説明

バイオテクノロジーのハイスループットスクリーニング(HTS)のための複数の自動小型バイオリアクターを備えるモジュールシステム

本発明は、大型バイオリアクター(1リットル以上)と同様の環境パラメータと、現在実現されているマイクロプレート(1〜2ミリリットル)と同様の測定の自動化レベルとを有する複数の培養液を獲得し、且つ維持するための方法と装置に関する。上記環境パラメータは、少なくとも、温度の測定及び制御、攪拌及び通気、pH及び溶解酸素の測定及び制御、及びバイオマス測定を含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、大型バイオリアクター(1リットル以上)と同様の環境パラメータと、現在実現されているマイクロプレート(1〜2ミリリットル)と同様の測定の自動化レベルとを有する複数の培養液を獲得し、且つ維持するための方法と装置に関する。環境特性には、温度測定及び制御、攪拌及び通気、pH及び溶解酸素測定及び制御、並びにバイオマス測定が含まれる。
【0002】
背景技術
新規又は改良有機体、新規物質及び新規プロセスの開発は、ゲノム技術及びプロテオミクス技術、更にはコンビナトリアルケミストリーの使用を基礎とする技術を適用することにより推進されている。このような技術の適用分野は、生体臨床医学、バイオテクノロジー、食品産業及び環境のように多岐に渡っており、この技術の可能性から考えるとこれらの分野は間違いなく近い将来成長するものと考えられる。忘れてはならないのは、既存の有機体に含まれる多くの機能が依然として未発見であることである。このような意味で、妥当な時間内で、高度に技術化され、自動化され、標準化された手段を用いて、異なる細胞及び天然酵素又は修飾酵素の可能性、及び前記技術により開発された異なる分子の治療効果及び/又は毒性効果の両方をスクリーニングする能力を備えるという課題に取り組まなければならない。前記スクリーニングを可能にするシステムはハイスループットスクリーニング(HTS)システムと呼ばれている。
【0003】
バイオテクノロジーにおいては、HTSは異なるレベルで実施する必要があり、既存のシステムは、エンドユーザが要求する特定の必要性に従って異なるレベルの各々に適合される。従って、分子レベルでは、関心は、普通一つの酵素型を用いる複数のアッセイの実施を可能にすることに注がれ、この場合、複数の活性又は代謝産物を、バイオテクノロジー、更に詳細には治療分野における異なる生成物形成段階でモニターする。これとは異なり、細胞レベルでは、活動は、手動及び目視方法を使用して臨床段階の生成物の効果を求めること、或いは細胞成長及び/又は細胞活性に対する複数の化合物の効果に関するアッセイに集中的に注がれる。
【0004】
新規物質及び新規プロセスを識別し、開発する過程で現在使用されている技術は、一方では、小容量の培養要素(1〜10ミリリットル)であり、この要素はプロセスに決定的な変数をin−situで制御することができず、従来の技術を使用するこの要素のモニター動作は、所要時間に関して非常に経済効率が悪いものとなっている。更に、反応容積が小さいために、抽出可能なサンプルの数が少ない。従って、in−situ及びインライン測定システムを用いることにより、この分野に大きな進歩がもたらされる。
【0005】
他方、インライン測定システムの使用は研究室スケール(2〜5リットル)以上のバイオリアクターに限定される。しかしながら、これらのバイオリアクターは購入コスト及び操作コストが高いだけでなく(動物細胞培養を考えるとかなり高い)、確実で専門的な操作が必要であることから、対象となる将来性のある生成物の各々について異なる培養/反応条件を分析するためにバイオリアクターバッテリーを使用することは難しい。従って、バイオリアクター測定及び制御機能を小型の反応/培養システムの拡張性と組み合わせるには技術的に解決すべき問題があると考えられる。この問題こそ、本特許が解決しようとするものである。
【0006】
生物活性を有する新規物質又はバイオテクノロジープロセスを開発する初期の段階では、例えば媒体に溶解する酸素濃度、pH、温度又はイオン強度のようなパラメータの設定が特に注目される。アッセイ中にこれらパラメータの値及び範囲が明確でない場合、周囲条件を再現することはほとんど不可能で、後続の開発段階への進行はほとんど実現しない。この装置が基礎とするコンセプトの魅力は、最終プロセス条件をHTSにおいて決定することができることである。
【0007】
市場に出ている装置に関する分析から、設計及び容積に関して本発明による装置と大きく類似する製品は、適用分野としてコンビナトリアルケミストリーのスキームによる化合物合成が考えられるような、異なるバイアルを備えた装置であることが分かった。しかしながらこの装置の設計は、前記バイアルをバイオリアクターとして使用する目的に適っていない。
【0008】
化学分野に加えて、医学分野にも本発明による装置に類似する製品があるが、この場合、類似しているのは設計というよりはその機能である。このように、病院関連分野には、1ウェル又は6ウェル培養プレート(培養実験室での代表的な素子)を基本とする装置が存在し、これらの培養プレートは特定の組織試料の培養を維持するために使用され、この維持操作は、組織を入れた培養ウェル内を媒体で継続的に潅流することにより行なわれる。しかしながら、前記プレートは、温度、湿度、及び大気組成条件を維持するために非常に大きな設備(インキュベータ)を必要とし、更にこれらのプレートには培養条件を管理するインラインモニターシステムがない。
【0009】
本発明の概要
第1の態様によれば、本発明は、大型バイオリアクターにより得られる条件と同等の制御された条件で、同時且つ自動的に多数の培養を実施する小容積の装置に関し、本装置は、
プラスチック材料又は他の透明材料により作製される少なくとも一つのプレートであって、それぞれが環境、他の小型バイオリアクター及び共通恒温槽に対してシールされた、無菌条件の下で培養を行なう多数の小型バイオリアクターを含み、各小型バイオリアクターは、バイオリアクターの内容物を均質にすることができる個別の攪拌部材、及び充填、播種、ガス交換、液交換及びパラメータ測定を可能にする無菌アクセスポイントを含むプレートを備えており、
本装置は少なくとも一つのプレートを収容するように構成され、プレートは前記装置の少なくとも一部の開口を通して装置に収納され、前記装置は、恒温槽と制御された熱交換を行なう手段と、各攪拌部材にエネルギーを伝達する手段と、無菌濾過器を通してガス交換を行なう手段と、培養パラメータを非侵襲的にモニター及び/又は制御する手段とを含む
ことを特徴とする。
【0010】
一の好適な実施形態では、各プレートは更に恒温槽中央攪拌器を含む。
好適には、プレートは、多角形構造の内部に多くの個別の小型バイオリアクターを含み、該構造の中心領域によって複数の前記小型バイオリアクターに対する共通の温度調整が容易になる。
プレート内の複数のウェルの形状構成の設計によって、全体の温度を確実に集中制御することができるので、全てのバイオリアクターの熱を確実に均一にすることができる。複数のプレートを横方向に接続する構成が多角形であることにより可能で、これによって一般の装置に適合するような、小型バイオリアクターから成るマクロアセンブリを形成することができ、培養パラメータを個々のパラメータにすることも、グループのパラメータにすることもできる。
【0011】
一の実施形態によれば、装置はコンピュータシステムに、専用接続又はデータ通信ネットワークのいずれかを通して接続される。
従って本システムを局所的に、又は離れた位置から無制限に拡張することができ、これにより、HTSに用いる多数の培養を制御することができる。
【0012】
一の実施形態では、各小型バイオリアクターはチューブを含む採光部を有する上部カバーを備え、このチューブが小型バイオリアクター内部を貫通し、チューブの下端が前記小型バイオリアクターに含まれる液体に浸かる構成である。
これにより、液体の高さ変動及び凝縮が、前記採光部を透過する形で行われる光測定に影響することを防止することができる。
【0013】
光センサ及び光源は、採光部、又は前記採光部に対向するプレート底部、及び/又は容器の側面上に配置することができる。
前記センサの目的は、小型バイオリアクター内容物の吸収、反射、散乱、又は蛍光発光を測定することである。
【0014】
また、光ファイバ又は光導体を、採光部に対向するプレート底部の採光部内部、及び/又は容器の側面上に配置することができる。
光ファイバの目的は、小型バイオリアクター内容物の吸収、反射、散乱、又は蛍光発光を離れた位置から測定することである。
【0015】
一実施形態では、追加の採光部が上部カバーに嵌め込まれ、その端部が液体に浸かる構成であり、前記端部には濾過器又は半透過膜が設けられる。
この追加の採光部によって、無菌バリアを損なわずにバイオリアクターの外部から小型バイオリアクター内容物に関する測定を実施することができる。
【0016】
他の実施形態では、追加の採光部が上部カバーに嵌め込まれ、その端部が液体に浸かる構成であり、前記端部はセンサ又はマイクロセンサを含む。
センサ又はマイクロセンサによって、バイオリアクターの外部から行なう電気接続によって小型バイオリアクター内容物に関する測定を実施することができる。
【0017】
一実施形態によれば、装置とプレートの恒温槽との間の熱交換が、プレートの外側表面の一部と接触する熱抵抗により行われる。
別の構成では、装置とプレートの恒温槽との間の熱交換が、プレートの外側表面の一部と接触するペルチェセルにより行われる。
【0018】
更に別の実施形態によれば、装置とプレートの恒温槽との間の熱交換は、前記バスに浸かる熱抵抗により行われる。
この場合、抵抗はプレート自体の一部とすることができる。
【0019】
他の実施形態では、装置とプレートのバスとの間の熱交換を、外部で実施される無線周波数加熱によって行うことができる。
装置は、恒温槽に浸かる一つの温度プローブを備えることができる。
このプローブによって、前記バスの温度を測定し、当該温度を制御することができる。
【0020】
装置は更に、一又は複数の小型バイオリアクターの内容物に浸かる複数の温度プローブを備えることができる。
装置は更に、追加の小型バイオリアクターを備えることができ、このバイオリアクターは残りの小型バイオリアクターと同じように、温度プローブが浸かる恒温槽により取り囲まれる。
このプローブによって、バスの温度を測定することが可能になり、追加の小型バイオリアクターは形状及びサイズが他の小型バイオリアクターと異なってよく、殺菌状態が損なわれないという利点を有する。
【0021】
一実施形態では、装置は、小型バイオリアクターの内容物の各攪拌部材の下方に位置するステータを備え、このステータによってエネルギーが前記攪拌部材に伝達される。
別の構成では、装置は、小型バイオリアクターの内容物の各攪拌部材の下方に位置する複数の回転磁石を備え、これらの回転磁石によってエネルギーが前記攪拌部材に伝達され、前記磁石は、共通の電気モータによって作動する機械駆動システムによって回転する。更に別の変形例によれば、これら磁石は個別の電気モータにより回転する。
【0022】
好適には、装置は、恒温槽の中央攪拌器の下方に位置するステータ又は回転磁石を備え、このステータ又は回転磁石によってエネルギーが前記攪拌器に伝達される。
一実施形態では、装置は、小型バイオリアクターに接続する駆動装置により、共通恒温槽攪拌器を回転させる手段を備える。
好適には、各小型バイオリアクターの容積は5〜25ミリリットルである。
【0023】
一実施形態では、複数のプレートは少なくとも一部が使い捨て可能であり、プラスチック材料により作製される基台、及びプラスチック材料又は他の透明材料により作製される少なくとも一つのカバーにより形成される。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は、小容積で、且つ大型バイオリアクターにより得られる条件と同等の制御された条件で、同時且つ自動的に多数の培養を実施する方法に関し、本方法は、
プラスチック材料又は別の透明材料により作製される一つのプレートに少なくとも設けられる多数の小型バイオリアクターにおいて無菌状態で培養を実施するステップであって、このとき、これら前記小型バイオリアクターの各々は、環境、残りの小型バイオリアクター、及び共通恒温槽に対してシールされ、且つ各小型バイオリアクターは、バイオリアクターの内容物を均質にすることができる個別の攪拌部材、及び充填、播種、ガス交換、液交換及びパラメータ測定を可能にする無菌アクセスポイントを含むステップ、
恒温槽との制御された熱交換を行なう手段と、個別の攪拌部材にエネルギーを伝達する手段と、無菌濾過器を通してガス交換を行なう手段と、培養パラメータを非侵襲的にモニター及び/又は制御する手段とを備える装置に、少なくとも一つのプレートを収納するステップ、及び
培養パラメータを非侵襲的にモニター、/又は制御するステップ
を含むことを特徴とする。
【実施例】
【0025】
前述の説明に対する理解を一層深めるために、本発明の特定の実施形態を模式的且つ本発明を制限しない実施例として示す添付図面を用いて以下に開示する。
【0026】
添付図面に示す本発明の一実施形態による装置は、異なる2つの部分を備える。
(A)閉じた容器1はプラスチック材料により作製されており(以後、プレートと記載する)、図1a、1b、2a及び2bに示す特徴を有し、一定数の中程度のサイズのセル又はウェル2(容積5〜25ミリリットル、以後、小型バイオリアクターと記載する)を収容し、これらのバイオリアクターの内の一つを図3a及び3bに詳細に示している。プレート1は単一回使用のプレートとすることができ、無菌環境の下で培養液を満たした後は、残りのプロセスに亘り非無菌環境下で取り扱い、且つ搬送することができる。
(B)図5a、5b、7a及び7bに示す測定装置又はシステム3は一つ以上のプレート1を収容し、小型バイオリアクター2に共通又は個別の環境条件を提供する。装置3は測定システムとしても機能し、各タイプの生物学的培養物に適切なパラメータを自動的に追跡及び制御することができ、さらにプレート1内の無菌バリアを維持することができる。装置3は、多くのアッセイを実施、制御、及びモニターするためにコンピュータネットワークに接続することによって無制限に複製することができ、この場合、その反応/成長条件を様々に設定し、必要に応じて小型バイオリアクター群2又はプレート群1の条件を繰り返す。
装置の種々の部品及びその動作について以下に詳述する。
【0027】
プレートに関する説明
図1a及び1bに示すように、プレート1は6個の小型バイオリアクター2及び一つの中央攪拌システム4を含むことができる。
プレート1が中心に関して対称な構成を有することにより、単一の中央ヒータ5によって共通恒温槽6を加熱し、共通恒温槽を前記攪拌システム4によって攪拌することにより、複数のウェル2を同じ温度に維持することができることに注目されたい。前記恒温槽6は栓7を通して充填され、この栓は上部カバー(図示せず)にも配置できる。
【0028】
図1aでは、プレートの外周が円形であり、図1bに示す実施形態の変形例では、プレート外周は六角形である。この外周は別の形状でもよく、多角形にすると、幾つかのプレート1を横方向にぴったりと並べて複数のウェルがコンパクトに収まる構成のアセンブリ2を形成することができる(6ウェルの六角形プレートの場合は42個のプレートから成るアセンブリ)。
【0029】
図2aの縦断面図に示すように、プレート1は構造物により支持された中央攪拌システム4を有する。図には、側面を恒温槽6、中央攪拌器4、並びに上部アクセスポート及び下部アクセスポート8によって取り囲まれた小型バイオリアクター又はウェル2が示されており、この場合、前記両アクセスポートにより、恒温槽6に対する熱交換が行われ、中央攪拌器4にエネルギーが供給される。この熱交換動作に関しては以下に更に説明する。
図2bに示す一の変形例では、攪拌システム4はプレート1の底面に載置され、アクセスポート8は上部に一つだけ設けられる。
【0030】
図3a及び3bは、複数のウェル又は小型バイオリアクター2の内の一つを詳細に示す平面図及び縦断面図である。
小型バイオリアクター2は採光部21を備え、この採光部によって、採光部の下方に位置する窓22の透過、又は窓による反射により測定を行なうことができる。この窓は必ず液体23の高さよりも低い位置で液体に浸かるように維持されるので、光路長が液体の高さによって変わるということがない。
【0031】
同様に、小型バイオリアクター2には、ガス流入管及び排出管24、充填、播種、及び最終的な液体の供給と排出を行うための隔膜25、最初は開口されておらず、非光学的プローブ又はマイクロプローブの追加を可能にする採光部26、並びに磁気攪拌用のロータ27が設けられている。
つまり、プレートは、上述のように、一定数(例えば6個)の小型バイオリアクターを収容しており、ここで前記小型バイオリアクターの各々は、環境、残りの小型バイオリアクター、並びにこれらの小型バイオリアクターの共通恒温槽に対してシールされている。プレート内部のウェルがプレート中心に関して対称であるので、全体の温度制御を確実に中心に集中することができ、従って各小型バイオリアクターを確実に熱的に均一にすることができる。各小型バイオリアクターは個別の攪拌部材を備え、よって小型バイオリアクターの内容物を均質にすることができる。前記素子に動きを与えるために必要なエネルギーは接触の無い形で外部から供給される。小型バイオリアクターには更に、ガスを流入させ、流出させるアクセスポートが設けられ、これらのアクセスポートによって、培養液に適切な酸素分圧を供給するだけでなく、必要に応じて他のガスを供給することができる。前記アクセスポートの無菌状態は、前記アクセスポートに接続される濾過器により保証される。充填、播種、及び必要に応じた小型バイオリアクターからのサンプル回収は、隔膜タイプの閉鎖による第3のポートにより行なわれる。連続プロセス又はフィードバックプロセスにおいて、前記隔膜を利用してカニューレを挿入し、成長段階に亘り液体の供給及び排出を行うことができる。
【0032】
培養パラメータ測定はプレートの無菌バリアを損なうことなく外部から実施することができる。ここで考えられる可能な測定方法は以下のようなものである。
−小型バイオリアクターの壁から、又は小型バイオリアクターの透明部分から、各小型バイオリアクターの内容物に光学的に接続する。
−殺菌プロセスの前に、小型バイオリアクター内部に設けられるセンサ又はマイクロセンサ外部コンタクトに電気的に接続する。
−無菌バリアを維持する膜を通してバイオリアクター内容物とイオン交換する液体に対して外部から測定を行なう。
【0033】
小型バイオリアクターの外部に対応するプレートの容積には、必ずしも無菌ではない液体(例えば水)が充填される。このような液体の攪拌は、バイオリアクター内容物の攪拌と同様にして外部から行なう。前記液体に、やはり外部から、熱を加えるか、又は熱を取り除き、恒温槽及びウェル内容物の熱を均一にする。
プレートの全体、又は培養媒体に接触するプレートの少なくとも一部は、無菌化が済んだ状態でバッグの内部に収納するか又は区画内に配置され、このような構成により使い捨て可能な消耗品として提供される。プレートの充填、播種、及び濾過器への接続は、層流チャンバー以外の治具を必要とせず、無菌領域において行なわれるのはこれらの操作だけである。
【0034】
装置に関する説明
装置3の内部に上に記載したように収容されるプレート1の縦断面図及び平面図を図4a及び4bに示す。この装置はプレートへの供給を行なうサブシステム(エネルギー及び熱をプレートだけでなく測定システム及び制御システムにも供給する)を有し、外箱9に収容される。
【0035】
外箱9は、装置3の種々の部品及び小型バイオリアクター2のプレート1だけでなく、データ制御兼取得システム(図4a,4bには示さず)を収容するが、このシステムは箱9の外側に配置し、ケーブルを介して箱に接続することもできる。
外箱9のカバーは閉じるので、プレート1の種々のサブシステムの位置合わせ、及び接続が容易になる。
【0036】
図4a、4bの種々の斜線パターンによって装置3のサブシステムを識別することができる。これらのサブシステムは、プレート1の恒温槽6との熱交換を可能にし、また前記恒温槽の中央攪拌器4及び各ウェル2の攪拌器27、更には光センサ(プレート1及び採光部21の下部)又は他のタイプのマイクロセンサのセンサへのエネルギー供給を可能にする。図4bは、ウェルがプレートの中心に対称に配置されていることにより、異なるサブシステムが円環状にうまく間隔を空けて配置されている様子を示す。
【0037】
装置3の外観が図5aに一の実施形態に可能な変形例として示されている。この装置は基台31を備え、この基台にプレート1が収容され(図5b)、カバー32によって閉じられる。
【0038】
図6の平面図に示すように、装置は、多角形の外周を有する複数のプレート1を収容するように設計することもできる。この図は、7個のプレート1(合計42個の小型バイオリアクター)が単一装置の内部に配置されている様子を示している。装置の外周はこの場合、六角形3’又は円形3’’とすることができる。
一般的に、多角形外周を有するm個のプレート1において、プレートの各々がn個のウェルを有することにより、n×m個のウェル2を有するマクロプレートを形成することができる。
各プレート1のウェル2の温度は同じであるので、このシステムで実験を行うと、それぞれ異なる温度でm回の実験が行われ、その際各温度において実験がn回繰り返されたことになる。
【0039】
図7a及び7bは図5a及び5bに類似し、それぞれが6個のウェル2を有する7個のプレート1を備える装置3の一実施形態を示している。
つまり、外側の測定装置又はシステムは一つ以上のプレートを収容し、これらのプレートは前記装置の一つ以上の部分に設けられる開口を通して収容される。この装置の機能は次の通りである。
−恒温槽との熱交換を制御された状態で行ない、同時にn個の小型バイオリアクターに対する温度調整を同時に行なう。
−n個の独立した攪拌器にエネルギーを供給する。
−無菌濾過器を通してガス交換を行ない、又は液体の内部に入り込んだチューブにより又はヘッドを通して培養通気を行なう。各ウェルの通気は個別に制御することができる。
−培養パラメータを非侵襲的にモニター及び/又は制御する。一例として、pH、光密度(細胞濃度)、及び各ウェルに別個に溶解している酸素が挙げられる。
−液体の供給及び排出を可能にする。
−追加プローブ及びバイオセンサの設置を可能にする。
−特定用途向けにシステムをカスタマイズすることができる。
【0040】
制御及びオペレーティングシステムとの接続
図8aでは、単一プレート又はm個のプレート群を含む装置3は、サブシステム設定及び制御パラメータを管理し、測定データを回収するコンピュータ又は制御システム10に接続されている。装置とコンピュータ又はシステムとの間の接続は、データ送信標準プロトコルに適合するケーブル11か、又はデータ伝送及び信号伝送の両方を考慮した顧客専用接続を使用することにより行なわれる。
図8bでは、プレート又はプレート群の任意の組み合わせを含む一連の装置3が、サブシステム設定及び制御パラメータを管理し、測定データを回収するコンピュータ又は制御システム10に接続されている。これらの装置とコンピュータ又はシステムとの間の接続は、複数のシステムをデータ通信ネットワーク13に接続するケーブル12により行なわれ、この場合、外部ネットワーク15との接続14を介してリモートデバイス及び/又はコンピュータを組み入れることができる。
【0041】
つまり、装置は、専用接続線又はデータ通信ネットワークを介してコンピュータシステムに接続することができる。制御ソフトウェアによって、HTSシステムの適用に必要な多数の培養を自動制御するのに十分な数の装置を接続することができる。
バイオリアクターアセンブリ全体の管理システムは、各ユニットに対する制御命令を固定し、各バイオリアクターのパラメータの変遷及び加えられる可能性のある刺激に対するバイオリアクターの応答をモニターする。ここで、プラスチック片からなる小容量の小型バイオリアクターのバッテリを備え、マイクロプローブが取り付けられた装置であって、生物工学的プロセス及び製品の開発において複数の試験を同時に実施するための装置が有する機能性及び汎用性の応用例を提案する。一の重要な態様は、装置がモジュールタイプであること、すなわち、最終用途において実施する必要のあるテストの頻度及び回数に応じて、n個のバイオリアクターを含むプレートの使用個数をm倍に増やすことができることである。
【0042】
従って、遺伝子修飾により生成されるか、又は異なる物質により誘発される生物活性及び酵素活性自体の測定は、研究対象の情報収集及び評価、並びに種々の開発物質又はプロセスを産業レベルで適用するための活動、資産、及び可能性に関して対応する相関性を確立するために非常に重要である。本発明による装置で培養物追跡を集中して行うのに更に関連性の強い生物学的変数は、細胞濃度の測定(光吸収又は光屈折システムによる)及び細胞活性の測定(酸素消費量の測定による)であることに注目されたい。両変数の測定システムは、成長促進効果、又はそれとは逆の培養物成長に対する毒性効果のいずれかの生理的効果を有する物質を添加することにより、培養下にある有機体の生理化学環境、並びに該環境の乱れの、種々に変化する条件下における培養物の応答を追跡することを可能にする。同様に、システムは、制御された種々の条件下においてシステム内で収集された細胞、及びインビトロ条件下の酵素又は多酵素系の両方により生じる酵素触媒反応を追跡することができる。更に、システムは、最適条件(pH、温度、溶解酸素濃度、攪拌、導電率、及び浸透圧)で培養物を成長させるのに必要なこれらの測定素子及び制御素子を全て含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】a及びbは、6個の小型バイオリアクターを含む本発明によるプレートの実施形態の平面図であり、外周形状はそれぞれ円形及び六角形である。
【図2】a及びbは、6個の小型バイオリアクター、及び構造によって支持されるか、又は底部に配置された中央攪拌システムを含むプレートの縦断面図である。
【図3】a及びbはそれぞれ、ウェル又は小型バイオリアクターの一つの平面図及び断面図である。
【図4】a及びbはそれぞれ、本発明の一実施形態による装置の内部に装着されるプレートの、縦断面図(4a)及び平面図である。
【図5】a及びbはそれぞれ、カバーを閉じた状態、及びカバーを外した状態の、一つのプレートを収容する装置の一実施形態の斜視図である。
【図6】合計42個の小型バイオリアクターを備える7個のプレートを収容する本発明の更に別の実施形態による装置を示す。
【図7】a及びbは、図6の装置の、図5a及び5bに類似する図である。
【図8】a及びbは、装置をそれぞれコンピュータ、及びコンピュータネットワークに接続する配線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型バイオリアクターにより得られる条件と同等の制御された条件で、同時且つ自動的に多数の培養を実施する小容積の装置であって、
プラスチック材料又は他の透明材料により作製される少なくとも一つのプレート(1)であって、各々が、環境、他の小型バイオリアクター(2)、及び共通恒温槽(6)に対してシールされた、無菌条件の下で培養を行う多数の小型バイオリアクター(2)を含み、各小型バイオリアクター(2)は、バイオリアクターの内容物を均質にすることができる個別の攪拌部材(27)、及び充填、播種、ガス交換、液交換及びパラメータ測定を可能にする無菌アクセスポイント(21,24,25,26)を含むプレートを備えており、
装置(3)は少なくとも1つのプレート(1)を収容するように構成され、プレート(1)は前記装置(3)の少なくとも一部の開口を通して装置に装着され、前記装置(3)は、恒温槽(6)と制御された熱交換を行なう手段と、個別の攪拌部材(27)にエネルギーを伝達する手段と、無菌濾過器を通してガス交換を行なう手段と、培養パラメータを非侵襲的にモニター及び/又は制御する手段と、を含む
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
各プレート(1)が更に恒温槽中央攪拌器(4)を含むことを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
プレート(1)が、中心領域を有する多角形構造の内部に多数の個別の小型バイオリアクター(2)を含み、この中心領域によって前記多数の小型バイオリアクター(2)に対する共通の温度調整が容易になることを特徴とする、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
装置(3)はコンピュータシステム(10,15)に、専用接続又はデータ通信ネットワークのいずれかを介して接続されることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
各小型バイオリアクター(2)はチューブを含む採光部(21)を有する上部カバーを含み、このチューブは、チューブの下端(22)が前記小型バイオリアクター(2)に収容される液体(23)に浸かるように小型バイオリアクターの内部に挿入されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
光センサ及び光源が採光部(21)内部、前記採光部(21)に対向するプレート(1)底部及び/又は容器の側面上に配置されることを特徴とする、請求項5記載の装置。
【請求項7】
光ファイバ又は光導体が採光部(21)内部、前記採光部(21)に対向するプレート(1)の底部及び/又は容器の側面上に配置されることを特徴とする、請求項5又は6記載の装置。
【請求項8】
追加の採光部(26)が、前記採光部の端部が液体(23)に浸かるように上部カバーを介して嵌め込まれ、前記端部には濾過器又は半透過膜が設けられることを特徴とする、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
追加の採光部(26)が、前記採光部の端部が液体(23)に浸かるように上部カバーを介して嵌め込まれ、前記端部はセンサ又はマイクロセンサを含むことを特徴とする、請求項5ないし8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
装置(3)とプレート(1)の恒温槽(6)との熱交換が、プレートの外側表面の一部と接触する熱抵抗を利用して行われることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
装置(3)とプレート(1)の恒温槽(6)との熱交換が、プレート(1)の外側表面の一部と接触するペルチェセルを利用して行われることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
装置(3)とプレート(1)の恒温槽(6)との熱交換が、前記恒温槽(6)に浸かる熱抵抗を利用して行われることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
装置(3)とプレート(1)の恒温槽(6)との熱交換が、外部から実施される無線周波数加熱によって行われることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
恒温槽(6)に浸かる一つの温度プローブを備えることを特徴とする、請求項1ないし13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
小型バイオリアクター(2)の一つ又は複数の内容物(23)に浸かる温度プローブを備えることを特徴とする、請求項1ないし14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
更に別の小型バイオリアクターを備え、このバイオリアクターが、残りの小型バイオリアクター(2)と同じように、温度プローブが浸かる恒温槽(6)により取り囲まれることを特徴とする、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
小型バイオリアクター(2)の内容物の各個別の攪拌部材(27)の下方に位置するステータを備え、このステータによってエネルギーが前記攪拌部材(27)に伝達されることを特徴とする、請求項1ないし16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
小型バイオリアクター(2)の内容物の各個別の攪拌部材(27)の下方に位置する複数の回転磁石を備え、これらの回転磁石によってエネルギーが前記攪拌部材(27)に伝達され、前記磁石は共通の電気モータによって作動する機械駆動システムによって回転することを特徴とする、請求項1ないし16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
小型バイオリアクター(2)の内容物の各個別の攪拌部材(27)の下方に位置する複数の回転磁石を備え、これらの回転磁石によってエネルギーが前記攪拌部材(27)に伝達され、前記磁石は個別の電気モータによって回転することを特徴とする、請求項1ないし16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
恒温槽(6)の中央攪拌器(4)の下方に位置するステータ又は回転磁石を備え、このステータ又は回転磁石は、このステータ又は回転磁石によってエネルギーが前記攪拌器(4)に伝達されることを特徴とする、請求項2ないし19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
共通の恒温槽(6)の攪拌器(4)が、小型バイオリアクター(2)に連結配置される駆動装置により回転することを特徴とする、請求項2又は請求項17ないし19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
各小型バイオリアクター(2)の容積が5〜25ミリリットルであることを特徴とする、請求項1ないし21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
複数のプレート(1)の少なくとも一部が使い捨て可能であることを特徴とする、請求項1ないし22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
複数のプレート(1)は、プラスチック材料により作製される基台、及びプラスチック材料又は他の透明材料により作製される少なくとも一つのカバーにより形成されることを特徴とする、請求項1ないし23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
小容積で、且つ大型バイオリアクターにより得られる条件と同等の制御された条件で、同時且つ自動的に多数の培養を実施する方法であって、
プラスチック材料又は別の透明材料により作製される少なくとも一つのプレート(1)に少なくとも設けられる多数の小型バイオリアクター(2)において無菌状態で培養を実施するステップであって、このとき、これらの前記小型バイオリアクター(2)の各々は、環境、残りの小型バイオリアクター(2)、及び共通恒温槽(6)に対してシールされており、且つ各小型バイオリアクター(2)は、バイオリアクターの内容物を均質にすることができる個別の攪拌部材(27)と、充填、播種、ガス交換、液交換及びパラメータ測定を可能にする無菌アクセスポイント(21,24,25,26)を含むステップ、
恒温槽(6)との制御された熱交換を行なう手段と、個別の攪拌部材(27)にエネルギーを伝達する手段と、無菌濾過器を通してガス交換を行なう手段と、培養パラメータを非侵襲的にモニター及び/又は制御する手段とを備える装置(3)に少なくとも一つのプレート(1)を装着するステップ、及び
培養パラメータを非侵襲的にモニター及び/又は制御するステップ
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−507823(P2006−507823A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−554567(P2004−554567)
【出願日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【国際出願番号】PCT/ES2003/000607
【国際公開番号】WO2004/048510
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505201124)ユニヴェルシタート アウトノーマ デ バルセロナ (1)
【出願人】(505201135)ユニヴェルシタート ポリテクニカ デ カタルニャ (1)
【Fターム(参考)】