説明

バイオマスガス化方法

【課題】スラリー中のバイオマス濃度を高めても400℃程度の低温領域でバイオマスをガス化することができるバイオマスガス化方法を提供する。
【解決手段】バイオマスを水に混練させたバイオマススラリーを熱分解反応装置に供給し、超臨界状態で前記バイオマスを熱分解する熱分解工程と、熱分解工程で生じた生成物及び酸化剤を酸化反応装置に供給し、熱分解工程で副生成した固体高分子物質を酸化反応装置内に20秒以上滞留させて酸化剤で酸化分解する酸化分解工程と、酸化分解工程で生じた生成物を触媒反応装置に供給し、ガス組成物にするガス組成物生成工程と、ガス組成物の温度及び圧力を下げて気化させる気化工程と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界水によりバイオマスをガス化するバイオマスガス化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効活用の一環として、植物又はその廃材、家畜排泄物、生ゴミ、食品廃棄物、下水汚泥などのバイオマスを原料としたエネルギー変換技術の開発が進められている。バイオマスを原料としたエネルギー変換技術として、例えば、非特許文献1では、バイオマスを超臨界水でガス化し、水素やメタン等の燃料ガスを生成する方法が開示されている。
【0003】
非特許文献1では、主に熱分解反応装置、酸化反応装置、及び触媒反応装置が順に配置されたガス化装置を用いて、グルコース等のバイオマスから水素やメタン等のガスを精製している。スラリー化したバイオマスを熱分解反応装置で400℃程度の低温で低分子化し、酸化反応装置では熱分解反応装置内で副生成したタールやチャー等の固体高分子を分解し、触媒反応装置にてこれらをガス組成物とした後、気化させてガス化している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Partial Oxidative and Catalytic Biomass Gasification in Supercritical Water: A Promising Flow Reactor System ;Takuya Yoshida,Yoshito Oshima;Ind.Eng.Chem.Res.2004,43,4097−4104
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1では、炭素ガス化率で凡そ95%を実現するには、スラリー中に含有させることができるバイオマス濃度は0.4重量%と低い。スラリー中のバイオマス濃度を0.4重量%より高めて処理すると、副生成するチャー等の固体高分子物質を低分子化できず、ガス化率を高めることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スラリー中のバイオマス濃度を高めても400℃程度の低温度でバイオマスをガス化することができるバイオマスガス化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバイオマスガス化方法は、
バイオマスを水に混練させたバイオマススラリーを超臨界状態で連続的にガス化するバイオマスガス化方法であって、
前記バイオマススラリーを熱分解反応装置に供給し、超臨界状態で前記バイオマスを熱分解する熱分解工程と、
前記熱分解工程で生じた生成物及び酸化剤を酸化反応装置に供給し、前記生成物に含まれる固体高分子物質を前記酸化反応装置内に20秒以上滞留させて前記酸化剤で酸化分解する酸化分解工程と、
前記酸化分解工程で生じた生成物を触媒反応装置に供給し、ガス組成物にするガス組成物生成工程と、
前記ガス組成物の温度及び圧力を下げて気化させる気化工程と、
を具備することを特徴とする。
【0008】
また、前記酸化反応装置内に前記固体高分子物質を30秒以上滞留させることが好ましい。
【0009】
また、上下方向に延在する筒状の前記酸化反応装置を用い、
前記酸化剤を前記酸化反応装置の下部から供給し、
前記熱分解工程で生じた生成物を前記酸化反応装置の側部から下向きに供給し、
前記ガス組成物を前記酸化反応装置の上部から排出することが好ましい。
【0010】
また、前記熱分解工程、前記酸化分解工程、及び、前記ガス組成物生成工程を374〜500℃、22〜30MPaの条件下で行うことが好ましい。
【0011】
また、前記熱分解反応装置内のレイノルズ数が3000以上になるように前記バイオマススラリーを連続的に前記熱分解反応装置に供給し、副生成した前記固体高分子物質が前記熱分解反応装置の内壁に付着することを抑制することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るバイオマスガス化方法では、熱分解工程で副生成するチャー等の固体高分子物質を酸化反応装置に20秒以上滞留させて酸化剤と反応させている。これにより、固体高分子物質は効率的に分解、低分子化させることができる。このため、400度程度の低温度領域でも、凡そ5重量%のバイオマススラリーをガス化することを実現している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】バイオマスガス化方法の工程図である。
【図2】バイオマスガス化方法に用いるバイオマスガス化装置の概略構成図である。
【図3】酸化反応装置の概略図である。
【図4】実施例1で用いたバイオマスガス化装置の概略構成図である。
【図5】(A)、(B)、(C)はそれぞれ実施例1に用いた酸化反応装置の寸法図である。
【図6】実施例1で生成した液体生成物成分のSECクロマトグラムである。
【図7】実施例1で生成した気体生成物のガス組成及び生成量を示すグラフである。
【図8】実施例2で生成した気体生成物の経時変化を示すグラフである。
【図9】実施例2における全生成物の炭素収率の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態に係るバイオマスガス化方法は、図1の工程図に示すように、熱分解工程、酸化分解工程、ガス組成物生成工程、気化工程とから構成される。バイオマスガス化方法は、一例として、図2に示すバイオマスガス化装置1を用いて実現され得る。
【0015】
図2に示すバイオマスガス化装置1は、バイオマススラリー容器11、酸化剤容器13、ポンプ12、14、熱分解反応装置15、酸化反応装置16、触媒反応装置17、予熱器18、加熱装置19、熱交換器20、背圧弁21、気液分離器22から構成される。
【0016】
以下、バイオマスガス化装置1を参照しつつ、バイオマスガス化方法の各工程について説明する。
【0017】
(熱分解工程)
まず、熱分解工程について説明する。熱分解工程は、バイオマススラリー中の水が超臨界状態になるように加熱し、バイオマスを熱分解する工程である。
【0018】
バイオマススラリー容器11には、バイオマスと水とを混練したバイオマススラリーが充填されている。ポンプ12を駆動させることで、バイオマススラリー11内のバイオマススラリーが熱分解反応装置15に連続して供給される。
【0019】
熱分解反応装置15は、溶融塩浴等の加熱装置19によって所定の反応温度に加熱されている。そして、バイオマススラリーが熱分解反応装置15へ加圧送液されるので、バイオマススラリーは熱分解反応装置15内にて超臨界状態で分解され、低分子化される。バイオマスを熱分解することで、メタンや水素のほか、有機酸やアルデヒド類、フェノール類が生成することになる。
【0020】
超臨界状態で行うことで、バイオマススラリー中の水分が蒸発しない。したがって、加熱装置19が加える熱は水分の蒸発に使われず、バイオマスの分解に使われるので、効率的にバイオマスが分解される。これにより、バイオマスの分解を低い温度で行うことが可能になる。
【0021】
熱分解における温度は、374.15〜500℃の範囲で行うことが好ましい。また、熱分解における圧力は、22.1〜30MPaの範囲で行うことが好ましい。上記の温度範囲、及び、圧力範囲でバイオマスを熱分解することで、効率的にバイオマスを分解して低分子化することができる。
【0022】
熱分解工程は上記の比較的低温度領域で行うと、生成したフェノール類、アルデヒド類等の重合反応が生じ、タールやチャー等の固体高分子物質の副生成を避けられない。副生成した固体高分子物質は熱分解反応装置15の内壁に付着し、熱分解反応装置15を閉塞させてしまうおそれがある。
【0023】
このため、熱分解反応装置15内のレイノルズ数が3000以上になるように、バイオマススラリーを供給するとよい。熱分解反応装置15内のレイノルズ数が3000以上であれば、熱分解反応装置15内のバイオマススラリーの流れが乱流となる。乱流を生じさせることで、生成したチャー等の固体高分子物質が熱分解反応装置15の内壁に付着することが抑制され、熱分解反応装置15の内部が閉塞することもなく、チャー等の固体高分子物質は熱分解反応装置15から排出される。
【0024】
(酸化分解工程)
酸化分解工程は、熱分解工程にて副生成した固体高分子物質を低分子化する工程である。
【0025】
熱分解工程で生成した生成物は、酸化反応装置16に供給される。また、酸化剤容器13に酸化剤が充填されており、ポンプ14を駆動することによって酸化剤容器13から酸化剤が酸化反応装置16に供給される。これにより、酸化反応装置16内では、熱分解工程で生成した固体高分子物質が、酸化剤によって分解され、低分子化される。
【0026】
用いる酸化剤として、酸化力を有し、チャー等の固体高分子物質を分解・低分子化可能な物質であれば、特に制限はない。一例として、過酸化水素水が挙げられる。酸化剤は予熱器18を経由させて、予め加熱した後に酸化反応装置16に供給するとよい。これにより、固体高分子物質の低分子化が促進される。
【0027】
後述の実施例にて説明するが、固体高分子物質を酸化反応装置16内に20秒以上滞留させることで、ほとんどの固体高分子物質を分解し、低分子化させることができる。より好ましくは、固体高分子化合物を酸化反応装置16内に30秒以上滞留させるとよい。
【0028】
酸化反応装置16として、図3に示す上下方向に延在する筒状の酸化反応装置16aを用いるとよい。酸化反応装置16aは、下端部に酸化剤が供給される酸化剤流入口が備えられており、ここから上向きに酸化剤が流入する。また、熱分解工程で生じた生成物は酸化反応装置16aの側部から下向きに供給される。これにより、固体高分子物質と酸化剤が接触しやすく、反応が促進され、固体高分子物質の低分子化が促進される。そして、低分子化した生成物は、酸化反応装置16a上端部の排出口から排出される。
【0029】
上記の好ましい滞留時間とするためには、酸化反応装置16aの寸法を変更すること、或いは、バイオマススラリーの流量を制御すること等で調節すればよい。
【0030】
なお、バイオマスに無機物質が多量に含まれている場合、酸化反応装置16下部に析出する無機物質を定期的に除去する装置を取り付け、この無機物質を除去してもよい。
【0031】
(ガス組成物生成工程)
上記工程を経過して排出された生成物は、ガス組成物であるメタンや水素の他、有機酸やアルデヒド類、フェノール類等の物質が含まれているので、ガス組成物生成工程にて、これら有機酸やアルデヒド類等を更に低分子化し、メタンや水素等のガス組成物を生成する。
【0032】
酸化反応装置16で生成された生成物を、触媒が充填された触媒反応装置17に通過させることで、上記有機酸等がメタン等のガス組成物となる。用いる触媒としては、有機化合物の分子を分解し、より小さな分子に変換する所謂ガス化触媒を用いるとよい。例えば、還元ニッケル触媒が挙げられる。
【0033】
(気化工程)
上記熱分解工程、酸化分解工程、及び、ガス組成物生成工程は全て加熱装置19内で行われており、これらの工程を経て得られたガス組成物は超臨界状態にあるので、気化工程にてこれらのガス組成物を気化させる。
【0034】
触媒反応装置17から排出されたガス組成物を熱交換器20に通じ、更に、背圧弁21を通過させる。超臨界状態にある液状のメタンや水素等のガス組成物の温度及び圧力を下げ、常温・常圧にすることで、メタンガスや水素ガス等にすることができる。熱交換器20及び背圧弁21のほか、温度及び圧力を低下させる装置であればいずれをも用いてもよい。
【0035】
その後、気液分離器22を通過させることで、メタンガス等の気体と水とを容易に分離させることができ、メタンガス等を回収することができる。気液分離器22は、気体成分と液体成分とに分離できる装置であれば、いずれをも用いることができ、例えば、セパレータ等の既存の気液分離器22を用いることができる。
【0036】
400℃程度の低温度領域でバイオマスを分解すると、チャー等の高分子物質の副生成は避けられず、この高分子物質を分解しようとすれば、600℃程度の高温度で加熱する必要がある。しかし、本実施の形態に係るバイオマスガス化方法では、副生成した高分子物質を酸化反応装置16にて酸化剤と反応させることで、分解することができる。そして、固体高分子物質を酸化反応装置16内に20秒以上滞留させることにより、効率的に固体高分子物質の分解ができる。これにより、400度程度の低温度領域でも、凡そバイオマス濃度が5重量%のバイオマススラリーをガス化することができる。
【実施例1】
【0037】
図4の概略図に示すバイオマスガス化装置2を用い、バイオマスのガス化を行った。なお、酸化反応装置16における固体高分子化合物の滞留時間を異ならせ、固体高分子物質の分解特性を検証するため、図2における触媒反応装置17を除いた構成にしている。
【0038】
熱分解反応装置15は、ステンレス製のチューブ(内径1mm、長さ24m)を用いた。
【0039】
酸化反応装置16として、図5(A)、(B)、(C)に示す3つの異なるサイズの酸化反応装置A、B、Cを用い、それぞれについて検証を行った。酸化反応装置A、B、Cはいずれもステンレス製であり、それぞれの内容積は、9.2mL、12.8mL、16.9mLである。
【0040】
バイオマススラリーとして、4.9重量%グルコース水溶液を用いた。酸化剤として、18.5重量%の過酸化水素水を用い、混合比率は常にグルコースとの酸素等量比が0.27となるように設定した。
【0041】
ポンプ12を駆動してグルコース水溶液を熱分解反応装置15に連続的に加圧送液した。グルコース水溶液の流量は5.2g/minである。
【0042】
また、ポンプ14を駆動して、酸化剤容器13内に充填した過酸化水素水を、予熱器18を経由させて酸化反応装置A〜Cに連続的に加圧送液した。過酸化水素水の流量は1.6g/minである。
【0043】
反応温度は400℃、反応圧力は25MPaとした。
【0044】
上記条件下において、副生成した固体高分子化合物の粒径を10μmとした場合、酸化反応装置A〜C内における固体高分子化合物の流出粒子平均滞留時間は、それぞれ16.4秒、22.8秒、31.4秒である。
【0045】
この流出粒子平均滞留時間は、10μmの粒子を含有する液体(粒子密度:1000kg/m)を、上述した流量にて酸化反応装置A〜Cに流した場合について、CFD(Computational Fluid Dynamics)シミュレーションによって求めた時間である。酸化反応装置A〜Cに種々の粒径、粒子密度の粒子を含有する液体を流した場合のCFDシミュレーション結果を表1に示す。
【表1】

【0046】
熱分解反応装置15及び酸化反応装置A〜C内でグルコースを分解し、低分子化した後、熱交換器20、背圧弁21を経由させて常温、常圧に戻し、気液分離器22を経由させて気体生成物及び液体生成物を回収した。また、気液分離器22の液体生成物流出口において、濾紙(pore−size:1μm)を用いて吸引ろ過を行い、固体生成物の回収も適宜行った。
【0047】
得られた気体生成物について、GC−TCD(Gas Chromatography−Thermal Conductivity Detector)分析を行った。液体生成物について、SECカラムを用いたHPLC(High Performance Liquid Chromatography)分析、TOC(Total Organic Carbon)分析を行った。また、固体生成物について、濾紙の回収前と回収後の乾燥重量の差を測定し、収率を求めた。
【0048】
固体生成物収率、液体生成物中の炭素収率、気体生成物中の炭素収率を表2に示す。なお、液体生成物の炭素収率は、(液体生成物中の炭素量)/(反応物中の炭素量)×100、気体生成物中の炭素収率は、(気体生成物中の炭素量)/(反応物中の炭素量)×100により算出した。
【表2】

【0049】
酸化反応装置Aを用いた場合では、固体生成物収率が0.19重量%であったのに対し、酸化反応装置B及び酸化反応装置Cを用いた場合では、それぞれ0.04重量%、0.03重量%となっており、酸化反応装置内における固体高分子物質の滞留時間を20秒以上とすることで、固体高分子物質の分解(低分子化)も効率的に進行したことがわかる。
【0050】
液体生成物中の炭素収率は、酸化反応装置Aを用いた場合では52.7%であるが、酸化反応装置B及び酸化反応装置Cを用いた場合では、それぞれ48.6%、46.3%と減少し、滞留時間によって液体生成物の分解反応が進行していることが示された。
【0051】
それぞれの液体生成物成分のSECクロマトグラムを測定し、図6に示す。SECクロマトグラムの保持時間が15〜20分の箇所に現れるピークが重合反応による高分子量生成物を示している。酸化反応装置Aを用いた場合では、明らかに重合生成物が確認できる。一方、酸化反応装置Bを用いた場合では、同箇所におけるピークがほとんど現れていない。更に、酸化反応装置Cを用いた場合では、同箇所におけるピークがほぼ完全に無くなっており、効果的に反応物の低分子化反応が進行したことがわかる。
【0052】
更に、酸化反応装置B、Cではグルコースのピークも減少していることから、熱分解反応装置15にて分解できていなかったグルコースの分解も行われていることもわかる。
【0053】
また、気体生成物中の炭素収率は、酸化反応装置Aを用いた場合では39.8%であるのに対し、酸化反応装置B、及び、酸化反応装置Cを用いた場合では、それぞれ60.5%、55.7%と酸化反応装置Aを用いた場合よりも大幅に増加しており、滞留時間を20秒以上とすることで、固体高分子化合物の分解が進行していることが示された。このときの、気体生成物のガス組成及び生成量を図7に示す。
【0054】
なお、表1に示すCFDシミュレーションの酸化反応装置Aの結果によると、粒径が1μmの場合、粒径が10μmに比べ、平均粒子滞留時間の差は1.2秒である。この時間の差は他の反応装置B、Cについても同様と考えられるので、副生成した固体高分子物質の粒径が1μmと小さい場合でも、酸化反応装置Bでは20秒以上、酸化反応装置Cでは30秒以上滞留していることがわかる。
【0055】
以上のように、酸化反応装置における固体高分子物質の滞留時間を20秒以上確保することで、熱分解反応装置内で合成された固体高分子物質のほとんどを分解し、低分子化できることを確認した。
【実施例2】
【0056】
実施例1で用いた酸化反応装置Cを用い、バイオマスのガス化を行った。実施例2では図1の概略図に示すバイオマスガス化装置1を用いた。
【0057】
触媒として、還元ニッケル触媒(Ni−5256E,Engelhard,3/46インチ押し出し成形)を用いた。触媒反応装置17として、内径6.53mm、長さ20cmのステンレス管を2本用い、これに還元ニッケル触媒を13.8g充填した。
【0058】
その他の条件については実施例1と同様である。この条件下で、グルコースをガス化した。
【0059】
得られた気体生成物の生成ガス収率、各回収成分への炭素収率を経過時間に対してプロットしたものをそれぞれ図8、9に示す。
【0060】
ガス化開始から5〜11時間における炭素ガス化率の平均値は0.94と、94%のグルコースをガス化できた。また、冷ガス効率(LHV)の平均値は0.61であった。なお、炭素ガス化率は、(気体生成物中に含まれる炭素量[mol/kg−bio])/(ガス化に使われた原料(グルコース)中の炭素量[mol/kg−bio])から、また、冷ガス効率は、(気体生成物中に含まれる可燃ガスの発熱量[kJ/kg−bio])/(ガス化に使われた原料(グルコース)の発熱量[kJ/kg−bio])から算出された値である。
【0061】
このように、酸化反応装置16内における固体高分子物質の滞留時間30秒以上にすることで、400℃、25MPaの比較的低温度領域で、4.9重量%のグルコース水溶液を連続的に炭素ガス化率94%でガス化できることを確認した。
【0062】
得られた気体生成物の組成と、同条件における熱力学的平衡計算から求められる平衡組成を表3に示す。
【表3】

【0063】
得られた気体生成物の組成は、ほぼ熱力学的平衡計算から求められる値と同じである。本実施例において、熱力学的平衡組成に従った、即ち、理論計算に基づいた気体生成物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したように、本発明のバイオマスガス化方法では、バイオマススラリー中のバイオマス濃度を凡そ5重量%としても、400℃程度の低温度領域で分解し、メタンや水素等にガス化することができる。したがって、資源の有効活用としてバイオマスから燃焼ガスを生成するエネルギー産業分野等で利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 バイオマスガス化装置
2 バイオマスガス化装置
11 バイオマススラリー容器
12 ポンプ
13 酸化剤容器
14 ポンプ
15 熱分解反応装置
16 酸化反応装置
16a 酸化反応装置
17 触媒反応装置
18 予熱器
19 加熱装置
20 熱交換器
21 背圧弁
22 気液分離器
A 酸化反応装置
B 酸化反応装置
C 酸化反応装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを水に混練させたバイオマススラリーを超臨界状態で連続的にガス化するバイオマスガス化方法であって、
前記バイオマススラリーを熱分解反応装置に供給し、超臨界状態で前記バイオマスを熱分解する熱分解工程と、
前記熱分解工程で生じた生成物及び酸化剤を酸化反応装置に供給し、前記生成物に含まれる固体高分子物質を前記酸化反応装置内に20秒以上滞留させて前記酸化剤で酸化分解する酸化分解工程と、
前記酸化分解工程で生じた生成物を触媒反応装置に供給し、ガス組成物にするガス組成物生成工程と、
前記ガス組成物の温度及び圧力を下げて気化させる気化工程と、
を具備することを特徴とするバイオマスガス化方法。
【請求項2】
前記酸化反応装置内に前記固体高分子物質を30秒以上滞留させることを特徴とする請求項1に記載のバイオマスガス化方法。
【請求項3】
上下方向に延在する筒状の前記酸化反応装置を用い、
前記酸化剤を前記酸化反応装置の下部から供給し、
前記熱分解工程で生じた生成物を前記酸化反応装置の側部から下向きに供給し、
前記ガス組成物を前記酸化反応装置の上部から排出することを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオマスガス化方法。
【請求項4】
前記熱分解工程、前記酸化分解工程、及び、前記ガス組成物生成工程を374〜500℃、22〜30MPaの条件下で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のバイオマスガス化方法。
【請求項5】
前記熱分解反応装置内のレイノルズ数が3000以上になるように前記バイオマススラリーを連続的に前記熱分解反応装置に供給し、副生成した前記固体高分子物質が前記熱分解反応装置の内壁に付着することを抑制することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のバイオマスガス化方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−84631(P2011−84631A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237612(P2009−237612)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第18回日本エネルギー学会大会、社団法人 日本エネルギー学会、平成21年 7月30日(木)、31日(金)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】