説明

ハロゲン化物除去装置

【課題】バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスから的確に塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度に除去する。
【解決手段】アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤(パッケージ32)を充填した反応容器を備え、ハロゲン化物が数十ppm程度の低濃度になるように原料ガス中のハロゲン化物を吸収させる消石灰等の粗除去剤を供給する粗除去剤供給ホッパー22を上流側の煙道21に備え、上流側ガス温度を露点以下に下げないで処理する乾式ガス精製により原料ガスを流通させてハロゲン化物を吸収させ、原料ガス中のハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス温度を露点以下に下げない乾式法により原料ガスから塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を除去するハロゲン化物除去装置に関し、原料ガスからハロゲン化物を的確に除去できるように企図したものである。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や廃棄物の減量化が求められており、バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスを発電機器(燃料電池やガスタービン、ガスエンジン等)の燃料ガスとすることが考えられている。バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスには不純物が含まれる場合があり、燃料電池やガスタービン、ガスエンジン等の発電機器の燃料ガスとして用いるには、発電機器の性能を維持し、また環境に与える影響を軽減するため、事前に不純物を除去する必要がある。バイオマスや廃棄物、また化石燃料には塩素やフッ素が含まれる場合があり、原料ガスに塩化水素やフッ化水素として混入する可能性がある。これらのハロゲン化物は腐食性を有する物質であるため、数ppmオーダーで除去する必要がある。
【0003】
ガス中のハロゲン化物を除去する技術としては、スクラバー等を用いた湿式法によりガスを溶液で洗浄してハロゲン化物を溶解させて除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、湿式法では、ガス温度を室温程度まで下げる必要があり、またハロゲン化物を吸収した溶液を処理する排水設備等の大掛かりな設備を必要とする。更に、湿式法は一般的に燃焼排ガスに含まれるハロゲン化物の数十ppm程度までの除去に使用される技術であり、数ppm以下の極低濃度までハロゲン化物を除去することは困難である。
【0004】
スクラバー等を用いた湿式法に対し、ガス温度を大幅に、例えばガス中の水分が凝縮する露点以下に下げずに、吸収物質でハロゲン化物を除去する乾式法は、ガス温度を調整する際に発生するエネルギー損失を削減でき、またガス温度を調整するための熱交換器や排水設備等の機器が不要で簡素なシステムと期待される。
【0005】
乾式法で燃料ガス中の塩化水素を除去する技術としては、700℃〜1500℃の範囲でガス中に水酸化ナトリウムの溶液を注入し、生成した塩化ナトリウムを分離除去する技術が開示され(例えば、特許文献2参照)、塩化水素濃度を数ppmレベルまで低下させることが可能である。しかし、温度条件が700℃〜1500℃と非常に高温であるため、ガス化炉に直接あるいは出口ガスラインに、強アルカリ性の水酸化ナトリウム溶液を注入するという高度な技術及び設備が必要となる。
【0006】
一方、乾式法を適用したゴミ焼却設備等のハロゲン化物を除去する技術として、ガス流に吸収物質を吹き込み、ハロゲン化物を吸収させた後にフィルタで除去する技術が知られている。この技術を適用して燃料ガスを精製する技術が種々開示されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に開示された技術では、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸ナトリウムを吹き込んでバグフィルターで塩化水素成分を除去するもので、300〜600℃の温度条件でハロゲン化物を除去することができる。しかし、塩化水素の反応率が95%以上とした技術であり、高濃度のハロゲン化物を含む燃料ガスを燃料電池やガスエンジン等に適用するために数ppm以下の極低濃度までハロゲン化物を除去するには、更に高精度なガス精製処理技術が必要である。
【0007】
このため、化石燃料、バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスに対してガス温度を露点以下に下げないで不純物を除去する乾式法により、極低濃度まで的確に塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を除去する技術は確立されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−220316号公報
【特許文献2】特許第3565419号公報
【特許文献3】特開2002−130628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、例えば、化石燃料、バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスから的確に塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度に除去することができるハロゲン化物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は先に、アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物除去剤を見出し(特許第3571219号公報、特開2006−95423号公報)、ハロゲン化物除去剤をガス精製装置に最適に適用するために本発明のハロゲン化物除去装置を発明するに至ったものである。
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明のハロゲン化物除去装置は、アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤を充填した反応容器を備え、反応容器は、原料ガスの流れ方向に複数のパッケージが移動自在に備えられて構成され、パッケージの内部にハロゲン化物吸収剤がそれぞれ充填され、上流側のパッケージを取り外した際に残りのパッケージを上流側に移動させると共に新品のハロゲン化物吸収剤が充填されたパッケージを下流側に装着し、ガス温度を露点以下に下げないで不純物除去処理する乾式ガス精製により、原料ガスを流通させてハロゲン化物が数ppm以下の極低濃度になるように原料ガス中のハロゲン化物を吸収させることを特徴とする。
【0012】
請求項1に係る本発明では、アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤が反応容器に充填され、反応容器に原料ガスを流通させることでハロゲン化物吸収剤にハロゲン化物を吸収させ、ハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にする。ハロゲン化物吸収剤は、充填強度とハロゲン化物の吸収性能が維持された状態にペレット状に成形されている。
【0013】
そして、反応容器は、原料ガスの流れ方向に複数のパッケージが移動自在に備えられて構成され、パッケージの内部にハロゲン化物吸収剤がそれぞれ充填され、上流側のパッケージを取り外した際に残りのパッケージを上流側に移動させると共に新品のハロゲン化物吸収剤が充填されたパッケージを下流側に装着するので、複数のパッケージにハロゲン化物吸収剤を充填し、ハロゲン化物の濃度が高い上流側のパッケージから取り外すと共に、ハロゲン化物濃度が低い下流側に新品のハロゲン化物吸収剤が充填されたパッケージを装着することができる。
【0014】
そのため、使用済みのハロゲン化物吸収剤の交換が容易に行え、しかも、完全に使用された上流側のハロゲン化物のみを抜き出せることから、ハロゲン化物吸収剤を十分に除去反応に活用しながらハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にすることができる。また、既存の煙道を改良してパッケージを収納することで、新規の反応容器を設置することなくハロゲン化物吸収剤を原料ガスの流通経路に備えた状態にすることができる。
【0015】
また、本発明のハロゲン化物除去装置は、粗除去剤によりハロゲン化物が数十ppm程度の低濃度になるように原料ガス中のハロゲン化物を吸収させるハロゲン化物粗精製手段を上流側に備えることが可能である。
【0016】
ハロゲン化物粗精製手段を備えることにより、粗除去剤を用いてハロゲン化物粗精製手段によりハロゲン化物を数十ppm程度の濃度にした後、反応容器のハロゲン化物吸収剤にハロゲン化物を吸収させてハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にすることができ、少ない量のハロゲン化物吸収剤によりハロゲン化物を極低濃度に除去することができ、吸収剤の使用量と運用コストを低減することができる。
【0017】
また、請求項2に係る本発明のハロゲン化物除去装置は、請求項1に記載のハロゲン化物除去装置において、原料ガスは、化石燃料、バイオマス、廃棄物をガス化したガスであり、精製された燃料ガスは燃料電池やガスタービン、ガスエンジン等の発電機器の燃料として用いられることを特徴とする。
【0018】
請求項2に係る本発明では、化石燃料、バイオマス、廃棄物をガス化した原料ガスからハロゲン化物を吸収してハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にした燃料ガスを得ることができ、精製された燃料ガスを燃料電池やガスタービン、ガスエンジン等の発電機器の燃料として用いることができる。
【0019】
そして、本発明の参考例としてハロゲン化物除去装置は、ガス温度を露点以下に下げないで不純物除去処理する乾式ガス精製により原料ガスに、アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤が吹き込まれる煙道と、ハロゲン化物を吸収した後のハロゲン化物吸収剤を物理的な濾過によって除去することでハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にする物理的濾過手段とを備えたものが挙げられる。
【0020】
参考例では、原料ガスが流通する煙道にアルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤を吹き込み、ハロゲン化物をハロゲン化物吸収剤に吸収させた上で物理的濾過手段により除去し、ハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にする。
【0021】
そして、参考例において、粗除去剤によりハロゲン化物が数十ppm程度の低濃度になるように原料ガス中のハロゲン化物を吸収させるハロゲン化物粗精製手段を上流側に備えることができる。
【0022】
粗除去剤を用いたハロゲン化物粗精製手段によりハロゲン化物を数十ppm程度の低濃度にした後、ハロゲン化物吸収剤にハロゲン化物を吸収させてハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にすることで、少ない量のハロゲン化物吸収剤によりハロゲン化物を極低濃度に除去することができ、吸収剤の使用量と運用コストを低減することができる。
【0023】
また、参考例において、反応容器に、ハロゲン化物の負荷に応じた量のハロゲン化物吸収剤を供給し、反応容器から、使用済みのハロゲン化物吸収剤を排出することができる。
【0024】
ハロゲン化物の負荷に応じてハロゲン化物吸収剤の供給を制御することで、ハロゲン化物吸収剤を効率的に使用することができ、吸収剤の使用量と運用コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のハロゲン化物除去装置は、例えば、バイオマスや廃棄物から製造した原料ガスから的確に塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の参考例のハロゲン化物除去装置を備えた乾式ガス精製システムの概略系統図である。
【図2】塩化水素およびフッ化水素のガス濃度の経時変化を表すグラフである。
【図3】本発明の一実施例に係るハロゲン化物除去装置の概略系統図である。
【図4】本発明の他の参考例に係るハロゲン化物除去装置の概略系統図である。
【図5】本発明の他の実施例に係るハロゲン化物除去装置の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、化石燃料、バイオマス、廃棄物からなる固形燃料をガス化して得られた原料ガス、即ち、不純物として塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を含む原料ガスを精製して燃料電池やガスタービン、ガスエンジン等の発電機器の燃料ガスとするガス化設備に適用され、塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度に除去するハロゲン化物除去装置である。
【0028】
図1には本発明の参考例に係るハロゲン化物除去装置を備えた乾式ガス精製システムの概略系統、図2にはバイオマスをガス化したガスを想定した模擬原料ガスに含まれる塩化水素とフッ化水素をアルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤に流通した後のハロゲン化物濃度の経時変化を表すグラフを示してある。図1に基づいて乾式ガス精製システムの全体を説明する。
【0029】
図に示すように、ガス化炉1で製造された原料ガスは、本発明のハロゲン化物除去装置2(詳細は後述する)で塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物が1ppm以下の極低濃度に除去される。また、原料ガスに含まれるダスト等の固体状不純物についても、バグフィルター11で除去される。ハロゲン化物除去装置2を通過した原料ガスは、熱交換器8で所定の温度に調整された後、脱硫反応器5の脱硫剤4で硫黄化合物が吸収されて除去される(例えば、運転温度250℃〜450℃)。ダスト、ハロゲン化物ならびに硫黄化合物が除去された原料ガスは燃料ガスとして発電機器6(例えば、溶融炭酸塩型燃料電池、ガスエンジン、ガスタービン等)に送られる。
【0030】
また、ガス化炉1で製造された原料ガスにガス状の重金属類や有機塩素化合物等が含まれる場合には、活性炭等の吸着剤を充填した重金属・有機塩素化合物除去装置を別途備えることにより、重金属類、有機塩素化合物を除去することができる。重金属・有機塩素化合物除去装置を備えることで、不純物として多種の不純物が入っている原料ガスを適用する場合にも、極めて高精度に精製し、発電機器6の燃料ガスに用いることができる。
【0031】
ガス化炉1で製造された原料ガスに重金属類や有機塩素化合物等が含まれる場合、例えば、ガス化炉1でバイオマス等がガス化された原料ガスが適用される場合、別途重金属類除去装置を備えることにより、金属水銀蒸気(Hg)をはじめ重金属類、有機塩素化合物を除去することができる。重金属類除去装置を備えることで、不純物として多種の不純物が入っている原料ガスを極めて高精度に精製して、発電機器6の燃料ガスに用いることができる。
【0032】
ハロゲン化物除去装置2を説明する。
【0033】
ハロゲン化物除去装置2には、上流側にバグフィルター11が備えられ、バグフィルター11の入口側の煙道21にはハロゲン化物粗精製手段として粉末の粗除去剤を投入するための粗除去剤供給ホッパー22が接続されている。粗除去剤供給ホッパー22により、粗除去剤、例えば、安価なCa(OH)が煙道21内に供給される。Ca(OH)が煙道21内に供給されることで、原料ガス中のハロゲン化物がCa(OH)に吸収されて数十ppm程度の低濃度に除去される。
【0034】
バグフィルター11の下流には熱交換器3が設けられ、熱交換器3の下流にはハロゲン化物を精密精製する反応容器12が備えられ、反応容器12には、ハロゲン化物吸収剤、即ち、アルミン酸ナトリウムを含有したペレット状に成形された吸収剤13が充填されている。ハロゲン化物が数十ppm程度の低濃度とした原料ガスを熱交換器3で所定の温度に調整した原料ガスを反応容器12に流通させることで、原料ガス中のハロゲン化物がハロゲン化物吸収剤に吸収されて数ppm以下の極低濃度に除去される。
【0035】
Ca(OH)の吹き込みは、バグフィルター11の所定の運転温度(例えば、120℃〜160℃)で行われている。このため、バグフィルター11の後流側に設けた熱交換器3によって原料ガスを吸収剤13所定の運転温度(例えば、200℃〜400℃、もしくはそれ以上)に昇温して使用している。
【0036】
尚、熱交換器3で原料ガスを脱硫反応器5所定の運転温度(例えば、250℃〜450℃)に調整することにより、脱硫反応器5の上流側の熱交換器8を省略することも可能である。また、吸収剤13をバグフィルター11と同等の温度で使用する場合であれば、熱交換器3を省略して原料ガスを昇温させずに反応容器12に流通させることも可能である。
【0037】
粗除去剤供給ホッパー22から供給した粗除去剤によりハロゲン化物を数十ppm程度の低濃度にした後、反応容器12に充填した吸収剤13によりハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にしている。このため、ハロゲン化物吸収剤単独で用いる場合よりも少ない量の吸収剤13により、ハロゲン化物を極低濃度に除去することができる。言い換えれば、粗除去剤を併用することで吸収剤が除去すべきハロゲン化物の負荷が軽減され、吸収剤13の使用量、ならびに運用コストを低減することができる。
【0038】
一方、反応容器12の下流側(上部)には新品の吸収剤13を供給するための吸収剤供給ホッパー23が接続され、また、反応容器12の上流側(下部)には使用済みの吸収剤13を排出するための吸収剤払い出しホッパー24が接続されている。
【0039】
吸収剤供給ホッパー23からは、ハロゲン化物の除去に伴う吸収剤13の消費状況に応じて新品の吸収剤13が供給され、併せて使用済みの吸収剤13が吸収剤払い出しホッパー24から排出される。吸収剤13の消費状況は、原料ガスのハロゲン化物の負荷、すなわち原料ガスのハロゲン化物濃度、ガス流量、および運転時間等で把握するとともに、反応容器12の出口ガス中のハロゲン化物濃度を測定することによって把握される。
【0040】
ハロゲン化物の負荷に応じて新品の吸収剤13を供給すると共に使用済みの吸収剤13を排出するようにしているので、即ち、ハロゲン化物の負荷に応じて吸収剤13の供給を制御しているので、反応容器12による原料ガスからのハロゲン化物除去を連続的に実施することができる。
【0041】
バイオマスをガス化したガスを想定した模擬原料ガスに含まれる塩化水素とフッ化水素を、アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤に流通した場合におけるハロゲン化物濃度の経時変化を評価した図2に基づいて説明する。評価条件は、温度が300℃、圧力が常圧、ガス流量が1000ml/min、空間速度(SV)が3000h−1で、模擬原料ガスの組成をCOが17%、COが8.5%、Hが25%、HOが28%、塩化水素(HCl)500ppm、フッ化水素(HF)500ppm、Nバランスとした。
【0042】
模擬原料ガスに含まれるHCl、HFは、試験開始直後には反応容器の出口に検出されないことから、これらのハロゲン化物がハロゲン化物吸収剤によって極低濃度に除去されていることが判る。除去に伴いハロゲン化物吸収剤は消費されてゆくが、本評価条件ではHClについては約700分、HFについては約1100分にわたって1ppm以下を維持することが確認された。これにより、バイオマスをガス化した原料ガスから、充分に実用可能な長時間にわたってハロゲン化物を1ppm以下の極低濃度まで除去できることが判る。
【0043】
従って、ハロゲン化物除去装置2では、ガス化炉1で製造された原料ガスから的確に塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度に除去することができ、ハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度に除去した原料ガスを脱硫反応器5に送ることができる。
【0044】
尚、原料ガスに含まれるハロゲン化物の濃度によっては、粗除去剤供給ホッパー22を省略することも可能である。
【0045】
図3に基づいて本発明の実施例を説明する。
【0046】
図3には本発明の一実施例に係るハロゲン化物除去装置の概略系統を示してある。図3に示した本発明の一実施例に係るハロゲン化物除去装置は、図1に示したハロゲン化物除去装置2に対応するもので、乾式ガス精製システムの全体構成は省略してあり、系統の接続状況は同一符号を示してある。
【0047】
ハロゲン化物除去装置31には、上流側にバグフィルター11が備えられ、バグフィルター11の入口側の煙道21にはハロゲン化物粗精製手段として粗除去剤供給ホッパー22が接続されている。粗除去剤供給ホッパー22により、粗除去剤、例えば、安価なCa(OH)が煙道21内に供給される。Ca(OH)が煙道21内に供給されることで、原料ガス中のハロゲン化物がCa(OH)に吸収されて数十ppm程度の低濃度に除去される。
【0048】
バグフィルター11の下流には反応容器としてパッケージ32が原料ガスの流れ方向に複数並設されている。複数のパッケージ32のそれぞれには、ハロゲン化物吸収剤、即ち、アルミン酸ナトリウムを含有したペレット状に成形された吸収剤13が充填されている。複数のパッケージ32は原料ガスの流れ方向に移動自在に備えられ、上流側(図中左側)の使用済み吸収剤となったパッケージ32を取り外した時に残りのパッケージを上流側に移動させると共に新品の吸収剤13が充填されたパッケージ32を最下流側(図中右側)に装着するようになっている。
【0049】
ハロゲン化物吸収剤を充填した複数のパッケージ32にハロゲン化物を含む原料ガスを流通させることで、ハロゲン化物が数ppm以下の極低濃度になるように原料ガス中のハロゲン化物が除去される。
【0050】
粗除去剤を用いて粗除去剤供給ホッパー22によりから供給した粗除去剤によりハロゲン化物を数十ppm程度の濃度にした後、複数のパッケージ32に充填した吸収剤13によりハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にしている。このため、ハロゲン化物吸収剤単独の場合よりも少ない量の吸収剤13により、ハロゲン化物を極低濃度に除去することができる。言い換えれば、粗除去剤を併用することで吸収剤が除去すべきハロゲン化物の負荷が軽減され、吸収剤13の使用量、ならびに運用コストを低減することができる。
【0051】
更に、複数のパッケージ32に吸収剤13を分割して充填しているので、一部の吸収剤13の交換が容易に行え、しかも完全に使用された上流側のハロゲン化物のみを抜き出せることから、吸収剤13を十分に除去反応に活用しながらハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度にすることができる。さらに、複数のパッケージ32は煙道に配置することもできるため、新規の反応容器を設置することなく煙道を反応容器として使用することが可能になり、設備コストを大幅に低減することができる。
【0052】
尚、図1に示した参考例と同様に、原料ガスに含まれるハロゲン化物の濃度によっては、粗除去剤供給ホッパー22を省略することも可能である。
【0053】
図4に基づいて本発明の他の参考例を説明する。
【0054】
図4には本発明の他の参考例に係るハロゲン化物除去装置の概略系統を示してある。図4に示したハロゲン化物除去装置は、図1に示したハロゲン化物除去装置2に対応するもので、乾式ガス精製システムの全体構成は省略してあり、系統の接続状況は同一符号を示してある。
【0055】
ハロゲン化物除去装置35の上流側にバグフィルター11が備えられ、バグフィルター11の下流には反応容器36、37が備えられている。上流側の反応容器36には粗除去剤、例えば、安価なCa(OH)の粗除去剤38が充填され、反応容器36に原料ガスを流通させることで、原料ガス中のハロゲン化物がCa(OH)に吸収されて数十ppm程度の低濃度に除去される。
【0056】
下流側の反応容器37にはハロゲン化物吸収剤、即ち、アルミン酸ナトリウムを含有したペレット状に成形された吸収剤13が充填されている。上流側の反応容器36を流通してハロゲン化物が数十ppm程度の低濃度になるようにされた原料ガスをハロゲン化物吸収剤を充填した反応容器37に流通させることで、ハロゲン化物が数ppm以下の極低濃度になるように原料ガス中のハロゲン化物が除去される。
【0057】
上述した参考例では、図1に示した参考例、図3に示した実施例と同様に、ハロゲン化物吸収剤単独の場合よりも少ない量の吸収剤13により、ハロゲン化物を極低濃度に除去することができる。言い換えれば、粗除去剤を併用することで吸収剤が除去すべきハロゲン化物の負荷が軽減され、吸収剤13の使用量、ならびに運用コストを低減することができる。
【0058】
尚、粗除去剤38と吸収剤13を同じ反応温度で使用することもできるので、一体型の反応容器を用いて粗除去剤38と吸収剤13を一つの反応容器に充填することも可能である。
【0059】
図5に基づいて本発明の他の実施例を説明する。
【0060】
図5には本発明の他の実施例に係るハロゲン化物除去装置の概略系統を示してあり、図1に示したハロゲン化物除去装置2に対応するもので、乾式ガス精製システムの全体構成は省略してあり、系統の接続状況は同一符号を示してある。
【0061】
図5に示すように、ハロゲン化物除去装置41の上流側にバグフィルター11が備えられ、バグフィルター11の下流には図4に示した粗除去剤38、例えば、安価なCa(OH)を充填した反応容器36が備えられ、反応容器36の下流には図3に示した複数のハロゲン化物吸収剤を充填したパッケージ32が備えられている。これにより、反応容器36に充填された粗除去剤38により原料ガスのハロゲン化物が数十ppm程度の低濃度にされ、使用済みの吸収剤の交換が容易な複数のパッケージ32に分割して充填された吸収剤13により原料ガスのハロゲン化物が数ppm以下の極低濃度にされる。
【0062】
上述したハロゲン化物除去装置を適用するガス化設備は、図1に示したシステムには限定されず、例えば、バイオマスや廃棄物から製造した原料ガス、あるいは、化石燃料から得られた原料ガス、即ち、多成分の不純物を有する原料ガスからハロゲン化物を数ppm以下の極低濃度に的確に除去するための設備であれば、ガス化設備の態様等は種々の設備に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、ガス温度を露点以下に下げないで不純物除去処理する乾式ガス精製により原料ガスから塩化水素やフッ化水素等のハロゲン化物を除去するハロゲン除去装置の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 バイオマスガス化炉
2、31、35、41 ハロゲン化物除去装置
3、8 熱交換器
4 脱硫剤
5 脱硫反応器
6 発電機器
11 バグフィルター
12、36、37 反応容器
13 吸収剤
21 煙道
22 粗除去剤供給ホッパー
23 吸収剤供給ホッパー
24 吸収剤払い出しホッパー
32 パッケージ
38 粗除去剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミン酸ナトリウムを含有したハロゲン化物吸収剤を充填した反応容器を備え、
反応容器は、原料ガスの流れ方向に複数のパッケージが移動自在に備えられて構成され、パッケージの内部にハロゲン化物吸収剤がそれぞれ充填され、上流側のパッケージを取り外した際に残りのパッケージを上流側に移動させると共に新品のハロゲン化物吸収剤が充填されたパッケージを下流側に装着し、
ガス温度を露点以下に下げないで不純物除去処理する乾式ガス精製により、原料ガスを流通させてハロゲン化物が数ppm以下の極低濃度になるように原料ガス中のハロゲン化物を吸収させる
ことを特徴とするハロゲン化物除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハロゲン化物除去装置において、
原料ガスは、化石燃料、バイオマス、廃棄物をガス化したガスであり、精製された燃料ガスは燃料電池やガスタービン、ガスエンジン等の発電機器の燃料として用いられる
ことを特徴とするハロゲン化物除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40557(P2012−40557A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219326(P2011−219326)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【分割の表示】特願2007−227048(P2007−227048)の分割
【原出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「新エネルギー技術研究開発/バイオマスエネルギー高効率転換技術開発(転換要素技術開発)/多燃料・多種不純物対応乾式ガス精製システム研究開発」、共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】