説明

ハーネス用プロテクタ

【課題】収容した電線の端末に設けられた端子金具を電源装置などの電子機器に確実に接続することを可能とするハーネス用プロテクタを提供する。
【解決手段】ハーネス用プロテクタ1はそれぞれ電子機器に取り付けられる端子金具6が端末に取り付けられる複数の電源ケーブル3を端子金具6を露出した状態で収容するプロテクタ本体11を備えている。それぞれの端子金具6の電源ケーブル3を中心とした向きが予め定められている。ハーネス用プロテクタ1は電源ケーブル3それぞれに対応して設けられかつ端子金具6が前記予め定められた向きとなるように電源ケーブル3をプロテクタ本体11に固定する向き固定部17を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに配索されるワイヤハーネスを保護するハーネス用プロテクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリット車や電気自動車などのモータの回転駆動力により走行する自動車には、バッテリ、インバータ及び当該モータなどの電源装置が搭載されている。なお、本発明では、電源装置とは、前記自動車が走行するための電力が供給されたり、当該電力を他の電源装置に供給するものをいう。
【0003】
そして、前記バッテリ、インバータ及びモータは、ワイヤハーネスによって電気的に接続されている。この種のワイヤハーネスは、複数の電線としての電源ケーブルと、前記電源ケーブルの端末に取り付けられた端子金具と、前記電源ケーブルを収容するコルゲートチューブなどを備えている。電源ケーブルは、導電性の芯線と、当該芯線を被覆する絶縁性の被覆部と、前記被覆部を覆うシールド編組と、当該シールド編組を更に覆う外皮などを備えている。電源ケーブルは、各種の電子機器を制御するための制御信号を伝送する電線よりもはるかに太く形成されており、当該制御信号を伝送する電線よりも曲げ難くかつねじり難くなっている。
【0004】
端子金具は、導電性の厚手の板金で構成されかつ前記電源ケーブルの芯線と接続するケーブル接続部と、当該ケーブル接続部に連なりかつ前述した電源装置に接続する装置接続部とを備えている。装置接続部は、平板状に形成されかつその中央部にボルトなどを通す通し孔が貫通している。装置接続部は、前述した電源装置に設けられた端子台などに重ねられかつ通し孔内を通ったボルトがナットにねじ込まれることで、当該電源装置の端子台に取り付けられる。
【0005】
コルゲートチューブとして、前記複数の電源ケーブルの全ての中央部を収容する大径コルゲートチューブや、複数の電線ケーブルのうちの一本の電源ケーブルの端末を収容する小径コルゲートチューブが設けられている。
【0006】
前述したワイヤハーネスを自動車に配索する際に、従来から種々のハーネス用プロテクタ(例えば、特許文献1参照)が用いられてきた。この種のハーネス用プリテクタは、樋状のプロテクタ本体と、当該プロテクタ本体に取り付けられる蓋体とを備えている。ハーネス用プロテクタは、端末に設けられた端子金具を露出した状態で電源ケーブルをプロテクタ本体と蓋体との間に収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−306732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1などに示された従来のハーネス用プロテクタは、端子金具の電源ケーブルを中心とした回転方向の向きを何ら位置決めしていない。このために、ハーネス用プリテクタから露出した電源ケーブルの端末に取り付けられた端子金具を前述した端子台に取り付ける際には、電源ケーブルを捻って、端子金具の装置接続部を端子台に重ねることが必要な場合があった。
【0009】
このため、ハーネス用プロテクタが前述した電源装置の近傍に配置されて、当該ハーネス用プロテクタから露出した電源ケーブルの端末の長さが短くなると、端子金具の装置接続部を端子台に重なるように、電源ケーブルを捻ることが困難となることが考えられる。この場合、端子金具の装置説接続部を電源装置の端子台に取り付けることができなくなってしまう。
【0010】
したがって、本発明の目的は、収容した電線の端末に設けられた端子金具を電源装置などの電子機器に確実に接続することを可能とするハーネス用プロテクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のハーネス用プロテクタは、それぞれ電子機器に取り付けられる端子金具が端末に取り付けられる複数の電線を、前記端子金具を露出した状態で収容するプロテクタ本体を備えたプロテクタにおいて、それぞれの端子金具の前記電線を中心とした向きが予め定められており、前記電線それぞれに対応して設けられかつ前記端子金具が前記予め定められた向きとなるように、前記電線を前記プロテクタ本体に固定する向き固定部を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の本発明のハーネス用プロテクタは、請求項1に記載のハーネス用プロテクタにおいて、前記向き固定部が、前記プロテクタ本体の底壁から凸でかつ前記電線の径方向に間隔をあけて並べられた複数の凸部と、前記複数の凸部に密に接するように前記底壁に向かって押し付けた状態で前記電線を前記プロテクタ本体に固定する固定部材と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の本発明のハーネス用プロテクタは、請求項2に記載のハーネス用プロテクタにおいて、前記向き固定部が、前記複数の凸部を互いの間に位置付けるとともに前記底壁を貫通した一対の貫通孔を備え、前記固定部材が、前記一対の貫通孔に順に通されて前記電線を結束する結束バンドであることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の本発明のハーネス用プロテクタは、請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載のハーネス用プロテクタにおいて、前記電線それぞれの端末の前記プロテクタ本体からの突出量が予め定められており、前記電線それぞれに対応して設けられかつ前記電線それぞれの端末の前記プロテクタ本体からの突出量が前記予め定められた突出量となるように、前記電線を前記プロテクタ本体に固定する突出量固定部を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の本発明のハーネス用プロテクタは、請求項4に記載のハーネス用プロテクタにおいて、前記突出量固定部が、前記プロテクタ本体の前記底壁から立設した複数の立設壁の少なくとも互いに相対する内面に設けられた位置決め突起を備えていることを特徴としている。
【0016】
請求項1に記載した本発明のハーネス用プロテクタによれば、向き固定部により、端子金具が予め定められた向きとなるように、各電線がプロテクタ本体に固定される。このために、電線を電源装置などの電子機器に取り付ける際に、捻る必要が生じない。なお、本発明でいう、予め定められた向きとは、電線の端末に取り付けられた端子金具を電源装置などの電子機器に取り付けることができる設計上定められる向きをいう。
【0017】
請求項2に記載した本発明のハーネス用プロテクタによれば、向き固定部が電線の径方向に間隔をあけた複数の凸部と、複数の凸部に電線を押し付ける固定部材とを備えている。このために、複数の凸部に電線が密に接触するので、向き固定部が電線の向きを確実に予め定められた向きに固定することができる。
【0018】
請求項3に記載した本発明のハーネス用プロテクタによれば、固定部材が、底壁を貫通した一対の貫通孔を順に通されて電線を結束する結束バンドであるので、凸部に電線を密に接触させた状態で確実に当該電線をプロテクタ本体に固定することができる。
【0019】
請求項4に記載した本発明のハーネス用プロテクタによれば、突出量固定部により、プロテクタ本体からの突出量が予め定められた突出量となるように、各電線がプロテクタ本体に固定される。このために、電線を電源装置などの電子機器に取り付ける際に、短すぎることなく、長すぎることも無い。なお、本発明でいう、予め定められた突出量とは、電線の端末に取り付けられた端子金具を電源装置などの電子機器に取り付けることができる設計上定められる突出量をいう。
【0020】
請求項5に記載した本発明のハーネス用プロテクタによれば、突出量固定部が底壁から立設した立設壁の互いに相対する内面に設けられた位置決め突起を備えている。このため、突出量固定部は、当該位置決め突起に電線などを引っ掛けることにより、当該電線の突出量が予め定められた突出量となるように、電線を固定することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明は、電線を電源装置などの電子機器に取り付ける際に捻る必要が生じないので、当該電線を確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【0022】
請求項2に記載の本発明は、複数の凸部に電線が密に接触するので、向き固定部が電線の向きを確実に予め定められた向きに固定することができる。よって、電線をより確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【0023】
請求項3に記載の本発明は、固定部材が結束バンドであるので、凸部に電線を密に接触させた状態で確実に当該電線をプロテクタ本体に固定することができる。よって、電線をより一層確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【0024】
請求項4に記載の本発明は、電線を電源装置などの電子機器に取り付ける際に、短すぎることなく、長すぎることも無いので、当該電線をより確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【0025】
請求項5に記載の本発明は、電線のプロテクタ本体からの突出量が予め定められた突出量となるように、電線を固定することができるので、当該電線をより一層確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態にかかるハーネス用プロテクタをワイヤハーネスに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたハーネス用プロテクタの分解斜視図である。
【図3】図2に示されたハーネス用プロテクタのプロテクタ本体の平面図である。
【図4】図2中のIV部を拡大して示す斜視図である。
【図5】図2に示されたハーネス用プロテクタの蓋体の斜視図である。
【図6】図3に示されたプロテクタ本体内にワイヤハーネスを収容した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態にかかるハーネス用プロテクタ1(以下、単にプロテクタと呼ぶ)を、図1乃至図6を参照して説明する。
【0028】
本発明の一実施形態にかかるプロテクタ1は、移動体としての自動車などのパネルに取り付けられて、自動車などに配索されるワイヤハーネス2を保護するとともに、該ワイヤハーネス2をパネル即ち車体に位置決めする。
【0029】
ワイヤハーネス2は、例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車などのモータの駆動力により走行可能な自動車に配索される。モータには、インバータを介して電源装置としてのバッテリからの電力が供給される。
【0030】
本実施形態のワイヤハーネス2は、モータとインバータとを互いに電気的に接続して、インバータからモータへ又はモータからインバータへと電力を供給する。前述したモータ、インバータ及びバッテリは、自動車を走行する際に必要とされる電力が供給されたり、供給する電源装置をなしている。こうして、本実施形態のワイヤハーネス2は、電源装置同士を電気的に接続している。なお、前述した電源装置としてのモータ、インバータ及びバッテリは、特許請求の範囲に記載された電子機器にも相当する。
【0031】
ワイヤハーネス2は、図1及び図6に示すように、少なくとも一本の電線としての電源ケーブル3(図示例では、三本)と、これら三本の電源ケーブル3の全てを収容した大径コルゲートチューブ4(図示例では、一本)と、それぞれ一本の電源ケーブル3を収容した複数(図示例では、三本)のコルゲートチューブとしての小径コルゲートチューブ5と、それぞれの電源ケーブル3の端末に取り付けられた端子金具6(図1のみに示す)とを備えている。
【0032】
電源ケーブル3は、導電性の芯線と、絶縁性の被覆部と、シールド編組と、絶縁性の外皮と、を備えている。芯線は、複数の導電性の素線が撚られて形成されている。芯線を構成する素線は、銅、銅合金、アルミニウム合金などの導電性の金属で構成されている。また、芯線は、一本の素線で構成されてもよい。被覆部は、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂で構成されている。被覆部は、芯線を被覆している。シールド編組は、銅、銅合金、アルミニウム合金などの導電性の金属で構成された複数の素線が互いに編まれて構成されている。シールド編組は、被覆部を覆っている。外皮は、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂で構成されている。外皮は、シールド編組を被覆している。電源ケーブル3は、各種の電子機器を制御するための制御信号を伝送する電線よりもはるかに太く形成されており、当該制御信号を伝送する電線よりも曲げ難くかつねじり難くなっている。
【0033】
大径コルゲートチューブ4は、絶縁性の合成樹脂としての熱可塑性樹脂で構成されている。大径コルゲートチューブ4は、断面円形の筒状に形成されている。また、大径コルゲートチューブ4は、図6に示すように、周方向に延在した凹条溝7と周方向に延在した凸条部7とが長手方向に交互に配列されて、外表面が蛇腹状に形成されているとともに、全体が均一の肉厚に形成されている。勿論、凹条溝7の内外径が、凸条部8の内外径よりも小さく形成されている。
【0034】
大径コルゲートチューブ4は、前述した三本の電源ケーブル3全ての長手方向の中央部を収容している。当該三本の電源ケーブル3と固定されている。
【0035】
小径コルゲートチューブ5は、絶縁性の合成樹脂としての熱可塑性樹脂で構成されている。小径コルゲートチューブ5は、断面円形の筒状に形成されている。また、小径コルゲートチューブ5は、その内外径が大径コルゲートチューブ4の内外径よりも十分に小さく形成されている。さらに、小径コルゲートチューブ5は、大径コルゲートチューブ4と同様に、図6に示すように、周方向に延在した凹条溝9と周方向に延在した凸条部10とが長手方向に交互に配列されて、外表面が蛇腹状に形成されているとともに、全体が均一の肉厚に形成されている。勿論、凹条溝9の内外径が、凸条部10の内外径よりも小さく形成されている。小径コルゲートチューブ5は、それそれ、大径コルゲートチューブ4外に露出した一本の電源ケーブル3の端末を収容して、当該一本の電源ケーブル3と固定されている。
【0036】
端子金具6は、導電性の厚手の板金で構成され、電源ケーブル3の端末に取り付けられている。端子金具6は、電源ケーブル3の芯線の端末に取り付けられる電線接続部31と、装置接続部32とを一体に備えている。電線接続部31は、電源ケーブル3の芯線を加締める加締め片と、電源ケーブル3の被覆部を加締める加締め片とを備えている。電線接続部31は、加締め片が加締めることにより、被覆部即ち電源ケーブル3の端末に固定されるとともに、当該電源ケーブル3の芯線と電気的に接続される。
【0037】
装置接続部32は、平板状に形成されているとともに。中央に通し孔33が貫通している。装置接続部32は、前述したモータやインバータなどの電源装置(電子機器)に設けられた端子台に重ねられて、通し孔33内に図示しないボルトが通されて、当該端子台即ち電源装置(電子機器)に取り付けられるとともに電気的に接続される。
【0038】
前述したワイヤハーネス2は、後述するプロテクタ1内に収容された際に、各電源ケーブル3のプロテクタ1の後述する突出量固定部12即ちプロテクタ本体11からの突出量D1,D2,D3(図1に示す)と、端子金具6の電源ケーブル3を中心とした回転方向の向きが予め定められている。突出量D1,D2,D3は、比較的短くなっている。なお、本発明でいう、予め定められた突出量D1,D2,D3とは、電源ケーブル3の端末に取り付けられた端子金具6を電源装置などの電子機器に取り付けることができる設計上定められる突出量をいう。なお、本発明でいう、予め定められた向きとは、電源ケーブル3の端末に取り付けられた端子金具6を電源装置などの電子機器に取り付けることができる設計上定められる向きをいう。
【0039】
そして、ワイヤハーネス2は、前述した突出量D1,D2,D3が比較的短く即ちプロテクタ1が端子金具6が取り付けられる電源装置(電子機器)の近傍に配置され、電源ケーブル3が制御信号を伝送する電線よりも曲げ難くかつねじり難くても、電源ケーブル3を捻ることなく又は殆ど捻ることなく、各端子金具6を前述した電源装置(電子機器)に取り付けることを可能としている。
【0040】
プロテクタ1は、端子金具6が取り付けられる電源装置(電子機器)の近傍に配置される。プロテクタ1は、図2に示すように、プロテクタ本体11と、向き固定部17と、突出量固定部12と、蓋体13とを備えている。プロテクタ本体11は、絶縁性の合成樹脂で構成され、底壁15と、当該底壁15の両縁から立設した一対の立設壁としての側壁16とを備えて、樋状に形成されている。また、プロテクタ本体11は、図3に示すように、その全長に亘って直線状に形成されている。
【0041】
また、プロテクタ本体11の図3中左側の一方の端部には、大径位置決め部20が設けられている。大径位置決め部20は、複数の大径位置決め突起21を備えている。大径位置決め突起21は、それぞれ、互いに相対する側壁16の内面及び底壁15の表面から凸に形成されているとともに、プロテクタ本体11の長手方向に対して直交する方向に沿って直線状に延在している。複数の大径位置決め突起21は、大径直線部17の長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0042】
また、大径位置決め突起21の厚みは、それぞれ、大径コルゲートチューブ4の凹条溝7の当該大径コルゲートチューブ4の長手方向の幅と等しく形成されている。大径位置決め突起21は、前述した側壁16の内面及び底壁15の表面から突出して、半円環状に形成されている。また、大径位置決め突起21の内径は、大径コルゲートチューブ4の凹条溝7の外径と略等しく形成されている。
【0043】
さらに、プロテクタ本体11の図3中左側の他方の端部には、複数(図示例では、二つ)の立設壁としての仕切り壁22が設けられている。仕切り壁22は、底壁15から立設しているとともに、互いに間隔をあけて平行に設けられている。また、二つの仕切り壁22は、側壁16から間隔をあけている。こうして、二つの仕切り壁22は、一対の側壁16間に設けられ、かつ当該側壁16からの距離と互いの間の距離とが等しくなる位置に設けられている。
【0044】
また、プロテクタ本体11には、複数の固定用フランジ25が設けられている。固定用フランジ25は、プロテクタ本体11の外表面から突出した平板状に形成されている。固定用フランジ25には、前述したパネルに設けられたウェルドナットなどに螺合するボルトを通す通し孔26が設けられている。
【0045】
前述した構成のプロテクタ本体11は、図6に示すように、大径コルゲートチューブ4の端部を前述した一方の端部内に収容し、小径コルゲートチューブ5を他方の端部内に通して、プロテクタ本体11外に導く。このとき、大径コルゲートチューブ4の端部の凹条溝7内に大径位置決め突起21を挿入して、当該大径コルゲートチューブ4をプロテクタ本体11に位置決めする。また、三本の小径コルゲートチューブ5即ち三本の電源ケーブル3のうち一本を一方の側壁16と仕切り壁22との間に通し、他の一本を仕切り壁22間に通し、残りの一本を他方の側壁16と仕切り壁22との間に通す。さらに、小径コルゲートチューブ5の端部の凹条溝9内に後述する位置決め突起23を挿入して、当該小径コルゲートチューブ5をプロテクタ本体11に位置決めする。こうして、プロテクタ本体11は、端子金具6を露出した状態でワイヤハーネス2を収容する。
【0046】
向き固定部17は、電源ケーブル3それぞれに対応して設けられている。図示例では、向き固定部17は、電源ケーブル3と1対1で対応して、全部で三つ設けられている。向き固定部17は、プロテクタ本体11の他方の端部に設けられている。向き固定部17は、プロテクタ本体11の幅方向に間隔をあけて並べられている。なお、図示例では、互いに隣り合う向き固定部17は、プロテクタ本体11の長手方向に若干位置ずれ配置されている。向き固定部17は、図4などに示すように、複数(図示例では、二つ)の凸部18と、一対の貫通孔19と、固定部材としての結束バンド24(図6のみに示す)とを備えている。
【0047】
凸部18は、底壁15から凸に形成され、かつ互いにプロテクタ本体11即ち当該プロテクタ本体11内に収容される電源ケーブル3の径方向に間隔をあけて設けられているとともに、それぞれがプロテクタ本体11の長手方向に直線状に延在している。凸部18は、その断面形状が三角形に形成されている。
【0048】
一対の貫通孔19は、互いの間に二つの凸部18を位置付ける位置に設けられている。貫通孔19は、底壁15を貫通している。なお、図示例では、一対の貫通孔19と、二つの凸部18とは、プロテクタ本体11の幅方向に互いに間隔をあけて並べられている。
【0049】
結束バンド24は、絶縁性の合成樹脂で構成され、図6に示すように、帯状のバンド本体34と、このバンド本体34の一端部に設けられた枠状のバンド固定部35とを一体に備えている。バンド本体34は、他端部がバンド固定部35内に挿入されて、当該バンド固定部35に係止される。
【0050】
前述した構成の向き固定部17は、二つの凸部18の上に対応する電源ケーブル3が直接載置される。そして、結束バンド24のバンド本体34の他端部がプロテクタ本体11の内側から一対の貫通孔19に順に通される。そして、結束バンド24のバンド本体34の他端部が凸部18に重ねられた電源ケーブル3に重ねられた後、バンド固定部35内に挿入される。そして、向き固定部17は、電源ケーブル3の端末に取り付けられた端子金具6の向きを前述した予め定められた向きとした後に、結束バンド24のバンド本体34の他端部をバンド固定部35から引き出して、当該結束バンド24で電源ケーブル3とプロテクタ本体11とを縛る(結束する)。こうして、結束バンド24が、一対の貫通孔19に順に通されて電源ケーブル3を結束して、複数の凸部18に直接密に接するように、電源ケーブル3をプロテクタ本体11の底壁15に向かって押し付けた状態で、当該電源ケーブル3をプロテクタ本体に固定する。こうして、向き固定部17は、端子金具6が前述した予め定められた向きとなるように、当該電源ケーブル3をプロテクタ本体11に固定する。
【0051】
突出量固定部12は、各側壁16と仕切り壁22との間のそれぞれに設けられている。即ち、突出量固定部12は、三つ設けられ、かつこれら三つの突出量固定部12は、プロテクタ本体11の幅方向に並べられている。突出量固定部12は、それぞれ、複数の位置決め突起23を備えている。位置決め突起23は、それぞれ、互いに相対する側壁16と仕切り壁22の内面及び底壁15の表面から凸に形成されているとともに、プロテクタ本体11の長手方向に対して直交する方向に沿って直線状に延在している。複数の位置決め突起23は、プロテクタ本体11の長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0052】
また、位置決め突起23の厚みは、それぞれ、小径コルゲートチューブ5の凹条溝9の当該小径コルゲートチューブ5の長手方向の幅と等しく形成されている。さらに、位置決め突起23は、前述した側壁16及び仕切り壁22の内面及び底壁15の表面から突出して、半円環状に形成されている。また、位置決め突起23の内径は、小径コルゲートチューブ5の凹条溝9の外径と略等しく形成されている。
【0053】
前述した突出量固定部12は、位置決め突起23が小径コルゲートチューブ5の凹条溝9内に侵入することで、当該小径コルゲートチューブ5即ちワイヤハーネス2をプロテクタ本体11に位置決めする。このとき、突出量固定部12は、位置決め突起23が侵入する凹条溝9を適宜洗濯することで、電源ケーブル3の端末の当該突出量固定部12即ちプロテクタ本体11からの突出量が、前述した予め定められた突出量D1,D2,D3となるように、当該電源ケーブル3をプロテクタ本体11に固定する。
【0054】
蓋体13は、絶縁性の合成樹脂で構成され、かつ平面形状がプロテクタ本体11の底壁15の平面形状と等しい平板状に形成されている。蓋体13は、プロテクタ本体11の一対の側壁16間を塞いだ格好で、当該プロテクタ本体11に取り付けられる。蓋体13のプロテクタ本体11に設けられた突出量固定部12に相対する表面13aには、図5に示すように、大径補助位置決め部27と、補助位置決め部14が設けられている。
【0055】
大径補助位置決め部27は、蓋体13の表面13aのプロテクタ本体11の大径位置決め部20に相対する位置に設けられている。大径補助位置決め部27は、複数の大径補助位置決め突起28を備えている。大径補助位置決め突起28は、それぞれ、蓋体13の表面13aから凸に形成されているとともに、蓋体13の長手方向に対して直交する方向に沿って直線状に延在している。複数の大径補助位置決め突起28は、蓋体13の長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0056】
また、大径補助位置決め突起28の厚みは、それぞれ、大径コルゲートチューブ4の凹条溝7の当該大径コルゲートチューブ4の長手方向の幅と等しく形成されている。大径補助位置決め突起28は、前述した蓋体13の表面13aから突出して、円弧状に形成されている。また、大径補助位置決め突起28の曲率半径は、大径コルゲートチューブ4の凹条溝7の外径と略等しく形成されている。
【0057】
補助位置決め部14は、蓋体13の表面13aのプロテクタ本体11の突出量固定部12に相対する位置に設けられている。補助位置決め部14は、突出量固定部12と同数即ち図示例では三つ設けられ、かつこれら三つの補助位置決め部14は、蓋体13の幅方向に並べられている。補助位置決め部14は、それぞれ、複数の補助位置決め突起29を備えている。補助位置決め突起29は、それぞれ、蓋体13の表面13aから凸に形成されているとともに、蓋体13の長手方向に対して直交する方向に沿って直線状に延在している。複数の補助位置決め突起29は、蓋体13の長手方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0058】
また、補助位置決め突起29の厚みは、それぞれ、小径コルゲートチューブ5の凹条溝9の当該小径コルゲートチューブ5の長手方向の幅と等しく形成されている。さらに、補助位置決め突起29は、蓋体13表面13aから突出して、円弧状に形成されている。また、補助位置決め突起29の曲率半径は、小径コルゲートチューブ5の凹条溝9の外径と略等しく形成されている。
【0059】
前述した蓋体13は、図1に示すように、一対の側壁16間を塞いだ格好で、プロテクタ本体11に取り付けられる。このとき、大径コルゲートチューブ4の端部の凹条溝7内に大径補助位置決め突起28を挿入して、当該大径コルゲートチューブ4を位置決めする。小径コルゲートチューブ5の端部の凹条溝9内に補助位置決め突起29を挿入して、当該小径コルゲートチューブ5を位置決めする。さらに、蓋体13は、大径補助位置決め部27が大径位置決め部20との間に大径コルゲートチューブ4を挟み込み、補助位置決め部14が突出量固定部12との間に小径コルゲートチューブ5を挟み込む。
【0060】
本実施形態によれば、向き固定部17により、端子金具6が予め定められた向きとなるように、各電源ケーブル3がプロテクタ本体11に固定される。このために、電源ケーブル3を電源装置などの電子機器に取り付ける際に、捻る必要が生じない。したがって、電源ケーブル3を電源装置などの電子機器に取り付ける際に捻る必要が生じないので、当該電源ケーブル3を確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【0061】
向き固定部17が電源ケーブル3の径方向に間隔をあけた複数の凸部18と、複数の凸部18に電源ケーブル3を押し付ける固定部材としての結束バンド24とを備えている。このために、複数の凸部18に電源ケーブル3が密に直接接触するので、向き固定部17が電源ケーブル3の向きを確実に予め定められた向きに固定することができる。よって、電源ケーブル3をより確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【0062】
突出量固定部12により、プロテクタ本体11からの突出量が予め定められた突出量D1,D2,D3となるように、各電源ケーブル3がプロテクタ本体11に固定される。このために、電源ケーブル3を電源装置などの電子機器に取り付ける際に、当該電源ケーブル3が短すぎることなくかつ長すぎることも無い。よって、当該電源ケーブル3をより確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【0063】
突出量固定部12が底壁15から立設した側壁16及び仕切り壁22の互いに相対する内面に設けられた位置決め突起23を備えている。このため、突出量固定部12は、当該位置決め突起23に小径コルゲートチューブ5などを引っ掛けることにより、電源ケーブル3の突出量が予め定められた突出量D1,D2,D3となるように、当該電源ケーブル3をプロテクタ本体11に固定することができる。よって、当該電源ケーブル3をより一層確実に電子機器に取り付けることが可能となる。
【0064】
前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。即ち、本発明では、例えば、側壁16及び仕切り壁22に位置決め突起23を設けて、位置決め突起23を底壁15に設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ハーネス用プロテクタ
2 ワイヤハーネス
3 電源ケーブル(電線)
6 端子金具
11 プロテクタ本体
12 突出量固定部
16 側壁(立設壁)
17 向き固定部
18 凸部
19 貫通孔
22 仕切り壁(立設壁)
23 位置決め突起
24 結束バンド(固定部材)
D1,D2,D3 予め定められた突出量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ電子機器に取り付けられる端子金具が端末に取り付けられる複数の電線を、前記端子金具を露出した状態で収容するプロテクタ本体を備えたプロテクタにおいて、
それぞれの端子金具の前記電線を中心とした向きが予め定められており、
前記電線それぞれに対応して設けられかつ前記端子金具が前記予め定められた向きとなるように、前記電線を前記プロテクタ本体に固定する向き固定部を備えたことを特徴とするプロテクタ。
【請求項2】
前記向き固定部が、前記プロテクタ本体の底壁から凸でかつ前記電線の径方向に間隔をあけて並べられた複数の凸部と、前記複数の凸部に密に接するように前記底壁に向かって押し付けた状態で前記電線を前記プロテクタ本体に固定する固定部材と、を備えたことを特徴とする請求項1記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記向き固定部が、前記複数の凸部を互いの間に位置付けるとともに前記底壁を貫通した一対の貫通孔を備え、
前記固定部材が、前記一対の貫通孔に順に通されて前記電線を結束する結束バンドであることを特徴とする請求項2記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記電線それぞれの端末の前記プロテクタ本体からの突出量が予め定められており、
前記電線それぞれに対応して設けられかつ前記電線それぞれの端末の前記プロテクタ本体からの突出量が前記予め定められた突出量となるように、前記電線を前記プロテクタ本体に固定する突出量固定部を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載のプロテクタ。
【請求項5】
前記突出量固定部が、前記プロテクタ本体の前記底壁から立設した複数の立設壁の少なくとも互いに相対する内面に設けられた位置決め突起を備えていることを特徴とする請求項4記載のハーネス用プロテクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−143028(P2012−143028A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292013(P2010−292013)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】