説明

バイオマス燃料製造方法、バイオマス燃料および使用済培地利用方法

【課題】使用済培地の有効利用と茸栽培におけるコスト削減とを共に実現し得るバイオマス燃料製造方法を提供する。
【解決手段】茸栽培に使用した茸栽培用培地の使用済培地301を乾燥し、乾燥した使用済培地301をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形してバイオマス燃料101を製造する。この場合、上記のいずれかの形状に成形する以前の含水率が13%以下となるように使用済培地301を乾燥するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茸栽培用培地の使用済培地を用いたバイオマス燃料製造方法およびバイオマス燃料、並びに使用済培地を利用する使用済培地利用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エノキ茸やシメジなどの茸の栽培法として、ビン栽培法が従来から知られている。このビン栽培法では、おが屑や米糠等の植物由来の原料を主原料とする培地を栽培ビンに充填し、その培地を殺菌した後に種菌を植え付けて菌床とする。一方、このビン栽培法では、一般的に、茸を1回収穫する度に培地を新しいものと入れ替える必要があるため、大量の使用済培地が発生する。この場合、この使用済培地は、農作物に有用な成分を含んでいるため、土壌改良材や肥料として従来から再利用されている。しかしながら、使用済培地は、栽培ビンから回収した時点では、60%以上の水分を含んでいるため、そのままの状態では圃場に散布するのが困難である。このため、大量に発生する使用済培地の多くが再利用されないまま圃場や茸栽培施設の周囲に野積みされて、この野積された使用済培地から発生する悪臭が問題となっている。また、使用済培地を比較的扱い易く加工した肥料も開発されているが、この種の肥料の供給が需要に対して過剰傾向にあり、使用済培地の全てを有効利用するまでには至っていないのが現状である。
【0003】
一方、ビン栽培法では、上記したように栽培ビンに充填した培地を殺菌する必要があり、この殺菌のための施設を運転するのに、A重油、軽油および灯油を中心とする大量の化石燃料を消費している。また、ビン栽培法では、種菌を植え付けた栽培ビンを一定期間所定の温度に維持した育成室に保管して茸を育成させる必要があるため、育成室を暖房するためにも大量の化石燃料を消費している。このため、これらの燃料の高騰に伴ってランニングコストが上昇して、茸栽培者の経営を圧迫しているという問題点も存在する。このような問題を解決可能な技術として、特開2002−119134号公報に開示されたきのこ生産方法(以下、単に「生産方法」ともいう)が知られている。この生産方法では、工業プラントの焼却施設で発生する熱を利用して高圧水蒸気を発生させ、この高圧水蒸気を配管によって茸栽培(生産)施設に供給し、供給した高圧水蒸気を茸栽培施設における培地(栽培基)の殺菌や育成室の暖房に利用している。また、この生産方法では、茸栽培施設から排出される使用済培地(使用後の栽培基)を乾燥して、その乾燥した使用済培地を燃料として焼却施設に供給している。このため、この生産方法では、焼却施設側においては、大量に発生する使用済培地が燃料として安定的に供給されるされることで、熱エネルギーを安定的に供給することができ、茸栽培施設側においては、安価な熱エネルギーを安定的に確保することができるため、大量に発生する使用済培地の有効利用と茸栽培者の経営の改善を図ることが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−119134号公報(第4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の生産方法には、以下の問題点がある。すなわち、この生産方法は、大規模な施設を対象とする方法であって、大規模な施設に導入することで初めて上記のような効果を奏することが可能となる。しかしながら、茸栽培施設の多くは、個人的経営または小規模経営による小規模な施設であり、上記のような生産方法を導入するのは極めて困難である。このため、一部の大規模施設にこのような生産方法を導入したとしても、大量に発生する使用済培地の有効利用を推進するのは依然として困難である。また、上記の生産方法では、乾燥した使用済培地をそのまま燃料として使用している。この場合、単に乾燥しただけの使用済培地は粉体状をなしており、このような粉体物を持続的に燃焼させるには、外部から熱を加えたり補助燃料を添加したりする必要がある。このため、上記の生産方法を応用して、小規模な茸栽培施設向けに小型の焼却炉を開発したとしても、焼却炉が特殊な構造となってイニシャルコストが増大して、却って経営の改善が困難となる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、使用済培地の有効利用と茸栽培におけるコスト削減とを共に実現し得るバイオマス燃料製造方法、バイオマス燃料および使用済培地利用方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載のバイオマス燃料製造方法は、茸栽培に使用した茸栽培用培地の使用済培地を乾燥し、当該乾燥した使用済培地をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形してバイオマス燃料を製造する。
【0008】
また、請求項2記載のバイオマス燃料製造方法は、請求項1記載のバイオマス燃料製造方法において、前記いずれかの形状に成形する以前の含水率が13%以下となるように前記使用済培地を乾燥させる請求項1記載のバイオマス燃料製造方法。
【0009】
また、請求項3記載のバイオマス燃料製造方法は、請求項1または2記載のバイオマス燃料製造方法において、前記乾燥した使用済培地をペレットマシンを用いてペレット状に成形する。
【0010】
さらに、請求項4記載のバイオマス燃料製造方法は、請求項1から3のいずれかに記載のバイオマス燃料製造方法において、籾殻を主原料する前記茸栽培用培地の使用済培地を用いる。
【0011】
また、請求項5記載のバイオマス燃料は、茸栽培に使用した茸栽培用培地の使用済培地をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形して構成されている。
【0012】
また、請求項6記載の使用済培地利用方法は、茸栽培用培地を茸栽培施設に配送する際に茸栽培に使用した当該茸栽培用培地の使用済培地を回収し、当該回収した使用済培地を乾燥した後にペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形してバイオマス燃料を製造し、茸栽培に熱源を用いる前記茸栽培施設に対して当該熱源の燃料として前記バイオマス燃料を供給して利用させる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のバイオマス燃料製造方法および請求項5記載のバイオマス燃料によれば、乾燥させた使用済培地をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形してバイオマス燃料を製造することにより、一般的な燃焼装置の燃料として、好適に使用することが可能なバイオマス燃料を低コストで製造することができるため、利用者に対してバイオマス燃料を低価格で提供することができる。このため、茸栽培に用いる熱源の燃料としてバイオマス燃料を利用することで、燃料費を十分に低く抑えることができる結果、その分、栽培コストを確実に削減することができる。また、このようなバイオマス燃料の利用を拡大することにより、これまで利用が進んでいなかった使用済培地の有効利用を確実に推進することができる。
【0014】
また、請求項2記載のバイオマス燃料製造方法によれば、ペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形する以前の含水率が13%以下となるように使用済培地を乾燥させることにより、使用済培地を十分に乾燥させた状態でペレット状に成形することができるため、ペレット状に成形した後に乾燥が困難なときであっても、バイオマス燃料を燃焼に必要な乾燥状態に確実に維持することがてきる。
【0015】
また、請求項3記載のバイオマス燃料製造方法によれば、ペレットマシンを用いて使用済培地をペレット状に成形することにより、成形時の発熱によって使用済培地の含水率を十分に低下させることができるため、乾燥状態が良好なバイオマス燃料を製造することができる。
【0016】
さらに、請求項4記載のバイオマス燃料製造方法によれば、籾殻を主原料する茸栽培用培地の使用済培地を利用してバイオマス燃料を製造することにより、籾殻の燃焼カロリーが高いため、高カロリーのバイオマス燃料を製造することができる。
【0017】
また、請求項6記載の使用済培地利用方法によれば、茸栽培用培地を茸栽培施設に配送する際に使用済培地を回収し、回収した使用済培地をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形してバイオマス燃料を製造し、茸栽培に熱源を用いる茸栽培施設に対してその熱源の燃料としてバイオマス燃料を供給して利用させることにより、茸栽培用培地の配送に用いた配送便を使用済培地の回収に用いることができるため、配送コストをさらに削減することができる。また、例えば、バイオマスの燃料製造施設および茸栽培用培地の製造施設の双方を同じ製造者が運営することで、バイオマス燃料および茸栽培用培地の双方を同じ配送便で配送することができるため、配送コストをさらに削減することができる。また、両製造施設を同じ製造者が運営することで、両製造施設における互いに機能が共通する装置を共用することができるため、その分設備投資を削減することができる結果、バイオマス燃料および茸栽培用培地の製造コストを低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るバイオマス燃料製造方法、バイオマス燃料および使用済培地利用方法の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
最初に、図1に示すバイオマス燃料製造施設1(以下、「燃料製造施設1」ともいう)の構成について説明する。燃料製造施設1は、本発明に係るバイオマス燃料製造方法の一例としてのバイオマス燃料製造工程50(図2参照:以下、「燃料製造工程50」ともいう)に従ってバイオマス燃料101(図8,9参照)を製造可能に構成されている。具体的には、燃料製造施設1は、原料タンク11、一次乾燥装置12、サービスタンク13、ペレット成形装置(ペレットマシン)14、二次乾燥装置15、製品タンク16および計量・充填装置17を備えて構成されている。この場合、燃料製造施設1を構成する各装置およびタンクの間には、原料や製品(バイオマス燃料101)を搬送するためのベルトコンベヤやスクリューコンベヤ(いずれも図示せず)が設置されている。
【0020】
原料タンク11は、図1に示すように、バイオマス燃料101の製造に用いられる原料としての使用済培地301を貯留する。この場合、原料タンク11は、使用済培地301から発生する悪臭の周囲への拡散を防止するために密閉構造となっている。一次乾燥装置12は、例えば、プレス式の脱水機、および送風機を備えて構成されて、原料タンク11から搬送される使用済培地301の水分を12%程度(本発明における13%以下の一例)まで低下させる。サービスタンク13は、一次乾燥装置12によって一次乾燥が完了した使用済培地301を貯留する。
【0021】
ペレット成形装置14は、サービスタンク13に貯留されている使用済培地301をペレット状に成形する。二次乾燥装置15は、例えば、送風機を備えて構成されて、ペレット成形装置14によってペレット状に成形された使用済培地301を乾燥させる。製品タンク16は、二次乾燥および冷却が完了した使用済培地301(つまりバイオマス燃料101)を貯留する。計量・充填装置17は、所定重量分のバイオマス燃料101を計量してフレキシブルコンテナ401(図8参照)または包装用袋402(図9参照)に充填する。
【0022】
一方、バイオマス燃料101は、使用済培地301を原料として用いて、上記の燃料製造施設1によって製造される燃料であって、ペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状(一例として、直径が6mm程度でかつ長さが10〜15mm程度のペレット状(円柱状))に成形されている。この場合、バイオマス燃料101では、外部から熱を加えたり補助燃料を添加したりしなければ持続的な燃焼が困難な粉状の燃料とは異なり、ペレット状に成形したことで各粒子の間に適度の空間が存在して持続的に自己燃焼が可能なため、後述する茸栽培施設3における燃焼装置34aの燃料として、好適に使用することが可能となっている。
【0023】
ここで、「バイオマス」とは、一般的に、現存する生物を構成する構成物質を起源としてエネルギー源として利用可能な資源であって、石油等の化石資源を除くものをいう。また、「バイオマス燃料」とは、このバイオマスを用いた燃料をいい、近年、資源の有効利用に対する関心の高まりに加えて、石油価格が高騰している状況下において、このバイオマス燃料が石油を中心とした化石燃料に代わる燃料または化石燃料を補完する燃料として脚光を浴びている。
【0024】
次に、図3に示す培地製造施設2の構成について説明する。培地製造施設2は、本発明における茸生栽培に使用される茸栽培用培地201(図8,9参照:以下、単に「培地201」ともいう)を製造する施設であって、原料タンク21a〜21e(以下、区別しないときには「原料タンク21」ともいう)、計量・投入装置22a〜22e(以下、区別しないときには「計量・投入装置22」ともいう)、混合装置23、サービスタンク24、殺菌装置25、ペレット成形装置(ペレットマシン)26、乾燥装置27、製品タンク28および計量・充填装置29を備えて構成されている。この場合、培地製造施設2を構成する各装置およびタンクの間には、原料や中間製品などを搬送するためのベルトコンベヤやスクリューコンベヤ(いずれも図示せず)が設置されている。
【0025】
原料タンク21a〜21eは、培地201を製造するための複数種類(例えば5種類)の原料をそれぞれ貯留可能に構成されている。この場合、例えば、原料タンク21aには、茸の菌糸を成長させるための基材となる主原料としての籾殻211が貯留される。また、原料タンク21b〜21eには、茸の菌糸に養分を補給するための副原料としての米糠212、豆皮213、ふすま44およびビート215がそれぞれ貯留される。計量・投入装置22a〜22eは、各原料タンク21a〜21eから搬送される原料を所定重量分だけそれぞれ計量する。混合装置23は、各計量・投入装置22によってそれぞれ計量された各原料を混合する(以下、各原料の混合物を「混合原料」ともいう)。
【0026】
サービスタンク24は、混合装置23によって混合された混合原料を貯留する。殺菌装置25は、高温蒸気発生装置、蒸気吹付機および撹拌機を備えて構成され、混合原料に高温蒸気を吹付けつつ撹拌することによって原料を殺菌処理する。ペレット成形装置26は、殺菌処理された混合原料をペレット状に成形する。乾燥装置27は、ペレット状に成形された混合原料を乾燥させる。製品タンク28は、乾燥させたペレット状の混合原料(つまり培地201)を貯留する。計量・充填装置29は、所定重量分の培地201を計量してフレキシブルコンテナ401(図8参照)または包装用袋402(図9参照)に充填する。
【0027】
次に、図5に示す茸栽培施設3の構成について説明する。茸栽培施設3は、本発明における茸栽培を行う施設であって、撹拌装置31、充填装置32、殺菌室33、ボイラー34、植え付け装置35、育成室36および掻き出し装置37を備えて構成されている。撹拌装置31は、培地201に水を添加しつつを撹拌することにより、培地201を適度な軟らかさでかつ適度な水分を含んだ状態に調整する。充填装置32は、栽培ビンに培地201を充填する。殺菌室33は、培地201を充填した栽培ビンを収容可能構成されると共に、ボイラー34から供給される高温の蒸気で室内を高温高圧状態に維持することにより、収容された栽培ビン内の培地201を殺菌可能に構成されている。ボイラー34は、燃焼装置34aを備えて構成され、燃焼装置34aから発生する熱によって発生させた高温の蒸気を殺菌室32に供給する。この場合、燃焼装置34aとしては、バイオマス燃料101を含む固体燃料の燃焼に適した一般的な燃焼装置を用いることができ、粉体状の燃料を燃焼させるような特殊な構造である必要はない。植え付け装置35は、殺菌した培地201に茸菌糸を植え付ける。育成室36は、培地201に茸菌糸を植え付けた栽培ビンを収容可能構成されると共に、ボイラー34から供給される蒸気を利用して室内を所定の温度に維持可能に構成されている。掻き出し装置37は、収穫後の使用済培地301を栽培ビンから掻き出す際に用いられる。
【0028】
次に、本発明に係る使用済培地利用方法の具体例、および燃料製造施設1を用いたバイオマス燃料製造方法の具体例について、図面を参照して説明する。なお、以下の例では、燃料製造施設1を用いてバイオマス燃料101を製造するバイオマス燃料製造者と、培地製造施設2を用いて培地201を製造する培地製造者(以下、両者を区別しないときには「製造者」ともいう)とが同一で、両製造施設1,2が同じ製造工場4内に設置されているものとする。
【0029】
この使用済培地利用方法において、製造者は、培地製造施設2を用いて図4に示す培地製造工程60に従ってバイオマス燃料101を製造する。この培地製造工程60では、まず、主原料としての籾殻211、並びに副原料としての米糠212、豆皮213、ふすま214およびビート215を各原料タンク21a〜21eにそれぞれ貯留する(原料貯留工程61)。次いで、計量・投入装置22a〜22eが、原料タンク21b〜21eから搬送される各副原料をそれぞれ所定重量分だけ計量して混合装置23に投入する(原料投入工程62)。この場合、計量・投入装置22a〜22eによって計量される各原料の重量は、一例として、混合原料中における籾殻211、米糠212、豆皮213、ふすま214およびビート215の組成比がそれぞれ50重量%、20重量%、10重量%、10重量%および10重量%となるように規定されている。
【0030】
次に、混合装置23を用いて各原料を混合させる(混合工程63)。次いで、混合装置23によって混合された混合原料をサービスタンク24に貯留する。続いて、サービスタンク24から殺菌装置25に混合原料を移動させる。次いで、殺菌装置25が、高温蒸気を混合原料に吹き付けつつ混合原料を攪拌することにより、混合原料を殺菌処理する(殺菌工程64)。続いて、殺菌処理を終了した混合原料をペレット成形装置26に投入する。この際に、ペレット成形装置26が、混合原料を例えば直径が6mm程度で長さが10〜15mm程度のペレット状に成形する(ペレット成形工程65)。
【0031】
次いで、ペレット状に成形した混合原料を乾燥装置27に移動させ、乾燥装置27が、12%〜13%の含水率となるまで混合原料を乾燥させる(乾燥工程66)。これにより、ペレット状の培地201が完成する。続いて、乾燥を終了した培地201を製品タンク18に貯留する。次いで、計量・充填装置19を用いて、製品タンク18に貯留されている培地201を例えば500kgずつ計量し、計量した培地201を図8に示す大形のフレキシブルコンテナ401に充填する(計量・充填工程67)。この場合、フレキシブルコンテナ401に代えて、例えば図9に示す包装用袋402を用いて培地201を例えば15kgずつ充填してもよい。以上により、培地製造工程60が完了する。
【0032】
また、この使用済培地利用方法において、茸栽培者(茸生産者)は、茸栽培施設3を用いて図6に示す茸栽培工程70に従って茸の栽培を行う。この茸栽培工程70では、まず、フレキシブルコンテナ401や包装用袋402に充填された状態で培地製造施設2(製造工場4)から運送された培地201を撹拌装置31に投入して、水を添加しつつ撹拌することにより、培地201の含水率が64%〜65%程度となるように調整する(撹拌工程71)。次いで、撹拌が完了した培地201を充填装置32を用いて栽培ビンに充填する(培地充填工程72)。この場合、この培地201では、茸の菌糸を成長させるための基材としての籾殻211と、菌糸に養分を補給するための添加物としての米糠212、豆皮213、ふすま214およびビート215とが予め混合されている。したがって、茸栽培施設3において添加物を添加する工程を省略できる分、茸栽培における作業効率の向上が可能となる。
【0033】
次いで、培地201を充填した栽培ビンを殺菌室33内に収容する。この際に、殺菌室33では、ボイラー34から供給される高温の蒸気によって室内が高温高圧状態に維持されることにより、収容した栽培ビン内の培地201が殺菌される(殺菌工程73)。この場合、この茸栽培施設3では、ボイラー34における燃焼装置34aの燃料として、バイオマス燃料101が使用される。続いて、植え付け装置35を用いて、殺菌した培地201に茸菌糸を植え付ける(植え付け工程74)。この場合、培地201を製造する際に殺菌処理を行っているため、栽培ビンに培地201を充填した後の殺菌殺菌時間を十分に短縮することが可能となっている。
【0034】
次いで、培地201に茸菌糸を植え付けた栽培ビンを育成室36に収容して、室内を所定の温度に維持した状態で所定期間育成させる(育成工程75)。この間に、発芽(芽出し)を促すための菌掻き工程等を行う。続いて、育成した茸(子実体)を収穫して、出荷用の包装を行う(収穫・出荷工程76)。次いで、収穫が終了した栽培ビンの中から使用済培地301を掻き出して、所定の集積場所に集積する。(培地掻き出し工程77)。この場合、例えば、培地201の配送に用いたフレキシブルコンテナ401や、予め製造者によって配布された回収用のフレキシブルコンテナ401に使用済培地301を充填した状態で集積しておくことで、悪臭の発生や、後述する製造者による使用済培地301の回収の効率を向上させることができる。以上により、茸栽培工程70が完了する。
【0035】
一方、図7に示すように、茸栽培者からの注文に応じて製造者が培地201を茸栽培施設3に配送した際に、茸栽培に伴って発生した使用済培地301がその茸栽培施設3に集積されていたときには、製造者は、その使用済培地301を回収して製造工場4に持ち帰る。この場合、製造者は、燃料製造施設1を用いて図2に示す燃料製造工程50に従って、使用済培地301を利用してバイオマス燃料101を製造する。この燃料製造工程50では、まず、原料タンク11に使用済培地301を貯留する(原料貯留工程51)。この場合、使用済培地301は、茸栽培施設から回収したものをそのまま投入するため、投入時点において60%〜70%の水分を含んでいる。このため、原料タンク11に長期間貯留したときには、発酵することがあるが、上記したように原料タンク11が密閉構造となっているため、たとえ使用済培地301が原料タンク11内で発酵したとしても、外部への悪臭の拡散が確実に防止される。
【0036】
次いで、使用済培地301を原料タンク11から一次乾燥装置12に移送する。この際に、一次乾燥装置12が脱水機による脱水および送風機による乾燥を行うことにより、使用済培地301の含水率を12%程度まで低下させる(一次乾燥工程52)。続いて、一次乾燥の完了した使用済培地301をサービスタンク13に貯留する。次いで、使用済培地301をサービスタンク13からペレット成形装置14に移送する。この際に、ペレット成形装置14が、使用済培地301を例えば直径が6mm程度で長さが10〜15mm程度のペレット状に成形する(ペレット成形工程53)。
【0037】
続いて、このペレット状の使用済培地301を二次乾燥装置15に移送する。この際に、移送された使用済培地301は、二次乾燥装置15からの送風によって乾燥および冷却されることにより、含水率が10%となるように調整される(二次乾燥工程54)。これにより、バイオマス燃料101が完成する。続いて、乾燥を終了したバイオマス燃料101を製品タンク16に貯留する。次いで、計量・充填装置17を用いて、製品タンク16に貯留されているバイオマス燃料101を500kg(または15kg)ずつ計量してフレキシブルコンテナ401(または包装用袋402)に充填する(計量・充填工程55)。
【0038】
この場合、上記のようにして製造されたバイオマス燃料101は、図7に示すように、茸栽培者からの注文に応じて製造者が茸栽培施設3に配送する。ここで、この使用済培地利用方法では、燃料製造施設1および培地製造施設2の双方を同じ製造者が運営しているため、茸栽培者からの注文に応じてバイオマス燃料101および培地201の双方を同じ配送便で配送することで、配送コストを削減することができる。また、上記したように、製造者がバイオマス燃料101や培地201を配送した際に茸栽培施設3から使用済培地301を回収することで、配送コストをさらに削減することができる。
【0039】
一方、バイオマス燃料101は、上記したように、ペレット状に成形したことで固体燃料の燃焼に適した一般的な燃焼装置34aの燃料として、好適に使用することができる。また、このバイオマス燃料101では、商品的な価値が極めて低い使用済培地301を利用して、上記したように比較的簡易な製造工程で製造されるため、製造コストを十分に低く抑えることが可能な結果、利用者に対して低価格で提供することが可能となる。このため、茸栽培に熱源を用いる茸栽培者としては、バイオマス燃料101を熱源の燃料として利用することで、多大なイニシャルコストを掛けて特殊な燃焼装置を導入することなく燃料費を十分に低く抑えることができ、その分、栽培コストを確実に削減することが可能となる。また、このようなバイオマス燃料101の利用が拡大することで、これまで利用が進んでいなかった使用済培地301の有効利用を確実に推進することが可能となる。
【0040】
また、この使用済培地利用方法では、燃料製造施設1および培地製造施設2を同じ製造者が運営して、バイオマス燃料101および培地201の双方を製造している。このため、両製造施設1,2における互いの機能が共通する装置(例えば、燃料製造施設1のペレット成形装置14、および培地製造施設2のペレット成形装置26)を共用する、つまり1台の装置をバイオマス燃料101の製造および培地201の製造の双方に用いることができる。このため、その分設備投資を削減することができる結果、バイオマス燃料101および培地201の製造コストをさらに低く抑えることが可能となり、栽培コストの削減および使用済培地301の有効利用をさらに推進することが可能となる。
【0041】
このように、このバイオマス燃料製造方法およびバイオマス燃料101によれば、乾燥させた使用済培地301をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状(一例としてペレット状)に成形してバイオマス燃料101を製造することにより、一般的な燃焼装置34aの燃料として、好適に使用することが可能なバイオマス燃料101を低コストで製造することができるため、利用者に対してバイオマス燃料101を低価格で提供することができる。このため、茸栽培に用いる熱源の燃料としてバイオマス燃料101を利用することで、燃料費を十分に低く抑えることができる結果、その分、栽培コストを確実に削減することができる。また、このようなバイオマス燃料101の利用を拡大することにより、これまで利用が進んでいなかった使用済培地301の有効利用を確実に推進することができる。
【0042】
また、このバイオマス燃料製造方法によれば、ペレット状に成形する以前の含水率が13%以下となるように使用済培地301を乾燥させることにより、使用済培地301を十分に乾燥させた状態でペレット状に成形することができるため、ペレット状に成形した後に乾燥が困難なときであっても、バイオマス燃料101を燃焼に必要な乾燥状態に確実に維持することがてきる。
【0043】
また、このバイオマス燃料製造方法によれば、ペレット成形装置(ペレットマシン)14を用いて使用済培地301をペレット状に成形することにより、成形時の発熱によって使用済培地301の含水率を十分に低下させることができるため、乾燥状態が良好なバイオマス燃料101を製造することができる。
【0044】
また、このバイオマス燃料製造方法によれば、籾殻211を主原料する培地201の使用済培地301を利用してバイオマス燃料101を製造することにより、籾殻211の燃焼カロリーが高いため、高カロリーのバイオマス燃料101を製造することができる。
【0045】
また、この使用済培地利用方法によれば、培地201を茸栽培施設3に配送する際に使用済培地301を回収し、回収した使用済培地301をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状(一例としてペレット状)に成形してバイオマス燃料101を製造し、茸栽培に熱源を用いる茸栽培施設3に対してその熱源の燃料としてバイオマス燃料101を供給して利用させることにより、培地201の配送に用いた配送便を使用済培地301の回収に用いることができるため、配送コストをさらに削減することができる。また、例えば、燃料製造施設1および培地製造施設2の双方を同じ製造者が運営することで、バイオマス燃料101および培地201の双方を同じ配送便で配送することができるため、配送コストをさらに削減することができる。また、両製造施設1,2を同じ製造者が運営することで、両製造施設1,2における互いに機能が共通する装置を共用することができるため、その分設備投資を削減することができる結果、バイオマス燃料101および培地201の製造コストを低く抑えることができる。
【0046】
なお、本発明は上記の構成に限定されない。例えば、使用済培地301をペレット状に成形してバイオマス燃料101を製造する例について上記したが、ペレット状に限定されず、使用済培地301を粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかに成形してバイオマス燃料を製造することもできる。また、籾殻211を主原料とする培地201の使用済培地301を利用してバイオマス燃料101を製造する例について上記したが、おが屑等の各種の原料を主原料とする培地の使用済培地301を利用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】バイオマス燃料製造施設1の構成を示すブロック図である。
【図2】バイオマス燃料製造工程50の工程図である。
【図3】培地製造施設2の構成を示すブロック図である。
【図4】培地製造工程60の工程図である。
【図5】茸栽培施設3の構成を示すブロック図である。
【図6】茸栽培工程70の工程図である。
【図7】利用方法を説明するための説明図である。
【図8】バイオマス燃料101(または培地201)を充填したフレキシブルコンテナ401の一部を切り欠いた状態の斜視図である。
【図9】バイオマス燃料101(または培地201)を充填した包装用袋402の一部を切り欠いた状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 燃料製造施設
3 茸栽培施設
14 ペレット成形装置
34a 燃焼装置
50 燃料製造工程
101 バイオマス燃料
201 培地
211 籾殻
301 使用済培地


【特許請求の範囲】
【請求項1】
茸栽培に使用した茸栽培用培地の使用済培地を乾燥し、当該乾燥した使用済培地をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形してバイオマス燃料を製造するバイオマス燃料製造方法。
【請求項2】
前記いずれかの形状に成形する以前の含水率が13%以下となるように前記使用済培地を乾燥させる請求項1記載のバイオマス燃料製造方法。
【請求項3】
前記乾燥した使用済培地をペレットマシンを用いてペレット状に成形する請求項1または2記載のバイオマス燃料製造方法。
【請求項4】
籾殻を主原料する前記茸栽培用培地の使用済培地を用いる請求項1から3のいずれかに記載のバイオマス燃料製造方法。
【請求項5】
茸栽培に使用した茸栽培用培地の使用済培地をペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形して構成されているバイオマス燃料。
【請求項6】
茸栽培用培地を茸栽培施設に配送する際に茸栽培に使用した当該茸栽培用培地の使用済培地を回収し、当該回収した使用済培地を乾燥した後にペレット状、粒状、タブレット状およびフレーク状のいずれかの形状に成形してバイオマス燃料を製造し、茸栽培に熱源を用いる前記茸栽培施設に対して当該熱源の燃料として前記バイオマス燃料を供給して利用させる使用済培地利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−120890(P2008−120890A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304797(P2006−304797)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(593096387)株式会社イトウ精麥 (9)
【Fターム(参考)】