説明

バイオガス発酵槽

【課題】 バイオマスの入れ替え作業をスムーズに行うことができるバイオガス発酵槽を提供すること。
【解決手段】 バイオマスに散布された発酵液を床面に形成した液溝を介して回収し、送出しポンプによって循環させることにより繰り返し発酵液の散布を行いながらバイオマスから発生するバイオガスを取り出すバイオガスシステムを構成するものであって、バイオマスを堆積する床面11が水平に形成されたフラットな面であり、液溝20(21,22)は、そうした床面全体に複数形成され、底部が送出しポンプに接続された配管側に発酵液が流れるように傾斜し、流れ込んだ発酵液を濾過するための濾過材27,28が敷き詰められたバイオガス発酵槽1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスよりメタンガスを取り出すためのバイオガス発酵槽に関し、特に、貯留したバイオマスに効率良く発酵させるための種菌液(発酵液)を散布する場合に、その発酵液を循環させるように構成したバイオガス発酵槽に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のバイオガス発酵槽が記載された特表2004−511331号公報のバイオガスシステムを示した図である。また、図4は、そのバイオガス発酵槽の内部を搬入出口側から見た状態の断面図である。
バイオガス発酵槽100は、コンクリートの床に壁及び天井によって六面が囲まれた四角い空間であって、発酵槽内部の上面に於ける気密性が保たれた構成になっている。そして、その上には三角の屋根101が設けられている。このバイオガス発酵槽100は、発酵の際に発生するバイオガス用の小さな緩衝貯蔵槽としての役目を果たすものであり、この中にはバイオマス200がバッチ式に投入される。
【0003】
バイオガス発酵槽100は、一つの壁に形成された搬入出口102には2枚扉103によって、閉じた場合に気密になるよう構成されている。そして、床面105は、搬入出口102から奥に向け約1.5%傾斜し、更に左右両側から中央に向けても傾斜し、その低くなった床面中央部分と奥には排水ピット106,107が形成されてつながっている。この排水ピット106,107には格子状のカバーが被せられてバイオマス200が落ちないようになっている。一方、奥の壁にはバイオガス排出抗111が形成され、均一で確実に流れるようにカバープレート112が取リ付けられている。そして、このバイオガス排出抗111は、ガス管113を介してガス圧縮を行う吸引ブロアー115に連結されている。
【0004】
排水ピット107の最も低い部分には取出管116が取り付けられ、この取出管116に接続されたポンプ117によって発酵液が貯蔵タンク118に回収されるようになっている。そして、回収された発酵液は送出しポンプ119にて液パイプ120を通り、天井に取り付けられているスプレイ・ユニット121のノズルから噴射し、バイオガス発酵槽100内のバイオマス200に散布される。
バイオガス発酵槽100内部から吸引ブロアー18によって吸引されたガス或いは混合ガスは、ガス管122を流れ、切替弁123の切り替えによって利用出来るバイオガスは圧力タンク124に送り込まれ、利用出来ないガスはバイオフィルター125に送り込まれる。圧力タンク124は、ガス管を介してコ・ジェネ発電機126に連結され、そこで発生する排熱は、必要に応じ貯蔵タンク118内に貯蔵された発酵液を加熱するのに利用される。
【特許文献1】特表2004−511331号公報(第4−5頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオガスの生成には、前述したようにバイオガス発酵槽100内のバイオマス200には発酵液が上方から散布されるが、その際、バイオマス200を染み通った発酵液を繰り返し散布するための循環が行われている。具体的には、バイオガス発酵槽100の床面105に搬入出口102から奥側と左右両側から中央へ傾斜が設けられ、バイオマス200を染み通った発酵液が排水ピット106,107に流れて集められ、そうした発酵液が送出しポンプ119によって再び汲み上げられて散布される。しかしながら、従来のバイオガス発酵槽100の場合、発酵液を循環させる床面構造において次のような問題があった。
【0006】
先ず、バイオガス発酵槽100は、床面105が傾斜して形成されているため、バイオマス200の入れ替えに支障があった。すなわち、バイオマス200の入れ替えにはバケットローダーなどが使用され、先ずバイオガスを回収した後のバイオマス200がバイオガス発酵槽100内からすくい出される。その際、真っ直ぐにバケットを入れても床面105が傾斜して高低差があるため、低い部分のバイオマスが残ってしまう。
【0007】
そのほか、排水ピット106,107が床面105の中央と奥にしかないので、バイオマス200を染み通った発酵液は床面を伝わって中央部分の排水ピット106や、奥にある排水ピット107にまで流れていく必要がある。しかし、バイオマス200は、その重さによって床面105に対し時間をかけて押し付けられていくので、発酵液が流れにくくなって集液効率が悪くなる。
【0008】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、バイオマスの入れ替え作業をスムーズに行うことができるバイオガス発酵槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るバイオガス発酵槽は、バイオマスに散布された発酵液を床面に形成した液溝を介して回収し、送出しポンプによって循環させることにより繰り返し発酵液の散布を行いながらバイオマスから発生するバイオガスを取り出すバイオガスシステムを構成するものであって、バイオマスを堆積する床面が水平に形成されたフラットな面であり、前記液溝は、そうした床面全体に複数形成され、底部が前記送出しポンプに接続された配管側に発酵液が流れるように傾斜し、流れ込んだ発酵液を濾過するための濾過材が敷き詰められたものであることを特徴とする。なお、ここで、発酵液とは、メタン発酵菌を含む発酵菌溶液をいう。
【0010】
また、本発明に係るバイオガス発酵槽は、前記液溝が、バイオマスの搬入出口がある手前側から奥側に向けて直線状に形成され、かつその直交方向に所定の間隔をとって平行に複数形成された回収溝と、奥側に形成された集合溝とが接続され、その回収溝は記集合溝に向けて底部が傾斜し、集合溝は前記送出しポンプに接続された配管側に底部が傾斜したものであることが好ましい。
また、本発明に係るバイオガス発酵槽は、前記濾過材が、前記液溝の下側に敷き詰められた適度な大きさの石と、その上側に床面の高さまで敷き詰められた籾殻であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
よって、本発明のバイオガス発酵槽では、搬入され床面上に堆積したバイオマスに発酵液が繰り返し散布され、そのバイオマスから発生するバイオガスが取り出される。その際、バイオマスを染み通った発酵液は液溝に流れ込み、そこでは、例えば一緒に流れ込むスラリー状になったバイオマスなどが取り除かれて発酵液が濾過され、送出しポンプによって循環される。
そして、本発明のバイオガス発酵槽によれば、バイオガスの回収が終了したバイオマスをバケットローダーなどによってすくい出す場合、床面が水平なフラット面になっているため、バケットによってバイオマスをきれいにすくい取ることができ、バイオマスの入れ替え作業をスムーズに行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明に係るバイオガス発酵槽の一実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態のバイオガス発酵槽を示した概念図である。このバイオガス発酵槽1は、前記従来例のものと同様に、床面11と4面の側壁と天井とを有する機密な状態を保つことができるように構成された箱形の空間を構成した建物である。また、こうしたバイオガス発酵槽1は、図3に示した従来のものと同様に、バイオガスを回収して貯留する吸引ブロアーやタンクなどが隣接して設けられ、バッチ式のバイオガスシステムを構成している。そして、このバイオガスシステムでも、バイオガス発酵槽1内のバイオマスに対して発酵液を繰り返し散布されるため、循環ポンプやそのための配管が構成されている。
【0013】
本実施形態のバイオガス発酵槽1は、床面11がフラットに形成され、そこに発酵液を回収するための複数の回収溝21が形成されている。図1には、3本の回収溝21を示しているが、更に多くの回収溝21を形成するようにしてもよく、回収溝の数に制限はない。一例としては、幅100mm程度の回収溝21を約1mピッチで形成する。
この回収溝21は、天井に設けられた不図示のノズルによって散布され発酵液がバイオマスを染み通って流れ込むようにしたものである。そして、複数の回収溝21を流れた発酵液を集液できるようにバイオガス発酵槽1の奥の床面11に集合溝22が形成され、そこに全ての回収溝21が接続されている。
【0014】
バイオガス発酵槽1は、図面手前に示された壁面12が大きく開く開口扉となるようにして構成され、奥にかけて長い空間が形成されている。そうした長方形の床面11には、長手方向に回収溝21が平行に形成され、回収溝21と直交するようにして最も奥に集合溝22が形成されている。床面11が水平に形成される一方、回収溝21は、手前の開口側から奥の集合溝22にかけて徐々に底が深くなるようにして傾斜が付けられている。そして、集合溝22には、その端部に発酵液が一時的に貯まるように深くした貯留部23が形成され、その貯留部23にかけて徐々に底が深くなるようにして傾斜が付けられている。
【0015】
その貯留部23には取出管24が取り付けられ、この取出管24に接続された不図示のポンプによって発酵液が貯蔵タンクに回収されるようになっている。そして、バイオガスシステムでは、この回収された発酵液が送出しポンプによって液パイプを通り、バイオガス発酵槽1の天井13に取り付けられる不図示のノズルから噴射し、内部に堆積されたバイオマスに散布されるようになっている。
【0016】
次に、図2は、回収溝21及び集合溝22の断面を示した図である。本実施形態のバイオガス発酵槽1では、床面11に形成された回収溝21及び集合溝22(以下、まとめて記載する場合には「液溝20」とする)は、バイオマスが入り込んで詰まらせることなく、発酵液が濾過されて流れるように濾過材が敷き詰められた構成となっている。具体的には、液溝20の下側には適度な大きさの砕石27が敷き詰められて砕石層が形成され、その上には撥水性に優れた籾殻28が床面11の高さまで敷き詰められて籾殻層が形成される。こうして、バイオガス発酵槽1の床面11は、回収溝21と集合溝22に砕石27や籾殻28が敷き詰められて全体がフラットな面になっている。
【0017】
そこで、このバイオガス発酵槽1を備えたバイオガスシステムでは、バイオガス発酵槽1内に約13tのバイオマスが入れられて床面11上に堆積される。堆積されたバイオマスはバイオガス発酵槽1内に1週間程かけて乾式発酵処方によって、バイオマスの発酵によって発生したバイオガスを強制的に発酵槽から吸引して回収が行われる。その際、バイオガス発酵槽1内のバイオマスには発酵液が天井のノズルによって散布される。そうして散布された発酵液は、バイオマスを染み通って床面11まで達し、その床面11に形成された回収溝21に染みこむようにして流れる。
【0018】
例えば半スラリー状のバイオマスなどの場合、発酵液にはそれらが混じり合って回収溝21へと流れてしまうが、本実施形態では、回収溝2の上層に敷き詰められた籾殻28によって濾過されて発酵液がバイオマスと分離される。籾殻28によって濾過された発酵液は、更に砕石27の層を落ちて回収溝2の底部に達し、そこに形成された傾斜によってバイオガス発酵槽1の奥に向かって流れる。そして、各回収溝21を流れた発酵液は集合溝22に集められ、その集合溝22を流れて貯留部23へと達する。こうして回収された発酵液は、送出しポンプによって液パイプを通り、再びバイオガス発酵槽1の天井13に取り付けられたノズルによってバイオマスに散布される。
【0019】
そして、バイオガスの回収が終了し、バイオガス発酵槽1からバイオマスを取り出す場合には、バケットローダーによってバイオマスをすくい出す。その際、床面11はフラットになっているため、水平に入れたバケットはバイオマスをきれいにすくい取ることができる。そのため、本実施形態のバイオガス発酵槽1によれば、バケットローダーなどの作業機を使ってほとんどのバイオマスを取り出すことができ、バイオマスの入れ替え作業をスムーズに行えるようになった。
また、本実施形態では、液溝20を複数の回収溝21とそれが接続された集合溝22とからなる櫛状にし、回収溝21を手前の開口側から奥に延びるように形成しているので、バイオマスをすくい取る際にバケットが引っかかることなくスムーズに作業を行うことができる。
【0020】
また、本実施形態のバイオガス発酵槽1では、前述したようにして循環する発酵液が床面11に形成された複数の回収溝21によって回収されるため、発酵液の集液を効果的に行うことができるようになった。その際、籾殻28や砕石27によって発酵液が濾過され個液分離が行われるため、送出しポンプなどへ固形分が混入して機器が損傷を受けるのを防止することができる。更に、そうした濾過部材となる籾殻28がバイオマスと一緒になって取り出されても、バイオマスがその後に堆肥として利用される場合も何ら問題ない。そして、回収溝21内における籾殻28の量が減った場合にはその都度加えられるが、籾殻は容易に入手することができ、そのため、常に床面11をフラットにしておくようにすることができる。
【0021】
以上、本発明に係るバイオガス発酵槽1について、その一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。
例えば、前記実施形態では、回収溝21内に籾殻28を入れて発酵液を濾過させるようにしたが、籾殻の他にもバークチップなどを使用することも考えられる。
また、前記実施形態では、液溝20を複数の回収溝21とそれが接続された集合溝22とからなる櫛状に形成されたものとしたが、例えば、貯留部23を中心にして放射状に延びた長さの異なる複数の溝が形成されてものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】バイオガス発酵槽の一実施形態を示した概念図である。
【図2】バイオガス発酵槽の床面に形成した溝の断面を示した図である。
【図3】従来のバイオガス発酵槽を備えたバイオガスシステムを示した図である。
【図4】従来のバイオガス発酵槽の内部を搬入出口側から見た状態の断面を示した図である。
【符号の説明】
【0023】
1 バイオガス発酵槽
11 床面
20 液溝
21 回収溝
22 集合溝
27 砕石
28 籾殻

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスに散布された発酵液を床面に形成した液溝を介して回収し、送出しポンプによって循環させることにより繰り返し発酵液の散布を行いながらバイオマスから発生するバイオガスを取り出すバイオガスシステムのバイオガス発酵槽において、
バイオマスを堆積する床面が水平に形成されたフラットな面であり、前記液溝は、そうした床面全体に複数形成され、底部が前記送出しポンプに接続された配管側に発酵液が流れるように傾斜し、流れ込んだ発酵液を濾過するための濾過材が敷き詰められたものであることを特徴とするバイオガス発酵槽。
【請求項2】
請求項1に記載するバイオガス発酵槽において、
前記液溝は、バイオマスの搬入出口がある手前側から奥側に向けて直線状に形成され、かつその直交方向に所定の間隔をとって平行に複数形成された回収溝と、奥側に形成された集合溝とが接続され、その回収溝は記集合溝に向けて底部が傾斜し、集合溝は前記送出しポンプに接続された配管側に底部が傾斜したものであることを特徴とするバイオガス発酵槽。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するバイオガス発酵槽において、
前記濾過材は、前記液溝の下側に敷き詰められた適度な大きさの石と、その上側に床面の高さまで敷き詰められた籾殻であることを特徴とするバイオガス発酵槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−744(P2007−744A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182503(P2005−182503)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】