説明

ハンドルバー伸縮機構

【課題】 外界から保護され伸縮調整部の剛性も高く、多段にて調整が可能なハンドルバー調整機構を提供することを目的とする。
【解決手段】 センターパイプ2に対して左右のハンドルバー5、6をスライド自在に装着して構成した二輪車のハンドルバー伸縮機構において、前記左右のハンドルバー5、6の内側端部はセンターパイプ2内にて左右一対のスライド部が重合スライド可能で、かつセンターパイプ2に対して緊締自在に構成されたことにより、センターパイプ2内にて外界から保護された伸縮調整部を構成する左右一対のスライド部が、重合部においてセンターパイプ2対して断面円弧面の比較的広い面積にてまとめて緊締されるので、低い面圧にて高い強度で緊締強度が確保される。しかも、重合スライド部は断面円弧面を有しているので、安定して円滑に伸縮することで高い伸縮精度が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センターパイプに対して左右のハンドルバーをスライド自在に装着して構成した二輪車のハンドルバー伸縮機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自転車等の二輪車において、保管時にコンパクトにするためにハンドルバーを伸縮可能に構成したものがある(例えば下記特許文献1参照)。また、固定設置型の各種シミュレーションが可能なトレーニング用二輪車を搭乗者の体格に適合させるためにハンドルバーを伸縮可能に構成したものもある(下記特許文献2参照)。さらには、近年提案されているオーダーメイド自転車の作成に際して、ユーザーに最適なハンドルグリップのポジション選定のために、搭乗する乗車測定手段のハンドルバーを伸縮可能に構成するものも提案されている(例えば実開平6−75982号公報参照)。
【特許文献1】実開平4−67197号公報全文マイクロフィルム(公報実用新案登録請求の範囲参照)
【特許文献2】特開平9−71281号公報(公報特許請求の範囲参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような従来例を図面を用いて説明すると、前記特許文献1に開示された自転車のハンドルは、図9(A)の第1実施例のものでは、握手部を端部に有する各左右部材102、103を中央部材101の両端部のピン107を中心に起伏自在に装着したものにおいて、各左右部材102、103を図示のように垂直位置102’、103’に回動させることで、格納時の保管スペースを小さくした。また、図9(B)の第2実施例のものでは、ハンドルシャフト104の中央に固定された管体の中央部材101内に、同様に管体の左右部材102、103がそれぞれ軸方向に摺動自在に装着されたもので、右部材103の先端小径部103aは左部材102内に嵌合される。左部材102の先端は中央部材101の張り出し段部105の左側端部に当接し、右部材103の大径部103bは中央部材101の張り出し段部105の右側端部に当接して停止し、この位置がハンドルバーの短縮保管状態であり、止めピン106を中央部材101、左右部材102、103の整合整列した各孔に貫通させて短縮位置をロックするものである。
【0004】
前記特許文献2に開示された伸縮機構付操向装置は、図10(A)に示すように、ハンドルバー246を構成する保持部256a、256bに画成されたスライド溝254a(図10(B))、254bと、前記保持部256a、256bに形成された係合凸部258a(図10(B))、258bとを有し、前記スライド溝254a、254bに沿って前記係合凸部258a、258bを摺動変位させることにより、ハンドルバーの把持部260a、260b側の高さHおよび幅Wを伸縮調整可能に構成したものである。ストッパ部材262aの摘み264aを緩めることにより、孔部265に螺入されたねじ部材266aを取り外せば、把持部260aがスライド溝254aに沿って摺動自在な状態となる。
【0005】
このようなハンドルバーの伸縮機構によって、前記図9の特許文献1に記載された第1従来例のものでは、保管時のハンドルバーの保管スペースは小さくすることが可能となったものの、そのハンドルバーの伸縮形態は使用時と保管時の2形態のみで細かな伸縮位置の調整は不可能であった。また、その実施例2に記載されたものでは、中央部材101に対する左右部材102、103の互いの嵌合摺動部および止めピン106によるロック部は管体から構成されているために、止めピン106による緊締ロック時に変形し易く、また止めピン106のための各部材における挿入孔の整合作業が面倒である上、調整時に抜き取らねばならない止めピン106を紛失する虞れもあった。また、前記図10の特許文献2に記載された第2従来例のものでは、伸縮機構は左右2か所にあって、それぞれにて調整作業が必要であって面倒な上に、前記第1従来例のものと同様に、調整時に抜き取らねばならないストッパ部材262aを紛失する虞れがあった。その上、伸縮機構部が露出していて塵挨に晒される虞れもあった。
【0006】
そこで本発明は、前記従来のハンドルバー伸縮機構における諸課題を解決して、外界から保護され伸縮調整部の剛性も高く、多段にて調整が可能なハンドルバー調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明は、センターパイプに対して左右のハンドルバーをスライド自在に装着して構成した二輪車のハンドルバー伸縮機構において、前記左右のハンドルバーの内側端部はセンターパイプ内にて左右一対のスライド部が重合スライド可能で、かつセンターパイプに対して緊締自在に構成されたことを特徴とする。また本発明は、前記各スライド部にハンドルバーの軸方向に長孔が穿設されるとともに、これら長孔に前記センターパイプを貫通して挿入された緊締ボルトと緊締ナットとの緊締により、前記左右のハンドルバーのスライド部がセンターパイプの内壁に押し付けられて固定されて前記各スライド部のセンターパイプに対する適正位置を調整可能に構成したことを特徴とする。また本発明は、前記センターパイプに対する各スライド部の位置を選択的に位置決めする節度手段をセンターパイプとスライド部との間に設けたことを特徴とする。また本発明は、前記緊締ナットの側面をカットして回止め面として、前記スライド部のいずれか一方の長孔または前記センターパイプに穿設された前記緊締ナット用の孔に整合挿入したことを特徴とする。また本発明は、前記センターパイプに穿設された前記緊締ナット用の孔により、緊締ボルトと緊締ナットのセンターパイプに対する倒れが抑制されるように構成したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、センターパイプに対して左右のハンドルバーをスライド自在に装着して構成した二輪車のハンドルバー伸縮機構において、前記左右のハンドルバーの内側端部はセンターパイプ内にて左右一対のスライド部が重合スライド可能で、かつセンターパイプに対して緊締自在に構成されたことにより、センターパイプ内にて外界から保護された伸縮調整部を構成するハンドルバーの内側における左右一対のスライド部が、重合部においてセンターパイプ対して断面円弧面の比較的広い面積にてまとめて緊締されるので、低い面圧にて高い強度で緊締強度が確保される。しかも、重合スライド部は断面円弧面を有しているので、安定して円滑に伸縮することで高い伸縮精度が確保される。
【0009】
また、前記各スライド部にハンドルバーの軸方向に長孔が穿設されるとともに、これら長孔に前記センターパイプを貫通して挿入された緊締ボルトと緊締ナットとの緊締により、前記左右のハンドルバーのスライド部がセンターパイプの内壁に押し付けられて固定されて前記各スライド部のセンターパイプに対する適正位置を調整可能に構成した場合は、前記各長孔に挿入された緊締ボルトと緊締ナットとを取り外すことなく、緩めるだけで各スライド部の相対位置すなわちハンドルバーの伸縮を調整できるので、緊締ボルトおよび緊締ナットを紛失する虞れがない上に、ハンドルバーのスライド部への緊締ボルトの緊締により、一対の各スライド部をセンターパイプの内壁に確実に押し付けるので、所定の緊締強度が確保される。さらに、前記センターパイプに対する各スライド部の位置を選択的に位置決めする節度手段をセンターパイプとスライド部との間に設けた場合は、前記緊締ボルトと長孔との整合機能のもとに各スライド部は回転方向にずれることなく、節度機構により軸方向の適正位置にて多段階に確実かつ容易に伸縮長さが得られる。
【0010】
さらにまた、前記緊締ナットの側面をカットして回止め面として、前記スライド部のいずれか一方の長孔または前記センターパイプに穿設された前記緊締ナット用の孔に整合挿入した場合は、緊締ナットをスライド部またはセンターパイプに対して回止めさせて配設することが可能となり、緊締ナットに螺合する緊締ボルトの螺合緊締時に緊締ナットをスパナ等により保持する必要がなくなり、緊締作業が簡素化される。また、前記センターパイプに穿設された前記緊締ナット用の孔により、緊締ボルトと緊締ナットのセンターパイプに対する倒れが抑制されるように構成した場合は、過不足のない緊締ナット用の孔径を有するセンターパイプにより、ハンドルバーの伸縮調整時にセンターパイプに対するハンドルバーの軸方向および周方向での大きなずれを生じることがなく、緊締ボルトの倒れが効果的に抑止されるので、スライド部の円滑なスライドが阻害されることがなく、円滑なハンドルバーの伸縮調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明のハンドルバー伸縮機構の実施例を図面に基づいて説明する。本発明のハンドルバー伸縮機構の基本的な構成は、図1に示すように、センターパイプ2に対して左右のハンドルバー5、6をスライド自在に装着して構成した二輪車のハンドルバー伸縮機構において、前記左右のハンドルバー5、6の内側端部はセンターパイプ2内にて左右一対のスライド部が重合スライド可能で、かつセンターパイプに対して緊締自在に構成されたことを特徴とする。
【実施例1】
【0012】
保管時にコンパクトにするため、あるいは固定設置型のトレーニング用二輪車を搭乗者の体格に適合させるために、さらにはオーダーメイド自転車の作成に際して搭乗する乗車測定手段のハンドルのポジションをユーザーに最適なものに選定するために、ハンドルバーを伸縮可能に調整するするものとして、本願発明のハンドルバー組立体1は、図1(A)および図3(B)に示すように、ハンドルポスト上端部の半割り二股状のハンドルステム11内に挿通され締付けボルト12にて固定されるセンターパイプ2に対して、左右のハンドルバー5、6がスライドかつ緊締自在に装着されて構成される。円管パイプ状のセンターパイプ2内にスライド部としての略半円状の断面を有する中実構成の左右のスライド部材3、4の本体部3Aおよび4Aがそれらの対向面である平面状の平坦なスライド面3C、4Cにて円滑かつ確実に重合スライドできるように構成される。中実構成の左右のスライド部材3、4は後述する緊締ボルト9により緊締される際に、それらの平坦なスライド面3C、4Cにて比較的広い面積にて緊締力を受けることができるので、高い剛性にて確実な緊締力が得られる。
【0013】
各スライド部材3、4の上面の外側端部近傍には、センターパイプ2との間に節度手段10が介設される。節度手段10は、例えば、各スライド部材3、4の上面に刻設された穴にばね10Bにて外方へ付勢されて収容された節度ボール10Aと、該節度ボール10Aを受け入れる複数の選択節度孔5A、・・をセンターパイプ2の軸方向に複数穿設して構成される(図1(B)および図3(A)参照)。右スライド部材4における節度手段10は、図示の例のような上部でなくて下部や側面に配設することもできる。これらの各スライド部材3、4の外側端部には接合小径部3B、4B(図2も参照)が形成され、これらの各接合小径部3B、4Bにはそれぞれ左右のハンドルバー5、6の内側端部が嵌合されてロー付け等により接合される。ハンドルバー5、6とスライド部材3、4とを別部材にて構成できるので、曲折形成することの多いハンドルバーの設計の自由度を向上させたり、高い剛性とスライド性を要求されるスライド部材の素材の選定の自由度も向上させることができる。無論、ハンドルバーとスライド部材とを一体構成とすることも本発明の範疇内にあることは言うまでもない。
【0014】
図2を参照しつつ、図1(A)に示すように、前記左右のスライド部材3、4は、それらの対向面である平面状の平坦なスライド面3C、4Cにて重合スライドする際には、センターパイプ2の円弧内周面内にて各スライド部材3、4の外周の円弧面がずれることなくガイドされることになる。そして、それらのスライド面3C、4Cに直交して軸方向に所定長さの長孔3D、4Dが穿設形成される。これらの長孔3D、4Dに整合してセンターパイプ2を上下に貫通する緊締ボルト9の軸部9Bが挿入貫通される。図3(A)に示すように、センターパイプ2の略中央にはボルト孔2Bが穿設される。図1(B)に示すように、緊締ボルト9の頭部には非円形の工具穴9Aが刻設されている。図1(C)に示すように、緊締ボルト9の頭部とセンターパイプ2の表面との間にはソケット部材8が介設される。ソケット部材8の下面はセンターパイプ2の外表面と整合する面に形成されて、緊締ボルト9の頭部からの緊締力を偏ることなくセンターパイプ2の外表面に伝達することができる。
【0015】
また、緊締ボルト9の下端部の螺子部9Cには緊締ナット7の螺筒部7C(図3(D))が螺合される。緊締ナット7は、図3(C)〜図3(E)に示すように、側面をカットした回止め面7Aを有し、前記スライド部材のいずれか一方(図示の例では右スライド部材4)の長孔4Dに整合挿入されて、緊締ナット7をスライド部材4に対して回止めさせて配設することが可能となり、緊締ナット7に螺合する緊締ボルト9の螺合緊締時に緊締ナット7をスパナ等により保持する必要がなくなり、緊締作業が簡素化される。また、緊締ナット7には、前記回止め面7Aの下端部から形成される段部7Bが形成され、該段部7Bが、図2(C)に示すように、右スライド部材4の円弧状外周面下部に形成された平坦状のナット着座面4Eに着座して緊締ナット7を確実に直交配置させることを可能にする(図1(C)も参照)。ここで、伸縮調整部は、センターパイプ2内における左右のスライド部材3、4、節度手段10および緊締ボルト9ならびに緊締ナット7から構成される。
【0016】
このような構成により、ハンドルバー組立体1の左右の長さを調整するには、緊締ボルト9の頭部の工具穴9Aに適合する工具を挿入して、緊締ナット7に対する緊締ボルト9の螺合を緩めて左右のハンドルバー5、6を左右に伸縮させ、左右のスライド部材3、4の各節度手段10における節度ボール10Aをセンターパイプ2における選択節度孔2Aの適宜のものに節度感(クリック感)を以って係合させることにより、段階的に仮の伸縮長さを選定した上で、前記緊締ボルト9を緊締して左右のスライド部材3、4を重合締結させて、ハンドルバー1の左右の長さの伸縮調整を完了させることができる。なお、言うまでもないことであるが、節度手段10による節度位置以外の部分にて緊締ボルト9を緊締させて伸縮位置の微調整を行うことを妨げるものではない。また、センターパイプ2に軸方向のスリット部を形成して、外周囲を縮径可能に構成するとともに、その外周に締結バンド等を緊締自在に巻き付ける等すれば、緊締ボルト9と緊締ナット7とによる緊締手段を省略することができる。
【実施例2】
【0017】
図4は本発明のハンドルバー伸縮機構の第2実施例を示すもので、ハンドルバー伸縮機構の伸縮前後の正面要部断面図である。図4(A)は最も広幅の伸長時の状態、図4(B)は最も狭い幅の短縮時の状態である。本実施例では、図5に示すように、中実状のスライド部材4は右ハンドルバー6側のみに設置されている。したがって、図6に示すように、左ハンドルバー5側にはスライド部材は設置されていない。左ハンドルバー5側においては、後述するように、センターパイプ2内に挿入される部分の左ハンドルバー5の内壁面5Bがスライド部を構成して、前記右ハンドルバー6側にてスライド部を構成する中実状のスライド部材4の外周スライド面4Fにスライド嵌合することになる。図4にてもよく理解されるように、右ハンドルバー6側におけるスライド部材4の外周に嵌合した左ハンドルバー5の外周面は、センターパイプ2の内壁面との間にスライド部を構成して重合スライドする。
【0018】
図4(A)に示すように、右ハンドルバー6の内側端部が嵌合して接合されるスライド部材4の接合小径部4Bの軸方向内側には節度手段10を設置した大径部が形成され、さらに左ハンドルバー5側に向けてスライド部材4の本体部4Aが延設形成される。該本体部4Aの先端には、左ハンドルバー5の対応位置に複数個穿設された選択節度孔5Aに係合する節度手段10が設置され、左ハンドルバー5の伸縮調整に供される。前記スライド部材4の大径部と本体部4Aとの間には段差が形成され、図4(B)にてよく理解されるように、この段差部がストッパ部4G(図4(A))として、ハンドルバー組立体1の最も狭い幅の短縮時の左ハンドルバー5の右側内端部の位置を規制することになる。
【0019】
図5はスライド部材を有する右ハンドルバーの正面および底面図である。スライド部を構成するスライド部材4の小径の本体部4Aには、外周面のスライド面4Fを有し、その中間部には上下に貫通して後述する緊締ボルト9用の長孔4Dが軸方向に穿設され、その下部には平坦状のナット着座面4Eが形成される。図6は左ハンドルバーの一部断面の正面および底面図で、左ハンドルバー5にはスライド部材は接合されない。左ハンドルバー5には前記右側のスライド部材4の先端側の節度手段10に係合する選択節度孔5Aが複数個穿設されるとともに、後述する緊締ボルト9用の長孔5Cが上側に、緊締ナット7用の長孔5Dが下側に穿設される。図4に示すように、前記スライド部材4の長孔4Dおよび左ハンドルバー5の長孔5C、5Dに上下に貫通して緊締ボルト9が挿通され、緊締ナット7にて緊締される。
【0020】
図7は緊締ボルトおよび緊締ナットを含むセンターパイプの縦断面および横断面図である。図7(B)に示すように、緊締ナット7は前記実施例1と同様に、スライド部材4の長孔4Dにガイドされるべく挿入される回止めカット面7Aと、ナット着座面4Eに着座する段部7Bが形成される。緊締ナット7の外周を受け入れるセンターパイプ2には緊締ナット用孔2Cが穿設されており、該緊締ナット用孔2Cの内径は緊締ナット7の外周にほぼ整合するように構成される。これにより、ハンドルバー5、6の伸縮調整時に緊締ボルト9の倒れが効果的に抑止され、スライド部の円滑なスライドが阻害されることがなく、円滑なハンドルバーの伸縮調整が可能となる。また、緊締ナット7の外周を非円形(六角等)とし、緊締ナット用孔2Cもナット外周と相似形とすれば、前記カット面7A等による回止めを不要とすることもできる。
【0021】
図4に示すように、左右のハンドルバー5、6を図4(A)〜図4(B)の間で多段階に伸縮調整するには、左右のハンドルバー5、6を自転車の幅方向内側に押圧し、スライド部材4における2つの各節度手段10、10が、センターパイプ2における複数の選択節度孔2Aおよび左ハンドルバー5における複数の選択節度孔5Aの適宜のものを選択係合させる。その際、スライド部を構成するところの、右ハンドルバー5の外周面とセンターパイプ2の内壁面との間、スライド部材4の外周スライド面4Fと左ハンドルバー5の内壁スライド面5Bとの間、左ハンドルバー5の外周面とセンターパイプ2の内壁面との間、とが断面円弧状の円周面によって円滑にスライドする。その選択位置にて、前記緊締ボルト9を緊締ナット7に螺合締結させる。これによって、緊締ナット7の段部7Bが平垣状の着座面4Eを介してスライド部材4をセンターパイプ2の内壁面側に押し付ける。かくして、中実状のスライド部材4の高い剛性により、確実かつ強固に左右のハンドルバー5、6の管状部をセンターパイプ2の内壁側に押し付けることが可能となり、緊締強度を確保できる。
【実施例3】
【0022】
図8は本発明のハンドルバー伸縮機構の第3実施例を示すもので、ハンドルバー伸縮機構の伸縮前後の正面要部断面図である。本実施例のものは、中実状のスライド部材を廃止したもので、左右のハンドルバー5、6の内端部側が互いに重合してスライド部を構成する。実施例のものは、右ハンドルバー6の内端部側に小径部6Aを形成して、該小径部6Aを左ハンドルバー5の内壁面5Bに挿入して重合させる。前記右ハンドルバー6の小径部6Aの始端の段差部に左ハンドルバー5の内端面の移動を規制するストッパ部6G(図8(B))が形成される。該ストッパ部6Gの近傍の右ハンドルバー6の大径部と、前記左ハンドルバー5における右ハンドルバー6の内端面が近接する位置に、節度手段10が配設される。これらの節度手段10の節度ボール10Aが係合する選択節度孔2Aがセンターパイプ2の両端部の対応位置に穿設される。
【0023】
左ハンドルバー5の上下および右ハンドルバー6の上下には、緊締ボルト用の孔5C、緊締ナット用の孔5Dおよび緊締ボルト用の孔6C、緊締ナット用の孔6Dがそれぞれ穿設され、これらの孔を貫通して緊締ボルト9および緊締ナット7が上下に挿入されて螺合される。したがって、緊締ボルト9の緊締ナット7への螺合により、左右のハンドルバー5、6の重合スライドするスライド部が緊締ナット7を介してセンターパイプ2の内壁面に押し付けられる。好適には緊締ナット7上面は右ハンドルバー6の内壁面と整合する断面円弧面に形成される。これにより、面圧低く均等に強固にセンターパイプ2と左右のハンドルバーの重合スライド部を緊締することができる。また、センターパイプ2における緊締ナット7用の孔2Cを緊締ナット7の外径と過不足のない径とすれば、ハンドルバーの伸縮調整時にセンターパイプに対するハンドルバーの軸方向および周方向での大きなずれを生じることがなく、緊締ボルトの倒れが効果的に抑止されるので、スライド部の円滑なスライドが阻害されることがなく、円滑なハンドルバーの伸縮調整が可能となる。
【0024】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、自転車等二輪車の種類、センターパイプのハンドルポストヘの固定形態、センターパイプの形状(円筒形状を好適とするが、非円筒形状を排除しない)、形式、左右のハンドルバーの形状(グリップまでの曲折形状や配設部位等)、形式およびその材質(スライド部材とは別材質を好適とするが、同質材を排除しない)ならびにそのスライド部材への接合形態(接合小径部を利用したロー付け接合、スプライン嵌合を用いたビス止め接合等)、スライド部材の形状(センターパイプの断面形状に適合する形状)、形式および材質(高剛性材質を好適とする)、スライド部材におけるスライド面の重合形態(高精度の平滑面を好適とするが、互いの摩擦緊締力を高めるために粗面とすることもできる)、長孔の穿設形態(端部を緊締ボルトの軸部の断面に適合する円弧状に形成してもよい)、長孔に対する緊締ナットの整合挿入形態(回止め面を整合挿入するのを好適とするが、センターパイプとの間で緊締ナットに回止め部を形成すれば、長孔に挿入される回止め面を形成する必要はない)、ソケット部材の形状、形式およびその材質、工具穴を含む緊締ボルトの形状、形式、回止め面および段部を含む緊締ナットの形状、形式、節度手段の形状、形式(節度ボールとコイルスプリングの組合せの他、楔片と板ばねとの組合せ等。センターパイプにおける選択節度孔についても、プレス形成の凹溝としてもよい)等については適宜選定できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のハンドルバー伸縮機構の第1実施例を示す、伸縮機構の正面要部断面図、要部平面図および緊締ボルト部での断面図である。
【図2】同、ハンドルバー伸縮機構の各スライド部材の正面図およびスライド面での平面図である。
【図3】同、ハンドルバー伸縮機構のセンターパイプの平面および側面図ならびに緊締ナットの正面、側面および平面図である。
【図4】本発明のハンドルバー伸縮機構の第2実施例を示すもので、ハンドルバー伸縮機構の伸縮前後の正面要部断面図である。
【図5】同、スライド部材を有する右ハンドルバーの正面および底面図である。
【図6】同、左ハンドルバーの一部断面の正面および底面図である。
【図7】同、センターパイプの縦断面および横断面図である。
【図8】本発明のハンドルバー伸縮機構の第3実施例を示すもので、ハンドルバー伸縮機構の伸縮前後の正面要部断面図である。
【図9】第1従来例としての自転車のハンドルの保管状態の説明図である。
【図10】第2従来例としての伸縮機構付操向装置の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ハンドルバー組立体
2 センターパイプ
2A 選択節度孔
2B ボルト孔
3 左スライド部材
3A 本体部
3B 接合小径部
3C スライド面
3D 長孔
4 右スライド部材
4A 本体部
4B 接合小径部
4C スライド面
4D 長孔
4E ナット着座面
5 左ハンドルバー
6 右ハンドルバー
7 緊締ナット
7A カット面(回止め面)
7B 段部
8 ソケット部材
9 緊締ボルト
9A 工具用穴
9B 軸部
9C 螺子部
10 節度手段
10A 節度ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センターパイプに対して左右のハンドルバーをスライド自在に装着して構成した二輪車のハンドルバー伸縮機構において、前記左右のハンドルバーの内側端部はセンターパイプ内にて左右一対のスライド部が重合スライド可能で、かつセンターパイプに対して緊締自在に構成されたことを特徴とするハンドルバー伸縮機構。
【請求項2】
前記各スライド部にハンドルバーの軸方向に長孔が穿設されるとともに、これら長孔に前記センターパイプを貫通して挿入された緊締ボルトと緊締ナットとの緊締により、前記左右のハンドルバーのスライド部がセンターパイプの内壁に押し付けられて固定されて前記各スライド部のセンターパイプに対する適正位置を調整可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載のハンドルバー伸縮機構。
【請求項3】
前記センターパイプに対する各スライド部の位置を選択的に位置決めする節度手段をセンターパイプとスライド部との問に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のハンドルバー伸縮機構。
【請求項4】
前記緊締ナットの側面をカットして回止め面として、前記スライド部のいずれか一方の長孔または前記センターパイプに穿設された前記緊締ナット用の孔に整合挿入したことを特徴とする請求項2または3に記載のハンドルバー伸縮機構。
【請求項5】
前記センターパイプに穿設された前記緊締ナット用の孔により、緊締ボルトと緊締ナットのセンターパイプに対する倒れが抑制されるように構成したことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のハンドルバー伸縮機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−105513(P2010−105513A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279058(P2008−279058)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000112978)ブリヂストンサイクル株式会社 (78)
【Fターム(参考)】