説明

ハードベース付きキーパッドおよびその製造方法

【課題】
特定の箇所において弾性ゴムがハードベースの側面外周部を覆うキーパッドを製造する際に、その特定箇所の周囲にバリが発生するのを防止する。
【解決手段】
板状のハードベース10と、そのハードベース10の表面の側に配置される1または2以上のキートップ12,13とを備えるハードベース付きキーパッド1において、ハードベース10の少なくとも側面外周に弾性体11を備え、その弾性体11は、上記側面外周に沿って延出する延出部を有し、ハードベース10の周縁における延出部の端部に、ハードベース10の表面および裏面の少なくともいずれか一方の面が水平面に対して傾斜する傾斜部20を備えるハードベース付きキーパッド1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードベースと弾性体とを一体化すると共に当該弾性体上にキーを配置したハードベース付きキーパッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のキートップを配したキーパッドは、携帯電話機、携帯情報端末等の電子機器の入力手段として多用されている。上記電子機器は、その携帯性に起因して、小型化および薄型化の要求の強い機器である。このため、搭載されるキーパッドの小型化および薄型化が強く望まれている。
【0003】
上記小型化および薄型化の要求に応えるべく開発されたキーパッドとして、硬質樹脂板から成り、桟および/または貫通孔を有するハードベースに弾性体を一体化させ、その弾性体の一方の面に樹脂製のキートップを固定し、キートップが弾性体を介して上下動できるようにしたキーパッドが存在する(例えば、特許文献1を参照)。さらに、ハードベースとして、透光性の高い樹脂から成ると共に光を導く機能を持つライトガイドを採用し、図49に示すように当該ライトガイド200を金型210内にセットして、その金型210内に選択接着性のシリコーンゴムを充填し加熱・硬化させ、ライトガイド200とシリコーンゴムとを一体化させたキーパッドの構成も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
上記のキーパッドでは、ハードベースが補強板として弾性体を支持しているため、ハードベースの外周部のみでキーパッドを通信機器の筐体に保持できる。このため、筐体に、弾性体から成る複数のキートップの間の上面を覆う桟を形成する必要が無く、キートップの間隔をより狭くすることができる。
【0005】
一方、電子機器の小型化に伴い設計上のスペースが小さくなるにつれて、キーパッドのキー接着部から電子機器の筐体までの距離が短くなる箇所が生じる。かかる箇所では、ハードベースを配置する十分なスペースを設けることができない。このような問題を解決すべく、図50に示すように、上記の特定の箇所Sにおいて、弾性体250がハードベース260の側面外周を覆う形態を有するキーパッド270が開発されている。図50に示すキーパッド270は、弾性体250がハードベース260の側面外周を覆った特定の箇所Sが電子機器の筐体との密着部となるため、電子機器の防水性を高めるという長所を有する。
【特許文献1】特開2003−178639(特許請求の範囲、図5)
【特許文献2】国際公開WO2005/093770(段落0021、請求の範囲7、図1、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図50に示すような形態を有するキーパッド270に対して、次のような要望がある。図49に示す液体射出成形(Liquid Injection Molding System: LIMS)用の金型にハードベース260をインサートして射出成形する場合、プランジャと対向方向からゲートが備えられるため、ハードベース260の側面外周とLIMS用の金型との間にクリアランスが必要となる。このクリアランスが大きいと、弾性体材料の充填の際に、弾性体材料は、ハードベース260の側面外周を覆う必要のある特定の箇所Sの周囲Tを超えてオーバーフローしてしまう。その結果、弾性体材料の加熱・硬化後に、上記周囲Tにバリが発生してしまう。バリの発生は、それを除去する工程を要するのみならず、製品の品質低下を招くおそれがあることから、当該バリが生じないようにするのが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、特定の箇所において弾性体がハードベースの側面外周を覆うキーパッドを製造する際に、その特定箇所の周囲にバリが発生するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のハードベース付きキーパッドは、板状のハードベースと、そのハードベースの表面の側に配置される1または2以上のキートップとを備えると共に、ハードベースの少なくとも側面外周に弾性体を備え、その弾性体が上記側面外周に沿って延出する延出部を有し、ハードベースの周縁における上記延出部の端部に、ハードベースの表面および裏面の少なくともいずれか一方の面が水平面に対して傾斜する傾斜部を備える。このような構成を有するハードベースを用いると、上金型および/または下金型の一部がハードベースの傾斜部に面接触し、その傾斜部において上金型と下金型とのクリアランスをほとんど存在しないようにすることができる。このため、未硬化状態の弾性体材料は、予め設計した空間以外に入りにくくなり、傾斜部を超えてハードベースの側面外周まで延出しない。したがって、弾性体の延出部の端部にバリがほとんど存在しない。ここで、「ハードベース」とは、弾性体よりも高硬度の成形体を意味する。また、「弾性体」とは、キートップの押し動作が可能な弾性を有しているものを意味する。
【0009】
また、別の本発明のハードベース付きキーパッドは、ハードベースの面内において厚さ方向に向って貫通する1または2以上の貫通領域を備え、弾性体が当該貫通領域の一部または全部を埋設し、その埋設した領域から連接してハードベースの側面外周に配置され、キートップが貫通領域を覆う弾性体の表面に配置された構成を有する。このため、未硬化状態の弾性体材料は、貫通領域を超えてハードベースの側面外周へと流れ、ハードベースに形成された傾斜部の位置で止まる。
【0010】
また、別の本発明のハードベース付きキーパッドは、貫通領域のいくつかまたは全部をハードベースの側方に開口する1または2以上の開口領域とし、弾性体がその開口領域からハードベースの側面外周に沿って延出する構成を有する。このため、貫通領域のいくつかまたは全部がハードベースの側方に開口する開口領域である場合、弾性体は、開口領域からハードベースの側面に沿って傾斜部の直前まで延出する形態を有し、弾性体の延出部の端部にバリがほとんど存在しない。ここで、「開口領域」とは、貫通領域の外側の一部を完全に開口する湾形状の領域のみならず、当該一部においてハードベースの厚さ方向の一部を除去して溝を形成し、当該溝を通じて外側につながる領域も含むように広義に解釈される。
【0011】
また、別の本発明のハードベース付きキーパッドは、ハードベースを透光性樹脂から構成し、傾斜部に遮光処理を施している。このため、ハードベースの裏側に光源を配置した場合、傾斜部から光が漏れにくくなる。
【0012】
さらに、本発明は、板状のハードベースと、そのハードベースの表面の側に配置される1または2以上のキートップとを備えると共に、ハードベースの少なくとも側面外周に弾性体を備え、その弾性体が上記側面外周に沿って延出する延出部を有し、上記ハードベースの周縁における上記延出部の端部に、ハードベースの表面および裏面の少なくともいずれか一方の面が水平面に対して傾斜する傾斜部を備えるハードベース付きキーパッドを製造する方法において、ハードベースをインサートするための凹部を有する下金型に、ハードベースをインサートする工程と、傾斜部に金型内面の一部を面接触させるように下金型と上金型によってハードベースを型締めする工程と、未硬化状態の弾性体材料を、上金型と下金型にて形成される金型内空間に供給し、ハードベースの側面外周から傾斜部の位置を超えてオーバーフローさせずに金型内空間に弾性体材料を充填させる工程と、金型内空間に充填した弾性体材料を硬化させる工程とを含む。このような製造方法を用いると、上金型および/または下金型の内面の一部がハードベースの傾斜部に面接触し、その傾斜部において上金型と下金型とのクリアランスをほとんど存在しないようにすることができる。このため、未硬化状態の弾性体材料は、予め設計した空間以外に入りにくくなり、傾斜部を超えてハードベースの側面外周まで延出しない。したがって、弾性体の延出部の端部にバリがほとんど存在しないようになる。
【0013】
また、別の本発明のハードベース付きキーパッドの製造方法は、ハードベースの面内において厚さ方向に向って貫通する1または2以上の貫通領域を備え、弾性体が当該貫通領域の一部または全部を埋設し、その埋設した領域から連接してハードベースの側面外周に配置され、キートップが貫通領域を覆う弾性体の表面に配置された構成を有するハードベース付きキーパッドを製造する方法である。このため、未硬化状態の弾性体材料は、貫通領域を超えてハードベースの側面外周へと流れ、ハードベースに形成された傾斜部の位置で止まる。
【0014】
また、別の本発明のハードベース付きキーパッドの製造方法は、前述のハードベース付きキーパッドにおいて、貫通領域のいくつかまたは全部をハードベースの側方に開口する1または2以上の開口領域とし、弾性体がその開口領域からハードベースの側面外周に沿って延出する構成を有する。このため、弾性体は、開口領域からハードベースの側面に沿って延出していくが、傾斜部を超えない。したがって、弾性体の延出部の端部にバリがほとんど存在しない。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特定の箇所において弾性体がハードベースの側面外周部を覆うキーパッドを製造する際に、その特定の箇所の周囲にバリが発生するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るハードベース付きキーパッドおよびその製造方法の各実施の形態について説明する。なお、各図において、符号を付していない構成部が存在するが、図面の見やすさを考慮して省略している。当該構成部の符号は、符号を付している同一または類似の構成部と同じ符号である。
【0017】
「第1の実施の形態」
図1は、第1の実施の形態に係るハードベース付きキーパッド(以後、単に、「キーパッド」という。)の平面図である。図2は、キーパッドのA−A線断面図である。図3および図4は、それぞれ、キーパッドのB−B線断面図およびC−C線断面図である。図5は、キーパッドの背面図である。図6は、ハードベースに弾性ゴムを固着した状態であって、キーパッドに各キートップを固定する前の状態を示す平面図である。図7は、図3のD部分の拡大図である。図8は、図6のE部分の拡大図である。図9は、図6のE部分を斜め上方から見たときの斜視図である。図10は、ハードベースの平面図である。各図中において、弾性ゴムの部分を格子模様で示す。
【0018】
1.キーパッドおよびその構成部材の形態
キーパッド1は、1枚のハードベース10と、そのハードベース10の表側の面からみて17箇所に分散配置される弾性ゴム(弾性体の好適な一例)11と、各弾性ゴム11の天面に配置される合計18個のキートップ12,13とを備える。
【0019】
(1)ハードベース
ハードベース10は、無色透明若しくは有色透明であって、加飾を施したポリカーボネート製の平板であり、光源(不図示)からの光を各キートップ12,13の一部若しくは全部の領域に導くライトガイドとしての機能を有する。ただし、ハードベース10のライトガイドとしての機能は必須ではない。さらに、ハードベース10は、弾性ゴム11より硬度の高い材料であれば、ポリカーボネート以外の樹脂(例えば、ABS、アクリル)、金属、ガラスあるいはセラミックスからなる板でも良い。
【0020】
図10に示すように、ハードベース10は、平面から見て略長方形の形状を有し、その周囲には、筐体(不図示)にキーパッド1を保持するための計7個の突出保持部10aが設けられている。また、ハードベース10には、その面内においてハードベース10の厚さ方向に貫通する17個の貫通領域30が左右各列6段および中央列5段の形態で配置されている。貫通領域30の内の1個はクロス形状であり、中央列の最上段に配置されている。左右各列の最上段に配置される貫通領域30は、ハードベース10の外周側に開口する開口領域30aである。当該開口領域30aより下段に配置される左右各列5個の貫通領域30およびクロス形状の貫通領域30より下段の4個の貫通領域30の形状は、長方形である。
【0021】
図10に示すように、ハードベース10の貫通領域30は、各列単位に、上下方向に形成された凹部10cで連接されている。凹部10cは、ハードベース10の裏側の面から表側の面に向かって窪む。また、左右各列の貫通領域30と中央列の貫通領域30との間には、各5個の光源挿入部10bが上下方向に配置されている。光源挿入部10bは、ハードベース10の裏側の面から表側の面に向かって窪む矩形の凹部である。また、図7に示すように、ハードベース10の貫通領域30の内側面は平滑な面である。
【0022】
各開口領域30aの周縁とハードベース10の上辺とから形成される各角部には、ハードベース10の表側の面から上辺方向(Y方向)に向かって下方傾斜する傾斜部20が1個ずつ形成されている。また、各開口領域30aよりもハードベース10の左右各辺方向にある領域であってその領域の各上側端部には、側方(X方向)に向かって下方傾斜する傾斜部20が1個ずつ形成されている。
【0023】
図9に示す傾斜部20の水平面に対する傾斜角度(θ)は、好ましくは15度以上〜75度未満、より好ましくは30度以上60度未満である。傾斜角度が15度以上、より好ましくは30度以上の場合には、傾斜部20の長さをハードベース10の長さに対して相対的に短くすることができ、キーパッド1の小面積化および薄型化の要求に応えやすいものとなる。一方、傾斜角度が75度未満、より好ましくは60度未満の場合には、上金型または下金型と傾斜部20との接触面積を大きくすることができ、バリの発生をより低減できる。
【0024】
(2)弾性ゴム
弾性ゴム11は、透光性を有するシリコーンゴムからなり、図6に示すように、ハードベース10に形成されている貫通領域30を埋設するようにハードベース10に固着されている。なお、弾性ゴム11は、シリコーンゴム以外のゴム、またはそれに代えて熱可塑性エラストマーとしても良い。弾性ゴム11として熱硬化性のエラストマーを採用する場合には、その硬化処理において加熱を行う。一方、弾性ゴム11として熱可塑性のエラストマーを採用する場合には、その硬化処理において冷却を行う。各弾性ゴム11は、各キートップ12,13を固着する台座領域として図6の紙面表方向に突出する突出部11bを備えている。突出部11bの面積は、貫通領域30の面積よりも小さい。突出部11b以外の弾性ゴム11の領域は、ハードベース10の表面と略面一の状態で形成されている。また、クロス形状の貫通領域30を埋設する弾性ゴム11には、各四方および中央の位置に計5個の突出部11bが形成されている。その他の貫通領域30を埋設する各弾性ゴム11には、各1個の突出部11bが形成されている。
【0025】
図8に示すように、開口領域30aを埋設する弾性ゴム11においてハードベース10の上辺から側辺に延出する延出部11aは、ハードベース10の上辺および側辺(ただし、突出保持部10aは含まない。)よりもハードベース10の外側に突出している。このため、図1に示すように、キーパッド1をその表側から見たときに、弾性ゴム11の当該延出部11aが露出している。図8に示すように、その延出部11aは、ハードベース10の上辺に形成されている傾斜部20の左境界線およびハードベース10の側辺に形成されている傾斜部20の上境界線まで延出している。この結果、図9に示すように、延出部11aは、ハードベース10の側辺に形成されている傾斜部20の上境界線において、段差面11d(延出部11aの端部)を露出した形態となる。ハードベース10の上辺に形成されている傾斜部20の左境界線においても同様である。
【0026】
また、図5に示すように、弾性ゴム11は、ハードベース10の裏面において、ハードベース10に形成される各貫通領域30を埋設する島状の領域と各島状の領域を上下方向に連接する連接領域11eとから形成される。島状の領域において、ハードベース10の表側に形成されている各突出部11bの位置に対応する位置にそれぞれ1個の押圧子11cが形成されている。連接領域11eは、図2に示すように、ハードベース10の裏側に回り込みながら島状の領域を連接しており、ハードベース10の裏面の一部を形成している。図7に示すように、弾性ゴム11は、ハードベース10の貫通領域30の平滑な内側面に密着するように成形されている。
【0027】
また、図7に示すように、ハードベース10の表側の面であって各キートップ12,13の間の領域には、光源挿入部10bに配置される光源(例えば、LED)からの光がキートップ12,13同士の隙間から外に漏光しないように、表側の面の色がキートップ12,13と同系色もしくは黒色の遮光フィルム16が貼付されている。遮光フィルム16の裏側の面(ハードベース10との接着面)の色は、光源からの光を反射できるように、白色もしくは金属色とするのが好ましい。なお、遮光フィルム16の代わりに、ハードベース10の表面に遮光性の印刷あるいは塗装を行ってもよい。
【0028】
(3)キートップ
キートップ12,13は、図7に示すように、突出部11bの上に接着層14を介して固定されている。キートップ12は、平面から見て長方形の形状を有するアクリル樹脂製の平板である。キートップ12は、弾性ゴム11の位置に合わせて配置されている。具体的には、ハードベース10の上方において左右各列に2個ずつ、その下方において4段3列の12個の計16個のキートップ12がハードベース10の表側の面に配置されている。キートップ12は、入力用のキーである。
【0029】
一方、キートップ13は、キートップ12と同様、アクリル樹脂製の平板である。キートップ13は、1個の四角枠形状のキートップ13と、当該四角枠内に配置される1個の正方形のキートップ13からなる。2個のキートップ13は、ハードベース10の上方略中央部に配置されている。四角枠形状のキートップ13は、メニューを選択し、住所録のサーチ、電話の発信リストの選択等を行う際に上下左右に選択的に押圧可能なキーである。正方形のキートップ13は、決定の際に押すキーである。なお、キートップ12,13を、アクリル樹脂以外の樹脂(例えば、ポリカーボネート、ABS)、金属、ガラスあるいはセラミックスから構成したキートップとしても良い。
【0030】
2.キーパッドの製造方法
(1)下金型の形状
図11は、弾性ゴムをハードベースに固着する工程において用いられるLIMS用の金型を構成する一方の金型であって、ハードベースをインサートするための下金型の一部を示す平面図である。図12は、図11のF−F線断面図である。
【0031】
図11に示すように、下金型50は、ステンレス製、アルミニウム製、鉄あるいは鋼鉄製の金型であって、ハードベース10の外周を囲む凸状の枠51と、その枠51の内側であって枠51から図11の紙面裏側に窪むインサート用凹部(凹部)52とを備えている。凹部52の底面には、ハードベース10の光源挿入部10bに挿入できる位置および形態の柱状突出部52aが形成されている。柱状突出部52aは、ハードベース10のインサート時の位置合わせに利用できる。凹部52から連続して枠51の内側面には、ハードベース10の周囲に形成された複数の突出保持部10aを載置するための凹部53が、突出保持部10aの位置に合うように形成されている。
【0032】
図11および図12に示すように、凹部52におけるハードベース10の各貫通領域30の位置には、その外形よりもひとまわり小さく、平面から見て長方形の形状を有する複数の第1突出部55が形成されている。この実施の形態では、第1突出部55の突出する高さは、ハードベース10の厚さより若干小さく、かつ凹部52の底面位置よりも低い。ただし、第1突出部55の高さを、ハードベース10の厚さと同一あるいは当該厚さより大きくしても良い。各第1突出部55の上には、各第1突出部55よりも面積が小さい第2突出部56が形成されている。各キートップ12の位置に配置される第1突出部55には、それぞれ長方形の形状を有する各1個の第2突出部56が形成されている。長方形の各第2突出部56には、それぞれ1個ずつの孔57が形成されている。一方、キートップ13の位置に配置されるクロス形状の第1突出部55の上には、その第1突出部55よりもひとまわり小さい面積を持つクロス形状を有する1個の第2突出部56が形成されている。クロス形状の第2突出部56には、その四方および中央に計5個の孔57が形成されている。孔57は、押圧子11cを形成するためのものである。各キートップ12,13を押したときにのみ押圧子11cがキーパッド1の裏側に配置されるスイッチに接触し、各キートップ12,13を押していないときには押圧子11cがスイッチから離れるようにするためである。
【0033】
凹部52において、図11の上方から左右側面にかけて、弾性ゴム11の延出部11aを形成するための空間58が形成されている。空間58の縦横方向の末端58aの位置は、ハードベース10を凹部52にインサートしたときの傾斜部20の境界線の位置である。
【0034】
(2)製造工程
図13は、ハードベース(図13中、斜線の部分)を下金型の凹部にインサートした状態を示す平面図である。図14は、図13のG−G線断面図である。図15は、図13のH−H線断面図である。図16は、下金型の凹部にハードベースをインサートしてその上から上金型にて型締めした状態のH−H線断面図である。図17は、ハードベースの側面に沿って延出してきた弾性ゴム材料がハードベースの傾斜部の位置で遮られる状況を説明するための斜視図である。図18は、キーパッドの主な製造工程を示すフローチャートである。
【0035】
キーパッド1を製造する最初の工程は、ハードベース10を下金型50の凹部52にインサートする工程である(ステップS101)。ハードベース10を凹部52にインサートした状態では、図14および図15に示すように、第1突出部55とハードベース10との間に隙間が存在する。その後に弾性ゴム材料を供給すると、その隙間にも弾性ゴム材料が入ることができるように、下金型50とハードベース10の貫通領域30の大きさが設計されている。また、図10に示すハードベース10の凹部10cの裏面側と下金型50の凹部52との間には隙間(不図示)が存在する。このため、当該隙間と、凹部52におけるハードベース10以外の領域は、その後の工程において弾性ゴム材料が流れていき弾性ゴム11が形成される領域となる。
【0036】
ステップS101に続き、上金型60と下金型50の型締めを行う(ステップS102)。図16に示すように、上金型60における下金型50側との対向面は、突出部11bの天面および側面にそれぞれ接触する水平面61および垂直面62、垂直面62から続いて突出部11bの下段の部分とハードベース10に接触する水平面63、水平面63から続いて傾斜部20に接触する斜面64、斜面64から続いて下金型50の凹部52に対向する水平面65、その水平面65から続いて垂直に立ち上がると共に下金型50の垂直面71に対向する垂直面66、垂直面66から続いて枠51の天面に対向する水平面67を有する。上金型60と下金型50とを型締めした状態では、図16に示す空間V以外にほとんど空間が生じない。上金型60の斜面64をハードベース10の傾斜部20に面接触させるように設計すると、水平面65と凹部52とのクリアランス、垂直面66と垂直面71との間のクリアランスをほとんどゼロにすることができるためである。
【0037】
次に、未硬化状態の弾性ゴム材料を上金型60と下金型50との間に形成された空間内に射出する(ステップS103)。図17に示すように、弾性ゴム材料は、ハードベース10の上辺側から太点線fで示す方向へと流れてくるが、傾斜部20との境界を超えて延出することはできず、平滑な段差面11dを形成する。この結果、弾性ゴム材料は空間Vにのみ充填され、段差面11dから先にバリを生じない。
【0038】
次に、硬化処理(ステップS104)、上金型60と下金型50との分離(ステップS105),遮光フィルム16の貼付(ステップS106)、キートップ12,13の接着(ステップS107)を行い、キーパッド1が完成する。
【0039】
「第2の実施の形態」
図19は、第2の実施の形態に係るハードベース付きキーパッド(以後、単に、「キーパッド」という。)の平面図である。図20は、キーパッドのB−B線断面図である。図21は、キーパッドのC−C線断面図である。図22は、キーパッドの背面図である。図23は、ハードベースに弾性ゴムを固着した状態であって、キーパッドに各キートップを固定する前の状態を示す平面図である。図24は、図20のD部分の拡大図である。図25は、図23のE部分の拡大図である。図26は、図23のE部分を斜め上方から見たときの斜視図である。図27は、ハードベースの平面図である。各図中において、弾性ゴムの部分を格子模様で示す。
【0040】
第2の実施の形態において、第1の実施の形態と共通する構成については、同じ符号を用いることとし、その構成についての重複した説明を省略する。
【0041】
第2の実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、主に、ハードベース10の上辺中央部分が開口して略クロス形状の開口領域30aが形成されていること、傾斜部40がハードベース10の左右側方にのみ設けられていること、傾斜部40がハードベース10の裏面に形成されていること、弾性ゴム11がハードベース10の側面方向に突出していないことである。以下、これら相違点につき重点的に説明する。
【0042】
1.キーパッドおよびその構成部材の形態
(1)ハードベース
図19および図27に示すように、ハードベース10は、平面から見て略長方形の形状を有し、その上辺を除く3つの側面には、筐体(不図示)にキーパッド1を保持するための各2個の突出保持部10aが設けられている。図27に示すように、貫通領域30の内の1個は、上辺側が開口した略クロス形状の開口領域30aであり、中央列の最上段に配置されている。また、左右各列の最上段に配置される貫通領域30も開口領域30aである。上記3つの開口領域30a以外は、開口部分のない貫通領域30である。
【0043】
図22および図24に示すように、ハードベース10の裏側の面において、左右最上段の開口領域30aよりもハードベース10の左右各辺方向にある領域であってその領域の各上側端部には、裏側の面から側方(X方向)に向かって上方傾斜する傾斜部40が1個ずつ形成されている。図26に示す傾斜部40の水平面に対する傾斜角度(θ)は、第1の実施の形態と同様の理由により、好ましくは15度以上〜75度未満、より好ましくは30度以上60度未満である。
【0044】
(2)弾性ゴム
図23に示すように、開口領域30aを埋設する弾性ゴム11は、ハードベース10の上側の側面および左右両側の側面と略面一である。また、図25に示すように、開口領域30aを埋設する弾性ゴム11の左右方向下端部分は、ハードベース10の左右側辺に形成されている傾斜部40の上境界線まで延出している。この結果、図26に示すように、開口領域30aを埋設する弾性ゴム11は、傾斜部40の上境界線において段差面(延出部11aの端部)11dを露出した形態となる。
【0045】
2.キーパッドの製造方法
(1)下金型の形状
図28は、弾性ゴムをハードベースに固着する工程において用いられるLIMS用の金型を構成する一方の金型であって、ハードベースをインサートするための下金型の一部を示す平面図である。
【0046】
下金型50は、ハードベース10をインサートしたときに左右の傾斜部40と面接触する位置に、上方向に傾斜する斜面59を有する。凹部52は、ハードベース10を凹部52にインサートした際にハードベース10の上辺との間に隙間を有する大きさである。
【0047】
(2)製造工程
図29は、ハードベース(図中、斜線の部分)を下金型の凹部にインサートした状態を示す平面図である。図30は、図29のH−H線断面図である。図31は、下金型の凹部にハードベースをインサートしてその上から上金型にて型締めした状態のH−H線断面図である。製造工程のフローチャートは、第1の実施の形態で説明したものと同様である。
【0048】
キーパッド1を製造する最初の工程は、ハードベース10を下金型50の凹部52にインサートする工程である。ハードベース10を凹部52にインサートした状態では、図30に示すように、第2突出部56とハードベース10との間に隙間が存在する。その後に弾性ゴム材料を供給すると、その隙間にも弾性ゴム材料が入ることができるように、下金型50とハードベース10の貫通領域30の大きさが設計されている。また、図27に示すハードベース10の凹部10cの裏側の面と下金型50の凹部52との間には隙間(不図示)が存在する。このため、当該隙間と、凹部52におけるハードベース10以外の領域は、その後の工程において弾性ゴム材料が流れていき弾性ゴム11が形成される領域となる。
【0049】
次に、上金型80と下金型50の型締めを行う。図31に示すように、下金型50における上金型80側との対向面は、凹部52の底面から続いて傾斜部40に面接触する斜面59、斜面59から続いて外方向に伸びる水平面70、水平面70から続いて垂直に立ち上る垂直面71、垂直面71から続いて外方向に伸びる枠51の天面を有する。一方、上金型80における下金型50側との対向面は、突出部11bの天面および側面にそれぞれ接触する水平面81および垂直面82、垂直面82から続いて外方向に伸びて突出部11bの下段の部分とハードベース10の表側の面と下金型50の水平面70に接触する水平面83、水平面83から続いて垂直に立ち上がると共に下金型50の垂直面71に対向する垂直面84、垂直面84から続いて枠51の天面に対向する水平面85を有する。ハードベース10の傾斜部40の近傍は、下金型50の凹部52の底面、下金型50の斜面59および上金型80の水平面83に接する状態となる。
【0050】
上金型80と下金型50とを型締めした状態では、図31に示す空間V以外にほとんど空間が生じない。下金型50の斜面59をハードベース10の傾斜部40に面接触させるように設計すると、水平面70と水平面83とのクリアランス、垂直面84と垂直面71との間のクリアランスをほとんどゼロにすることができるためである。
【0051】
次に、未硬化状態の弾性ゴム材料を上金型80と下金型50との間に形成された空間内に射出する。図26に示すように、弾性ゴム材料は、ハードベース10の上辺側から太点線fで示す方向へと流れてくるが、傾斜部40との境界を超えて延出することはできず、平滑な段差面11dを形成する。この結果、弾性ゴム材料は空間Vにのみ充填され、段差面11dから先にバリを生じない。
【0052】
次に、硬化処理(ステップS104)、上金型80と下金型50との分離(ステップS105)、遮光フィルム16の貼付(ステップS106)、キートップ12,13の接着(ステップS107)を行い、キーパッド1が完成する。
【0053】
「第3の実施の形態」
図32は、ハードベースに弾性ゴムを固着した状態であって、キーパッドに各キートップを固定する前の状態を示す平面図である。図33は、第1の実施の形態における図7と同様の断面図である。図34は、図32のE部分の拡大図である。
【0054】
第3の実施の形態において、第1の実施の形態と共通する構成については、同じ符号を用いることとし、その構成についての重複した説明を省略する。
【0055】
第3の実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、主に、ハードベース10の上辺中央部分が開口して略クロス形状の開口領域30aが形成されていること、傾斜部20がハードベース10の左右側方にのみ設けられていること、弾性ゴム11がハードベース10の側面方向に突出していないこと、ハードベース10の貫通領域30の内周面の一部が貫通領域30の穴側に突出していること、傾斜部20に遮光フィルム16が貼付されていることである。これらの相違点の内、ハードベース10の上辺中央部分が開口して略クロス形状の開口領域30aが形成されていること、傾斜部20がハードベース10の左右側方にのみ設けられていること、弾性ゴム11がハードベース10の側面方向に突出していないことについては、第2の実施の形態と共通するので、その重複した説明を省略する。したがって、ハードベース10の貫通領域30の内周面の一部が貫通領域30の穴側に突出していること、および傾斜部20に遮光フィルム16が貼付されている点のみを説明する。
【0056】
図33に示すように、ハードベース10の貫通領域30の内周面の一部は、貫通領域30の穴側に突出する突出段部15である。弾性ゴム11は、貫通領域30との固着部分において、その突出段部15に密着している。このため、ハードベース10と弾性ゴム11との接触面積が増加し、もって両部材10,11の固着安定性を高めることができる。より具体的な作用・効果の一例を挙げると、ステップS105において金型を分離する際に、弾性ゴム11がハードベース10から剥離するのを有効に防止できる。また、図32および図34に示すように、ハードベース10の左右側方には、それぞれ1個ずつの傾斜部20が形成されている。傾斜部20は、ハードベースの表側の面から側方(X方向)に向かって下方傾斜する部分である。傾斜部20の傾斜角度(θ)の好適な角度範囲については、前記各実施の形態と同様の範囲である。傾斜部20の表面には、遮光フィルム16が貼付されている。この遮光フィルム16は、ハードベース10の表面における各キートップ12,13の隙間に貼付するものと同じフィルムである。これにより、傾斜部20からの漏光を防止することができる。
【0057】
「第4の実施の形態」
図35は、第4の実施の形態に係るハードベース付きキーパッド(以後、単に、「キーパッド」という。)の平面図である。図36および図37は、それぞれ、図35に示すキーパッドのB−B線断面図およびI−I線断面図である。図38は、ハードベースに弾性ゴムを固着した状態であって、キーパッドに各キートップを固定する前の状態を示す平面図である。図39は、図36のD部分の拡大図である。図40は、図38のE部分の拡大図である。図41は、図38のE部分を斜め上方から見たときの斜視図である。図42は、図40に示すハードベースのJ−J線断面図である。各図中において、弾性ゴムの部分を格子模様で示す。
【0058】
第4の実施の形態において、前記各実施の形態と共通する構成については、同じ符号を用いることとし、その構成についての重複した説明を省略する。
【0059】
第4の実施の形態が第1の実施の形態と相違する点は、主に、ハードベース10の上辺中央部分が開口して略クロス形状の開口領域30aが形成されていること、傾斜部20がハードベース10の左右側方にのみ設けられていること、傾斜部20が上方に向かって下方傾斜していること、弾性ゴム11がハードベース10の側面よりも内側にあること、ハードベース10の貫通領域30の内周面が窪んでいることである。これらの相違点の内、ハードベース10の上辺中央部分が開口して略クロス形状の開口領域30aが形成されていること、傾斜部20がハードベース10の左右側方にのみ設けられていることについては、第2の実施の形態と共通するので、その重複した説明を省略する。したがって、傾斜部20が上方に向かって下方傾斜していること、弾性ゴム11がハードベース10の側面よりも内側にあること、およびハードベース10の貫通領域30の内周面が窪んでいることにつき重点的に説明する。
【0060】
1.キーパッドおよびその構成部材の形態
(1)ハードベース
左右の各開口領域30aよりもハードベース10の左右各辺方向にある領域であってその領域の各上端部には、上方向(Y方向)に向かって下方傾斜する傾斜部20が1個ずつ形成されている。図41に示す傾斜部20の水平面に対する傾斜角度(θ)は、前述の各実施の形態において説明した理由により、好ましくは15度以上〜75度未満、より好ましくは30度以上60度未満である。また、図39に示すように、ハードベース10の各貫通領域30の内周面の一部は、内方に窪む凹部18である。
【0061】
(2)弾性ゴム
図38および図40に示すように、弾性ゴム11は、ハードベース10の上方において左右の各傾斜部20の内側の境界線まで延出しているものの、それ以上外側には延出していない。このため、キーパッド1の上方において、弾性ゴム11の領域はハードベース10の側面よりも内側にある。キーパッド1の上方における弾性ゴム11の左右の端面11fは、図41および図42に示すように、各傾斜部20の上方において露出している。その露出している面は、各傾斜部20の内側境界線を越えない位置にある。
【0062】
2.キーパッドの製造方法
図43は、下金型にハードベースをインサートして、その上から上金型を配置し、上金型と下金型とを型締めした状態の傾斜部近傍の断面図である。
【0063】
図43に示すように、下金型50における上金型90側との対向面は、ハードベース10の裏面と接触する凹部52の底面、その底面から続いて垂直に立ちあがる垂直面71、垂直面71から続いて外方向に伸びる枠51の天面を有する。一方、上金型90における下金型50側との対向面は、ハードベース10の表側の面に接触する水平面91、水平面91から続いて傾斜部20に接触する斜面92、斜面92から続いて外方向に伸び、下金型50の凹部52の底面と対向する水平面93、その水平面93から続いて垂直に立ち上がると共に下金型50の垂直面71に対向する垂直面94、垂直面94から続いて外方向に伸び、枠51の天面に対向する水平面95を有する。ハードベース10の傾斜部20の近傍は、下金型50の凹部52の底面、上金型90の斜面92および上金型90の水平面91に接する状態となる。
【0064】
上金型90と下金型50とを型締めした状態では、上金型90と下金型50との間にほとんど空間が生じない。上金型90の斜面92をハードベース10の傾斜部20に面接触させるように設計すると、凹部52の底面と水平面93とのクリアランス、垂直面94と垂直面71との間のクリアランスをほとんどゼロにすることができる。この結果、弾性ゴム材料は、図41に示す太点線fのように流れてきても、上金型90に接する端面11fの位置より外方向に延出できず、当該端面11fの位置から先にバリを生じない。
【0065】
次に、弾性ゴム材料の射出以降、硬化処理(ステップS104)、上金型90と下金型50との分離(ステップS105)、遮光フィルム16の貼付(ステップS106)、キートップ12,13の接着(ステップS107)を行い、キーパッド1が完成する。
【0066】
「第5の実施の形態」
図44は、第5の実施の形態に係るハードベース付きキーパッド(以後、単に、「キーパッド」という。)の一部断面図である。図45は、図44に示す傾斜部近傍を斜め上方から見たときの斜視図である。
【0067】
第5の実施の形態において、前記各実施の形態と共通する構成については、同じ符号を用いることとし、その構成についての重複した説明を省略する。
【0068】
第5の実施の形態が第2の実施の形態と相違する点は、傾斜部が上方と下方の両方に向かって傾斜していることである。以下、その点につき重点的に説明する。
【0069】
1.キーパッドおよびその構成部材の形態
(1)ハードベース
【0070】
各開口領域30aよりもハードベース10の左右各辺方向にある領域であってその領域の各上側端部には、側方(X方向)に向かって下方に傾斜する傾斜部110および上方に傾斜する傾斜部120が両方形成されている。
【0071】
図45に示す傾斜部110の水平面に対する傾斜角度(θ1)は、好ましくは7.5度以上〜37.5度未満、より好ましくは15度以上30度未満である。また、傾斜部120の水平面に対する傾斜角度(θ2)も、好ましくは7.5度以上〜37.5度未満、より好ましくは15度以上30度未満である。θ1とθ2は、同じ角度であっても、異なる角度であっても良い。傾斜角度(θ1,θ2)が7.5度以上、より好ましくは15度以上の場合には、傾斜部110,120の長さをハードベース10の長さに対して相対的に短くすることができ、キーパッド1の小面積化および薄型化の要求に応えやすいものとなる。一方、傾斜角度が37.5度未満、より好ましくは30度未満の場合には、上金型と傾斜部110との接触面積または下金型と傾斜部120との接触面積を大きくすることができ、バリの発生をより低くすることができる。
【0072】
(2)弾性ゴム
図45に示すように、弾性ゴム11の側方下端部分は、ハードベース10の両側方に形成されている傾斜部110および傾斜部120の上境界線まで延出している。この結果、当該弾性ゴム11は、傾斜部110および傾斜部120の上境界線において各段差面11dを露出した形態となる。
【0073】
2.キーパッドの製造方法
図46は、下金型にハードベースをインサートした状態の傾斜部近傍の断面図である。図47は、図46に示す状態の下金型と上金型とを型締めした状態の傾斜部近傍の断面図である。
【0074】
図46に示すように、下金型50における上金型100側との対向面は、ハードベース10の裏面と接触する凹部52の底面、その底面から続いて外方向上方に向かって伸びる斜面であって傾斜部120と面接触する斜面59、斜面59から外方向に伸びる水平面70、水平面70から垂直に立ちあがる垂直面71、垂直面71から続いて外方向に伸びる枠51の天面を有する。
【0075】
上金型100における下金型50側との対向面は、突出部11bの天面および側面にそれぞれ接触する水平面101および垂直面102、垂直面102から外方向に伸びハードベース10の表側の面に接触する水平面103、水平面103から続いて外方向下方に向かって伸びる斜面であって傾斜部110と面接触する斜面104、斜面104から続いて外方向に伸び、下金型50の水平面70と対向する水平面105、水平面105から続いて垂直に立ち上がると共に下金型50の垂直面71に対向する垂直面106、垂直面106から続いて外方向に伸び、枠51の天面に対向する水平面107を有する。ハードベース10の傾斜部110および傾斜部120の近傍は、下金型50の凹部52の底面と斜面59、上金型100の斜面104と水平面103に接する状態となる。上金型100と下金型50とを型締めした状態では、上金型100と下金型50との間に、空間V以外にほとんど空間が生じない。
【0076】
このように、上金型100の斜面104をハードベース10の傾斜部110に面接触させ、かつ下金型50の斜面59をハードベース10の傾斜部120に面接触させるように設計すると、水平面105と水平面70との間および垂直面106と垂直面71との間の各クリアランスをほとんどゼロにすることができる。この結果、弾性ゴム材料は、図45に示す太点線fのように流れてきても、段差面11dより傾斜部110,120側に延出できず、段差面11dから先にバリを生じない。
【0077】
次に、弾性ゴム材料の射出以降、硬化処理(ステップS104)、上金型100と下金型50との分離(ステップS105)、遮光フィルム16の貼付(ステップS106)、キートップ12,13の接着(ステップS107)を行い、キーパッド1が完成する。
【0078】
「各実施の形態と従来の形態との差異」
図48は、本発明の実施の形態に係る製造方法と比較をするために、ハードベースに傾斜部を形成していない従来型の製造方法を示す図である。
【0079】
図48に示すように、下金型50は、凹部52の底面から垂直に立ち上がる垂直面71、垂直面71から外方向に伸びる枠51の天面を有する。上金型130は、突出部11bの天面および側面にそれぞれ接触する水平面131および垂直面132、垂直面132から外方向に伸びハードベース10の表側の面に接触する水平面133、水平面133から垂直に立ち上ると共に下金型50の垂直面71と対向する垂直面134、垂直面134から外方向に伸びると共に枠51の天面と対向する水平面135を有する。
【0080】
上金型130と下金型50とを型締めした状態において、ハードベース10の外フレームは、図48に示すように、上金型130の水平面133、下金型50の垂直面71と凹部52の底面に囲まれる。しかし、ハードベース10を下金型50にインサートするためのクリアランス(図48に示すWの空間)を設ける必要がある。このWの空間は、未加硫状態の弾性ゴム材料を流し込んだ際に、ハードベース10の外側面140に沿って図48の紙面表方向に流れ、加硫後にバリを発生させる原因になる。
【0081】
これに対して、本発明の各実施の形態に係るキーパッド1は、ハードベース10に傾斜部20,40,110,120を形成しているので、図48に示すWの空間が生じないように、下金型50と上金型60,80,90,100を設計できる。したがって、弾性ゴム11を所望の形状以上に延出させることなく、バリのないキーパッド1を製造することができる。
【0082】
「その他の形態」
これまで、本発明の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明は上述の各実施の形態に限定されることなく、種々の変形を施して実施可能である。
【0083】
例えば、上述の各実施の形態は2以上の傾斜部を備えているが、1つの傾斜部を備えていても良い。また、ハードベース10に2以上の傾斜部を形成する場合であっても、上述の各実施の形態と異なり、ハードベース10の表側の面から下方に向かって傾斜する傾斜部20と、ハードベース10の裏側の面から上方に向かって傾斜する傾斜部40とを別の場所に備えても良い。さらに、第4の実施の形態は、ハードベース10の上方に向かって表面から下方傾斜する傾斜部20を2つ備えているが、傾斜部20をハードベース10の左右いずれかの側面方向および上方に形成しても良い。
【0084】
開口領域30aは必須ではなく、全く開口部を持たない貫通領域30に弾性ゴム材料を充填し、ハードベース10の表側の面あるいは裏側の面から延出する弾性ゴム材料を止める部分に、傾斜部を形成するようにしても良い。また、全ての貫通領域30を開口領域30aとしても良い。さらに、弾性ゴム11は、貫通領域30の箇所から連接せずに、ハードベース10の側面外周に配置されていても良い。この場合、ハードベース10の側面外周を流れる未硬化状態の弾性ゴム材料は、傾斜部の位置でせきとめられ、その後の硬化処理によって硬化する。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係るハードベース付きキーパッドは、例えば、携帯電話機、携帯情報端末等の電子機器、キーボード等の入力手段に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係るハードベース付きキーパッド(キーパッド)の平面図である。
【図2】図2は、キーパッドのA−A線断面図である。
【図3】図3は、キーパッドのB−B線断面図である。
【図4】図4は、キーパッドのC−C線断面図である。
【図5】図5は、キーパッドの背面図である。
【図6】図6は、ハードベースに弾性ゴムを固着した状態であって、キーパッドに各キートップを固定する前の状態を示す平面図である。
【図7】図7は、図3のD部分の拡大図である。
【図8】図8は、図6のE部分の拡大図である。
【図9】図9は、図6のE部分を斜め上方から見たときの斜視図である。
【図10】図10は、ハードベースの平面図である。
【図11】図11は、弾性ゴムをハードベースに固着する工程において用いられるLIMS用の金型を構成する一方の金型であって、ハードベースをインサートするための下金型の一部を示す平面図である。
【図12】図12は、図11のF−F線断面図である。
【図13】図13は、ハードベース(図中、斜線の部分)を下金型の凹部にインサートした状態を示す平面図である。
【図14】図14は、図13のG−G線断面図である。
【図15】図15は、図13のH−H線断面図である。
【図16】図16は、下金型の凹部にハードベースをインサートしてその上から上金型にて型締めした状態のH−H線断面図である。
【図17】図17は、ハードベースの側面に沿って延出してきた弾性ゴム材料がハードベースの傾斜部の位置で遮られる状況を説明するための斜視図である。
【図18】図18は、キーパッドの主な製造工程を示すフローチャートである。
【図19】図19は、第2の実施の形態に係るハードベース付きキーパッド(キーパッド)の平面図である。
【図20】図20は、キーパッドのB−B線断面図である。
【図21】図21は、キーパッドのC−C線断面図である。
【図22】図22は、キーパッドの背面図である。
【図23】図23は、ハードベースに弾性ゴムを固着した状態であって、キーパッドに各キートップを固定する前の状態を示す平面図である。
【図24】図24は、図20のD部分の拡大図である。
【図25】図25は、図23のE部分の拡大図である。
【図26】図26は、図23のE部分を斜め上方から見たときの斜視図である。
【図27】図27は、ハードベースの平面図である。
【図28】図28は、弾性ゴムをハードベースに固着する工程において用いられるLIMS用の金型を構成する一方の金型であって、ハードベースをインサートするための下金型の一部を示す平面図である。
【図29】図29は、ハードベース(図中、斜線の部分)を下金型の凹部にインサートした状態を示す平面図である。
【図30】図30は、図29のH−H線断面図である。
【図31】図31は、下金型の凹部にハードベースをインサートしてその上から上金型にて型締めした状態のH−H線断面図である。
【図32】図32は、ハードベースに弾性ゴムを固着した状態であって、キーパッドに各キートップを固定する前の状態を示す平面図である。
【図33】図33は、第1の実施の形態における図7と同様の断面図である。
【図34】図34は、図32のE部分の拡大図である。
【図35】図35は、第4の実施の形態に係るハードベース付きキーパッド(キーパッド)の平面図である。
【図36】図36は、図35に示すキーパッドのB−B線断面図である。
【図37】図37は、図35に示すキーパッドのI−I線断面図である。
【図38】図38は、ハードベースに弾性ゴムを固着した状態であって、キーパッドに各キートップを固定する前の状態を示す平面図である。
【図39】図39は、図36のD部分の拡大図である。
【図40】図40は、図38のE部分の拡大図である。
【図41】図41は、図38のE部分を斜め上方から見たときの斜視図である。
【図42】図42は、図40に示すハードベースのJ−J線断面図である。
【図43】図43は、下金型にハードベースをインサートして、その上から上金型を配置し、上金型と下金型とを型締めした状態の傾斜部近傍の断面図である。
【図44】図44は、第5の実施の形態に係るハードベース付きキーパッド(キーパッド)の一部断面図である。
【図45】図45は、図44に示す傾斜部近傍を斜め上方から見たときの斜視図である。
【図46】図46は、下金型にハードベースをインサートした状態の傾斜部近傍の断面図である。
【図47】図47は、図46に示す状態の下金型と上金型とを型締めした状態の傾斜部近傍の断面図である。
【図48】図48は、本発明の実施の形態に係る製造方法と比較をするために、ハードベースに傾斜部を形成していない従来型の製造方法を示す図である。
【図49】従来のキーパッドを製造する方法を説明するための図である。
【図50】従来のキーパッドの構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0087】
1 キーパッド(ハードベース付きキーパッド)
10 ハードベース
11 弾性ゴム(弾性体)
11a 延出部
11d 段差面(延出部の端部)
20 傾斜部
30 貫通領域
30 開口領域
40 傾斜部
50 下金型
52 インサート用凹部(凹部)
58 空間
60 上金型
80 上金型
90 上金型
100 上金型
110 傾斜部
120 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のハードベースと、
そのハードベースの表面の側に配置される1または2以上のキートップと、
を備えるハードベース付きキーパッドにおいて、
上記ハードベースの少なくとも側面外周に弾性体を備え、
その弾性体は、上記側面外周に沿って延出する延出部を有し、
上記ハードベースの周縁における上記延出部の端部に、上記ハードベースの表面および裏面の少なくともいずれか一方の面が水平面に対して傾斜する傾斜部を備えることを特徴とするハードベース付きキーパッド。
【請求項2】
前記ハードベースは、その面内において厚さ方向に向って貫通する1または2以上の貫通領域を有し、
前記弾性体は、その貫通領域の一部または全部を埋設し、その埋設した領域から連接して前記ハードベースの前記側面外周に配置され、
前記キートップは、上記貫通領域を覆う前記弾性体の表面に配置されることを特徴とする請求項1に記載のハードベース付きキーパッド。
【請求項3】
前記貫通領域の内のいくつかまたは全部は、前記ハードベースの側方に開口する1または2以上の開口領域とし、
前記弾性体は、その開口領域から前記ハードベースの側面外周に沿って延出することを特徴とする請求項2に記載のハードベース付きキーパッド。
【請求項4】
前記ハードベースは、透光性樹脂から成り、
前記傾斜部に遮光処理がされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のハードベース付きキーパッド。
【請求項5】
板状のハードベースと、そのハードベースの表面の側に配置される1または2以上のキートップとを備えると共に、上記ハードベースの少なくとも側面外周に弾性体を備え、その弾性体が上記側面外周に沿って延出する延出部を有し、上記ハードベースの周縁における上記延出部の端部に、上記ハードベースの表面および裏面の少なくともいずれか一方の面が水平面に対して傾斜する傾斜部を備えるハードベース付きキーパッドを製造する方法において、
上記ハードベースをインサートするための凹部を有する下金型に、上記ハードベースをインサートする工程と、
上記傾斜部に金型内面の一部を面接触させるように上記下金型と上金型によって上記ハードベースを型締めする工程と、
未硬化状態の弾性体材料を、上記上金型と上記下金型にて形成される金型内空間に供給し、上記ハードベースの上記側面外周から上記傾斜部の位置を超えてオーバーフローさせずに上記金型内空間に上記弾性体材料を充填させる工程と、
上記金型内空間に充填した上記弾性体材料を硬化させる工程と、
を含むことを特徴とするハードベース付きキーパッドの製造方法。
【請求項6】
前記ハードベースは、その面内において厚さ方向に向って貫通する1または2以上の貫通領域を有し、
前記弾性体は、その貫通領域の一部または全部を埋設し、その埋設した領域から連接して前記ハードベースの前記側面外周に配置され、
前記キートップは、上記貫通領域を覆う前記弾性体の表面に配置されることを特徴とする請求項5に記載のハードベース付きキーパッドの製造方法。
【請求項7】
前記貫通領域の内のいくつかまたは全部を、前記ハードベースの側方に開口する1または2以上の開口領域とし、
前記弾性体は、その開口領域から前記ハードベースの側面外周に沿って延出することを特徴とする請求項6に記載のハードベース付きキーパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【公開番号】特開2009−277523(P2009−277523A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128055(P2008−128055)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】