バイアスが低減した光ファイバジャイロスコープ
【課題】バイアスが低減した光ファイバジャイロスコープを提供する。
【解決手段】光ファイバジャイロスコープ2が、光源11と、光源11に結合される結合器12と、結合器12に結合される光検出器14と、第1の素子215によって結合器12に結合される光集積回路(IOC)16と、第2の素子210及び第3の素子220によってIOC16に結合される感知ループ10とを備える。第1の素子、第2の素子、及び第3の素子のうちの少なくとも1つは偏光素子を含む。
【解決手段】光ファイバジャイロスコープ2が、光源11と、光源11に結合される結合器12と、結合器12に結合される光検出器14と、第1の素子215によって結合器12に結合される光集積回路(IOC)16と、第2の素子210及び第3の素子220によってIOC16に結合される感知ループ10とを備える。第1の素子、第2の素子、及び第3の素子のうちの少なくとも1つは偏光素子を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアスが低減した光ファイバジャイロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバジャイロスコープでは、回転速度感知のためのサニャック位相が、ファイバループの同一の光路を反対方向(たとえば時計回り(CW)方向及び反時計回り(CCW)方向)に進む干渉光波の強度を測定することによって求められる。このような同一の光路は、空間的観点及び偏光モードの観点の両方から見て相反的な経路を含む。正確なサニャック位相は、CW進行光波及びCCW進行光波が、ループファイバの同じ部分内にいる間に同じ偏光状態で進む場合にのみ測定される。このような光波がループファイバの同じ部分内にいる間に異なる偏光モードで進む場合、いわゆる偏光誤差が生じる。
【0003】
偏光保持(PM)又は非偏光保持のいずれかである従来のシングルモード光ファイバは通常、2つの偏光モードをサポートする。ファイバスプライスにおける交差結合及びファイバ内の複屈折乱れ(birefringence disturbance)に起因して、2つの偏光モード間のエネルギー交換が常に存在する。偏光交差結合光波の、一次光波又は他の交差結合光波との干渉は、回転感知のための正確な位相情報を有しない誤差信号をもたらすため、回避及び低減される必要がある。
【0004】
偏光誤差の低減の観点からすると、ファイバにおける偏光モード交差結合がより小さいため、PMファイバ感知コイルが好ましい。しかしながら、PMファイバであっても、製造工程中に該ファイバに形成されるマイクロベンディング及び不均一応力に起因して非ゼロ交差結合を受けやすい。これらの交差結合の強さは典型的には、hパラメータによって特徴付けられる。hパラメータの値が大きいPMファイバコイルは結果的に、ジャイロスコープバイアス性能を劣化させる偏光誤差をより大きくする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光解消(depolarized)ジャイロスコープでは、非偏光保持シングルモード(SM)ファイバが、コスト削減及び/又は耐放射性の向上のために使用される。偏光誤差を比較的低いレベルまで低減するように光回路を設計する複数の方法がある。それでも、これらの方法のうちのほとんどは、光集積回路(IOC)又は(IOCが使用されない場合では)偏光子の高い偏光消光比(PER)εを必要とする。これは、偏光誤差の全てがε又はより高い次数のεのいずれかに比例するためである。しかしながら多くの場合、IOC又は単一偏光子のPERが十分に高くなく、ジャイロスコープの特定の用途にとって偏光誤差が十分に小さくない場合がある。
【0006】
図1を参照すると、装置1は、典型的な従来技術の干渉方式光ファイバジャイロスコープである。この干渉方式光ファイバジャイロスコープは、広帯域光源11と、方向性結合器12と、光検出器14と、光集積回路(IOC)16と、感知ループ10と、IOCを結合器及び感知ループに接続するファイバ部分15、210、及び220とを備える。感知ループ10は、偏光保持(PM)ファイバコイル又は非PMシングルモード(SM)ファイバコイルを含むことができる。IOC16は、接合部17において入力光波を実質的に等しい部分に分割するY字型導波路40と、偏光子18と、位相変調のための電極19とを備える。1つの典型的な構成では、偏光子18を含むのではなく、IOC導波路40を偏光素子とすることができる。ファイバ部分15、210、及び220はリオタイプのデポラライザとすることができる。これらの各デポラライザは2つのPMファイバ部分を含み、これらの2つのPMファイバ部分の複屈折軸は互いに対して45度で方向付けられている。これらの従来技術の装置では、唯一の偏光(PZ)素子は多くの場合、IOC16である。これらの装置は、要求されているレベル未満に偏光誤差を低減するのに十分に高いPERを有しない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態において、光ファイバジャイロスコープが、光源と、光源に結合される結合器と、結合器に結合される光検出器と、第1の素子によって結合器に結合される光集積回路(IOC)と、第2の素子及び第3の素子によってIOCに結合される感知ループとを備える。第1の素子、第2の素子、及び第3の素子のうちの少なくとも1つは偏光素子を含む。
【0008】
本発明の好ましい実施形態及び代替の実施形態を、以下の図面を参照して以下において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術の光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による偏光解消光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図3】本発明の代替の実施形態に関連付けられる、ジャイロスコープ相対バイアス誤差振幅対偏光消光比のグラフである。
【図4】本発明の一実施形態による偏光解消光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図5】本発明の一実施形態による偏光解消光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図6】本発明の代替の実施形態に関連付けられる、ジャイロスコープ相対バイアス誤差振幅対偏光消光比のグラフである。
【図7】本発明の一実施形態による偏光解消光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図8】光回路内の不正確に配置された偏光素子の、偏光消光比の関数としてのジャイロスコープ相対バイアス振幅のグラフである。
【図9】本発明の一実施形態によるPM光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図10】本発明の一実施形態によるPM光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図11】本発明の一実施形態によるPZ光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態は干渉方式光ファイバジャイロスコープ(IFOG)に関し、より詳細には、本発明の実施形態は、ジャイロスコープ光回路内において偏光素子を使用することによって偏光誤差を低減するための設計手法に関する。
【0011】
小さな内部偏光交差結合及び高い偏光消光比を有する偏光ファイバのようなコンパクトな偏光部品が開発されており且つ利用可能であるならば、偏光誤差を低減するために、これらの追加の偏光素子を光回路の特定の部分において、又はさらにはジャイロスコープの感知コイルにおいて使用することが有利である。
【0012】
本発明の実施形態は、偏光素子をジャイロスコープの光回路の特定の部分において使用することによって偏光誤差を低減するための幾つかの手法を提示する。光ファイバジャイロスコープの一実施形態は、光源、光方向性結合器、典型的には1つの入力ポートと2つの出力ポートとを有する光集積回路(IOC)、感知ループ、並びに光結合器とIOC入力ポートとの間の少なくとも1つの偏光素子及び/又はループとIOC出力ポートとの間の少なくとも1つの偏光素子を備える。偏光素子は好ましくは、高い偏光消光比を有する偏光ファイバである。別の実施形態では、偏光ファイバを感知コイルファイバとして使用することもできる。
【0013】
追加の偏光素子をIOCに連結して追加することは、望ましくない偏光モードの排除を増強するのに有利である。代替的に、この手法によって、特定のジャイロバイアス安定性要件を満たすための、IOC PER、IOCピグテール調整不良、スプライス偏光調整不良、コイル複屈折又はhパラメータ、結合器偏光依存損失(PDL)、デポラライザファイバ長等のような、多くの光学素子の性能要件を大幅に緩和させることができる。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態による偏光解消ジャイロスコープ2を示している。図1の装置1の構成要素と同様のジャイロスコープ2の構成要素は、図2において同様の参照符号によって示される。図2に示されている実施形態では、偏光素子215が結合器12とIOC16との間に配置される。方向性結合器12は、溶融ファイバ結合器、マイクロ光結合器、重なり結合器(lapped coupler)、又は光サーキュレータ若しくは等価な装置とすることができる。広帯域幅光源11から方向性結合器12を通過する光波は続いて、偏光素子215によって偏光され、その後IOC16に結合される。偏光素子215は、1つの偏光の光を実質的に透過させる一方で直交偏光を強く抑制するファイバ結合光偏光子又は等価な装置とすることができる。IOC16は、(光源11に向かって配置されている)1つの入力ポートと、(ループ10に向かって配置されている)2つの出力ポートとを有する。IOC16の入力ポートに入る光波は、接合部17において2つの実質的に等しい部分に分割される。一方の光波は時計回り(CW)方向にループ10を通じて伝播し、他方の光波は反時計回り(CCW)方向にループ10を通じて伝播する。ループ10は、デポラライザ200に結合されるリード線101及び102を有する非PMシングルモード(SM)ファイバとすることができる。デポラライザ200は上方部分210及び下方部分220を含む。上方部分210はPMファイバセグメント21及び23を含む。これらのPMファイバセグメントの光軸はスプライス22において実質的に約45度に調整される。下方部分220はPMファイバセグメント26及び28を含む。これらのPMファイバセグメントの光軸はスプライス27において実質的に約45度に調整される。PMファイバ21及び26の偏光軸は、出力ポートスプライス20及び25においてIOC導波路40の通過軸に対して実質的に約0度に調整される。CW光波及びCCW光波は、ループ10及びデポラライザ200を通じて伝播した後、接合部17において結合し、IOC16入力ポートを出る。出た光波は、偏光素子215及び結合器12を通過し、その後光検出器14に到達する。
【0015】
IOC16は、通過軸に沿って偏光される一方の偏光モードを誘導すると共に、非通過(reject)軸に沿って偏光される他方の偏光モードを実質的に拒絶する偏光導波路を有するLiNbO3結晶基板を備えることができる。図示されている実施形態における偏光素子215の通過軸はIOC通過軸に合わせられる。素子215による追加の偏光識別が、ジャイロスコープ偏光誤差を低減するのに有利である。これは、図3に示されているモデル化結果から明白に見てとることができる。相対スケール(「1」が偏光素子215無しの元のバイアス誤差を表す)において、図3における破線は、素子215のPERと共にバイアス誤差が単調に低下することを示している。この実施形態では、バルク偏光部品15の使用が、ピグテールファイバへの接続点において152及び153の新たな交差結合点を導入する場合がある。偏光誤差は光回路においてこれらの交差結合の影響を受けやすいため、152及び153の追加の交差結合が、偏光素子215によって提供される特定の量の利益を相殺する場合がある。この効果は図3において破線によって示されており、PERがゼロであり且つ152及び153における非ゼロ交差結合が仮定される場合、相対バイアス誤差は1.0よりも大きい。
【0016】
場合によっては改善される代替の本発明の実施形態を図4に示す。偏光解消ジャイロスコープ3は、結合器12とIOC16の入力ポートとの間に(バルク偏光素子215の代わりに)偏光ファイバ415を組み込む。ファイバ415のような偏光ファイバは、1つの偏光の光を透過させる一方で直交偏光を強く抑制するように機能する。IOC入力ピグテール33は、偏光ファイバ又は非偏光PMファイバのいずれかとすることができる。しかしながら、33を415と同じタイプの偏光ファイバに選択することが好ましい。これは、同じタイプのファイバを接合するのはより容易であるため、32においてより小さい交差結合が達成可能であり得るためである。図4に示されている実施形態では、偏光ファイバ415は内部交差結合点を全く有しないか又は非常にわずかに有し、さらなる偏光誤差を導入しない。偏光ファイバ415PERのバイアス性能に対する影響は、図3において実線によって示されている。バルク偏光素子215を使用する上述の実施形態に関する破線と比較して、PERに対するバイアスの依存がより急な勾配を有し、PER=0においてバイアス誤差がより小さい。これらは、偏光ファイバが偏光誤差を低減するのに有利であり得ることを示す。加えて、追加のバルク部品がジャイロ光回路内に導入されないため、この実施形態はよりコンパクト且つ経済的にすることができる。
【0017】
しかしながら、特にバルク偏光素子の内部交差結合が非常に小さい(たとえば−30dBよりも小さい)場合は、偏光ファイバ及びバルク偏光素子の機能差は重要ではないかもしれない。本発明の実施形態の説明の一般性のために、用語「偏光素子」は、偏光ファイバ415のような偏光ファイバ又は素子215のようなバルク偏光素子のいずれかを指すことができることに留意されたい。明記されていない場合、偏光ファイバは他の偏光素子によって取り替え可能であるとみなされるべきである。
【0018】
偏光ファイバを組み込む偏光解消光ファイバジャイロスコープ4の代替の一実施形態を図5に示す。この実施形態は、図4に示されている実施形態を参照して説明したように1つ又は複数の入力ファイバを備えるのではなく、IOC16出力ポートピグテール521及び/又は526のうちの少なくとも一方において偏光ファイバを備える。図5の実施形態では、部分23及び28は非偏光PMファイバとすることができる。これらの部分の光軸は、スプライス22及び27において偏光ファイバ521及び526に対して実質的に約45度に調整される。偏光ファイバ部分521及び/又は526のジャイロスコープバイアス性能に対する効果を図6に表す。各偏光部分の効果を区別するために、2つの曲線を描く。円形記号を有する実線は両方のファイバ部分521及び526が偏光ファイバである場合を表す。矩形記号を有する破線は、ファイバ部分521のみ又は部分526のみが偏光ファイバである場合を表す。2つのPZ部分の−20dBのPERが10倍の偏光誤差低減を提供することができることが分かった。部分521のみ又は部分526のみが偏光をもたらす場合、バイアスの低減の程度はこれよりも大きくない。
【0019】
代替の実施形態のジャイロスコープ5は、図7に示すように、IOC入力ピグテール(部分715)及び出力ピグテール(部分721、726)の両方において偏光ファイバ部分を含む。この構成からの組み合わされた偏光効果は、上述した実施形態の場合よりも著しい可能性がある。
【0020】
ジャイロスコープ光回路内の偏光素子を位置決めする場所の選択は慎重に行うべきであることは留意すべきである。たとえば、偏光素子を光源11と結合器12との間に配置することによって大きな偏光誤差が生じる場合がある。図8は、このような不正確に配置された偏光素子を有するジャイロの場合の、モデル化されたバイアス誤差対PERのグラフである。偏光解消ジャイロスコープにおいて結合器の上流で光源を偏光することが不利である可能性があることは明白であると考えられる。同様に、非偏光結合器の代わりに偏光方向性結合器を使用することは不利である場合がある。これは、偏光素子の不正確な配置の結果として偏光誤差が著しく増大する可能性があるためである。
【0021】
本発明の一実施形態の原理はPMジャイロスコープにも同様に適用することができる。シミュレーションが、IOC PERが特定の値を超えない場合、少なくとも1つの追加の偏光素子をPM光ファイバジャイロスコープ内に挿入することが有利であり得ることを示している。図9を参照すると、装置6は、IOC入力ポートピグテールファイバとして偏光ファイバ933を有するPMジャイロスコープの一実施形態である。この実施形態では、910はPMファイバコイルであり、21及び26は通常のPMファイバである。スプライス31、34、20、22、25、26におけるPM、PZファイバ及びIOC導波路の複屈折軸を全て、互いに対して実質的に約0度として、偏光交差結合を最小化することができる。34における交差結合は回避することができないが、偏光誤差の全体的低減は、偏光ファイバ933のPERが十分に高い場合、依然として大幅なものであり得る。
【0022】
図10は、PMジャイロスコープ7の代替の一実施形態を示している。このPMジャイロスコープは、入力ポート(部分1033)と、1つ又は両方の出力ポート(部分1021、1026)との両方においてIOCピグテールファイバとして偏光ファイバを有する。偏光ファイバ1033、1021、及び1026は、この構成において偏光誤差の大幅な低減を提供することができる。加えて、この構成は、シングルタイプ偏光ファイバのために最適化されるモードフィールド形状を有するようにIOC導波路を設計するのに有利である。
【0023】
図11を参照すると、装置8は、偏光誤差を低減するために偏光ファイバを組み込む本発明の代替の一実施形態である。この実施形態では、感知コイル1110全体並びにファイバ部分1121及び/又は1126が偏光ファイバである。IOC入力ピグテールファイバ1133は、同じタイプの又は他の偏光ファイバとすることもできる。この構成では、望ましくない偏光モードのスプリアス光を、大幅に低下した値に低減することができる。したがって、IOC PERの要件を大幅に緩和することができる。
【0024】
上記のように本発明の好ましい実施形態を図示及び説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多数の変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されない。代わりに、本発明は、以下の特許請求の範囲を参照することによって全体的に画定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアスが低減した光ファイバジャイロスコープに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバジャイロスコープでは、回転速度感知のためのサニャック位相が、ファイバループの同一の光路を反対方向(たとえば時計回り(CW)方向及び反時計回り(CCW)方向)に進む干渉光波の強度を測定することによって求められる。このような同一の光路は、空間的観点及び偏光モードの観点の両方から見て相反的な経路を含む。正確なサニャック位相は、CW進行光波及びCCW進行光波が、ループファイバの同じ部分内にいる間に同じ偏光状態で進む場合にのみ測定される。このような光波がループファイバの同じ部分内にいる間に異なる偏光モードで進む場合、いわゆる偏光誤差が生じる。
【0003】
偏光保持(PM)又は非偏光保持のいずれかである従来のシングルモード光ファイバは通常、2つの偏光モードをサポートする。ファイバスプライスにおける交差結合及びファイバ内の複屈折乱れ(birefringence disturbance)に起因して、2つの偏光モード間のエネルギー交換が常に存在する。偏光交差結合光波の、一次光波又は他の交差結合光波との干渉は、回転感知のための正確な位相情報を有しない誤差信号をもたらすため、回避及び低減される必要がある。
【0004】
偏光誤差の低減の観点からすると、ファイバにおける偏光モード交差結合がより小さいため、PMファイバ感知コイルが好ましい。しかしながら、PMファイバであっても、製造工程中に該ファイバに形成されるマイクロベンディング及び不均一応力に起因して非ゼロ交差結合を受けやすい。これらの交差結合の強さは典型的には、hパラメータによって特徴付けられる。hパラメータの値が大きいPMファイバコイルは結果的に、ジャイロスコープバイアス性能を劣化させる偏光誤差をより大きくする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光解消(depolarized)ジャイロスコープでは、非偏光保持シングルモード(SM)ファイバが、コスト削減及び/又は耐放射性の向上のために使用される。偏光誤差を比較的低いレベルまで低減するように光回路を設計する複数の方法がある。それでも、これらの方法のうちのほとんどは、光集積回路(IOC)又は(IOCが使用されない場合では)偏光子の高い偏光消光比(PER)εを必要とする。これは、偏光誤差の全てがε又はより高い次数のεのいずれかに比例するためである。しかしながら多くの場合、IOC又は単一偏光子のPERが十分に高くなく、ジャイロスコープの特定の用途にとって偏光誤差が十分に小さくない場合がある。
【0006】
図1を参照すると、装置1は、典型的な従来技術の干渉方式光ファイバジャイロスコープである。この干渉方式光ファイバジャイロスコープは、広帯域光源11と、方向性結合器12と、光検出器14と、光集積回路(IOC)16と、感知ループ10と、IOCを結合器及び感知ループに接続するファイバ部分15、210、及び220とを備える。感知ループ10は、偏光保持(PM)ファイバコイル又は非PMシングルモード(SM)ファイバコイルを含むことができる。IOC16は、接合部17において入力光波を実質的に等しい部分に分割するY字型導波路40と、偏光子18と、位相変調のための電極19とを備える。1つの典型的な構成では、偏光子18を含むのではなく、IOC導波路40を偏光素子とすることができる。ファイバ部分15、210、及び220はリオタイプのデポラライザとすることができる。これらの各デポラライザは2つのPMファイバ部分を含み、これらの2つのPMファイバ部分の複屈折軸は互いに対して45度で方向付けられている。これらの従来技術の装置では、唯一の偏光(PZ)素子は多くの場合、IOC16である。これらの装置は、要求されているレベル未満に偏光誤差を低減するのに十分に高いPERを有しない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態において、光ファイバジャイロスコープが、光源と、光源に結合される結合器と、結合器に結合される光検出器と、第1の素子によって結合器に結合される光集積回路(IOC)と、第2の素子及び第3の素子によってIOCに結合される感知ループとを備える。第1の素子、第2の素子、及び第3の素子のうちの少なくとも1つは偏光素子を含む。
【0008】
本発明の好ましい実施形態及び代替の実施形態を、以下の図面を参照して以下において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来技術の光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による偏光解消光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図3】本発明の代替の実施形態に関連付けられる、ジャイロスコープ相対バイアス誤差振幅対偏光消光比のグラフである。
【図4】本発明の一実施形態による偏光解消光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図5】本発明の一実施形態による偏光解消光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図6】本発明の代替の実施形態に関連付けられる、ジャイロスコープ相対バイアス誤差振幅対偏光消光比のグラフである。
【図7】本発明の一実施形態による偏光解消光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図8】光回路内の不正確に配置された偏光素子の、偏光消光比の関数としてのジャイロスコープ相対バイアス振幅のグラフである。
【図9】本発明の一実施形態によるPM光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図10】本発明の一実施形態によるPM光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【図11】本発明の一実施形態によるPZ光ファイバジャイロスコープの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態は干渉方式光ファイバジャイロスコープ(IFOG)に関し、より詳細には、本発明の実施形態は、ジャイロスコープ光回路内において偏光素子を使用することによって偏光誤差を低減するための設計手法に関する。
【0011】
小さな内部偏光交差結合及び高い偏光消光比を有する偏光ファイバのようなコンパクトな偏光部品が開発されており且つ利用可能であるならば、偏光誤差を低減するために、これらの追加の偏光素子を光回路の特定の部分において、又はさらにはジャイロスコープの感知コイルにおいて使用することが有利である。
【0012】
本発明の実施形態は、偏光素子をジャイロスコープの光回路の特定の部分において使用することによって偏光誤差を低減するための幾つかの手法を提示する。光ファイバジャイロスコープの一実施形態は、光源、光方向性結合器、典型的には1つの入力ポートと2つの出力ポートとを有する光集積回路(IOC)、感知ループ、並びに光結合器とIOC入力ポートとの間の少なくとも1つの偏光素子及び/又はループとIOC出力ポートとの間の少なくとも1つの偏光素子を備える。偏光素子は好ましくは、高い偏光消光比を有する偏光ファイバである。別の実施形態では、偏光ファイバを感知コイルファイバとして使用することもできる。
【0013】
追加の偏光素子をIOCに連結して追加することは、望ましくない偏光モードの排除を増強するのに有利である。代替的に、この手法によって、特定のジャイロバイアス安定性要件を満たすための、IOC PER、IOCピグテール調整不良、スプライス偏光調整不良、コイル複屈折又はhパラメータ、結合器偏光依存損失(PDL)、デポラライザファイバ長等のような、多くの光学素子の性能要件を大幅に緩和させることができる。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態による偏光解消ジャイロスコープ2を示している。図1の装置1の構成要素と同様のジャイロスコープ2の構成要素は、図2において同様の参照符号によって示される。図2に示されている実施形態では、偏光素子215が結合器12とIOC16との間に配置される。方向性結合器12は、溶融ファイバ結合器、マイクロ光結合器、重なり結合器(lapped coupler)、又は光サーキュレータ若しくは等価な装置とすることができる。広帯域幅光源11から方向性結合器12を通過する光波は続いて、偏光素子215によって偏光され、その後IOC16に結合される。偏光素子215は、1つの偏光の光を実質的に透過させる一方で直交偏光を強く抑制するファイバ結合光偏光子又は等価な装置とすることができる。IOC16は、(光源11に向かって配置されている)1つの入力ポートと、(ループ10に向かって配置されている)2つの出力ポートとを有する。IOC16の入力ポートに入る光波は、接合部17において2つの実質的に等しい部分に分割される。一方の光波は時計回り(CW)方向にループ10を通じて伝播し、他方の光波は反時計回り(CCW)方向にループ10を通じて伝播する。ループ10は、デポラライザ200に結合されるリード線101及び102を有する非PMシングルモード(SM)ファイバとすることができる。デポラライザ200は上方部分210及び下方部分220を含む。上方部分210はPMファイバセグメント21及び23を含む。これらのPMファイバセグメントの光軸はスプライス22において実質的に約45度に調整される。下方部分220はPMファイバセグメント26及び28を含む。これらのPMファイバセグメントの光軸はスプライス27において実質的に約45度に調整される。PMファイバ21及び26の偏光軸は、出力ポートスプライス20及び25においてIOC導波路40の通過軸に対して実質的に約0度に調整される。CW光波及びCCW光波は、ループ10及びデポラライザ200を通じて伝播した後、接合部17において結合し、IOC16入力ポートを出る。出た光波は、偏光素子215及び結合器12を通過し、その後光検出器14に到達する。
【0015】
IOC16は、通過軸に沿って偏光される一方の偏光モードを誘導すると共に、非通過(reject)軸に沿って偏光される他方の偏光モードを実質的に拒絶する偏光導波路を有するLiNbO3結晶基板を備えることができる。図示されている実施形態における偏光素子215の通過軸はIOC通過軸に合わせられる。素子215による追加の偏光識別が、ジャイロスコープ偏光誤差を低減するのに有利である。これは、図3に示されているモデル化結果から明白に見てとることができる。相対スケール(「1」が偏光素子215無しの元のバイアス誤差を表す)において、図3における破線は、素子215のPERと共にバイアス誤差が単調に低下することを示している。この実施形態では、バルク偏光部品15の使用が、ピグテールファイバへの接続点において152及び153の新たな交差結合点を導入する場合がある。偏光誤差は光回路においてこれらの交差結合の影響を受けやすいため、152及び153の追加の交差結合が、偏光素子215によって提供される特定の量の利益を相殺する場合がある。この効果は図3において破線によって示されており、PERがゼロであり且つ152及び153における非ゼロ交差結合が仮定される場合、相対バイアス誤差は1.0よりも大きい。
【0016】
場合によっては改善される代替の本発明の実施形態を図4に示す。偏光解消ジャイロスコープ3は、結合器12とIOC16の入力ポートとの間に(バルク偏光素子215の代わりに)偏光ファイバ415を組み込む。ファイバ415のような偏光ファイバは、1つの偏光の光を透過させる一方で直交偏光を強く抑制するように機能する。IOC入力ピグテール33は、偏光ファイバ又は非偏光PMファイバのいずれかとすることができる。しかしながら、33を415と同じタイプの偏光ファイバに選択することが好ましい。これは、同じタイプのファイバを接合するのはより容易であるため、32においてより小さい交差結合が達成可能であり得るためである。図4に示されている実施形態では、偏光ファイバ415は内部交差結合点を全く有しないか又は非常にわずかに有し、さらなる偏光誤差を導入しない。偏光ファイバ415PERのバイアス性能に対する影響は、図3において実線によって示されている。バルク偏光素子215を使用する上述の実施形態に関する破線と比較して、PERに対するバイアスの依存がより急な勾配を有し、PER=0においてバイアス誤差がより小さい。これらは、偏光ファイバが偏光誤差を低減するのに有利であり得ることを示す。加えて、追加のバルク部品がジャイロ光回路内に導入されないため、この実施形態はよりコンパクト且つ経済的にすることができる。
【0017】
しかしながら、特にバルク偏光素子の内部交差結合が非常に小さい(たとえば−30dBよりも小さい)場合は、偏光ファイバ及びバルク偏光素子の機能差は重要ではないかもしれない。本発明の実施形態の説明の一般性のために、用語「偏光素子」は、偏光ファイバ415のような偏光ファイバ又は素子215のようなバルク偏光素子のいずれかを指すことができることに留意されたい。明記されていない場合、偏光ファイバは他の偏光素子によって取り替え可能であるとみなされるべきである。
【0018】
偏光ファイバを組み込む偏光解消光ファイバジャイロスコープ4の代替の一実施形態を図5に示す。この実施形態は、図4に示されている実施形態を参照して説明したように1つ又は複数の入力ファイバを備えるのではなく、IOC16出力ポートピグテール521及び/又は526のうちの少なくとも一方において偏光ファイバを備える。図5の実施形態では、部分23及び28は非偏光PMファイバとすることができる。これらの部分の光軸は、スプライス22及び27において偏光ファイバ521及び526に対して実質的に約45度に調整される。偏光ファイバ部分521及び/又は526のジャイロスコープバイアス性能に対する効果を図6に表す。各偏光部分の効果を区別するために、2つの曲線を描く。円形記号を有する実線は両方のファイバ部分521及び526が偏光ファイバである場合を表す。矩形記号を有する破線は、ファイバ部分521のみ又は部分526のみが偏光ファイバである場合を表す。2つのPZ部分の−20dBのPERが10倍の偏光誤差低減を提供することができることが分かった。部分521のみ又は部分526のみが偏光をもたらす場合、バイアスの低減の程度はこれよりも大きくない。
【0019】
代替の実施形態のジャイロスコープ5は、図7に示すように、IOC入力ピグテール(部分715)及び出力ピグテール(部分721、726)の両方において偏光ファイバ部分を含む。この構成からの組み合わされた偏光効果は、上述した実施形態の場合よりも著しい可能性がある。
【0020】
ジャイロスコープ光回路内の偏光素子を位置決めする場所の選択は慎重に行うべきであることは留意すべきである。たとえば、偏光素子を光源11と結合器12との間に配置することによって大きな偏光誤差が生じる場合がある。図8は、このような不正確に配置された偏光素子を有するジャイロの場合の、モデル化されたバイアス誤差対PERのグラフである。偏光解消ジャイロスコープにおいて結合器の上流で光源を偏光することが不利である可能性があることは明白であると考えられる。同様に、非偏光結合器の代わりに偏光方向性結合器を使用することは不利である場合がある。これは、偏光素子の不正確な配置の結果として偏光誤差が著しく増大する可能性があるためである。
【0021】
本発明の一実施形態の原理はPMジャイロスコープにも同様に適用することができる。シミュレーションが、IOC PERが特定の値を超えない場合、少なくとも1つの追加の偏光素子をPM光ファイバジャイロスコープ内に挿入することが有利であり得ることを示している。図9を参照すると、装置6は、IOC入力ポートピグテールファイバとして偏光ファイバ933を有するPMジャイロスコープの一実施形態である。この実施形態では、910はPMファイバコイルであり、21及び26は通常のPMファイバである。スプライス31、34、20、22、25、26におけるPM、PZファイバ及びIOC導波路の複屈折軸を全て、互いに対して実質的に約0度として、偏光交差結合を最小化することができる。34における交差結合は回避することができないが、偏光誤差の全体的低減は、偏光ファイバ933のPERが十分に高い場合、依然として大幅なものであり得る。
【0022】
図10は、PMジャイロスコープ7の代替の一実施形態を示している。このPMジャイロスコープは、入力ポート(部分1033)と、1つ又は両方の出力ポート(部分1021、1026)との両方においてIOCピグテールファイバとして偏光ファイバを有する。偏光ファイバ1033、1021、及び1026は、この構成において偏光誤差の大幅な低減を提供することができる。加えて、この構成は、シングルタイプ偏光ファイバのために最適化されるモードフィールド形状を有するようにIOC導波路を設計するのに有利である。
【0023】
図11を参照すると、装置8は、偏光誤差を低減するために偏光ファイバを組み込む本発明の代替の一実施形態である。この実施形態では、感知コイル1110全体並びにファイバ部分1121及び/又は1126が偏光ファイバである。IOC入力ピグテールファイバ1133は、同じタイプの又は他の偏光ファイバとすることもできる。この構成では、望ましくない偏光モードのスプリアス光を、大幅に低下した値に低減することができる。したがって、IOC PERの要件を大幅に緩和することができる。
【0024】
上記のように本発明の好ましい実施形態を図示及び説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく多数の変更を行うことができる。したがって、本発明の範囲は、好ましい実施形態の開示によって限定されない。代わりに、本発明は、以下の特許請求の範囲を参照することによって全体的に画定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバジャイロスコープ(2)であって、
光源(11)と、
前記光源(11)に結合される結合器(12)と、
前記結合器(12)に結合される光検出器(14)と、
偏光をもたらす第1の素子(215)によって前記結合器(12)に結合される光集積回路(IOC)(16)と、
第2の素子(210)及び第3の素子(220)によって前記IOC(16)に結合される感知ループ(10)と、
を備える、光ファイバジャイロスコープ。
【請求項2】
ジャイロスコープ(2)であって、前記第2の素子(210)は偏光素子を含む、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項3】
光ファイバジャイロスコープ(2)であって、
光源(11)と、
前記光源(11)に結合される結合器(12)と、
前記結合器(12)に結合される光検出器(14)と、
第1の素子(215)によって前記結合器(12)に結合される光集積回路(IOC)(16)と、
第2の素子(210)及び第3の素子(220)によって前記IOC(16)に結合される感知ループ(10)であって、前記第2の素子及び前記第3の素子のうちの少なくとも一方は偏光素子である、感知ループ(10)と、
を備える、光ファイバジャイロスコープ。
【請求項1】
光ファイバジャイロスコープ(2)であって、
光源(11)と、
前記光源(11)に結合される結合器(12)と、
前記結合器(12)に結合される光検出器(14)と、
偏光をもたらす第1の素子(215)によって前記結合器(12)に結合される光集積回路(IOC)(16)と、
第2の素子(210)及び第3の素子(220)によって前記IOC(16)に結合される感知ループ(10)と、
を備える、光ファイバジャイロスコープ。
【請求項2】
ジャイロスコープ(2)であって、前記第2の素子(210)は偏光素子を含む、請求項1に記載のジャイロスコープ。
【請求項3】
光ファイバジャイロスコープ(2)であって、
光源(11)と、
前記光源(11)に結合される結合器(12)と、
前記結合器(12)に結合される光検出器(14)と、
第1の素子(215)によって前記結合器(12)に結合される光集積回路(IOC)(16)と、
第2の素子(210)及び第3の素子(220)によって前記IOC(16)に結合される感知ループ(10)であって、前記第2の素子及び前記第3の素子のうちの少なくとも一方は偏光素子である、感知ループ(10)と、
を備える、光ファイバジャイロスコープ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−78591(P2010−78591A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−169289(P2009−169289)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169289(P2009−169289)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】
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