説明

バイオ燃料対応型の燃料フィルタ

【課題】バイオ燃料に起因する目詰まりを抑制することが可能なバイオ燃料対応型の燃料フィルタを提供する。
【解決手段】バイオ燃料対応型の燃料フィルタは、プレフィルタ10と、メインフィルタ20と、を備え、プレフィルタ10がマイナス電荷を帯電し、又は、メインフィルタ20がプラス電荷を帯電している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ燃料対応型の燃料フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料には、各種の異物が混入しやすい。そのため、燃料を使用する際には、燃料フィルタによって燃料を濾過し、当該燃料に含まれている異物を除去しておく必要がある(例えば、下記特許文献1参照)。ところが、バイオ燃料(例えば、植物油をメチルエステル化して製造された燃料)を濾過する場合には、燃料フィルタに早期の段階で目詰まりが生じてしまう。すなわち、バイオ燃料には、脂肪酸やその変形物が含まれているので、この脂肪酸やその変形物によって、燃料フィルタに目詰まりが生じやすくなるのである。
【特許文献1】特開2007−113457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、バイオ燃料に起因する目詰まりを抑制することが可能なバイオ燃料対応型の燃料フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明に係るバイオ燃料対応型の燃料フィルタは、プレフィルタと、メインフィルタと、を備え、前記プレフィルタがマイナス電荷を帯電し、又は、前記メインフィルタがプラス電荷を帯電していることを特徴とする。
【0005】
また、本発明に係るバイオ燃料対応型の燃料フィルタは、マイナス電荷を帯電するように制御されたプレフィルタと、プラス電荷を帯電するように制御されたメインフィルタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、バイオ燃料に起因する目詰まりを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
===本発明の原理===
本発明者らは、バイオ燃料に含まれる脂肪酸及びその変形物がプラス電荷を帯電していることに着目し、その電気的性質を利用して、燃料フィルタを構成することとした。すなわち、バイオ燃料に含まれる脂肪酸の含有量の多寡に応じて、燃料フィルタを構成するプレフィルタ及びメインフィルタの種類を変えることとした。
【0008】
具体的には、(1)脂肪酸の含有量が多いバイオ燃料(例えば、B50燃料)を濾過する場合には、マイナス電荷を帯電するプレフィルタ及びメインフィルタで構成された燃料フィルタを使用することとし、他方、(2)脂肪酸の含有量が少ないバイオ燃料(例えば、B5燃料)を濾過する場合には、プレフィルタ及びプラス電荷を帯電するメインフィルタで構成された燃料フィルタを使用することとした。また、上記(1)のプレフィルタには、上記(2)のプレフィルタよりも、粗い濾材を使用することとした。なお、電荷を帯電するプレフィルタ及びメインフィルタは、具体的には、放電により生成させたイオンを濾材の表面に帯電させて得られたものであり、例えば、プラス電荷を帯電するメインフィルタは、図1に示す方法により得られたものである。
【0009】
そして、本発明者らは、このように燃料フィルタを構成することにより、バイオ燃料に起因する目詰まりを抑制することが可能になるものと考えた。すなわち、上記(1)の場合には、マイナス電荷を帯電するプレフィルタによって、プラス電荷を帯電する脂肪酸及びその変形物が積極的に捕捉されるので、脂肪酸及びその変形物によるメインフィルタの目詰まりを抑制することが可能になる。また、プレフィルタには、脂肪酸及びその変形物が積極的に捕捉されるものの、このプレフィルタには、通常のプレフィルタ(上記(2)のプレフィルタ参照)と比べて、濾材の粗いものを使用しているので、当該プレフィルタには、目詰まりが生じにくくなる。このようにして、プレフィルタ及びメインフィルタのいずれについても、目詰まりが生じにくくなるので、これらによって構成される燃料フィルタについて、バイオ燃料に起因する目詰まりを抑制することが可能になるのである。
【0010】
他方、上記(2)の場合には、メインフィルタはプラス電荷を帯電しているので、プラス電荷を帯電する脂肪酸及びその変形物は、メインフィルタの濾材の表面で電気的に反発して、メインフィルタを通過することとなり、脂肪酸及びその変形物によるメインフィルタの目詰まりを抑制することが可能になる。また、プレフィルタの濾材は、メインフィルタの濾材よりも粗いので、脂肪酸の含有量が少ないバイオ燃料を濾過する場合には、脂肪酸及びその変形物は、プレフィルタを通過することとなる。このようにして、プレフィルタ及びメインフィルタのいずれについても、目詰まりが生じにくくなるので、これらによって構成される燃料フィルタについて、バイオ燃料に起因する目詰まりを抑制することが可能になるのである。
【0011】
===本発明の確認試験===
次に、本発明者らは、図2に示す試験装置を用いて、本発明の効果を確認するための確認試験を実施した。その際、試験油として、二種類のバイオ燃料を使用し、具体的には、(1)脂肪酸の含有量が多いバイオ燃料として、B50燃料を使用し、他方、(2)脂肪酸の含有量が少ないバイオ燃料として、B5燃料を使用した。また、試験流量は、8.7L/minに設定した。さらに、プレフィルタ10(図2では「プレF」と表示)には、濾過面積が0.4mのものを使用することとし、メインフィルタ20(図2では「メインF」と表示)には、濾過面積が0.5mのものを使用することとした。
【0012】
そして、(1)B50燃料を濾過する場合には、54μmのプレフィルタ(マイナス電荷を帯電したもの)及び18μmのメインフィルタを使用し、当該プレフィルタの差圧(図2の「P3」により測定)及び当該メインフィルタの差圧(図2の「P2」により測定)をそれぞれ測定することにより、各フィルタに目詰まりが生じる様子を調べた。また、比較例として、37μmのプレフィルタ及び18μmのメインフィルタを使用して、同様の確認試験を実施した。その試験結果を図3に示す。
【0013】
他方、(2)B5燃料を使用する場合には、37μmのプレフィルタ及び18μmのメインフィルタ(プラス電荷を帯電したもの)を使用し、(1)の場合と同様に、当該プレフィルタの差圧及び当該メインフィルタの差圧をそれぞれ測定することにより、各フィルタに目詰まりが生じる様子を調べた。また、比較例として、37μmのプレフィルタ及び18μmのメインフィルタを使用して、同様の確認試験を実施した。その試験結果を図4に示す。
【0014】
まず、図3に示すように、比較例の場合には、試験を開始してから約180時間を経過した時点において、プレフィルタの差圧は、未だ目詰まりの寿命を示す値(差圧限界値:約32.5kPa)まで上昇していなかったが、メインフィルタの差圧は、既に目詰まりの寿命を示す値(約32.5kPa)に到達してしまった。これに対し、実施例の場合には、試験を開始してから約400時間を経過しても、プレフィルタの差圧及びメインフィルタの差圧は、いずれも目詰まりの寿命を示す値(約32.5kPa)に到達しなかった。
【0015】
また、図4に示すように、比較例の場合には、試験を開始してから約1400時間を経過した時点において、プレフィルタの差圧は、未だ目詰まりの寿命を示す値(約32.5kPa)まで上昇していなかったが、メインフィルタの差圧は、既に目詰まりの寿命を示す値(約32.5kPa)に到達してしまった。これに対し、実施例の場合には、試験を開始してから約2000時間を経過しても、プレフィルタの差圧及びメインフィルタの差圧は、いずれも目詰まりの寿命を示す値(約32.5kPa)には到達しなかった。
【0016】
このような確認試験の結果によって、本発明の効果、すなわち、本発明に係るバイオ燃料対応型の燃料フィルタであれば、バイオ燃料に起因する目詰まりを抑制し得ることを確認することができた。なお、上記確認試験において、電荷を帯電させるフィルタは、プレフィルタ又はメインフィルタのうちいずれか一方のみとしているが、本発明においては、双方に電荷を帯電させたものを使用してもよく、具体的には、本発明のバイオ燃料対応型の燃料フィルタは、マイナス電荷を帯電するプレフィルタと、プラス電荷を帯電するメインフィルタと、を備えたものであってもよい。
【0017】
さらに、本発明者らは、上記確認試験の結果を踏まえて、本発明の内容を発展させることとし、マイナス電荷を帯電するように制御されたプレフィルタと、プラス電荷を帯電するように制御されたメインフィルタと、を備えたバイオ燃料対応型の燃料フィルタを見出した。この燃料フィルタであれば、複数の燃料フィルタを使用することなく、単一の燃料フィルタによって、各種のバイオ燃料に対応することが可能となり、具体的には、バイオ燃料に含まれる脂肪酸の多寡に応じて、より効率的且つ柔軟に、バイオ燃料に起因する目詰まりを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プラス電荷を帯電するメインフィルタの製造方法の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の確認試験における試験装置を示す模式図である。
【図3】脂肪酸の含有量が多いバイオ燃料(B50燃料)を濾過する場合における耐久時間と差圧の関係を示すグラフである。
【図4】脂肪酸の含有量が少ないバイオ燃料(B5燃料)を濾過する場合における耐久時間と差圧の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0019】
10 プレフィルタ
20 メインフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレフィルタと、
メインフィルタと、を備え、
前記プレフィルタがマイナス電荷を帯電し、又は、前記メインフィルタがプラス電荷を帯電していることを特徴とするバイオ燃料対応型の燃料フィルタ。
【請求項2】
マイナス電荷を帯電するように制御されたプレフィルタと、
プラス電荷を帯電するように制御されたメインフィルタと、
を備えることを特徴とするバイオ燃料対応型の燃料フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−208050(P2009−208050A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56621(P2008−56621)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000220804)東京濾器株式会社 (84)
【Fターム(参考)】