バイオマスからの液体燃料製造装置
【課題】加圧工程、圧縮工程を含まず、また、熱交換器不要で最低限度の窒素しか使用せず、更に未反応物を同装置内で再度循環させ無駄なく効率的に再利用する構成にしたバイオマスからの液体燃料製造装置の提供。
【解決手段】バイオマスを一定量保持して加熱体で加熱しガス化する複数のガス化部2を有し、ガス精製部4でガス化部2で発生したバイオマスガスから不純物質を除去する。ガス精製部4は2つ有し切り替えて使用する。精製されたバイオマス精製ガスを液体燃料製造部5で液体化してバイオマス液体燃料原液を製造し、気液分離部6でバイオマス液体燃料、水および軽質炭化水素に分離する。分離されたバイオマス液体燃料を減圧回収部7で減圧して回収し製品とする。ガス化されない未反応物を燃焼させ、また液体化されないガスを同装置内で再液化する。
【解決手段】バイオマスを一定量保持して加熱体で加熱しガス化する複数のガス化部2を有し、ガス精製部4でガス化部2で発生したバイオマスガスから不純物質を除去する。ガス精製部4は2つ有し切り替えて使用する。精製されたバイオマス精製ガスを液体燃料製造部5で液体化してバイオマス液体燃料原液を製造し、気液分離部6でバイオマス液体燃料、水および軽質炭化水素に分離する。分離されたバイオマス液体燃料を減圧回収部7で減圧して回収し製品とする。ガス化されない未反応物を燃焼させ、また液体化されないガスを同装置内で再液化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスをガス化して液体燃料を製造する装置に関する。更に詳しくは、バイオマス、例えば未利用樹、間伐材、製材残材、流木材、剪定材などの木質系バイオマス、建築廃材、下水汚泥、鶏糞、牛糞、RDFなどの廃棄物系バイオマス、雑草、牧草、サトウキビなどの草本系バイオマスを原料として、これを効率的にガス化し液体化して液体燃料を得るためのバイオマスからの液体燃料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体燃料対象のバイオマスとは一般的に、エネルギー源として利用することのできる生物体を指し、太陽エネルギーを利用し、生成される再生可能なエネルギーの一つである。また、バイオマスはエネルギーに転換可能な唯一の再生可能な有機物である。
【0003】
現在、我々が使用している1次エネルギーの30%以上が石油であり、その40%以上は輸送用液体燃料である。したがって液体燃料を、再生可能なバイオマスから製造することは大変有用である。バイオマスから液体燃料を製造することは、いくつかの技術の組み合わせで実現可能であり、従来から行われている。その中で、バイオマスをガス化し、COと水素を得て、触媒反応により液体燃料を製造することも行われており、その技術が注目されている。次に、従来行われている液体燃料を製造するための技術について説明する。
【0004】
バイオマスは、木質系、廃棄物系および草本系と多種多様な形態のものがある。一方で、液体燃料製造工程ではCOと水素が必要となる。ここで、ガス化を経由してバイオマスから液体燃料を製造するプロセスは、バイオマスの種類に依らずCOと水素を得られる点で、他のプロセスよりも簡素化できる可能性がある。
バイオマスをガス化する場合、ガス収率、タールの生成量はガス化炉形式、ガス化剤、反応条件に大きく依存している。
【0005】
ガス化炉形式は大きく分けて、固定床、流動床、噴流床がある。固定床は構造がシンプルで装置コストが安く、小規模向きである。ダウンドラフトとアップドラフトを比較すると、ダウンドラフトはアップドラフトよりもタール生成量が低い。流動床は中規模向きであるが、ガス化炉内のベッドの流動化を保つために、最小流動化速度の3倍以上に相当するプロセスフローガスを供給する必要があり、結果的にガス化ガス中には高濃度に窒素が含まれる。
【0006】
また、タールの生成量も高い。噴流床は規模に依存せず、タールの生成量が低いという利点があるが、ガス化原料を粉砕する動力が必要であり、ガス化炉内で粉体を浮遊させるプロセスフローガスが必要であるため、流動床同様、ガス化ガス中には高濃度の窒素が含まれる。
【0007】
また、代表的なガス化剤として、空気、二酸化炭素、水蒸気がある。空気を用いる場合は、外熱が不要であり、ガス化速度も速く、ガス収率も高い利点があるが、ガス化ガス中に窒素が混入する。また、酸素を用いる場合は同様の利点があるが、空気から窒素を分離するコストが高い。
【0008】
二酸化炭素を用いる場合は、ガス化ガス中に窒素が混入しない、後段に液体燃料製造工程が続く場合、ガス化ガスの冷却工程が不要である利点があるが、外熱が必要で、反応速度が遅い。さらに、後段に液体燃料製造工程が続く場合、水素/CO比が低いため、液体燃料の収率が低くなる。水蒸気を用いる場合は、ガス化ガス中にプロセスフローガスとしての窒素の混入が低く、水素/CO比の高いガスが得られる。しかし、外熱が必要であり、過剰な水蒸気の使用はガス化ガス中の水蒸気分率が高くなるため、水として除去する冷却工程が必要となる。
【0009】
ガス精製工程では、不純物を溶媒、特に水に溶解させる湿式法、水を使わない乾式法に大別できる。一般的には湿式法が用いられている。しかし、処理設備が巨大であること、さらに廃水処理のコストの点から、全体のプロセスのイニシャルコストおよびランニングコストを増大させている。
【0010】
乾式法に関しては、圧力が大気圧、温度が130℃以下でガス化ガスに含まれるタール、粒子状物質を除去する方法が報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。これはサイクロンを用いて集塵する方法や砂や活性炭といった吸着剤を用いた方法である。湿式法および乾式法のいずれの除去方法も、精製ガス温度が130℃以下となるため、後段に続くプロセスが、精製ガス温度以上での反応温度が必要な場合、再加熱するための工程が必要となる。
【0011】
また、これまでのガス精製方法は、大気圧付近で行われるため、後段のプロセスが液体燃料製造および膜分離など、加圧条件下で操業する場合は、ガスを圧縮する動力の投入が必要となる。それに従い、圧縮機が必要であり、プロセスのイニシャルコストの増大をもたらしている。また、ガス化ガスおよび精製後のガスの熱を回収する熱交換器を備えているものもあるが、熱交換器設置のためのイニシャルコストが増加する。
【0012】
ガス化を経由するバイオマスからの液体燃料製造プロセスにおいては、有機系廃棄物をガス化し、ガス精製後、メタノールを製造する装置も発案されている。COと水素から液体燃料を製造する場合、平衡収率は数メガパスカル程度の加圧条件下が望ましい。しかし、従来の技術は圧力条件が限定されておらず、常圧の条件下では、高いメタノールを得るのが困難である。又、ガス化ガス及び精製後のガスの熱を回収する熱交換器を備えているものもあるが、熱交換器設置のためのイニシャルコストが増加する。さらに、精製ガスを昇圧する動力は、プロセスに投入するエネルギーの増大をもたらす。したがって、ブースタ装置設置のためイニシャルコストも増加する。
【0013】
次に本発明に関わる具体的な従来例について説明する。バイオマスを燃焼させてガス化する技術においては、例えば酸素ガスを有する部分燃焼用ガスとバイオマスとを反応させ、バイオマスを部分燃焼させた後に、水蒸気を有するガス化用ガスと反応させバイオマスをガス化させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0014】
又、バイオマスを燃焼させるに際し、相反するバイオマスの発熱反応とバイオマスの吸熱反応とをそれぞれ分離させた燃焼空間中とガス化空間中とにおいて、それぞれ行うようにした技術も開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0015】
圧縮精製する技術としては、例えば圧力スウィング吸着精製装置に適用され、ガスの一部を昇圧ガスの残部と膜分離精製装置で精製された後圧縮機により昇圧されたガスを導入し精製する技術が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0016】
メタノールを製造する技術においては、バイオマスをガス化して得られたガスを冷却してメタノール合成し、熱交換手段により外部から供給された水と熱交換して高温水蒸気を発生させ、これを精製してメタノール燃料を製造する技術が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0017】
又、バイオマスをガス化させるに際し、生成ガスに太陽光発電設備や風力発電設備で発電した電力により、水を水電解装置で電気分解し、生成ガス中の水素量を一酸化炭素量に対し2倍以上になるように水素ガスを供給しメタノールを製造する技術が知られている(例えば特許文献5参照)。
【0018】
更に、バイオマスのガス化によって得られた水素と一酸化炭素を含むガスをガスタンクに貯蔵し、加圧ポンプで0.5〜5.0MPaに加圧した後、触媒を充填したメタノール合成部で生成したメタノールガスを冷却しメタノールを得る技術も知られている(例えば特許文献6参照)。
【0019】
バイオマスをガス化する一連の装置を移動可能に構成した技術として、例えば粉砕されたバイオマスを一時貯蔵する工程の構成機器を搭載した移動車と、バイオマスをガス化した精製ガスの製造に伴う工程の構成機器を搭載した移動車として構成されたものが知られている(例えば特許文献7参照)。
【0020】
さらにチャーを燃焼させる技術として、ガス化の触媒として粘土を使用するものであるが、チャーを燃焼させてバイオマスを補助的に加熱しガス化を促進させる技術が開示され、また、一酸化炭素及び水素を含むバイオマスガスを必要に応じてシフト反応装置により成分調整して二酸化炭素を除去した後、メタノール合成反応を行いメタノールを製造する技術も開示されている(例えば特許文献8参照)。
【0021】
【特許文献1】特開2002−235091号公報
【特許文献2】特開2002−88379号公報
【特許文献3】特開平6−210120号公報
【特許文献4】特開2001−240878号公報
【特許文献5】特開2002−193858号公報
【特許文献6】特開2005−132739号公報
【特許文献7】特開平9−176664号公報
【特許文献8】特開2003−41268号公報
【非特許文献1】Hasler, P., and Nussbaumer, T., Biomass & Bioenergy, 16, 385 (1999)
【非特許文献2】Devi, L., Ptasinski, K. J., and Janssen, F. J. J. G., Biomass & Bioenergy, 24, 125 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ガス化ガスおよび精製ガスを圧縮する工程は、プロセスのイニシャルコストおよび投入エネルギーの増加をもたらすため、圧縮行程を省略する必要がある。
ガス化工程でCO(一酸化炭素)と水素を得るためには、通常ガス化剤として水蒸気を用いるが、イニシャルコスト増加の原因である冷却・水分離工程が不要な程度の水蒸気の投入にとどめる必要がある。
【0023】
COと水素から液体燃料を製造する場合、前述のように平衡収率は数メガパスカル程度の加圧条件下が望ましい。しかし、例えば前記特許文献例の場合は圧力条件が限定されておらず、仮に常圧の条件では、高いメタノール収率は得られない。このように従来の技術において、個々の技術においては適用できる条件のものもあるが、バイオマスをガス化して液体燃料を製造する全過程において必ずしも効率的に行われているとはいい難い。
【0024】
液体燃料製造工程では、高い合成ガス(CO+水素)分圧が望ましいため、窒素、酸素、二酸化炭素、水蒸気濃度が低い、あるいは全くない精製ガスが得られる工程が必要である。更に、バイオマスをなるべく無駄のない構成でガス化し、液体燃料を効率的に製造する工程でなければならない。本発明は、かかる実状を背景に、前述の問題点を克服するためになされたものである。
【0025】
即ち、本発明の目的は、ガス化を経由する液体燃料製造プロセスのイニシャルコストを増大させる要因であるガス圧縮装置、熱交換器を使用せず、投入エネルギーを増大させる要因であるガス化に必要な熱量を少なくし、ガス圧縮動力および液体燃料収率を低下させる要因である液体燃料合成工程での窒素、酸素、水蒸気、二酸化炭素等の濃度を低くしたバイオマスからの液体燃料製造装置を提供することにある。
【0026】
本発明の他の目的は、バイオマスをガス化し液体燃料を製造する一連の工程を能率的にするため、未反応物を同装置内で再度循環させ、無駄なく効率的に再使用する構成にしたバイオマスからの液体燃料製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
かくして、本発明者はこのような課題背景に対して、鋭意研究を重ねた結果、ガス化ガスおよび精製ガスの加圧工程を含まず、圧縮動力およびこれに係る設備、および熱交換器が不要で、最低限度の窒素しか使用せず、プラントのイニシャルコストおよび投入エネルギーを低減しつつ、高い液体燃料の収率が得られるシンプルなプロセスを見出し、この知見に基いて本発明を完成させたものである。次にその具体的な手段について説明する。
【0028】
本発明1のバイオマスからの液体燃料製造装置は、バイオマスを一定量保持して加熱体で加熱しガス化するガス化部と、前記ガス化部により発生したバイオマスガスから粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物から選択される少なくとも1つ以上の物質を除去し、前記バイオマスガスを精製するバイオマスガス精製部と、前記精製されたバイオマス精製ガスを液体化してバイオマス液体燃料原液を製造する液体燃料製造部と、前記バイオマス液体燃料原液をバイオマス液体燃料、水および軽質炭化水素に分離する気液分離部と、前記気液分離部で分離されたバイオマス液体燃料を減圧して回収する減圧回収部と、前記ガス化部でガス化されない未反応物を燃焼させ、発生した熱を前記ガス化部へ供給する燃焼部とからなっている。
【0029】
本発明2のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1において、前記ガス化部は、バイオマスを600〜1000℃の温度で加熱し、1〜5MPaの圧力範囲でガス化することを特徴とする。バイオマスの加熱温度は、700〜800℃が好ましい。
【0030】
本発明3のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1において、前記ガス化部底部にタール分解用触媒を設けていることを特徴とする。バイオマスをガス化部では半バッチ処理で行う。半バッチ処理とは、ガス化炉を開け原料バイオマスを投入後、加熱し、所定の圧力に上昇させた後、最低限の窒素、あるいは二酸化炭素、あるいはリサイクルガスを流通させガス化反応を進行させることを意味する。
【0031】
本発明4のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1において、前記ガス化部を複数有し、この複数のガス化部から所要のガス化部を選択し前記ガス精製部に接続することにより、前記複数のガス化部を順次稼動させる構成になっていることを特徴とする。
【0032】
本発明5のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から4において、前記ガス化部は、バイオマスが含む水分を含む供給水蒸気とバイオマス中の炭素のモル比を0から1の範囲でガス化することを特徴とする。
【0033】
本発明6のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から4において、前記ガス精製部は、前記バイオマスガスから粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物から選択される少なくとも1つ以上の物質を200〜900℃の温度で、1〜5MPaの圧力範囲で除去することを特徴とする。
【0034】
本発明7のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から6において、前記ガス精製部を2つ有し、一方のガス精製部の吸着剤が破過する前に他方のガス精製部に流路を切り替えることができ、交互に使用が可能な構造を有していることを特徴とする。
【0035】
本発明8のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から7において、前記液体燃料製造部は、精製した前記バイオマス精製ガスを触媒反応により100〜400℃の温度で、1〜5MPaの圧力範囲で液体化することを特徴とする。
【0036】
本発明9のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から8において、前記気液分離部は、気液分離を室温から100℃の温度で行うことを特徴とする。
【0037】
本発明10のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から8において、前記液体燃料製造部は、液体化できなかった未反応前記バイオマスガスを再度液体化処理できるように構成したことを特徴とする。
【0038】
本発明11のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から8において、前記気液分離部は、気液分離できなかった未反応バイオマスガスを再度ガス化処理できるように前記ガス化部へ送り込むことを可能とした構成にしたことを特徴とする。
【0039】
本発明12のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から8において、前記気液分離部は、気液分離できなかった未反応バイオマスガスを再度液化処理できるように前記液体燃料製造部へ送り込むことを可能とした構成にしたことを特徴とする。
【0040】
本発明13のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から9において、前記未反応物はチャーであり、前記燃焼部は停止中のガス化部から取り出した前記チャーを燃焼させる装置であることを特徴とする。
【0041】
本発明14のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から13において、前記液体燃料製造装置の下部に据え付け台を設け、前記据え付け台を介して前記液体燃料製造装置を運搬できるようにしたことを特徴とする。
【0042】
本発明15のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から13において、前記液体燃料製造装置の下部に移動台車を設け、前記移動台車を介して前記液体燃料製造装置を移動できるようにしたことを特徴とする。
【0043】
本発明16のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明3において、前記タール分解用触媒は、ドロマイト、CaO、Ni系触媒、Rh系触媒から選択される1の触媒であることを特徴とする。例えばドロマイトは珊等が海底に堆積して石灰石になった後、カルシウムの一部が海水中のマグネシウムと置き換わって得られたものである。カルシウムとマグネシウムがバイオマスに作用しタール分解する。
【0044】
本発明17のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明8において、前記触媒反応は、Cu―Zn系触媒、脱水用触媒としてγ―アルミナの添加、又はFe、Co、Ru系触媒から選択される1の触媒であることを特徴とする。用いる触媒の種類を変えることで、メタノール、ジメチルエーテル、ガソリン、灯油および軽油といった炭化水素を製造することができる。例えば、メタノールはCu−Zn系触媒を用いて、以下のような反応式で合成される。
CO+2H2→CH3OH .....(1)
【0045】
また、ジメチルエーテルは前記メタノール2分子を脱水した構造を有しているため、脱水用触媒としてγ−アルミナを添加することで、以下のような総括反応式により得られる。
3CO+3H2→CH3OCH3+CO2 .....(2)
【0046】
また、ガソリン、灯油および軽油といった炭化水素の製造は、Fe、Co、Ru系触媒を用いて、以下のような反応式で表される。
nCO+(2n+1)H2→CnH2n+2+nH2O .....(3)
【0047】
本発明18のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明8において、前記触媒反応は、Cu/Zn触媒とγ―Al2O3を混合させた触媒による反応であることを特徴とする。DME合成による液体燃料の抽出が可能である。
【0048】
本発明19のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明8において、前記触媒反応は、アルミナ担持ルテニウム触媒による反応であることを特徴とする。FT合成による液体燃料の抽出が可能である。
【0049】
本発明20のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から19において、前記バイオマスは木質系バイオマスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0050】
本発明のバイオマスからの液体燃料製造装置は、ガス圧縮装置、熱交換器を使用せず、ガス化に必要な熱量を少なくし、液体燃料合成工程での窒素、酸素、水蒸気、二酸化炭素等の濃度を低くしたので、簡素な構成になった。又、未反応物を再使用する形で同一装置内を循環させるようにして再処理するようにしたので、高い液体燃料の収率が得られることとなった。更に、ガス化炉を複数設ける構成にしたので複数のガス化炉を切り替えながら使用することで連続的な稼動となり、効率のよい装置となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面に基いて、本発明のバイオマスからの液体燃料製造装置について詳細を述べる。
【0052】
[第1の実施の形態]
図1に本発明のバイオマスからの液体燃料製造装置の第1の実施の形態を示す。バイオマスからの液体燃料製造装置の構成は、前述の手段の項で説明したとおりである。バイオマスAは、バイオマスのガス化のためのガス化部2に投入される。このガス化部2は複数のガス化炉を有している。以降ガス化部2を第1系のガス化炉2aに代表させて説明する。バイオマスAの形態は細かい形状にした方が表面積が大きくなるのでガス化処理には有効である。
【0053】
バイオマスAは一定量保持される形でガス化炉2aに装入される。この装入に際してはホッパー等の手段でもよいがその形式は問わない。バイオマスAを一定量にすることは、ガス化以降の反応条件がほぼ一定になることを考慮し、安定したガス化処理とするためである。又後述するバッチ処理のためでもある。本実施形態の装置は、バッチ処理を可能とする構成となっている。バッチ処理は、前述のように一定量のバイオマスをガス化炉に投入し、決められた少ない量の窒素、二酸化炭素等を流通させガス化反応を行うことをいっているが、この定量的に準備された複数のガス化炉のバイオマスを選択的に且つ段階的に順次ガス化進行させるのである。
【0054】
このガス化部2は、ダウンドラフト型固定床ガス化炉形式であり、ガス化炉2a内にガス化原料のバイオマスAを充填し、プロセスフローガスとして少量の窒素、あるいは二酸化炭素が流通している。上部がバイオマスAを装入しガス化するガス化炉2aであり、下部はタールを分解する触媒の触媒収納部3aとなっている。後述するガス化炉2bに対しては、触媒収納部3bとなる。バイオマスAのガス化されたバイオマスガスはこの触媒収納部3aを介してガス化炉2aより排出される。
【0055】
ここで、バイオマスAが含む水分を含め、水蒸気とバイオマス内の炭素のモル比([H2O]/[C])が1までであれば熱交換器が不要である。このため少量の水蒸気を流通させることも可能である。このガス化工程は、この後の工程を含め同じ圧力に保たれている。この圧力は1〜5MPaの範囲であり、途中に昇圧させる加圧装置はない。
【0056】
ガス化炉2aを外部から電気炉で加熱することで、バイオマスAのガス化が進行する。ガス化工程の後は次のガス精製部4に接続している。ガス化温度は、ガス化温度が高いほどガス収率は高くなるが、1000℃以上では高価な材質や特殊な構造のガス化炉形式が必要となるため、600〜1000℃が望ましい。さらに、ガス化温度が高い場合、バイオマス中の灰分が溶融し、ガス化炉内を閉塞する可能性があるため、700〜800℃が望ましい。
【0057】
ガス化炉2a底部の触媒収納部3aにはタールを分解する触媒として、ドロマイト、CaO、Ni系触媒、Rh系触媒等の触媒を充填することができる。例えば、ドロマイトは前述のようにカルシウムとマグネシウムを含んでおり、タール分解に適した物質である。ガス化されたバイオマスガスに含まれるタール分は、触媒収納部3aのドロマイト上で分解される。
【0058】
ガス化を促進させるためこのガス化炉2aに隣接して燃焼部1が設けられている。この燃焼部1にはガス化炉2aでガス化されなかった未反応物である未反応チャーが、ガス化炉2aの稼動が停止した後に取り出されて点線Bで示すように燃焼部1に装入される。未反応チャーの燃焼による燃焼熱が、ガス化炉2aに対して補助的な加熱源として供給され、ガス化を促進する。
【0059】
ガス化部2は複数系列具備されており、稼動中の例えば第1系のガス化炉2aのガス生成量が減少すれば、系内が減圧し始める前に他の系統の例えば第2系のガス化炉2bに切り替え、ガス化処理のための運転を継続することができる。この切り替えのための切り替え部Cが設けられていて、必要とするガス化炉の選択に従い適宜切り替え制御される。従って、複数のガス化炉は選択的に順次稼動させることができる。この構成にすることで一連のガス化処理を停止することなく連続的に行うことができ、処理能率が向上する。
【0060】
ガス化炉2aから送り出されたガスは、バイオマスガスとしてガス精製部4に送り込まれる。このガス精製部4は、ガス化部2で発生したバイオマスガス中に含まれる粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物を除去し、バイオマスガスを精製する装置である。このガス精製部4には、内部に脱塵用フィルター、タールを吸着させるための活性炭、木炭、砂等の吸着剤が充填されていて、ガス精製温度は200〜900℃に制御されている。
【0061】
このガス精製部4は2系列有し、内部の吸着剤が破過する前に流路を切り替えられる構成になっている。例えばガス化部2からのバイオマスガスの流路が第1系のガス精製部4aに接続されていたのを、吸着剤が破過する前に第2系のガス精製部4bに流路を切り替えるのである。図はその構成になっていて、切り替え手段4cにより流路を切り替えられるようにしている。
【0062】
このような構成にすれば、切り替えにより停止した第1系のガス精製部4aの破過直前の吸着剤を取り出し、新しい吸着剤を充填し待機させることができる。第2のガス精製部4bの吸着剤が破過直前になれば第1のガス精製部4aに流路を再び切り替える。このことを繰り返し行えば、ガス精製工程を停止することなく連続的に進めることができる。
【0063】
次にガス精製部4で精製されたバイオマス精製ガスは、液体化した液体燃料を製造するために液体燃料製造部5に送り込まれる。液体燃料製造工程は、ガス精製工程の送出口側に接続されていて精製されたバイオマス精製ガスを受け入れる。液体燃料製造工程では、望ましい液体燃料を製造するための触媒が充填されている。液体燃料がメタノールであればCu−Zn系触媒であり、ジメチルエーテルは前記メタノール2分子を脱水した構造を有しているため、脱水用触媒としてγ−アルミナ触媒の添加が必要である。また、液体燃料がガソリン、灯油および軽油といった炭化水素系のものであればFe、Co、Ru系触媒を用いる。
【0064】
このように触媒を変えることで各々の目的生成物を得ることができる。この液体燃料製造部5では、触媒反応により100〜400℃の温度で1〜5MPaの圧力範囲で液体燃料を製造する。この製造された液体燃料は液体燃料原液として気液分離部6へ送り込まれる。液体燃料製造部5で製造した液体燃料原液は、水および軽質炭化水素等を含んでいる。このため、この気液分離部6で液体燃料精製液、水、軽質炭化水素、未反応ガス等に分離される。分離された水はこの工程で凝縮し気液分離部6外に排出される。
【0065】
次にこの気液分離部6で分離された液体燃料精製液は減圧回収部7へ送り込まれる。この減圧回収部7では分離された液体燃料精製液を冷却し減圧する。減圧回収部7には減圧弁7aが設けられていて、気液分離部7の送り出し口に接続している。水及び液体燃料は飽和蒸気圧曲線が異なり、冷却工程で沸点が高い物質から液体として系外に取り出すことができる。減圧弁7aを介して取り出された液体燃料精製液が利用可能な正規の製品としての液体燃料7bであり、タンク等に回収される。
【0066】
[第2の実施の形態]
図2は本実施の形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置の第2の実施の形態を示す図である。液体燃料製造工程において、1回の工程だけで処理ができない場合を考慮した実施形態である。液体燃料製造部5で液体化されなかった未反応ガスをこの液体燃料製造部5の受け入れ口に戻す流路5aを設けたものである。この流路5aを設けたことにより、バイオマス精製ガスをこの液体燃料製造部5に何回も流すことによって、未反応ガスを再使用の形で液体化させる。従って、バイオマス精製ガスを効率よく液体化させることができる。
【0067】
[第3の実施の形態]
図3は本実施の形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置の第3の実施の形態を示す図である。バイオマス液体燃料原液を気液分離部6の冷却工程で液体燃料および水と分離された後、未反応ガスをガス化工程上流に流路6aを介して戻すように構成した。これにより、未反応ガスを再度ガス化し、再度液体化処理を行い、再度気液分離処理を行うのである。このように本実施の形態はCOと水素に効率良く転換できるような構造を有している。
【0068】
[第4の実施の形態]
図4は本実施の形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置の第4の実施の形態を示す図である。バイオマス液体燃料原液を気液分離部6の冷却工程で液体燃料および水と分離された後、未反応ガスを液体燃料製造工程上流に流路6bを介して戻すように構成した。これにより、未反応ガスを再度液体化処理を行い、再度気液分離処理を行う。
【0069】
第2〜第4の実施の形態は、いずれも未反応物を同一装置内を循環させ再使用することにより、バイオマスを無駄なく有効に利用し、液体燃料の収率を高める例である。次にいずれの実施の形態においても適用可能な他の実施形態を説明する。即ち、バイオマスからの液体燃料製造装置の下部に据え付け台8を設け、この据え付け台8を介して前記液体燃料製造装置を運搬できるようにした例と、バイオマスからの液体燃料製造装置の下部に移動台車9を設け、この移動台車9を介して前記液体燃料製造装置を移動できるようにした例である。
【0070】
例えば、装置の下部の据え付け台8をクレーン等で持ち上げ液体燃料製造装置を所定位置に運搬することができる。又、装置の下部の移動台車9を人手又は動力で牽引することで液体燃料製造装置を所定位置に移動することができる。実施の形態を示す図は、移動台車9を設けた図にしているが、据え付け台8であってもよい。
以上、実施の形態例を種々説明したが、本発明はこれら実施形態例に限定されないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0071】
木質系バイオマスとして、10.2gの米松(Douglas fir、Pseudotsuga menziesii)を用いた。表1に分析結果を示す。タール分解触媒として、29.2gのドロマイト(Yoshizawa Lime Industry Co.,Ltd.製)を用いた。タール吸着剤として、15.0gの市販の活性炭(2−4mm)を用いた。DME合成用触媒として、Engelhard社製のCu/Zn系触媒とγ―Al2O3を物理混合させ、活性炭(2−4mm)に整粒したものを16.0g用いた。DMEは、ジメチルエーテル Di―Methyl Etherの略称である。燃焼時に硫黄酸化物やすすの出ないクリーンエネルギーとして注目されているものである。実施例1はDMEによる液体生成技術の実施例である。
【表1】
【0072】
実施例1として、図5に加圧ガス化―DME合成用実験装置のブロック図を示す。この装置の構成は、主に加圧水蒸気ガス化部、ドロマイトを用いたタールクラッキング部、活性炭を用いたガスクリーニング部、DME合成部からなる。
【0073】
この実施例での生成は次のように行った。まず3方バルブ21はXの方向へガスを流すようになっている。加圧水蒸気ガス化部11では、あらかじめ反応器内に供給されたバイオマス原料13、即ち米松を、マスフローコントローラ30で流量を調整した窒素気流中で、電気炉14により加熱し、熱分解を行い、米松をchar化した。その後、水蒸気を導入し、charの加圧水蒸気ガス化を行った。
【0074】
熱分解ガスは、背圧弁22を通過した後のガスをガスクロマトグラフGCで分析した。DME合成後のガスは、背圧弁26を通過したガスをガスクロマトグラフGCで分析した。
【0075】
熱分解が落ち着いた後、水が送水ポンプ15を介して送水加熱され、charに接触して加圧水蒸気ガス化される。これはcharの水蒸気ガス化により、COと水素が豊富なガスを安定して得られるためである。この水蒸気ガス化されたガス体をドロマイト17に通して、タールの分解、即ち、タールクラッキングし、ガス変換を促進させた。
【0076】
次に、連続工程の中で、このガス体をガスクリーニング部に移送し、ガスの精製を行う。リボンヒーター18を介してガスを保温し、活性炭20によりクリーニングした。クリーニングされたガス体を3方バルブ21を介して定められた方向に、且つ背圧弁22により常圧に減圧したガスをガスクロマトグラフGCで分析し、COとH2の組成が高くなったことを確かめた。
【0077】
その後、3方バルブ21をY側へ切り替え、COとH2の組成が高いガスを、背圧弁26により所定圧力を維持しながら液体化工程に送り、DME合成用触媒23としてCu/Zn触媒とγ―Al2O3の触媒混合物に通し、DMEを合成し、背圧弁26を通過させ、ガスクロマトグラフGCによりDMEの組成を分析し、積算流量計27を通過させた後、ガス捕集バッグ28へ捕集した。
【0078】
この一連の生成処理条件は、木材の熱分解・charの水蒸気ガス化温度は850℃、タールクラッキング部のクラッキング温度は730℃、活性炭によるガスクリーニング温度は300℃、DME合成の温度は250℃であった。全ての工程で圧力を3MPaとした。実験当初に3方バルブ21の切換え方向をX側にし、charの水蒸気ガス化で得られたガス測定をガスクロマトグラフGCにより行った。次に送水ポンプにより水を導入することで、加圧水蒸気ガス化―高温ガスクリーニング部において、圧力3MPaで20cc/min(STP)の窒素気流中で、ドロマイト17、活性炭20が充填されたガスクリーニング部を750℃、300℃にそれぞれ加熱した後、ガスクロマトグラフGCにおいてCOと水素の組成が高くなったことを確認した後、3方バルブ21のX側を閉じY側を開いて実験を開始した。
【0079】
TCD(熱伝導度検出器、3000A Micro GC:Agilent、Molecular Sieve―5A、Porapak U)を備えたガスクロマトグラフを用いて、ガスクリーニング後のガス組成(背圧弁22を通過したガスの測定)およびDME合成後のガス組成(背圧弁26を通過したガスの測定)の分析を行った。その結果は図6及び図7に示すとおりであった。
【0080】
図6は、ガス化炉、ドロマイト層の温度の経時変化、湿式ガスメーターで測定した流速およびH2、CO、CH4,CO2の濃度の経時変化を示す。又、図7は、低い組成であったC2H4、C2H6、DMEの濃度の経時変化を示す。詳細に説明すると、図6において、0〜100min間では、まずドロマイト(MgCO3、CaCO3の混合物)の加熱で、脱炭酸反応が進行することにより放出されるCO2が高い濃度で検出された。これは、木材とドロマイトを同時に加熱すると、木材の熱分解由来のCO2と、ドロマイト加熱による脱炭酸反応由来のCO2が区別できないからである。
【0081】
その後、木材の加圧水蒸気ガス化部を加熱し、望ましい温度、即ち850℃に達した後、熱分解による炭化水素の発生が落ち着いた後、0.1g/minの速度で水蒸気を導入することで、高圧水蒸気ガス化を開始した(150min時点)。
【0082】
ここで、熱分解を始めると同時に、DME合成部では、300cc/minの水素60%、窒素40%のガスを触媒層に300℃、常圧導入(0min時点)し、1.5時間水素還元を行った。その後、窒素気流中で室温まで冷却し、3MPaに加圧した。170min経過した時点で3方バルブ21をY側にし、加圧水蒸気ガス化によるガス体(COと水素の組成が高いガス)をDME合成部に導入し、DME合成を開始した。その後各組成分は一定の値を示した。
【0083】
図7において、210min時点経過以降にDMEが検出され始めた。DMEの検出は360min時点まで続いた。この結果から、圧縮工程、再加熱工程のない実験装置を用いて、木質系バイオマスからDMEを連続的に150min間合成できることが確認された。
【0084】
又、投入したバイオマス中の炭素に対し、炭素基準でどの程度生成物に分配されたかを検証した。その結果、炭素転換率(投入木材中のカーボン基準)として、CO,CO2,CH4、C2:62%、DME:3%、チャ−:19%、活性炭付着タール:1%、不明:15%であった。
この結果では、投入した炭素基準で3%がDMEに変換できたことになる。
【実施例2】
【0085】
木質系バイオマスとして、20.0gの米松(Douglas fir、Pseudotsuga menziesii製)を用いた。タール分解触媒として、29.9gのドロマイト(Yoshizawa Lime Industry Co.,Ltd.製)を用いた。タール吸着剤として、15.0gの市販の活性炭(2−4mm)を用いた。炭素水素合成用触媒として、2.0gのアルミナ担持ルテニウム触媒(Ru content:5wt%、Wako Pure Chemical Industries、Ltd.製)を用いた。
【0086】
実施例2として、図8に加圧水蒸気ガス化―炭化水素合成に用いた実験装置のブロック図を示す。本実験装置の構成は、主に加圧水蒸気ガス化部、ドロマイトを用いたタールクラッキング部、活性炭を用いたガスクリーニング部、FT合成部からなる。
【0087】
FT合成部の技術とは、フィッシャートロプシュ合成の略称で、一酸化炭素と水素の混合ガスである合成ガスを触媒上で、反応式nCO+(2n+1)H2→CnH2n+2+nH2Oにより反応させ、液体化する技術である。バイオマス等を原料として簡素に製造できるので注目されているものである。実施例2は炭素水素合成による液体生成技術の実施例である。この実施例の生成は次のように行った。
【0088】
実施例1同様に、加圧水蒸気ガス化部11内には、あらかじめバイオマス原料である米松を投入した。その後、マスフローコントローラ30を用いて、窒素を流通させながら電気炉14により、米松の熱分解を行い、char化した。熱分解による炭化水素の発生が落ち着いた後、水を送水ポンプ15を介して送水加熱され、charに接触し水蒸気ガス化される。この水蒸気ガス化されたガス体はドロマイト17を通過してタールクラッキングを行った。
【0089】
次に、連続工程の中でこのガス体をガスクリーニング部に移送し、リボンヒーター18を介して保温され、活性炭20によりクリーニングした。クリーニングされたガス体をFT合成用触媒29としてアルミナ担持ルテニウム(Ru/Al2O3)触媒を用い、液体化した。3方バルブ21は、2方向の切換弁である。次に、気液分離を行い、燃料用の液体を取り出す。液体は液体捕集管25に回収し、ガス部分は背圧弁26を通し、積算流量計27を介しガス捕集バッグ28に回収した。
【0090】
実験当初に3方バルブ21の切換え方向をX側にし、熱分解によるガスの測定を行った。加圧水蒸気ガス化―高温ガスクリーニング部では、3MPaにおいて、200cc/min(STP)の窒素気流中で、ドロマイト、活性炭が充填されたガスクリーニング部を750℃、300℃にそれぞれ加熱することで、実験を開始した。その後、ガス化部を加熱し、望ましい温度800℃に達し、char化を行った。熱分解による炭化水素の発生が落ち着いた後、0.1g/minの速度で水蒸気を導入することで、加圧水蒸気ガス化を開始した。
【0091】
熱分解開始と同時に、FT合成部では、130cc/minの水素20%、窒素80%のガスを触媒層に300℃、常圧導入し(0min時点)し、1.5時間水素還元を行った。その後、窒素気流中で180℃に冷却し、3MPaに加圧した。220min時点において、3方バルブ21のX側をY側にして、加圧水蒸気ガス化によるガスを炭化水素合成部に導入し、230℃でFT合成の実験を開始(220min時点)した。
【0092】
TCD(熱伝導度検出器、3000A Micro GC:Agilent、Molecular Sieve―5A、Porapak U)及びFID(水素火炎検出器、GC353B:GL Sciences、DB-1、Squalane)を備えたガスクロマトグラフを用いて、FT合成前後でのガスの分析を行った。
【0093】
生成物の定義と分離手順は以下の通りである。ガスは湿式ガスメーター27(W-NK-0.5:Shinagawa)を通過した後、ガス捕集バッグ28に捕集した。原料バイオマス13の熱分解を開始(120min時点)して以降、捕集したガスを生成ガスとした。活性炭20に吸着した物質をタールとした。実験後の活性炭20をアニソールを用いて常温で30min間洗浄することで、タールのアニソール溶液を得た。炭化水素化合物は以下の様に捕集した。実験後、触媒及び液体捕集管25内の液体をジクロロメタンで洗浄した。ろ過した後、ろ液を静置させて水相および油相に分離し、炭化水素化合物のジクロロメタン溶液を得た。
【0094】
ガス捕集バッグ28に捕集したガスは、TCD及びFIDを備えたガスクロマトグラフGCで分析した。アニソール溶液中のタールの炭素数はNPgram法を用いて測定した。生成物としての炭化水素は内部標準法を用いて以下のように定量した。ジクロロメタン溶液に標準物質としてナフタレンを添加した。その溶液をFIDを備えたガスクロマトグラフGCで分析した。
炭素数nの炭化水素の炭化数は以下のように計算した。
N(Cn)=A(Cn)/A(C10H8)×N(C10H8)
ここで、N(Cn):ジクロロメタン溶液中のCnH2n+2の炭素数。N(C10H8):ジクロロメタン溶液中のC10H8中の炭素数。A(Cn):CnH2n+2のエリア。A(C10H8):C10H8のエリアである。
【0095】
尚、実施例1の図5及び実施例2の図8に示される符号12、16、19はいずれも熱電対を示している。又、符合24は、液体燃料製造工程におけるパージ用ラインを示している。これらの実施例に具体的には示されていないが、ガス化部でガス化されない未反応物を燃焼させ、発生した熱を加圧水蒸気ガス化部へ供給することを可能とし、無駄なくガス化する構成としている。
【0096】
図9に高温ガスクリーニング後のガスの経時変化を示す。図10に生成ガスの経時変化を示す。実験中、タールトラブルによる閉塞のようなあらゆる問題がなく、高圧ガス化し、それに続く高温ガスクリーニング及びFT合成は180min間(220〜400min時点)連続的に処理できた。図9において、タール分解触媒としてのドロマイトの加熱により、60〜120minの間、高い濃度のCO2(□印)が検出された。続いて、木材の熱分解により、150〜220minの間、CO2、CO(〇印)、H2(●印)及びCH4(△印)の明確な発生が認められ、200minにおいて、H2:17.2mol%、CH4:24.1mol%、CO:7.9mol%、CO2:17.1mol%のガスが得られた。
【0097】
その後、水蒸気ガス化により、H2、CO2は上昇し、CO、CH4は減少した。図9及び図10において、250分以降のFT合成前(図9)のCO、H2,CCO2、CH4組成と合成後(図10)のそれらを比較した。FT合成前のCOは6.9〜12.3mol%であり、FT合成後は0.7〜2.4mol%であった。従って、FT合成工程におけるCO転換率はおよそ87〜97mol%C−basisであった。FT合成工程を通過すると、H2は約33から1mol%へ減少し、CO2は、およそ12から18mol%、CH4はおよそ5から20mol%へ増加した。さらに、生成ガス中に炭素数2から4の炭化水素(×)が含まれていた。これらの結果は、COがC1からC4の炭化水素に転換されたことを示している。
【0098】
図11に標準物質としてナフタレンを添加したジクロロメタン溶液のGC−FIDチャートを示す。縦軸は電圧を示す。炭素数8から29の炭化水素に帰属した明確なピークを得ることができた。この結果は、我々が提案した、加圧に係る設備がなく、再加熱行程がないシンプルなBTLプロセスを用いて、木質系バイオマスから炭化水素の製造に成功したことを示している。
【0099】
表2に炭素基準での各生成物への分配を示す。C8からC29の炭化水素へは、0.03C−mol%の収率で得られた。一方、lossはー0.24C−mol%であることから投入した炭素はほぼ回収できた。CH4、CO,CO2、C2H2、C2H6、C3H8およびn−C4H10のようなガスへの分配は、トータルで64.54%であった。CH4とCO2へおよそ58%転換している。これが低い炭化水素収率の原因の一つと推定される。従って、生成ガスの一部をガス化工程へリサイクルすることが望ましい。
【表2】
【0100】
charへの分配は35.46%であった。炭素源としてのcharは反応器内に残留していたが、400min以降は反応器内の圧力を3MPaに保つために、充分な生成ガス量が得られなかった。従って、さらなる検討では複数の高圧ガス化工程を設け、それらを切り換えることで、さらなる長時間運転が期待できる。又、charを熱源として利用することも可能である。
【0101】
本実施例では、高温ガスクリーニングを用いた。反応後の活性炭には、投入炭素量の0.21%がタールとして吸着していた。これは、高温ガスクリーニングにおいて、活性炭がタール除去能力を有していることを示している。水を使わないガスクリーニングは、結果として排水処理コストを低減できる可能性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のバイオマスからの液体燃料製造装置、すなわち、再生可能なバイオマスから高効率に液体燃料を製造し、かつ経済性の高いプラントに関するものであるが、その原理を生かせる限り、他の分野、例えば、低質な石炭の利用分野に適用可能であり、その利用分野は広範囲に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第1の実施形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置のブロック図である。
【図2】第2の実施形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置のブロック図である。
【図3】第3の実施形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置のブロック図である。
【図4】第4の実施形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置のブロック図である。
【図5】実施例1に係るバイオマスからのDME製造装置のブロック図である。
【図6】実施例1に係る触媒層通過後のガス組成の経時変化である。
【図7】実施例1に係る触媒層通過後のガス組成の経時変化である。
【図8】実施例2に係るバイオマスからの炭化水素燃料製造装置のブロック図である。
【図9】実施例2に係る触媒層前のガス組成の経時変化である。
【図10】実施例2に係る触媒層後のガス組成の経時変化である。
【図11】標準物質としてナフタレンを添加したジクロロメタン溶液のGC−FIDチャート図である。
【符号の説明】
【0104】
1.燃焼炉
2.ガス化部
3a、3b.触媒収納部
4.ガス精製部
5.液体燃料製造部
5a.流路
6.気液分離部
6a、6b.流路
7.減圧回収部
7a.減圧弁
7b.液体燃料
8.据え付け台
9.移動台車
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスをガス化して液体燃料を製造する装置に関する。更に詳しくは、バイオマス、例えば未利用樹、間伐材、製材残材、流木材、剪定材などの木質系バイオマス、建築廃材、下水汚泥、鶏糞、牛糞、RDFなどの廃棄物系バイオマス、雑草、牧草、サトウキビなどの草本系バイオマスを原料として、これを効率的にガス化し液体化して液体燃料を得るためのバイオマスからの液体燃料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体燃料対象のバイオマスとは一般的に、エネルギー源として利用することのできる生物体を指し、太陽エネルギーを利用し、生成される再生可能なエネルギーの一つである。また、バイオマスはエネルギーに転換可能な唯一の再生可能な有機物である。
【0003】
現在、我々が使用している1次エネルギーの30%以上が石油であり、その40%以上は輸送用液体燃料である。したがって液体燃料を、再生可能なバイオマスから製造することは大変有用である。バイオマスから液体燃料を製造することは、いくつかの技術の組み合わせで実現可能であり、従来から行われている。その中で、バイオマスをガス化し、COと水素を得て、触媒反応により液体燃料を製造することも行われており、その技術が注目されている。次に、従来行われている液体燃料を製造するための技術について説明する。
【0004】
バイオマスは、木質系、廃棄物系および草本系と多種多様な形態のものがある。一方で、液体燃料製造工程ではCOと水素が必要となる。ここで、ガス化を経由してバイオマスから液体燃料を製造するプロセスは、バイオマスの種類に依らずCOと水素を得られる点で、他のプロセスよりも簡素化できる可能性がある。
バイオマスをガス化する場合、ガス収率、タールの生成量はガス化炉形式、ガス化剤、反応条件に大きく依存している。
【0005】
ガス化炉形式は大きく分けて、固定床、流動床、噴流床がある。固定床は構造がシンプルで装置コストが安く、小規模向きである。ダウンドラフトとアップドラフトを比較すると、ダウンドラフトはアップドラフトよりもタール生成量が低い。流動床は中規模向きであるが、ガス化炉内のベッドの流動化を保つために、最小流動化速度の3倍以上に相当するプロセスフローガスを供給する必要があり、結果的にガス化ガス中には高濃度に窒素が含まれる。
【0006】
また、タールの生成量も高い。噴流床は規模に依存せず、タールの生成量が低いという利点があるが、ガス化原料を粉砕する動力が必要であり、ガス化炉内で粉体を浮遊させるプロセスフローガスが必要であるため、流動床同様、ガス化ガス中には高濃度の窒素が含まれる。
【0007】
また、代表的なガス化剤として、空気、二酸化炭素、水蒸気がある。空気を用いる場合は、外熱が不要であり、ガス化速度も速く、ガス収率も高い利点があるが、ガス化ガス中に窒素が混入する。また、酸素を用いる場合は同様の利点があるが、空気から窒素を分離するコストが高い。
【0008】
二酸化炭素を用いる場合は、ガス化ガス中に窒素が混入しない、後段に液体燃料製造工程が続く場合、ガス化ガスの冷却工程が不要である利点があるが、外熱が必要で、反応速度が遅い。さらに、後段に液体燃料製造工程が続く場合、水素/CO比が低いため、液体燃料の収率が低くなる。水蒸気を用いる場合は、ガス化ガス中にプロセスフローガスとしての窒素の混入が低く、水素/CO比の高いガスが得られる。しかし、外熱が必要であり、過剰な水蒸気の使用はガス化ガス中の水蒸気分率が高くなるため、水として除去する冷却工程が必要となる。
【0009】
ガス精製工程では、不純物を溶媒、特に水に溶解させる湿式法、水を使わない乾式法に大別できる。一般的には湿式法が用いられている。しかし、処理設備が巨大であること、さらに廃水処理のコストの点から、全体のプロセスのイニシャルコストおよびランニングコストを増大させている。
【0010】
乾式法に関しては、圧力が大気圧、温度が130℃以下でガス化ガスに含まれるタール、粒子状物質を除去する方法が報告されている(例えば、非特許文献1、2参照)。これはサイクロンを用いて集塵する方法や砂や活性炭といった吸着剤を用いた方法である。湿式法および乾式法のいずれの除去方法も、精製ガス温度が130℃以下となるため、後段に続くプロセスが、精製ガス温度以上での反応温度が必要な場合、再加熱するための工程が必要となる。
【0011】
また、これまでのガス精製方法は、大気圧付近で行われるため、後段のプロセスが液体燃料製造および膜分離など、加圧条件下で操業する場合は、ガスを圧縮する動力の投入が必要となる。それに従い、圧縮機が必要であり、プロセスのイニシャルコストの増大をもたらしている。また、ガス化ガスおよび精製後のガスの熱を回収する熱交換器を備えているものもあるが、熱交換器設置のためのイニシャルコストが増加する。
【0012】
ガス化を経由するバイオマスからの液体燃料製造プロセスにおいては、有機系廃棄物をガス化し、ガス精製後、メタノールを製造する装置も発案されている。COと水素から液体燃料を製造する場合、平衡収率は数メガパスカル程度の加圧条件下が望ましい。しかし、従来の技術は圧力条件が限定されておらず、常圧の条件下では、高いメタノールを得るのが困難である。又、ガス化ガス及び精製後のガスの熱を回収する熱交換器を備えているものもあるが、熱交換器設置のためのイニシャルコストが増加する。さらに、精製ガスを昇圧する動力は、プロセスに投入するエネルギーの増大をもたらす。したがって、ブースタ装置設置のためイニシャルコストも増加する。
【0013】
次に本発明に関わる具体的な従来例について説明する。バイオマスを燃焼させてガス化する技術においては、例えば酸素ガスを有する部分燃焼用ガスとバイオマスとを反応させ、バイオマスを部分燃焼させた後に、水蒸気を有するガス化用ガスと反応させバイオマスをガス化させる技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0014】
又、バイオマスを燃焼させるに際し、相反するバイオマスの発熱反応とバイオマスの吸熱反応とをそれぞれ分離させた燃焼空間中とガス化空間中とにおいて、それぞれ行うようにした技術も開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0015】
圧縮精製する技術としては、例えば圧力スウィング吸着精製装置に適用され、ガスの一部を昇圧ガスの残部と膜分離精製装置で精製された後圧縮機により昇圧されたガスを導入し精製する技術が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0016】
メタノールを製造する技術においては、バイオマスをガス化して得られたガスを冷却してメタノール合成し、熱交換手段により外部から供給された水と熱交換して高温水蒸気を発生させ、これを精製してメタノール燃料を製造する技術が知られている(例えば特許文献4参照)。
【0017】
又、バイオマスをガス化させるに際し、生成ガスに太陽光発電設備や風力発電設備で発電した電力により、水を水電解装置で電気分解し、生成ガス中の水素量を一酸化炭素量に対し2倍以上になるように水素ガスを供給しメタノールを製造する技術が知られている(例えば特許文献5参照)。
【0018】
更に、バイオマスのガス化によって得られた水素と一酸化炭素を含むガスをガスタンクに貯蔵し、加圧ポンプで0.5〜5.0MPaに加圧した後、触媒を充填したメタノール合成部で生成したメタノールガスを冷却しメタノールを得る技術も知られている(例えば特許文献6参照)。
【0019】
バイオマスをガス化する一連の装置を移動可能に構成した技術として、例えば粉砕されたバイオマスを一時貯蔵する工程の構成機器を搭載した移動車と、バイオマスをガス化した精製ガスの製造に伴う工程の構成機器を搭載した移動車として構成されたものが知られている(例えば特許文献7参照)。
【0020】
さらにチャーを燃焼させる技術として、ガス化の触媒として粘土を使用するものであるが、チャーを燃焼させてバイオマスを補助的に加熱しガス化を促進させる技術が開示され、また、一酸化炭素及び水素を含むバイオマスガスを必要に応じてシフト反応装置により成分調整して二酸化炭素を除去した後、メタノール合成反応を行いメタノールを製造する技術も開示されている(例えば特許文献8参照)。
【0021】
【特許文献1】特開2002−235091号公報
【特許文献2】特開2002−88379号公報
【特許文献3】特開平6−210120号公報
【特許文献4】特開2001−240878号公報
【特許文献5】特開2002−193858号公報
【特許文献6】特開2005−132739号公報
【特許文献7】特開平9−176664号公報
【特許文献8】特開2003−41268号公報
【非特許文献1】Hasler, P., and Nussbaumer, T., Biomass & Bioenergy, 16, 385 (1999)
【非特許文献2】Devi, L., Ptasinski, K. J., and Janssen, F. J. J. G., Biomass & Bioenergy, 24, 125 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ガス化ガスおよび精製ガスを圧縮する工程は、プロセスのイニシャルコストおよび投入エネルギーの増加をもたらすため、圧縮行程を省略する必要がある。
ガス化工程でCO(一酸化炭素)と水素を得るためには、通常ガス化剤として水蒸気を用いるが、イニシャルコスト増加の原因である冷却・水分離工程が不要な程度の水蒸気の投入にとどめる必要がある。
【0023】
COと水素から液体燃料を製造する場合、前述のように平衡収率は数メガパスカル程度の加圧条件下が望ましい。しかし、例えば前記特許文献例の場合は圧力条件が限定されておらず、仮に常圧の条件では、高いメタノール収率は得られない。このように従来の技術において、個々の技術においては適用できる条件のものもあるが、バイオマスをガス化して液体燃料を製造する全過程において必ずしも効率的に行われているとはいい難い。
【0024】
液体燃料製造工程では、高い合成ガス(CO+水素)分圧が望ましいため、窒素、酸素、二酸化炭素、水蒸気濃度が低い、あるいは全くない精製ガスが得られる工程が必要である。更に、バイオマスをなるべく無駄のない構成でガス化し、液体燃料を効率的に製造する工程でなければならない。本発明は、かかる実状を背景に、前述の問題点を克服するためになされたものである。
【0025】
即ち、本発明の目的は、ガス化を経由する液体燃料製造プロセスのイニシャルコストを増大させる要因であるガス圧縮装置、熱交換器を使用せず、投入エネルギーを増大させる要因であるガス化に必要な熱量を少なくし、ガス圧縮動力および液体燃料収率を低下させる要因である液体燃料合成工程での窒素、酸素、水蒸気、二酸化炭素等の濃度を低くしたバイオマスからの液体燃料製造装置を提供することにある。
【0026】
本発明の他の目的は、バイオマスをガス化し液体燃料を製造する一連の工程を能率的にするため、未反応物を同装置内で再度循環させ、無駄なく効率的に再使用する構成にしたバイオマスからの液体燃料製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
かくして、本発明者はこのような課題背景に対して、鋭意研究を重ねた結果、ガス化ガスおよび精製ガスの加圧工程を含まず、圧縮動力およびこれに係る設備、および熱交換器が不要で、最低限度の窒素しか使用せず、プラントのイニシャルコストおよび投入エネルギーを低減しつつ、高い液体燃料の収率が得られるシンプルなプロセスを見出し、この知見に基いて本発明を完成させたものである。次にその具体的な手段について説明する。
【0028】
本発明1のバイオマスからの液体燃料製造装置は、バイオマスを一定量保持して加熱体で加熱しガス化するガス化部と、前記ガス化部により発生したバイオマスガスから粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物から選択される少なくとも1つ以上の物質を除去し、前記バイオマスガスを精製するバイオマスガス精製部と、前記精製されたバイオマス精製ガスを液体化してバイオマス液体燃料原液を製造する液体燃料製造部と、前記バイオマス液体燃料原液をバイオマス液体燃料、水および軽質炭化水素に分離する気液分離部と、前記気液分離部で分離されたバイオマス液体燃料を減圧して回収する減圧回収部と、前記ガス化部でガス化されない未反応物を燃焼させ、発生した熱を前記ガス化部へ供給する燃焼部とからなっている。
【0029】
本発明2のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1において、前記ガス化部は、バイオマスを600〜1000℃の温度で加熱し、1〜5MPaの圧力範囲でガス化することを特徴とする。バイオマスの加熱温度は、700〜800℃が好ましい。
【0030】
本発明3のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1において、前記ガス化部底部にタール分解用触媒を設けていることを特徴とする。バイオマスをガス化部では半バッチ処理で行う。半バッチ処理とは、ガス化炉を開け原料バイオマスを投入後、加熱し、所定の圧力に上昇させた後、最低限の窒素、あるいは二酸化炭素、あるいはリサイクルガスを流通させガス化反応を進行させることを意味する。
【0031】
本発明4のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1において、前記ガス化部を複数有し、この複数のガス化部から所要のガス化部を選択し前記ガス精製部に接続することにより、前記複数のガス化部を順次稼動させる構成になっていることを特徴とする。
【0032】
本発明5のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から4において、前記ガス化部は、バイオマスが含む水分を含む供給水蒸気とバイオマス中の炭素のモル比を0から1の範囲でガス化することを特徴とする。
【0033】
本発明6のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から4において、前記ガス精製部は、前記バイオマスガスから粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物から選択される少なくとも1つ以上の物質を200〜900℃の温度で、1〜5MPaの圧力範囲で除去することを特徴とする。
【0034】
本発明7のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から6において、前記ガス精製部を2つ有し、一方のガス精製部の吸着剤が破過する前に他方のガス精製部に流路を切り替えることができ、交互に使用が可能な構造を有していることを特徴とする。
【0035】
本発明8のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から7において、前記液体燃料製造部は、精製した前記バイオマス精製ガスを触媒反応により100〜400℃の温度で、1〜5MPaの圧力範囲で液体化することを特徴とする。
【0036】
本発明9のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から8において、前記気液分離部は、気液分離を室温から100℃の温度で行うことを特徴とする。
【0037】
本発明10のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から8において、前記液体燃料製造部は、液体化できなかった未反応前記バイオマスガスを再度液体化処理できるように構成したことを特徴とする。
【0038】
本発明11のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から8において、前記気液分離部は、気液分離できなかった未反応バイオマスガスを再度ガス化処理できるように前記ガス化部へ送り込むことを可能とした構成にしたことを特徴とする。
【0039】
本発明12のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から8において、前記気液分離部は、気液分離できなかった未反応バイオマスガスを再度液化処理できるように前記液体燃料製造部へ送り込むことを可能とした構成にしたことを特徴とする。
【0040】
本発明13のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から9において、前記未反応物はチャーであり、前記燃焼部は停止中のガス化部から取り出した前記チャーを燃焼させる装置であることを特徴とする。
【0041】
本発明14のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から13において、前記液体燃料製造装置の下部に据え付け台を設け、前記据え付け台を介して前記液体燃料製造装置を運搬できるようにしたことを特徴とする。
【0042】
本発明15のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から13において、前記液体燃料製造装置の下部に移動台車を設け、前記移動台車を介して前記液体燃料製造装置を移動できるようにしたことを特徴とする。
【0043】
本発明16のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明3において、前記タール分解用触媒は、ドロマイト、CaO、Ni系触媒、Rh系触媒から選択される1の触媒であることを特徴とする。例えばドロマイトは珊等が海底に堆積して石灰石になった後、カルシウムの一部が海水中のマグネシウムと置き換わって得られたものである。カルシウムとマグネシウムがバイオマスに作用しタール分解する。
【0044】
本発明17のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明8において、前記触媒反応は、Cu―Zn系触媒、脱水用触媒としてγ―アルミナの添加、又はFe、Co、Ru系触媒から選択される1の触媒であることを特徴とする。用いる触媒の種類を変えることで、メタノール、ジメチルエーテル、ガソリン、灯油および軽油といった炭化水素を製造することができる。例えば、メタノールはCu−Zn系触媒を用いて、以下のような反応式で合成される。
CO+2H2→CH3OH .....(1)
【0045】
また、ジメチルエーテルは前記メタノール2分子を脱水した構造を有しているため、脱水用触媒としてγ−アルミナを添加することで、以下のような総括反応式により得られる。
3CO+3H2→CH3OCH3+CO2 .....(2)
【0046】
また、ガソリン、灯油および軽油といった炭化水素の製造は、Fe、Co、Ru系触媒を用いて、以下のような反応式で表される。
nCO+(2n+1)H2→CnH2n+2+nH2O .....(3)
【0047】
本発明18のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明8において、前記触媒反応は、Cu/Zn触媒とγ―Al2O3を混合させた触媒による反応であることを特徴とする。DME合成による液体燃料の抽出が可能である。
【0048】
本発明19のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明8において、前記触媒反応は、アルミナ担持ルテニウム触媒による反応であることを特徴とする。FT合成による液体燃料の抽出が可能である。
【0049】
本発明20のバイオマスからの液体燃料製造装置は、本発明1から19において、前記バイオマスは木質系バイオマスであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0050】
本発明のバイオマスからの液体燃料製造装置は、ガス圧縮装置、熱交換器を使用せず、ガス化に必要な熱量を少なくし、液体燃料合成工程での窒素、酸素、水蒸気、二酸化炭素等の濃度を低くしたので、簡素な構成になった。又、未反応物を再使用する形で同一装置内を循環させるようにして再処理するようにしたので、高い液体燃料の収率が得られることとなった。更に、ガス化炉を複数設ける構成にしたので複数のガス化炉を切り替えながら使用することで連続的な稼動となり、効率のよい装置となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面に基いて、本発明のバイオマスからの液体燃料製造装置について詳細を述べる。
【0052】
[第1の実施の形態]
図1に本発明のバイオマスからの液体燃料製造装置の第1の実施の形態を示す。バイオマスからの液体燃料製造装置の構成は、前述の手段の項で説明したとおりである。バイオマスAは、バイオマスのガス化のためのガス化部2に投入される。このガス化部2は複数のガス化炉を有している。以降ガス化部2を第1系のガス化炉2aに代表させて説明する。バイオマスAの形態は細かい形状にした方が表面積が大きくなるのでガス化処理には有効である。
【0053】
バイオマスAは一定量保持される形でガス化炉2aに装入される。この装入に際してはホッパー等の手段でもよいがその形式は問わない。バイオマスAを一定量にすることは、ガス化以降の反応条件がほぼ一定になることを考慮し、安定したガス化処理とするためである。又後述するバッチ処理のためでもある。本実施形態の装置は、バッチ処理を可能とする構成となっている。バッチ処理は、前述のように一定量のバイオマスをガス化炉に投入し、決められた少ない量の窒素、二酸化炭素等を流通させガス化反応を行うことをいっているが、この定量的に準備された複数のガス化炉のバイオマスを選択的に且つ段階的に順次ガス化進行させるのである。
【0054】
このガス化部2は、ダウンドラフト型固定床ガス化炉形式であり、ガス化炉2a内にガス化原料のバイオマスAを充填し、プロセスフローガスとして少量の窒素、あるいは二酸化炭素が流通している。上部がバイオマスAを装入しガス化するガス化炉2aであり、下部はタールを分解する触媒の触媒収納部3aとなっている。後述するガス化炉2bに対しては、触媒収納部3bとなる。バイオマスAのガス化されたバイオマスガスはこの触媒収納部3aを介してガス化炉2aより排出される。
【0055】
ここで、バイオマスAが含む水分を含め、水蒸気とバイオマス内の炭素のモル比([H2O]/[C])が1までであれば熱交換器が不要である。このため少量の水蒸気を流通させることも可能である。このガス化工程は、この後の工程を含め同じ圧力に保たれている。この圧力は1〜5MPaの範囲であり、途中に昇圧させる加圧装置はない。
【0056】
ガス化炉2aを外部から電気炉で加熱することで、バイオマスAのガス化が進行する。ガス化工程の後は次のガス精製部4に接続している。ガス化温度は、ガス化温度が高いほどガス収率は高くなるが、1000℃以上では高価な材質や特殊な構造のガス化炉形式が必要となるため、600〜1000℃が望ましい。さらに、ガス化温度が高い場合、バイオマス中の灰分が溶融し、ガス化炉内を閉塞する可能性があるため、700〜800℃が望ましい。
【0057】
ガス化炉2a底部の触媒収納部3aにはタールを分解する触媒として、ドロマイト、CaO、Ni系触媒、Rh系触媒等の触媒を充填することができる。例えば、ドロマイトは前述のようにカルシウムとマグネシウムを含んでおり、タール分解に適した物質である。ガス化されたバイオマスガスに含まれるタール分は、触媒収納部3aのドロマイト上で分解される。
【0058】
ガス化を促進させるためこのガス化炉2aに隣接して燃焼部1が設けられている。この燃焼部1にはガス化炉2aでガス化されなかった未反応物である未反応チャーが、ガス化炉2aの稼動が停止した後に取り出されて点線Bで示すように燃焼部1に装入される。未反応チャーの燃焼による燃焼熱が、ガス化炉2aに対して補助的な加熱源として供給され、ガス化を促進する。
【0059】
ガス化部2は複数系列具備されており、稼動中の例えば第1系のガス化炉2aのガス生成量が減少すれば、系内が減圧し始める前に他の系統の例えば第2系のガス化炉2bに切り替え、ガス化処理のための運転を継続することができる。この切り替えのための切り替え部Cが設けられていて、必要とするガス化炉の選択に従い適宜切り替え制御される。従って、複数のガス化炉は選択的に順次稼動させることができる。この構成にすることで一連のガス化処理を停止することなく連続的に行うことができ、処理能率が向上する。
【0060】
ガス化炉2aから送り出されたガスは、バイオマスガスとしてガス精製部4に送り込まれる。このガス精製部4は、ガス化部2で発生したバイオマスガス中に含まれる粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物を除去し、バイオマスガスを精製する装置である。このガス精製部4には、内部に脱塵用フィルター、タールを吸着させるための活性炭、木炭、砂等の吸着剤が充填されていて、ガス精製温度は200〜900℃に制御されている。
【0061】
このガス精製部4は2系列有し、内部の吸着剤が破過する前に流路を切り替えられる構成になっている。例えばガス化部2からのバイオマスガスの流路が第1系のガス精製部4aに接続されていたのを、吸着剤が破過する前に第2系のガス精製部4bに流路を切り替えるのである。図はその構成になっていて、切り替え手段4cにより流路を切り替えられるようにしている。
【0062】
このような構成にすれば、切り替えにより停止した第1系のガス精製部4aの破過直前の吸着剤を取り出し、新しい吸着剤を充填し待機させることができる。第2のガス精製部4bの吸着剤が破過直前になれば第1のガス精製部4aに流路を再び切り替える。このことを繰り返し行えば、ガス精製工程を停止することなく連続的に進めることができる。
【0063】
次にガス精製部4で精製されたバイオマス精製ガスは、液体化した液体燃料を製造するために液体燃料製造部5に送り込まれる。液体燃料製造工程は、ガス精製工程の送出口側に接続されていて精製されたバイオマス精製ガスを受け入れる。液体燃料製造工程では、望ましい液体燃料を製造するための触媒が充填されている。液体燃料がメタノールであればCu−Zn系触媒であり、ジメチルエーテルは前記メタノール2分子を脱水した構造を有しているため、脱水用触媒としてγ−アルミナ触媒の添加が必要である。また、液体燃料がガソリン、灯油および軽油といった炭化水素系のものであればFe、Co、Ru系触媒を用いる。
【0064】
このように触媒を変えることで各々の目的生成物を得ることができる。この液体燃料製造部5では、触媒反応により100〜400℃の温度で1〜5MPaの圧力範囲で液体燃料を製造する。この製造された液体燃料は液体燃料原液として気液分離部6へ送り込まれる。液体燃料製造部5で製造した液体燃料原液は、水および軽質炭化水素等を含んでいる。このため、この気液分離部6で液体燃料精製液、水、軽質炭化水素、未反応ガス等に分離される。分離された水はこの工程で凝縮し気液分離部6外に排出される。
【0065】
次にこの気液分離部6で分離された液体燃料精製液は減圧回収部7へ送り込まれる。この減圧回収部7では分離された液体燃料精製液を冷却し減圧する。減圧回収部7には減圧弁7aが設けられていて、気液分離部7の送り出し口に接続している。水及び液体燃料は飽和蒸気圧曲線が異なり、冷却工程で沸点が高い物質から液体として系外に取り出すことができる。減圧弁7aを介して取り出された液体燃料精製液が利用可能な正規の製品としての液体燃料7bであり、タンク等に回収される。
【0066】
[第2の実施の形態]
図2は本実施の形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置の第2の実施の形態を示す図である。液体燃料製造工程において、1回の工程だけで処理ができない場合を考慮した実施形態である。液体燃料製造部5で液体化されなかった未反応ガスをこの液体燃料製造部5の受け入れ口に戻す流路5aを設けたものである。この流路5aを設けたことにより、バイオマス精製ガスをこの液体燃料製造部5に何回も流すことによって、未反応ガスを再使用の形で液体化させる。従って、バイオマス精製ガスを効率よく液体化させることができる。
【0067】
[第3の実施の形態]
図3は本実施の形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置の第3の実施の形態を示す図である。バイオマス液体燃料原液を気液分離部6の冷却工程で液体燃料および水と分離された後、未反応ガスをガス化工程上流に流路6aを介して戻すように構成した。これにより、未反応ガスを再度ガス化し、再度液体化処理を行い、再度気液分離処理を行うのである。このように本実施の形態はCOと水素に効率良く転換できるような構造を有している。
【0068】
[第4の実施の形態]
図4は本実施の形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置の第4の実施の形態を示す図である。バイオマス液体燃料原液を気液分離部6の冷却工程で液体燃料および水と分離された後、未反応ガスを液体燃料製造工程上流に流路6bを介して戻すように構成した。これにより、未反応ガスを再度液体化処理を行い、再度気液分離処理を行う。
【0069】
第2〜第4の実施の形態は、いずれも未反応物を同一装置内を循環させ再使用することにより、バイオマスを無駄なく有効に利用し、液体燃料の収率を高める例である。次にいずれの実施の形態においても適用可能な他の実施形態を説明する。即ち、バイオマスからの液体燃料製造装置の下部に据え付け台8を設け、この据え付け台8を介して前記液体燃料製造装置を運搬できるようにした例と、バイオマスからの液体燃料製造装置の下部に移動台車9を設け、この移動台車9を介して前記液体燃料製造装置を移動できるようにした例である。
【0070】
例えば、装置の下部の据え付け台8をクレーン等で持ち上げ液体燃料製造装置を所定位置に運搬することができる。又、装置の下部の移動台車9を人手又は動力で牽引することで液体燃料製造装置を所定位置に移動することができる。実施の形態を示す図は、移動台車9を設けた図にしているが、据え付け台8であってもよい。
以上、実施の形態例を種々説明したが、本発明はこれら実施形態例に限定されないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0071】
木質系バイオマスとして、10.2gの米松(Douglas fir、Pseudotsuga menziesii)を用いた。表1に分析結果を示す。タール分解触媒として、29.2gのドロマイト(Yoshizawa Lime Industry Co.,Ltd.製)を用いた。タール吸着剤として、15.0gの市販の活性炭(2−4mm)を用いた。DME合成用触媒として、Engelhard社製のCu/Zn系触媒とγ―Al2O3を物理混合させ、活性炭(2−4mm)に整粒したものを16.0g用いた。DMEは、ジメチルエーテル Di―Methyl Etherの略称である。燃焼時に硫黄酸化物やすすの出ないクリーンエネルギーとして注目されているものである。実施例1はDMEによる液体生成技術の実施例である。
【表1】
【0072】
実施例1として、図5に加圧ガス化―DME合成用実験装置のブロック図を示す。この装置の構成は、主に加圧水蒸気ガス化部、ドロマイトを用いたタールクラッキング部、活性炭を用いたガスクリーニング部、DME合成部からなる。
【0073】
この実施例での生成は次のように行った。まず3方バルブ21はXの方向へガスを流すようになっている。加圧水蒸気ガス化部11では、あらかじめ反応器内に供給されたバイオマス原料13、即ち米松を、マスフローコントローラ30で流量を調整した窒素気流中で、電気炉14により加熱し、熱分解を行い、米松をchar化した。その後、水蒸気を導入し、charの加圧水蒸気ガス化を行った。
【0074】
熱分解ガスは、背圧弁22を通過した後のガスをガスクロマトグラフGCで分析した。DME合成後のガスは、背圧弁26を通過したガスをガスクロマトグラフGCで分析した。
【0075】
熱分解が落ち着いた後、水が送水ポンプ15を介して送水加熱され、charに接触して加圧水蒸気ガス化される。これはcharの水蒸気ガス化により、COと水素が豊富なガスを安定して得られるためである。この水蒸気ガス化されたガス体をドロマイト17に通して、タールの分解、即ち、タールクラッキングし、ガス変換を促進させた。
【0076】
次に、連続工程の中で、このガス体をガスクリーニング部に移送し、ガスの精製を行う。リボンヒーター18を介してガスを保温し、活性炭20によりクリーニングした。クリーニングされたガス体を3方バルブ21を介して定められた方向に、且つ背圧弁22により常圧に減圧したガスをガスクロマトグラフGCで分析し、COとH2の組成が高くなったことを確かめた。
【0077】
その後、3方バルブ21をY側へ切り替え、COとH2の組成が高いガスを、背圧弁26により所定圧力を維持しながら液体化工程に送り、DME合成用触媒23としてCu/Zn触媒とγ―Al2O3の触媒混合物に通し、DMEを合成し、背圧弁26を通過させ、ガスクロマトグラフGCによりDMEの組成を分析し、積算流量計27を通過させた後、ガス捕集バッグ28へ捕集した。
【0078】
この一連の生成処理条件は、木材の熱分解・charの水蒸気ガス化温度は850℃、タールクラッキング部のクラッキング温度は730℃、活性炭によるガスクリーニング温度は300℃、DME合成の温度は250℃であった。全ての工程で圧力を3MPaとした。実験当初に3方バルブ21の切換え方向をX側にし、charの水蒸気ガス化で得られたガス測定をガスクロマトグラフGCにより行った。次に送水ポンプにより水を導入することで、加圧水蒸気ガス化―高温ガスクリーニング部において、圧力3MPaで20cc/min(STP)の窒素気流中で、ドロマイト17、活性炭20が充填されたガスクリーニング部を750℃、300℃にそれぞれ加熱した後、ガスクロマトグラフGCにおいてCOと水素の組成が高くなったことを確認した後、3方バルブ21のX側を閉じY側を開いて実験を開始した。
【0079】
TCD(熱伝導度検出器、3000A Micro GC:Agilent、Molecular Sieve―5A、Porapak U)を備えたガスクロマトグラフを用いて、ガスクリーニング後のガス組成(背圧弁22を通過したガスの測定)およびDME合成後のガス組成(背圧弁26を通過したガスの測定)の分析を行った。その結果は図6及び図7に示すとおりであった。
【0080】
図6は、ガス化炉、ドロマイト層の温度の経時変化、湿式ガスメーターで測定した流速およびH2、CO、CH4,CO2の濃度の経時変化を示す。又、図7は、低い組成であったC2H4、C2H6、DMEの濃度の経時変化を示す。詳細に説明すると、図6において、0〜100min間では、まずドロマイト(MgCO3、CaCO3の混合物)の加熱で、脱炭酸反応が進行することにより放出されるCO2が高い濃度で検出された。これは、木材とドロマイトを同時に加熱すると、木材の熱分解由来のCO2と、ドロマイト加熱による脱炭酸反応由来のCO2が区別できないからである。
【0081】
その後、木材の加圧水蒸気ガス化部を加熱し、望ましい温度、即ち850℃に達した後、熱分解による炭化水素の発生が落ち着いた後、0.1g/minの速度で水蒸気を導入することで、高圧水蒸気ガス化を開始した(150min時点)。
【0082】
ここで、熱分解を始めると同時に、DME合成部では、300cc/minの水素60%、窒素40%のガスを触媒層に300℃、常圧導入(0min時点)し、1.5時間水素還元を行った。その後、窒素気流中で室温まで冷却し、3MPaに加圧した。170min経過した時点で3方バルブ21をY側にし、加圧水蒸気ガス化によるガス体(COと水素の組成が高いガス)をDME合成部に導入し、DME合成を開始した。その後各組成分は一定の値を示した。
【0083】
図7において、210min時点経過以降にDMEが検出され始めた。DMEの検出は360min時点まで続いた。この結果から、圧縮工程、再加熱工程のない実験装置を用いて、木質系バイオマスからDMEを連続的に150min間合成できることが確認された。
【0084】
又、投入したバイオマス中の炭素に対し、炭素基準でどの程度生成物に分配されたかを検証した。その結果、炭素転換率(投入木材中のカーボン基準)として、CO,CO2,CH4、C2:62%、DME:3%、チャ−:19%、活性炭付着タール:1%、不明:15%であった。
この結果では、投入した炭素基準で3%がDMEに変換できたことになる。
【実施例2】
【0085】
木質系バイオマスとして、20.0gの米松(Douglas fir、Pseudotsuga menziesii製)を用いた。タール分解触媒として、29.9gのドロマイト(Yoshizawa Lime Industry Co.,Ltd.製)を用いた。タール吸着剤として、15.0gの市販の活性炭(2−4mm)を用いた。炭素水素合成用触媒として、2.0gのアルミナ担持ルテニウム触媒(Ru content:5wt%、Wako Pure Chemical Industries、Ltd.製)を用いた。
【0086】
実施例2として、図8に加圧水蒸気ガス化―炭化水素合成に用いた実験装置のブロック図を示す。本実験装置の構成は、主に加圧水蒸気ガス化部、ドロマイトを用いたタールクラッキング部、活性炭を用いたガスクリーニング部、FT合成部からなる。
【0087】
FT合成部の技術とは、フィッシャートロプシュ合成の略称で、一酸化炭素と水素の混合ガスである合成ガスを触媒上で、反応式nCO+(2n+1)H2→CnH2n+2+nH2Oにより反応させ、液体化する技術である。バイオマス等を原料として簡素に製造できるので注目されているものである。実施例2は炭素水素合成による液体生成技術の実施例である。この実施例の生成は次のように行った。
【0088】
実施例1同様に、加圧水蒸気ガス化部11内には、あらかじめバイオマス原料である米松を投入した。その後、マスフローコントローラ30を用いて、窒素を流通させながら電気炉14により、米松の熱分解を行い、char化した。熱分解による炭化水素の発生が落ち着いた後、水を送水ポンプ15を介して送水加熱され、charに接触し水蒸気ガス化される。この水蒸気ガス化されたガス体はドロマイト17を通過してタールクラッキングを行った。
【0089】
次に、連続工程の中でこのガス体をガスクリーニング部に移送し、リボンヒーター18を介して保温され、活性炭20によりクリーニングした。クリーニングされたガス体をFT合成用触媒29としてアルミナ担持ルテニウム(Ru/Al2O3)触媒を用い、液体化した。3方バルブ21は、2方向の切換弁である。次に、気液分離を行い、燃料用の液体を取り出す。液体は液体捕集管25に回収し、ガス部分は背圧弁26を通し、積算流量計27を介しガス捕集バッグ28に回収した。
【0090】
実験当初に3方バルブ21の切換え方向をX側にし、熱分解によるガスの測定を行った。加圧水蒸気ガス化―高温ガスクリーニング部では、3MPaにおいて、200cc/min(STP)の窒素気流中で、ドロマイト、活性炭が充填されたガスクリーニング部を750℃、300℃にそれぞれ加熱することで、実験を開始した。その後、ガス化部を加熱し、望ましい温度800℃に達し、char化を行った。熱分解による炭化水素の発生が落ち着いた後、0.1g/minの速度で水蒸気を導入することで、加圧水蒸気ガス化を開始した。
【0091】
熱分解開始と同時に、FT合成部では、130cc/minの水素20%、窒素80%のガスを触媒層に300℃、常圧導入し(0min時点)し、1.5時間水素還元を行った。その後、窒素気流中で180℃に冷却し、3MPaに加圧した。220min時点において、3方バルブ21のX側をY側にして、加圧水蒸気ガス化によるガスを炭化水素合成部に導入し、230℃でFT合成の実験を開始(220min時点)した。
【0092】
TCD(熱伝導度検出器、3000A Micro GC:Agilent、Molecular Sieve―5A、Porapak U)及びFID(水素火炎検出器、GC353B:GL Sciences、DB-1、Squalane)を備えたガスクロマトグラフを用いて、FT合成前後でのガスの分析を行った。
【0093】
生成物の定義と分離手順は以下の通りである。ガスは湿式ガスメーター27(W-NK-0.5:Shinagawa)を通過した後、ガス捕集バッグ28に捕集した。原料バイオマス13の熱分解を開始(120min時点)して以降、捕集したガスを生成ガスとした。活性炭20に吸着した物質をタールとした。実験後の活性炭20をアニソールを用いて常温で30min間洗浄することで、タールのアニソール溶液を得た。炭化水素化合物は以下の様に捕集した。実験後、触媒及び液体捕集管25内の液体をジクロロメタンで洗浄した。ろ過した後、ろ液を静置させて水相および油相に分離し、炭化水素化合物のジクロロメタン溶液を得た。
【0094】
ガス捕集バッグ28に捕集したガスは、TCD及びFIDを備えたガスクロマトグラフGCで分析した。アニソール溶液中のタールの炭素数はNPgram法を用いて測定した。生成物としての炭化水素は内部標準法を用いて以下のように定量した。ジクロロメタン溶液に標準物質としてナフタレンを添加した。その溶液をFIDを備えたガスクロマトグラフGCで分析した。
炭素数nの炭化水素の炭化数は以下のように計算した。
N(Cn)=A(Cn)/A(C10H8)×N(C10H8)
ここで、N(Cn):ジクロロメタン溶液中のCnH2n+2の炭素数。N(C10H8):ジクロロメタン溶液中のC10H8中の炭素数。A(Cn):CnH2n+2のエリア。A(C10H8):C10H8のエリアである。
【0095】
尚、実施例1の図5及び実施例2の図8に示される符号12、16、19はいずれも熱電対を示している。又、符合24は、液体燃料製造工程におけるパージ用ラインを示している。これらの実施例に具体的には示されていないが、ガス化部でガス化されない未反応物を燃焼させ、発生した熱を加圧水蒸気ガス化部へ供給することを可能とし、無駄なくガス化する構成としている。
【0096】
図9に高温ガスクリーニング後のガスの経時変化を示す。図10に生成ガスの経時変化を示す。実験中、タールトラブルによる閉塞のようなあらゆる問題がなく、高圧ガス化し、それに続く高温ガスクリーニング及びFT合成は180min間(220〜400min時点)連続的に処理できた。図9において、タール分解触媒としてのドロマイトの加熱により、60〜120minの間、高い濃度のCO2(□印)が検出された。続いて、木材の熱分解により、150〜220minの間、CO2、CO(〇印)、H2(●印)及びCH4(△印)の明確な発生が認められ、200minにおいて、H2:17.2mol%、CH4:24.1mol%、CO:7.9mol%、CO2:17.1mol%のガスが得られた。
【0097】
その後、水蒸気ガス化により、H2、CO2は上昇し、CO、CH4は減少した。図9及び図10において、250分以降のFT合成前(図9)のCO、H2,CCO2、CH4組成と合成後(図10)のそれらを比較した。FT合成前のCOは6.9〜12.3mol%であり、FT合成後は0.7〜2.4mol%であった。従って、FT合成工程におけるCO転換率はおよそ87〜97mol%C−basisであった。FT合成工程を通過すると、H2は約33から1mol%へ減少し、CO2は、およそ12から18mol%、CH4はおよそ5から20mol%へ増加した。さらに、生成ガス中に炭素数2から4の炭化水素(×)が含まれていた。これらの結果は、COがC1からC4の炭化水素に転換されたことを示している。
【0098】
図11に標準物質としてナフタレンを添加したジクロロメタン溶液のGC−FIDチャートを示す。縦軸は電圧を示す。炭素数8から29の炭化水素に帰属した明確なピークを得ることができた。この結果は、我々が提案した、加圧に係る設備がなく、再加熱行程がないシンプルなBTLプロセスを用いて、木質系バイオマスから炭化水素の製造に成功したことを示している。
【0099】
表2に炭素基準での各生成物への分配を示す。C8からC29の炭化水素へは、0.03C−mol%の収率で得られた。一方、lossはー0.24C−mol%であることから投入した炭素はほぼ回収できた。CH4、CO,CO2、C2H2、C2H6、C3H8およびn−C4H10のようなガスへの分配は、トータルで64.54%であった。CH4とCO2へおよそ58%転換している。これが低い炭化水素収率の原因の一つと推定される。従って、生成ガスの一部をガス化工程へリサイクルすることが望ましい。
【表2】
【0100】
charへの分配は35.46%であった。炭素源としてのcharは反応器内に残留していたが、400min以降は反応器内の圧力を3MPaに保つために、充分な生成ガス量が得られなかった。従って、さらなる検討では複数の高圧ガス化工程を設け、それらを切り換えることで、さらなる長時間運転が期待できる。又、charを熱源として利用することも可能である。
【0101】
本実施例では、高温ガスクリーニングを用いた。反応後の活性炭には、投入炭素量の0.21%がタールとして吸着していた。これは、高温ガスクリーニングにおいて、活性炭がタール除去能力を有していることを示している。水を使わないガスクリーニングは、結果として排水処理コストを低減できる可能性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のバイオマスからの液体燃料製造装置、すなわち、再生可能なバイオマスから高効率に液体燃料を製造し、かつ経済性の高いプラントに関するものであるが、その原理を生かせる限り、他の分野、例えば、低質な石炭の利用分野に適用可能であり、その利用分野は広範囲に及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】第1の実施形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置のブロック図である。
【図2】第2の実施形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置のブロック図である。
【図3】第3の実施形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置のブロック図である。
【図4】第4の実施形態に係るバイオマスからの液体燃料製造装置のブロック図である。
【図5】実施例1に係るバイオマスからのDME製造装置のブロック図である。
【図6】実施例1に係る触媒層通過後のガス組成の経時変化である。
【図7】実施例1に係る触媒層通過後のガス組成の経時変化である。
【図8】実施例2に係るバイオマスからの炭化水素燃料製造装置のブロック図である。
【図9】実施例2に係る触媒層前のガス組成の経時変化である。
【図10】実施例2に係る触媒層後のガス組成の経時変化である。
【図11】標準物質としてナフタレンを添加したジクロロメタン溶液のGC−FIDチャート図である。
【符号の説明】
【0104】
1.燃焼炉
2.ガス化部
3a、3b.触媒収納部
4.ガス精製部
5.液体燃料製造部
5a.流路
6.気液分離部
6a、6b.流路
7.減圧回収部
7a.減圧弁
7b.液体燃料
8.据え付け台
9.移動台車
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを一定量保持して加熱体で加熱しガス化するガス化部と、
前記ガス化部により発生したバイオマスガスから粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物から選択される少なくとも1つ以上の物質を除去し、前記バイオマスガスを精製するガス精製部と、
前記精製されたバイオマス精製ガスを液体化してバイオマス液体燃料原液を製造する液体燃料製造部と、
前記バイオマス液体燃料原液をバイオマス液体燃料、水および軽質炭化水素に分離する気液分離部と、
前記気液分離部で分離されたバイオマス液体燃料を減圧して回収する減圧回収部と、
前記ガス化部でガス化されない未反応物を燃焼させ、発生した熱を前記ガス化部へ供給する燃焼部と
からなるバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記ガス化部は、バイオマスを600〜1000℃の温度で加熱し、1〜5MPaの圧力範囲でガス化することを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記ガス化部の底部にタール分解用触媒を設けていることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記ガス化部を複数有し、この複数のガス化部から所要のガス化部を選択し前記ガス精製部に接続することにより、前記複数のガス化部を順次稼動させる構成になっていることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項5】
請求項1から4に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記ガス化部は、バイオマスが含む水分を含む供給水蒸気とバイオマス中の炭素のモル比を0から1の範囲でガス化することを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項6】
請求項1から4に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記ガス精製部は、前記バイオマスガスから粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物から選択される少なくとも1つ以上の物質を200〜900℃の温度で、1〜5MPaの圧力範囲で除去することを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項7】
請求項1から6に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記ガス精製部を2つ有し、一方のガス精製部の吸着剤が破過する前に他方のガス精製部に流路を切り替えることができ、交互に使用が可能な構造を有していることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項8】
請求項1から7に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記液体燃料製造部は、精製した前記バイオマス精製ガスを触媒反応により100〜400℃の温度で、1〜5MPaの圧力範囲で液体化することを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項9】
請求項1から8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記気液分離部は、気液分離を室温から100℃の温度で行うことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項10】
請求項1から8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記液体燃料製造部は、液体化できず排出された未反応前記バイオマスガスを再度液体化処理できるように前記液体燃料製造部に戻す構成にしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項11】
請求項1から8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記気液分離部は、気液分離できなかった未反応バイオマスガスを再度ガス化処理できるように前記ガス化部へ送り込むことを可能とした構成にしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項12】
請求項1から8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記気液分離部は、気液分離できなかった未反応バイオマスガスを再度液化処理できるように前記液体燃料製造部へ送り込むことを可能とした構成にしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項13】
請求項1から9に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記未反応物はチャーであり、前記燃焼部は反応後停止中のガス化部から取り出した前記チャーを燃焼させる装置であることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項14】
請求項1から13に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記液体燃料製造装置の下部に据え付け台を設け、前記据え付け台を介して前記液体燃料製造装置を運搬できるようにしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項15】
請求項1から13に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記液体燃料製造装置の下部に移動台車を設け、前記移動台車を介して前記液体燃料製造装置を移動できるようにしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項16】
請求項3に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記タール分解用触媒は、ドロマイト、CaO、Ni系触媒、Rh系触媒から選択される1の触媒であることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項17】
請求項8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記触媒反応は、Cu―Zn系触媒、脱水用触媒としてγ―アルミナの添加、又はFe、Co、Ru系触媒から選択される1の触媒で反応させることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項18】
請求項8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記触媒反応は、Cu/Zn触媒とγ―Al2O3を混合させた触媒による反応であることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項19】
請求項8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記触媒反応は、アルミナ担持ルテニウム触媒による反応であることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項20】
請求項1から19に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記バイオマスは木質系バイオマスであることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項1】
バイオマスを一定量保持して加熱体で加熱しガス化するガス化部と、
前記ガス化部により発生したバイオマスガスから粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物から選択される少なくとも1つ以上の物質を除去し、前記バイオマスガスを精製するガス精製部と、
前記精製されたバイオマス精製ガスを液体化してバイオマス液体燃料原液を製造する液体燃料製造部と、
前記バイオマス液体燃料原液をバイオマス液体燃料、水および軽質炭化水素に分離する気液分離部と、
前記気液分離部で分離されたバイオマス液体燃料を減圧して回収する減圧回収部と、
前記ガス化部でガス化されない未反応物を燃焼させ、発生した熱を前記ガス化部へ供給する燃焼部と
からなるバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記ガス化部は、バイオマスを600〜1000℃の温度で加熱し、1〜5MPaの圧力範囲でガス化することを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記ガス化部の底部にタール分解用触媒を設けていることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記ガス化部を複数有し、この複数のガス化部から所要のガス化部を選択し前記ガス精製部に接続することにより、前記複数のガス化部を順次稼動させる構成になっていることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項5】
請求項1から4に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記ガス化部は、バイオマスが含む水分を含む供給水蒸気とバイオマス中の炭素のモル比を0から1の範囲でガス化することを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項6】
請求項1から4に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記ガス精製部は、前記バイオマスガスから粒子状物質、タール、硫黄化合物および窒素化合物から選択される少なくとも1つ以上の物質を200〜900℃の温度で、1〜5MPaの圧力範囲で除去することを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項7】
請求項1から6に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記ガス精製部を2つ有し、一方のガス精製部の吸着剤が破過する前に他方のガス精製部に流路を切り替えることができ、交互に使用が可能な構造を有していることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項8】
請求項1から7に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記液体燃料製造部は、精製した前記バイオマス精製ガスを触媒反応により100〜400℃の温度で、1〜5MPaの圧力範囲で液体化することを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項9】
請求項1から8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記気液分離部は、気液分離を室温から100℃の温度で行うことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項10】
請求項1から8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記液体燃料製造部は、液体化できず排出された未反応前記バイオマスガスを再度液体化処理できるように前記液体燃料製造部に戻す構成にしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項11】
請求項1から8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記気液分離部は、気液分離できなかった未反応バイオマスガスを再度ガス化処理できるように前記ガス化部へ送り込むことを可能とした構成にしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項12】
請求項1から8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記気液分離部は、気液分離できなかった未反応バイオマスガスを再度液化処理できるように前記液体燃料製造部へ送り込むことを可能とした構成にしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項13】
請求項1から9に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記未反応物はチャーであり、前記燃焼部は反応後停止中のガス化部から取り出した前記チャーを燃焼させる装置であることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項14】
請求項1から13に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記液体燃料製造装置の下部に据え付け台を設け、前記据え付け台を介して前記液体燃料製造装置を運搬できるようにしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項15】
請求項1から13に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置から選択される1項において、前記液体燃料製造装置の下部に移動台車を設け、前記移動台車を介して前記液体燃料製造装置を移動できるようにしたことを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項16】
請求項3に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記タール分解用触媒は、ドロマイト、CaO、Ni系触媒、Rh系触媒から選択される1の触媒であることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項17】
請求項8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記触媒反応は、Cu―Zn系触媒、脱水用触媒としてγ―アルミナの添加、又はFe、Co、Ru系触媒から選択される1の触媒で反応させることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項18】
請求項8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記触媒反応は、Cu/Zn触媒とγ―Al2O3を混合させた触媒による反応であることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項19】
請求項8に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記触媒反応は、アルミナ担持ルテニウム触媒による反応であることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【請求項20】
請求項1から19に記載のバイオマスからの液体燃料製造装置において、前記バイオマスは木質系バイオマスであることを特徴とするバイオマスからの液体燃料製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−189704(P2008−189704A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22494(P2007−22494)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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