説明

バイオコークス製造装置

【課題】バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置を提供する。
【解決手段】バイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、複数の反応容器21が駆動装置を備えた環状搬送装置2上を搬送され、搬送装置の内周側若しくは外周側に、反応容器21内にバイオマス粉砕物を充填して予備加圧するA充填圧縮ゾーンと、予備加圧後のバイオマス粉砕物を加圧した状態で一定時間加熱した後冷却するB1〜B6反応ゾーンと、反応終了後のバイオコークス製品を排出するC排出ゾーンと、が設けられ、前記B1〜B6反応ゾーンが複数設けられ、前記環状搬送装置2上を搬送される反応容器21が、空状態の反応ゾーンを検知して順次送り込まれる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特に石炭コークスの代替燃料として効果的に利用可能であるバイオコークスを工業的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO排出の削減が推進されている。特に、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多いが、この化石燃料は、CO排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
そこで、化石燃料の代替として、バイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用することができる。
【0003】
バイオマスを燃料化する方法としては、バイオマスを乾燥させて燃料化する方法、加圧して燃料ペレット化する方法、炭化、乾留させて燃料化する方法等が知られている。しかし、バイオマスを乾燥させるのみでは、空隙率が大きくみかけ比重が低くなるため、輸送や貯留が困難であり、長距離輸送や貯留して使用する燃料としては有効とはいえない。
一方、バイオマスを燃料ペレット化する方法は、特許文献1(特公昭61−27435号公報)に開示されている。この方法は、細断された有機繊維材料の含水量を16〜28%に調節し、これをダイス内で圧縮して乾燥し燃料ペレットを製造するようにしている。
また、バイオマスを乾留して燃料化する方法は、特許文献2(特開2003−206490号公報)等に開示されている。この方法は、酸素欠乏雰囲気中において、バイオマスを200〜500℃、好適には250〜400℃で加熱して、バイオマス半炭化圧密燃料前駆体を製造する方法となっている。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−27435号公報
【特許文献2】特開2003−206490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、圧縮成形を行うことによりバイオマスを燃料化しているが、生成した燃料ペレットは水分量が多いため発熱量が低く、燃料としては適していない。
また、特許文献2等に記載されるように乾留によりバイオマスを燃料化する方法では、加工処理を施さないバイオマスに比べると燃料として価値が高いものとなっているが、やはり石炭コークスに比べてみかけ比重が低く、発熱量が低い。さらに、石炭コークスに比べて硬度が低いため、石炭コークスの代替として利用するには不十分である。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
近年、石炭コークスの代替として、バイオコークスが研究されている。
バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後、冷却することにより製造される。加圧、加熱条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲に設定する。これにより以下の反応機構が成立し、高硬度で高発熱量を有するバイオコークスが製造できる。
その反応機構は、上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物のヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、反応容器内に発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できるものである。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0007】
図9に、バイオコークスの物性値を他の燃料と比較した表を示す。尚、この表は実験的に得られた数値を記載しているのみであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
この表に示されるように、バイオコークスは、みかけ比重1.2〜1.38、最高圧縮強度60〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kgの物性値を示す硬度、燃焼性ともに優れた性能を有しており、未加工の木質バイオマスが、みかけ比重約0.4〜0.6、発熱量約17MJ/kg、最高圧縮強度約30MPaであるのと比べると、発熱量及び硬度の点において格段に優れていることが判る。また、石炭コークスの物性値である、みかけ比重約1.85、最高圧縮強度約15MPa、発熱量約29MJ/kgに比しても、バイオコークスは燃焼性、硬度とも遜色ない性能を有する。
従って、バイオコークスは石炭コークスの代替として有効な燃料であるとともに、マテリアル素材としての利用価値も高い。
【0008】
しかし、このバイオコークスは未だ実験段階にとどまっており、反応容器にバイオマス粉砕物を人手で充填して一つの反応容器でバッチ的に製造しているのが実状であった。
そこで本発明は、上記したバイオコークスを効率的に製造する装置を提案する。
【0009】
本発明は、所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
複数の反応容器が駆動装置を備えた環状搬送装置上を搬送され、前記搬送装置の内周側若しくは外周側に、前記反応容器内にバイオマス粉砕物を充填して予備加圧する充填圧縮ゾーンと、前記予備加圧後のバイオマス粉砕物を前記加圧範囲に加圧した状態で前記温度範囲にて一定時間加熱した後冷却する反応ゾーンと、前記反応終了後のバイオコークス製品を排出する排出ゾーンと、が設けられるとともに、
前記反応ゾーンが複数設けられ、前記環状搬送装置上を搬送される反応容器が、空状態の反応ゾーンを検知して順次送り込まれることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能なバイオコークスを効率的に製造可能である。即ち、複数の反応容器を用いることにより連続した処理が可能となり、バイオコークスを工業的に大量生産することができるようになる。
また、本発明では複数の反応容器を載置した環状搬送装置を備えるとともに、該搬送装置の外側若しくは内側に、バイオコークス生産に必要な単位操作を少なくともA充填圧縮ゾーン、B1〜Bn反応ゾーン、C排出ゾーンに分けてこれらを同時に行うようにし、さらにB反応ゾーンを複数設けて反応工程を複数同時進行できるようにしたため、設備数の低減及び時間の短縮化が可能となる。
【0011】
また、前記反応容器が円筒状に形成され、該反応容器の底部が該容器の内周面に摺接するように設けられた押出プレートと該プレートを支持する底板で形成されるとともに、前記底板には穴部が形成されてなり、
前記反応ゾーンには、前記反応容器の上部開口を封止する天板と、該天板に前記反応容器を押し付ける容器押上シリンダと、前記押出プレートを介して容器内のバイオマス粉砕物を加圧する反応用加圧シリンダと、が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明では、反応容器の底部をピストン状に形成することにより、反応ゾーンにて下方から加圧することができ、これにより反応ゾーンの位置合わせの精度が低くても円滑に反応ゾーンにて反応操作が行われることとなる。
また、前記反応容器の底板に穴部を形成することにより、押出プレートと容器の隙間から落ちてくる粕が溜まらないようになっており、装置の不具合を防止できる。
【0013】
さらに、前記反応容器が円筒状に形成され、該反応容器の底部が該容器の内周面に摺接するように設けられた押出プレートと該プレートを支持する底板で形成されるとともに、前記反応容器の下方周囲にフランジ部が設けられており、
前記環状搬送装置は、並行して延設され駆動装置が組み込まれた2の搬送レールであり、前記搬送レールに前記反応容器のフランジ部を支持させて該容器を搬送するようにしたことを特徴とする。
これにより、反応容器を被駆動式とすることができ、該反応容器の小型化及び低廉化が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上記載のごとく本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量を有するバイオコークスを、効率的に大量生産することが可能となる。
また、本発明では複数の反応容器を載置した環状搬送装置を備えるとともに、該搬送装置の外側若しくは内側に、バイオコークス生産に必要な単位操作を少なくともA充填圧縮ゾーン、B1〜Bn反応ゾーン、C排出ゾーンに分けてこれらを同時に行うようにし、さらにB反応ゾーンを複数設けて反応工程を複数同時進行できるようにしたため、設備数の低減及び時間の短縮化が可能となる。
【0015】
さらに、本発明では反応容器の底部をピストン状に形成することにより、反応ゾーンにて下方から加圧することができ、これにより反応ゾーンの位置合わせの精度が低くても円滑に反応ゾーンにて反応操作が行われることとなる。
また、前記反応容器の底板に穴部を形成することにより、押出プレートと容器の隙間から落ちてくる粕が溜まらないようになっており、装置の不具合を防止できる。
さらにまた、駆動装置が組み込まれた搬送装置を備えることにより、反応容器を被駆動式とすることができ、該反応容器の小型化及び低廉化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1及び図2は本発明の実施例に係るバイオコークス製造装置の平面図、図3は本実施例の反応容器の側断面図、図4は図3の平面図、図5は本実施例の原料充填ゾーンにおける装置の側断面図、図6は本実施例の反応ゾーンにおける装置の側断面図、図7は製品排出ゾーンにおける装置の側断面図、図8は図7の平面図である。
本実施例において、バイオコークスの原料となるバイオマスは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスであり、例えば、廃木材、間伐材、剪定枝、植物、農業廃棄物、コーヒー粕や茶粕等の厨芥廃棄物等が挙げられる。
【実施例】
【0017】
本実施例では、バイオマスを予め所定の含水率になるように水分調整するとともに、所定粒径以下まで粉砕する前処理を行ったバイオマス粉砕物を原料としている。
本実施例のバイオコークス装置は、このバイオマス粉砕物を所定の圧力、温度条件にて加圧、加熱して一定時間保持した後、冷却することによりバイオコークスを製造するものである。上記した圧力、温度条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲とする。即ち、前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲である。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成を説明する。
本実施例のバイオコークス製造装置1は、原料の充填及び予備加圧操作、該原料を圧縮しながら加熱後冷却する反応操作、製品排出操作を夫々異なるゾーンにて行い、時間がかかる反応操作を、時間の短い原料の充填及び予備加圧操作、製品排出操作より多くのゾーンにて行う構成としている。さらに本実施例では、反応進行状況によって個別の反応操作時間が変化しても、反応の終了したユニットから排出場所に送るシステムとしており、全体の生産効率が向上する装置とした。
【0019】
尚、図1に示す装置は一例であり、その形状、ゾーン位置及び設置数はこれに限定されるものではない。
同図において、本装置は、2本の並行した周回シャトルレール2aからなる環状搬送装置2を備え、該搬送装置2の外側に向けて延設された複数の引込みシャトルレールレール3〜10により複数のゾーンA〜Cが設けられている。前記搬送装置2上には被駆動式のシャトル式ユニット20が載置されており、前記搬送装置2の駆動手段(図示略)により搬送されるようになっている。
【0020】
これらのゾーンは、搬送方向に対して順に、A充填圧縮ゾーンと、B反応ゾーンと、C排出ゾーンが位置し、B反応ゾーンは複数設けられる。好適にはA充填圧縮ゾーンとB反応ゾーンが夫々一箇所ずつ設けられ、B反応ゾーンが3〜10箇所設けられるとよい。また、A充填圧縮ゾーンとB反応ゾーンが複数設けられる構成としてもよく、この場合、これらのゾーンより多く反応ゾーンが設けられるようにする。尚、図1では一例として、A充填圧縮ゾーンとB反応ゾーンが夫々一箇所ずつ設けられ、B反応ゾーンが6箇所設けられている。
また、前記周回シャトルレール2aと引込みシャトルレール3〜10は、支点11を介して切替シャトルレールにより方向切り替え可能に形成されており、シャトル式ユニット20をゾーン内に引き込む時とゾーンから送り出す時に、該シャトル式ユニットの位置を検知し、切替シャトルレールを駆動させてシャトル式ユニット20の進行方向を切替えるようになっている。
【0021】
図2は、図1に示した装置とは他の構成を有する装置の図であり、環状搬送装置2に対して、B反応ゾーンの一部がその内側に配置された構成となっている。このように本実施例では、上記したゾーンA〜Cの少なくとも何れかのゾーンが搬送装置2の内側に配置された構成としてもよい。勿論、全てのゾーンが内側に配置されていてもよく、この配置構成は環状搬送装置2の形状により適宜選択するとよい。これにより、装置の設置面積を省スペース化することが可能である。
【0022】
図3を参照して、前記シャトルユニット20は、円筒状の反応容器21と、該反応容器21の底面を形成する支持枠22と、該支持枠22により支持され前記反応容器21の内周面に摺接するように配置されたピストン状の押出プレート24と、前記反応容器21の下方に周方向に突出したフランジ部23と、を備える。また前記反応容器21は、温度調節手段としてジャケットを設けた二重管構造とし、内筒と外筒の間に冷熱媒通路25が設けられている。該冷熱媒通路25には、熱媒若しくは冷媒(以後、冷熱媒と称する)が通流し、該冷熱媒によりシリンダ内筒に充填されたバイオマス粉砕物に熱エネルギを与えるようになっている。冷熱媒通路25の下方側には冷熱媒入口25aが設けられ、上方側には冷熱媒出口25bが設けられている。前記支持枠22は、容器底面の中心から放射状に形成され、複数の穴部22aを有している。
【0023】
A充填圧縮ゾーンでは、反応容器21内に原料を供給して、バイオマス粉砕物を予備加圧する工程を行う。
図5に、A充填圧縮ゾーンにおける具体的な装置例を示す。本装置は、前記反応容器21の上方に円筒形のガイド筒30が配置されている。前記反応容器21の位置合わせにおいて、ガイド筒30の下側開口と反応容器21の上側開口が当接するように設定される。
前記ガイド筒30には原料フィーダ31を介して、原料であるバイオマス粉砕物が投入される原料ホッパ32が連結されている。原料フィーダ31にはこれを駆動するモータ33が連結されており、該原料フィーダ31による原料供給量は、モータ33の回転数を制御することにより調整される。
また、前記ガイド筒30の上方には、予備加圧シリンダ35と、該シリンダ35内を摺動する予備加圧ピストン36が設けられている。該予備加圧ピストン36は、不図示の電動回路若しくは油圧駆動回路により前記予備加圧シリンダ35内にて上下方向に往復動するようになっている。
【0024】
このような構成を有する装置によりA充填圧縮ゾーンでは、原料ホッパ32から供給されたバイオマス粉砕物を原料フィーダ31により所定量ずつガイド筒30及び反応容器21内に供給し、該ガイド筒30の上方から予備加圧ピストン36によりバイオマス粉砕物を押し込み、反応容器25に20Mpa〜30Mpa程度にて予備加圧する。
尚、原料となるバイオマス粉砕物の前処理として、バイオマスの含水率を5〜10%に乾燥させる水分調整を行い、該乾燥したバイオマスを粒子径3mm以下、好ましくは0.1mm以下に粉砕することが好ましい。また、バイオマスの種類によっては乾燥・粉砕後に調湿する場合もある。
【0025】
A充填圧縮ゾーンにてバイオマス粉砕物の充填、圧縮(予備加圧)が終了したら、予備加圧シリンダ35にてピストン36を引き上げた後、該反応容器21を備えたシャトルユニット20を周回シャトルレール2aに送り出すようになっている。
ここで、前記反応容器21は、シャトル式ユニット20に取り付けられたICチップ29等により個別識別、履歴管理されるようになっており、周回シャトルレール2a上を周回し、B1〜B6の反応ゾーンの空ゾーンに搬入される。
B反応ゾーンは、周回シャトルレール2a上を搬送される反応容器21のうち、ICチップ29の記録を読み取り、予備加圧が終了した反応容器21を選別して空の反応ゾーンに引込むようになっている。
【0026】
B反応ゾーンでは、反応容器21内の予備加圧されたバイオマス粉砕物を加圧し、該加圧した状態で加熱して一定時間保持した後、冷却する工程を行う。
図6に、B反応ゾーンにおける具体的な装置例を示す。本装置は、引込みシャトルレールレール4(5〜9)の端部に設置され、シャトルユニット20が収容されるケーシング41と、該ケーシング41の上面に固定配置された加圧受板42と、該受板42に対向してケーシング41底部に固定配置された反応用加圧シリンダ43と、該シリンダ43により上下方向に往復動する反応用加圧ピストン44と、前記反応用加圧シリンダ43の周囲に複数設置される容器押上シリンダ45とから構成される。
【0027】
このような構成を有する装置によりB反応ゾーンでは、前記引込みシャトルレールレール4(5〜9)を介してケーシング41内部に搬送されたシャトルユニット20は、反応用加圧ピストン44の上方に位置合わせされた後、前記反応ゾーン内に設置された位置センサ(図示略)により反応容器21の存在を感知したら、前記反応容器21のフランジ部23を前記容器押上シリンダ45で押上げ、該反応容器21の上部開口を前記加圧受板42に押し付けて封止する。
【0028】
次いで、反応用加圧シリンダ43にて加圧ピストン44を駆動し、該加圧ピストン44により反応容器21内のバイオマス粉砕物を8〜25MPaに加圧して圧縮する。同時に、反応容器21の冷熱媒通路25に熱媒を通流し、反応容器21内のバイオマス粉砕物を115〜230℃に加熱する。このとき、予め反応容器21内を加熱しておいてから加圧してもよいし、逆に加圧してから加熱してもよく、ほぼ同時に加熱と加圧を行うようにする。
上記した温度、圧力、及び含水率は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンが熱分解又は熱硬化反応が誘起される範囲に設定される。言い換えれば、バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する範囲である。ここで含水率は、反応容器21内にて水分が亜臨界状態を形成するのに十分な範囲となっている。
【0029】
反応容器21内のバイオマス粉砕物は、上記した加圧、加熱状態を一定時間保持する。
上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物の成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、反応容器21内に発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できる。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0030】
反応終了後に、反応容器21の冷熱媒通路25から熱媒を抜き、冷媒を通流させる。尚、本実施例において、熱媒としてはシリコンオイル、スチームが好適に用いられ、冷媒としてはシリコンオイル、水、或いは空気が好適に用いられる。シリンダ2内の加圧状態を維持した状態で、冷媒により50℃以下、好適には40℃以下になるまで冷却する。尚、この温度より高い温度でバイオコークスを取り出すと、ヘミセルロースによる接着効果が低下するため、冷却した後に排出するようにする。
【0031】
本実施例では、反応容器21の温度調節手段として冷熱媒通路25を用いた構成としているが、この他にも、前記加圧受板42に冷熱媒通路25を設置する構成、或いは電磁誘導ヒータを反応容器21周囲若しくは加圧受板42に組み込む構成としてもよい。電磁誘導ヒータを用いる場合には、冷却は空冷とすることが好ましい。
さらに本実施例では、前記加圧受板42の中央部に熱電対等の温度センサ46を内蔵し、該温度センサ46により測定された温度に基づいて、反応終了点を判断するようにしてもよい。この場合、温度センサ46が所定温度になったら一定時間加熱し、その後温度調節手段(空冷を含む)にて反応容器21を冷却し、温度センサ46により所定温度以下となったことを検知した後に反応用加圧シリンダ43と容器押上シリンダ45を下降させ、反応容器21を切り離し、該反応容器21を周回シャトルレール2aに戻す。
【0032】
反応が終了した反応容器21は、C排出ゾーンが開いていることの要求を受けて、引込みシャトルレールレール10を介して該排出ゾーンに入る。
C排出ゾーンでは、製造されたバイオコークスの排出工程を行う。図7及び図8に、C排出ゾーンにおける具体的な装置例を示す。本装置は、引込みシャトルレールレール10の端部に設置されている。床面61上に固定された排出シリンダ51と、該排出シリンダ51により上下方向に駆動される排出ピストン52と、排出するシャトルユニット20の押え板53と、前記排出ピストン52により反応容器21の上方に押し上げられたバイオコークス製品を一側から押し出す押出しシリンダ55と、該押出しシリンダ55と反応容器21を挟んで対向して配置される製品コンベア56と、を備える。
【0033】
このような構成を有する装置によりC排出ゾーンでは、排出シリンダ51により駆動されるピストン52にて、バイオコークス製品を反応容器21より押出し、押出しシリンダ55により製品コンベヤ56上に押出して搬出するようになっている。
製品排出後、反応容器21は空シャトルとして周回シャトルレール2aを周回して、A充填圧縮ゾーンの空状態を検知して呼ばれるまでレール上に待機する。
【0034】
上記したように本実施例によれば、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量を有するバイオコークスを、効率的に大量生産することが可能となる。
また、本実施例では複数の反応容器21を載置した環状搬送装置2を備えるとともに、該搬送装置2の外側若しくは内側に、バイオコークス生産に必要な単位操作を少なくともA充填圧縮ゾーン、B1〜Bn反応ゾーン、C排出ゾーンに分けてこれらを同時に行うようにし、さらにB反応ゾーンを複数設けて反応工程を複数同時進行できるようにしたため、設備数の低減及び時間の短縮化が可能となる。これは、A充填圧縮ゾーンとC排出ゾーンでの単位操作は夫々5分程度であるが、B1〜Bn反応ゾーンの単位操作は加熱20分+冷却15分の35〜50分程度であるので、反応ゾーンを多数有する構成とすることで、操作を同時に行うことができ、時間当たりの生産効率の向上が可能となった。
【0035】
さらに、本実施例では反応容器21の底部をピストン状の押出プレート24に形成することにより、反応ゾーンにて下方から加圧することができ、これにより反応ゾーンの位置合わせの精度が低くても円滑に反応操作が行われることとなる。
また、前記反応容器21の底板(支持枠22)に穴部22aを形成することにより、押出プレート24と容器21の隙間から落ちてくる粕が溜まらないようになっており、装置の不具合を防止できる。
さらにまた、駆動装置が組み込まれた搬送装置2を備えることにより、反応容器21を被駆動式とすることができ、該反応容器21の小型化及び低廉化が可能となる。
【0036】
また、反応容器21及び空シャトル20は、ICチップ29による管理と周回シャトルレール2a上に待機周回することにより必要な操作場所に個別に搬送することができるようになり、次工程待ちの列を作ることがなくなり、操作性が向上した。
さらに、反応ゾーンにて、加圧受板42に熱電対等の温度センサ46を設置して個別に管理することにより、例えば原料充填量が少なく反応時間が少なかった場合や、反応性の違う原料が入った場合にも、個別反応の終了操作が行われるため、反応ゾーンの効率的運用が行え、設備の生産性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本実施例に係るバイオコークス製造装置を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例に係るバイオコークス製造装置の平面図である。
【図2】図1の他の例を示すバイオコークス製造装置の平面図である。
【図3】本実施例の反応容器の側断面図である。
【図4】図3の平面図である。
【図5】本実施例の原料充填ゾーンにおける装置の側断面図である。
【図6】本実施例の反応ゾーンにおける装置の側断面図である。
【図7】製品排出ゾーンにおける装置の側断面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】バイオコークスの物性値を比較する表である。
【符号の説明】
【0039】
1 バイオコークス製造装置
2 環状搬送装置
2a 周回シャトルレール
3〜10 引込みシャトルレール
12 切替シャトルレール
20 シャトルユニット
21 反応容器
23 フランジ部
24 押出プレート
25 冷熱媒通路(温度調節手段)
29 ICチップ
30 ガイド筒
32 原料ホッパ
35 予備加圧シリンダ
36 予備加圧ピストン
42 加圧受板
43 反応用加圧シリンダ
44 反応用加圧ピストン
45 容器押上シリンダ
46 温度センサ(熱電対)
51 排出シリンダ
53 押え板
55 押出しシリンダ
56 製品コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
複数の反応容器が駆動装置を備えた環状搬送装置上を搬送され、前記搬送装置の内周側若しくは外周側に、前記反応容器内にバイオマス粉砕物を充填して予備加圧する充填圧縮ゾーンと、前記予備加圧後のバイオマス粉砕物を前記加圧範囲に加圧した状態で前記温度範囲にて一定時間加熱した後冷却する反応ゾーンと、前記反応終了後のバイオコークス製品を排出する排出ゾーンと、が設けられるとともに、
前記反応ゾーンが複数設けられ、前記環状搬送装置上を搬送される反応容器が、空状態の反応ゾーンを検知して順次送り込まれることを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記反応容器が円筒状に形成され、該反応容器の底部が該容器の内周面に摺接するように設けられた押出プレートと該プレートを支持する底板で形成されるとともに、前記底板には穴部が形成されてなり、
前記反応ゾーンには、前記反応容器の上部開口を封止する天板と、該天板に前記反応容器を押し付ける容器押上シリンダと、前記押出プレートを介して容器内のバイオマス粉砕物を加圧する反応用加圧シリンダと、が設けられていることを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記反応容器が円筒状に形成され、該反応容器の底部が該容器の内周面に摺接するように設けられた押出プレートと該プレートを支持する底板で形成されるとともに、前記反応容器の下方周囲にフランジ部が設けられており、
前記環状搬送装置は、並行して延設され駆動装置が組み込まれた2の搬送レールであり、前記搬送レールに前記反応容器のフランジ部を支持させて該容器を搬送するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−183875(P2009−183875A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26994(P2008−26994)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(501370370)三菱重工環境エンジニアリング株式会社 (175)
【出願人】(000125347)学校法人近畿大学 (389)
【Fターム(参考)】