説明

バイオマーカー

Engrailed-2(EN2)遺伝子の核酸配列、又は当該遺伝子にコードされているEN2タンパク質のアミノ酸配列を含む、消化管癌特異的バイオマーカーを提示する。また、消化管癌の治療、診断、モニタリング及び画像化における、当該バイオマーカーの使用も提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマーカー、具体的には消化管癌のバイオマーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
消化管癌は、消化管の組織及び器官が罹患する一群の癌である。消化管癌の例として、食道癌、胆嚢癌、胃癌(stomach cancerあるいはgastric cancer)、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌が挙げられる。直腸結腸癌として、直腸癌及び結腸癌が挙げられる。
【0003】
消化管癌の幾つかの形態は、米国では、年間250,000人を超える患者において新たに診断される。
【0004】
技術の進歩にも拘らず、消化管癌は、依然として治療が困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの側面において、消化管癌特異的バイオマーカーが提供され、当該バイオマーカーは:
(i)配列番号1を含む核酸配列、若しくはその断片若しくは変異体(variant)、又は当該核酸配列を含む核酸分子;又は
(ii)配列番号2を含むアミノ酸配列、若しくはその断片若しくは変異体、又は当該アミノ酸配列を含むアミノ酸分子
を含む。
【0006】
この側面において、配列番号1は、Engrailed-2遺伝子(GenBank参照番号NM_001427)の核酸配列に対応し、配列番号2は、当該遺伝子にコードされたEN2タンパク質(NCBI受入番号P19622, gi21903415)に対応する。
【0007】
好ましくは、前記消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択される。好ましくは、直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から選択される。
【0008】
驚くべきことに、前記EN2遺伝子は、消化管癌において、顕著に上方制御されることが判明している。
【0009】
前記EN2遺伝子は、アクソンガイダンス及び境界形成等の早期発生に多くの重要な役割を果たす、ホメオドメインを有する転写因子をコードする(Morgan R, (2006). Engrailed: Complexity and economy of a multi-functional transcription factor. FEBS letters 580, 2531-2533を参照されたい。当該文献は全て、本明細書中に参照により援用される。)。そのNCBI/GenBank参照番号は、NM_001427である。当該遺伝子は、過去に乳癌の癌遺伝子として振舞うことが報告されているが、当該遺伝子の診断における重要性については言及されていない(Martin, N.L., Saba-El-Leil, M.K., Sadekova, S., Meloche, S. and Sauvageau, G. (2005) EN-2 is a candidate oncogene in human breast cancer. Oncogene 24, 6890-6901を参照されたい。当該文献は全て、本明細書中に参照により援用される。)。前記EN2遺伝子産物は、33kDaのタンパク質(EN2)である。
【0010】
好ましくは、前記断片又はその変異体は:
(i)配列番号1との間で、約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約85%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約96%以上、又は約97%以上、又は約98%以上、又は約99%以上の核酸配列の同一性を有する核酸配列、ストリンジェントな条件下でこれらとハイブリダイズする核酸配列、及び/又はこれらと相補的な核酸配列;
(ii)配列番号2との間で、約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約85%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約96%以上、又は約97%以上、又は約98%以上、又は約99%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列、又は
(iii)(i)の核酸配列にコードされるアミノ酸配列
を含む。
【0011】
上記項目(iii)を言い換えると、前記断片又はその変異体は:
(A) 配列番号1との間で、約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約85%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約96%以上、又は約97%以上、又は約98%以上、又は約99%以上の核酸配列の同一性を有する核酸配列にコードされるアミノ酸配列;
(B) ストリンジェントな条件下で、配列番号1との間で、約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約85%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約96%以上、又は約97%以上、又は約98%以上、又は約99%以上の核酸配列の同一性を有する核酸配列とハイブリダイズする核酸配列にコードされるアミノ酸配列;又は
(C) 配列番号1との間で、約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約85%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約96%以上、又は約97%以上、又は約98%以上、又は約99%以上の核酸配列の同一性を有する核酸配列と相補的な核酸配列にコードされるアミノ酸配列;
を含むのが好ましい。
【0012】
好ましくは、前記断片は、(i)配列番号2由来の4個以上、5個以上、好ましくは6個以上、好ましくは7個以上、好ましくは8個以上の連続アミノ酸、又は(ii) 配列番号2由来の4個以上、5個以上、好ましくは6個以上、好ましくは7個以上、好ましくは8個以上の連続アミノ酸をコードする、配列番号1の核酸配列の断片を含む。より長い断片も好ましく、例えば、約10、15、20、25、30、50、75、100、150、200、225個以上、及び最大で約250個以上の、配列番号2のアミノ酸、又は配列番号1の対応するコード断片が挙げられる。断片は、N末端及び/又はC末端からx個のアミノ酸が排除された切断ペプチドであってもよい。そのような切断において、xは、1又はそれ以上(即ち1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100又はそれ以上)であってもよいが、好ましくは、150アミノ酸未満の配列番号2のアミノ酸、又は配列番号1の対応するコード断片である。
【0013】
好ましくは、前記断片又はその変異体は、機能性断片又は変異体である。
【0014】
本発明の他の側面において、患者の消化管癌を診断する、又は消化管癌の発生のおそれがある患者を同定する方法が提供され、当該方法は:
(a)患者から採取した試料中の癌特異的バイオマーカーの量を決定する工程;
(b)決定された患者の試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量を、正常対照中の当該癌特異的マーカーの量と比較する工程;
を含み、当該患者から採取した試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量と、正常対照中の当該癌特異的バイオマーカーの量との差が、消化管癌の存在と関連し、又は消化管癌の発生のおそれと関連し、任意で、前記消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0015】
本発明の他の側面において、患者の消化管癌の進行をモニタリングする方法が提供され、当該方法は;
(a)患者から採取した試料中の癌特異的バイオマーカーの量を決定する工程;
(b)決定された患者の試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量を、正常対照中の当該癌特異的マーカーの量と比較する工程;並びに
(c)2つ以上の時間間隔で、工程(a)及び(b)を反復する工程;
を含み、当該期間中の患者から採取した試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量の増大が、消化管癌の進行の増大に関連し、かつ当該期間中の患者から採取した試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量の減少が、消化管癌の進行の減少に関連し、任意で、前記消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0016】
故に、本発明に係る方法は、消化管癌の発生、進行、安定化、改善及び/又は寛解を検出するのに使用出来る。
【0017】
好ましくは、前記対照は、消化管癌の発生又は進行をモニタリングする場合は、同一の患者から過去に採取されたものであってもよい。しかしながら、前記対照は、集団、特に消化管癌を有しない健康な、又は正常な集団内で、無作為化したものであってもよい。言い換えると、前記対照は、正常な対象から採取した正常な対照試料中のバイオマーカーのレベルで構成されてもよい。
【0018】
故に、本発明の一例において、消化管癌の進行を診断又はモニタリングする方法が提供され、当該方法は、患者から採取した生体液中の癌特異的バイオマーカーの存在を検出及び/又は定量する工程を含み、任意で、前記消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0019】
上記で検討したように、時間的に間隔を空けた2つ以上の検出及び/又は定量工程が提供されるのが好ましい。
【0020】
好ましくは、前記工程は、癌特異的バイオマーカーのレベルが変化したか否かを判定するために、数日、数週間、数年又は数ヶ月の間隔が空けられることにより、癌の進行における変化があったか否かが示され、また2つ以上の条件で採取した試料のバイオマーカーの間のレベルの比較が可能となり、期間中のバイオマーカーのレベルの増大が、前記癌の発生又は進行を示し、一方、期間中のバイオマーカーのレベルの低下が、前記癌の改善及び/又は寛解を示す。
【0021】
好ましくは、前記バイオマーカーのレベルの差は、信頼区間が約80%以上、好ましくは約85%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上、好ましくは約99%以上、好ましくは約99.5%以上、好ましくは約99.95%以上、好ましくは約99.99%以上である「t検定」を使用して、統計的に有意と判断される程度である。
【0022】
本発明のバイオマーカー及び方法は、特に、既知の早期段階の消化管癌の検出方法よりも高感度で、早期段階の癌を検出するのに有用である。故に、本発明のバイオマーカー及び方法は、特に、公知の方法を使用して癌が陰性であった患者の癌を確認するのに有用である。
【0023】
予後診断及び治療の選択は、癌の段階及び患者の一般的健康状態に依存する。
【0024】
食道癌に関しては、ステージ0の癌患者は、癌細胞が、食道を裏打ちする表層の細胞のみを含むことを特徴とする癌を、その場所に有する。ステージIの癌を有する患者は、癌細胞が食道の裏打ち層の下方に浸潤しているが、食道の筋肉の壁、リンパ節、又は身体の他の部分には到達していない癌を有する。ステージIIの癌患者は、癌細胞が食道の筋肉の壁の内部又はこれを通り過ぎて浸潤しているが、局所構造には到達していない癌を有する(ステージIIA)。原発癌付近の所属リンパ節に癌細胞が浸潤しているが、局所構造には到達していない場合、ステージIIBと呼ばれる。ステージIIIの癌患者は、癌細胞が食道の壁を通過し、リンパ節及び/又は隣接する構造にまで転移している癌を有する。ステージIVの癌患者は、遠隔部位にまで広がった転移性の癌を有する。
【0025】
胆嚢癌に関しては、ステージ0の癌において、胆嚢の最深部(粘膜)層中に、異常細胞が認められる。これらの異常細胞は、癌となり得て、付近の正常組織中に拡散する。ステージIの癌は、ステージIAとIBに分けられる。ステージIAにおいて、癌は最深部(粘膜)層を超えて、結合組織又は筋肉層にまで拡散している。ステージIBにおいて、癌は、筋肉層を超えて、当該筋肉周辺の結合組織にまで拡散している。ステージIIの癌は、ステージIIA及びIIBに分けられる。ステージIIAにおいて、癌は、胆嚢を覆う組織を超えて、肝臓及び/又は近接する臓器、例えば胃、小腸、大腸、膵臓、又は肝臓の外側の胆管にまで拡散している。ステージIIBにおいて、癌は、下記の経路の一つにより拡散している:(1)最深部層を超えて、結合組織及び近接するリンパ節に至る経路;又は(2)筋肉層及び近接するリンパ節に至る経路;又は(3)筋肉層を超えて、当該筋肉周囲の結合組織及び近接するリンパ節に至る経路;又は(4)胆嚢を覆う組織を超えて、肝臓及び/又は近接する臓器、例えば胃、小腸、大腸、膵臓、又は肝臓の外側の胆管、並びに近接するリンパ節に至る経路。ステージIIIにおいて、癌は、肝臓中の主要な血管に拡散し、近接する臓器に拡散し、及び近接するリンパ節に拡散する場合もある。ステージIVにおいて、癌は、近接するリンパ節及び/又は胆嚢から遠く離れた臓器にまで拡散している。
【0026】
胃癌に関しては、ステージ0の癌患者は、癌細胞が、胃を裏打ちする表層の細胞のみを含む癌を、その場所に有する。ステージIの癌を有する患者は、癌細胞が胃の裏打ち層の下方に浸潤しているが、胃の筋肉の壁には到達していない癌を有する。癌がリンパ節や遠隔部位にまで拡散していない場合、当該癌は、ステージIA癌と呼ばれる。癌が細胞層の下方に浸潤し、1〜6のリンパ節に拡散し、又は胃壁の筋肉内に浸潤しているが、所属リンパ節又は遠隔部位に拡散していない場合、当該癌は、ステージIB癌と呼ばれる。ステージIIの癌患者は、癌細胞が胃の筋肉の壁の内部又はこれを通り過ぎて浸潤しているが、近接の局所構造には到達していないか、又は原発癌付近の所属リンパ節に癌細胞が浸潤しているが、局所構造には到達していない癌を有する。ステージIIIの癌患者は、癌細胞が胃に隣接する構造及び/又は所属リンパ節にまで拡散している癌を有する。ステージIIIの癌は、更に、ステージIIIA及びステージIIIBに分けられる。ステージIIIAの癌は、1)胃の壁の筋肉内及び7〜15のリンパ節に浸潤しており、又は2)腹部の裏打ち(腹膜)に浸潤しているが、局所構造及び1〜6のリンパ節には浸潤しておらず、又は3)近接する局所構造に浸潤しているが、リンパ節には拡散していない。ステージIIIBの癌は、腹部の裏打ち(腹膜)及び7〜15のリンパ節に浸潤している。ステージIVの胃癌患者は、近接構造及びリンパ節に浸潤し、又は遠隔部位にまで広がった癌を有する。
【0027】
肝臓癌に関しては、ステージIの癌は、肝臓の一箇所に認められ、外科的治療が可能である。ステージIIの癌は、肝臓の一箇所以上に認められ、外科的治療が可能な場合もある。ステージIIIの癌は、肝臓及び/又は身体の他の部分の二箇所以上に拡散している。ステージIVの癌は、身体全体の多くの部分に及ぶ。
【0028】
膵臓癌に関しては、ステージIの癌は、膵臓に局限された癌を指す。ステージIIの癌は、十二指腸、胆管、又は膵臓を覆う脂肪に拡散しているが、局所リンパ節のいずれかには浸潤しておらず、身体の他の部位に検出できない。ステージIIIの癌は、局所リンパ節及び主要な血管に拡散している。ステージIVの癌は、身体の遠隔部位、例えば肝臓、肺、又は近接する臓器、例えば胃、脾臓及び/又は大腸等に拡散している。
【0029】
胆管癌に関しては、ステージIAの癌は、胆管内に包埋されている。ステージIBの癌は、胆管の壁を越えて拡散しているが、近接するリンパ節又は他の構造内に拡散していない。ステージIIAの癌は、肝臓、膵臓若しくは胆嚢内に拡散しており、近接する血管にまで及んでいるが、リンパ節までは拡散していない。ステージIIBの癌は、近接するリンパ節内に拡散している。ステージIIIの癌は、肝臓に血液を出し入れする主要な血管が罹患し、又は小腸若しくは大腸、胃又は腹壁内に拡散している。腹膜中のリンパ節が罹患している場合もある。ステージIVの癌は、肺等の身体の遠隔部分に拡散している。
【0030】
小腸癌に関しては、ステージIの癌は、小腸の裏打ち内に含まれ、又は筋肉壁の内部に拡散している。ステージIIの癌は、筋肉壁を越えて、場合によっては近接の臓器にまで拡散している。ステージIIIの癌は、近接のリンパ節にまで拡散している。ステージIVの癌は、リンパ節及び身体の他の部分にまで拡散している。
【0031】
肛門癌に関しては、ステージIの癌は、肛門のみ罹患しており、大きさが2cm未満である。当該癌は、括約筋への拡散が始まっていない。ステージIIの癌は、大きさが2cmを超えているが、近接のリンパ節内、又は身体の他の部分には拡散していない。ステージIIIAの癌は、直腸付近のリンパ節、又は近接する臓器、例えば膀胱又は膣に拡散している。ステージIIIBの癌は、鼠経部及び骨盤中のリンパ節にまで、又は肛門付近のリンパ節、及び近接する臓器、例えば膀胱又は膣にまで拡散している。ステージIVの癌は、腹膜中のリンパ節まで、又は肝臓等の身体の他の部分にまで拡散している。
【0032】
大腸癌に関しては、ステージIの癌は、大腸壁を通過して腹腔に到達せず、いずれかの近接する臓器又は局所リンパ節に拡散しておらず、かつ身体の他の部位で検出出来ない。ステージIIの癌は、大腸壁を通過して腹腔に到達しているが、いずれの局所リンパ節にも浸潤せず、かつ身体の他の部位で検出出来ない。ステージIIIの癌は大腸壁を通過して腹腔に到達し、いずれかの局所リンパ節に浸潤しているが、身体の他の部位で検出出来ない。ステージIVの癌は、身体の遠隔部位、例えば肝臓、肺、骨、遠隔のリンパ節等にまで拡散している。
【0033】
直腸癌に関しては、ステージIの癌は、直腸の裏打ちに局限する。ステージIIの癌は、直腸壁を通過しているがいずれかの局所リンパ節に浸潤せず、身体の他の部位で検出出来ない。ステージIIIの癌は、直腸壁を通過して1つ以上の局所リンパ節に浸潤しているが、身体の他の部分で検出出来ない。ステージIVの癌は、肝臓、肺、骨等の身体の遠隔部位にまで拡散している。
【0034】
本明細書中で、「早期段階」という用語は、上記で議論したステージ0、ステージI及び/又はステージIIを意味して用いられていると理解されたい。
【0035】
本明細書中で、「後期段階」という用語は、上記で議論したステージIII及び/又はステージIVを意味して用いられていると理解されたい。
【0036】
「早期段階」及び「後期段階」の癌の病状の種類は、医師により決定されてもよいと理解されたい。「早期段階」及び「後期段階」は、それぞれ非転移性及び転移性の状態に対応してもよいと想定される。
【0037】
一つの側面において、本発明は、早期段階の癌を検出する方法を提供し、当該方法において、対照と患者から採取した試料との間のバイオマーカーの増大が、早期段階の癌の存在を示す。好ましくは、当該増大は、約100%以上、好ましくは約125%以上、好ましくは約150%以上、好ましくは約200%以上、好ましくは約250%以上、好ましくは約300%以上、好ましくは約500%以上である。
【0038】
また、本発明は、後期段階の癌を検出する方法を提供し、当該方法において、対照と患者から採取した試料との間のバイオマーカーの増大が、後期段階の癌の存在を示す。好ましくは、当該増大は、約100%以上、好ましくは約125%以上、好ましくは約150%以上、好ましくは約200%以上、好ましくは約250%以上、好ましくは約300%以上、好ましくは約500%以上、好ましくは約750%以上、好ましくは約1000%以上である。
【0039】
更に、本発明は、癌の段階の変化をモニタリングする方法を提供し、当該方法において、より早期段階の試料又は対照を基準としたバイオマーカーの増大が、癌がより早期段階から後期の段階に、例えばステージ0からステージIに、ステージIからステージIIに、ステージIIからステージIIIに、ステージIIIからステージIVに、早期段階から後期段階に、又はそれらの中間、例えば上記癌特異的段階におけるステージIVAからステージIVBに進行したことを示す。好ましくは、当該増大は、約100%以上、好ましくは約125%以上、好ましくは約150%以上、好ましくは約200%以上、好ましくは約250%以上、好ましくは約300%以上、好ましくは約500%以上、好ましくは約750%以上、好ましくは約1000%以上である。
【0040】
好ましくは、前記消化管癌特異的バイオマーカーが、正常対照と比較して、約2倍以上、好ましくは約3倍以上、好ましくは約4倍以上、好ましくは約5倍以上、好ましくは約10倍以上、好ましくは約20倍以上、好ましくは約30倍以上、好ましくは約40倍以上、好ましくは約50倍以上、好ましくは約75倍以上、好ましくは約100倍以上のレベルで存在する場合に、消化管癌の存在、又は消化管癌の発生のおそれを示す。
【0041】
また、本発明は、消化管癌の治療の効率をモニタリングする方法を提供し、当該方法は、患者から採取した生体試料中の癌特異的バイオマーカーの存在を検出及び/又は定量する工程を含み、任意で、前記消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0042】
好ましくは、本発明の方法において、前記癌特異的バイオマーカーの検出及び/又は定量は、MALDI-TOF、1つ以上のリガンドと連動したSELDI、1−D若しくは2−Dゲルベース解析システム、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィーとマススペクトロメトリー後術の組み合わせ、例えばICAT(R)又はiTRAQ(R)等、薄層クロマトグラフィー、NMRスペクトロメトリー、サンドイッチ免疫アッセイ、酵素結合免疫吸着法(ELISA)、放射性免疫アッセイ(RAI)、酵素免疫アッセイ(EIA)、側方流動(lateral flow)/免疫クロマトグラフィーストリップ試験、ウエスタンブロット、免疫沈降、及び、例えば金、銀、若しくはラテックス粒子、磁性粒子若しくはQドット等の粒子ベース免疫アッセイ、及び組織切片の免疫組織化学等による。
【0043】
好ましくは、癌特異的バイオマーカーの検出及び/又は定量は、マイクロタイタープレート、ストリップフォーマット、アレイ又はチップ上で行われる。
【0044】
好ましくは、癌特異的バイオマーカーの検出及び/又は定量は、好ましくはレポーターと連結した、癌特異的バイオマーカーに特異的な抗体を有するELISAにより行われる。
【0045】
好ましくは、癌特異的バイオマーカーの検出及び/又は定量は、バイオセンサーにより行われる。
【0046】
好ましくは、前記試料は、患者から採取した生体液又は組織を含む。好ましくは、当該生体液又は組織は、細胞液、腹水、尿、便、膵液、内視鏡の周囲で採取された体液、血液又は唾液を含む。好ましい態様において、前記試料は、患者から採取された、便、内視鏡の周囲で採取された体液、血液又は膵液である。
【0047】
また、前記生体液が、全形/無傷の細胞を、実質的に、又は全く含まないのも好ましい。好ましくは、前記生体液は、血小板及び細胞デブリ(細胞の溶解により生じたもの等)を含まない。好ましくは、前記生体液は、原核細胞及び真核細胞のいずれも含まない。
【0048】
上記のような試料は、当業者にとって明白なもの等、当該技術分野で公知の多くの方法により取得されることが出来る。例えば、尿及び便の試料は、回収可能であり、一方、血液、腹水、血清又は膵液試料は、例えば注射針とシリンジを使って、非経口で採取出来る。無細胞又は実質的な無細胞試料は、試料を、当該技術分野で公知の様々な技術で処理することによって取得することも出来る。限定されないが、そのような技術として、遠心分離及び濾過が挙げられる。
【0049】
一般に、試料を採取するのに、非侵襲的技術を用いるのが好ましいが、組織ホモジネート、組織切片及び生検標本等の試料を取得するのも好ましい。
【0050】
本発明の他の側面は、消化管癌を有する患者を治療する方法に関し、当該方法は、治療有効量の、(i)本発明に係るバイオマーカー、又は(ii)本発明に係るバイオマーカーに特異的に結合する、抗体又はその断片を、患者に投与する工程を含み、任意で、当該消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0051】
本発明の他の側面は、患者の体内の消化管癌を画像化する方法に関し、当該方法は、本発明に係るバイオマーカーに特異的に結合する抗体又はその断片を患者に投与する工程を含み、任意で、当該消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0052】
好ましくは、前記抗体は、蛍光マーカー又はタグ等の、検出可能なマーカーをコンジュゲートしている。好ましくは、当該抗体は、モノクローナル抗体である。好ましくは、当該抗体は、増殖抑制剤をコンジュゲートしている。好ましくは、当該抗体は、毒素(イムノトキシン等)、抗生物質、溶解酵素(lytic enzyme)又は放射性同位体等の、細胞毒性剤をコンジュゲートしている。
【0053】
本発明の他の態様は、本発明に係るバイオマーカー、又は本発明に係るバイオマーカーと特異的に結合する抗体若しくはその断片を含む組成物に関する。
【0054】
好ましくは、前記組成物は、医薬組成物である。
【0055】
また、本発明は、本発明に係るバイオマーカーを含有するワクチン、又は本発明に係るバイオマーカーと結合する抗体に関する。
【0056】
本発明の他の側面は、体液中に検出される癌特異的バイオマーカーの、消化管癌のバイオマーカーとしての使用に関し、任意で、当該消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0057】
好ましくは、前記使用は:臨床スクリーニング、予後評価、治療結果のモニタリング、特定の治療処置に対して最高の応答性が予測される患者を同定する方法、及び薬剤スクリーニング及び開発からなる群から選択される方法における使用である。
【0058】
本発明の他の態様は、(i)本発明に係るバイオマーカー、又は(ii)本発明に係るバイオマーカーに特異的に結合する、抗体又はその断片の、消化管癌の治療用の医薬の製造における使用に関し、任意で、当該消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0059】
また、(i)本発明に係るバイオマーカー、又は(ii)本発明に係るバイオマーカーに特異的に結合する、抗体又はその断片を含む組成物も提供され、当該組成物は、消化管癌の治療に使用され、任意で、当該消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0060】
本発明の他の側面は、患者の消化管癌を画像化する方法において使用される、本発明に係るバイオマーカー、又は本発明に係るバイオマーカーに特異的に結合する、抗体又はその断片に関し、任意で、当該消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0061】
好ましい態様において、本発明に係る方法及び組成物は、早期段階、例えば疾患の症状が表出する前の段階での、治療又は診断に用いられる。
【0062】
幾つかの態様において、本発明の方法及び組成物は、臨床段階にある疾患の治療又は診断に用いられる。
【0063】
本発明の他の態様において、上記方法又は使用において用いられるキットも提供され、ここで、当該キットは、体液中の癌特異的バイオマーカーに結合可能な、又はこれを特異的に認識する、リガンド、及びレポーター手段を含む。
【0064】
好ましくは、当該キットは、アレイ又はチップである。
【0065】
好ましくは、前記キットは、マイクロタイタープレート、試験ストリップ、アレイ又はチップを含む。
【0066】
発明の詳細な説明
本発明の例示的態様は、添付した図面を参照して、以下に記述される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、下記実施例1で実施した実験の結果を示す。
【0068】
【図2】図2は、下記実施例2で実施した実験の結果を示す。
【0069】
【図3】図3は、EN2(配列番号1)の核酸配列を示す。
【0070】
【図4】図4は、EN2(配列番号2)のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明は、消化管癌特異的バイオマーカーに関し、好ましくは、当該消化管癌は、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される。
【0072】
本明細書中で、用語「含む」、「有する」、「含有する」は、「他のものと共に含む」ことを意味することが意図される。これらの用語は、「それのみからなる」と解釈されることを意図しない。
【0073】
本明細書中、用語「約」は、±20%、より好ましくは±10%、なおもより好ましくは±5%、最も好ましくは±2%を意味する。
【0074】
本明細書中で使用されるとき、用語「治療有効量」は、問題となっている疾患に起因する1つ以上の状態又は症状の重症度を低減させ、及び/又は緩和させるのに必要な組成物の量を意味する。
【0075】
本明細書中で、本発明の態様は、それらにより、明細書の記載が明確かつ正確なものとなるように記載されている。しかしながら、それらの態様は、本発明から逸脱せずに、様々に組み合わせられ、又は分離されてもよいことが意図され、また理解され得る。例えば、全ての消化管癌の例において、好ましい特徴は、当該消化管癌が、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌は、直腸癌及び結腸癌から任意で選択されることであると理解されたい。
【0076】
臨床的使用において、本発明に係る化合物又はそのプロドラッグ形態は、経口、直腸、非経口、又は他の投与手段等の、所望の投与経路に適合するように製剤化された、医薬剤形に製剤化される。医薬製剤は、通常、有効成分を、医薬として許容される公知の稀釈剤又は担体と混合することにより調製される。本明細書中で使用されるとき、用語「医薬として許容される担体」は、医薬的投与に適合する、任意の、及び全ての溶媒、分散媒体、被覆材、抗細菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤等を含むことが意図される。医薬として許容される希釈剤又は担体の例として、水、ゼラチン、アラビアゴム、ラクトース、微結晶セルロース、澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、二酸化ケイ素コロイド等が挙げられる。それらの医薬活性物質用の媒体及び薬剤の使用は、当該技術分野で周知である。前記有効成分に適合しないものを除く全ての公知の媒体又は薬剤が、前記組成物中に使用されることが想定される。
【0077】
そのような製剤は、他の薬理活性剤及び公知の添加物、例えば安定化剤、水和剤、乳化剤、香料、緩衝剤等を含有してもよい。
【0078】
前記製剤は、更に、顆粒化、圧縮、微小カプセル化、噴霧被覆等の、公知の方法により調製されてもよい。当該製剤は、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、シロップ、懸濁物、坐薬又は注射剤等の投与形態で、公知の方法により調製されてもよい。液体の製剤は、水又は他の適切なビヒクル中に、前記有効成分を、溶解又は懸濁することにより調製されてもよい。錠剤及び顆粒は、公知の方法により被覆されてもよい。
【0079】
非経口、皮内、又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁物は、以下の成分:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、固定油(fixed oil)、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒;抗細菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩及び浸透圧調整剤、例えば塩化ナトリウム若しくはデキストロースが含有されてもよい。pHは、酸または塩基、例えば塩酸又は水酸化ナトリウム等で調整されてもよい。前記非経口調製物は、ガラス製又はプラスチック製の、アンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与バイアル中に封入されてもよい。
【0080】
注射用に適した医薬組成物として、滅菌水溶液(水に溶ける場合)、又は分散物、及び滅菌注射用溶液若しくは分散物の即時調製用の滅菌粉末が挙げられる。皮内投与に適した担体として、生理食塩水、静菌性の水、Cremophor ELTM (BASF, Parsippany, NJ)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合に、前記組成物は無菌状態で、注射が可能な程度の流動性を有しなければならない。また、前記組成物は、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物に汚染されることなく保存されなければならない。前記担体は、水、メタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適切な混合物等を含む、溶媒又は分散媒体であることが出来る。好ましい粒動性は、レシチン等の被覆材の使用により、分散物の場合は所望の粒子サイズを維持することにより、及び界面活性剤の使用により、維持することが出来る。微生物の活動の抑制は、様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等により達成出来る。多くの場合、糖類、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム等の等張剤を組成物中に含有するのが好ましい。注射用組成物の吸収の遅延は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等を含有することにより、達成できる。
【0081】
滅菌注射溶液は、適切な溶媒中に、所望の量の有効成分(例えば本発明の態様に係る化合物)と、1つ以上の上記成分の組合せを加え、続いて濾過滅菌することにより調製出来る。一般に、分散物は、基礎的分散媒体を含む滅菌ビヒクルに、有効成分と上記他の必要な成分を加えることにより調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、予め濾過滅菌した溶液から有効成分といずれかの追加の所望の成分の粉末を取得する、真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0082】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤又は食用の担体を含有する。それらは、ゼラチンカプセルに封入され、又は錠剤に圧縮され得る。経口治療用投与の目的で、前記有効成分は、賦形剤と混合され、錠剤、トローチ又はカプセルの形態で使用され得る。経口組成物は、液体担体を使用して調製されてもよく、マウスウォッシュとして使用されてもよく、ここで、当該液体担体中の化合物は、経口適用され、漱がれ、吐き出され、又は飲み込まれる。医薬として適合する結合剤及び助剤の材料が、前記組成物の一部として含まれる場合もある。錠剤、ピル、カプセル、トローチ等は、以下の成分のいずれか、又は類似の性質を有する化合物:結合剤、例えば微結晶セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン;賦形剤、例えば澱粉又はラクトース、分散剤、例えばアルギン酸、Primogel、又はコーンスターチ;滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はSterotes;流動促進剤、例えば二酸化ケイ素コロイド;甘味料、例えばスクロース又はサッカリン;又は香料、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料等を含んでもよい。
【0083】
吸入による投与において、前記化合物は、与圧容器から噴出させるエアロゾルの形態で、適切な推進剤(propellant)、例えば二酸化炭素を充填したディスペンサーにより、又は噴霧器により送達される。
【0084】
また、筋肉内、又は皮内投与手段により、全身投与が行われる場合もある。経粘膜又は経皮投与において、浸透させるべき浸透剤が、製剤中に添加される。そのような浸透剤は、当該技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜投与において、界面活性剤、バイル塩、及びフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレー又は坐薬の使用を通じて達成される場合がある。経皮投与において、前記有効成分は、当該技術分野で一般に知られる、軟膏(ointmentsあるいはsalves)、ゲル、又はクリームに製剤化される。
【0085】
前記化合物は、直腸送達用の、坐薬(公知の坐薬基材、例えばカカオバター及び他のグリセリド等を用いる)又は停留浣腸の形態で調製される場合もある。
【0086】
一つの態様において、前記有効成分は、前記化合物が身体から早期に排除されるのを防ぐ担体を用いて調製され、例えば、インプラント及び微小カプセル化送達系等の、徐放製剤が挙げられる。生分解性かつ生体適合性のポリマーが使用され、例えば酢酸エチレンビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、これー減、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等が挙げられる。そのような製剤の調製方法は、当業者にとって明らかである。また、前記材料も、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticalsから商業的に入手出来る。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対する抗体を有し、感染細胞を標的とするリポソームを含有する)も、医薬として許容される担体として使用出来る。これらは、当業者に公知の方法に従い調製出来る。
【0087】
投与及び用量の均一が容易になるように、経口又は非経口組成物を投与単位形態に製剤化することは、特に有利である。本明細書中で、投与単位形態は、処置される対象に一まとめに投与されるのに適した物理的に分離した単位であり;各単位が、所望の治療効果を生じるように計算された量の有効成分と所望の医薬担体を含有するものを指す。本発明の投与単位形態の詳細は、有効成分の特有の性質及び達成すべき具体的な治療効果、並びに個体を処置するためのそのような有効成分を配合する固有の限界に決定付けられ、及び直接依存する。
【0088】
そのような化合物の毒性及び治療効果は、培養細胞において、又は実験動物において、例えばLD50(集団の50%を死滅させる用量)及びED50(集団の50%において治療が有効な用量)を判定する、通常の薬理的手法により判定出来る。毒性を示す用量と治療効果を示す用量との間の比率は、治療指数であり、LD50/ED50として表現出来る。治療指数の値が大きい化合物が好ましい。毒性の副作用を示す化合物が使用されてもよいが、罹患していない細胞に対するダメージを最小限にするように、罹患組織を有する部位にそのような化合物を集中させる送達系を設計することで、副作用を減少させるよう注意するべきである。
【0089】
細胞培養アッセイ及び動物実験で得られたデータは、ヒトに使用する際の用量の範囲を定式化するのに使用出来る。そのような化合物の用量は、好ましくは、ED50を含み、毒性が僅か又は無い循環濃度の範囲内である。当該用量は、上記範囲内で、採用される投与形態及び利用される投与の経路に依存して変動してもよい。本発明に使用されるいずれかの化合物において、治療有効量は、まずは、細胞培養アッセイから見積もられる。用量は、細胞培養で決定されたIC50(即ち、症状の最大半量の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルで定式化される。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するのに使用出来る。血漿中のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィー等により測定されてもよい。
【0090】
前記医薬組成物は、容器、パック、又はディスペンサーに納められ、投与の説明書が同封されてもよい。
【0091】
本明細書中で、「同一性(identity)」とは、当該技術分野で知られているように、2つ以上のポリペプチド配列、又は2つ以上のポリヌクレオチド配列を比較することにより判定される、それらの配列の間の関連性である。当該技術分野において、「同一性」とは、ポリペプチド又はポリヌクレオチド配列の間の、場合によっては、それらの配列の並びの間の一致により判定される、配列の関連性の程度をも意味する。同一性のパーセンテージは、限定されないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991; and Carillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)等(これらは全て、全体が本明細書中に参照により援用される)に記載の公知の方法により、容易に計算出来る。同一性を決定する好ましい方法は、試験される配列の間で最大の一致がもたらされるように設計される。同一性を決定する方法は、公に利用可能なコンピュータープログラム中に組み込まれている。2つの配列の間の同一性のパーセンテージを決定する好ましいコンピュータープログラムとして、限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research 12(1): 387 (1984), 全て本明細書中に参照により援用される)、BLASTP、BLASTN、及びFASTA (Atschul, S. F. et al., J. Molec. Biol. 215: 403-410 (1990), 全て本明細書中に参照により援用される)等が挙げられる。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他のソースから公に利用可能である(BLAST Manual, Altschul, S., et al., NCBI NLM NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul, S., et al., J. Mol. Biol. 215: 403-410 (1990), 全て本明細書中に参照により援用される)。例えば、参照配列の「配列番号A」との「同一性」が95%以上のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の「配列番号A」の100ヌクレオチドあたり、5つ以下の点突然変異を含み得ることを除いて、当該参照配列と同一であることが意図される。換言すると、参照ヌクレオチド配列との同一性が95%以上のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを取得するために、当該参照配列中のヌクレオチドの5%以下が欠失し、若しくは他のヌクレオチドで置換されてもよく、又は参照配列中に、全ヌクレオチド数の5%以下のヌクレオチドが挿入されていてもよい。当該参照配列のこれらの突然変異は、当該参照配列の5'又は3'末端部位で起こっても、又はそれらの末端部位の間のどこで起こってもよく、参照配列のヌクレオチド中で個々に、又は参照配列中で1つ以上の連続したグループとなって組み込まれている。同様に、参照配列の「配列番号B」との同一性が95%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、そのポリペプチド配列が、参照アミノ酸配列の「配列番号B」の100アミノ酸あたり、5つ以下のアミノ酸の変更(alteration)を含み得ることを除いて、当該参照配列と同一であることが意図される。換言すると、参照アミノ酸配列との同一性が95%以上のアミノ酸配列を有するポリペプチドを取得するために、当該参照配列中のアミノ酸残基の5%以下が欠失し、若しくは他のアミノ酸で置換されてもよく、又は参照配列中に、全アミノ酸数の5%以下のヌクレオチドが挿入されていてもよい。当該参照配列のこれらの変更は、当該参照配列のアミノ又はカルボキシ末端部位で起こっても、又はそれらの末端部位の間のどこで起こってもよく、参照配列の残基中で個々に、又は参照配列中で1つ以上の連続したグループとなって組み込まれている。
【0092】
本明細書中で使用されるとき、用語「ストリンジェントな条件下でのハイブリダイズ」は、互いに50%以上の類似性を有する受容体をコードするヌクレオチド配列が、典型的には互いにハイブリダイズを維持する、ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を記載することが意図される。当該条件は、互いに約65%以上、約70%以上又は約75%以上類似している配列が典型的には互いにハイブリダイズを維持するものであってもよい。そのようなストリンジェントな条件は、当業者にとって公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N. Y. (1989), 6. 3.1-6.3.6(全て本明細書中に参照により援用される)に記載されている。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例として、6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、45℃でのハイブリダイゼーション、その後の0.2xSSC、0.1%SDS中、50〜65℃での1回以上の洗浄が挙げられる。一つの態様において、配列番号1の配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする単離された受容体核酸分子は、天然に存在する核酸分子に対応する。本明細書中で使用されるとき、「天然に存在する」核酸分子とは、天然に存在するヌクレオチド配列を有するRNA又はDNA分子(例えば天然のタンパク質をコードする)を指す。
【0093】
本明細書中、「抗体又は抗体断片」は、抗体(例えばIgG、IgM、IgA、IgD若しくはIgE)、又は断片(例えばFab、F(ab')2、Fv、ジスルフィド結合したFv、scFv、閉鎖立体構造(closed conformation)多特異性抗体、ジスルフィド結合したscFv、二重特異性抗体(diabody))であって、抗体を天然に産生するいずれかの動物種に由来し、又は組換えDNA技術により作製され;血清、B細胞、ハイブリドーマ、トランスフェクトーマ、酵母又は細菌から単離されるものを指す。
【0094】
本明細書中、「治療」という用語は、既に発症した疾患の処置、及び/又は疾患の発症を防止するための予防的処置を意味する。本発明に係る方法は、疾患の治療、予防、進行の阻害、又は発症の遅延に使用出来る。
【0095】
「バイオマーカー」という用語は、当該技術分野で通用するものであり、あるプロセス、事象又は状態の、判別可能な、生物学的又は生物由来の指標を意味する。言い換えると、バイオマーカーは、癌組織の存在等、特定の生物学的状態の指標である。場合によっては、異なる複数のバイオマーカーが特定の疾患の容態を示す場合もあるが、理論に拘らず、腹水等の生体液中の本発明に係るバイオマーカーのレベルの増大だけが、消化管癌の指標となることが考えられる。様々な糖型のEN2ペプチド等が分泌されることは現在想定されていないが、いずれにしてもそれらは本発明に包含される。例えば、異なる糖型、例えば糖型構造又は糖の構成が変化したものは、尚もEN2として判定され得るが、これらは消化管癌の進行の指標と見なされ得る。EN2ペプチド又はその断片の、切断、突然変異若しくは欠失、又は連結も想定される。
【0096】
上記で議論したように、消化管癌におけるEN2遺伝子の発現の増大が、正常組織と比較して顕著であることは、驚異的な知見である。更に、EN2は、消化管癌の患者の腹水中に見出される。EN−2は、ダメージを受けた、又は死んだ細胞から漏れ出すことにより、体液中で検出されると考えられる。かかる増大のレベルは、早期段階及び後期段階の両方の消化管癌の指標となる。対照又は正常レベルと早期段階の消化管癌との間で顕著な増大が認められるが、消化管癌の早期段階と後期段階との間でも、非常に顕著な増大が認められる。概して、本発明の利点は、癌の実体及び状態を検出出来ることである。この利点は、予後診断及び適切な治療の提供の助けとなる。
【0097】
本発明の他の利点は、好ましくなく、潜在的に有害で、不正確な場合もある、侵襲的手順を用いること無く、正確な診断を提供出来ることである。更に、本発明は、特に高感度である。好ましくは、本発明に係る方法は、他のいずれかの検出方法より先に、及び癌の明らかな症状が表れる前に、癌の発生を検出し得る。故に、より癌治療に感受性が高く、かつ転移段階に移行している可能性が低い、早期段階で、癌を治療し得る。
【0098】
本発明に係るバイオマーカーは、診断方法、例えば臨床スクリーニング等の方法において、及び予後評価、治療結果のモニタリング、特定の治療処置に最も応答性が高い患者の同定、薬剤スクリーニング及び開発の方法において、使用出来る。更に、本発明に係るバイオマーカー及びその使用は、新しい薬剤治療の同定及び薬剤治療の新しい標的の発見において有益である。
【0099】
「診断」という用語は、消化管癌の存在又は不存在、及び癌の発達段階、例えば早期段階若しくは後期段階、又は癌の良性若しくは転移性の同定、確認及び/又は特定を包含する。
【実施例】
【0100】
実施例1
我々は、膵臓、腎臓、卵巣、子宮頸部及び直腸結腸の腫瘍、並びに対応する器官及び組織の正常組織から抽出した全RNAについてRT−PCRを行い、EN2遺伝子の発現を試験した。当該RNAは、現在Invitrogen Ltd.の一部であるAmbion Inc, USAから調達した。これらのRNAの製造コードを、以下に示す:
Pancreas - tumour: AM7229, normal tissue: AM7954
Kidney - tumour / normal tissue set: AM7252
Cervix - tumour / normal tissue set: AM7276
Ovary - tumour / normal tissue set: AM7256
Colorectal cancer - tumour / normal tissue set: AM7236
【0101】
更に、我々は、急性骨髄性白血病(AML)由来の細胞株KG−1から、及び健康なボランティアから提供された末梢血単核球(PBMC)からも、全RNAを抽出した。
【0102】
RT−PCR法
説明書に従い、RNeasy miniキット(Qiagen, Crawley, UK)を使用して、RNAを抽出した。最初に、65℃で5分間加熱して、RNAを変性させた。1μgのRNAに、最終濃度10mMのDTT、1mMのdNTPミックス、及び100ng/mlのポリTプライマー、200ユニットの逆転写酵素(Invitrogen, USA)及び40ユニットのRNaseOUT(Invitrogen, USA)を加え、50μlとして、これを37℃で1時間インキュベーションした。cDNA合成反応は、チューブを80℃で5分間加熱して終了させた。Stratagene MX4000 Real Time PCR装置を使用してRT−PCRを行い、SYBRグリーンの蛍光により、対数増殖期中のPCR産物の蓄積を測定した。EN3の発現は、多くの種類の細胞で一定であるベータアクチン遺伝子の発現との比較により計算した。
【0103】
QPCRプライマー配列:
ベータアクチン(ヒト)
HsBeta-ActinF: 5’ ATGTACCCTGGCATTGCCGAC 3’ (配列番号:3)
HsBeta-ActinR: 5’ GACTCGTCATACTCCTGCTTG 3’ (配列番号:4)
EN2 (ヒト):
HsEN2F: 5’ GAACCCGAACAAAGAGGACA 3’ (配列番号:5)
HsEN2R: 5’ CGCTTGTTCTGGAACCAAAT 3’ (配列番号:6)
【0104】
腫瘍及び正常組織におけるEN2の発現
RT−PCRの結果を図1にまとめる。エラーバーは標準偏差(n=5)を表す。有意差におけるP値の値は:*がp<0.05、**がp<0.01である。この結果は、AMLを除く全ての癌において、EN2が正常細胞と比較して強力に発現することを示す。
【0105】
実施例2
膵臓癌におけるEN2タンパク質の免疫組織化学的(ICH)検出
実施例1で示された結果に加えて、我々は、EN2タンパク質が、膵臓腫瘍組織中に存在するが、周囲の正常組織中に存在しないことも示した。この結果は、膵臓腫瘍切片中の、公知の膵臓癌マーカーであるMaspin、EN2との染色を比較することにより得られ、EN2の染色は、非腫瘍性細胞では僅かであった(図2)。
【0106】
図2は、膵臓腫瘍の断面の切片を示す。膵臓癌特異的抗原(Maspin)を使用して、腫瘍細胞を染色した。同一の切片を、蛍光ラベルを付した抗EN2でも染色した。画像をマージさせることで、両染色パターンは殆ど同一であることが判明する。倍率:60倍
【0107】
ICH法は、下記のように実施した。
【0108】
膵臓癌切片-EN2の酵素的染色
1.100%キシレンにスライドを浸し5分間ずつ3回キシレンを入れ替えて、パラフィンを抜く。
2.100%エタノールで2回洗浄する。
3.0.3%メタノール/H2O2(300mlメタノール+900μl H2O2)中に20分間置く。
4.70%及び50%のエタノール中で再水和する。
5.蒸留水中で5分間すすぐ。
6.pH6.0の沸騰クエン酸緩衝剤中で12分間*スライドをインキュベーションする。
7.スライドを引き揚げ、2時間冷却する。
8.蒸留水で3回洗浄する。
9.PBS中で3分間2回洗浄する。
10.湿室(moist chamber)中のBSAを1%、及びウマ血清を2.4%含有するPBSで、切片を15分間インキュベートする(ブロッキング血清は、二次抗体と同一種由来であるべし)。
11.室温の湿室中の一次抗体(Abcamヤギ抗EN2)で一昼夜インキュベートする。
12.PBS中で3分間3回洗浄する。
13.希釈したビオチン化「ユニバーサル」二次抗体で切片を30分間インキュベートする。
14.PBS中で3分間3回洗浄する。
15.VECTASTAIN R.T.U. ABC Reagentで切片を30分間インキュベートする。
16.PBS中で3分間3回洗浄する。
17.所望の強度に発色されるまで、ペルオキシダーゼ基質溶液中で切片をインキュベートする。
18.(インパクトDAB溶液を用いる場合、各スライドの反応時間を10分とする)
19.蒸留水中で切片をすすぐ。
20.対染色(ヘマトキシリンQS:100μl/スライド 最大45切片)を行い、切片を流れる水道水に晒す。
21.一連のアルコール中でスライドを脱水する(50%、70%、100%のキシレン1、2、3のそれぞれに素早く浸す)。
22.VectaMountマウンティング培地でスライドをマウントし、スライドを室温で保存する。
【0109】
*pH6.0の0.01Mクエン酸緩衝剤によるマイクロ波抗原回復
1.ストック溶液を蒸留水で10倍に希釈して、0.01Mクエン酸緩衝剤を調製する。
2.pHを測定し、0.1Mクエン酸を使用してpHを6.0に調整する。
3.プラスチック容器に1Lのクエン酸緩衝剤を入れ、20分間マイクロ波で加熱する。
4.ラックに差した切片を沸騰しているクエン酸緩衝剤に入れ、更に12分間マイクロ波で加熱する。
【0110】
0.3%H2O2の作製:
300mlメタノール
900μl H2O2(30%) 水素ペルオキシダーゼ
【0111】
imPACT DABからのペルオキシダーゼ基質血清の作製:
1mlの希釈剤及び1滴の発色原
【0112】
現在のところ好ましい態様として本明細書中に記載されているものに様々な変化及び改変を加えることは、当業者にとって明白であり得ることを理解されたい。そのような変化及び改変は、本発明の精神及び範囲から逸脱すること無く、またそれに付随する長所を減ずること無く、行うことが出来る。故に、そのような変化及び改変は、添付の[特許請求の範囲]に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化管癌特異的なバイオマーカーであって:
(i)配列番号1を含む核酸配列、若しくはその断片若しくは変異体(variant)、又は当該核酸配列を含む核酸分子;又は
(ii)配列番号2を含むアミノ酸配列、若しくはその断片若しくは変異体、又は当該アミノ酸配列を含むアミノ酸分子
を含む、前記バイオマーカー。
【請求項2】
前記断片又は変異体が:
(i)配列番号1との間で、約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約85%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約96%以上、又は約97%以上、又は約98%以上、又は約99%以上の核酸配列の同一性を有する核酸配列、ストリンジェントな条件下でこれらとハイブリダイズする核酸配列、及び/又はこれらと相補的な核酸配列;
(ii)配列番号2との間で、約50%以上、又は約60%以上、又は約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約85%以上、又は約90%以上、又は約95%以上、又は約96%以上、又は約97%以上、又は約98%以上、又は約99%以上のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列、又は
(iii)(i)の核酸配列にコードされるアミノ酸配列
を含む、請求項1に記載のバイオマーカー。
【請求項3】
前記断片が、(i)配列番号2由来の4個以上、5個以上、好ましくは6個以上、好ましくは7個以上、好ましくは8個以上の連続アミノ酸、又は(ii) 配列番号2由来の4個以上、5個以上、好ましくは6個以上、好ましくは7個以上、好ましくは8個以上の連続アミノ酸をコードする、配列番号1の核酸配列の断片を含む、請求項1又は2に記載のバイオマーカー。
【請求項4】
前記断片又は変異体が、機能性断片又は変異体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオマーカー。
【請求項5】
食道癌特異的バイオマーカー、胆嚢癌特異的バイオマーカー、胃癌特異的バイオマーカー、肝臓癌特異的バイオマーカー、膵臓癌特異的バイオマーカー、胆管癌特異的バイオマーカー、小腸癌特異的バイオマーカー、直腸結腸癌特異的バイオマーカー及び肛門癌特異的バイオマーカーから選択され、当該直腸結腸癌特異的バイオマーカーが、直腸癌特異的バイオマーカー及び結腸癌特異的バイオマーカーから任意で選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイオマーカー。
【請求項6】
患者の消化管癌を診断する、又は消化管癌の発生のおそれがある患者を同定する方法であり:
(a)患者から採取した試料中の請求項1〜5のいずれか1項に記載の癌特異的バイオマーカーの量を決定する工程;
(b)決定された患者の試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量を、正常対照中の当該癌特異的マーカーの量と比較する工程;
を含み、当該患者から採取した試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量と、正常対照中の当該癌特異的バイオマーカーの量との差が、消化管癌の存在と関連し、又は消化管癌の発生のおそれと関連する、前記方法。
【請求項7】
対照と、患者から採取した試料との間での前記癌特異的バイオマーカーの増大が、早期段階の癌の指標である、早期段階の癌を検出する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対照と、患者から採取した試料との間での前記癌特異的バイオマーカーの増大が、後期段階の癌の指標である、後期段階の癌を検出する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
患者の消化管癌の進行をモニタリングする方法であり;
(a)患者から採取した試料中の請求項1〜5のいずれか1項に記載の癌特異的バイオマーカーの量を決定する工程;
(b)決定された患者の試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量を、正常対照中の当該癌特異的マーカーの量と比較する工程;並びに
(c)2つ以上の時間間隔で、工程(a)及び(b)を反復する工程;
を含み、当該期間中の患者から採取した試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量の増大が、消化管癌の進行の増大に関連し、かつ当該期間中の患者から採取した試料中の当該癌特異的バイオマーカーの量の減少が、消化管癌の進行の減少に関連する、前記方法。
【請求項10】
より早期段階の試料、又は対照と比較しての癌特異的バイオマーカーの増大が、疾患の早期段階から後期段階の癌の進行の指標となる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
消化管癌の治療の効率をモニタリングする方法であり、患者から採取した試料中の請求項1〜5のいずれか1項に記載の癌特異的バイオマーカーの存在を検出及び/又は定量する工程を含む、前記方法。
【請求項12】
前記試料が、患者から採取した生体液又は組織を含む、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記生体液又は組織が、血液、尿、内視鏡の周囲で採取された体液、膵液又は便である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
治療有効量の、(i)請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカー、又は(ii)請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカーに特異的に結合する、抗体又はその断片を、患者に投与する工程を含む、消化管癌を有する患者を治療する方法。
【請求項15】
前記抗体が、細胞毒性薬剤をコンジュゲートしたものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカーに特異的に結合する抗体、又はその断片を、患者に投与する工程を含む、患者の消化管癌を画像化する方法。
【請求項17】
前記抗体が検出可能なマーカーをコンジュゲートしている、請求項14〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記消化管癌が、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌が、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される、請求項6〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカー、又は請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカーに結合する抗体若しくはその断片を含有する組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物を含有する、医薬組成物。
【請求項21】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカーを含有する、消化管癌ワクチン。
【請求項22】
食道癌ワクチン、胆嚢癌ワクチン、胃癌ワクチン、肝臓癌ワクチン、膵臓癌ワクチン、胆管癌ワクチン、小腸癌ワクチン、直腸結腸癌ワクチン及び肛門癌ワクチンから選択され、当該直腸結腸癌ワクチンが、直腸癌ワクチン及び結腸癌ワクチンから任意で選択される、請求項21に記載の消化管癌ワクチン。
【請求項23】
体液中に検出される請求項1〜5のいずれか1項に記載の癌特異的バイオマーカーの、消化管癌のバイオマーカーとしての使用。
【請求項24】
(i)請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカー、又は(ii)請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカーに特異的に結合する、抗体又はその断片の、消化管癌の治療用の医薬の製造における使用。
【請求項25】
前記消化管癌が、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌が、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される、請求項23又は24に記載の使用。
【請求項26】
(i)請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカー、又は(ii)請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカーに特異的に結合する、抗体又はその断片を含有し、消化管癌の治療に使用される、組成物。
【請求項27】
前記消化管癌が、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌が、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
患者の消化管癌を画像化する方法に使用される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバイオマーカーに特異的に結合する抗体又はその断片。
【請求項29】
前記消化管癌が、食道癌、胆嚢癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、胆管癌、小腸癌、直腸結腸癌及び肛門癌から選択され、当該直腸結腸癌が、直腸癌及び結腸癌から任意で選択される、請求項28に記載の抗体又はその断片。
【請求項30】
請求項6〜18のいずれか1項に記載の方法、又は請求項23若しくは25に記載の使用に使用されるキットであり、体液中の請求項1〜5のいずれか1項に記載の癌特異的バイオマーカーに結合可能な、又はこれを特異的に認識する、リガンド、及びレポーター手段を含む、前記キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−533076(P2012−533076A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520084(P2012−520084)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001333
【国際公開番号】WO2011/007129
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(509172594)ザ ユニバーシティ オブ サリー (5)
【Fターム(参考)】