説明

ハンドホール

【課題】 本発明は、搬送が容易に行えて施工性もよく、また、埋設時の水密性と耐久性を兼ね備えるハンドホールを提供することにある。
【解決手段】 矩形筒型をなすホール本体1と、ホール本体1の上側の開口部に有する蓋受け2と、ホール本体1の下側の開口部を塞ぐ底壁3とを備えるハンドホールであって、ホール本体1と蓋受け2と底壁3は、繊維強化樹脂で成形してあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設して電気設備を防護するハンドホールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハンドホールは、地中に埋設するケーブルの分岐箇所や電気機器類などを修理もしくは設置するときの空間確保を目的に設置されるものである。ハンドホールは一般に、地上に露出する蓋と、地中に埋設し且つほぼ矩形筒型をなすコンクリート製のホール本体と、ホール本体下端を塞ぐ底壁とからなっており、作業者が蓋を外してホール本体の縦孔に手を入れて作業するものであった。また、上記のようなコンクリート製のハンドホールでは、重量が嵩んで搬送や施工が大変であったことから、特開2005−168271号公報に開示されるような樹脂製のハンドホールも提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2005−168271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特開2005−168271号公報に開示されるような樹脂製のハンドホールは、軽量化が図られて現場への搬送や設備に対応した加工が容易である反面、従来あるコンクリート製のハンドホールと比較したときの耐久性に難があり、しかも、ハンドホールを構成するホール本体と底壁との接合箇所が嵌合式であることが多く、このことから、水密性に難があり、接合状態が悪い場合には、浸水によりハンドホールの内部に収容する電気設備に悪影響を及ぼす懸念があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、搬送が容易に行えて施工性もよく、また、埋設時の水密性と耐久性を兼ね備えるハンドホールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、矩形筒型をなすホール本体と、ホール本体の上側の開口部に有する蓋受けと、ホール本体の下側の開口部を塞ぐ底壁とを備えるハンドホールであって、ホール本体と蓋受けと底壁は、繊維強化樹脂で成形してあることを特徴とする。
【0006】
本発明のうち請求項2記載の発明は、繊維強化樹脂で成形したホール本体と蓋受けと底壁とを備えており、ホール本体は、起立した複数の周壁の側端部同士を接合して矩形筒型状をなすものであり、蓋受けは、各周壁の上端部に接合してホール本体の上端で蓋および蓋枠を支持するものであり、底壁は、各周壁の下端部に接合してホール本体の下端を塞いでおり、各周壁間さらには周壁と蓋受けおよび底壁との接合部は、ホール本体と蓋受けと底壁を成形する繊維強化樹脂と同種の樹脂を主成分とする接着剤で接合してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、ハンドホールを構成するホール本体と蓋受けと底壁を繊維強化樹脂で成形してあることから、軽量であるにもかかわらず弾性率も高く耐衝撃性に優れるため、作業者の現場搬送や施工負担の軽減が図れるとともに、ハンドホールを地中に埋設したときの土圧に対しても十分に抗することができるので、耐久性があって耐用年数の長いハンドホールを提供できる。また、繊維強化樹脂は切断や孔開けなどの加工がしやすいため、配線やパイプの抜き出しなどの現場状況に合わせた対応が容易となる。
【0008】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、繊維強化樹脂と同種の樹脂を主成分とする接着剤を用いて接合してあることから、ホール本体を構成する周壁間、さらには各周壁と蓋受けおよび底壁との接合箇所が緊密に接合されることにより、ハンドホールの水密性が確保され、このことから、ハンドホール内部に納められている電気設備の不具合が大幅に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1(a)(b)】本実施によるハンドホールの斜視図であり、(a)は、蓋と蓋受けを取り付けた状態であり、(b)は、蓋と蓋受けを取り付ける前の状態である。
【図2(a)(b)(c)】(a)は、本実施によるハンドホールの平面図であり、(b)は、(a)図中のA−A線縦断面図であり、(c)は、(a)図中のB−B線横断面図である。
【図3】本実施によるハンドホールを構成する各構成部間の接合部を示す簡略化した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施によるハンドホールを各図面に基づいて説明する。
図1(a)(b)に示すように、ハンドホールは、地中に埋設されるものであり、ホール本体1と、蓋受け2と、底壁3と、蓋4と、蓋枠5とからなっており、そのうち、ホール本体1と蓋受け2と底壁3が繊維強化樹脂で成形してある。
【0011】
蓋4は、平面視して円形をなす鋳鉄で形成された鋳物であり、同様に鋳鉄で形成された蓋枠5を介して蓋受け2の上面に固定してある。また、ハンドホールを現場に設置したときに地上に露出する蓋4の上面側に凹凸面4aを有しており、これにより、蓋4の上を歩く歩行者の転倒を防止するものである。
【0012】
ホール本体1と蓋受け2と底壁3は、ハンドレイアップ成形法により不飽和ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂とガラス繊維を積層した繊維強化樹脂により一体成形してある。具体的には図2(a)〜(c)のように、ホール本体1は、ほぼ一対形状をなす周壁1a,1bを左右に接合して平面視ほぼ矩形筒型状をなすものである。そして、周壁1a,1bの上端には、周壁1a,1bの外周側に向けて屈曲したフランジ状の接合片7を有しており、この接合片7は蓋受け2と上下に接合する(以下、上側接合片7と記す。)。また、周壁1a,1bの下端には、同様に周壁1a,1bの外周側に向けて屈曲したフランジ状の接合片8を有しており、この接合片8は底壁3と上下に接合する(以下、下側接合片8と記す。)。さらに、周壁1a,1bは、平面視ほぼL字形をなしており、そのL字の側端部同士が接合することで、ホール本体1の全体が矩形筒型構造をなすものである。また、周壁1a,1bの両側の側端部に接合片6a,6bをそれぞれ有しており、一方の接合片(以下、一側接合片と記す。)6aは、周壁1a,1bの側端部から外向きに屈曲し、他方の接合片(以下、他側接合片と記す。)6bは周壁1a,1bの側端部からそのまま延伸している。さらに、周壁1aの下端においても外向きに張出した下側接合片8を有している。また、図示は省略するが、ホール本体1の中にはケーブルの分岐箇所や電気機器類などを収容するものであるから、周壁1a,1bの任意箇所にはケーブル類を通すためのパイプの差込孔を貫通させるが、このときに、周壁1a,1bが繊維強化樹脂で成形してあることにより、孔開けの加工が容易にできる。そして、蓋受け2は、平面視してほぼ矩形状をなす板状のものであり、その板面の中心に蓋4とほぼ同径且つ同寸法の円形孔10を有し、さらに、板状の外周側縁の全周にわたり縁部を有している。また、底壁3は、周壁1a,1b下端を塞ぐもので平面視してほぼ矩形状をなしており、周壁1a,1bよりも外周側に張出した状態となる。さらに、底壁3の張出した外周側先端部から全周にわたって起立片3aを有するもので、これにより、本実施によるハンドホールを地中に埋設したときに、底壁3の張出し部分に加わる土圧による下向き荷重を効率的に受け止めて、埋設後のハンドホールの浮き上がりを防止する。
尚、蓋受け2の縁部は、かならずしも設けなくてもよく、全面がフラットなものを使用してもよい。
【0013】
図3は、本実施によるハンドホールを構成する各構成部(ホール本体1(周壁1a,1b)、蓋受け2、底壁3)の接合箇所を示すものである。
図を参照すれば、一方の周壁1aの一側接合片6aと他方の周壁1bの他側接合片6b、さらには、一方の周壁1aの他側接合片6bと他方の周壁1bの一側接合片6aと、両方の周壁1a,1bの上側接合片7と蓋受け2の下面および下側接合片8と底壁3の上面とは、ホール本体1と蓋受け2と底壁3を成形している繊維強化樹脂と同種の樹脂を主成分とする接着剤、本実施では不飽和ポリエステル樹脂を主成分とする接着剤で接合してある。このようにすると、ハンドホールを構成する各構成部(一方の周壁1aと他方の周壁1bの側端部同士、一方の周壁1aと他方の周壁1bと蓋受け2および底壁3)の間の接合箇所が緊密な状態となって水密性が確保されるので、ハンドホールに収容されているケーブルの分岐箇所や電気機器類などの不具合の発生を大幅に抑制できる。
尚、符号9は、周壁1a,1bと底壁3との接合を補助する接合補強部材であり、この接合補助部材9についても同様に、ホール本体1を成形する繊維強化樹脂と同種の樹脂を主成分とする接着剤を用いて周壁1a,1bおよび底壁3の内周側に接合するものである。
【0014】
本実施によるハンドホールでは、ハンドレイアップ成形法により成形したものについて記載したが、この他、スプレーアップ成形法、SMCプレス成形法などでも成形することができる。また、繊維強化樹脂の樹脂分の選択についても限定するものではないが、ハンドホールを構成する各構成部の接合片6a,6b,7,8同士ならびに蓋受け2および底壁3を接合する接着剤として使用するものであるから、化学的な安定性に優れた種のものを選択することが望ましい。また、ホール本体1の横幅、高さ、奥行き寸法についても本実施によるW600mm×H600mm×D600mmの他、様々な大きさのものに対応できる。
【符号の説明】
【0015】
1 ホール本体
1a 一方の周壁(周壁)
1b 他方の周壁(周壁)
2 蓋受け
3 底壁
4 蓋
5 蓋枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形筒型をなすホール本体と、ホール本体の上側の開口部に有する蓋受けと、ホール本体の下側の開口部を塞ぐ底壁とを備えるハンドホールであって、ホール本体と蓋受けと底壁は、繊維強化樹脂で成形してあることを特徴とするハンドホール。
【請求項2】
繊維強化樹脂で成形したホール本体と蓋受けと底壁とを備えており、ホール本体は、起立した複数の周壁の側端部同士を接合して矩形筒型状をなすものであり、蓋受けは、各周壁の上端部に接合してホール本体の上端で蓋および蓋枠を支持するものであり、底壁は、各周壁の下端部に接合してホール本体の下端を塞いでおり、各周壁間さらには周壁と蓋受けおよび底壁との接合部は、ホール本体と蓋受けと底壁を成形する繊維強化樹脂と同種の樹脂を主成分とする接着剤で接合してあることを特徴とするハンドホール。

【図1(a)(b)】
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【図2(a)(b)(c)】
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【図3】
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