説明

バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置

【課題】下向きのガス流を形成するダウンフローの竪型炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する際に、炉から排出されるバイオマス炭の温度を従来よりも低温化でき、バイオマス炭の収率を向上可能であって、しかもバイオマス炭の品質の低下の少ない、バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置を提供すること。
【解決手段】竪型炉内に熱風を吹き込むことでバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する方法であって、竪型炉10の頂部または側方上部からバイオマス1を投入し、竪型炉10の頂部または側方上部から熱風4を吹き込み、竪型炉10の熱風4の吹き込み位置より下方である側方中段から炭化の際に発生するタールを含有する排出ガス3を排出し、炭化の際に発生する排出ガス3中のタールの少なくとも一部を竪型炉10に吹き込むことを特徴とする、バイオマス炭の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、地球温暖化防止の観点からCO2排出量削減が緊急の課題である。CO2排出量削減の方法として、インプットの炭素量を削減する、アウトプットのCO2を回収する、従来の石炭・石油等をカーボンフリーの炭素源に代替する等の技術開発が行われている。カーボンフリーの炭素源としてはバイオマスが知られている。バイオマスとしては、建築家屋の解体で発生する木材廃棄物、製材所発生の木質系廃棄物、森林等での剪定廃棄物、農業系廃棄物などがある。その処理利用方法としては、埋立て、放置、焼却、燃料等が主なものである。また、燃料利用を目的としたバイオ燃料作物も知られている。
【0003】
一方で、このようなバイオマスを熱分解して可燃性ガスや炭化物(バイオマス炭)を製造して再利用する技術も知られている。
【0004】
特許文献1には、バイオマスを加熱乾留することにより得られる炭化物に対し、加熱時に発生する揮発分を循環吸収させて高発熱量炭化物を製造する方法として、バイオマスを200〜500℃で加熱乾留することにより得られる炭化物と揮発分とを分離回収した後、冷却により生成した液状揮発分に120〜350℃の炭化物を浸漬して、揮発分を吸収させる高発熱量炭化物の製造方法や、バイオマスを200〜500℃で加熱乾留することにより得られる炭化物と揮発分とを分離回収した後、ガス状の揮発分に250℃以下に冷却した炭化物を接触させて、水より高沸点の揮発分を吸収させる高発熱量炭化物の製造方法などが記載されている。また、バイオマスを200〜500℃で加熱乾留することにより得られる炭化物と揮発分とを分離回収し、冷却した揮発分に冷却した炭化物を接触させた後、120〜350℃で加熱することにより水分を除去して高発熱量炭化物を製造する方法も記載されている。
【0005】
特許文献2には、有機物を燃焼用空気の非供給下で熱分解して無定形炭素(炭化物)を生成し、熱分解途上の有機物から発生する可燃性ガスと気体状のタールとを含む未処理ガスを、高温で無定形炭素に流通させて、タールをほぼ完全に熱分解してタールが除去された処理ガスを得る有機物の処理方法が記載されている。特許文献2においては熱分解炉としてロータリーキルンを用い、ロータリーキルンの出口付近で有機物の熱分解で発生したガスを炭化物に接触させてタールの分解を行なうものである。この技術は、炭化物にタールを接触させて、1000℃付近の高温でタールを分解して可燃性ガスを得ようとするものである。
【0006】
バイオマスを乾留、あるいは熱分解して炭化物を得るためには、上記のように炭化炉が使用される。運転方式、炉の形式や形状などで、バッチ方式、連続式に分類され、ロータリーキルン方式、流動層方式等による各種の炉が炭化炉として使用されている。特許文献3には、竪型炉を用いてバイオマスの乾燥、揮発、燃焼、炭化及び揮発を一貫して行わせ、連続的に活性炭を製造する技術が記載されている。特許文献3に記載の竪型炉では、バイオマスを加熱反応させる高温ガスを空気と共に上方から下方に流動させることにより、安定した炭化反応を炉横断面にわたって均一に発生させることができるとされている。
【0007】
また加熱熱源としてはバイオマス乾留により得られる発生ガス、タールを燃焼させ、それを熱源とすることが知られている。加熱の方式としては、バイオマスを前記燃焼ガスなどの高温ガスで直接加熱する方式(熱風循環式)や、ロータリーキルン等のように炉外部から間接加熱する方式(外熱式)、炉内部で発生ガスを燃焼させ直接加熱する方式(内熱式)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−213273号公報
【特許文献2】特許第3781379号公報
【特許文献3】特開平11−278822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
竪型炉は熱伝達に優れ、装置をコンパクトにできるという特徴がある。竪型炉でバイオマス等を炭化して炭化物を製造する際に、炉下部から無酸素の高温ガスを送風して内容物を加熱することが一般的であるが、上向きのガス流であると炭化物の種類によっては荷下がり悪く、炉内で炭化物が棚つりするという問題がある。
【0010】
しかし特許文献3に記載の炉のように、下向きのガス流を形成する炉を用いる場合には、炉下部では炭化物温度、ガス温度共に高くなり、高温炭化物の切り出しが難しいという問題がある。
【0011】
また一方で、竪型炉内では炭化物の生成と同時にガス、タール等も発生する。これらのガスやタールも有効利用することは可能であるので、特許文献2に記載の技術のように積極的にガス化を促進する場合もあるが、炭化物の製造という観点では、原料中の炭素分がガスやタール化することで、炭化物の収率が低下することになる。特許文献2に記載のように1000℃近い温度でタールを熱分解すると、ほとんどがガスに転化し、タールから得られる炭化物の収率はせいぜい数mass%である。
【0012】
炭化物であるバイオマス炭の収率を向上させるために、上記の特許文献1に記載のようにバイオマスの炭化時に発生するタールやガスを炭化物に吸収させる方法がある。特許文献1に記載の方法でバイオマス炭を製造すると、バイオマス炭の収率は付着したタール等の分だけ向上するが、液状揮発分を吸収させる方法で得られる炭化物の表面は粘着性で、取り扱いが困難なものであると考えられる。また、タールの発熱量は低いことが知られている。一般的に、バイオマスを熱分解して得られるタールとは、熱分解して得られる液体を言うものであるが、バイオマスの炭化物の発熱量が約30MJ/kgであるのに対し、タールは最大約10MJ/kgであり重油の半分以下である。また、バイオマスを熱分解して炭化物が得られる際に、バイオマス中の酸素分の多くはタール分や揮発分としてバイオマスから脱離するために、一般的には、炭化物中の酸素含有率は10mass%未満であるのに対し、タール中の酸素含有率は20mass%を超え、40mass%近くなる場合もある。酸素分の高い、反応性の高いタールは発火性も高く、安全上の問題もある。
【0013】
以上のように、タール分は炭化物と比較すると、酸素含有率が高く、発熱量が低く、高粘性で、反応性が高く安定性が低いため、バイオマス炭に付着させることはバイオマス炭の品質を低下させることになる。
【0014】
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、下向きのガス流を形成するダウンフローの竪型炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する際に、炉から排出されるバイオマス炭の温度を従来よりも低温化でき、バイオマス炭の収率を向上可能であって、しかもバイオマス炭の品質の低下の少ない、バイオマス炭の製造方法およびこれに用いるバイオマス炭の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
(1)竪型炉内に熱風を吹き込むことでバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する方法であって、
前記竪型炉の頂部または側方上部からバイオマスを投入し、
前記竪型炉の頂部または側方上部から熱風を吹き込み、
前記竪型炉の前記熱風の吹き込み位置より下方である側方中段から前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを排出し、
前記炭化の際に発生する排出ガス中のタールの少なくとも一部を前記竪型炉に吹き込むことを特徴とする、バイオマス炭の製造方法。
(2)炭化の際に発生する排出ガス中のタールの少なくとも一部を熱風とともに竪型炉に吹き込むことを特徴とする、(1)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(3)竪型炉の底部または側方下部から冷却用ガスを供給することを特徴とする(1)または(2)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(4)炭化の際に発生するタールの一部を冷却用ガスとともに炉内に供給することを特徴とする(3)に記載のバイオマス炭の製造方法。
(5)炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスから前記タールを分離して、竪型炉に吹き込むことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
(6)炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを空気比1未満で燃焼させて、熱風として竪型炉に吹き込むことを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
(7)竪型炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する装置であって、
前記竪型炉の頂部または側方上部にバイオマスの投入口を有し、
前記竪型炉の頂部または側方上部に熱風の吹き込み口を有し、
前記竪型炉の前記熱風の吹き込み口より下方である側方中段に排出ガスの排出口を有し、前記排出ガスの少なくとも一部を空気比1未満で燃焼させる部分燃焼機を有することを特徴とする、バイオマス炭の製造装置。
(8)排出ガスから少なくともガス成分とタールとを分離する、分離機を有することを特徴とする、(7)に記載のバイオマス炭の製造装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、下向きのガス流を形成する竪型炉を用いて、バイオマスを炭化してバイオマス炭を効率的に製造することができ、バイオマス炭の収率を向上させることが可能となる。製造されるバイオマス炭の品質も、タールが単に付着したバイオマス炭に比べて向上する。また炉から排出されるバイオマス炭の温度も低温化する。
【0017】
また、タールが有効利用され、タール処理の負担も軽減する。乾留生成物を軽質化でき、排ガス処理工程も軽減可能となる。これにより、バイオマスの再利用が促進されて、CO2排出量削減に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のバイオマス炭の製造装置の一実施形態を示す図。
【図2】本発明のバイオマス炭の製造装置の他の一実施形態を示す図。
【図3】本発明のバイオマス炭の製造装置の他の一実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
バイオマスとは、ある一定量集積した動植物資源とこれを起源とする廃棄物の総称(ただし、化石資源を除く)であり、本発明で用いるバイオマスには、農業系、林業系、畜産系、水産系、廃棄物系等の、熱分解して炭化物を生成するあらゆるバイオマスを用いることができる。有効発熱量の高いバイオマスを用いることが好ましく、木質系バイオマスを用いることが好ましい。木質系バイオマスとしては、パルプ黒液、チップダスト等の製紙副産物、樹皮、のこ屑等の製材副産物、枝、葉、梢、端尺材等の林地残材、スギ、ヒノキ、マツ類等の除間伐材、食用菌類の廃ホダ木等の特用林産からのもの、シイ、コナラ、マツ等の薪炭林、ヤナギ、ポプラ、ユーカリ、マツ等の短伐期林業等の林業系バイオマスや、市町村の街路樹、個人宅の庭木等の剪定枝条等の一般廃棄物や、国や県の街路樹、企業の庭木等の剪定枝条、建設・建築廃材等の産業廃棄物等が挙げられる。農業系バイオマスに分類される、廃棄物・副産物を発生源とする籾殻、麦わら、稲わら、サトウキビカス、パームヤシ等や、エネルギー作物を発生源とする米糠、菜種、大豆等の農業系バイオマスの一部も木質系バイオマスとして好適に用いることができる。
【0020】
本発明では、炭化炉として竪型炉を用いてバイオマスを炭化して、炭化物であるバイオマス炭を製造する。竪型炉としては、シャフト炉を用いることが好適である。
【0021】
バイオマスを炭化する際の炭化とは、空気(酸素)の供給を遮断または制限して加熱し、気体(木ガスとも呼ばれる)、液体(タール)、固体(炭)の生成物を得る技術を言う。加熱温度、加熱時間を変化させることで、得られる気体、液体、固体の成分や割合が変化する。本発明では炭化の際に発生する排出ガス中のタールを気体とともに回収し、そのタールの少なくとも一部を熱風とともに、バイオマスの炭化を行なう竪型炉に吹き込むことで、タールをバイオマス炭に付着させ、さらにタールの炭化物をバイオマス炭上に析出させて、バイオマス炭の収率を向上させる。バイオマスの炭化で生成したタールが再度竪型炉内で炭化されてバイオマス炭上に析出することで、バイオマス炭はタールが付着しただけの状態に比べて、より酸素含有率が低く、発熱量が高くなり、反応性が低く発火性も低下して安全性が高まり、品質が向上する。ここで、本発明のバイオマス炭は従来のタールを付着させないバイオマス炭と同様の30MJ/kg程度の発熱量が得られることになるが、例えば特許文献1に示すような方法でタールを付着させると、タールの発熱量が10MJ/kg程度であることから、特許文献1における実施例のエネルギー収率向上の割合からタールの付着量を想定して計算すると、14〜20MJ/kg程度の発熱量しか得られないことになる。仮に、特許文献1において、付着したタールがバイオマスを熱分解して得られる液体を静置あるいは蒸留によって褐色透明な液(酢液)を分離して除いた黒褐色の高粘性の液状物であったとしても、酢液が除去されたタールの発熱量は最大約20MJ/kgとなり、結果としてバイオマス炭の発熱量は23〜27MJ/kgにとどまる。
【0022】
上記のようにバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造するために、本発明では竪型炉の頂部または側方上部(以下、頂部または側方上部を総称して「上部」と記す)からバイオマスを投入して炉内に充填層を形成し、竪型炉の上部から熱風を吹き込みバイオマスを炭化し、竪型炉の側方中間部から炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを排出し、このタールの少なくとも一部を熱風とともに竪型炉に吹き込みながらバイオマスの炭化を行なう。タールが付着および/または炭化物として析出したバイオマス炭を竪型炉の底部または側方下部(以下、底部または側方下部を総称して「下部」と記す)から排出する。熱風を吹き込む位置が炉の上部であり、発生ガスが炉の側方中間部から排出されるため、炉内には下向きのガス流れが形成される。発生ガスの排出口は熱風の吹き込み位置より下方とする。バイオマスは熱風の顕熱によって炭化される。炉の側方中間部から排出ガスが排出されるので、バイオマス炭は炉の下部に向かって移動しながら冷却される。なお、ここで側方上部とは竪型炉の高さ方向で上半分の側部を指すが、上方1/4以上であると更に良い。同様に、側方下部とは竪型炉の高さ方向で下半分の側部を指すが、下方1/4以下であると更に良い。
【0023】
タールは排出ガスから分離して、少なくともその一部を竪型炉に吹き込む。吹き込む方法は任意であるが、竪型炉の上部空間内に吹き込むことが好ましい。タールを熱風に混合することで熱風とともに吹き込むようにすると、タールが炭化物に転化する効率が高くなり、また設備的にも簡便で好ましい。または、タールを含有する排出ガスのまま部分燃焼させて、少なくともその一部を熱風として用いることで、熱風とともに吹き込むことができる。
【0024】
尚、熱風は任意の発生源のものを用いることが可能であり、熱風炉等で発生させた熱風を用いることも、排出ガスからタールや水を分離したものを部分燃焼させたものを循環して用いることも、排出ガスをそのまま部分燃焼させたものを循環して用いることもできる。
【0025】
竪型炉中のバイオマス炭は切り出しまでにある程度は冷却されるが、高温ではあるため、切り出して排出したバイオマス炭は冷却することが好ましい。この冷却を容易にするために、竪型炉の下部から炉内に冷却用ガスを供給することが好ましい。冷却用ガスとしては、排出ガスを循環して使用することが好ましく、排出ガスからタールや酢液を分離した残部のガスを部分燃焼させたものの一部を冷却して用いることもできる。冷却用ガスも、空気(酸素)の供給を遮断または制限したものである必要がある。
【0026】
上記の冷却用ガスには、バイオマスの炭化の際に発生したタールの一部を混合し、竪型炉内に冷却用ガスとともにタールを供給することが好ましい。冷却されるバイオマス炭にタールが付着し、バイオマス炭の収率が向上する。熱風とともに吹き込まれるタールに比較するとその割合は少ないが、冷却用ガスとともに供給されたタールの一部も、炉内で炭化されてバイオマス炭上に析出する。排出ガスを循環して冷却用ガスに使用する場合には、タールは予め冷却用ガスに混合されている状態で吹込まれることになる。
【0027】
熱風や冷却用ガスとともに吹込まれるタールには、外部発生のタールを追加することも可能である。外部発生のタールとしては、炭化する余地のある、バイオマス由来のタールを用いることが好ましく、バイオマスを700℃以下で熱分解して発生するタールを用いることが特に好ましい。
【0028】
排出ガスの残部は、燃料として用いることや、別途燃焼機等で燃焼させて、高温の廃ガスとして、熱回収やバイオマスの乾燥用などに利用することができる。
【0029】
竪型炉中のバイオマスの充填層の高さ(排出ガス排出位置から充填層表面までの高さ)は、2m以上、15m未満とすることが好ましい。バイオマスが加熱される部分の高さが低すぎると、熱交換が非効率で、タールによる収率向上の効果も少ない。一方で、バイオマスが加熱される部分の高さが高すぎると、圧力損失が大きくなりすぎ、設備コストが増大する。
【0030】
本発明の一実施形態を図1を用いて説明する。
【0031】
炭化炉10には、上部から原料1が供給され、熱風4が供給される。熱風4には、タール5を混合することが出来る。また、冷風6が冷風入口11から炉内に供給される。冷風6には、タール7を混合することが出来る。熱風4および冷風6は、炉内充填物の燃焼を招かず、炭化させるために無酸素或いは低酸素(例えば、1vol%未満)である。
【0032】
原料1は、炉内で充填層12を形成し、熱風4により加熱されることで炭化され、炭化後に冷風6により冷却され、下部の切り出し装置13から炭化物2となって排出される。冷風入口11に回転機構等を設置することで、炭化物の切り出しを促すことが出来る。発生ガスは、ほぼ無酸素状態であり、タールが混入している。
【0033】
一方、充填層から発生した排出ガス3は、炉中段部より排出される。排出ガス3が排出される際に、充填層構成粒子が随伴されないように、例えば図1に示したように炉の形状を工夫して、空間部分8から発生ガス3を排出されることが好ましい。同時に、充填層構成粒子の棚つりを防止するために、充填層に絞り部が出来ないような形状にすることが好ましい。
【0034】
原料1の形態としては、充填層のガス流通に支障が生じないような形態、すなわち5mm〜200mm程度が主体(90mass%以上)の大きさの塊状物とすることが好ましい。なお、ここでの粒径は、200mm以下とは目開きが200mmの篩を通過する篩下であり、5mm以上とは5mmの篩の篩上の状態を言う。
【0035】
原料1が炭化炉10に供給される際に、充填層12の上面はある程度ならされた平坦化状態とすることが好ましい。これは、ガスの偏流を防ぎ効率的な炭化を実現するためである。
【0036】
熱風4の温度は500〜1200℃として炉に吹き込むものとする。吹き込み温度が低すぎると原料の炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは600〜1200℃であり、更に好ましくは600〜1100℃である。
【0037】
充填層12中段の排出ガス3の出口付近の炭化物温度は300〜700℃程度とする。温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは400〜700℃であり、更に好ましくは400〜600℃である。
【0038】
充填層12中段の排出ガス3の出口付近の炭化物温度は300〜800℃程度であり、好ましくは400〜600℃程度である。 温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下したり設備がコスト高になるためである。
【0039】
冷風6は、200℃以下の温度で送風することが好ましい。温度が高すぎると冷却が効率的でないためである。
【0040】
切り出し装置13で切り出される際に、水冷ジャケットなどの間接冷却或いは水噴霧による直接冷却により安全な温度で炭化物2を切り出すことが出来る。
【0041】
熱風4には、タール5を混合することができる。タール5には排出ガス3から分離したものを使用することが好ましい。熱風4にタール5を混合することにより、タール5の一部が炭化物2に付着して、炭化物として回収されるようになるため、炭化物2の収率が向上できる。
【0042】
冷風6には、タール7を混合することができ、タール7には排出ガス3から分離したものを使用することが出来る。冷風6にタール7を混合することにより、タール7の一部が炭化物2に付着して、炭化物として回収されるようになるため、炭化物2の収率が向上できる。
【0043】
タール5あるいはタール7は、充填層12内の炭化物に吸着することで炭化物2の収率向上に寄与する。そして、タール5あるいは7は、充填層12内で熱分解してチャー分が生成し、即ち炭化物となる。タール7には、炉内で熱分解してチャー分を生成するもの以外に、炭化物に付着したまま炉外に排出されるものもある。
【0044】
タール5あるいはタール7は、図示したように熱風4や冷風6と混合され炉内に供給されるが、熱風や冷風と混合させずに炉内に直接供給しても良い。
【0045】
冷風6は、図示したように炉下部から冷風入口11を通して供給されるが、炉の横からノズルを使って供給されるようにしても良い。
【0046】
本発明の他の一実施形態を図2を用いて説明する。
【0047】
炭化炉10には、上部から原料1が供給され、炉内で充填層12を形成し、熱風4により加熱されることで炭化され、炭化後に冷風6により冷却され、炉下部から炭化物2となって排出される。一方、充填層から発生した排出ガス3は、炉中段部より排出される。排出ガス3には、ガス、タール、酢液が含まれる。
【0048】
原料1の形態としては、充填層のガス流通に支障が生じないような形態、すなわち5mm〜200mm程度が主体(90mass%以上)の大きさの塊状物とすることが好ましい。なお、ここでの粒径は、200mm以下とは目開きが200mmの篩を通過する篩下であり、5mm以上とは5mmの篩の篩上の状態を言う。
【0049】
原料1が炭化炉10に供給される際に、充填層12の上面はある程度ならされて平坦であることが好ましい。これは、ガスの偏流を防ぎ効率的な炭化を実現するためである。
【0050】
熱風4の温度は500〜1200℃とする。温度が低すぎると原料の炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは600〜1100℃とする。
【0051】
充填層中段の排出ガス3の出口付近の炭化物温度は300〜700℃程度とする。温度が低すぎると炭化が十分に進まず、高すぎると炭化物の収率が低下する上に、設備がコスト高になるためである。好ましくは400〜700℃であり、更に好ましくは400〜600℃である。
【0052】
冷風6は、200℃以下の温度で送られる。好ましくは100℃以下である。温度が高すぎると冷却が効率的でないためである。
【0053】
炭化炉10で発生した排出ガス3は、分離機311にてガス32、酢液33、タール34に分離される。ここで得られるタールは、バイオマスを熱分解して得られる液体を静置あるいは蒸留によって褐色透明な液(酢液)を分離して除いた黒褐色の高粘性の液状物である。この場合のタールの発熱量は、酢液を除去することにより、最大約20MJ/kgとなる。分離機311の形態としては、酢液の凝縮温度以下の温度で、酢液およびタールを液相に、ガスを気相に分離させることができ、液相を水相(酢液相)と油相(タール相)に分離させることが出来る構造であれば、特に限定しない。水相には水溶性の有機物も含まれる。分離機311は、必要に応じて冷却することで、分離効率を高めることが出来る。
【0054】
分離機311で分離されたガス32と、分離されたタール34の一部は、部分燃焼器312にて、空気35によりいわゆる不完全燃焼させる。ここで、空気35の量は空気比1未満で、無酸素或いは極めて低酸素の熱風36を発生させる。熱風を所定の温度まで昇温させるのにあたって、通常のバイオマス原料を使用すれば空気比1未満で可能であるが、0.5以上であることが好ましい。また、熱風中にタールを残すためには、空気比0.8以下であることが好ましい。
【0055】
分離機311で分離された酢液は、廃棄するか、溶け込んでいる水溶性有機物等の有効利用を図る。場合によっては、燃焼器313にて燃焼処理され廃ガス38として放出される。
【0056】
部分燃焼器312で発生した熱風36の一部は、炭化炉10に熱風4として送られ、炭化の為の熱源とする。
【0057】
部分燃焼器312で発生した熱風36の一部は、冷却器315て冷却され、炭化炉10に冷風6として送られ、炭化物の冷却に利用される。
【0058】
分離機311で分離されたタール34の一部は、タール5として熱風4と共に炭化炉10に送られる。また、分離機311で分離されたタール34の一部は、タール7として冷風6と共に炭化炉10に送られる。
【0059】
部分燃焼器312で発生した熱風の一部は、燃焼器313にて、空気37と混合して残留する可燃ガス成分を燃焼させ、廃ガス38を排出する。
【0060】
熱風4にタール5を混合することにより、タール5の一部が炭化物2に含まれるようになるため、炭化物2の収率が向上できる。
【0061】
冷風6にタール7を混合することにより、タール7の一部が炭化物2に含まれるようになるため、炭化物2の収率が向上できる。
【0062】
タール5あるいはタール7は、充填層12内の炭化物に吸着することで炭化物2の収率向上に寄与する。タール5あるいは7は、充填層12内で熱分解してチャー分が生成し、即ち炭化物となる。タール7には、炉内で熱分解してチャー分を生成するもの以外に、炭化物に付着したまま炉外に排出されるものもある。
【0063】
タール5あるいはタール7は、図示したように熱風4や冷風6と混合され炉内に供給されるが、熱風や冷風と混合させずに炉内に直接供給しても良い。
【0064】
分離機311で、タール34を分離することにより、タールを有効利用して炭化物2の収率を向上させることができる。
【0065】
分離機311で酢液33を分離することにより、酢液を分離しない場合に比べ、部分燃焼器312に供給される酢液分を減少させることが出来るので、以下の効用がある。第一に、同じ空気比における部分燃焼器312の温度を上昇させることができ、炭化炉10に必要な熱を供給し易くなる。第二に、熱風5に含まれる水蒸気を減少させることが出来るため、炭化炉内での水蒸気による炭素消費反応を抑制する効果があり、炭化物収率の向上につながる。
【0066】
廃ガス38の熱は、原料1の乾燥等に利用することが出来る。
【0067】
本発明の他の一実施形態を図3を用いて説明する。
【0068】
図3は、図2において、分離機311を省略したものである。熱風4およびタール5の熱風36の一部を熱風4として用いるようにしたものである。
【0069】
排出ガス3には、発生タールが含まれ、部分燃焼機312で加熱することで、炭化炉10にて炭化物の加熱と炭化物2の収率向上に寄与できる。
【0070】
また、冷風6およびタール7の代わりに、排出ガス3の一部を冷風6として用いるようにしたものである。
【0071】
排出ガス3には、発生タールが含まれ、なおかつ低温であるため、炭化炉10にて炭化物の冷却と炭化物2の収率向上に寄与できる。
【0072】
図2の場合に比べ、図3の方が、より設備を簡略化することができ、低コストである。
【実施例1】
【0073】
図2に示すものと同様の設備を用いて、バイオマスを乾留して、バイオマス炭を製造する試験を行った。
【0074】
熱風4に、タール5を混合する場合としない場合について、炭化物2の収率の比較を行なった。原料1として、パーム油を生成する過程で発生するアブラヤシの空果房(EFB)からなるバイオマス系の残渣を用いた。EFBの含水率は10mass%であった。
【0075】
熱風4および冷風6にタール5、7を混合させる場合(本発明例)は、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、熱風4に混合させたタール5の質量流量を0.1とし、冷風6に混合させたタール7の質量流量を0.05とした。熱風4の吹込み温度は1080℃であり、炭化温度は450℃であった。冷風23の温度は180℃であった。充填層中段から排出される排出ガス3の温度は450℃をやや下回る温度であった。
【0076】
熱風4および冷風6にタール5、7を混合させない場合(比較例)は、熱風4の吹込み温度は1070℃であり、炭化温度は450℃であった。冷風23の温度は180℃であった。充填層中段から排出される排出ガス3の温度は450℃をやや下回る温度であった。
【0077】
熱風4および冷風6に、タール5、7を混合しない比較例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量は、0.27であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は27%であった。一方、タール5、7を混合した本発明例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量0.30であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は30%であった。本発明方法を用いることで、炭化物収率が向上した。
【実施例2】
【0078】
図3に示すものと同様の設備を用いて、実施例1と同様のバイオマスを乾留して、バイオマス炭を製造する試験を行った。
【0079】
排出ガス3を部分燃焼機で不完全燃焼させた熱風4にはタールが混合している。また冷風6も排出ガスの一部を用いているので、タールが混合している。乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、熱風4に混合されるタールの質量流量は0.04であり、冷風6に混合されるタールの質量流量は0.06であった。
【0080】
排出ガスからタールを分離しないで熱風4および冷風6として用いる場合(本発明例)は、熱風4の吹込み温度は1040℃であり、炭化温度は450℃であった。冷風6の温度は180℃であった。充填層中段から排出される排出ガス3の温度は450℃をやや下回る温度であった。
【0081】
熱風4、冷風6に、タールを混合させない場合を比較例とすると、上記の実施例1の比較例の場合がこれに相当する。
【0082】
熱風4、冷風6に、タールを混合しない比較例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量は、0.27であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は27%であった。一方、本発明例の場合では、乾燥ベースの原料1の質量流量を1としたとき、製造される炭化物2の質量流量0.28であった。すなわち、乾燥ベースでの炭化物の収率は28%であった。本発明方法を用いることで、炭化物収率が向上した。
【符号の説明】
【0083】
1 原料
2 炭化物
3 排出ガス
4 熱風
5 タール
6 冷風
7 タール
8 空間部分
10 炭化炉
11 冷風入口
12 充填層
13 切り出し装置
32 ガス
33 酢液
34 タール
35 空気
36 熱風
37 空気
38 廃ガス
311 分離機
312 部分燃焼機
313 燃焼機
315 冷却機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竪型炉内に熱風を吹き込むことでバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する方法であって、
前記竪型炉の頂部または側方上部からバイオマスを投入し、
前記竪型炉の頂部または側方上部から熱風を吹き込み、
前記竪型炉の前記熱風の吹き込み位置より下方である側方中段から前記炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを排出し、
前記炭化の際に発生する排出ガス中のタールの少なくとも一部を前記竪型炉に吹き込むことを特徴とする、バイオマス炭の製造方法。
【請求項2】
炭化の際に発生する排出ガス中のタールの少なくとも一部を熱風とともに竪型炉に吹き込むことを特徴とする、請求項1に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項3】
竪型炉の底部および側方下部から冷却用ガスを供給することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項4】
炭化の際に発生するタールの一部を冷却用ガスとともに炉内に供給することを特徴とする請求項3に記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項5】
炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスから前記タールを分離して、竪型炉に吹き込むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項6】
炭化の際に発生するタールを含有する排出ガスを空気比1未満で燃焼させて、熱風として竪型炉に吹き込むことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のバイオマス炭の製造方法。
【請求項7】
竪型炉を用いてバイオマスを炭化してバイオマス炭を製造する装置であって、
前記竪型炉の頂部または側方上部にバイオマスの投入口を有し、
前記竪型炉の頂部または側方上部に熱風の吹き込み口を有し、
前記竪型炉の前記熱風の吹き込み口より下方である側方中段に排出ガスの排出口を有し、前記排出ガスの少なくとも一部を空気比1未満で燃焼させる部分燃焼機を有することを特徴とする、バイオマス炭の製造装置。
【請求項8】
排出ガスから少なくともガス成分とタールとを分離する、分離機を有することを特徴とする、請求項7に記載のバイオマス炭の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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