ハンドシャワー装置
【課題】シャワーヘッドの持ち方に制約を与えず、片手でも良好な使い勝手のハンドシャワー装置を提供することである。
【解決手段】 本発明では、給水ホースの先端に取り付けられて、湯水を吐出する吐水口が形成されたシャワーヘッドと、前記給水ホースへの流路を開閉する開閉手段と、前記開閉手段を制御する制御手段を有するハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドに加速度を出力する加速度センサを備え、前記制御手段は、前記加速度センサの出力に基づいて前記開閉手段を制御する。
【解決手段】 本発明では、給水ホースの先端に取り付けられて、湯水を吐出する吐水口が形成されたシャワーヘッドと、前記給水ホースへの流路を開閉する開閉手段と、前記開閉手段を制御する制御手段を有するハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドに加速度を出力する加速度センサを備え、前記制御手段は、前記加速度センサの出力に基づいて前記開閉手段を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室、台所、洗面所などで使用されるハンドシャワー装置の吐水、止水、流量調整、温度調整、水流切り替え等の操作手段に係り、特に使い勝手の良好なハンドシャワー装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャワーヘッドに操作スイッチを設けたものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
浴室や洗面所などのシャワーは、シャワーヘッド以外の給水元に近い部分に操作ハンドル或いは操作スイッチがあるものが一般的であるが、シャワーヘッドに操作スイッチがあることで、シャワーを持った片手の手元で吐水、止水ができるため、操作性、節水性が向上する。
【0003】
しかし、操作スイッチに指がかかるようにシャワーヘッドを持たなければならず、シャワーヘッドを持ち換えたり、好きなところを持つといった動作に制約を生じるという問題があった。
また、操作スイッチは単なるオン・オフの情報しかないため、間違えてスイッチを押してしまったり、何かにぶつけてスイッチがオンしたり、或いはシャワーヘッドを落とした衝撃でスイッチがオンしてしまうような、使用者が意図しないのにスイッチがオンしてしまう状況でも、通常の操作と同じように吐水されてしまう。
【0004】
更に、スイッチを「押す」という操作を快適に行うには、操作部を押し込むストロークが必要になる。シャワーヘッドであれば防水性能も必要であり、防水構造であって押し込むストロークを確保するのは難しく、一般的には、プッシュスイッチに防水シートを被せたストロークの少ないスイッチになってしまう。
このようなスイッチは、「押す」操作を検出できる部位の面積が極端に狭く、片手で操作しても、もう一方の手を使っても、スイッチ位置を限定されるために使い勝手が悪い。
【0005】
また、シャワーヘッドに操作手段(スイッチ)または検知手段(センサ)を1つだけ設け、その操作時間の長短に基づいて、吐水/止水と水流切り替えを行うものもある(例えば、特許文献2参照。)。
これは、シャワーヘッドに2つ以上の操作手段を持たせると、シャワーヘッドが大型化し、使用者の手元が狭くなって使い勝手が悪くなるという問題を解決するものである。
【0006】
しかし、この場合も使用者は、操作手段を押す、或いは検知手段の検知範囲内に手を侵入させるという操作が必要になる。
操作手段を押すには、シャワーヘッドの持ち方に制約が生じる。また、検知手段に検知させるためにもう一方の手を使う必要があるなど、使い勝手の面で満足のいくものではなかった。
更に、赤外線センサや超音波センサなど、物体を検知するセンサを使用すると、使用者が意図的に検知させるもの(一般的には、使用者の手など、体の一部)以外のものにも反応してしまう可能性があり、誤動作に繋がる要因となる。
【0007】
【特許文献1】特開平1−302062号公報(第4頁、第3図)
【特許文献2】特開平4−292745号公報(第5頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、シャワーヘッドの持ち方に制約を与えず、片手でも良好な使い勝手のハンドシャワー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、給水ホースの先端に取り付けられて、湯水を吐出する吐水口が形成されたシャワーヘッドと、前記給水ホースへの流路を開閉する開閉手段と、前記開閉手段を制御する制御手段を有するハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドに加速度を出力する加速度センサを備え、前記制御手段は、前記加速度センサの出力に基づいて前記開閉手段を制御するようにしたので、「スイッチを押す」という行為がなくなり、使用者はスイッチを探す必要もなく、シャワーヘッドにもスイッチ構造が不要となり、スイッチに付随する問題が解消する。
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載のハンドシャワー装置において、前記加速度センサの出力に基づいて、使用者によるシャワーヘッドへの操作行為を検出する操作行為検出手段を備え、前記制御手段は、前記操作検出手段の出力に基づいて前記開閉手段を制御するようにしたので、単なるON/OFFスイッチとして加速度センサを使用するのではなく、使用者がシャワーを操作しようとする行為を認識するため、誤動作のない快適な操作が可能となる。
【0011】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項2に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出手段は、前記加速度センサの出力の時間的な変化パターンに基づいて、使用者がシャワーヘッドを「振る」「叩く」のいずれかの操作行為を行なったことを検出するようにしたので、使用者に対して説明がし易く、個人差も少ないため、誰にでも容易に操作できるようになる。
【0012】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項3に記載のハンドシャワー装置において、前記「振る」操作行為の検出の判断は、前記加速度センサの出力が、その絶対値が第1の所定値以上の状態が第1の所定時間以上継続し、その後、前記出力の符号が逆転し、かつ絶対値が第2の所定値以上の状態が、前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間以上継続し、その後、前記出力の変化が第3の所定値以下の状態が第3の所定時間以上継続し、以上の3つの状態遷移が第4の所定時間以内に完了した場合としたので、シャワーヘッドを振り、静止させるまでの一連の操作行為を識別でき、使用者が水を出したい/止めたいという意志を持ってシャワーヘッドを「振る」行為を、何かを洗うためにシャワーヘッドを動かす行為と明確に区別できる。
【0013】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項3に記載のハンドシャワー装置において、前記「叩く」操作行為の判断は、前記加速度センサの出力が、その絶対値が第4の所定値以上の状態が第5の所定時間以下のパルス状に発生し、その後、前記出力の符号が逆転し、かつ絶対値が第5の所定値以上の状態が、前記第5の所定時間よりも長い第6の所定時間以上継続し、その後、前記出力の変化が第6の所定値以下の状態が第7の所定時間以上継続し、以上の3つの状態遷移が第8の所定時間以内に完了した場合としたので、シャワーヘッドをしっかりと保持したまま叩く操作行為を識別でき、使用者が水を出したい/止めたいという意志を持ってシャワーヘッドを「叩く」行為を、単にシャワーヘッドを何かにぶつけてしまった場合と明確に区別できる。
【0014】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項2乃至5のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出手段は、前記加速度センサの出力の時間的変化パターンに基づいて、シャワーヘッドが「落下」したことを検出し、「落下」が検出された場合には、前記流路を閉じるようにしたので、スイッチなどを使った方式では判別できなかった「落下」を検出し、意図しない吐水が防止できる。
【0015】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項6に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出御手段は、使用者による操作行為で発生し得る加速度の値にマージンを加えた第6の閾値を越える加速度が検出された場合、または、加速度の符号の変化が、短時間に所定回数以上検出された場合に「落下」と判断するようにしたので、操作行為との判別が明確となり、「落下」の確実な検出ができる。
【0016】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記加速度センサの出力に基づいて、前記シャワーヘッドの吐水方向が地面に対してどの向きであるかを検出する吐水方向検出手段を備え、前記制御手段は、前記操作検出手段及び前記吐水方向検出手段の出力に基づいて前記開閉手段を制御するようにしたので、新たな部材を追加することなく、使用者の意志を判断する情報が増え、より確実な動作が可能となる。
【0017】
また、請求項9記載の発明によれば、請求項8に記載のハンドシャワー装置において、前記制御手段は、前記操作行為検出手段が流路を開くべき操作行為を出力した場合、流路を開く前に、前記吐水方向検出手段により吐水の向きを確認し、「吐水が下向き」の状態でない場合は、流路を開かないようにしたので、吐水を始める際は吐水方向を下向きにするという自然な行為が吐水開始の条件として加わり、使用者が意識することなく、吐水制御動作がより安全なものなる。
【0018】
また、請求項10記載の発明によれば、請求項8に記載のハンドシャワー装置において、前記制御手段は、流路を開いた状態で、前記吐水方向検出手段により吐水の向きを継続して監視し、「吐水が上向き」の状態が第9の所定時間以上継続すると、流路を閉じるようにしたので、何らかの要因で使用者が意図しない吐水が継続してしまった状況を、早期に発見し、対処できる。
【0019】
また、請求項11記載の発明によれば、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、流路を開いた状態が連続して所定の制限時間まで継続すると流路を閉じる安全機能を備え、流路を開いた状態で所定値以上の加速度の変化が検出されると、前記吐水制限時間を延長するようにしたので、ハンドシャワー装置が間違いなく使用中であることを判断し、水を出しっぱなしにしないための安全機能によって不便な思いをすることを防止できる。
【0020】
また、請求項12記載の発明によれば、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドの吐水方向に並行な方向の加速度を検出する第1の加速度センサと、前記吐水方向に直交する方向の加速度を検出する第2の加速度センサを備えるとともに、前記流路の開閉手段の他に、流量の多少、水温の高低、水流の形態のいずれかを制御可能な機能を備え、前記制御手段は、前記第1の加速度センサの出力に基づいて前記流路の開閉を制御し、第2の加速度センサの出力に基づいて、流量の多少、水温の高低、水流の形態のいずれかを制御するようにしたので、複数種類の制御操作を行うために複数のスイッチを設けなくても良く、シャワーヘッドを大型化することなく、多機能なハンドシャワー装置が実現する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シャワーヘッドを片手で好きなところを持ち、スイッチや蛇口の取っ手など、別な操作手段に触れることなく、意図した通りに吐水のオン・オフ操作ができる。
また、シャワーヘッドにスイッチを設ける必要がないので、シャワーヘッドの大きさやデザインに制約を与えることがない。加速度センサはシャワーヘッドに内蔵して良いので、防水性能も簡単に実現でき、防水構造のスイッチのような複雑な部材が不要である。
【0022】
単純に加速度センサをスイッチの代替手段とすれば、加速度が所定の値を越えたときに吐水/止水を行うような制御になってしまい、誤動作の発生は避けられない。しかし、操作行為検出手段によって、加速度センサの出力を使用者が行った操作行為の情報へ変換するため、誤動作なく快適に操作できる。
また、シャワーヘッドを「振る」「叩く」といった分かりやすい操作によって制御を行うので、誰にでも簡単に操作できる。
【0023】
また、シャワーヘッドの姿勢や落下など、使用者の操作行為以外の情報も使って制御することにより、使用者の意志に従った確実な動作ができるだけでなく、自動的に吐水を止めるたり、吐水を継続するなど、使用者が意識して操作行為を行わなくても、安全かつ、きめ細かい動作が可能となり、信頼性と使い勝手が向上する。
【0024】
また、複数の方向の加速度を検出する加速度センサを使えば、単に水を出し/止めするだけでなく、湯温や水量の調節、水流の形態の切り替えなども可能となる。
その場合も、従来のスイッチであれば、機能を増やすためにスイッチの数が増えるという問題があったが、加速度センサはシャワーヘッドに内蔵するため、外観に何ら影響を与えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明による好適な実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0026】
図1は本発明の第1の実施例としてのハンドシャワー装置の構成図である。
1はハンドシャワー装置のシャワーヘッドであり、その先端に加速度センサ2を内蔵している。シャワーヘッド2は、水栓本体3に取り付けても、引き出しても使えるようになっている。このような機能は、台所や洗面所で使用する際に便利である。
4は給水部、5は給湯部であり、それぞれ電磁弁6及び7を経由し、混合弁8から給水ホース9を通ってシャワーヘッド1に給水される。ハンドル10は混合弁を通るの水と湯の比率、流量を調整する。一般に、給湯部5からは高温の湯が供給されるので、給水部4からの水と混合して適温の湯を得る。
【0027】
11はコントローラ、12はその電源部である。コントローラ11は、給水ホース9の外周部に内蔵された信号線13によって加速度センサ2と接続され、この加速度センサの出力に基づいて電磁弁6及び7を開閉制御する。
【0028】
図2は、図1の水の流れと信号の流れを示すブロック図である。コントローラ11が電磁弁6のみを開けると水が、電磁弁6及び7を同時に開けると混合された適温の湯がシャワーヘッド1へ供給される。
なお、水路の構成は、図3のようにしても良い。これは図2と電磁弁、混合弁の接続が異なる。図3では、電磁弁6は給水4からの水を、電磁弁7は混合弁8の出力を通過させる。よって、電磁弁6を開ければ水、電磁弁7を開ければ適温の湯がシャワーヘッド1へ供給される。
【0029】
図4は信号系のブロック図である。加速度センサ2は例えば図4のようなものが使用できる。
最も簡単な構造の加速度センサは、おもりが付いた可動電極をバネで支持し、この可動電極と固定電極との接触の有無によって加速度の大小を検出するものであり、例えば、歩数計などで使用されている。しかし、この方法では加速度が一定の閾値を越えたかどうかしか検出できない。
近年、マイクロマシニング技術の発達によって、加速度の値をアナログ(電圧)またはデジタル出力(出力パルスのデューティーや周波数などによる)する加速度センサが普及している。
【0030】
これらは、小型のICパッケージの中に重力加速度に応じて動く可動電極とその信号処置回路が内蔵されており、電極の移動量を静電容量の変化や圧電効果を利用して検出するものが一般的である。
加速度センサには、1軸タイプ、2軸タイプ、3軸タイプがあり、それぞれ検出可能な加速度の方向が1方向(X)、2方向(X、Y)、3方向(X、Y、Z)となる。検出の基本原理は各軸とも同じであり、それがいくつ内蔵されているかどうかの違いによる。
本実施例では、図4のように、3軸タイプの加速度センサを使用する。但し、本発明の内容の一部のみを実施のであれば、1軸または2軸の加速度センサも使用可能である。
【0031】
3軸タイプの加速度センサの代表的なものは、図4のように電源を供給するだけで、各軸の加速度を電圧で出力する。この出力電圧を、コントローラ11の中に内蔵されているマイコン14によってA/D変換する。なお、加速度センサへの電源供給及び信号電圧の接続は、図1の信号線13を経由して行われる。
マイコン14は加速度センサの3つの軸(X、Y、Z)の出力電圧に基づいて、電磁弁6及び7を制御する。
【0032】
各軸の方向は、加速度センサ2を取り付ける向きによって決まるが、図5のように取り付けるものとする。
X軸はシャワーの吐水方向に並行な軸で、吐水方向(吐水口から水が出て行く方向)を加速度の正符号とする。X軸の加速度は、吐水方向が真下になるようにシャワーヘッド1を持つ(保持する)と+1g(1g=9.8m/s2)となり、吐水方向が真上を向くようにシャワーヘッド1を持つと、−1gとなる。
【0033】
Y軸はシャワーヘッド1を左右に振る方向とし、吐水が下向きになるように持って、左方向の加速度の正符号とする。シャワーヘッド1を左右に振る、または傾けることでプラスまたはマイナスの加速度が発生する。
【0034】
Z軸はシャワーヘッド1の給水ホース9が繋がる根本と、その反対側の先端をつなぐ軸に並行な軸とし、先端に向けた加速度を正符号とする。シャワーヘッド1の先端が上になるように立てて持つと、Z軸の加速度は−1gとなり、シャワーヘッド1の先端が下になるように、つまり、シャワーヘッド1をぶら下げるように持つと、Z軸の加速度は+1gとなる。
【0035】
次に、本発明のハンドシャワー装置を制御するマイコン14の動作プログラムをフローチャートを用いて説明する。図6は、動作プログラムのメインルーチンのフローチャートである。
本動作プログラムは、ハンドシャワー装置の使用者(以下、使用者と記す)が、吐水/止水の制御や湯温の調整などを行うために、シャワーヘッドを振る、叩くなどの操作を行うので、その操作行為を加速度センサの値から検出するものである。
【0036】
図6において、メインルーチンはステップ001(以下、S001)からスタートする。S001では、X、Y、Zの各軸の加速度(フローチャート中でGと略記する)の変動を監視する。これは、マイコン14が、加速度センサ2のX、Y、Z、それぞれの出力をA/D変換し、その値に基づいて判断する。それぞれの加速度の変動が0.5g以下になるとS002に進み、使用者の操作を検出するサブルーチンを実行する。
【0037】
S001はシャワーヘッドの安定待ちのルーチンであり、使用者は、任意の操作を行う前の準備として「1秒以上シャワーヘッドを静止させることが必要」という仕様にする。これは取り扱い説明書などで、使用方法として説明すれば良い。
これにより、シャワーヘッドを振る、叩くなどの操作の検出がし易くなり、操作入力をするつもりがなくシャワーヘッドを動かした場合の誤動作を防止する効果もある。
【0038】
S002ではX方向の操作行為が行われていないかを判定する。続いて、S003ではY方向の操作行為が行われていないかを判定する。
S002で実行するX方向の操作の判定を行うサブルーチンを図7乃至9に示す(ひとつのサブルーチンを3つの図に分割して示す)。この、X方向の操作判定サブルーチンは図7のS101からスタートする。このサブルーチンでは、シャワーヘッド1を「振る」操作と、「叩く」操作があったか、或いは「落下」させた場合のような異常な動きがあったかを判定する。
【0039】
ここで、「振る」「叩く」「落下」という場合に、加速度がどのような値となるかを図11乃至図14に示す。
図11はシャワーヘッド1を「振る」操作である。横軸が時間、縦軸が加速度(G)の値である。最初はシャワーヘッド1の吐水方向を下向きにして保持しているので、Gが1g程度で安定する。それからシャワーヘッド1を下方向に振る、つまり振り下ろすと図11の時刻T1、T2、T3のようにマイナス側のGが発生する。
【0040】
使用者は、シャワーヘッド1を振り下ろして、そのまま落としてしまうつもりはないので、振り下ろしたシャワーヘッド1を保持しようとする。これが図11の時刻T4でプラス側のGとなって現れる。時刻T5からT6にかけて、振り下ろしたシャワーヘッド1を静止させようとする課程で多少の振動がGの変化を発生させるが、時刻T6以降、シャワーヘッド1がほぼ静止し、Gも安定する。
【0041】
以上のように、「振る」操作行為の説明をしたが、詳しくは「静止状態から振り下ろし、それを止めて、再び静止させる」操作である。これを「振る」と記述する。
単にシャワーヘッドを動かすということの検出だけであれば、加速度が所定の値を越えたか否かだけで判断できる。しかし、シャワーヘッドは手に持って自由に動かして使うものであり、使用者が注意して使わなければ、誤動作する可能性が高い。
これを、振り下ろしてから静止するまでの一連の操作行為として識別することにより、確実かつ快適に使用できる。
【0042】
図12はシャワーヘッド1を「叩く」操作である。「叩く」と言っても、壊れる程に叩くのではなく、指先または手の平でシャワーヘッド1をと軽く叩く操作を対象としている。例えば、右手でシャワーヘッド1を持ち、左手の指先でシャワーヘッド1を上から軽く叩く操作である。
【0043】
図12の時刻T10からT11にかけて、短時間かつ急激なマイナスのGが発生している。これが、シャワーヘッド1を上から軽く叩いた瞬間である。例えば、左手でシャワーヘッド1を叩くと、それによってシャワーヘッド1が下がるので、右手はそれを保持しようとして、持ち上げる方向に力が入り、T12からT13のように若干のプラス側のGと変動が発生する。その後、T13からT14でシャワーヘッド1が安定する。
【0044】
図13は「チョンチョン」と2回続けて叩いた場合である。「1回叩く」と「2回叩く」とを区別することにより、入力操作の種類を増やし、不本意な吐水を防止したり、湯水の切り替えなど、別な機能を操作することも可能となる。
波形は、図12の波形が連続して繰り返されるだけである。
【0045】
以上の「振る」「叩く」という操作行為の特徴は、「振る」「叩く」というシャワーヘッドに加わる力に対して、使用者はシャワーヘッドを保持しようとするために、反対の力が加わる。よって、図11及び12共に、下向きのマイナスの加速度の後に、プラスの加速度が発生する点である。そして、これらの変化の前後は安定しているために、加速度はほぼ一定になる。
【0046】
図14はシャワーヘッド1を誤って落下させてしまった場合の波形である。落下の仕方によってさまざまな加速度のパターンがあり得るが、「振る」「叩く」という意志を持った操作に比較すると、短時間に大きく、かつ激しい加速度の変化が発生する。
【0047】
図7のサブルーチンに戻って、上記操作の判定方法を説明する。
S102では、X方向のGが1.5gを越えているかをチェックする。以前は静止状態(図6のS001の判定による)であったのに、そこからすぐにX方向のGが1.5gより大きくなるのは、例えばシャワーヘッド1を大きく振り上げた場合である。このような操作行為は、今回はハンドシャワー装置の操作方法として認めていないので、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。詳細は後に説明する。
なお、振り上げる操作を必ず禁止する必要はない。仕様の選択の範疇の問題である。
【0048】
S103ではGが0.5g未満かをチェックする。図11乃至図13に説明したように「振る」「叩く」操作では、まず、マイナス側のGが発生する。S103でGが0.5g未満でない場合、Xは安定していると判断してS104から図6のメインルーチンに戻る。
Gが0.5g未満の場合、S105でタイマーカウンターのTC1をスタートさせる。以降、TC1はS105の実行タイミングを0秒(0ms)としてカウントアップしていく。
【0049】
S106乃至S108のループで、300ms以内にGが0g以下まで下がるとS109に進み、300ms経過(S106のYes判定)またはGが0.5g以上になる(S107のYes判定)と、S104から図6のメインルーチンに戻る。
【0050】
S109でタイマーカウンターTC2をスタートさせ、S110でGが0g以下に下がるまでの時間であるTC1の値をチェックする。
TC1が30ms未満の場合、急激にマイナスのGが発生したことになるので、「叩く」操作が行われている可能性が高いと判断し、S113へ進む。
S110でTC1が30ms以上の場合は、「振り下ろし」の操作が行われている可能性が高いと判断し、S111へ進む。
【0051】
S111乃至S112のループでは、TC1が200ms以内にGが−1.0g以下になると、図8のS115(「振る」判定フロー)に進み、それ以外は図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
「振る」操作の図11の波形に対応させると、時刻T2がS109に、時刻T3がS115となる。
【0052】
S113乃至S114のループでは、TC1が50ms以内にGが−1.5g以下になると、図8のS116(「叩く」判定フロー)に進み、それ以外は図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
「叩く」操作の図12の波形に対応させると、時刻T10がS109に、時刻T11がS117となる。
【0053】
図8のS115乃至S116のループで、TC1が300msになる前にGが2.5g以上になるとS119に進み、それ以外は図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。S119でTC2が50ms以上であればS120に進む。
これは、図11の時刻T3からT4の時間が50ms以上あるかどうかの判断である。シャワーヘッド1を振り下ろす操作では、この時間が「叩く」操作のように極端に短くなることはない。この時間が50ms未満なら、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0054】
S120でタイマーカウンターTC3をスタートさせ、S121乃至S122のループでTC1が500ms以内にGが2.5g以下に下がればS123に進む。S123では、TC3が50ms以上ならS124に進む。
これは、図11の時刻T4からT5の時間が50ms以上あるかどうかの判断である。この時間は、振り下ろしたシャワーヘッド1を止める操作なので、極端に短くなることはない。この時間が50ms未満なら、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0055】
S124乃至S125のループで、TC1が800msになる前にGが0.5g以上1.5g以下の範囲に安定するかチェックする。これが成立すれば、S126で「振る」操作が行われたことを確定し、S127から図6のメインルーチンに戻る。
シャワーヘッド1が、つまりGが安定しないままTC3が800msになれば図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0056】
「叩く」操作の判定は、S117乃至S118のループで、TC1が100msになる前にGが2.0g以上になるとS128に進み、それ以外は図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。S128でTC2が20ms以下であればS129に進む。
これは、図12の時刻T11からT12の時間が20ms以下で推移したかどうかの判断である。シャワーヘッド1を叩く操作では、短時間のマイナスのGの後にシャワーヘッド1を保持するためのプラスのGに移行する。この時間は「振る」操作のように長くなることはなく、発生するプラスのGも「振る」操作の場合より小さい。
この時間が20msより長ければ、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0057】
S129でタイマーカウンターTC3をスタートさせ、S130乃至S131のループでTC1が300ms以内にGが2.0g以下に下がればS132に進む。S132では、TC3が30ms以上ならS133に進む。、
これは、図11の時刻T12からT13の時間が30ms以上あるかどうかの判断である。この時間は、叩いたシャワーヘッド1を保持しようとする操作なので、極端に短くなることはない。この時間が30ms未満なら、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0058】
S133乃至S134のループで、TC1が400msになる前にGが0.5g以上1.5g以下の範囲に安定するかチェックする。これが成立すれば、「叩く」操作が行われたことが確定するが、図12の「1回叩く」操作か、図13の「2回叩く」操作かを判定する。このために「1回」「2回」いずれかの「叩く」を判定した直後のS138で、タイマーカウンターTC4をスタートさせておく。S135でのTC4は、前回の「叩く」を判定した時点からの経過時間となる。
【0059】
このTC4がS135で400ms以内であれば連続して「叩く」操作があったとしてS137で「2回叩く」を確定する。TC4が400msを越えている場合はS136で「1回叩く」を確定する。いずれの場合も、S138でTC4をスタートさせ、S139から図6のメインルーチンに戻る。
シャワーヘッド1が、つまりGが安定しないままTC3が400msになれば図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0060】
図9のS301以降は「落下」を判定する。S301でタイマーカウンターTC5をスタートさせ、S302でGの変動をカウントする変数Nをリセットする。
S303は、S304乃至S307の判断を行う時間を管理し、100ms経過するとS311に進む。
S304でGが5.0g以上、S305でGが−3.0g以下のいずれかが成立すると、「振る」「叩く」という操作では発生しない異常に大きいGと判断し、直ちにS312に進んで「落下」を確定する。
【0061】
S306でGが3.0g以上、S307でGが−1g以下のいずれかが成立すると、Gの比較的大きな変化があったとして、S308で、その回数Nをカウントアップする。S309乃至S310のループで、Gが一旦0.5g以上1.5g以下の範囲に戻るのを待ってS303に戻る。
以上の動作中にTC5が100msに達すると、S311に進んでGの変化の回数Nをチェックする。Nが5以上の場合、「振る」「叩く」の操作や、通常の洗いものをするためにシャワーヘッド1を動かす動作としては、時間あたりにGが変化した回数が多すぎるため、S312で「落下」の判断を確定し、図6のメインルーチンに戻る。
Nが5未満の場合は、「振る」「叩く」の操作でも「落下」でもない、単なるGの変動があっただけとしてS313から図6のメインルーチンに戻る。
【0062】
このように加速度センサは、従来の操作スイッチと異なり、「振る」「叩く」という操作行為を検出する手段以外に、「落下」などの異常状態、事故などを検出する手段としても機能できる。シャワーヘッドは濡れた手で握るため、すべって落とすことも十分に考えられるため、「落下」を検出もできることは非常に有効である。
【0063】
以上が図6のS002のX方向操作判定のサブルーチンの内容である。次に、図6のS003のY方向操作判定のサブルーチンの内容を説明する。
Y方向の操作はシャワーヘッド1を手に持って、使用者から見て左右方向の加速度を生じる操作である。シャワーヘッド1を右から、次に左から「叩く」操作をした場合の加速度(G)の変化を図15に示す。
図12及び図13に比較して、Gの変化の傾向は同じだが、シャワーヘッド1を左右に傾けずに持つと、Gがほぼゼロからスタートする点が異なる。「叩く」動作の変化の特徴はX方向の操作で説明したため省略する。
【0064】
S003で実行するY方向の操作の判定を行うサブルーチンを図10に示す。このサブルーチンでは、シャワーヘッド1を左右から「叩く」操作があったか、或いは「落下」させた場合のような異常な操作があったかを判定する。
図10において、S201からスタートし、S202でタイマーカウンタTC1をスタートさせる。S203でGが正か負かをチェックする。負であればS204に、正であればS224に進む。
【0065】
S204以降の動作は、図7及び図8の「叩く」操作を判定する動作と、基本的に同じ動作である。
S204乃至S206のループで、TC1が30ms以内にGが−2.5gまで下がると、S207でTC2をスタートさせる。ここまでが、「叩く」ことによる瞬間的なGの発生の検出である。
Gが−2.5g以下にならないまま30msが経過する、もしくはGが0以上になると、S218から図6のメインルーチンに戻る。
【0066】
S207に進んだ場合、S208乃至S209のループで、TC2が20msになる前に、Gが1.0g以上になるとS210に進む。これは、「叩く」操作に対してシャワーヘッド1を支えようとするシャワーヘッドを持った手の力の検出である。
S210でTC3をスタートさせ、上記の手の力の継続をS211乃至S212のループでチェックし、S213でその時間が30ms以上あれば、S214乃至S215のループで、TC1が400msになる前に、Gが0.5g以上1.5g以下の範囲に安定するかチェックする。
これが成立すれば、S216で、左から「叩く」操作が行われたことを確定し、S217から図6のメインルーチンに戻る。
S208以降で上記の動作が成立しない場合は、Xの操作判定のサブルーチンと同じく図9のS301へ進み、「落下」の判定を行う。
【0067】
S203でGが正の場合は、S224に進むが、上述のS204乃至S218と、S224乃至S238は、Gの正負の符号が逆になっているだけで、同じ動作である。よって、一連の条件が成立すればS236で、右から「叩く」操作が行われたことが確定する。
【0068】
図6のメインルーチンに戻り、S004ではX方向の「振る」操作が行われたかどうか、更に、以降のS005乃至S007で他の操作の有無をチェックする。
「振る」操作が行われた場合、S014で吐水中かチェックし、吐水中でなければS015でZ軸の加速度(G)をチェックする。
【0069】
シャワーヘッド1を、その先端が上になるように持つと、Z軸のGが−1gとなり、水平になるように持つと0g、下になるように持つと1gとなる。ここではGが0.5g以下、つまりシャワーヘッド1を斜め下45度よりも高く持っている場合のみS016に進んで吐水を開始する。
【0070】
S015でGが0.5gより大きい場合は、シャワーヘッド1が、ほぼ下になってぶら下げるように持っている状態であり、使用者がシャワー吐水を開始したいという意志が疑わしいため、吐水を開始せずS001に戻り、再度、操作を待つ。
S014で吐水中だった場合は、S018で止水してS001に戻る。
こうして、使用者は「振る」という操作行為により、シャワーの吐水、止水を制御できる。
【0071】
S005でX方向に「2回叩く」操作があった場合、「振る」操作と同じく、S014に進む。よって使用者は「2回叩く」操作により、シャワーの吐水、止水を制御できる。
S006でX方向に「1回叩く」操作があった場合、S017に進んで吐水中かチェックする。吐水中であればS018で止水するが、吐水中でない場合は、何もせずS001に戻る。
こうすることにより、「1回叩く」だけで止水することができ、かつ、何かに軽くぶつけるなどした際に、誤って吐水することを防止できる。
【0072】
S007では、Y方向に「叩く」操作があったかチェックする。Y方向の「叩く」操作があった場合、S019で吐水中かどうかチェックし、吐水中であれば、S020で「湯」「水」の吐水の種別を変更する。
具体的には、図2の水路構成であれば、「湯」の場合は電磁弁4及び5を開け、「水」の場合は電磁弁4のみを開ける。図3の水路構成であれば、「湯」の場合は電磁弁5のみを開け、「水」の場合は電磁弁4のみを開ける。
【0073】
こうして、使用者は、左右方向に「叩く」操作により、シャワーの湯温を切り替えることができる。
なお、図10のサブルーチンからの情報をフルに使い、「右から叩く」と「湯」、「左から叩く」と「水」としても良い。また、X方向のように、「叩く」回数に基づいて制御を変えても良い。加速度の方向とその変化パターンによって多様な制御が可能である。
【0074】
更に、シャワーヘッド1に、吐水温度の表示、例えば、湯、水のどちらが選択されているか示すLEDランプなどがあれば、止水中でも「湯」「水」を切り替える仕様としてもよい。その場合、使用者は、シャワーヘッド1を「叩く」ことで、湯、水が切り替わるのを表示で確認できる。
【0075】
S008ではX、Y、いずれかの方向で「落下」が検出されていないかチェックする。「落下」があればS012へ進み、吐水中であればS013で止水してS001に戻る。
S009ではZ軸のGの絶対値が2gを越えていないかチェックする。使用者がしっかりとシャワーヘッド1を持っていれば、Z軸方向のGは極端に大きい値になるはずがないため、Gの絶対値が2gを越えた場合はS008の「落下」と同じ扱いをする。
【0076】
S010では、X軸方向のGが−0.8g以下の状態が30秒以上継続していないかチェックする。これは、シャワーヘッド1の吐水口が、ほぼ上向きの状態(完全に上向きなら−1.0g)で維持されていることを意味する。
このような状態が30秒も継続するのは、シャワーの使い方として一般的に無いため、S008の「落下」と同じ扱いをする。
【0077】
S004乃至S010のいずれの条件も成立しない場合、X、Y軸方向の操作が検出されなかった場合は、S002に戻り、操作を待つ。但し、S011で各軸のGの変動が0.5g以下の状態が1分継続したことが判定されると、S012に進み、吐水中であれば、止水する。これにより、シャワーヘッド1を動かさない状態で1分間吐水が継続すると、自動的に止水させる。
【0078】
例えば、無人の状態で意図しない誤吐水が開始した場合でも、1分間で止水でき、使用者がシャワーヘッド1を動かしている限りは長時間シャワーを使用できる。
もちろん、シャワーヘッド1が動かない状態で吐水時間は最長1分、シャワーヘッド1が動いても吐水時間は最長10分まで(加速度の変化に関わらず、必ず10分で止水する)、というような制御も可能である。
【0079】
このように、「振る」「叩く」は使用者が意図した行為であるが、シャワーヘッド1の姿勢は、使用者に意識させることなく、使用状態を推測するための情報として使われている。従来の操作スイッチでは、使用者から「操作する」という働きかけがなければ役に立たないが、本発明で使用する加速度センサは、操作の入力手段以外にも利用できる。
【0080】
以上、本発明の動作を説明したが、操作行為の検出や吐水制御などの機能の大半をマイコン14のプログラムで実現している。発明内容をより明確にするため、構成要素と信号の流れで表したブロック図を図16に示す。
20は操作行為検出手段、21は吐水方向検出手段、22は制御手段であり、全てはマイコン14のプログラムの実行により機能する。20の操作行為検出手段は図7乃至図10に示したフローチャートに、21の吐水方向検出手段及び22の制御手段は図6のフローチャート内に記載されている。
【0081】
本実施例では、台所や洗面所で使用するタイプのシャワー水栓(図1)を示したが、浴室のシャワー水栓でも同様に実施できる。
また、加速度センサ2とコントローラ11を給水ホース9に内蔵した信号線13で接続したが、シャワーヘッド1に電池を内蔵して加速度センサ2を駆動し、電波や赤外線などを使って、ワイアレスでデータをコントローラ11に送る構成も可能である。
また、実施例では3軸の加速度センサを用いたが、1軸の加速度センサ、または2軸の加速度センサを使い、本実施例の一部の機能のみ(例えば、吐水と止水のみ)動作させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例のハンドシャワー装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例のハンドシャワー装置の水と信号の流れを示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例の、図2とは水路の構成が異なるハンドシャワー装置の水と信号の流れを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例の信号系のブロック図である。
【図5】本発明の実施例の加速度センサの取り付け方向を示す構成図である。
【図6】本発明の実施例の制御プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例の制御プログラムのX方向の操作を判定するサブルーチンを示すフローチャート(1/3)である。
【図8】本発明の実施例の制御プログラムのX方向の操作を判定するサブルーチンを示すフローチャート(2/3)である。
【図9】本発明の実施例の制御プログラムのX方向の操作を判定するサブルーチンを示すフローチャート(3/3)である。
【図10】本発明の実施例の制御プログラムのY方向の操作を判定するサブルーチンを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例の「振る」操作時の加速度センサの出力を示す図である。
【図12】本発明の実施例の「1回叩く」操作時の加速度センサの出力を示す図である。
【図13】本発明の実施例の「2回叩く」操作時の加速度センサの出力を示す図である。
【図14】本発明の実施例の「落下」時の加速度センサの出力を示す図である。
【図15】本発明の実施例の左右方向に「叩く」操作時の加速度センサの出力を示す図である。
【図16】本発明の実施例を、機能要素と信号の流れによって示したブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
1…シャワーヘッド
2…加速度センサ
3…水栓本体
4…給水部
5…給湯部
6…水側電磁弁
7…湯側電磁弁
8…混合弁
9…給水ホース
10…ハンドル
11…コントローラ
20…操作行為検出手段
21…吐水方向検出手段
22…制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室、台所、洗面所などで使用されるハンドシャワー装置の吐水、止水、流量調整、温度調整、水流切り替え等の操作手段に係り、特に使い勝手の良好なハンドシャワー装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャワーヘッドに操作スイッチを設けたものがある。(例えば、特許文献1参照。)。
浴室や洗面所などのシャワーは、シャワーヘッド以外の給水元に近い部分に操作ハンドル或いは操作スイッチがあるものが一般的であるが、シャワーヘッドに操作スイッチがあることで、シャワーを持った片手の手元で吐水、止水ができるため、操作性、節水性が向上する。
【0003】
しかし、操作スイッチに指がかかるようにシャワーヘッドを持たなければならず、シャワーヘッドを持ち換えたり、好きなところを持つといった動作に制約を生じるという問題があった。
また、操作スイッチは単なるオン・オフの情報しかないため、間違えてスイッチを押してしまったり、何かにぶつけてスイッチがオンしたり、或いはシャワーヘッドを落とした衝撃でスイッチがオンしてしまうような、使用者が意図しないのにスイッチがオンしてしまう状況でも、通常の操作と同じように吐水されてしまう。
【0004】
更に、スイッチを「押す」という操作を快適に行うには、操作部を押し込むストロークが必要になる。シャワーヘッドであれば防水性能も必要であり、防水構造であって押し込むストロークを確保するのは難しく、一般的には、プッシュスイッチに防水シートを被せたストロークの少ないスイッチになってしまう。
このようなスイッチは、「押す」操作を検出できる部位の面積が極端に狭く、片手で操作しても、もう一方の手を使っても、スイッチ位置を限定されるために使い勝手が悪い。
【0005】
また、シャワーヘッドに操作手段(スイッチ)または検知手段(センサ)を1つだけ設け、その操作時間の長短に基づいて、吐水/止水と水流切り替えを行うものもある(例えば、特許文献2参照。)。
これは、シャワーヘッドに2つ以上の操作手段を持たせると、シャワーヘッドが大型化し、使用者の手元が狭くなって使い勝手が悪くなるという問題を解決するものである。
【0006】
しかし、この場合も使用者は、操作手段を押す、或いは検知手段の検知範囲内に手を侵入させるという操作が必要になる。
操作手段を押すには、シャワーヘッドの持ち方に制約が生じる。また、検知手段に検知させるためにもう一方の手を使う必要があるなど、使い勝手の面で満足のいくものではなかった。
更に、赤外線センサや超音波センサなど、物体を検知するセンサを使用すると、使用者が意図的に検知させるもの(一般的には、使用者の手など、体の一部)以外のものにも反応してしまう可能性があり、誤動作に繋がる要因となる。
【0007】
【特許文献1】特開平1−302062号公報(第4頁、第3図)
【特許文献2】特開平4−292745号公報(第5頁、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、シャワーヘッドの持ち方に制約を与えず、片手でも良好な使い勝手のハンドシャワー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、給水ホースの先端に取り付けられて、湯水を吐出する吐水口が形成されたシャワーヘッドと、前記給水ホースへの流路を開閉する開閉手段と、前記開閉手段を制御する制御手段を有するハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドに加速度を出力する加速度センサを備え、前記制御手段は、前記加速度センサの出力に基づいて前記開閉手段を制御するようにしたので、「スイッチを押す」という行為がなくなり、使用者はスイッチを探す必要もなく、シャワーヘッドにもスイッチ構造が不要となり、スイッチに付随する問題が解消する。
【0010】
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載のハンドシャワー装置において、前記加速度センサの出力に基づいて、使用者によるシャワーヘッドへの操作行為を検出する操作行為検出手段を備え、前記制御手段は、前記操作検出手段の出力に基づいて前記開閉手段を制御するようにしたので、単なるON/OFFスイッチとして加速度センサを使用するのではなく、使用者がシャワーを操作しようとする行為を認識するため、誤動作のない快適な操作が可能となる。
【0011】
また、請求項3記載の発明によれば、請求項2に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出手段は、前記加速度センサの出力の時間的な変化パターンに基づいて、使用者がシャワーヘッドを「振る」「叩く」のいずれかの操作行為を行なったことを検出するようにしたので、使用者に対して説明がし易く、個人差も少ないため、誰にでも容易に操作できるようになる。
【0012】
また、請求項4記載の発明によれば、請求項3に記載のハンドシャワー装置において、前記「振る」操作行為の検出の判断は、前記加速度センサの出力が、その絶対値が第1の所定値以上の状態が第1の所定時間以上継続し、その後、前記出力の符号が逆転し、かつ絶対値が第2の所定値以上の状態が、前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間以上継続し、その後、前記出力の変化が第3の所定値以下の状態が第3の所定時間以上継続し、以上の3つの状態遷移が第4の所定時間以内に完了した場合としたので、シャワーヘッドを振り、静止させるまでの一連の操作行為を識別でき、使用者が水を出したい/止めたいという意志を持ってシャワーヘッドを「振る」行為を、何かを洗うためにシャワーヘッドを動かす行為と明確に区別できる。
【0013】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項3に記載のハンドシャワー装置において、前記「叩く」操作行為の判断は、前記加速度センサの出力が、その絶対値が第4の所定値以上の状態が第5の所定時間以下のパルス状に発生し、その後、前記出力の符号が逆転し、かつ絶対値が第5の所定値以上の状態が、前記第5の所定時間よりも長い第6の所定時間以上継続し、その後、前記出力の変化が第6の所定値以下の状態が第7の所定時間以上継続し、以上の3つの状態遷移が第8の所定時間以内に完了した場合としたので、シャワーヘッドをしっかりと保持したまま叩く操作行為を識別でき、使用者が水を出したい/止めたいという意志を持ってシャワーヘッドを「叩く」行為を、単にシャワーヘッドを何かにぶつけてしまった場合と明確に区別できる。
【0014】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項2乃至5のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出手段は、前記加速度センサの出力の時間的変化パターンに基づいて、シャワーヘッドが「落下」したことを検出し、「落下」が検出された場合には、前記流路を閉じるようにしたので、スイッチなどを使った方式では判別できなかった「落下」を検出し、意図しない吐水が防止できる。
【0015】
また、請求項7記載の発明によれば、請求項6に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出御手段は、使用者による操作行為で発生し得る加速度の値にマージンを加えた第6の閾値を越える加速度が検出された場合、または、加速度の符号の変化が、短時間に所定回数以上検出された場合に「落下」と判断するようにしたので、操作行為との判別が明確となり、「落下」の確実な検出ができる。
【0016】
また、請求項8記載の発明によれば、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記加速度センサの出力に基づいて、前記シャワーヘッドの吐水方向が地面に対してどの向きであるかを検出する吐水方向検出手段を備え、前記制御手段は、前記操作検出手段及び前記吐水方向検出手段の出力に基づいて前記開閉手段を制御するようにしたので、新たな部材を追加することなく、使用者の意志を判断する情報が増え、より確実な動作が可能となる。
【0017】
また、請求項9記載の発明によれば、請求項8に記載のハンドシャワー装置において、前記制御手段は、前記操作行為検出手段が流路を開くべき操作行為を出力した場合、流路を開く前に、前記吐水方向検出手段により吐水の向きを確認し、「吐水が下向き」の状態でない場合は、流路を開かないようにしたので、吐水を始める際は吐水方向を下向きにするという自然な行為が吐水開始の条件として加わり、使用者が意識することなく、吐水制御動作がより安全なものなる。
【0018】
また、請求項10記載の発明によれば、請求項8に記載のハンドシャワー装置において、前記制御手段は、流路を開いた状態で、前記吐水方向検出手段により吐水の向きを継続して監視し、「吐水が上向き」の状態が第9の所定時間以上継続すると、流路を閉じるようにしたので、何らかの要因で使用者が意図しない吐水が継続してしまった状況を、早期に発見し、対処できる。
【0019】
また、請求項11記載の発明によれば、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、流路を開いた状態が連続して所定の制限時間まで継続すると流路を閉じる安全機能を備え、流路を開いた状態で所定値以上の加速度の変化が検出されると、前記吐水制限時間を延長するようにしたので、ハンドシャワー装置が間違いなく使用中であることを判断し、水を出しっぱなしにしないための安全機能によって不便な思いをすることを防止できる。
【0020】
また、請求項12記載の発明によれば、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドの吐水方向に並行な方向の加速度を検出する第1の加速度センサと、前記吐水方向に直交する方向の加速度を検出する第2の加速度センサを備えるとともに、前記流路の開閉手段の他に、流量の多少、水温の高低、水流の形態のいずれかを制御可能な機能を備え、前記制御手段は、前記第1の加速度センサの出力に基づいて前記流路の開閉を制御し、第2の加速度センサの出力に基づいて、流量の多少、水温の高低、水流の形態のいずれかを制御するようにしたので、複数種類の制御操作を行うために複数のスイッチを設けなくても良く、シャワーヘッドを大型化することなく、多機能なハンドシャワー装置が実現する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、シャワーヘッドを片手で好きなところを持ち、スイッチや蛇口の取っ手など、別な操作手段に触れることなく、意図した通りに吐水のオン・オフ操作ができる。
また、シャワーヘッドにスイッチを設ける必要がないので、シャワーヘッドの大きさやデザインに制約を与えることがない。加速度センサはシャワーヘッドに内蔵して良いので、防水性能も簡単に実現でき、防水構造のスイッチのような複雑な部材が不要である。
【0022】
単純に加速度センサをスイッチの代替手段とすれば、加速度が所定の値を越えたときに吐水/止水を行うような制御になってしまい、誤動作の発生は避けられない。しかし、操作行為検出手段によって、加速度センサの出力を使用者が行った操作行為の情報へ変換するため、誤動作なく快適に操作できる。
また、シャワーヘッドを「振る」「叩く」といった分かりやすい操作によって制御を行うので、誰にでも簡単に操作できる。
【0023】
また、シャワーヘッドの姿勢や落下など、使用者の操作行為以外の情報も使って制御することにより、使用者の意志に従った確実な動作ができるだけでなく、自動的に吐水を止めるたり、吐水を継続するなど、使用者が意識して操作行為を行わなくても、安全かつ、きめ細かい動作が可能となり、信頼性と使い勝手が向上する。
【0024】
また、複数の方向の加速度を検出する加速度センサを使えば、単に水を出し/止めするだけでなく、湯温や水量の調節、水流の形態の切り替えなども可能となる。
その場合も、従来のスイッチであれば、機能を増やすためにスイッチの数が増えるという問題があったが、加速度センサはシャワーヘッドに内蔵するため、外観に何ら影響を与えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明による好適な実施形態を添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0026】
図1は本発明の第1の実施例としてのハンドシャワー装置の構成図である。
1はハンドシャワー装置のシャワーヘッドであり、その先端に加速度センサ2を内蔵している。シャワーヘッド2は、水栓本体3に取り付けても、引き出しても使えるようになっている。このような機能は、台所や洗面所で使用する際に便利である。
4は給水部、5は給湯部であり、それぞれ電磁弁6及び7を経由し、混合弁8から給水ホース9を通ってシャワーヘッド1に給水される。ハンドル10は混合弁を通るの水と湯の比率、流量を調整する。一般に、給湯部5からは高温の湯が供給されるので、給水部4からの水と混合して適温の湯を得る。
【0027】
11はコントローラ、12はその電源部である。コントローラ11は、給水ホース9の外周部に内蔵された信号線13によって加速度センサ2と接続され、この加速度センサの出力に基づいて電磁弁6及び7を開閉制御する。
【0028】
図2は、図1の水の流れと信号の流れを示すブロック図である。コントローラ11が電磁弁6のみを開けると水が、電磁弁6及び7を同時に開けると混合された適温の湯がシャワーヘッド1へ供給される。
なお、水路の構成は、図3のようにしても良い。これは図2と電磁弁、混合弁の接続が異なる。図3では、電磁弁6は給水4からの水を、電磁弁7は混合弁8の出力を通過させる。よって、電磁弁6を開ければ水、電磁弁7を開ければ適温の湯がシャワーヘッド1へ供給される。
【0029】
図4は信号系のブロック図である。加速度センサ2は例えば図4のようなものが使用できる。
最も簡単な構造の加速度センサは、おもりが付いた可動電極をバネで支持し、この可動電極と固定電極との接触の有無によって加速度の大小を検出するものであり、例えば、歩数計などで使用されている。しかし、この方法では加速度が一定の閾値を越えたかどうかしか検出できない。
近年、マイクロマシニング技術の発達によって、加速度の値をアナログ(電圧)またはデジタル出力(出力パルスのデューティーや周波数などによる)する加速度センサが普及している。
【0030】
これらは、小型のICパッケージの中に重力加速度に応じて動く可動電極とその信号処置回路が内蔵されており、電極の移動量を静電容量の変化や圧電効果を利用して検出するものが一般的である。
加速度センサには、1軸タイプ、2軸タイプ、3軸タイプがあり、それぞれ検出可能な加速度の方向が1方向(X)、2方向(X、Y)、3方向(X、Y、Z)となる。検出の基本原理は各軸とも同じであり、それがいくつ内蔵されているかどうかの違いによる。
本実施例では、図4のように、3軸タイプの加速度センサを使用する。但し、本発明の内容の一部のみを実施のであれば、1軸または2軸の加速度センサも使用可能である。
【0031】
3軸タイプの加速度センサの代表的なものは、図4のように電源を供給するだけで、各軸の加速度を電圧で出力する。この出力電圧を、コントローラ11の中に内蔵されているマイコン14によってA/D変換する。なお、加速度センサへの電源供給及び信号電圧の接続は、図1の信号線13を経由して行われる。
マイコン14は加速度センサの3つの軸(X、Y、Z)の出力電圧に基づいて、電磁弁6及び7を制御する。
【0032】
各軸の方向は、加速度センサ2を取り付ける向きによって決まるが、図5のように取り付けるものとする。
X軸はシャワーの吐水方向に並行な軸で、吐水方向(吐水口から水が出て行く方向)を加速度の正符号とする。X軸の加速度は、吐水方向が真下になるようにシャワーヘッド1を持つ(保持する)と+1g(1g=9.8m/s2)となり、吐水方向が真上を向くようにシャワーヘッド1を持つと、−1gとなる。
【0033】
Y軸はシャワーヘッド1を左右に振る方向とし、吐水が下向きになるように持って、左方向の加速度の正符号とする。シャワーヘッド1を左右に振る、または傾けることでプラスまたはマイナスの加速度が発生する。
【0034】
Z軸はシャワーヘッド1の給水ホース9が繋がる根本と、その反対側の先端をつなぐ軸に並行な軸とし、先端に向けた加速度を正符号とする。シャワーヘッド1の先端が上になるように立てて持つと、Z軸の加速度は−1gとなり、シャワーヘッド1の先端が下になるように、つまり、シャワーヘッド1をぶら下げるように持つと、Z軸の加速度は+1gとなる。
【0035】
次に、本発明のハンドシャワー装置を制御するマイコン14の動作プログラムをフローチャートを用いて説明する。図6は、動作プログラムのメインルーチンのフローチャートである。
本動作プログラムは、ハンドシャワー装置の使用者(以下、使用者と記す)が、吐水/止水の制御や湯温の調整などを行うために、シャワーヘッドを振る、叩くなどの操作を行うので、その操作行為を加速度センサの値から検出するものである。
【0036】
図6において、メインルーチンはステップ001(以下、S001)からスタートする。S001では、X、Y、Zの各軸の加速度(フローチャート中でGと略記する)の変動を監視する。これは、マイコン14が、加速度センサ2のX、Y、Z、それぞれの出力をA/D変換し、その値に基づいて判断する。それぞれの加速度の変動が0.5g以下になるとS002に進み、使用者の操作を検出するサブルーチンを実行する。
【0037】
S001はシャワーヘッドの安定待ちのルーチンであり、使用者は、任意の操作を行う前の準備として「1秒以上シャワーヘッドを静止させることが必要」という仕様にする。これは取り扱い説明書などで、使用方法として説明すれば良い。
これにより、シャワーヘッドを振る、叩くなどの操作の検出がし易くなり、操作入力をするつもりがなくシャワーヘッドを動かした場合の誤動作を防止する効果もある。
【0038】
S002ではX方向の操作行為が行われていないかを判定する。続いて、S003ではY方向の操作行為が行われていないかを判定する。
S002で実行するX方向の操作の判定を行うサブルーチンを図7乃至9に示す(ひとつのサブルーチンを3つの図に分割して示す)。この、X方向の操作判定サブルーチンは図7のS101からスタートする。このサブルーチンでは、シャワーヘッド1を「振る」操作と、「叩く」操作があったか、或いは「落下」させた場合のような異常な動きがあったかを判定する。
【0039】
ここで、「振る」「叩く」「落下」という場合に、加速度がどのような値となるかを図11乃至図14に示す。
図11はシャワーヘッド1を「振る」操作である。横軸が時間、縦軸が加速度(G)の値である。最初はシャワーヘッド1の吐水方向を下向きにして保持しているので、Gが1g程度で安定する。それからシャワーヘッド1を下方向に振る、つまり振り下ろすと図11の時刻T1、T2、T3のようにマイナス側のGが発生する。
【0040】
使用者は、シャワーヘッド1を振り下ろして、そのまま落としてしまうつもりはないので、振り下ろしたシャワーヘッド1を保持しようとする。これが図11の時刻T4でプラス側のGとなって現れる。時刻T5からT6にかけて、振り下ろしたシャワーヘッド1を静止させようとする課程で多少の振動がGの変化を発生させるが、時刻T6以降、シャワーヘッド1がほぼ静止し、Gも安定する。
【0041】
以上のように、「振る」操作行為の説明をしたが、詳しくは「静止状態から振り下ろし、それを止めて、再び静止させる」操作である。これを「振る」と記述する。
単にシャワーヘッドを動かすということの検出だけであれば、加速度が所定の値を越えたか否かだけで判断できる。しかし、シャワーヘッドは手に持って自由に動かして使うものであり、使用者が注意して使わなければ、誤動作する可能性が高い。
これを、振り下ろしてから静止するまでの一連の操作行為として識別することにより、確実かつ快適に使用できる。
【0042】
図12はシャワーヘッド1を「叩く」操作である。「叩く」と言っても、壊れる程に叩くのではなく、指先または手の平でシャワーヘッド1をと軽く叩く操作を対象としている。例えば、右手でシャワーヘッド1を持ち、左手の指先でシャワーヘッド1を上から軽く叩く操作である。
【0043】
図12の時刻T10からT11にかけて、短時間かつ急激なマイナスのGが発生している。これが、シャワーヘッド1を上から軽く叩いた瞬間である。例えば、左手でシャワーヘッド1を叩くと、それによってシャワーヘッド1が下がるので、右手はそれを保持しようとして、持ち上げる方向に力が入り、T12からT13のように若干のプラス側のGと変動が発生する。その後、T13からT14でシャワーヘッド1が安定する。
【0044】
図13は「チョンチョン」と2回続けて叩いた場合である。「1回叩く」と「2回叩く」とを区別することにより、入力操作の種類を増やし、不本意な吐水を防止したり、湯水の切り替えなど、別な機能を操作することも可能となる。
波形は、図12の波形が連続して繰り返されるだけである。
【0045】
以上の「振る」「叩く」という操作行為の特徴は、「振る」「叩く」というシャワーヘッドに加わる力に対して、使用者はシャワーヘッドを保持しようとするために、反対の力が加わる。よって、図11及び12共に、下向きのマイナスの加速度の後に、プラスの加速度が発生する点である。そして、これらの変化の前後は安定しているために、加速度はほぼ一定になる。
【0046】
図14はシャワーヘッド1を誤って落下させてしまった場合の波形である。落下の仕方によってさまざまな加速度のパターンがあり得るが、「振る」「叩く」という意志を持った操作に比較すると、短時間に大きく、かつ激しい加速度の変化が発生する。
【0047】
図7のサブルーチンに戻って、上記操作の判定方法を説明する。
S102では、X方向のGが1.5gを越えているかをチェックする。以前は静止状態(図6のS001の判定による)であったのに、そこからすぐにX方向のGが1.5gより大きくなるのは、例えばシャワーヘッド1を大きく振り上げた場合である。このような操作行為は、今回はハンドシャワー装置の操作方法として認めていないので、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。詳細は後に説明する。
なお、振り上げる操作を必ず禁止する必要はない。仕様の選択の範疇の問題である。
【0048】
S103ではGが0.5g未満かをチェックする。図11乃至図13に説明したように「振る」「叩く」操作では、まず、マイナス側のGが発生する。S103でGが0.5g未満でない場合、Xは安定していると判断してS104から図6のメインルーチンに戻る。
Gが0.5g未満の場合、S105でタイマーカウンターのTC1をスタートさせる。以降、TC1はS105の実行タイミングを0秒(0ms)としてカウントアップしていく。
【0049】
S106乃至S108のループで、300ms以内にGが0g以下まで下がるとS109に進み、300ms経過(S106のYes判定)またはGが0.5g以上になる(S107のYes判定)と、S104から図6のメインルーチンに戻る。
【0050】
S109でタイマーカウンターTC2をスタートさせ、S110でGが0g以下に下がるまでの時間であるTC1の値をチェックする。
TC1が30ms未満の場合、急激にマイナスのGが発生したことになるので、「叩く」操作が行われている可能性が高いと判断し、S113へ進む。
S110でTC1が30ms以上の場合は、「振り下ろし」の操作が行われている可能性が高いと判断し、S111へ進む。
【0051】
S111乃至S112のループでは、TC1が200ms以内にGが−1.0g以下になると、図8のS115(「振る」判定フロー)に進み、それ以外は図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
「振る」操作の図11の波形に対応させると、時刻T2がS109に、時刻T3がS115となる。
【0052】
S113乃至S114のループでは、TC1が50ms以内にGが−1.5g以下になると、図8のS116(「叩く」判定フロー)に進み、それ以外は図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
「叩く」操作の図12の波形に対応させると、時刻T10がS109に、時刻T11がS117となる。
【0053】
図8のS115乃至S116のループで、TC1が300msになる前にGが2.5g以上になるとS119に進み、それ以外は図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。S119でTC2が50ms以上であればS120に進む。
これは、図11の時刻T3からT4の時間が50ms以上あるかどうかの判断である。シャワーヘッド1を振り下ろす操作では、この時間が「叩く」操作のように極端に短くなることはない。この時間が50ms未満なら、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0054】
S120でタイマーカウンターTC3をスタートさせ、S121乃至S122のループでTC1が500ms以内にGが2.5g以下に下がればS123に進む。S123では、TC3が50ms以上ならS124に進む。
これは、図11の時刻T4からT5の時間が50ms以上あるかどうかの判断である。この時間は、振り下ろしたシャワーヘッド1を止める操作なので、極端に短くなることはない。この時間が50ms未満なら、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0055】
S124乃至S125のループで、TC1が800msになる前にGが0.5g以上1.5g以下の範囲に安定するかチェックする。これが成立すれば、S126で「振る」操作が行われたことを確定し、S127から図6のメインルーチンに戻る。
シャワーヘッド1が、つまりGが安定しないままTC3が800msになれば図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0056】
「叩く」操作の判定は、S117乃至S118のループで、TC1が100msになる前にGが2.0g以上になるとS128に進み、それ以外は図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。S128でTC2が20ms以下であればS129に進む。
これは、図12の時刻T11からT12の時間が20ms以下で推移したかどうかの判断である。シャワーヘッド1を叩く操作では、短時間のマイナスのGの後にシャワーヘッド1を保持するためのプラスのGに移行する。この時間は「振る」操作のように長くなることはなく、発生するプラスのGも「振る」操作の場合より小さい。
この時間が20msより長ければ、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0057】
S129でタイマーカウンターTC3をスタートさせ、S130乃至S131のループでTC1が300ms以内にGが2.0g以下に下がればS132に進む。S132では、TC3が30ms以上ならS133に進む。、
これは、図11の時刻T12からT13の時間が30ms以上あるかどうかの判断である。この時間は、叩いたシャワーヘッド1を保持しようとする操作なので、極端に短くなることはない。この時間が30ms未満なら、図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0058】
S133乃至S134のループで、TC1が400msになる前にGが0.5g以上1.5g以下の範囲に安定するかチェックする。これが成立すれば、「叩く」操作が行われたことが確定するが、図12の「1回叩く」操作か、図13の「2回叩く」操作かを判定する。このために「1回」「2回」いずれかの「叩く」を判定した直後のS138で、タイマーカウンターTC4をスタートさせておく。S135でのTC4は、前回の「叩く」を判定した時点からの経過時間となる。
【0059】
このTC4がS135で400ms以内であれば連続して「叩く」操作があったとしてS137で「2回叩く」を確定する。TC4が400msを越えている場合はS136で「1回叩く」を確定する。いずれの場合も、S138でTC4をスタートさせ、S139から図6のメインルーチンに戻る。
シャワーヘッド1が、つまりGが安定しないままTC3が400msになれば図9のS301の「落下」を判定するフローに進む。
【0060】
図9のS301以降は「落下」を判定する。S301でタイマーカウンターTC5をスタートさせ、S302でGの変動をカウントする変数Nをリセットする。
S303は、S304乃至S307の判断を行う時間を管理し、100ms経過するとS311に進む。
S304でGが5.0g以上、S305でGが−3.0g以下のいずれかが成立すると、「振る」「叩く」という操作では発生しない異常に大きいGと判断し、直ちにS312に進んで「落下」を確定する。
【0061】
S306でGが3.0g以上、S307でGが−1g以下のいずれかが成立すると、Gの比較的大きな変化があったとして、S308で、その回数Nをカウントアップする。S309乃至S310のループで、Gが一旦0.5g以上1.5g以下の範囲に戻るのを待ってS303に戻る。
以上の動作中にTC5が100msに達すると、S311に進んでGの変化の回数Nをチェックする。Nが5以上の場合、「振る」「叩く」の操作や、通常の洗いものをするためにシャワーヘッド1を動かす動作としては、時間あたりにGが変化した回数が多すぎるため、S312で「落下」の判断を確定し、図6のメインルーチンに戻る。
Nが5未満の場合は、「振る」「叩く」の操作でも「落下」でもない、単なるGの変動があっただけとしてS313から図6のメインルーチンに戻る。
【0062】
このように加速度センサは、従来の操作スイッチと異なり、「振る」「叩く」という操作行為を検出する手段以外に、「落下」などの異常状態、事故などを検出する手段としても機能できる。シャワーヘッドは濡れた手で握るため、すべって落とすことも十分に考えられるため、「落下」を検出もできることは非常に有効である。
【0063】
以上が図6のS002のX方向操作判定のサブルーチンの内容である。次に、図6のS003のY方向操作判定のサブルーチンの内容を説明する。
Y方向の操作はシャワーヘッド1を手に持って、使用者から見て左右方向の加速度を生じる操作である。シャワーヘッド1を右から、次に左から「叩く」操作をした場合の加速度(G)の変化を図15に示す。
図12及び図13に比較して、Gの変化の傾向は同じだが、シャワーヘッド1を左右に傾けずに持つと、Gがほぼゼロからスタートする点が異なる。「叩く」動作の変化の特徴はX方向の操作で説明したため省略する。
【0064】
S003で実行するY方向の操作の判定を行うサブルーチンを図10に示す。このサブルーチンでは、シャワーヘッド1を左右から「叩く」操作があったか、或いは「落下」させた場合のような異常な操作があったかを判定する。
図10において、S201からスタートし、S202でタイマーカウンタTC1をスタートさせる。S203でGが正か負かをチェックする。負であればS204に、正であればS224に進む。
【0065】
S204以降の動作は、図7及び図8の「叩く」操作を判定する動作と、基本的に同じ動作である。
S204乃至S206のループで、TC1が30ms以内にGが−2.5gまで下がると、S207でTC2をスタートさせる。ここまでが、「叩く」ことによる瞬間的なGの発生の検出である。
Gが−2.5g以下にならないまま30msが経過する、もしくはGが0以上になると、S218から図6のメインルーチンに戻る。
【0066】
S207に進んだ場合、S208乃至S209のループで、TC2が20msになる前に、Gが1.0g以上になるとS210に進む。これは、「叩く」操作に対してシャワーヘッド1を支えようとするシャワーヘッドを持った手の力の検出である。
S210でTC3をスタートさせ、上記の手の力の継続をS211乃至S212のループでチェックし、S213でその時間が30ms以上あれば、S214乃至S215のループで、TC1が400msになる前に、Gが0.5g以上1.5g以下の範囲に安定するかチェックする。
これが成立すれば、S216で、左から「叩く」操作が行われたことを確定し、S217から図6のメインルーチンに戻る。
S208以降で上記の動作が成立しない場合は、Xの操作判定のサブルーチンと同じく図9のS301へ進み、「落下」の判定を行う。
【0067】
S203でGが正の場合は、S224に進むが、上述のS204乃至S218と、S224乃至S238は、Gの正負の符号が逆になっているだけで、同じ動作である。よって、一連の条件が成立すればS236で、右から「叩く」操作が行われたことが確定する。
【0068】
図6のメインルーチンに戻り、S004ではX方向の「振る」操作が行われたかどうか、更に、以降のS005乃至S007で他の操作の有無をチェックする。
「振る」操作が行われた場合、S014で吐水中かチェックし、吐水中でなければS015でZ軸の加速度(G)をチェックする。
【0069】
シャワーヘッド1を、その先端が上になるように持つと、Z軸のGが−1gとなり、水平になるように持つと0g、下になるように持つと1gとなる。ここではGが0.5g以下、つまりシャワーヘッド1を斜め下45度よりも高く持っている場合のみS016に進んで吐水を開始する。
【0070】
S015でGが0.5gより大きい場合は、シャワーヘッド1が、ほぼ下になってぶら下げるように持っている状態であり、使用者がシャワー吐水を開始したいという意志が疑わしいため、吐水を開始せずS001に戻り、再度、操作を待つ。
S014で吐水中だった場合は、S018で止水してS001に戻る。
こうして、使用者は「振る」という操作行為により、シャワーの吐水、止水を制御できる。
【0071】
S005でX方向に「2回叩く」操作があった場合、「振る」操作と同じく、S014に進む。よって使用者は「2回叩く」操作により、シャワーの吐水、止水を制御できる。
S006でX方向に「1回叩く」操作があった場合、S017に進んで吐水中かチェックする。吐水中であればS018で止水するが、吐水中でない場合は、何もせずS001に戻る。
こうすることにより、「1回叩く」だけで止水することができ、かつ、何かに軽くぶつけるなどした際に、誤って吐水することを防止できる。
【0072】
S007では、Y方向に「叩く」操作があったかチェックする。Y方向の「叩く」操作があった場合、S019で吐水中かどうかチェックし、吐水中であれば、S020で「湯」「水」の吐水の種別を変更する。
具体的には、図2の水路構成であれば、「湯」の場合は電磁弁4及び5を開け、「水」の場合は電磁弁4のみを開ける。図3の水路構成であれば、「湯」の場合は電磁弁5のみを開け、「水」の場合は電磁弁4のみを開ける。
【0073】
こうして、使用者は、左右方向に「叩く」操作により、シャワーの湯温を切り替えることができる。
なお、図10のサブルーチンからの情報をフルに使い、「右から叩く」と「湯」、「左から叩く」と「水」としても良い。また、X方向のように、「叩く」回数に基づいて制御を変えても良い。加速度の方向とその変化パターンによって多様な制御が可能である。
【0074】
更に、シャワーヘッド1に、吐水温度の表示、例えば、湯、水のどちらが選択されているか示すLEDランプなどがあれば、止水中でも「湯」「水」を切り替える仕様としてもよい。その場合、使用者は、シャワーヘッド1を「叩く」ことで、湯、水が切り替わるのを表示で確認できる。
【0075】
S008ではX、Y、いずれかの方向で「落下」が検出されていないかチェックする。「落下」があればS012へ進み、吐水中であればS013で止水してS001に戻る。
S009ではZ軸のGの絶対値が2gを越えていないかチェックする。使用者がしっかりとシャワーヘッド1を持っていれば、Z軸方向のGは極端に大きい値になるはずがないため、Gの絶対値が2gを越えた場合はS008の「落下」と同じ扱いをする。
【0076】
S010では、X軸方向のGが−0.8g以下の状態が30秒以上継続していないかチェックする。これは、シャワーヘッド1の吐水口が、ほぼ上向きの状態(完全に上向きなら−1.0g)で維持されていることを意味する。
このような状態が30秒も継続するのは、シャワーの使い方として一般的に無いため、S008の「落下」と同じ扱いをする。
【0077】
S004乃至S010のいずれの条件も成立しない場合、X、Y軸方向の操作が検出されなかった場合は、S002に戻り、操作を待つ。但し、S011で各軸のGの変動が0.5g以下の状態が1分継続したことが判定されると、S012に進み、吐水中であれば、止水する。これにより、シャワーヘッド1を動かさない状態で1分間吐水が継続すると、自動的に止水させる。
【0078】
例えば、無人の状態で意図しない誤吐水が開始した場合でも、1分間で止水でき、使用者がシャワーヘッド1を動かしている限りは長時間シャワーを使用できる。
もちろん、シャワーヘッド1が動かない状態で吐水時間は最長1分、シャワーヘッド1が動いても吐水時間は最長10分まで(加速度の変化に関わらず、必ず10分で止水する)、というような制御も可能である。
【0079】
このように、「振る」「叩く」は使用者が意図した行為であるが、シャワーヘッド1の姿勢は、使用者に意識させることなく、使用状態を推測するための情報として使われている。従来の操作スイッチでは、使用者から「操作する」という働きかけがなければ役に立たないが、本発明で使用する加速度センサは、操作の入力手段以外にも利用できる。
【0080】
以上、本発明の動作を説明したが、操作行為の検出や吐水制御などの機能の大半をマイコン14のプログラムで実現している。発明内容をより明確にするため、構成要素と信号の流れで表したブロック図を図16に示す。
20は操作行為検出手段、21は吐水方向検出手段、22は制御手段であり、全てはマイコン14のプログラムの実行により機能する。20の操作行為検出手段は図7乃至図10に示したフローチャートに、21の吐水方向検出手段及び22の制御手段は図6のフローチャート内に記載されている。
【0081】
本実施例では、台所や洗面所で使用するタイプのシャワー水栓(図1)を示したが、浴室のシャワー水栓でも同様に実施できる。
また、加速度センサ2とコントローラ11を給水ホース9に内蔵した信号線13で接続したが、シャワーヘッド1に電池を内蔵して加速度センサ2を駆動し、電波や赤外線などを使って、ワイアレスでデータをコントローラ11に送る構成も可能である。
また、実施例では3軸の加速度センサを用いたが、1軸の加速度センサ、または2軸の加速度センサを使い、本実施例の一部の機能のみ(例えば、吐水と止水のみ)動作させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例のハンドシャワー装置の構成図である。
【図2】本発明の実施例のハンドシャワー装置の水と信号の流れを示すブロック図である。
【図3】本発明の実施例の、図2とは水路の構成が異なるハンドシャワー装置の水と信号の流れを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施例の信号系のブロック図である。
【図5】本発明の実施例の加速度センサの取り付け方向を示す構成図である。
【図6】本発明の実施例の制御プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例の制御プログラムのX方向の操作を判定するサブルーチンを示すフローチャート(1/3)である。
【図8】本発明の実施例の制御プログラムのX方向の操作を判定するサブルーチンを示すフローチャート(2/3)である。
【図9】本発明の実施例の制御プログラムのX方向の操作を判定するサブルーチンを示すフローチャート(3/3)である。
【図10】本発明の実施例の制御プログラムのY方向の操作を判定するサブルーチンを示すフローチャートである。
【図11】本発明の実施例の「振る」操作時の加速度センサの出力を示す図である。
【図12】本発明の実施例の「1回叩く」操作時の加速度センサの出力を示す図である。
【図13】本発明の実施例の「2回叩く」操作時の加速度センサの出力を示す図である。
【図14】本発明の実施例の「落下」時の加速度センサの出力を示す図である。
【図15】本発明の実施例の左右方向に「叩く」操作時の加速度センサの出力を示す図である。
【図16】本発明の実施例を、機能要素と信号の流れによって示したブロック図である。
【符号の説明】
【0083】
1…シャワーヘッド
2…加速度センサ
3…水栓本体
4…給水部
5…給湯部
6…水側電磁弁
7…湯側電磁弁
8…混合弁
9…給水ホース
10…ハンドル
11…コントローラ
20…操作行為検出手段
21…吐水方向検出手段
22…制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水ホースの先端に取り付けられて、湯水を吐出する吐水口が形成されたシャワーヘッドと、前記給水ホースへの流路を開閉する開閉手段と、前記開閉手段を制御する制御手段を有するハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドに加速度を出力する加速度センサを備え、前記制御手段は、前記加速度センサの出力に基づいて前記開閉手段を制御することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドシャワー装置において、前記加速度センサの出力に基づいて、使用者によるシャワーヘッドへの操作行為を検出する操作行為検出手段を備え、前記制御手段は、前記操作検出手段の出力に基づいて前記開閉手段を制御することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出手段は、前記加速度センサの出力の時間的な変化パターンに基づいて、使用者がシャワーヘッドを「振る」「叩く」のいずれかの操作行為を行なったことを検出することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項4】
請求項3に記載のハンドシャワー装置において、前記「振る」操作行為の検出の判断は、前記加速度センサの出力が、その絶対値が第1の所定値以上の状態が第1の所定時間以上継続し、その後、前記出力の符号が逆転し、かつ絶対値が第2の所定値以上の状態が、前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間以上継続し、その後、前記出力の変化が第3の所定値以下の状態が第3の所定時間以上継続し、以上の3つの状態遷移が第4の所定時間以内に完了した場合であることを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項5】
請求項3に記載のハンドシャワー装置において、前記「叩く」操作行為の判断は、前記加速度センサの出力が、その絶対値が第4の所定値以上の状態が第5の所定時間以下のパルス状に発生し、その後、前記出力の符号が逆転し、かつ絶対値が第5の所定値以上の状態が、前記第5の所定時間よりも長い第6の所定時間以上継続し、その後、前記出力の変化が第6の所定値以下の状態が第7の所定時間以上継続し、以上の3つの状態遷移が第8の所定時間以内に完了した場合であることを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出手段は、前記加速度センサの出力の時間的変化パターンに基づいて、シャワーヘッドが「落下」したことを検出し、「落下」が検出された場合には、前記流路を閉じることを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項7】
請求項6に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出御手段は、使用者による操作行為で発生し得る加速度の値にマージンを加えた第6の閾値を越える加速度が検出された場合、または、加速度の符号の変化が、短時間に所定回数以上検出された場合に「落下」と判断することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記加速度センサの出力に基づいて、前記シャワーヘッドの吐水方向が地面に対してどの向きであるかを検出する吐水方向検出手段を備え、前記制御手段は、前記操作検出手段及び前記吐水方向検出手段の出力に基づいて前記開閉手段を制御することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項9】
請求項8に記載のハンドシャワー装置において、前記制御手段は、前記操作行為検出手段が流路を開くべき操作行為を出力した場合、流路を開く前に、前記吐水方向検出手段により吐水の向きを確認し、「吐水が下向き」の状態でない場合は、流路を開かないことを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項10】
請求項8に記載のハンドシャワー装置において、前記制御手段は、流路を開いた状態で、前記吐水方向検出手段により吐水の向きを継続して監視し、「吐水が上向き」の状態が第9の所定時間以上継続すると、流路を閉じることを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、流路を開いた状態が連続して所定の制限時間まで継続すると流路を閉じる安全機能を備え、流路を開いた状態で所定値以上の加速度の変化が検出されると、前記吐水制限時間を延長することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドの吐水方向に並行な方向の加速度を検出する第1の加速度センサと、前記吐水方向に直交する方向の加速度を検出する第2の加速度センサを備えるとともに、前記流路の開閉手段の他に、流量の多少、水温の高低、水流の形態のいずれかを制御可能な機能を備え、前記制御手段は、前記第1の加速度センサの出力に基づいて前記流路の開閉を制御し、第2の加速度センサの出力に基づいて、流量の多少、水温の高低、水流の形態のいずれかを制御することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項1】
給水ホースの先端に取り付けられて、湯水を吐出する吐水口が形成されたシャワーヘッドと、前記給水ホースへの流路を開閉する開閉手段と、前記開閉手段を制御する制御手段を有するハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドに加速度を出力する加速度センサを備え、前記制御手段は、前記加速度センサの出力に基づいて前記開閉手段を制御することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハンドシャワー装置において、前記加速度センサの出力に基づいて、使用者によるシャワーヘッドへの操作行為を検出する操作行為検出手段を備え、前記制御手段は、前記操作検出手段の出力に基づいて前記開閉手段を制御することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項3】
請求項2に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出手段は、前記加速度センサの出力の時間的な変化パターンに基づいて、使用者がシャワーヘッドを「振る」「叩く」のいずれかの操作行為を行なったことを検出することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項4】
請求項3に記載のハンドシャワー装置において、前記「振る」操作行為の検出の判断は、前記加速度センサの出力が、その絶対値が第1の所定値以上の状態が第1の所定時間以上継続し、その後、前記出力の符号が逆転し、かつ絶対値が第2の所定値以上の状態が、前記第1の所定時間よりも短い第2の所定時間以上継続し、その後、前記出力の変化が第3の所定値以下の状態が第3の所定時間以上継続し、以上の3つの状態遷移が第4の所定時間以内に完了した場合であることを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項5】
請求項3に記載のハンドシャワー装置において、前記「叩く」操作行為の判断は、前記加速度センサの出力が、その絶対値が第4の所定値以上の状態が第5の所定時間以下のパルス状に発生し、その後、前記出力の符号が逆転し、かつ絶対値が第5の所定値以上の状態が、前記第5の所定時間よりも長い第6の所定時間以上継続し、その後、前記出力の変化が第6の所定値以下の状態が第7の所定時間以上継続し、以上の3つの状態遷移が第8の所定時間以内に完了した場合であることを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出手段は、前記加速度センサの出力の時間的変化パターンに基づいて、シャワーヘッドが「落下」したことを検出し、「落下」が検出された場合には、前記流路を閉じることを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項7】
請求項6に記載のハンドシャワー装置において、前記操作行為検出御手段は、使用者による操作行為で発生し得る加速度の値にマージンを加えた第6の閾値を越える加速度が検出された場合、または、加速度の符号の変化が、短時間に所定回数以上検出された場合に「落下」と判断することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記加速度センサの出力に基づいて、前記シャワーヘッドの吐水方向が地面に対してどの向きであるかを検出する吐水方向検出手段を備え、前記制御手段は、前記操作検出手段及び前記吐水方向検出手段の出力に基づいて前記開閉手段を制御することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項9】
請求項8に記載のハンドシャワー装置において、前記制御手段は、前記操作行為検出手段が流路を開くべき操作行為を出力した場合、流路を開く前に、前記吐水方向検出手段により吐水の向きを確認し、「吐水が下向き」の状態でない場合は、流路を開かないことを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項10】
請求項8に記載のハンドシャワー装置において、前記制御手段は、流路を開いた状態で、前記吐水方向検出手段により吐水の向きを継続して監視し、「吐水が上向き」の状態が第9の所定時間以上継続すると、流路を閉じることを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、流路を開いた状態が連続して所定の制限時間まで継続すると流路を閉じる安全機能を備え、流路を開いた状態で所定値以上の加速度の変化が検出されると、前記吐水制限時間を延長することを特徴とするハンドシャワー装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のハンドシャワー装置において、前記シャワーヘッドの吐水方向に並行な方向の加速度を検出する第1の加速度センサと、前記吐水方向に直交する方向の加速度を検出する第2の加速度センサを備えるとともに、前記流路の開閉手段の他に、流量の多少、水温の高低、水流の形態のいずれかを制御可能な機能を備え、前記制御手段は、前記第1の加速度センサの出力に基づいて前記流路の開閉を制御し、第2の加速度センサの出力に基づいて、流量の多少、水温の高低、水流の形態のいずれかを制御することを特徴とするハンドシャワー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−104701(P2006−104701A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289992(P2004−289992)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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