説明

ハードキャンディ

【課題】歯脆さと歯付きし難さとを備えるハードキャンディを提供する。
【解決手段】本発明の発明者が、種々研究、実験を重ねたところ、ぶどう糖を主原料とする場合、歯脆さと歯付きし難さには、水分含有量が大きく影響することを知見した。その知見に基づき、本発明のハードキャンディは、ぶどう糖を主原料としたもので、水分が1.5wt%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質のハードキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
上記ハードキャンディは、糖尿病の治療の一環として用いられる。例えば、糖尿病の治療のためにインスリンを採り、低血糖となることを防止する糖補給のために使用される。
【0003】
このような糖補給には、市販されている、コーヒー等に使用されるスティック包装された砂糖、砂糖や水飴を主原料とするハードキャンディが一般的に用いられ、そのハードキャンディの製造については、従来から種々の製造方法が提案されている。例えば特許文献1に示されるように、砂糖、水飴を主原料とし、これに対して必要に応じて乳製品、油脂等の副原料を配合し、その後に水を加えて溶解し、加熱して水分を蒸発せしめて適度の硬度になるまで煮詰め、煮詰めが終了した後に、少し冷却して素早く着香し、その後、型に注入して冷却、成型、包装することにより、製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平5−8653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記糖補給には、砂糖や水飴を主原料とするハードキャンディよりもぶどう糖を主原料とするハードキャンディを用いる方が理にかなっている。つまり、血液中の血糖値はぶどう糖の濃度を測定しており、摂取したぶどう糖がストレートに血糖値に反映され、また砂糖や水飴を主原料とするハードキャンディと比較して、血糖値の上昇速度が速く、直ちに補給することが可能になるからである。
【0006】
しかしながら、ぶどう糖を主原料とするハードキャンディについては、上述した提案の製造方法で製造すると、強く噛んでもうまく砕けなかったり、歯に付着したりして、噛み心地の悪いものとなる。他に種々の製造方法を検討するものの、歯脆さ(噛むと砕け易いこと)と、歯付きし難さ(歯に付着し難いこと)とを備えたものを得ることができないでいた。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、歯脆さと歯付きし難さとを備えるハードキャンディを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者が、種々研究、実験を重ねたところ、ぶどう糖を主原料とする場合、歯脆さと歯付きし難さには、水分含有量が大きく影響することを知見した。その知見に基づき、本発明の請求項1に係るハードキャンディは、ぶどう糖を主原料としたもので、水分が1.5wt%以下であることを特徴とする。この発明による場合には、ハードキャンディの水分が1.5wt%以下であるので、歯脆さと歯付きし難さとを備えたものになる。
【0009】
この構成において、前記水分が1.0wt%以下であるようにすることが好ましい。このようにすると、歯脆さおよび歯付き性を更に向上させ得る。
【0010】
この構成において、ぶどう糖以外の糖質、脂質、たんぱく質、各種エキス、乳製品、果汁、香料、酸味料、ビタミン、ミネラル、着色料、調味料、増粘剤および乳化剤のうちの1種または2種以上を含む副原料を含有するようにしてもよい。このようにすることで、ハードキャンディの味や色、または香りなどの調整が可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハードキャンディは、水分が1.5wt%以下であるので、歯脆さと歯付きし難さとを備えたものになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るハードキャンディの製造工程を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るハードキャンディの製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態を具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るハードキャンディの製造工程を示す図である。
【0015】
まず、原料を準備する(ステップ(S)1)。この準備する原料は、主原料としての無水結晶ぶどう糖を必ず含み、これに副原料を必要に応じて加えたものが用いられる。主原料としては、無水結晶ぶどう糖に加えて、ぶどう糖の一種である含水結晶ぶどう糖が含まれる。また、副原料としては、ぶどう糖以外の糖質、脂質、たんぱく質、各種エキス、乳製品、果汁、香料、酸味料、ビタミン、ミネラル、着色料、調味料、増粘剤、乳化剤などが該当し、必要に応じて1または2種以上が加えられ、必要の無い場合は省略される。
【0016】
ぶどう糖以外の糖質としては、例えば果糖などの単糖、砂糖、麦芽糖、乳糖、パラチノース、トレハロースなどの二糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、還元パラチノースなどの糖アルコール、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、異性化糖などが挙げられる。また、脂質としては、例えば菜種油、大豆油、ごま油、ヤシ油などの植物油や、バター、ラード、ヘッドなどの動物油などが挙げられ、たんぱく質としては、例えばコラーゲン、ケラチン、アルブミンなどが挙げられ、各種エキスとしては、例えば梅エキス、人参エキス、ニンニクエキスなどの植物エキスや、シジミエキス、サメ軟骨エキスなどの動物エキス等が挙げられる。乳製品としては、例えばバター、チーズなどが挙げられ、果汁としては、例えばりんごやミカンの果汁が挙げられ、香料としては、食品に添加されるフレーバーが用いられる。酸味料としては、例えばクエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸などが挙げられ、ビタミンとしては、例えばビタミンA、ビタミンB、ビタミンCなどが挙げられ、ミネラルとしては、例えばカルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられ、着色料としては、例えばウコン、クチナシなどが挙げられる。調味料としては、例えば醤油、ソース、スパイス、ハーブ、味噌などが挙げられ、増粘剤としては、例えばアラビアガム、寒天、カラギナンなどが挙げられ、乳化剤としては、例えばレシチン、モノグリセリドなどが挙げられる。
【0017】
なお、上記無水結晶ぶどう糖としては、例えばサンエイ糖化株式会社製、商品名TDA−Sが用いられる。また、含水結晶ぶどう糖としては、例えばサンエイ糖化株式会社製、商品名HI−MESHが用いられ、麦芽糖としては、例えば株式会社林原商事製、商品名サンマルトSが、砂糖としては、例えば日新製糖株式会社製、商品名フロストシュガー(粉糖)が用いられる。糖質以外の副原料は、例えば味付けなどに応じて適宜最適なものが選択的に用いられる。
【0018】
次に、上記原料を加熱クッカー(図示せず)に装入して溶融する(S2)。例えば170℃まで昇温させることにより完全に溶融させた。その後、その溶融物をデポジッターで金型へ充填して成形する(S3)。その後、所定温度以下に冷却し(S4)、離型して(S5)、キャンディを製造する。なお、味や香りの調整を行うべく酸味料や香料などの副原料を添加する場合には、工程S2の後、味や香りが逃げないように適当な温度に冷却を行って酸味料や香料を混合し、その後、その混合物を前同様にデポジッターで金型へ充填して成形し(S3)、続いて工程S4、S5を経てキャンディを製造する。
【0019】
【表1】


表1は、使用した原料と、得られたハードキャンディ中の水分(wt%)と、歯脆さの評価と、歯付きし難さの評価とを纏めた表である。なお、実施例1〜実施例8は本発明に係るハードキャンディに相当するものであって、ぶどう糖を主原料とし、ハードキャンディ中の水分が1.5wt%以下のものである。従来例1は従来から一般的に用いられる製法により製造されたハードキャンディであって、砂糖(48wt%)と水飴(32wt%)と水(20wt%)を原料に用い、煮詰温度は175℃にしており、ハードキャンディ中の水分は1.6wt%である。また、比較例1〜5は、ぶどう糖を主原料とするが、ハードキャンディ中の水分が1.5wt%を超えるものであり、そのうち加水した比較例2、4に対する煮詰温度或いは加水しない比較例1、3、5の溶融温度はそれぞれ実施例1〜実施例8と同様の170℃にしている。更に、歯脆さの評価については、× : 悪い、△ : やや悪い、○ : やや良好、◎ : 良好を示し、歯付きし難さの評価についても同様である。更にまた、表中における無水結晶ぶどう糖、含水結晶ぶどう糖、麦芽糖、粉糖、砂糖、水飴、酸味料、香料および水に関する数値は、重量(wt)%である。
【0020】
この表1より理解されるように、ぶどう糖を主原料とする場合に水分が1.5wt%を超える比較例1〜5のハードキャンディにあってはいずれも、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も共に×である。特に、比較例1にあっては、水分の含有量が少ない無水結晶ぶどう糖を75wt%使用していても、これに、水分の含有量が8wt%である含水結晶ぶどう糖を25wt%加えることで、ハードキャンディ中の水分が1.7wt%となっている。また、比較例2のように無水結晶ぶどう糖を75wt%使用していても、これに水を25wt%加えることで、ハードキャンディ中の水分が1.7wt%となっている。比較例3〜5では含水結晶ぶどう糖を使用しているため、ハードキャンディ中の水分が1.7〜1.8wt%となっている。
【0021】
これに対し、砂糖と水飴と水を原料に用いた従来例1の場合には、ハードキャンディ中の水分が1.5wt%を超える1.6wt%となっていても、使用する原料がぶどう糖ではないので、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も共に◎である。また、ぶどう糖を主原料とするキャンディのうちで水分が1.5wt%のハードキャンディである実施例6の場合には、歯脆さの評価が◎であるものの、歯付きし難さの評価は○であり、水分が1.5wt%よりも少ない実施例1〜5、7、8の場合には、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も共に◎である。
【0022】
したがって、本発明にあっては、ぶどう糖を原料に用いるので、水分が1.5wt%以下にしている。この場合において、水分が1.5wt%以下にすることで、歯脆さの評価も歯付きし難さの評価も更に向上させることが可能となる。特に、実施例1〜3、5、8のように水分が1.0wt%以下の場合には、歯脆さの評価及び歯付きし難さの評価も更に向上したものであった。
【0023】
また、実施例2、5、7のように麦芽糖や粉糖などの糖質を加えたり、実施例8のように酸味料や香料などの添加物を加えたり、或いは、脂質を加えたりすることで、ハードキャンディの味や色、または香りなどを調整することが可能になる。
【0024】
なお、上述した実施形態では、ぶどう糖として無水結晶ぶどう糖と含水結晶ぶどう糖を用いているが、本発明はこれに限らず、含水結晶ぶどう糖に代えて、全糖ぶどう糖を用いるようにしてもよい。この全糖ぶどう糖を用いる場合は、含水結晶ぶどう糖と同レベルの水分を含むので、製品中の水分が1.5wt%以下になるように配合することが必要である。
【0025】
また、上述した実施形態では、製法にデポジット法を用いているが、本発明はこれに限らず、他の製造方法の適用が可能であり、例えば図2に示すスタンピング成形法を用いる製造方法も可能である。
【0026】
このスタンピング成形法を用いる製造方法は、まず、原料を準備する(S11)。この準備する原料は、前同様のもの或いは適宜目的に応じたものを用いることができる。次に、上記原料を加熱クッカー(図示せず)に装入して溶融する(S12)。その後、所定温度以下に一旦冷却し(S13)、続いてスタンピング成形法を用いて成形し(S14)、その後、冷却して(S15)、キャンディを製造する。なお、この製造方法においても、味や香りの調整を行うべく酸味料や香料などの副原料を添加する場合には、工程S13の後に、酸味料や香料などを添加して混合した後に所定温度以下に冷却し、その後、前同様にスタンピング成形法を用いて成形し(S14)、続いて工程S15を経てキャンディを製造する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ぶどう糖を主原料としたもので、水分が1.5wt%以下であることを特徴とするハードキャンディ。
【請求項2】
請求項1記載のハードキャンディにおいて、前記水分が1.0wt%以下であることを特徴とするハードキャンディ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハードキャンディにおいて、ぶどう糖以外の糖質、脂質、たんぱく質、各種エキス、乳製品、果汁、香料、酸味料、ビタミン、ミネラル、着色料、調味料、増粘剤および乳化剤のうちの1種または2種以上を含む副原料を含有することを特徴とするハードキャンディ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−80795(P2012−80795A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227874(P2010−227874)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(390029241)株式会社黄金糖 (4)
【Fターム(参考)】