の圧縮強度」の測定は、厚さ3mmの試料を、JIS B 7733に規定する圧縮試験機にかけ、ISO 3386−1に基づいた圧縮応力試験にて行うことができる。
【0028】
ハニカム構造体11の端部と直接接触するシート3の構成材料として、このような圧縮強度を持つ柔軟な材料を用いると、シート3がクッション効果を発揮し、輸送中の振動でハニカム構造体11が鉛直方向や水平方向に移動したり、軸回りに回転したりして、シート3の凹部5に収容されているハニカム構造体の端面外周部が、凹部5の内底面や内周面にぶつかったり、凹部5の内周面と擦れたりしても、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0029】
また、このような柔軟な材料から構成されたシート3は、容易に変形できるため、シート3の凹部5の径とハニカム構造体11の端部の径とに殆ど差が無くても、梱包時にハニカム構造体11の端部が凹部5に収まり易い。したがって、シート3の凹部5の内周面とその凹部5に収容されたハニカム構造体11の端部の外周面とのクリアランスをほぼゼロにすることが可能となり、それによって、輸送時の振動をシートで吸収、緩和し、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体を抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0030】
なお、シート3の凹部5の径は、梱包しようとするハニカム構造体11の端部の径に対し、1mm小さい径から2mm大きい径までの範囲とすることが好ましい。シート3の柔軟性により、シート3の凹部5の径がハニカム構造体11の端部の径より若干小さくても、ハニカム構造体11の端部をシート3の凹部5に収めることは可能であるが、シート3の凹部5の径が、梱包しようとするハニカム構造体11の端部の径に対して1mmを超えるほど小さいと、ハニカム構造体11の端部の凹部5への挿入や凹部5からの取り外しに支障を来す場合がある。また、シート3の凹部5の径が、梱包しようとするハニカム構造体11の端部の径に対して2mmを超えるほど大きいと、輸送時の振動でハニカム構造体11が移動してしまい、損傷する場合がある。
【0031】
また、このような柔軟な材料から構成されたシート3は、容易に変形できるため、ハニカム構造体11の端部がシート3に沈み込むことが可能になり、それによって、振動によるハニカム構造体の移動や回転自体を抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が発生しにくい。
【0032】
シート3の構成材料の10%ひずみ時の圧縮強度が、0.1kPa未満では、シートが柔らかすぎて、ハニカム構造体11を安定的に保持することが困難となり、また、110kPaを超えると、シート3の柔軟性が不足して、ハニカム構造体11の損傷を十分に防止することが困難となる。
【0033】
シート3の構成材料には、前記のような所定の圧縮強度を持つことに加え、好ましくは、質量が1.45kgで、セルの端面開口部を除いた端面面積が0.008m2であるハニカム構造体の端面との摩擦係数が0.30〜1.00、より好ましくは、前記のような質量及び端面面積を有するハニカム構造体の端面との摩擦係数が0.50〜0.80である材料を用いる。
【0034】
ここで、本発明における「摩擦係数」の測定は、摩擦係数試験にて行うことができる。具体的には、傾斜台の上に面積0.16m2のシートを載せて固定し、更にその上に、質量が1.45kg、セルの端面開口部を除いた端面面積が0.008m2のハニカム構造体をその端面がシートに接触するように置いた状態で、傾斜台を傾けて行き、ハニカム構造体が滑り出した時の傾斜台の傾き角度(θ)を測る。そして、得られたθから、下式(1)により摩擦係数を求める。
摩擦係数=tanθ ・・・・・・(1)
【0035】
このような摩擦係数が大きい材料から構成されたシート3を用いれば、振動によるハニカム構造体11の移動や回転自体をより抑制することができ、欠けや削れ等の損傷が一層発生しにくくなる。
【0036】
シート3と前記のような質量及び端面面積を有するハニカム構造体の端面との摩擦係数が、0.30未満では、梱包対象であるハニカム構造体11がシート3上を滑りやすく、ハニカム構造体11の損傷を十分に防止することが困難となる場合がある。一方、摩擦係数が過剰に大きいと、ハニカム構造体11の端面を傷つける危険性が生じる場合もあるので、1.00以下が好ましい。
【0037】
前記のような圧縮強度、摩擦係数を持ち得るシート3の具体的な構成材料としては、例えば、発泡樹脂、ゴム、パルプが挙げられ、特に発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリウレタン等の発泡樹脂は、加工性が良いことから好ましい。
【0038】
このような材料からなるシート3の作製方法としては、例えば、発泡成形、真空成形といった成形方法が好適な方法として挙げられる。
【0039】
シート3のクッション効果を十分に発揮させるため、シート3の肉厚は、1〜10mm程度とすることが好ましい。また、シート3の高さは、シート3を土台7の凹部9に嵌合させた時に、シート3の開口端が土台7の表面からある程度突出した状態となるように、土台5の厚み以上の高さとすることが好ましい。シート3の形状は、基本的には、図6に示すように、底面と側面とによって、ハニカム構造体11の端部が嵌合する凹部5が形成されるような形状であればよいが、シート3の土台7への取り付けや、土台7からの取り外しの作業を容易にするため、必要に応じて、図7に示すように、側面外周の一部又は全周にわたって、径方向外方に張り出した鍔部4を設けるようにしてもよい。また、図6に示すように、側面が底面に対して垂直に形成されていてもよいが、梱包の際にハニカム構造体11の端部を凹部5に収容しやすくするため、図8、9に示すように、側面が底面と反対側に向かってテーパ状やラッパ状に拡径する形状としてもよい。テーパ状とする場合は、底面に垂直な線に対して、側面が3〜30゜程度の角度をなすようにすることが好ましい。また、図6に示すように、底面と側面とは、角部を持って繋がっていてもよいし、図10に示すように、底面と側面とが、丸味を持って連続的に繋がっていてもよい。
【0040】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1において、土台7は、シート3の位置を決めるとともに、シート3の動き(ズレ)を抑制するための凹部9を複数有しており、この凹部9にシート3が嵌合される。土台7の凹部9の径は、シート3の凹部9に嵌合される部分の外径に対し、1mm小さい径から2mm大きい径までの範囲とすることが好ましい。シート3の柔軟性により、土台7の凹部9の径が、シート3の凹部9に嵌合される部分の外径より若干小さくても、シート3を凹部9に嵌合することは可能であるが、土台7の凹部9の径が、シート3の凹部9に嵌合される部分の外径に対して1mmを超えるほど小さいと、シート3の凹部9への嵌合や凹部9からの取り外しに支障を来す場合がある。また、土台7の凹部9の径が、シート3の凹部9に嵌合される部分の外径に対して2mmを超えるほど大きいと、シート3のズレが発生してしまう場合がある。なお、凹部9へシート3を嵌合するだけでは、容易にシート3が土台7から外れ、取り扱いにくいので、シート3と土台7とは両面テープ、接着剤等を用いて接着することが好ましい。
【0041】
土台7は、本発明のハニカム構造体梱包用トレー1を用いて梱包作業するに際して、作業に支障が生じないよう、ある程度の剛性を持った材料から構成されている必要がある。このような剛性を持ち得る土台7の具体的な構成材料としては、例えば、段ボール、ゴム、プラスチック(ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等)、木材及び金属(鉄、アルミニウム等)が挙げられ、特に段ボールは、安価で、土台7の作製が容易に行えることから好ましい。
【0042】
図11は、土台7の作製方法の一例であって、段ボールを用いた作製方法を示す分解斜視図である。段ボールを用いて土台7を作製する場合、まず、同寸法の段ボール板を3枚用意し、この内の2枚に同配列で複数の貫通孔を設ける。次いで、図11に示すように、貫通孔19を設けた2枚の段ボール板13、17の間に、貫通孔を設けていない残りの段ボール板15を配置して、これら3枚の段ボール板13、15、17を貼り合わせる。図12は、こうして作製された土台7の概略断面図であり、段ボール板13、17の貫通孔19と、この貫通孔19に露出している段ボール板15の表面とにより、土台7の凹部9が形成される。このように複数の段ボール板を積層する方法を用いれば、極めて安価かつ容易に土台7を作製することができる。
【0043】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1は、全体が同材料から構成された一体形成品ではなく、上述したようなシート3と土台7とを複合して構成される複合トレーであり、所定の圧縮強度を有する柔軟な材料は、ハニカム構造体11と直接接触するシート3のみに用い、土台7は一定の剛性を有する別の材料で構成することにより、ハニカム構造体11の損傷を防止しつつ、トレー全体として必要な剛性は確保することができる。なお、トレー全体を、本発明のハニカム構造体梱包用トレー1のシート3に用いているような柔軟な材料、例えば発泡樹脂で構成した場合には、トレー全体として必要な剛性が確保できず、梱包作業に支障が生じるとともに、高価な発泡樹脂を多く用いることから、材料コストも増大する。
【0044】
図5に示すように、本発明のハニカム構造体梱包用トレー1を用いたハニカム構造体11の梱包は、ハニカム構造体梱包用トレー1とハニカム構造体11とを、所望の段数となるよう交互に積み上げることによりなされる。なお、図5は、5枚のハニカム構造体梱包用トレー1a〜1eを用いて、ハニカム構造体11を4段に積み上げた梱包例を示しているが、各段に載置されるハニカム構造体の数や、積み上げられるハニカム構造体の段数には特に制限はなく、例えば、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを2枚だけ使用し、それら2枚のトレーの間にハニカム構造体を挟み込むようにして、一段のみの状態でハニカム構造体を梱包することも当然可能である。
【0045】
具体的な梱包手順の例としては、まず、梱包後に梱包体全体をフォークリフト等で移動できるよう、ハニカム構造体梱包用トレー1と同程度のサイズのパレット21を用意する。次に、このパレット21上に最下段のハニカム構造体梱包用トレー1aを載置する。そして、この最下段のハニカム構造体梱包用トレー1aの各シート3の凹部5に、ハニカム構造体11の下側の端部が嵌合するように、ハニカム構造体11を載置する。次いで、ハニカム構造体梱包用トレー1bを、その下面側のシート3の凹部5に、ハニカム構造体11の上側の端部が嵌合するように載置する。以降、同様の手順で、ハニカム構造体11と構造体梱包用トレー1c、1d、1eとを交互に積み上げて、所望の段数(図5の例では4段)にハニカム構造体11が梱包された梱包体を得る。
【0046】
なお、最下段に配置されるハニカム構造体梱包用トレー1aと、最上段に配置されるハニカム構造体梱包用トレー1eは、片面側においてのみハニカム構造体11と接するものであるため、土台7の当該片面側に存在する凹部9にのみシート3が嵌合されている。それ以外のハニカム構造体梱包用トレー1b、1c、1dは、両面側でそれぞれハニカム構造体11と接するものであるため、土台7の両面側に存在する凹部9にシート3が嵌合されている。また、最下段に配置されるハニカム構造体梱包用トレー1aと、最上段に配置されるハニカム構造体梱包用トレー1eについては、ハニカム構造体11と接していない側の面に凹部9を設ける必要性は無く、強度の観点からは寧ろ設けない方が好ましいが、トレーの形態を統一し、最下段や最上段以外の何れの位置でも使用できるような汎用性を持たせるという観点からは、土台7の両面側に凹部9を設けた形態とすることが好ましい。
【0047】
本発明のハニカム構造体梱包用トレー1を用いたハニカム構造体11の梱包は、基本的に本発明のハニカム構造体梱包用トレー1のみでも行うことが可能であり、梱包に多くの部材を必要としないので、梱包に要するコストを抑えるとともに、梱包作業の工数も少なくすることができる。なお、必要に応じ、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いて梱包したハニカム構造体を、更に段ボール等からなる外箱に収容したり、本発明のハニカム構造体梱包用トレーを用いて梱包したハニカム構造体の周囲をフィルム状のもので巻いて、多段に積み上げられたハニカム構造体及びトレーにおける段同士の固定や、ハニカム構造体及びトレーと、梱包の際に台座として用いたパレットとの固定を強固にしたりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、自動車の排ガスを浄化するための触媒やフィルタとして使用されるセラミック製のハニカム構造体を、保管又は輸送するために梱包する手段として、好適に利用される。
【符号の説明】
【0049】
1:ハニカム構造体梱包用トレー、3:シート、4:鍔部、5:凹部、7:土台、9:凹部、11:ハニカム構造体、13:段ボール板、15:段ボール板、17:段ボール板、19:貫通孔、21:パレット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱状のハニカム構造体をまとめて梱包する際に用いられるハニカム構造体梱包用トレーであって、
10%ひずみ時の圧縮強度が0.1〜110kPaの材料からなり、前記ハニカム構造体の端部が嵌合する凹部を有する複数の皿状のシートと、プレート状を呈し、少なくともその片面に前記シートが嵌合する凹部を複数有する土台とを備えるハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項2】
前記土台が、その両面に前記シートが嵌合する凹部を複数有するものである請求項1に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項3】
前記シートとして、質量が1.45kgで、セルの端面開口部を除いた端面面積が0.008m2であるハニカム構造体の端面との摩擦係数が0.30〜1.00の材料からなるものを用いた請求項1又は2に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項4】
前記シートが、発泡樹脂、ゴム及びパルプからなる群より選択された何れか一種の材料にて構成される請求項1〜3の何れか一項に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項5】
前記土台が、段ボール、ゴム、プラスチック、木材及び金属からなる群より選択された何れか一種の材料にて構成される請求項1〜4の何れか一項に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項1】
複数の柱状のハニカム構造体をまとめて梱包する際に用いられるハニカム構造体梱包用トレーであって、
10%ひずみ時の圧縮強度が0.1〜110kPaの材料からなり、前記ハニカム構造体の端部が嵌合する凹部を有する複数の皿状のシートと、プレート状を呈し、少なくともその片面に前記シートが嵌合する凹部を複数有する土台とを備えるハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項2】
前記土台が、その両面に前記シートが嵌合する凹部を複数有するものである請求項1に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項3】
前記シートとして、質量が1.45kgで、セルの端面開口部を除いた端面面積が0.008m2であるハニカム構造体の端面との摩擦係数が0.30〜1.00の材料からなるものを用いた請求項1又は2に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項4】
前記シートが、発泡樹脂、ゴム及びパルプからなる群より選択された何れか一種の材料にて構成される請求項1〜3の何れか一項に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【請求項5】
前記土台が、段ボール、ゴム、プラスチック、木材及び金属からなる群より選択された何れか一種の材料にて構成される請求項1〜4の何れか一項に記載のハニカム構造体梱包用トレー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−136758(P2011−136758A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−185261(P2010−185261)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185261(P2010−185261)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
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