説明

ハロゲンを含まない耐火性熱可塑性樹脂組成物

【課題】良好な耐火性と耐熱性をもつ射出成形用途に有用なハロゲンを含まない熱可塑性ポリマーを提供する
【解決手段】(A)熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド物、及び(B)エポキシ樹脂の合計重量基準で0−20wt%の残留エポキシ基を含む変性した多官能性エポキシ樹脂、及び(C)リン含有化合物、からなるハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン含有化合物を使用することなしで耐火性を示す熱可塑性ポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火性ポリマーは典型的には耐火性を与えるためにハロゲン含有化合物を使用してきた。しかしながら、耐火性ポリマーの市場ではハロゲンを含まない組成物の需要が増大してきた。ポリフェニレンエーテル樹脂とトリフェニルホスフィンオキサイドの組み合わせもまた特許文献1に開示されているように耐火性成分として使用されてきた。しかしながら、そのような組成物は高分子量ポリフェニレンエーテル樹脂の存在による高粘度をもち、押し出し又は射出成形装置での加工を難しくしている。
【0003】
例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9に記載されているような熱硬化性エポキシ樹脂中のハロゲン系難燃剤の代わりにリン−ベースの難燃剤を使用する提案がなされてきた。これらの処方においては、リン系難燃剤は予めエポキシ樹脂と反応してジ−又は多官能性エポキシ樹脂を生成しそれからジシアンジアミド、スルファニルアミドのようなアミノ架橋形成剤又は幾つかの他の窒素原子を含有する架橋形成剤で加硫されネットワークを形成する。しかしながら、これらの組成物は射出成形用途で使用できない熱硬化性である。
【0004】
特許文献10はポリエステル樹脂、スチレン樹脂、例えば、HIPSの難燃性樹脂組成物、及び難燃剤、例えば、芳香族エポキシ樹脂と組み合わせたリン含有化合物を開示している。特許文献11は熱可塑性樹脂及びポリアリール酸エステル又は芳香族エポキシ樹脂と組み合わせたリン含有化合物からなる難燃剤組成物を開示している。非特許文献1の“ABSの熱安定性を高める研究;トリフェニルホスフェートとエポキシ樹脂混合物の相乗効果”においては、トリフェニルホスフェート共難燃化剤と種々のエポキシ樹脂を含むABS組成物が議論されている。しかしながら、上述の組成物中で使用されているエポキシ樹脂は、重合工程で反応して、最終製品中で黒いしみの原因となる反応性エポキシ基を高レベルで含む。
【0005】
【特許文献1】USP4,107,232
【特許文献2】EPA0384939
【特許文献3】EPA0384940
【特許文献4】EPA0408990
【特許文献5】DEA4308184
【特許文献6】DEA4308185
【特許文献7】DEA4308187
【特許文献8】WOA96/07685
【特許文献9】WOA96/07686
【特許文献10】JP2001−49096
【特許文献11】JP2000−239543
【非特許文献1】Polymer43(2002)2249−2253
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、従来技術の欠点を改良し、良好な耐火性と耐熱性をもつ射出成形用途に有用なハロゲンを含まない熱可塑性ポリマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(A)熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド物、及び(B)エポキシ樹脂の合計重量基準で0−20wt%の残留エポキシ基を含む変性した多官能性エポキシ樹脂、及び(C)リン含有化合物、からなるハロゲンを含まない耐火性熱可塑性ポリマー組成物に関する。
【0008】
本発明の別の態様は、(A)所望により、組成物の合計重量基準で、10−35wt%のポリフェニレンエーテルポリマーを含んでいてもよい、組成物の合計重量基準で、40−94wt%の熱可塑性ポリマー、(B)エポキシ樹脂の合計重量基準で0−20wt%の残留エポキシ基を含む、組成物の合計重量基準で1−30wt%の変性した多官能性エポキシ樹脂、及び(C)組成物の合計重量基準で、5−30wt%のアリールホスフェートのようなリン化合物、からなるハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の0−20wt%の残留エポキシ基をもつ変性した多官能性エポキシ化合物の使用により、熱可塑性ポリマーの難燃性を高めそして最終製品中に黒しみを形成することなく、変性した多官能性を使用することによって熱可塑性ポリマーとエポキシ樹脂の相溶性も増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の成分(A)は熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド物である。典型的な熱可塑性ポリマーとしては、限定はしないが、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、ポリスチレン(高耐衝撃性ポリスチレンを含む)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー(SAN)のようなジエンと芳香族水素化物の両方を含む、ビニル芳香族モノマー及びその水素化物から製造されるポリマー;ポリカーボネート(PC)、ABS/PC組成物、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、特許文献12、13、14に教示されているようなヒドロキシフェノキシエーテルポリマー(PHE);エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリオレフィンカーボンモノオキサイドインターポリマー、ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー(COC)、その他のオレフィンコポリマー(特にポリエチレンコポリマー)及びホモポリマー(例えば、在来の不均一系触媒を使用して製造されたもの)、ポリフェニレンエーテルポリマー(PPO)及びそれらのいずれかの組み合わせ又はそれらのブレンド物を包含する。熱可塑性ポリマーは、その製造法と同様に熟練した当業者には公知である。
【0011】
一態様においては、熱可塑性ポリマーは溶解したエラストマー又はゴムの存在下でビニル芳香族モノマーを重合させることによって製造されるゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーである。ビニル芳香族モノマーとしては、限定はしないが、特許文献15、16、17に記載されているようなものである。好ましくは、モノマーは次式のものである:
【0012】
【化4】

【0013】
ここでRは水素又はメチル、Arはアルキル、ハロ、又はハロアルキルで置換されていてもいなくてもよい1から3の芳香族環をもつ芳香族環構造であり、ここでアルキル基は1から6の炭素原子を含みそしてハロアルキルはハロ置換アルキル基を意味する。好ましくは、Arはフェニルまたはアルキルフェニルであり、アルキルフェニルはアルキル置換フェニル基を意味し、フェニルが最も好ましい。使用できる典型的なビニル芳香族モノマーとしてはスチレン、アルファメチルスチレン、ビニルトルエン特にパラビニルトルエンの全ての異性体、エチルスチレン、プロピルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンの全ての異性体、及びこれらの混合物を包含する。ビニル芳香族モノマーはまた他の共重合可能なモノマーと組み合わせてもよい。そのようなモノマーの例としては、限定はしないが、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メタクリル酸、メチルメタアクリレート、アクリル酸、及びメチルアクリレートのようなアクリルモノマー;マレイミド、フェニルマレイミド、及び無水マレイン酸を包含する。
【0014】
ゴム変性モノビニリデン芳香族ポリマーを製造するために使用されるゴムは、線状、分岐、星形分岐のような如何なる分子形状、そしてホモ−及びコポリマージエンゴム、ブロックゴム、官能化したゴム、低シス、高シスのゴム及びそれらの混合物も含む、モノビニリデン芳香族ポリマーの耐衝撃性を高めるゴムであれば如何なるゴムでもよい。好ましく採用されるエラストマー又はゴムは、通常の技術、例えば、ASTM試験方法D−52Tを使用して決定または概算されるとき、0℃を越えない、好ましくは20℃を越えないそしてより好ましくは40℃を越えない二次転移温度を示すゴムのポリマー及びコポリマーである。
【0015】
ゴムは典型的には、ゴム強化ポリマー製品がビニル芳香族ポリマー及びゴム又はゴム等価物として表されるゴム成分の合計重量基準で3−20、好ましくは4−18、より好ましくは5−16そして最も好ましくは6−14wt%のゴムを含むような量で使用される。
【0016】
用語“ゴム”又は“ゴム等価物”はここで用いられるときは、ポリブタジエンのようなゴムホモポリマーの場合は単純にゴム量を意味し、そしてブロックコポリマーの場合は、ブタジエン−スチレンブロックコポリマーの場合にブロックコポリマーのブタジエン成分量を意味するように、ホモ重合するときにゴム状ポリマーを生成するモノマーから作られるコポリマーの量を意味する。
【0017】
ゴムはモノビニリデン芳香族ポリマーマトリックス中に不連続なゴム粒子として存在し、そしてモノモーダル、バイモーダル又はマルチモーダルな粒子径分布及び 粒子サイズを含む如何なるタイプのものももつことができ、同様にセル状タイプ、コアシェルタイプ及びたまねぎ肌タイプ、及びそれらの組み合わせを含む如何なるモルフォロジーをもつこともできる。
【0018】
重合プロセス及びビニル芳香族モノマー重合のためのプロセス条件、それらのゴム変性ポリマーの製造及び所望の平均粒子径を作り出すために必要な条件は熟練した当業者にとっては公知である。如何なる重合プロセスも使用可能であるが、典型的なプロセスは特許文献15及び特許文献16に記載されているような連続塊状重合又は溶液重合である。ビニル芳香族モノマーの重合は耐衝撃変性、又はグラフト化したゴムを含む製品を調製するために予め溶解したエラストマーの存在下で行われるが、それらの例は特許文献17、特許文献18、特許文献19、及び特許文献20に記載されている。ゴムは典型的にはブタジエン又はイソプレンゴムであり、好ましくはポリブタジエンである。好ましくは、ゴム変性ビニル芳香族ポリマーは高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)又はアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)であり、HIPSが最も好ましい。
【0019】
熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド物(A)は本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物中に本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の100重量部基準で少なくとも40部、好ましくは少なくとも50重量部、好ましくは少なくとも55重量部、より好ましくは少なくとも60重量部、そして最も好ましくは少なくとも65重量部の量で使用される。一般的には、熱可塑性ポリマー成分(A)は本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の100重量部基準で94重量部以下、好ましくは80重量部以下の量で使用される。
【0020】
一態様においては、本発明の組成物は一つの熱可塑性ポリマーとポリフェニレンエーテルのような追加の熱可塑性ポリマーの熱可塑性ブレンド物を含む。ポリフェニレンエーテルは種々の触媒及び非−触媒プロセスによって対応するフェノール又はそれらの反応性誘導体から製造される。例示としては、ポリフェニレンエーテルの或るものは特許文献21及び22、そして特許文献23及び24に開示されている。それらの特許においては、ポリフェニレンエーテルはフェノール及び金属アミン錯体触媒の反応溶液に酸素含有ガスを通すことからなる酸化カップリング反応によって調製される。ポリフェニレンエーテルとスチレン系化合物のグラフトコポリマーを含むポリフェニレンエーテル樹脂の調製法に関するその他の開示は特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31、特許文献32に見出され、そしてアミンを含まない金属系触媒に関する開示は特許文献33(銅−アミジン)、特許文献34(金属アルコレート又は−フェノレート)、及び特許文献35(コバルトキレート)のような特許から公知である。特許文献23及び24においては、ポリフェニレンエーテルは対応するフェノレートイオンをパーオキシ酸塩、酸パーオキサイド、及びハイポハライトのような開始剤と一緒に錯化剤の存在下で反応させることによって製造される。鉛酸化物、銀酸化物、等々での酸化のような非−触媒的プロセスに関する開示としては、特許文献36に記載されている。特許文献37はポリフェニレンエーテル−スチレン樹脂組成物を開示している。
【0021】
ポリフェニレンエーテル樹脂は好ましくは次式の繰り返し構造をもつものである:
【0022】
【化5】

【0023】
ここで、1ユニットの酸素エーテル原子は次の接続ユニットのベンゼン核に結合しており、nは正の整数で少なくとも50、そして各Qは水素、ハロゲン、4級アルファー炭素原子を含まない炭化水素ラジカル、ハロゲン原子とフェニル核の間に少なくとも二つの炭素原子をもつ炭化水素ラジカル、少なくとも二つの炭素原子をもつヒドロカルボノキシラジカル及びハロヒドロカルボノキシラジカルからなる群から選択される一価の置換基である。好ましいポリフェニレンエーテル樹脂はポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル樹脂である。
【0024】
別の熱可塑性ポリマーと組み合わせて使用されるときは、ポリフェニレンエーテル樹脂は好ましくは本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物中に本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の100重量部基準で少なくとも10重量部、好ましくは少なくとも12重量部、より好ましくは少なくとも15重量部、そして最も好ましくは少なくとも18重量部から35重量部まで、好ましくは30重量部まで、より好ましくは28重量部まで、より好ましくは25重量部までの量で使用される。熱可塑性ポリマー及びポリフェニレンエーテルポリマーは本発明の組成物に組み込む前にブレンド物として調製することもでき、又は各ポリマーを別々に組み込むこともできる。
【0025】
本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物中の成分(B)は変性した多官能性エポキシ樹脂である。変性した多官能性エポキシ樹脂は、最初に少なくとも二つのエポキシ基をもち、エポキシ基と反応することのできる少なくとも一つの化合物と反応して、最初のエポキシ基が減少しそして変性剤化合物の官能基で置換される。変性剤はまた変性した多官能性エポキシ樹脂と熱可塑性ポリマー又はブレンド物との相溶性を増大させるために選択されてもよい。変性した多官能性エポキシ樹脂はハロゲンを含まない多官能性エポキシ樹脂又は実質上ハロゲンを含まない多官能性エポキシ樹脂から導かれる。“実質上ハロゲンを含まない”樹脂とは、樹脂が全くハロゲンを含まない、即ち、ハロゲン0%であるか又は樹脂が、樹脂の性質又は性能に影響を与えない、そして樹脂に有害でない少量のハロゲンしか含まないことを意味する。いくつかの多官能性エポキシ樹脂には製造プロセスからの残存する非常に少量のハロゲン不純物が存在するかもしれないことは理解しておくべきである。一般的には、本発明で使用される多官能性エポキシ樹脂は初期に平均で分子当たり1より多いそして好ましくは少なくとも1.8、より好ましくは少なくとも2そして最も好ましくは3より多いエポキシ基をもっている物質である。多官能性エポキシ樹脂と変性剤化合物との反応の後で、生ずる生成物(変性した多官能性エポキシ樹脂)は変性した多官能性エポキシの合計重量基準で樹脂残留エポキシ基を0%しか含まないかもしれないが、0から20wt%まで、一般的には1から、好ましくは2から、そしてより好ましくは3から15以下、好ましくは12以下、そしてより好ましくは10wt%以下の残留エポキシ基を含むことができる。広義に云えば、多官能性エポキシ樹脂は如何なる飽和の又は不飽和の一つより多い1,2−エポキシ基をもつエポキシ基から導かれる脂肪族、脂環族、芳香族又はヘテロ環化合物であってもよい。
【0026】
本発明の組成物での使用のために変性できる典型的な多官能性エポキシ樹脂としては、ダウケミカル社から市販されている商標名D.E.N438又は商標名D.E.N439のようなエポキシノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールエポキシノボラック、エポキシ化ビスフェノール−Aノボラック、エポキシ化クレゾールノボラック、又は特許文献38、特許文献39及び特許文献40、及び特許文献41に見出されるその他のものが包含される。
【0027】
エポキシノボラック樹脂(ときどきエポキシ化ノボラック樹脂とも呼ばれ、その用語はエポキシフェノールノボラック樹脂及びエポキシクレゾールノボラック樹脂の両方を網羅することを意図している)は下記の一般的な化学構造式をもっている:
【0028】
【化6】

【0029】
ここで“R”は水素、C −C アルキルヒドロキシ又はC −C アルキル、例えば、メチル、そして“n”は0又は1−10の整数で、“n”は好ましくは0−5の平均値をもつ。
【0030】
多官能性エポキシ樹脂は容易に商業的に利用可能であり、例えば商標名D.E.N(ダウケミカル社の商標)、及び商標名Quatrex及びTactix742(チバガイギー社の商標名)のようなトリスエポキシがある。市販されている物質は一般に上記式の種々の種の混合物を含みそしてそのような混合物を特徴付ける便利な方法は、種々の種のn値の平均、n’を参照することである。本発明に従って使用するための好ましい多官能性エポキシ樹脂はnが2.05−10、より好ましくは2.5−5の値をもつエポキシノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂及びエポキシ化ビスフェノール−Aノボラック樹脂である。
【0031】
エポキシ化ビスフェノール−Aノボラックは、次式の構造(ここでGLYはグリシジル基である)をもつポリマーを含む:
【0032】
【化7】

【0033】
トリスエポキシ樹脂は次式の構造をもつ:
【0034】
【化8】

【0035】
典型的には、多官能性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は本発明の組成物で使用される熱可塑性ポリマーに依存するが、一般的には150から、好ましくは250から、より好ましくは350からそして最も好ましくは450から100,000まで、一般的には50,000まで、典型的には25,000まで、好ましくは8,000まで、そしてより好ましくは5,000までの原子質量単位(amu)である。
【0036】
多官能性エポキシ樹脂を変性するために使用される変性剤は、フェノール基、例えば、2−フェニルフェノール、4−フェニルフェノール、ジメチルフェノール、t−ブチルフェノール、ビスフェノール−A、ビスフェノール−Fのようなフェノール化合物;メチレンジフェニルジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートのようなポリイソシアネート、酸基、サリチル酸のような酸化合物、スルファニルアミドのようなアミノ基;無水コハク酸、無水ドデシルコハク酸のような酸無水物基のような、エポキシ官能基と反応する反応性基を含む化合物;又はハロゲンを含まない多官能性エポキシ樹脂化合物のエポキシ基と反応できる基を含むリンを含まない化合物である。その他の変性剤は組成物の機械的性質を高めそして熱可塑性樹脂と相溶性のある官能基を含む化合物を包含する。モノビニリデン芳香族及び共役ジエンのような熱可塑性樹脂の場合、そのような官能性は、限定はしないが、ブタジエン、スチレン−無水マレイン酸、メチレンジフェニルジイソシアネート及びトルエンジイソシアネートのようなポリイソシアネート、ポリブタジエン−無水マレイン酸コポリマー、カルボン酸末端をもつブタジエン、及びカルボン酸官能化ポリスチレンを包含する。変性剤の如何なる組み合わせも多官能性エポキシ樹脂を変性するために使用することができる。
【0037】
変性剤化合物は平均で分子当たりエポキシ基と反応できる一つ以上の官能基を含む。そのような変性剤化合物は好ましくは分子当たりエポキシ基と反応できる官能基を平均で0.8−5、より好ましくは0.9−4、そして最も好ましくは1−3個含む。
【0038】
変性した多官能性エポキシ樹脂は一般的には如何なる方法で製造してもよいが、典型的には多官能性エポキシ樹脂と変性剤を当業界で公知の触媒(アミン、酸、ホスフォニウム又はアンモニウム触媒)の存在下で80℃以上に加熱することによって得られる。
【0039】
本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物中の変性した多官能性エポキシ樹脂の量は組成物中で使用される熱可塑性ポリマーに依存するが、ハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の合計重量基準で、典型的には1−30wt%、一般的には5−28wt%、好ましくは10−25wt%、より好ましくは15−20wt%である。
【0040】
リン元素を含有する化合物もまた本発明の組成物に含まれる。これらの化合物はエポキシを含まないリン元素を含有する化合物である。本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物中で成分(C)として使用される好適なリン化合物は有機リン酸、有機ホスフォナイト、有機ホスフォン酸塩、有機亜リン酸塩、有機ホスフィナイト、有機ホスフィン酸塩、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスフォフェナントレン−10−オキサイド(DOP);10−(2’,5’−ジヒドロキシフェニル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスフォフェナントレン−10−オキサイド(DOP−HQ);ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ホスフィンオキサイド;トリス(2−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド;ジメチル−1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメチルフォネート;トリス(2−ヒドロキシ−4/5−メチルフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(4−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(2−ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2−ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィネート、トリス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ホスフィンオキサイド;のようなその他のリン元素含有化合物、又はさらに以下に記載されるようなそれらの混合物が包含される。
【0041】
好適な有機リン化合物は、例えば、特許文献42、特許文献43及び44に開示されている。好ましい有機リン化合物は次式Iで表されるモノリン化合物である:
【0042】
【化9】

【0043】
ここでR 、R 、及びR はそれぞれお互いに独立に選ばれたアリール又はアルカリール基を表しそしてm 、m 、及びm はそれぞれお互いに独立に0又は1である。
【0044】
最も好ましいモノリン化合物はm 、m 、及びm が全て1でR 、R 、及びR が独立にメチル、フェニル、クレシル、キシリル、クミル、ナフチル、例えば、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレシルホスフェートの全ての異性体及びそれらの混合物、特にトリ(4−メチルフェニル)ホスフェート、トリキシリルホスフェートの全ての異性体及びそれらの混合物、特にトリ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート、トリクレシルホスフェート、トクミルホスフェートの全ての異性体及びそれらの混合物、及びトリナフチルホスフェート及びそれらの混合物である。
【0045】
別の好ましい有機リン化合物は次式IIで表されるモノリン化合物である:
【0046】
【化10】

【0047】
ここでR 、R 、R 、及びR はそれぞれお互いに独立に選ばれたアリール又はアルカリール基を表し、Xは二価化合物由来のアリーレン基であり、m 、m 、m 及びm はそれぞれお互いに独立に0又は1でありそしてnが1以上のとき、nは0より大きく10より小さい平均値をもつ。これらの多重リン化合物はときどきオリゴマー状リン化合物と呼ばれる。
【0048】
好ましい多重リン化合物は、m 、m 、m 及びm が1で、R 、R 、R 、及びR が独立にメチル、フェニル、クレシル、キシリル、クミル、ナフチル、Xは二価化合物由来のアリーレン基、例えば、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、そしてnは0より大きく5より小さい平均値をもち、好ましくは1より大きく5より小さい平均値をもつ。例えば、1と2の間のn値をもつ好ましいオリゴマー状リン化合物はm−フェニレン−ビス(ジフェニルホスフェート)、p−フェニレン−ビス(ジフェニルホスフェート)、m−フェニレン−ビス(ジクレシルホスフェート)、p−フェニレン−ビス(ジクレシルホスフェート)、m−フェニレン−ビス(ジキシリルホスフェート)、p−フェニレン−ビス(ジキシリルホスフェート)、ビスフェノール−A−ビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノール−A−ビス(ジクレシホスフェート)、ビスフェノール−A−ビス(ジキシリルホスフェート)、又はそれらの混合物である。
【0049】
リン化合物成分(C)は本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物中でハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の重量の100部当たり、少なくとも5、好ましくは少なくとも7そしてより好ましくは少なくとも10wt%の量で、そしてハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の合計重量基準で、30まで、好ましくは27まで、より好ましくは25まで、より好ましくは23まで、そしてなお好ましくは20wt%までの量で使用される。
【0050】
さらに、ハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物はまた所望によりこの種のポリマー組成物中で使用される通常の添加物を1以上含んでいてもよい。この種の好ましい添加剤としては、限定はしないが、抗酸化剤;スチレン−ブタジエンゴムのような耐衝撃性変性剤;鉱油のような可塑剤;静電気防止剤;流れ促進剤;型剥離剤;顔料;湿潤剤;蛍光添加物;炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、タルク、クレイ、雲母、ウオラストナイト、ホローガラスビーズ、酸化チタン、シリカ、カーボンブラック、ガラスファイバー、チタン酸カリウム、カチオン交換層シリケート材料の単一層又はそれらの混合物のようなフィラー;及びUL94のドリップ性能を改善するためのパーフルオロアルカンオリゴマー及びポリマー(ポリテトラフルオロエチレンのような)、二酸化炭素を含むハロゲンを含まない物理的又は化学的発泡剤を包含する。さらに、耐火性ポリマー組成物を、限定はしないが、熱、光、及び酸素によって引き起こされる分解に対して安定化させる化合物、又はそれらの混合物を使用してもよい。ハロゲン含有添加剤の少量は使用できるが、組成物の合計重量基準で0.1wt%以上のレベルのハロゲンを含まないようなハロゲンフリーな組成物であることが好ましい。もし使用するなら、添加剤の量は与えられた最終用途の特定の要求に依存して変化し制御される必要があるが、それは熟練した当業者にとっては容易に且つ適切に実施できるであろう。
【0051】
一態様においては、本発明の組成物は発泡体の調製に使用することができる。ハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物は発泡剤と一緒に熔融加工することによって発泡体に押し出されて、発泡性混合物を形成し、押出しダイを通して発泡性混合物を減圧領域に押し出しそして発泡性混合物を膨張させそして冷却する。スクリュー押出し機、二軸押出し機及び堆積押出し装置のような在来の発泡押出し装置が使用できる。樹脂/発泡剤混合物から押出し発泡体を製造する好適な方法は特許文献45、特許文献46、特許文献47、特許文献48、特許文献49、特許文献50、特許文献51、特許文献52、特許文献53、特許文献54、特許文献55、特許文献56、特許文献57、特許文献58、特許文献59、特許文献60、特許文献61、特許文献62及び特許文献63に記載されている。
【0052】
発泡剤は好ましくはハロゲンを含まない物理的又は化学的発泡剤で如何なる便宜的な手段でポリマー材料に含ませるか又は混合してもよい。最も典型的には、物理的な発泡剤は加圧下で押出し機のバレルに供給されそこで熔融ポリマーと混合する。しかしながら、そのような混合はいわゆるスタチックミキサー又は特許文献64及び65に記載されているような界面ジェネレーターを含む種々のその他の手段によって行ってもよい。化学的発泡剤は予めポリマーと混合してもよいし又はポリマーと一緒に押出し機に供給してもよい。ポリマー/発泡剤混合物はそれから生ずる発泡性混合物が押出しダイに到達するまで膨張しないだけの十分な圧力下で発泡剤の沸点(物理的発泡剤の場合)又は分解(化学的発泡剤の場合)温度以上の温度に加熱される。典型的には、発泡性混合物は、押出し機、他の混合装置又は別の熱交換器内で所望の密度と所望のセルサイズをもつ泡の形成を可能にする最適発泡温度まで冷却される。発泡性混合物はそれからダイを通って減圧及び低温ゾーンに入りそこで泡を膨張させそしてセル状構造を形成するまで冷却される。
【0053】
発泡体は種々の形状に押し出すことができるが、最も普通にはシート(厚みが13mm以下)又は厚板(厚みが13以上)製品を形成するように成型される。シート製品は便宜的には円形ダイを使用し、平面シートを形成するために裂いて使用される環状発泡体として製造される。厚板製品は矩形又は“ドッグボーン”ダイを使用して製造するのが便利である。
【0054】
好適な物理的発泡剤としては二酸化炭素、窒素、低級アルカノール、アルキルエーテル、水、及び/又は炭化水素、特に炭素原子6までのアルカンが包含される。炭化水素発泡剤としてはメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロブタン及びシクロペンタンが包含される。アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール及びイソプロパノールが包含される。好適なアルキルエーテルとしてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル及びメチルエチルエーテルが包含される。これらの物理的な発泡剤の2以上の混合物も使用可能である。
【0055】
好適な化学発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、アゾジイソブチロニトリル、ベンゼンスルフォ−ヒドラジド、4,4−オキシベンゼンスルフォニルセミ−カルバジド、p−トルエンスルフォニルセミ−カルバジド、バリウムアゾジカルボキシレート、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルイミド、トリヒドラジノトリアジン及び炭酸水素ナトリウムが包含される。
【0056】
本発明はハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物に関するものであるが、ハロゲン化された発泡剤もまた発泡体を製造するために適切に実施されることに注意しておくべきである。しかしながら、好ましくは、ハロゲンを含まない発泡剤が使用される。
【0057】
一態様においては、1−4個の炭素原子をもつ低級アルコール、アルキルエーテル、アルキルエステル、炭化水素、水(50%まで)及び二酸化炭素を含むハロゲンを含まない発泡剤混合物の発泡剤混合物が使用される。
【0058】
種々の補助物質が発泡プロセスで使用できる。通常のそのような補助物質としてはセル制御剤(核剤)、セル拡張剤、安定性制御剤(透過性変性剤)、静電気防止剤、架橋剤、加工助剤(滑剤のような)、安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸捕捉剤、分散助剤、押出し助剤、抗酸化剤、着色剤、及び無機フィラーを包含する。セル制御剤及び安定性制御剤が好ましい。
【0059】
好ましいセル制御剤としては炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、インジゴ、タルク、クレイ、二酸化チタン、シリカ、ステアリン酸カルシウム又は珪藻土、同様にクエン酸又はクエン酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムの混合物のような押出し条件下で反応してガスを生成する化学薬品の少量を包含する。使用される核剤の量はポリマー樹脂の100重量部当たり0.01−5重量部の範囲である。好ましい範囲は0.1−3重量部である。
【0060】
発泡体が断熱材として使用されるときは、発泡剤が断熱ガスを含んでいるときでさえ、発泡構造体を通る赤外線透過を弱める添加剤をその断熱性能を高めるために内包させることができる。赤外線減衰剤としてはカーボンブラック材料、グラファイト、二酸化チタン、及びアルミニウム粒子が包含される。赤外線減衰剤を使用するときは、断熱用発泡剤の使用割合を減少させることができる。
【0061】
発泡体はもし望むなら種々の引く続く加工工程にかけてもよい。発泡体を後処理(即ち、発泡剤を空気で置き換える)ことはしばしば望ましいことである。穴あけを含む後処理時間を減少させるための加工工程は、特許文献66に記載されているように、数日から数週間の期間わずかに高められた温度(100−130゜F)で加熱するか、又はそれらの組み合わせである。架橋工程もまた実施してもよい。
【0062】
本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の製造は個々の成分をドライブレンドしそして引き続き最終物品を製造するための押出し機で直接熔融混合するか、或いは別の押出し機でプレ混合することを含む当業者に公知の如何なる好適な混合手段で実施してもよい。
【0063】
本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物及びそれらに含まれるポリマーは熱可塑性ポリマーである。熱を適用して軟化又は熔融させるとき、本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物は圧縮成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、カレンダリング、真空発泡、熱発泡、押出し及び/又は中空成形のような在来技術を、単独又は組み合わせて使用することで形成又は成形することができる。ハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物はまた、紡糸、フィルム延伸、繊維、多層ラミネート又は押出しシートに成形することができ、又はその目的に適した機械を使って、1以上の有機又は無機物質とコンパウンド化することもできる。
【0064】
一態様においては、本発明は、(A)熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド物、及び(B)エポキシ樹脂の合計重量基準で0−20wt%の残留エポキシ基を含む変性した多官能性エポキシ樹脂、及び(C)リン含有化合物、から本質的になるハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物である。
【0065】
別の態様においては、本発明は、(A)所望により、組成物の合計重量基準で、10−35wt%のポリフェニレンオキサイド(PPO)のようなポリフェニレンエーテルポリマーを含んでいてもよい、組成物の合計重量基準で、40−94wt%の熱可塑性ポリマー、(B)エポキシ樹脂の合計重量基準で0−20wt%の残留エポキシ基を含む、組成物の合計重量基準で1−30wt%の変性した多官能性エポキシ樹脂、及び(C)組成物の合計重量基準で、5−30wt%のアリールホスフェートのようなリン化合物、から本質的になるハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物である。
【0066】
用語“本質的に含む”は組成物中の記載された成分を意味しそして本発明の組成物の性質又は目的を有意に変えることのないその他の物質を少量含んでいてもよいことを意味する。好ましくは、本発明の組成物は熱硬化性ポリマーを含まない。
【0067】
本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物は多くの有用な物品及び部品を製造するのに有用である。特に適した物品としては、典型的には優れた燃焼性等級をもつことが要求されるテレビキャビネット、コンピューターのモニター、プリンターハウジングが包含される。その他の用途としては自動車用品及び小型家庭用品が包含される。
【0068】
以下の実施例は本発明を説明するために提供される。実施例は本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、限定すると解釈されるべきではない。特に断りの記載がない限り、全ての部及び%は重量基準である。
【0069】
[実施例]
燃焼性等級はUL−94垂直(V)又はUL−94水平(HB)燃焼性テストによるテストによって得られる。垂直燃焼テストの場合、12.5mmx125mmで所望の厚みをもつ5個のテスト試料を手術用木綿上に垂直に吊るし18.75mmのブンゼンバーナーで点火させ;それぞれ10秒の点火を2回サンプルに適用する。等級基準は、各点火後の後燃焼時間の合計、二次点火後の赤熱時間、及び棒が木綿を点火する燃焼粒子をぽたぽた落とすかどうかを含む。
【0070】
メルトフローレートはASTM D1238に従って決定された。
【0071】
アイゾットはASTM D256に従って決定された。
【0072】
テンサイルはASTM D638に従って決定された。
【0073】
伸び率(%)はASTM D638に従って決定された。
【0074】
ビカットはASTM D1525に従って決定された。
【0075】
変性エポキシノボラック樹脂の製造手順
変性エポキシノボラック樹脂は、機械式撹拌機、加熱ジャケット、窒素吹き込み口及び熱交換器付きの10L鋼製反応器で製造された。DEN438(ダウエポキシノボラック)(57wt%)を125と185℃の間の温度で、2−フェニルフェノール(43wt%)と接触させた。フェノールの約20−30%をエポキシノボラックと一緒に反応器に充填しそして110℃に加熱した。合計固体成分当たり約1000ppmの酢酸トリフェニルエチルホスフォニウムを樹脂に加えそして130℃に加熱した。変性化合物の残りを反応混合物中に少しずつ加え反応混合物の温度が185℃以下で制御できるようにした。変性化合物を全量加えた後で、反応混合物の温度を約30分間175℃に保ちそして生成物を固体として削り取った。最終生成物はエポキシ含有量2.83%で、熔融粘度は150℃で0.20Paそして樹脂のTgは45/43℃であった。
【0076】
高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、Mw185,000、ゴム含量10.5%、モノモーダル分布(平均2ミクロン)、鉱油0.3wt%)、ポリフェニレンオキサイド及び変性エポキシノボラック(上記で調製された、DEN/OPP)の組成物を熔融ブレンドしそして射出成形した。生成物をワーナー−フライドラー30mm二軸押し出し機を使用し温度ゾーン125、180、245、250及び260℃でコンパウンド化した。サンプルはデマッグ射出成形機を使用し、温度ゾーン226,226,230及び230℃、そして型温度54℃で射出成形した。
【0077】
【表1】

【0078】
DEN=ダウエポキシノボラック438
OPPは2−フェニルフェノール
EP−500は大八化学社から市販されているジホスフェート
ノボラックはベークライト社の製品で、製品番号は0790K03である
エポキシノボラックは平均官能基5.5とエポキシ当量(重量)187をもつ多官能性エポキシノボラックであった。
【0079】
さらなる組成物が上述の工程に従ってほぼ同様にして調製され、得られた組成物を以下のテスト方法を使用して下表にまとめて示し評価した:
【0080】
メルトフローレート(MFR)はISO1183に従って決定された。
【0081】
アイゾットはISO180に従って決定された。
【0082】
テンサイルイールド(Ty)、テンサイルモジュラス及び伸び率(%)はISO527に従って決定された。
【0083】
熱変形温度(HDT)はISO75に従って、条件1.8MPa及び120℃/hrで決定された。
【0084】
これらの実験においては、使用されたPPO成分は約70%のポリフェニレンオキサイドポリマー(PPO)と約30%のポリスチレンとゴムのブレンド物(下表の全体のHIPS成分の一部と見做される)とのブレンド樹脂、旭N−2245であった。下表で参照されているHIPSフィードストック樹脂は上記の実験で記載され使用された高耐衝撃性ポリスチレン樹脂である。これらの組成物においては、リン含有化合物はビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)であるBAPP及びレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)であるRDPである。変性エポキシ樹脂は上記の実験で記載されたように調製された変性エポキシノボラック樹脂でありそしてオルソフェニルフェノールとダウエポキシノボラック(DEN438)との反応生成物である。下記のサンプル組成物7および8に示される結果は熟練した当業者に公知の組成物及び物性モデル化技術に基づいている。
【0085】
【表2】

【0086】
【特許文献12】USP5,275,853
【特許文献13】USP5,496,910
【特許文献14】USP3,305,528
【特許文献15】USP2,727,884
【特許文献16】USP3,639,372
【特許文献17】USP3,123,655
【特許文献18】USP3,346,520
【特許文献19】USP3,639,522
【特許文献20】USP4,409,369
【特許文献21】USP3,306,874
【特許文献22】USP3,306,875
【特許文献23】USP3,257,357
【特許文献24】USP3,257,358
【特許文献25】USP3,356,761
【特許文献26】UKP1,291,609
【特許文献27】USP3,337,499
【特許文献28】USP3,219,626
【特許文献29】USP3,342,892
【特許文献30】USP3,344,166
【特許文献31】USP3,384,619
【特許文献32】USP3,440,217
【特許文献33】USP3,442,885
【特許文献34】USP3,573,257
【特許文献35】USP3,455,880
【特許文献36】USP3,382,212
【特許文献37】USP3,383,435
【特許文献38】USP5,405,931
【特許文献39】USP6,291,627
【特許文献40】USP6,486,242
【特許文献41】WO99/00451
【特許文献42】USP Re.36,188
【特許文献43】USP5,672,645
【特許文献44】USP5,276,077
【特許文献45】USP2,409,910
【特許文献46】USP2,515,250
【特許文献47】USP2,669,751
【特許文献48】USP2,848,428
【特許文献49】USP2,928,130
【特許文献50】USP3,121,130
【特許文献51】USP3,121,911
【特許文献52】USP3,770,688
【特許文献53】USP3,815,674
【特許文献54】USP3,960,792
【特許文献55】USP3,966,381
【特許文献56】USP4,085,073
【特許文献57】USP4,146,563
【特許文献58】USP4,229,396
【特許文献59】USP4,302,910
【特許文献60】USP4,421,866
【特許文献61】USP4,438,224
【特許文献62】USP4,454,086
【特許文献63】USP4,486,550
【特許文献64】USP3,751,377
【特許文献65】USP3,817,669
【特許文献66】USP5,424,016
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物は優れた燃焼性等級をもつことが要求されるテレビキャビネット、コンピューターのモニター、プリンターハウジング及び自動車用品や小型家庭用品等の射出成形品用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性ポリマー又はポリマーブレンド物、及び(B)エポキシ樹脂の合計重量基準で0−20wt%の残留エポキシ基を含む変性した多官能性エポキシ樹脂、及び(C)リン含有化合物、からなるハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項2】
(A)がビニル芳香族モノマー又はその水素化物から製造されるポリマー、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー/ポリカーボネート組成物、ヒドロキシフェノキシエーテルポリマー、ポリフェニレンエーテルポリマー、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリオレフィンカーボンモノオキサイドインターポリマー、ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー、オレフィンコポリマー及びホモポリマー、ポリフェニレンオキサイド及びそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択されるものである請求項1記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項3】
(A)がスチレン−ブタジエンブロックコポリマー、ポリスチレン、高耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーからなる群から選択されるものである請求項2記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項4】
ハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物の合計重量に対して(A)が40−94wt%、(B)が1−30wt%、そして(C)が5−30wt%である請求項1記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項5】
(B)が次式の構造:
【化1】

ここで“R”は水素、C −C アルキルヒドロキシ又はC −C アルキル、例えば、メチル、そして“n”は0又は1−10の整数で、“n”は好ましくは0−5の平均値をもつ;
【化2】

ここで、Glyはグリシジル基である;及び
【化3】

から選択される多官能性エポキシ樹脂由来の変性した多官能性エポキシ樹脂である請求項1記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項6】
変性した多官能性エポキシ樹脂が平均で分子当たり一つより多いエポキシ基をもっているエポキシ樹脂から製造された物質である請求項1記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項7】
変性した多官能性エポキシ樹脂が一つより多い変性剤で機能的に変性したものである請求項1記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項8】
変性した多官能性エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の合計重量基準で、15wt%以下の残留エポキシ基を含んでいる請求項1記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項9】
変性した多官能性エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の合計重量基準で、12wt%以下の残留エポキシ基を含んでいる請求項8記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項10】
変性した多官能性エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の合計重量基準で、10wt%以下の残留エポキシ基を含んでいる請求項1記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項11】
(A)所望により、組成物の合計重量基準で、10−35wt%のポリフェニレンエーテルポリマーを含んでいてもよい、組成物の合計重量基準で、40−94wt%の熱可塑性ポリマー、(B)エポキシ樹脂の合計重量基準で0−20wt%の残留エポキシ基を含む、組成物の合計重量基準で1−30wt%の変性した多官能性エポキシ樹脂、及び(C)組成物の合計重量基準で、5−30wt%のアリールホスフェートのようなリン化合物、から本質的になる請求項1記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項12】
(A)の熱可塑性組成物がビニル芳香族モノマー又はその水素化物から製造されるポリマー、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ポリカーボネート組成物、ポリフェニレンエーテル樹脂、ヒドロキシフェノキシエーテルポリマー、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、エチレンビニルアルコールコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、ポリオレフィンカーボンモノオキサイドインターポリマー、ポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー、オレフィンコポリマー及びホモポリマー及びそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択されるものである請求項11記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項13】
(A)の熱可塑性ポリマーがスチレン−ブタジエンブロックコポリマー、ポリスチレン、高耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)コポリマー及びスチレン−アクリロニトリルコポリマーからなる群から選択されるものである請求項12記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項14】
変性した多官能性エポキシ樹脂が平均で分子当たり一つより多いエポキシ基をもっているエポキシ樹脂から製造された物質である請求項11記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項15】
変性した多官能性エポキシ樹脂が一つより多い変性剤で機能的に変性したものである請求項11記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項16】
変性した多官能性エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の合計重量基準で、15wt%以下の残留エポキシ基を含んでいる請求項11記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項17】
変性した多官能性エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の合計重量基準で、12wt%以下の残留エポキシ基を含んでいる請求項16記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項18】
変性した多官能性エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の合計重量基準で、10wt%以下の残留エポキシ基を含んでいる請求項17記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物。
【請求項19】
請求項1又は請求項18記載のハロゲンを含まない耐火性ポリマー組成物から製造された物品。

【公表番号】特表2006−517253(P2006−517253A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503389(P2006−503389)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/003499
【国際公開番号】WO2004/072170
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(502130582)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレーテッド (21)
【Fターム(参考)】