説明

ハロゲン含有ポリマーの安定化システム

【課題】ハロゲン含有ポリマーの安定化方法を提供する
【解決手段】少なくとも1つのポリアルキレングリコール、ならびに過塩素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アルキル硫酸、リンタングステン酸、HPF6、HBF4、およびHSbF6からなる群より選択される強酸の金属塩を少なくとも1つ含む熱安定化量の混合物を、前記ポリマーに加えることを含む方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの過塩素酸塩および少なくとも一つのポリアルキレングリコールを含む安定化剤システムに関する。より具体的には、本発明は、ポリアルキレングリコールおよび過塩素酸塩を含有する組成物を用いた、ハロゲン含有ポリマー、特には塩化ポリビニル(PVC)の熱安定化に関する。
【背景技術】
【0002】
PVCに用いられる熱安定化剤は、鉛、バリウム、カドミウム、スズ、カルシウムまたは亜鉛化合物を含む場合がある。環境への関心から、PVC化合物からこれら金属を排除し、それを有機ベースの化学物質に置き換えることに強い関心が集まっており、いくつかの有機ベースの安定剤が、提案されてきた。しかしながら、混合型の金属安定化剤に比して、それらのPVC安定化効率が低いこと、および/またはそれら高いコストが大きな問題となっている。
【0003】
カルシウム/亜鉛安定化剤は、鉛、カドミウムおよびバリウム安定化剤に比べて毒性は低い。Ca/ZnまたはCa/Mg安定化剤に使用可能なCa中間体の調製方法が、2002年7月3日出願の米国特許出願第10/190,130号に開示されている。
【0004】
Leeら、Polymer (Korea)19(5)、543-50(1995)および18(6)、1021-9(1994)は、PVC安定化のために、エポキシド化ダイズ油(ESO)およびステアリン酸Zn/Caと共に使用するポリ(エチレングリコール)PEG 400またはポリプロピレングリコールの使用を開示した。
【0005】
米国特許第6,348,517号は、滅菌中の電離放射線に対するPVC安定化のための、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール、ならびにアジパートおよびジベンゾエートなどのそれらのエステル、ならびにそれらのエーテルと、脂肪酸の混合型Zn/Ca塩の組合せの使用を開示している。
【0006】
JP50024388は、PVC安定化のための、エチレングリコール(0.1 phr)のH20/CCL4溶液と、2phrCa/Znステアリン酸塩およびESOとの組合せを開示している。
【0007】
JP56055445は、PVCのための安定化剤として、ポリエチレングリコールおよび/またはポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、およびβπジケトンを開示している。
【0008】
英国特許第1151108号は、PVCの光安定化のための、ジプロピレングリコールおよびペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールなどの、その他高沸点ポリオールの使用を開示している。
【0009】
FR1211814は、食物と接触することになるPVCを安定化することへの、ステアリン酸CaまたはNa2CO3と混合したグリセロールまたはプロピレングリコールの使用を開示している。
【0010】
金属安定化剤はまた、有機ベースの安定化剤(OBS)で置き換えられている。Modern Plastics, 2001年5月および米国特許第6,194,494号参照。
【0011】
WO02/48249 A2は、アミン/過塩素酸塩システムの使用を開示している。
【0012】
他の特許としては、過塩素酸塩および末端エポキシド化合物を用いた安定化に関する米国特許第5,543,449号ならびに過塩素酸、末端エポキシド化合物および酸化防止剤の使用に関する米国特許第5,519,077が挙げられる。
【0013】
発明の概要
本発明は、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、またはポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、あるいは約100〜約500、好ましくは約200〜約400、より好ましくは約200〜約300の範囲の分子量のポリプロピレングリコールと過塩素酸塩、例えばNaClO4またはBa(ClO42またはCa(ClO4)2との溶液または混合物の、PVCのための効果的な熱安定化剤としての使用に関する。安定化剤の2つの成分は、PVC安定化中に強力な相乗作用を生ずる。
【0014】
本発明は、PVCの熱安定化のために、ポリエチレングリコールなどの窒素を含まない有機中間体、および少量の、過塩素酸ナトリウムなどの金属過塩素酸塩を使用し、安定化剤から重金属イオンを排除する。この方法は、PVCを分解するアミンなどの窒素を含む塩基性および/または弱塩基性の有機化学物質の使用を回避する。他の有機ベースのPVC安定化剤とは異なり、これらの安定化剤は高い効果を有し、バリウム/亜鉛の塩またはカルシウム/亜鉛の塩をベースとした、特定産業で標準的な混合型金属安定化剤と同等またはそれを凌ぐものである。
【0015】
より具体的には、本発明は、ハロゲン含有ポリマーの安定化方法を目的とし、前記方法は、前記ポリマーに、
A)次の一般式:
【化5】


または
【化6】


または
【化7】


の少なくとも1つのポリアルキレングリコールであって、式中、
R1、R2およびR5は、水素、アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、チオールおよびチオールアルキルからなる群より独立に選択され、
R3およびR4は、水素、アルキルおよびアシルからなる群より独立に選択され、そして
nは1〜20の整数であり、
mは3であり、P中の3つの置換基は同一または異なっていてもよい、前記少なくとも1つのポリアルキレングリコール、および
B)過塩素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アルキル硫酸、リンタングステン酸、HPF6、HBF4およびHSbF6からなる群より選択される、少なくとも1つの強酸の金属塩
を含む熱安定化量の混合物を加えるステップを含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、ハロゲン含有ポリマーおよび以下を含む、熱安定化量の混合物を含む熱安定樹脂組成物を目的とし、前記組成物は、ハロゲン含有ポリマーと、
A)次の一般式:
【化8】


または
【化9】


または
【化10】


の少なくとも1つのポリアルキレングリコールであって、式中、
R1、R2およびR5は、水素、アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、チオールおよびチオールアルキルからなる群より独立に選択され、
R3およびR4は、水素、アルキルおよびアシルからなる群より独立に選択され、そして
nは1〜20の整数であり、
mは3であり、P中の3つの置換基は同一または異なっていてもよい、前記少なくとも1つのポリアルキレングリコール、および
B)過塩素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アルキル硫酸、リンタングステン酸、HPF6、HBF4およびHSbF6からなる群より選択される、少なくとも1つの強酸の金属塩
を含む熱安定化量の混合物とを含む。
【0017】
実施例の詳細な説明
本発明は、ハロゲン含有ポリマーの安定化方法を目的とし、前記ポリマーに、
A)次の一般式:
【化11】


または
【化12】


または
【化13】


の少なくとも1つのポリアルキレングリコールであって、式中、
R1、R2およびR5は、水素、アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、チオールおよびチオールアルキルからなる群より独立に選択され、
R3およびR4は、水素、アルキルおよびアシルからなる群より独立に選択され、そして
nは1〜20の整数であり、
mは3であり、P中の3つの置換基は同一または異なっていてもよい、前記少なくとも1つのポリアルキレングリコール、および
B)過塩素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アルキル硫酸、例えば、ドデシル硫酸、リンタングステン酸、HPF6、HBF4およびHSbF6からなる群より選択される、少なくとも1つの強酸の金属塩
を含む熱安定化量の混合物を加えるステップを含む。
【0018】
これら化合物の混合物は使用できる。
【0019】
R1、R2、R3、R4またはR5のいずれかがアルキルの場合、それらはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシルなどの炭素原子が1〜20個のアルキル、前記のイソマー等であることが好ましい。
【0020】
R1、R2、R3、R4またはR5のいずれかがヒドロキシアルキルまたはチオアルキルの場合、それらは、例えばヒドロキシメチル、チオメチル等でよい。
【0021】
R3および/またはR4がアシルの場合、それらはフォルミル、アセチル、カプロイル、ラウリル、パルミトイル、ステアリル、ミリスチル、オレイル、リノレイル、パルミトイル、ブチリル、リシノレイル、エチルヘキサノイル、シトリルなどの、炭素原子が1〜20個のアシルであることが好ましい。
【0022】
本発明に有用であるポリアルキレングリコールの好ましい例としては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、およびポリエチレングリコール、または分子量約100〜約500の範囲のポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0023】
追加の、有用ポリアルキレングリコールとしては、ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ヘプタグリセロール、オクタグリセロール、デカグリセロール、トリス(ジプロピレングリコール)ホスフィット、トリス(トリプロピレングリコール)ホスフィット、トリス(テトラプロピレングリコール)ホスフィット、トリス(ジエチレングリコール)ホスフィット、トリス(トリエチレングリコール)ホスフィット、トリス(テトラエチレングリコール)ホスフィット等のポリグリセロールが挙げられる。
【0024】
これら塩素含有ポリマー組成物内の、安定化のために存在するポリアルキレングリコールの量は、100重量部のPVCに対し、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜2重量部であることが好都合である。
【0025】
強酸塩のカチオンは、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンであることが好ましい。ナトリウム、カリウムおよびカルシウム塩が好ましい。NaClO4、Ca(ClO4)2、トリフルオロメタンスルホネートナトリウム、NaPF6、NaBF4、NaSbF6、ドデシル硫酸ナトリウム、トリフルオロ酢酸ナトリウム、およびリンタングステン酸ナトリウム水和物がより好ましい。
【0026】
本発明の実施での使用に特に好ましいものは、過塩素酸の塩である。これらの例は式M(ClO4)mの塩であり、式中MはLi、Na、Mg、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Al、La、CsまたはCeであり、mは原子価Mに応じて1、2または3である。これら過塩素酸塩は、各種一般的に見られる形状のもの、例えば塩または水溶液もしくは有機溶媒溶液を、それ自体またはPVC、ケイ酸カルシウム、ゼオライトまたはハイドロタルサイトなどの支持物に吸着させて使用することができる。その例としては、アルコール(ポリオール、シクロデキストリン)を用いて、またはエーテルアルコールもしくはエステルアルコールを用いて錯体化または溶解した過塩素酸塩である。EP 0 394 547、EP 0 457 471およびWO94/24200は別の実施態様を記載する。最も好ましいものは、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、および過塩素酸カルシウムである。
【0027】
過塩素酸塩化合物の使用量の例は、100重量部のPVCに対し、0.001〜5重量部、都合良くは0.01〜3重量部、特に好ましくは0.01〜2重量部である。
【0028】
発明はまた、上記安定化剤システムと、少なくとも1つのその他の従来の添加物または安定化剤との組合せを提供する。ポリオールおよび/または二糖アルコール類、グリシジル化合物、ハイドロタルサイト、ゼオライト(アルカリ金属のアルミノケイ酸塩、およびアルカリ土類金属アルミノケイ酸塩)、充填剤、金属石鹸、酸化物および水酸化物などのアルカリ金属およびアルカリ土類金属化合物、潤滑剤、可塑剤、ホスフィット、顔料、エポキシ化脂肪酸エステルおよびその他エポキシ化合物、酸化防止剤、UV吸収剤および光安定化剤、蛍光増白剤、ならびに発泡剤が好ましい。特に好ましいものは、エポキシ化ダイズ油、アルカリ土類金属またはアルミニウム石鹸、およびホスファートである。
【0029】
特に好ましいものは、生理的に危険でない生成物を生成するのに好適な成分である。
【0030】
このタイプの化合物の追加例は、以下後段に掲載し、説明する(Handbook of PVC Formulating, E.J. Wickson, John Wiley & Sons, New York, 1993およびSynoptic Document No.7, Scientific Committee for Food (SCF)-EU参照)。
【0031】
1.ポリオールおよび二糖アルコール類
このタイプの、可能な化合物の例は:グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、ビス(トリメチロールプロパン)、ポリビニルアルコール、ビス(トリメチロールエタン)、トリメチロールプロパン、糖および糖アルコール類である。この中で、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ならびにマルビット(Malbit)、ラクチトール、セロビトールおよびパラチニット(Palatinit)などの二糖アルコール類が好ましい。
【0032】
ソルビトールシロップ、マンニトールシロップ、およびマルチトールシロップなどのポリオールシロップも用いることができる。
【0033】
これらポリオールは、一般的には、100重量部のPVCに対し、0.01〜20重量部、都合良くは0.1〜20重量部、特には0.1〜10重量部の量が用いられる。
【0034】
2.グリシジル化合物
これら化合物は、炭素原子、酸素原子、窒素原子または硫黄原子に直接結合するグリシジル基:
【化14】


を含有し、式中のR5およびR7は共に水素であり、R6は水素またはメチルであり、そしてn=0であるか、あるいは式中のR5およびR7は一緒になって-CH2-CH2-または-CH2-CH2-CH2-であり、その場合は、R6は水素であり、nは0または1である。
【0035】
2つの官能基を有するグリシジル化合物を用いることが好ましい。しかしながら、原理上は、1つ、3つ、またはそれ以上の官能基を有するグリシジル化合物も用いることができる。
【0036】
芳香族基を有するジグリシジル化合物が主に用いられる。使用されるエポキシ樹脂の例は、ビスフェノールAとエピクロリドリン(epichloridrin)との反応生成物であり、平均分子量≧700を有するGY-250(Ciba Specialty Chemicals, Tarrytown, NY)である。
【0037】
末端エポキシ化合物の使用量は、100重量部のPVCに対し、少なくとも0.1部、好ましくは0.1〜50重量部、都合良くは1〜30重量部、特には1〜25重量部である。
【0038】
3.ハイドロタルサイト
これら化合物の化学的組成は、例えばDE 3 843 581、米国特許第4,000,100号、EP 0 062 813、およびWO93/20135より当業者に公知である。
【0039】
ハイドロタルサイト系列の化合物は、次の一般式で表すことができる:
【数1】


式中の、
M2+=Mg、Ca、Sr、ZnおよびSnよりなる群から選択された1つまたは複数の金属;
M3+=AlまたはB;
Aはアニオンであり;
bは1〜2の数字であり;
0<x<0.5であり;そして
dは0〜20の数字である。
【0040】
A=OH-、CLO4-、HCO3-、CH3COO-、C6H5COO-、CO32-、(CHOHCOO)22-、(CH2COO)22-、CH3CHOHCOO-、HPO3-またはHPO42-の化合物が好ましい。
【0041】
4.ゼオライト(アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のアルミノケイ酸塩)
これらのものは、次の一般式で表すことができる:
【数2】


式中の、
nはカチオンMの電荷であり;
MはLi、Na、K、Mg、Ca、SrまたはBaなどのアルカリまたはアルカリ土類金属であり;
y:xは0.8〜15、好ましくは0.8〜1.2の数字であり;そして
wは0〜300、好ましくは0.5〜30の数字である。
【0042】
ハイドロタルサイトおよび/またはゼオライトは、100重量部のハロゲン含有ポリマーに対し、例えば0.1〜20重量部、都合良くは0.1〜10重量部、特には0.1〜5重量部の量用いることができる。
【0043】
5.充填剤
炭酸カルシウム、ドロマイト、ウォラストナイト、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、陶土、タルク、グラスファイバー、ガラスビーズ、木粉、マイカ、金属酸化物または水酸化物、カーボンブラック、グラファイト、岩粉、重晶石、カオリン、およびチョークなどの充填剤が使用できる。好ましいものはチョーク(Handbook of PVC Formulating, E. J. Wickson, John Wiley & Sons, Inc., 1993, pp.393-449)および補強剤(Taschenbuch der Kunststoffadditive [Plastics Additives Handbook], R. Gachter & H. Miiller, Carl Hanser, 1990, pp.549-615)である。充填剤は、100重量部のPVCに対し、少なくとも1重量部、例えば5〜200重量部、都合良くは10〜150重量部、特には15〜100重量部を用いることができる。
【0044】
6.金属石鹸
金属石鹸は、主には、金属カルボン酸塩、好ましくは比較的長鎖のカルボン酸である。これら石鹸の周知例は、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、リシノール酸塩、ヒドロキシステアラート、ジヒドロキシステアラート、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、および酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ソルビン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、アントラニル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの比較的短鎖の脂肪族または芳香族カルボン酸の塩である。
【0045】
金属は、一般的には、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Al、La、Ceおよび希土類金属である。バリウム/亜鉛安定化剤、マグネシウム/亜鉛安定化剤、カルシウム/亜鉛安定化剤、またはカルシウム/マグネシウム/亜鉛安定化剤などの、いわゆる相乗的混合物が頻繁に用いられている。
【0046】
金属石鹸は、単独または混合して使用できる。一般的な金属石鹸の概論は以下参照のUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第5版., Vol. A16 (1985), pp.361に見いだせる。
【0047】
金属石鹸またはこれらの混合物は、100重量部のPVCに対し、例えば0.001〜10重量部、都合良くは0.01〜8重量部、特に好ましくは0.05〜5重量部用いることができる。
【0048】
7.アルカリ金属およびアルカリ土類金属化合物
本発明の目的に関しては、これらは主に上記の酸のカルボン酸塩であるが、それらの対応する酸化物、またはそれぞれの水酸化物もしくは炭酸塩でもよい。これらと有機酸との混合物も用いることができる。例はLiOH、NaOH、KOH、CaO、Ca(OH)2、MgO、Mg(OH)2、Sr(OH)2、Al(OH)3、CaCO3およびMgCO3(およびマグネシアアルバおよびハンタイトなどの塩基性炭酸塩)であり、またNaおよびKの脂肪酸塩でもよい。アルカリ土類カルボン酸塩およびZnカルボン酸塩の場合は、これらとMOまたはM(OH)2(M=Ca、Mg、SrまたはZn)の付加物、いわゆる「過塩基性」化合物も用いることができる。本発明による安定化剤に加えて、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ土類金属カルボン酸塩、および/またはアルミニウムカルボン酸塩も好ましく使用できる。
【0049】
いくつかのアルカリ土類金属カルボン酸塩は、ポリアルキレングリコール/過塩素酸システムと共に使用した時に相乗効果を示し、安定化時間が延長し、PVCの色彩が向上する。潤滑剤として用いられる(以下参照)ステアリン酸カルシウムは、安定化剤の性能を向上させるが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、乳酸、クエン酸、レブリン酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、2-エチルブタン酸、フェノールスルホン酸、シュウ酸、チオグリコールなどの有機酸のカルシウム塩またはマグネシウム塩を含む、その他のアルカリ土類カルボン酸エステルも用いることができる(実施例6参照)。カルシウム安息香酸1,3-ジフェニルプロパン-1,3-ジオネート(CBDBM)(2002年7月3日出願の特許出願番号第10/190,130号参照)などの有機酸とβ-ジケトンのアルカリ土類金属との複合体も、ポリアルキレングリコール/過塩素酸塩システムの性能を大きく向上させる(実施例6)。
【0050】
8.潤滑剤
可能な潤滑剤の例は:脂肪酸、脂肪アルコール、モンタンワックス、脂肪酸エステル、ポリエチレンワックス、アミドワックス、クロロパラフィン、グリセロールエステルおよびアルカリ土類金属石鹸、ならびに脂肪ケトンであり、またEP 0 259 783に掲載の潤滑剤または潤滑剤の組合せである。ステアリン酸、ステアリン酸エステルおよびステアリン酸カルシウムが好ましい。
【0051】
9.可塑剤
有機可塑剤の例は、以下の群から選択されたもの、およびそれらの混合物である。
A)フタル酸:ジ-エチルヘキシル、ジイソノニルおよびジイソデシルフタレート、一般的に略語DOPでも知られる(ジオクチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート)、DINP(ジイソノニルフタレート)、DIDP(ジイソデシルフタレート)およびジ(nC9-C12)フタレート。
B)脂肪族ジカルボン酸エステル、特にアジピン酸、アゼライン酸またはセバシン酸のエステル、好ましくはジ-2-エチルヘキシルアジパートおよびジイソオクチルアジパート。
C)トリ-2-エチルヘキシルトリメリタート、トリイソデシルトリメリタート(混合物)、トリイソトリデシルトリメリタート、トリイソオクチルトリメリタート(混合物)ならびにトリ-C6-C8-アルキル、トリ-C6-C10-アルキル、トリ-C7-C9-アルキル、およびトリ-C9-C11-アルキルトリメリタートなどのトリメリット酸エステル。一般的略語は、TOTM(トリオクチルトリメリタート、トリ-2-エチルヘキシルトリメリタート)、TIDTM(トリイソデシルトリメリタート)およびTITDTM(トリイソトリデシルトリメリタート)である。
D)エポキシ可塑剤、例えばエポキシ化ダイズ油などのエポキシ化された脂肪酸。
E)高分子可塑剤:ポリエステル可塑剤を調製するための最も一般的な出発材料は、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸またはセバシン酸などのジカルボン酸、および1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、およびジエチレンジオールなどのジオールである。
F)リン酸エステル:これらのエステルの定義は、Taschenbuch der Kunststoffadditive、上記、5.9.5章、pp.408-412に記載されている。これらリン酸エステルの例は、トリブチルホスファート、トリ-2-エチルブチルホスファート、トリ-2-エチルヘキシルホスファート、トリクロロエチルホスファート、2-エチルヘキシルジフェニルホスファート、クレシルジフェニルホスファート、トリフェニルホスファート、トリクレシルホスファートおよびトリキシレニルホスファートである。
G)塩素化炭化水素(パラフィン)。
H)炭化水素。
I)モノエステル、例えばオレイン酸ブチル、オレイン酸フェノキシエチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、およびアルキルスルホン酸塩。
J)グリコールエステル、例えばジグリコール安息香酸塩
K)クエン酸エステル
【0052】
これら可塑剤の定義および例は、Kunststoffadditive[Plastics Additives]、R. Gachter/H. Muller, Carl Hanser Verlag, 第3版、1989年, 5.9.6章、pp.412-415およびPVC Technology, W.V.Titow, 第4版、Elsevier Publ. 1984年, pp.165-170に記載されている。異なる可塑剤の混合物も使用できる。
【0053】
可塑剤は、100重量部のPVCに対して、例えば5〜20重量部、都合良くは、10〜20重量部の量を用いることができる。硬質または半硬質PVCは、10%まで、好ましくは5%まで可塑剤を含むか、または全く可塑剤を含まない。
【0054】
10.顔料
好適な物質は、当業者に公知である。無機顔料の例としては、TiO2、酸化ジルコニウム、BaSO4、酸化亜鉛(鉛白)およびリトポン(硫化亜鉛/硫化バリウム)をベースとした顔料、カーボンブラック、カーボンブラック−二酸化チタン混合物、酸化鉄顔料、Sb2O3、(Ti、Ba、Sb)O2、Cr2O3、コバルトブルーおよびコバルトグリーンなどのスピネル、Cd(S、Se)ならびにウルトラマリンブルーが挙げられる。有機顔料の例としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料およびアントラキノン顔料が挙げられる。微粉化形状のTiO2が好ましい。各種顔料の混合物も使用できる。定義および詳しい説明は、Handbook of PVC Formulating, E.J. Wickson, John Wiley & Sons, New York, 1993に記述されている。
【0055】
11.ホスフィット(亜リン酸のトリエステル)
有機ホスフィットは、塩素含有ポリマーのための公知の共安定剤である。それらは、本明細書に記載(以下実施例、特に実施例5)のポリアルキレングリコール/過塩素酸塩システムと共に用いた場合に、相乗的共安定化剤として働く。これらの例は、トリオクチルホスフィット、トリデシルホスフィット、トリドデシルホスフィット、トリトリデシルホスフィット、トリペンタデシルホスフィット、トリオレイルホスフィット、トリステアリルホスフィット、トリフェニルホスフィット、トリクレジルホスフィット、トリス(ノニルフェニル)ホスフィット、トリス(2,4-t-ブチルフェニル)ホスフィットおよびトリシクロヘキシルホスフィットである。
【0056】
その他好適なホスフィットは、ホモ-またはコポリマーとしての、フェニルジオクチルメタクリレート、フェニルジデシルメタクリレート、フェニルジドデシルメタクリレート、フェニルジトリデシルメタクリレート、フェニルメタクリレートおよびグリシジルメタクリレートなどの、各種の混合アリールジアルキルまたはアルキルジアリールホスフィットである。これらエポキシ化合物は、アルミノ塩化合物(DE-A-4 031 818参照)に適用してもよい。市販製品の例は、Weston EHDP、Weston PDDP、Weston DPDPおよびWeston 430である。
【0057】
用いるポリアルキレングリコールがポリアルキレングリコールホスフィットの場合は、システムにホスフィットを追加する必要はないが、それはポリアルキレングリコールが多機能添加物として機能し、ポリアルキレングリコールとホスフィットの両方の機能性を提供するからである(例えば実施例9参照)。
【0058】
本発明の非常に重要な利点は、いくつかの場合において、成分を注意深く、かつ賢明に調整することによって、ホスフィットを全く使用せずに済ませることが可能なことである。このようにして、PVCの優れた熱安定性を提供する、ホスフィットを含まない安定化剤が調製された(実施例11)。
【0059】
使用するホスフィット化合物の好ましい量は、100重量部のPVCに対し、0〜50重量部、より好ましくは0〜30重量部、特には0〜25重量部である。
【0060】
12.酸化防止剤
例として次のものが挙げられる:
アルキル化モノフェノール、例えば2,6-ジ- t-ブチル-4-メチル-フェノール、
アルキルチオメチルフェノール、例えば2,4-ジオクチルチオメチル-6-t-ブチルフェノール、
アルキル化ヒドロキノン、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メトキシフェノール、
ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、例えば2,2’-チオビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、
アルキリデンビスフェノール、例えば2,2’-メチレンビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、
ベンジル化合物、例えば3,5,3’,5’-テトラ-t-ブチル-4,4’-ジヒドロキシジベンジルエーテル、
ヒドロキシベンジル化マロネート、例えばジオクタデシル2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシベンジル)マロネート、
ヒドロキシベンジル芳香族、例えば1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、
トリアジン化合物、例えば2,4-ビスオクチルメルカプト-6-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン、
ホスホナートおよびホスホニット、例えばジメチル2,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホナート、
アシルアミノフェノール、例えば4-ヒドロキシラウルアニリド(hydroxylauranilide)、
β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、β-(5-t-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸、β-(3,5-ジシクロヘキシル4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のエステル、一価アルコールまたは多価アルコールを持つ3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸のエステル、N,N’-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル-プロピオニル)ヘキサメチレンジアミンなどのβ-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、ビタミンE(トコフェロール)および前記の誘導体。酸化防止剤の混合物も用いることができる。
【0061】
産業上の例としては、Naugard(登録商標)10、Naugard 76、Naugard BHT、Naugard 45およびAO 30が挙げられる。
【0062】
使用する酸化防止剤の量の例は、100重量部のPVCに対して、0.01〜10重量部、都合良くは0.1〜10重量部、特には0.1〜5重量部が挙げられる。
【0063】
13.UV吸収剤および光安定化剤
例として次のものが挙げられる:
2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどの2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-t-ブチルフェニルサリチラート、フェニルサリチラート、アクリラート、ニッケル化合物などの非置換または置換安息香酸、4,4’-ジオクチルオキシオキサニリド、2,2’-ジオクチルオキシ-5,5’-ジ-t-ブチルオキサニリドなどのオキサルアミド、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンなどの2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバカートおよびビス(2,2,6,6-テトラ-メチルピペリジン-4-イル)スクシナートなどの立体障害アミン。UV吸収剤および/または光安定化剤の混合物も用いることができる。
【0064】
14.発泡剤
発泡剤の例は、有機アゾ化合物および有機ヒドラゾ化合物、テトラゾール、オキサジン、無水イサト酸、ならびに重炭酸ソーダおよび重炭酸ナトリウムである。アゾジカルボンアミドおよび重炭酸ナトリウム、ならびにそれらの混合物が好ましい。
【0065】
15.補強剤およびその他添加物
補強剤および加工補助剤である、ゲル化剤、静電防止剤、殺生物剤、金属不活性化剤、蛍光増白剤、難燃剤、かぶり防止剤、相溶化剤の定義および例は、Kunststoffadditive, R. Gachter/H. Muller, Carl Hanser Verlag, 第3および4版、1989および2001年、ならびにHandbook of Polyvinyl Chloride Formulating, E.J. Wilson, J. Wiley & Sons, 1993年、ならびにPlastics Additives, G. Pritchard, Chapman & Hall, London, 第1版、1998年に記載されている。
【0066】
補強剤はさらに、Impact Modifiers for PVC, J. T. Lutz/D. L. Dunkelberger, John Wiley & Sons, 1992年にも詳しく説明されている。
【0067】
16.アルカノールアミン
アルカノールアミンおよび過塩素酸塩(WO 02/48249 A2)、ならびにウラシルのある種誘導体(米国特許第6,194,494号参照)などの、その他有機ベースの安定化剤(OBS)が、混合金属ベースの安定化剤に替わるものとして最近用いられ始めている。これら安定化剤の一部をポリアルキレングリコール/過塩素酸塩と交換するか、またはアルカノールアミン/ポリアルキレングリコール/過塩素酸塩もしくはOBS/ポリアルキレングリコール/過塩素酸塩の配合物を用いると、有効な性能が得られる(実施例7および10)。
【0068】
1つまたは複数の添加物が用いられ、そして/またはその混合物を用いてもよい。
【0069】
グリシジル化合物、ホスファート、ハイドロタルサイト、ゼオライト、およびアルカリ金属やアルカリ土類金属化合物などの共添加物、ならびにエポキシ化脂肪酸エステルは、0.01〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部、特には2〜3重量部で用いられる。
【0070】
安定化対象となる塩素含有ポリマーの例としては、次のものが挙げられる:
塩化ポリビニル、
塩化ポリビニリデン
その構造が塩化ビニル単位を含む、塩化ビニルと脂肪酸、特にビニルアセタートのビニルエステルのコポリマー、塩化ビニルとアクリルもしくはメタクリル酸のエステルおよびアクリロニトリルとのコポリマー、例えば塩化ビニルとジエチルマレアート、ジエチルフマラートもしくは無水マレイン酸のコポリマーなどの塩化ビニルとジエン化合物および不飽和ジカルボン酸もしくはそれらの無水物とのコポリマー、塩化ビニルの後塩素化ポリマーおよびコポリマーなどのビニル樹脂、
塩化ビニルおよび塩化ビニリデンと、アクロレエイン、クロトンアルデヒド、ビニルメチルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどの不飽和無水物、ケトンおよびその他のものとのコポリマー;
塩化ビニリデンのポリマー、ならびに塩化ビニルおよびその他重合性化合物とのコポリマー;
ビニルクロロアセタートおよびジクロロジビニルエーテルのポリマー;
ビニルアセタートの塩素化ポリマー、アクリル酸の塩素化ポリマーエステルおよびα-置換アクリル酸;
ジクロロスチレンなどの塩素化スチレンのポリマー;
塩素化ゴム;
エチレンの塩素化ポリマー;
クロロブタジエンのポリマーおよび後塩素化ポリマー、ならびにこれらと塩化ビニル、塩素化した天然もしくは合成ゴムとのコポリマー、ならびに上記ポリマーの、またはその他重合性化合物との混合物;ならびに
アクリロニトリル、ビニルアセタートまたはABSなどの重合性化合物とのコポリマーであり、これらはサスペンションポリマー、バルクポリマーまたはエマルジョンポリマーでよい。
【0071】
好ましいものは、PVCホモポリマー、およびそれとポリアクリラートとの組合せである。
【0072】
その他の可能なポリマーは、PVCとEVA、ABSまたはMBSのグラフトポリマーである。他の好ましい基材は、上記ホモポリマーとコポリマーとの混合物、特に塩化ホモポリマーとその他の熱可塑性ポリマーおよび/またはエラストマー性ポリマーとの混合物であり、特にABS、MBS、NBR、SAN、EVA、CPE、MBAS、pMA、PMMA、EPDMとの、またはポリアクトンとの配合物であり、特にABS、NBR、NAR、SANおよびEVAからなる群からの配合物である。コポリマーに用いた略語は、当業者に一般的であり、以下の意味を有する:
ABS:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン;
SAN:スチレン−アクリロニトリル;
NBR:アクリロニトリル−ブタジエン;
NAR:アクリロニトリル−アクリラート;および
EVA:エチレン−ビニルアセタート。
【0073】
その他の可能なポリマーは、特には、アクリル酸塩をベースにしたスチレン−アクリロニトリルコポリマー(ASA)である。
【0074】
この意味で好ましい成分は、成分(i)および(ii)として、25〜75重量%のPVCと75〜25重量%の上記コポリマーを含む、ポリマー組成物である。特に重要な成分は、(i)100重量部のPVC、ならびに(ii)0〜300重量部のABSおよび/またはSAN-変性ABS、ならびに0〜80重量部のコポリマーNBR、NARおよび/またはEVA、特にEVAから作製した組成物である。
【0075】
本発明の目的では、加工、使用または貯蔵によって分解した、塩素含有ポリマーの再生材料、特に上記に詳しく説明したポリマーの再生材料の安定化にも用いることができる。PVCからの再生材料も用いることができる。
【0076】
本発明に従って、併用できる化合物、および塩素含有ポリマーは当業者周知であり、Kunststoffadditive、上記、DE 197 41 773およびEP-A 99 105 418.0に記載されており、それらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0077】
本発明による安定化は、透明および不透明の両用途に関して、パイプ、プロファイルおよびシートに一般的である、硬質のPVC調合にとっても有利である。安定化は、特に半硬質および可撓性調合物に有用であり、またプラスチゾルにも有用である。安定化は、重金属化合物(Sn安定化剤、Pb安定化剤、Cd安定化剤、Zn安定化剤)を必要とせず、医療用途の製品を含め、生理学的に受け入れ可能なPVC製の消費財に非常に適している。
【0078】
安定化剤システムは、次の方法によって都合良く組み入れることができる:乳剤または分散剤として組み入れる方法;付加成分またはポリマー混合物を混合する際の乾燥混合物として組み入れる方法;単一パックの固体安定化剤として、ケイ酸カルシウムなどの充填剤に吸収させる方法;加工装置(カレンダー、ミキサー、混練機、押出機等)に直接加える方法、または溶液もしくは溶解物として、または、それぞれ、単一パックとして無塵の形のフレークもしくはペレットとして組み入れる方法。
【0079】
本発明により安定化、また本発明によって提供されるPVCは、上記加工装置などの公知装置を用い、本発明の安定化剤を、望ましい場合は他の添加物と共にPVCに混合し、公知の方法によって調製できる。本明細書の安定化剤は個別に加えても、または混合して加えても、またはマスターバッチとして知られる形で加えてもよい。
【0080】
本発明により安定化したPVCは、公知の方法によって望まれる形状にすることができる。このタイプの加工例としては、研削、カレンダリング、押出し、射出成形およびスピニング、ならびに押出しブロー成形である。安定化PVCは、加工してフォームを提供してもよい。
【0081】
本発明により安定化したPVCは、例えば中空品(ビン)、包装フィルム(熱成形フィルム)、ブローフィルム、パイプ、フォーム、重プロファイル(窓枠)、半透明−壁プロファイル、建築用プロファイル、羽目板、フィッティング、事務所用シート材、および装置のハウジング(コンピュータ、家庭用品)に特に好適である。
【0082】
それは、硬質PVCフォーム成形材およびPVCパイプ、例えば飲料水用または排水用パイプ、圧力パイプ、ガスパイプ、ケーブル−ダクトパイプ、およびケーブル保護パイプ、工業パイプライン用のパイプ、下水パイプ、流出パイプ、雨といパイプおよび排水パイプにも用いることができる。これに関してのより詳しい説明については、Kunststoffhadbuch PVC, 第2/2巻、W. Becker/H. Braum, 第2版、1985年, Carl Hanser Verlag, pp. 1236-1277を参照。
【0083】
本発明の利点および重要な特徴は、以下の実施例からより明らかになるだろう。
【0084】
実施例1
静的熱安定性
カレンダリング調合物
PVC化合物を、ロールミルの中で、3分間、170℃で圧延した。得られたシートから細長片を切り出し、マティス(Mathis)オーブンの中で190℃に加熱した。それらをオーブンから2mm/分の速度で引き出し、FloScanソフトウエア(Dr. Stapfer GmbH、Germany)を用いたスキャナを使って三原色(RGB)値を測定した。これらの値に基づき、記述の方法に従って(Bacaloglu, R., et al., J. Vinyl Additive Technol., 5:206 (1999))二重結合のモル濃度に比例する反射率減衰度、Ergbを計算した。PVCの劣化は、Ergbと直接比例し、即ち、Ergb値が高いほどPBV劣化レベルも高い。半透明または透明な細片については、Ergb値を、厚みについて標準化した。試験コントロール(調合4)は、市販のBa/Zn安定化剤を有している。表の添加物の量の単位はphrである。
【0085】
【表1】

【0086】
透明度試験は、圧縮研磨プラークについて行い、次の結果を得た:
【0087】
【表2】

【0088】
実施例2
カレンダリング調合物
実験の手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例3
カレンダリング調合物
実験の手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0091】
【表4】

【0092】
実施例4
カレンダリング調合物
実験の手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0093】
【表5】



【0094】
実施例5
カレンダリング調合物
実験の手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0095】
【表6】


(1)注記:Crompton Corporation、Morgantown, West Virginiaより入手。
【0096】
実施例6
カレンダリング調合物
実験の手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0097】
【表7】

【0098】
実施例7
カレンダリング調合物
実験の手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0099】
【表8】

【0100】
実施例8
カレンダリング調合物
実験手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0101】
Hexapol G-3およびHexapol G-6は、それぞれHexagon Enterprises, Inc., Mountain Lakes, New Jerseyより購入した、市販のトリグリセロールおよびヘキサグリセロールである。それらの推定組成は次の通りである:
Hexapol G-3 Hexapol G-6
グリセリン 13% 1%
ジグリセロール 17% 6%
トリグリセロール 50% 28%
ヘキサグリセロール 15% 63%
その他 5% デカグリセロール 2%
【0102】
【表9】

【0103】
実施例9
カレンダリング調合物
実験手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0104】
トリス(ジプロピレングリコール)ホスフィットは、Crompton Corporation, Morgantown, West Virginiaより、商品名Weston&#9415;430で販売されている。
【0105】
【表10】

【0106】
実施例10
カレンダリング調合物
実験の手順および条件は、実施例1に同じであった。
【0107】
【表11】

【0108】
実施例11
プラスチゾル調合物
次のプラスチゾル化合物を、示した(50、51、52および53)の安定化剤と混合し、脱気してから金属プレート上に、厚さ25ミルで引き伸ばした。204℃で3分間ゲル化した。安定性試験は204℃のオーブンの中で行い、2分間隔でサンプルを取り出した。黄色度(YI)値を示す。
【0109】
【表12】


(1)注記:GY-250(Ciba Specialty Chemicals, Tarytown, New York)は、ビスフェノールAをエピクロリドリンと反応させて調製した市販のエポキシ樹脂である。平均分子量は700以下である。
【0110】
発明の基礎をなす原理から逸脱することなく実施できる多くの変更および改良を考える場合、発明に与えられる保護の範囲を理解するためには、添付の特許請求の範囲を参照するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン含有ポリマーの安定化方法であって、前記ポリマーに、
A)次の一般式:
【化1】


または
【化2】


または
【化3】


の少なくとも1つのポリアルキレングリコールであって、式中:
R1、R2およびR5は、水素、アルキル、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、チオールおよびチオールアルキルからなる群より独立に選択され;
R3およびR4は、水素、アルキルおよびアシルからなる群より独立に選択され;そして
nは1〜20の整数であり;
mは3であり、P中の3つの置換基は同一または異なっていてもよい、前記少なくとも1つのポリアルキレングリコール;および
B)過塩素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アルキル硫酸、リンタングステン酸、HPF6、HBF4およびHSbF6からなる群より選択される、少なくとも1つの強酸の金属塩
を含む熱安定化量の混合物を加えるステップを含むことを特徴とする前記方法。

【公開番号】特開2011−94152(P2011−94152A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279639(P2010−279639)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【分割の表示】特願2006−523929(P2006−523929)の分割
【原出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(505387060)ケムチュア コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】