説明

ハードコート用組成物及びハードコートフィルム

【課題】従来のハードコート用組成物は硬化時の体積収縮率が高く、被塗膜をカールさせたり、ハードコートフィルムに亀裂ができたりするうえ、硬化により透明性が減少するといった問題点があった。
【解決手段】多官能重合性モノマー(A)60〜93重量%、トリメチロールC2〜4アルカントリ(メタ)アクリレートを15〜35重量%含有する重合性ビニル単量体の乳化重合により製造され、有機溶剤に転相された平均一次粒子径が80〜500nmの非水系有機微粒子分散体(B)を固形分として7〜40重量%を配合してなるハードコート用組成物を硬化させることにより、体積収縮率が極めて低く、ヘイズ値の増加率も低い硬化物が得られることが判明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は硬化時の体積収縮率が低く、かつ光透過率の減少の低いハードコート用組成物およびその組成物から得られるハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムはその加工性、透明性等に加えて、軽量、安価といったことから、ガラスに変わり自動車業界、家電業界を始めとして種々の産業で使用されており、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどのフラットパネルディスプレイやタッチパネル、パーソナルコンピュータなどのディスプレイ用としても広く用いられている。しかし、ガラスと比較して柔らかく、表面に傷が付き易い等の欠点を有している。
【0003】
この欠点を改良するために、シリコン系、またはアクリル系の樹脂バインダー中に、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物微粒子を配合したハードコート剤が用いられている。このハードコート剤はフィルムの表面に塗工して乾燥させた後に加熱、または紫外線にて硬化することにより、表面に傷が付きにくいハードコートフィルムを作製できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−220487
【特許文献2】特開2005−194363
【特許文献3】特開2001−13303
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のハードコート用組成物は硬化時の体積収縮率が高く、被塗膜をカールさせたり、ハードコートフィルムに亀裂ができたりするうえ、硬化により透明性が減少するといった問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記の課題を解決するために検討されたものであり、多官能重合性モノマー(A)60〜93重量部、トリメチロールC2〜4アルカントリ(メタ)アクリレートを15〜35重量%含有する重合性ビニル単量体の乳化重合により製造され、有機溶剤に転相された平均一次粒子径が80〜500nmの非水系有機微粒子分散体(B)を固形分として7〜40重量部を配合してなるハードコート用組成物を硬化させた場合には、硬化物の体積収縮率は極めて低く、又ヘイズ値の増加率も低いことが判明した。この知見に基づき更に検討を重ね、本願発明を完成した。
【0007】
即ち本発明は、
(1)多官能重合性モノマー(A)60〜93重量部、トリメチロールC2〜4アルカントリ(メタ)アクリレートを15〜35重量%含有する重合性ビニル単量体の乳化重合により製造され、有機溶剤に転相された平均一次粒子径が80〜500nmの非水系有機微粒子分散体(B)を固形分として7〜40重量部、光重合開始剤(C)及び希釈溶媒(D)を含有してなるハードコート用組成物、
(2)(A)の硬化物と(B)の有機微粒子の屈折率の差が0.015以下である(1)記載のハードコート用組成物、
(3)多官能重合性モノマー(A)が多官能(メタ)アクリレートである(1)又は(2)記載のハードコート用組成物、
(4)トリメチロールC2−4アルカントリ(メタ)アクリレートがトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである(1)又は(2)記載のハードコート用組成物。
(5)(1)記載のハードコート用組成物を薄膜状に塗布し、紫外線を照射して硬化させたハードコートフィルム、
(6)請求項1記載のハードコート用組成物を透明プラスチックフィルムに塗布、硬化させ膜厚10μmの乾燥フィルムを形成させた場合、JIS K 7136 (2000年版)に準じて測定したフィルムの全光線透過率のヘイズ値の増加が2.5%以下である(5)記載のハードコートフィルム、
(7)に記載のハードコート用組成物を膜厚100μmの10cm×10cm角に裁断したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布、硬化させて10μm厚のハードコート層を積層させ、得られたフィルムを平板上に載置した場合、生じる四隅のカールの高さの合計値が10mm以下である(5)記載のハードコートフィルム、
である。
【0008】
本発明に使用される多官能重合性モノマー(A)は、UV硬化成分として用いられる。該多官能重合性モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基を分子中に少なくとも2個以上有するものである。中でも(メタ)アクリロイル基を有するものはラジカル反応性が非常に高く、速硬性と高硬度の点から好ましいものである。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独、または混合して使用しても良い。
【0009】
前記の多官能(メタ)アクリレートの中でも、とりわけジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが、ハードコート層の耐擦傷性、透明性に優れることから好ましい。
【0010】
本発明に用いる有機微粒子としては、トリメチロールC2〜4アルカントリ(メタ)アクリレートを15〜35重量%、好ましくは18〜32重量%含有する重合性ビニル単量体の乳化重合により製造された平均一次粒子径が80〜500nm、好ましくは90〜300nmの有機溶剤に転相された非水系有機微粒子分散体(B)である。
本発明の有機微粒子は、公知である乳化重合の方法、例えば、水のような水性媒体中に重合性ビニル単量体混合物、重合開始剤、乳化剤などを加えて乳化重合をすることにより製造することができる。
重合性ビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリロニトリル、スチレン及びその誘導体等が挙げられる。
トリメチロールC2〜4アルカントリ(メタ)アクリレートとしてはトリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールn−ブタントリ(メタ)アクリレート等があげられるが、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
重合性ビニル単量体中のトリメチロールC2〜4アルカントリ(メタ)アクリレートの占める割合は、15〜35重量%、好ましくは18〜32重量%、更に好ましくは20〜30重量%である。
【0011】
カールを抑え、且つハードコート層の透明性を維持するためには多官能重合性モノマー(A)の硬化物と非水系有機微粒子分散体(B)の有機微粒子の屈折率の差が0.015以下であることが好ましく、更に好ましくは0.010以下、特に好ましくは0.008以下である。有機微粒子を合成する際の重合性ビニル単量体を選ぶことで有機微粒子の屈折率を調整することができる。
【0012】
重合開始剤としては、特に制限されるものではなく、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過硫酸塩、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、などの有機過酸化物、例えば、アゾイソブチロニトリルなどのアゾ系の開始剤等を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのうち、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩などが重合安定性の面から好ましく用いられる。また、本発明において、上記した重合開始剤は、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄などの還元剤と組み合わせてなるいわゆるレドックス系重合開始剤としても用いることができる。本発明において、重合開始剤の使用量は、全単量体混合物100重量部当り、通常、0.1〜5重量部程度であり、好ましくは0.2〜3重量部程度である。
【0013】
乳化剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム等のアニオン系界面活性剤、(ジ)ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。本発明においては、これらの乳化剤のうち、特にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムまたはジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム等が好ましく用いられる。このような乳化剤の使用量は、用いる全単量体混合物100重量部当り、通常、0.05〜4.0重量部程度であり、好ましくは0.1〜3.0重量部程度である。
【0014】
乳化重合によって合成された水系ラテックスは多官能重合性モノマー(A)に混和、分散することが出来ないため、一次粒子を保持したまま非水系有機微粒子分散体にする必要がある。
乳化重合によって合成された有機微粒子の表面は、重合開始剤やイオン性界面活性剤の吸着により親水性になっているため、疎水化処理を施さないと有機溶剤に一次粒子を保持したまま転相させることができない。有機微粒子表面の疎水化処理としては、半透析膜または適切な細孔をもつ膜を使用し水溶解性成分を膜外の水中へ溶出させる方法、イオン交換樹脂層を通して親水イオン性物質を除去させる方法、電気泳動の原理を応用した電気的な方法により脱着する方法、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の水可溶性塩類により塩析して非イオン性吸着層を脱着し、その後適切な細孔を有する膜等で親水性物質を粒子分散体から分離させる方法などがあげられる。さらに疎水化処理後の水溶液中に非水系有機溶媒を添加していき、転相、相分離させ、上部または下部に発生する透明な水の相を除去することで、非水系有機微粒子分散体を製造することができる。
【0015】
非水系有機溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、エチルセロソルブなどのセロソルブ系などが挙げられ、多官能重合性モノマー(A)、希釈溶媒(D)と容易に混和、分散できる溶剤を選択することにより有機微粒子の凝集体の形成が起こることなく、均一配合が可能になり、カールを抑え、且つハードコート層の高い透明性を維持することができる。非水系有機微粒子分散体における有機微粒子の含有量は、取扱上問題がでない範囲で任意に設定できる。
有機微粒子の製造法として、乳化重合法以外に懸濁重合法もあるが、この方法では平均一次粒子径が80〜500nmの有機微粒子を合成することが難しく、また分散重合法ではトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の架橋剤の添加量を増やすことができないために架橋剤を容易に添加することができる乳化重合法が好ましい。
【0016】
有機微粒子の平均一次粒子径は80〜500nmのものが好適である。80nm未満ではカールを抑えるのに必要な添加量が多くなるためにハードコート性能が得られないのに対し、500nmを越えるとヘイズが上昇し、視認性が低下する問題が発生する。有機微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。尚、平均一次粒子径とは凝集を起こしていない単一の粒子の径であり、球状のものについてはその直径を、球状以外のものについては長軸径、短軸径の算術平均値を示し、電子顕微鏡により測定される値である。
【0017】
多官能重合性モノマー(A)と非水系有機微粒子分散体(B)の有機微粒子の合計量に対するそれぞれの使用割合は、通常(A)が60〜93重量%で(B)が7〜40重量%、好ましくは(A)が65〜91重量%で(B)が9〜35重量%、より好ましくは(A)が70〜88重量%で(B)が12〜30重量%である。
有機微粒子の添加量が7重量%未満ではカールを抑えることができないことがあり、また40重量%を越えると十分なハードコート性能を発揮することができないがある。
【0018】
本発明では、前記の有機微粒子の凝集を防ぎ、優れた分散性及び分散安定性を確保するため分散剤を微粒子100重量部に対して、0.1〜5重量部が配合されてもよい。
分散剤としては種々の界面活性剤が挙げられる。例えば、硫酸エステル系、カルボン酸系、ポリカルボン酸系等のアニオン型界面活性剤、高級脂肪族アミンの4級塩等のカチオン型界面活性剤、高級脂肪酸ポリエチレングリコールエステル系等のノニオン型界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッソ系界面活性剤、アマイドエステル結合を有する高分子活性剤等が挙げられる。
【0019】
本発明では多官能重合性モノマー(A)の硬化物と非水系有機微粒子分散体(B)の有機微粒子の屈折率の差が0.015以下が好適であり、それ以上ではフィルムのヘイズ値の増加によりフィルムの透明性が損なわれる。透明性が損なわれないためには(A)の硬化物と(B)の有機微粒子の屈折率の差が0.015以下、好ましくは0.010以下、さらに好ましくは0.008以下である。
【0020】
本発明のハードコ−ト用組成物には光重合開始剤(C)を添加するが、光重合開始剤としては特に制限はなく各種公知のものを使用することができる。
例えば、ベンゾフェノン及び他のアセトフェノン、ベンジル、ベンズアルデヒド及びo−クロロベンズアルデヒド、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、9,10−フェナントレンキノン、9,10−アントラキノン、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、α,α−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオール−2−o−ベンゾイルオキシム及びα,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。市販品としては、イルガキュア−184、イルガキュア−651(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製)、ダロキュア−1173(メルク社製)などの光開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、ジアセチルパーオキサイド、ジプロピルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ジカプリルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、p,p'−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、p,p'−ジメトキシベンゾイルパーオキサイド、p,p'−ジメチルベンゾイルパーオキサイドなどの熱開始剤が挙げられる。添加量は重合性多官能モノマーの樹脂固形分100重量部に対して1〜10重量部である。
【0021】
ハードコート組成物の固形分、粘度調整のため希釈溶媒を使用することができる。固形分、粘度が高すぎると塗膜厚が厚くなりすぎ、フィルムが反るなど取扱上の問題が出る場合がある。固形分、粘度が低すぎると塗膜厚が薄くなりすぎ、ハードコート剤としての硬度が十分発現されない。
本発明に使用される希釈溶媒(D)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素系、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、イソホロンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。使用量は取扱上問題がでない範囲で任意に使用できる。
【0022】
その他、各種添加剤、例えば、帯電防止剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、光増感剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤等などを配合材料としてもよい。
【0023】
本発明のハードコート用組成物を塗布する基材としては、プラスチック成型物、特にプラスチックフィルムが挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッソ樹脂フィルム、ナイロンフィルム、アクリル樹脂フィルム等、いずれも公知のものを用いることができる。
【0024】
また、本発明のハードコート用組成物との密着性を向上させる目的で、サンドブラスト法や溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、電子線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施してもよい。
【0025】
本発明のハードコート組成物からフィルムを製造する方法、塗布厚については特に制限はなく、公知の方法、例えばグラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法などが挙げられる。
乾燥後塗膜の厚みは10μm以下とするのがよく、10μmを越えると作製したフィルムが多少反るなど取扱上の問題が出る場合がある。より好ましい塗膜は、2〜5μmである。
【0026】
組成物を光硬化させる場合の電子線の照射は、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有し、紫外線を照射する場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等を用い、100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域で、100〜800mJ/cm2のエネルギーを有する紫外線を照射する。また、必要に応じて窒素雰囲気下にて硬化してもよい。
ハードコート用組成物を透明プラスチックフィルムに塗布、硬化させ膜厚10μmの乾燥フィルムを形成させた場合、JIS K 7136 (2000年版)に準じて測定したフィルムの全光線透過率のヘイズ値の増加が2.5%以下のものが好ましく、2.0%以下のものが更に好ましい。
【0027】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
【発明の効果】
【0028】
本発明の、ハードコート用組成物は、硬化による体積収縮率が低く、光透過率の減少の低いので、プラスチックフィルムやシートに貼付した場合に膜の反りがなく、光透過率の減少も殆どないので、テレビ、パソコンなどのディスプレイ用フィルムなどに有利に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下実施例や比較例を挙げて本発明について具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例や比較例における「部」は特に断りのない限り重量部を意味する。
各種非水系有機微粒子分散体の調製
【0030】
(1)非水系有機微粒子分散体(a−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート48重量部、スチレン25重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート25重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(a−1)を得た。
【0031】
上記で合成した水系ラテックス(a−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径102nm、屈折率1.526のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(a−2)を得た。
【0032】
この精製された水系ラテックス(a−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(a−3)を得た。生成物(a−3)は固形分25.1%、平均粒子径102nm、有機微粒子屈折率1.526であった。
【0033】
(2)非水系有機微粒子分散体(b−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.3重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.1重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート48重量部、スチレン25重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート25重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部、重炭酸ナトリウム0.3重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(b−1)を得た。
【0034】
上記で合成した水系ラテックス(b−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径483nm、屈折率1.526のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(b−2)を得た。
【0035】
この精製された水系ラテックス(b−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(b−3)を得た。生成物(b−3)は固形分25.0%、平均粒子径483nm、有機微粒子屈折率1.526であった。
【0036】
(3)非水系有機微粒子分散体(c−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート56重量部、スチレン17重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート25重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(c−1)を得た。
【0037】
上記で合成した水系ラテックス(c−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径108nm、屈折率1.518のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(c−2)を得た。
【0038】
この精製された水系ラテックス(c−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(c−3)を得た。生成物(c−3)は固形分25.2%、平均粒子径108nm、有機微粒子屈折率1.518であった。
【0039】
(4)非水系有機微粒子分散体(d−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン32重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート25重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(d−1)を得た。
【0040】
上記で合成した水系ラテックス(d−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径112nm、屈折率1.534のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(d−2)を得た。
【0041】
この精製された水系ラテックス(d−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(d−3)を得た。生成物(d−3)は固形分25.0%、平均粒子径112nm、有機微粒子屈折率1.534であった。
【0042】
(5)非水系有機微粒子分散体(e−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート51重量部、スチレン27重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート20重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(e−1)を得た。
【0043】
上記で合成した水系ラテックス(e−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径101nm、屈折率1.526のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(e−2)を得た。
【0044】
この精製された水系ラテックス(e−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(e−3)を得た。生成物(e−3)は固形分24.9%、平均粒子径101nm、有機微粒子屈折率1.526であった。
【0045】
(6)非水系有機微粒子分散体(f−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート46重量部、スチレン22重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート30重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(f−1)を得た。
【0046】
上記で合成した水系ラテックス(f−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径107nm、屈折率1.526のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(f−2)を得た。
【0047】
この精製された水系ラテックス(f−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(f−3)を得た。生成物(f−3)は固形分25.0%、平均粒子径107nm、有機微粒子屈折率1.526であった。
【0048】
(7)非水系有機微粒子分散体(g−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート36重量部、エチルアクリレート10重量部、スチレン27重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート25重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(g−1)を得た。
【0049】
上記で合成した水系ラテックス(g−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径115nm、屈折率1.526のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(g−2)を得た。
【0050】
この精製された水系ラテックス(g−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(g−3)を得た。生成物(g−3)は固形分24.9%、平均粒子径115nm、有機微粒子屈折率1.526であった。
【0051】
(8)非水系有機微粒子分散体(h−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート38重量部、スチレン35重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート25重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(h−1)を得た。
【0052】
上記で合成した水系ラテックス(h−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径118nm、屈折率1.537のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(h−2)を得た。
【0053】
この精製された水系ラテックス(h−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(h−3)を得た。生成物(h−3)は固形分25.0%、平均粒子径118nm、有機微粒子屈折率1.537であった。
【0054】
(9)非水系有機微粒子分散体(i−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート59重量部、スチレン14重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート25重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(i−1)を得た。
【0055】
上記で合成した水系ラテックス(i−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径107nm、屈折率1.515のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(i−2)を得た。
【0056】
この精製された水系ラテックス(i−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(i−3)を得た。生成物(i−3)は固形分25.2%、平均粒子径107nm、有機微粒子屈折率1.515であった。
【0057】
(10)非水系有機微粒子分散体(j−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン32重量部、エチレングリコールジメタクリレート25重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(j−1)を得た。
【0058】
上記で合成した水系ラテックス(j−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径110nm、屈折率1.526のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(j−2)を得た。
【0059】
この精製された水系ラテックス(j−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(j−3)を得た。生成物(j−3)は固形分25.2%、平均粒子径110nm、有機微粒子屈折率1.526であった。
【0060】
(11)非水系有機微粒子分散体(k−3)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート56重量部、スチレン32重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート10重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(k−1)を得た。
【0061】
上記で合成した水系ラテックス(k−1)をセルロース透析チューブに充填して、これをタンクに移し脱イオン水100Lを外液として加え透析、脱塩を行った。外液の交換は電気伝導度が1000μS/cm以下になるまで行った。この粒子表面疎水処理により、平均粒子径105nm、屈折率1.527のイオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(k−2)を得た。
【0062】
この精製された水系ラテックス(k−2)に、酢酸エチル300部を加え撹拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水層と白濁した有機層とを分離し、1次粒子を維持した非水系有機微粒子分散体(k−3)を得た。生成物(k−3)は固形分24.9%、平均粒子径105nm、有機微粒子屈折率1.527であった。
【0063】
(12)非水系有機微粒子分散体(l−1)
撹拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた内容100Lの重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み撹拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート41重量部、スチレン17重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート40重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を撹拌下、温度を73℃に保ちながら3時間かけて滴下したが、85℃の熟成中に凝集し水系ラテックス(l−1)を得ることができなかった。
【0064】
(13)転相工程を経ずに製造された非水系有機微粒子分散体(m)
上記で合成した水系ラテックス(a−1)を、スプレードライヤーにより凝集した粉体として取り出し、酢酸エチルに固形分25.0%になるよう調整し添加した。その後ホモジナイザーにより分散させ非水系微粒子分散体Mを得た。得られた非水系有機微粒子分散体(m)の平均粒子径は224nmであり、顕微鏡で観察すると、単粒が2個以上凝集した塊状粒子がかなりの割合で存在するのが確認され、且つ1000nm以上の粒子径を有する粒子が少量混入していた。
【0065】
(14)非水系微粒子分散体(n)
SiO2(平均粒子径98nm、屈折率1.463)を酢酸エチルに固形分25.0%になるよう調整し添加した。その後ホモジナイザーにより分散させ非水系微粒子分散体(n)を得た。
【実施例1】
【0066】
非水系有機微粒子分散体(a−3)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名カヤラッドDPHA)100重量部に対し、非水系有機微粒子分散体(a−3)の固形分が25重量部になるように添加し、希釈溶媒としてメチルエチルケトン50重量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・ジャパン株式会社製、商品名イルガキュア184)を3重量部混合し、コート剤を得た。
【0067】
次いで、コート剤を厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製 商品名ルミラーU34)に、硬化後の樹脂膜厚が10μmとなるように塗工・乾燥し、紫外線照射機を用いて1500mW/cm2の照射強度で、仕事量が300mJ/cm2の紫外線処理を行い、ハードコートフィルムを得た。
【実施例2】
【0068】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(b−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例3】
【0069】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(c−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例4】
【0070】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(d−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例5】
【0071】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(e−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例6】
【0072】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(f−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例7】
【0073】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(g−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例8】
【0074】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(h−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
【実施例9】
【0075】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(i−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
〔比較例1〕
【0076】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(j−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
〔比較例2〕
【0077】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系有機微粒子分散体(k−3)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
〔比較例3〕
【0078】
非水系有機微粒子分散体(l−3)を得ようとしたが、水系ラテックス(l−1)が熟成中に凝集し得ることが出来なかったため、ハードコートフィルムの評価は行わなかった。
〔比較例4〕
【0079】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の固形分が5重量部になるように添加した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
〔比較例5〕
【0080】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の固形分が50重量部になるように添加した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
〔比較例6〕
【0081】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに転相工程を経ずに製造された非水系有機微粒子分散体(m)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
〔比較例7〕
【0082】
上記実施例1において、非水系有機微粒子分散体(a−3)の代わりに非水系微粒子分散体(n)に変更した以外は同様に実施し、ハードコートフィルムを得た。
【0083】
上記の通り形成したハードコートフィルムを以下の方法で測定した。
1.鉛筆硬度の測定
JIS K 5600-5-4(1999年版)の規定に基づき鉛筆硬度(株式会社東洋精機製作所製、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P))を測定した。
2.耐SWの測定
ハードコートフィルムの表面を、2Kgの荷重をかけた日本スチールウール株式会社製のスチールウール#0000にて摩擦して傷の度合いを目視により評価した。傷が入らないものを◎、本数が3本以下のものを○、それ以上のものを×とした。
3.カールの評価方法
ハードコートフィルムを10cm平方角に切り取り、平滑なガラス板上に置き、フィルムの中心をガラス棒で押さえた状態でガラス板からのフィルム四隅の高さを測定し、それらの合計を算出した。
4.ヘイズ値の測定
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づきヘイズメータ(株式会社東洋精機製作所製、商品名ヘイズガードII)により測定した。
5.外観の評価方法
表面状態を目視により評価した。異物の無いものを○、異物があるものを×とした。
【0084】
【表1】




MMA:メチルメタクリレート
EA :エチルアクリレート
St :スチレン
TMPTM:トリメチロールプロパントリメタクリレート
EGDM:エチレングリコールジメタクリレート

実施例1〜9:水系ラテックスから有機溶剤に転相を行う処方。
2次凝集体がない非水系有機微粒子分散体。
比較例1、2、4、5:水系ラテックスから有機溶剤に転相を行う処方。
2次凝集体がない非水系有機微粒子分散体。
比較例3:比較するため高架橋の有機微粒子を乳化重合で合成しようとしたが、
安定性が悪く水系ラテックス中で凝集。
比較例6:一度粉体化した有機微粒子を有機溶剤に分散する処方。
2次凝集体が多い転相工程を経ずに製造された非水系有機微粒子分散体。1000nm以上の粒子径を有する粒子が少量混入。
比較例7:Si02(屈折率1.463)を有機溶剤に分散した非水系微粒子分散体。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のハードコート用組成物から得られるハードコート層は高い硬度、低い収縮率、低い透明性の低下率から、たとえばテレビ、パソコンなどのディスプレイ用フィルムのコート材として、広く使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多官能重合性モノマー(A)を60〜93重量部、トリメチロールC2〜4アルカントリ(メタ)アクリレートを15〜35重量%含有する重合性ビニル単量体の乳化重合により製造され、有機溶剤に転相された平均一次粒子径が80〜500nmの非水系有機微粒子分散体(B)を固形分として7〜40重量部、さらに光重合開始剤(C)及び希釈溶媒(D)を含有してなるハードコート用組成物。
【請求項2】
(A)の硬化物と(B)の有機微粒子の屈折率の差が0.015以下である請求項1記載のハードコート用組成物。
【請求項3】
多官能重合性モノマー(A)が多官能(メタ)アクリレートである請求項1又は2記載のハードコート用組成物。
【請求項4】
トリメチロールC2−4アルカントリ(メタ)アクリレートがトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートである請求項1又は2記載のハードコート用組成物。
【請求項5】
請求項1記載のハードコート用組成物を薄膜状に塗布し、紫外線を照射して硬化させたハードコートフィルム。
【請求項6】
請求項1記載のハードコート用組成物を透明プラスチックフィルムに塗布、硬化させ膜厚10μmの乾燥フィルムに形成させた場合、JIS K 7136 (2000年版)に準じて測定したフィルムの全光線透過率のヘイズ値の増加が2.5%以下である請求項5記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
請求項1に記載のハードコート用組成物を膜厚100μmの10cm×10cm角に裁断したポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布、硬化させて10μm厚のハードコート層を積層させ、得られたフィルムを平板上に載置した場合、生じる四隅のカールの高さの合計値が10mm以下である請求項5記載のハードコートフィルム。

【公開番号】特開2011−202072(P2011−202072A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72123(P2010−72123)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(592230542)ガンツ化成株式会社 (38)
【Fターム(参考)】