説明

バイナリエピトープ抗体およびB細胞スーパー抗原免疫刺激物質

本発明は、ポリペプチド抗原上のエピトープに対しバイナリ特異性を有する抗体の産生を誘導する効果がある、スーパー抗原性エピトープと少なくとも1つの他のエピトープをもつデュアルエピトープポリペプチドおよびその親電子性アナログを提供する。さらに、ポリクローナルB細胞刺激物質または脂質、ポリサッカライドおよびリポポリサッカライドまたはヌクレオチドの親電子性アナログを提供する。また、本発明は、B細胞ポリペプチド抗原を認識するバイナリエピトープ特異的抗体の産生を向上させるための方法、1つ以上のポリペプチドまたは親電子性アナログを用いて抗体の産生を刺激する方法、およびバイナリエピトープ特異的抗体またはそのフラグメントを分離する方法を提供する。さらに、そのように作成された抗体と、それを用いたHIVを治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一部は、国立衛生研究所からの研究補助金AI058865、 AI067020、 AI071951およびAI062455を通じて得た資金を用いて創出された。その結果、合衆国政府は当発明に関する一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、免疫学、ウィルス学、および医学の分野に関係する。具体的には、本発明は、B細胞スーパー抗原性ポリペプチドに対するバイナリエピトープ反応性抗体およびその様な抗体の産生を誘導する免疫刺激物質、およびスーパー抗原性ポリペプチドの加水分解を触媒するかまたはポリペプチドに共有結合性を伴って結合する能力を有するバイナリエピトープ反応性抗体の特定と誘導を可能にする方法と試薬に関係する。
【背景技術】
【0003】
通常の抗原と異なり、B細胞スーパー抗原性ポリペプチドは、あらかじめ抗原に対する暴露を必要とすることなく、前免疫レパートリーに存在する抗体(イムノグロブリン)によって認識される。これは、スーパー抗原認識能が、抗体の可変(V)ドメインの合成に利用される遺伝性V領域遺伝子(生殖細胞系V遺伝子)によってコードされているからである。抗体による通常の抗原認識は、抗原によって刺激されたB細胞の分化過程で起こるV領域の適応性配列多様化を要する。通常抗体の認識は、主としてV領域の相補性決定領域(CDRs)において起こる。抗体によるスーパー抗原の認識はV領域の適応性多様化を要することなく起こると考えられており、認識過程は主としてV領域フレームワーク領域(FRs)において起こると考えられている。
【0004】
抗体の抗原認識能の向上は、細胞分裂とB細胞クローン選択を引き起こす、Bリンパ球表面にB細胞受容体(BCR)の成分として発現したイムノグロブリンと抗原との接触によって促進される。一方、スーパー抗原とBCRとの接触は、B細胞を一過性の増殖相の後プログラム細胞死過程へと誘導する。抗体によるスーパー抗原認識の適応改善の報告はない。明らかに、免疫系はスーパー抗原性ポリペプチドの有害作用に対する保護的適応反応を装備することができない。前免疫レパートリー中に存在する抗体はスーパー抗原を中程度から低親和性で認識し、それらはスーパー抗原の有害作用に対して限定的な保護しか供しない。
【0005】
B細胞スーパー抗原に分類されるポリペプチドは、HIVタンパク質であるgp120およびTat、黄色ブドウ球菌タンパク質であるプロテインA、およびストレプトコッカスのタンパク質であるプロテインLを含む。侵襲性B細胞スーパー抗原ポリペプチドのリストは、さらに抗原が研究され免疫学的アッセイの感度が向上するにしたがって増大すると予想できる。
【0006】
HIVエンベロープタンパク質であるgp120は、中和抗体(Abs)の合成を誘導することを試みる実験的ワクチンの標的である。Gp120による免疫によって誘導される抗体のほとんどは、タンパク質中の高変異性領域、特に第3可変ドメイン(V3ドメイン)に対するものである。これらの抗体は、感染しているウィルスストレインを中和する。しかし、gp120のVドメインは感染過程で変異し、抗体による中和に対して抵抗性のウィルスエスケープ変異体を生ずる。さらに、世界の異なった部分における流行の原因である種々のHIVの系統のgp120は大きく異なり、gp120による免疫によって誘導された抗体はたいてい異系統のHIVを中和しない。これは、gp120によって発現される構造的に保存された中和エピトープの探索につながった。候補エピトープは、HIVの宿主細胞受容体、すなわちCD4およびケモカイン受容体への結合に関与するgp120の比較的保存された領域である。残念なことに、これらのエピトープは免疫原性に乏しい。Gp120のCD4およびケモカイン受容体結合部位近傍に対する希少なモノクローナル抗体(MAbs)が複雑な実験手順によって同定された。これらのMAbsは、全てではないが多くのクレードBのHIV-1ストレインを中和する。
【0007】
CD4結合部位(CD4bs)は、残基256、257、368-370、421-427および457から成る非連続決定基であると考えられている。CD4bsは、ウィルス表面に発現したgp120の3量体が可溶性単量体として脱落する時、コンフォメーション変化を受けると考えられており、単量体のCD4bsに対する抗体はしばしば3量体のCD4bsとの反応性に乏しい。さらに、CD4bsの421−427ペプチド領域は、抗体Vドメインの適応性配列多様化を要せず前免疫レパートリー中に反応性抗体が存在する部位として定義される、gp120のBリンパ球スーパー抗原部位(gp120SAg)の重要な構成因子である。他のB細胞スーパー抗原の場合と同様、B細胞受容体(BCR)の一部として発現したIgに対するgp120SAgの結合はB細胞のアポトーシスを引き起こすと考えられており、HIV感染者におけるgp120SAg結合性抗体の適応性増幅に対する証明は無い。その逆に、HIV感染者は、gp120SAgと優先的に結合すると考えられているVHファミリーであるVH3+ Igの血清レベル低下を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在HIV感染に対するワクチンまたは免疫治療はない。従って、HIVに対する免疫予防および治療のための技術において、認識された必要性が未だ存在する。具体的には、先行技術は、高ウィルス中和活性を有するバイナリエピトープ特異的抗体とその産生法を欠く。本発明は、当該技術におけるこの長期に亘る需要を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ある種の抗体のこれまで予期されなかった性質、すなわちgp120の異なる2つのエピトープを認識する能力について述べる。この抗体の性質を、以下「バイナリエピトープ特異性」と呼ぶ。
【0010】
本発明は、ポリペプチド抗原上の対応するエピトープに対するバイナリ特異性を有する抗体の産生に有効な、スーパー抗原性エピトープと最低ひとつの他のエピトープから成るポリペプチドおよびその親電子性アナログをも対象とする。関連する発明において、ポリペプチドまたはその親電子性アナログはさらにひとつ以上の親電子基を含み、その親電子基は高求核反応性を有するバイナリ特異性抗体の合成を誘導するのに有効である。通常の抗体は、非共有結合メカニズムにより抗原と可逆的に結合する。通常の抗体同様、化学反応性抗体は先ず非共有結合により抗原を認識する。しかし、それに続いて、化学反応性抗体のVドメイン中に位置する求核部位は、抗原中の親電子性反応中心の認識に進む。これは、求核基−親電子基共有結合を有する不可逆的免疫複合体の形成および反応中心に水分子がある場合には抗体による抗原の加水分解という、2つの結果を持つ。不可逆的結合性は、免疫複合体の解離による活性抗原の再生を防ぐので、抗体の効力を向上させる。同様に、触媒的加水分解ステップは、抗原フラグメントは大抵親抗原と同様の生物活性を示さないので、不可逆的抗原不活性化を起こす。
【0011】
本発明は、B細胞ポリペプチドスーパー抗原に対するバイナリエピトープ特異的抗体を産生するための方法をも対象とする。その方法は、ポリペプチド構築物またはここで述べたその親電子性ポリペプチドアナログのひとつまたは両方を生きた動物に投与することを含む。ポリペプチド構築物中に2つのエピトープを含有することは、抗体の相補性決定領域(CDRs)における相互作用によって一つのエピトープを認識し第2のエピトープをフレームワーク領域(FRs)における相互作用によって認識する抗体のB細胞による産生を刺激することができる。前のエピトープの認識は通常のB細胞クローン選択過程によってもたらされる。CDRsにおける相互作用によって産生された細胞増殖シグナルは、FRsにおける第2のスーパ−抗原性エピトープの相互作用の負の効果を圧倒するに充分である。これは、バイナリエピトープ特異性を発揮する抗体の産生を引き起こす。
【0012】
関連する発明において、その方法はさらに、T細胞非依存的またはT細胞依存的B細胞抗体産生を刺激するのに有効な一つ以上の免疫学的アジュバントを生きた動物に対して投与するステップを含む。
【0013】
本発明はさらに、HIV gp120のB細胞スーパー抗原性部位を認識する抗体の産生のための方法を対象とする。その方法は、デュアルエピトープポリペプチドおよびその親電子性アナログの組み合わせを生きた動物に投与することを含む。関連する発明において、その方法はさらに、T細胞非依存的またはT細胞依存的B細胞抗体産生を刺激するのに有効な一つ以上の免疫学的アジュバントを生きた動物に対して投与するステップを含む。
【0014】
本発明はさらに、生物の前免疫免疫レパートリー中に見出されるスーパー抗原反応性抗体の産生上昇を刺激するための方法をも対象とする。その方法は、ポリクローナルB細胞刺激物質またはその親電子性アナログの一つまたは両方を生きた動物に投与することを含む。
【0015】
本発明はさらに、上記の方法によって産生された抗体をも対象とする。関連した発明は、HIV感染者を処置する方法を対象とする。その方法は、ここで述べる抗体の免疫学的に有効な量を対象者に投与することを含む。
【0016】
本発明はさらに、抗体レパートリーから固有の配列とバイナリエピトープ特異性を有する個々の抗体またはその抗体フラグメントを分離するための方法をも対象とする。その方法は、抗体レパートリーをファージ粒子の表面に提示し、抗体レパートリーをポリペプチドまたはそのポリペプチド親電子性アナログまたは刺激物質またはその親電子性アナログによってスクリーニングすることを含む(ここで、ポリペプチド、刺激物質、またはそれらの親電子性アナログと反応する抗体またはその抗体フラグメントは、抗体レパートリーからバイナリエピトープ特異的抗体またはその抗体フラグメントを分離する)。
【0017】
本発明はさらに、一般式(化1)で表される、ポリペプチドまた脂質、ポリサッカライドおよびリポポリサッカライド、またはオリゴヌクレオチドの親電子性アナログをも対象とする。
【0018】
【化1】

【0019】
ポリペプチド親電子性アナログにおいて、L1・・・Lx・・・Lmは抗原決定基を定義する構成要素であり、ここでLxは抗原決定基の構成アミノ酸であり、L’はLxの官能基であり、Y’’は分子、共有結合またはリンカーであり、Y’は随意の荷電または中性基であり、Yは前述の抗原決定基に結合する抗体と共有結合的に反応する親電子基であり、nは1から1000までの整数であり、mは1から30の整数である。脂質、ポリサッカライドおよびリポポリサッカライドの親電子性アナログにおいて、L1・・・Lx・・・Lmは受容体結合決定基を定義する構成要素であり、ここでLxは受容体結合決定基の構成糖また脂質であり、L’はLxの官能基であり、Y’’は分子、共有結合またはリンカーであり、Y’は随意の荷電または中性基であり、Yは前述の受容体結合決定基に結合する細胞受容体と共有結合的に反応する親電子基、またはアシル基であり、ここで随意に、Y’’、Y’、またはYは末端または内部成分として水に結合する基を含んでよく、nは1から1000までの整数であり、mは1から1000の整数である。ヌクレオチドの親電子性アナログにおいて、L1・・・Lx・・・Lmは受容体結合決定基を定義するヌクレオチド構成要素であり、ここでLxは受容体結合決定基の構成ヌクレオチドであり、L’はLxの官能基であり、Y’’は分子、共有結合またはリンカーであり、Y’は随意の荷電または中性基であり、Yは前述の受容体結合決定基に結合する細胞受容体と共有結合的に反応する親電子基、またはアシル基であり、ここで随意に、Y’’、Y’、またはYは末端または内部成分として水に結合する基を含んでよく、nは1から1000までの整数であり、mは1から1000の整数である。
【0020】
他のこれ以上の本発明の態様、特徴および効果は、開示の目的で示した現時点における好適な実施例についての以下の記述から明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、デュアルエピトープ認識モデルを示す。示したのは、適応成熟したCDRsおよび保存されたFRsの各々による、V3ステム(301−311)およびSAgペプチド領域(421−433)のIgG認識案の略図である。Nu:求核性残基。
【図2】図2A−2Bは、E-gp120免疫原を示す。図2AはE-gp120の略図構造を示す。親電子性ホスホン酸エステル基は、gp120のLys側鎖上に2種の互換リンカーを用いて配置された。ビオチン(約0.7/gp120モル)は、ホスホン酸エステルの導入に先立ってgp120に導入された。図2Bは、E-gp120オリゴマーを示すSDS−ゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロットを示す。レーン1−3は各々、ホスホン酸エステル/gp120比が4.4、14.2および23.4のE-gp120調製品(中性pHの緩衝液中4時間インキュベートした; ビオチン化物)を示す。
【図3】図3は、MAb YZ18およびYZ23によるHIV-1の中和を示す。IgG CRL1689は、同一アイソタイプのIgGである。HIVストレインは、クレードC、R5依存のZA009である。末梢血単核球宿主。中和は、MAb含有ウェル中のp24濃度の溶媒コントロールからの減少%として計算した。
【図4】図4は、gp120断片ペプチドによるgp120−MAb結合の阻害を示す。ELISAアッセイは、gp120(YZ23)またはE-gp120 1a(YZ18)でコートしたプレート(1ウェル当り40 ng)中、表示したペプチドの存在下または非存在下、Mab(5μg/ml)を用いて実施した。結合したMAbは抗マウスIgG−ペルオキシダーゼを用いて測定した。ペプチド301−315および417−431は各々ペプチド297−311および421−433と等効力で結合を阻害した(図示せず)。併せて示したのは、ペプチド465−479存在下または非存在下にMAb SK-T03 (0.2μg/ml)および固定化gp120を用いたELISAの結果である。各パネル中に非阻害性コントロールペプチドを示した。
【図5】図5A−5Dは、抗E-gp120 MAbによるデュアルエピトープ結合を示す。図5Aは、デュアル結合研究に使用した親電子性プローブの構造を示す。示したのは、E-293−311、E-421−433および親電子性ハプテンプローブである。コントロールはE-VIPである。図5Bは、 IgG YZ18によるE-421−433およびE-293−311結合を示す。IgG YZ18(0.5μM)をE-ペプチドプローブまたはE-ハプテンプローブ(10μM)と共にインキュベート(6時間)することによって形成された複合体を示す還元SDS ゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロット。図5Cは、E-421−433およびE-293−311のIgG YZ23による認識を示す。IgG YZ23およびビオチン化ペプチドプローブ(ストレプトアビジンプレートに固定化; 0.4μg/ウェル)を使用したELISAデータ。IgGとインキュベーション後、ウェルはPBS(総結合)または2%SDSを含む緩衝液(SDS抵抗性結合)で処理した。アイソタイプ一致無関連IgG(クローンCRL1689)は検出可能な結合を示さなかった(27μg/ml、0.04 ± 0.01)。図5DはIgG YZ23のE-293−311およびE-421−433との3元複合体形成を示す。左パネルに示したのは、IgG YZ23によるE-293−311結合の経時変化である。IgG YZ23、1μM; E-293-311、10μM。 反応混合液はSDS電気泳動に付され、E-293-311/IgG複合体中のビオチン含量がストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロットのデンシトメトリーによって決定された。右パネルに示したのは、IgG YZ23-E-293-311複合体によるE-421−433結合である。IgG YZ23はE-293−311とほぼ飽和するまで反応させ(3時間)、その後E-421−433(10μM)と8時間反応させた。複合体中のビオチン含量は左パネルと同様にして決定された。
【図6】図6A−6Dはデュアルエピトープ認識の抗体構造上の根拠を示す。図6Aは、gp120の結晶構造中の残基301−311(黄色)および421−433(緑色)を示す。2つのペプチド領域は互いに離れており、gp120の異なる表面に露出している。図6Bは、MAb YZ18およびYZ23のVH配列を、gp120をスーパー抗原として認識するVH3ファミリーに属す4抗体と整列したものを示す。下線はCDRsである。上段の番号、18/2の直線番号付与; 下段の番号、YZ18 の直線番号付与。太字、gp120スーパー抗原相互作用への関与が推定されるVH残基(Karray等、JI 1998、161、6681)。赤色のハイライトを付したYZ18 およびYZ23の残基は、VH3抗体のgp120SAg結合残基と同一であることを表し、青緑色のハイライトを付したものは保存的変化(Karray等によるアミノ酸相同性の定義に従った)を表す。図6Cは、MAb YZ23中の推定デュアル結合キャビティを示す。YZ23Fabの結晶のX線回折データはシンクロトロン放射線源から収集され、その構造は分子置換法により2.5Åの解像度で解かれた。推定301−311抗原結合キャビティ(Agキャビティ、緑色)は抗体のCDRsによって形成される。421−433結合キャビティ(SAgキャビティ、白色)はgp120SAgの結合に責任を負うと報告されているフレームワークの残基によって形成される、図6Dは、デュアルエピトープ認識モデルを示す。V3ステムエピトープ(301−311)およびSAgエピトープ(421−433)はそれぞれ、適応成熟したCDR s(Ag キャビティ)および保存されたFRs(SAgキャビティ)によって認識される。Nu、求核性残基。モデルは、もし2つのAb結合サブサイトが2つのgp120領域と同時に一致するなら可能である。 gp120のV3ステムとSAgペプチド領域をつなぐ領域のフレキシビリティはこのモデルにおいて重要であるかもしれない。V3ループ、特に頂部分は非常にフレキシブルである。Ab求核体−gp120親電子体の対形成は不可逆的複合体形成またはタンパク質分解的切断のいずれかを起こす。
【図7】図7A−7Cは、デュアルエピトープ認識の免疫原構造上の根拠を示す。図7Aは、E-gp120の共有結合オリゴマー形成を示す。左パネルに提示したのは、E-gp120中における共有結合オリゴマーの存在(レーン1)、スーパーロース6上のゲルろ過クロマトグラフィー由来の3量体濃縮フラクション(レーン2)、およびホスホン酸エステル基を欠くコントロールgp120(レーン3)を示す銀染色SDS電気泳動ゲルである。右パネルに示したのは、ゲルろ過クロマトグラムであり、斜線を付した領域は、左パネルのレーン2に使用した3量体濃縮フラクションを表す。図7Bは、CD4結合部位エピトープ(b12)、V3頂上部エピトープ(447-52D)およびコンフォメーション依存炭水化物エピトープ(2G12)に対するMAbによるHIV結合におけるE-gp120の阻害効果を示す。MAbs(b12、45μg/ml; 447-52D、0.8μg/ml; 2G12、7.5μg/ml)は、gp120、E-gp120 1a(32ホスホン酸エステル基/gp120)、EGF、またはE-EGF(0.5μM)の存在下または非存在下、HIV(MN、1.6 x 103 TCID50/mL)と20 時間インキュベートした。MAbと結合したビリオンは、プロテインGコートしたウェル中(1μg/ウェル; 1時間)で捕捉し、10%のTriton X100で溶解し、溶解物中のHIV p24をELISAにより測定した。図7Cは、CD4結合部位エピトープ(b12)、V3頂上部エピトープ(447-52D)およびコンフォメーション依存炭水化物エピトープ(2G12)に対するMAbによるE-gp120結合を示す。ELISAプレートはE-gp120 1a、1aの3量体濃縮調製品(ゲルろ過により精製)、またはコントロールであるgp120でコートし(40 ng/ウェル)、結合したMAbは抗ヒトIgG−HRPによって検出した。
【図8】図8は、デュアル結合性および非デュアル結合性MAbsの中和活性を示す。抗E-gp120Mab集(n=17)を、デュアルエピトープ結合活性およびHIV中和活性に関して評価した。デュアル結合活性は図5Bと同様にE-293-311とE-421-433とを用いた電気泳動アッセイによって試験した(IgG、0.5μM; E-ペプチド、10μM; 3時間)。E-293-311結合およびE-421-433結合陽性MAbは、各々バンド強度18220AVU以上および9110AVU以上(任意ボリューム単位)を与えるものとして定義した(17MAbのコントロールプローブ付加物の平均バンド強度、1822 AVU)。HIVの中和はクレードC一次分離株ZA009と宿主細胞としてPBMCを使用して検討した。30μg/ml以下で50%以上の中和を示したMAbを陽性とした。
【図9】図9A−9Cは抗E-gp120 MAbによる不可逆的gp120結合を示す。図9Aは、抗E-gp120 MAb(YZ系列、75μg/ml; SKT03、1μg/ml)によるSDS抵抗性gp120結合を示すELISAを示す。3つのコントロール抗V3 MAb(IgG #1121、75μg/ml, イムノダイアグノスティクス社; 257-D IV、1μg/ml; 268-D IV、15μg/ml)およびコントロール抗CD4bs MAb(10μg/ml)も示した。値(3複製の平均)は、総結合(gp120に対するMAbの結合後、pH7.4のPBSで洗浄したプレート)の%として表現された、残存SDS抵抗性結合(固定化gp120に対するMAbの結合後2% SDSで洗浄したプレート)を表す。40 ng gp120/ウェル。図9Bは、MAb SK-T03によるSDS抵抗性gp120結合を示す。示したのは、gp120のMAb SK-T03処理によって形成された SDS抵抗性付加物を示す非還元SDS電気泳動ゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色(レーン1−3)および抗マウスIgG−ペルオキシダーゼ染色(レーン4−6)したブロットである。レーン1および4、Bt-gp120とインキュベートしたMAb SK-T03; レーン2、Bt-gp120とインキュベートした同一アイソタイプコントロールMAb MOPC21; レーン3および5、希釈液中単独でインキュベートしたコントロールBt-gp120; レーン6希釈液中単独で’インキュベートしたMAb SK-T03。抗体、75(レーン1-3)または15μg/ml(レーン4-6); Bt-gp120、5(レーン1-3)または27μg/ml(レーン4-6); 17時間インキュベーション。標準タンパク質との比較によって計算された名目分子量を表示した。図9Cは、非変性溶液中におけるMAb SK-T03免疫複合体の安定性を示す。免疫複合体は、MAb SK-T03(20μg/ml)またはMAb 268-D IV(1μg/ml)をBt-gp120(0.2μg/ml)と共に12時間インキュベートすることによって形成した。複合体はプロテインG−セファロース上に捕捉し、遊離gp120を洗浄によって除去し、樹脂をgp120ペプチド465−479(MAb SK-T03; 10μg/ml)またはペプチド309−323(MAb 268-D IV; 10μg/ml)存在下さらにインキュベートした。一定分量を0、4、30、73、121および239時間において採取し、残存免疫複合体をストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ接合体を使用して検出した。値は、t=0における結合(MAb SKT-T03およびMAb 268-D IVに対するA490は各々1.05 ± 0.08および1.78 ± 0.07)に対する相対値として表され、無関係なMAb(MOPC21; 20μg/ml)を用いて観測されたバックグラウンド結合(A490、0.23±0.01; すべての時点においてほぼ一定であった)に対して補正されている。
【図10】図10A−10Bは、IgG YZ18によるgp120の切断を示す。図10Aは、IgG YZ18によるビオチン化gp120の時間依存的切断およびIgG YZ19 による切断のないことを示すSDSゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロットである。IgG、1μM; Bt-gp120、0.2μM; 22時間インキュベーション。OE、希釈液またはIgG YZ18(1μM)と22時間インキュベートしたBt-gp120を示す過剰露出レーン。50−55 kDaの主要バンドに加えて、27 kDaおよび15 kDaに生成物バンドが見える。図10Bは、希釈液またはIgG YZ18 とインキュベートされたgp120を示すSDSゲルの抗gp120−ペルオキシダーゼ染色ブロットである。IgG、1μM; gp120、1μM; 24時間インキュベーション。
【図11】図11は求核性抗体の提案反応メカニズムを示す: 抗原加水分解(上段)および不可逆的結合(下段)。抗体は通常のエピトープ−パラトープ相互作用によって先ず非共有結合複合体を形成する。タンパク質分解においては、活性部位求核体が抗原内の被切断結合のカルボニルを攻撃し、四面体遷移状態複合体を形成する。C末端抗原フラグメントが放出され、アシル−Ab複合体が形成される。アシル−Ab複合体の加水分解(脱アシル化)はN末端抗原フラグメントを遊離し、触媒抗体を再生する。付加逆結合においては、攻撃求核体によって形成される結合の安定性向上または求核攻撃完了後のステップの支持不足のために、四面体複合体(IC’)または三角形アシルーAb複合体(IC’’; C末端抗原フラグメントの遊離後)の蓄積が起こるかもしれない。NuH、求核体; Ag1-NH-CH(R)-CO2H、N末端抗原フラグメント; NH2-Ag2、C末端抗原フラグメント。
【図12】図12は、デュアルエピトープ構築物に対する免疫反応の仮説を示す。
【図13】図13A−13Dは、デュアルエピトープ構築物を示す。図13Aは、(301-311)-GMB-GGS-(E-421-433)である; GMB、γ-マレイミドブチリル。図13Bは、T-(301-311)-GMB-GGS-(E-c421-433)である; O、オルニチン。示したのは、デュアルエピトープ構築物の構成要素としての構造制限E-421-433変異体である。Tエピトープ(T)は長方形内に示す。図13Cは、KLH-(301-311)-GMB-GGS-(E-c421-433)である。示したのは、GMB-GSSリンカーによって接続された301−311と構造制限E-421−433変異体(Ec421−433)を含むKLHにコンジュゲートされたデュアルエピトープ構築物である。図13DはE-HIVである。Lys残基上に取り付けられたホスホン酸エステルをもつソラレンで不活化されたHIV粒子。図13Eは、親電子性ホスホン酸エステル基を提示する様修飾されたコートタンパク質を示すウィルス粒子全体を示す。
【図14】図14は、天然および改変抗体の種類の略図である。モノマーIgAおよびIgGは、それらの(黒色)および(灰色)定常ドメインによって区別される。分泌IgAは、J鎖(テールピースに結合する)によって安定化されたダイマーおよびポリマー型IgAより成る。IgMは、定常ドメインを含むジスルフィド結合したペンタマーである。抗原結合および触媒的分解は軽鎖および重鎖(各々、赤色および青色)の可変領域において起こる。ペプチドリンカーによって接続された可変ドメインは、単鎖Fvと呼ばれる。
【図15】図15−15Cは、HIVに感染していないヒト由来の血清および唾液IgAによるビオチン化gp120の切断を示す。図15Aは、4人のヒトからプールしたポリクローナル血清IgA(160μg/ml)および唾液IgA(32μg/ml)とインキュベートしたBt-gp120(0.1μM)の時間依存的切断を示す還元SDSゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロットを示す。反応容量、0.02 ml。希釈液レーン、IgAに代えて希釈液とインキュベートしたgp120。OE、唾液IgAと46時間インキュベートしたBt-gp120を示す過剰露出レーン。図15Bは、4人のヒト由来の唾液IgA(32μg/ml)および血清IgA(144μg/ml)による等重量抗体当りで表したgp120切断活性比較を示す。反応条件: 17時間、0.1μM Bt-gp120。図15Cは、当重量抗体あたりで表した血清IgAおよびIgG(144μg/ml)のgp120切断活性比較を示す。IVIG、市販IgG調製品(3つのデータポイントは以下のIVIG調製品に対応する: イントラテクト、ガンマガード、インビーガム)。各IgAおよびIgAのポイントは、異なる一人のヒト由来のAbを表す。
【図16】図16A−16Cは、EP−ハプテン1とIgAとの相互作用を示す。図16AはEP−ハプテン1の構造を示す。コントロールである非親電子性ホスホン酸ハプテン2は、フェニル基が無いことを除いてハプテン1と構造的に同一である。図16Bは、EP-ハプテン1による触媒および不可逆結合の阻害を示す。gp120(0.1μM)は、あらかじめEP-ハプテン1およびコントロールハプテン2(1 mM)存在下および非存在下に8時間処理した唾液IgA(2μg/ml)または血清IgA(160μg/ml)と16時間インキュベートした。データは、ペルオキシダーゼとコンジュゲートしたポリクローナル抗gp120で染色したSDS電気泳動ゲル由来である。%阻害=[(100−阻害物質存在下切断されたgp120)/( 阻害物質非存在下切断されたgp120)] x 100]。値は、2複製の平均である。図16Cは、EP-ハプテン1およびハプテン2処理した唾液IgAおよび血清IgAを示す還元SDSゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロットを示す。HおよびLは、各々重鎖および軽鎖サブユニットのバンドを指す。
【図17】図17は、IgAおよびsIgAによるgp120の選択的切断を示す。検討されたビオチン化(Bt)タンパク質は、gp120、可溶性上皮成長因子受容体(sEGFR)、牛血清アルブミン(BSA)、ヒト血液凝固第VIII因子C2ドメイン(C2)、およびHIV Tatである。示したのは、血清IgA、唾液IgA(ともに160μg/ml)または希釈液とインキュベート(17時間)したタンパク質(0.1μM)の還元SDSゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロットを示す。
【図18】図18A−18Cは、EP-421−433によるgp120SAgの加水分解の阻害および不可逆的IgA結合を示す。図18Aは、EP-421−433によるIgA触媒によるgp120加水分解の選択的阻害を示す。唾液IgA(16μg/ml)または血清IgA(160μg/ml)はEP-421-433またはEP-VIP(100μM)とあらかじめインキュベート(6時間)され、反応液はgp120(0.1μM)添加後さらに16時間インキュベートされた。gp120切断の阻害は図3の様にして決定された。図18Bは、血清IgAおよび唾液IgAによるEP-421-433の不可逆的結合を示す。示したのは、EP-421-433、EP-VIPまたはEP-ハプテン1(10μM; 反応時間、21時間)とインキュベートしたIgA(80μg/ml)の還元SDSゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロットを示す。HおよびLは、各々重鎖および軽鎖サブユニットのバンドを指す。図18Cは、gp120ペプチド421−435による不可逆的IgA:EP-421−433結合の阻害を示す。唾液IgA(80μg/ml)は、gp120ペプチド421-435(100μM)または希釈液で処理後、EP-421-433(10μM)を添加し21時間インキュベートした。EP-421-433付加物が検出された。プロットしたのは、デンシトメトリーによって決定した重鎖および軽鎖サブユニットの合計強度である。
【図19】図19は、唾液IgAによって切断されるペプチド結合を特定する。示したのは、希釈液(レーン1)またはIgA(80μg/ml)(レーン2)と9時間インキュベートされたgp120(270μg/ml)のクマシー・ブルー染色したSDSゲル電気泳動レーンである。レーン3は、より長時間(46時間)消化後のgp120-IgA反応混合液の電気泳動プロファイルを示す。表示アミノ酸の収量は、0.3−1.5 pmolであった。PTH-アミノ酸の混合物(各2 pmol; アプライドバイオシステムズ社)が標準として使用された(各アミノ酸の検出感度は、0.04 -0.10 pmol)。
【図20】図20A−20Cは、HIV血清反応陰性のヒト由来の抗体によるHIV中和を示す。図20Aは、4人のヒトの血清および唾液プールから精製したIgAおよびIgG抗体の中和効力を示す。IVIG、ガンマガードS/D。HIV-1ストレイン、97ZA009; 宿主細胞、フィトヘマグルチニンにより活性化したPBMC。抗体は、ウィルスと24時間インキュベートした。値は、抗体に代えて希釈液を受けた培養との比較による試験培養中のp24濃度の減少パーセントとして表される(4複製の平均±標準偏差)。図20Bは、EP-421-433によるIgA(34人のドナーからプールされた)の中和活性の阻害を示す。ヒト血清から精製されたIgA(2μg/ml)は、EP-421-433(100μM)、コントロールE-VIPまたは希釈液とインキュベートし(0.5時間)、中和活性はパネルAと同様にして決定した。図20Cは、時間依存的HIV中和活性を示す。HIVは唾液または血清IgAと1時間あらかじめインキュベートし、中和活性は図20Aと同様にして測定した。
【図21】図21は、KLHにコンジュゲートしたE-421−433で免疫したマウス由来の抗体のgp120切断活性を示す。マウスは、RIBIアジュバントを用いる腹腔内投与若しくはIL12/CTBアジュバントまたはLTmアジュバントを用いる鼻内投与によりKLH−E-421-433で免疫した。精製抗体のgp120切断活性は、Bt-gp120(0.1μM)を基質として用いる電気泳動アッセイによって決定した。
【図22】図22A−22Dは、KLHにコンジュゲートしたE-421−433による経鼻免疫に対する結合、触媒および中和応答を示す。図22Aは触媒応答を示す。示したのは、前免疫マウスおよびE-421−433のKLHコンジュゲートで経鼻免疫したマウス(LTmアジュバント; 4回経鼻免疫; その一週間後にサンプル収集)の血清、唾液および膣洗浄から精製した抗体のgp120切断比活性(nM/h/μg Ig)を示す。 挿入図、高度免疫膣IgA(3μg/ml)の存在下または非存在下17時間インキュベートしたBt-gp120(0.1μM)を示すSDSゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロット。図22Bは、結合応答を示す。抗マウスIgG、IgMまたはIgAのペルオキシダーゼコンジュゲートによって検出した、前免疫および高度免疫マウス (経鼻免疫、図22Aと同じサンプル)由来の精製抗体によるE-421−433結合のELISA値を示す。図22Cは、IgMの中和応答を示す。前免疫およびE-421−433免疫マウス(表示したアジュバント中腹腔内または鼻内免疫)の血清から精製されたIgMは、クレイドC一次分離株ZA009およびPBMC宿主を用いてHIV中和活性について分析された。図22Dは、IgGおよびIgAの中和応答を示す。前免疫およびE-421−433免疫マウス(LTmをアジュバントとする経鼻免疫)の血清から精製されたIgGおよびIgAは、クレイドC一次分離株ZA009およびPBMC宿主を用いてHIV中和活性について分析された。
【図23】図23A−23Bは、KLHとコンジュゲートしたE-421−433による全身免疫に対する結合および触媒応答を示す。図23Aは、唾液IgAおよび膣IgAにおける結合および触媒応答を示す。各パネルの左軸は、E-421−433のKLHコンジュゲートで(RIBIをアジュバントとして)腹腔内免疫したマウス由来のアフィニティー精製したIgAのgp120切断活性(nM/h/μg)を示す。IgA、3μg/ml。Bt-gp120 0.1μM、16時間。右軸は、同じマウスから回収した唾液(1:8)および膣洗浄(1:10)由来IgAの、抗マウスIgAのペルオキシダーゼコンジュゲートによって検出したE-421-433結合に対するELISA値である。矢印は注射スケジュールを示す。図23Bは、血清中の結合応答を示す。E-421−433のKLHコンジュゲートで(RIBIをアジュバントとして)腹腔内免疫したマウス由来の血清IgG(1:5000)、IgM(1:1000)およびIgA(1:100)による、抗マウスIgG、IgMまたはIgAのペルオキシダーゼコンジュゲートによって検出したE E-421-433結合に対するELISA値。矢印は注射スケジュールを示す。
【図24】図24A−24Cは、プロテインAによるgp120結合性IgM合成の刺激を示す。図24Aは、プロテインAによって刺激されたマウスにおけるgp120結合性IgMの誘導を示す。示したのは、gp120コートしたプレート(0.2μg/ウェル)を用いて決定した、前免疫マウスおよびプロテインA刺激マウス(第30日; パネルB中矢印で示した日に1 mgのプロテインAを静脈投与; 1:1000希釈)における血清IgM力価である。結合したIgMは、ビオチン化抗マウスIgM(k鎖特異的; 1:1000)およびペルオキシダーゼコンジュゲートしたストレプトアビジン(1:1000)により検出した。gp120をコートしない同一アッセイは、A490値0.046±0.002(第0日)および0.027±0.001(第30日)を与えた。図24Bは、プロテインA刺激マウスにおけるgp120結合性IgM応答の経時変化である。プロテインA(PBS中1 mg、腹腔内投与)は矢印で示した日に投与した。示したのは、種々の時点において得られた血清のELISAデータである。結合したIgGおよびIgMは、各々ペルオキシダーゼコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(Fc特異的、1:500)およびヤギ抗マウスIgM(μ鎖特異的; 1:500)によって検出した。
【図25】図25A−25Cは、プロテインA刺激によって誘導されたgp120結合性IgMの特異性を示す。図25Aは、gp120によるgp120−IgM結合の阻害を示す。示したのは、gp120(0.5μM)存在下および非存在下におけるgp120結合ELISAデータである。血清: 第35日、1%スキムミルク/PBST中 1:100希釈。他の条件は図2Bと同じである。図25B は、E-gp120421-433(レーン1)、gp120421-433の入れ替え配列を含有するコントロール親電子性プローブ(レーン2)、およびE-ハプテン(レーン3)とインキュベートしたIgMの還元SDSゲルのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色ブロットを示す。IgM、56μg/ml; E-gp120421-433およびコントロールプローブ、1μM; 37℃、1時間。70-kDaのμ鎖バンドと25-kDaのk/λバンドに加えて、以前抗μ抗体による染色に基づきμ鎖フラグメントと同定された50 kDaバンドがレーン1において明白である(36)。図25Cは、図25Bにおいて使用されたプローブの構造を示す。LC、アミノヘキサノイル・リンカー。
【図26】図26A−26Bは、黄色ブドウ球の菌プロテインAとHIVのgp120のB細胞スーパー抗原的性質に対する共通の構造的根拠を示す。図26Aは、黄色ブドウ球菌プロテインAのドメインD(SpA-D)とヒトIgM由来Fab 2A2(PDB 1DEE)との複合体の略図である。示したのは、SpA-D(線リボン)とFab 2A2(充填リボン)との接触面の拡大である。SpA(Graille Mら、 2000)またはgp120(Karray Sら、1998)と相互作用すると報告されている抗体アミノ酸は、コーリー−ポーリング−コルトン(CPK)式で示される−赤色のCPK残基はgp120およびSpA-D両方と相互作用するアミノ酸を、青色 はgp120のみと相互作用するアミノ酸、緑色はSpA-Dのみと相互作用するアミノ酸を表す。図26Bは、重ね合わせたSpA-Dおよびgp120残基421−433の図示である。示したのは、Fab 2A2のgp120接触アミノ酸と相互作用するアミノ酸が集中している(球棒式表示; 青色球は窒素原子を、赤色球は酸素原子を表し、炭素原子と結合はバックボーン色で示す)SpA-DへリックスII(明灰色リボン; 結晶構造PDB 1DEEから抽出)上に重ね合わせた、へリックス形のgp120残基421−433(緑色リボン; CHARMm/DSモデリング1.7(アクセルリス社)により得られたエネルギー最小化構造)である。RMSD、0.88Å。
【図27】図27は、E-プロテインAを示す。E-プロテインA刺激物質は、Lys側鎖アミノ基上に親電子性ホスホン酸エステル基を含む。
【図28】図28A−28Bは、BCR非依存ポリクローナルB細胞刺激物質の例である。図28Aは、E-LPSである。示したのは、大腸菌Re LPS由来のE-LPSである。2つの親電子基が2-ケト-3-デオキシオクトン酸残基のカルボキシル基上に付いている。図28Bは、E-CpGである。示したのは、CpG ODN2006(ホスホロチオエート結合で繋がったTCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT)由来のE-CpGである。親電子基は、チミジン(T)残基と優先的に反応する4’-アミノメチル-4,5’,8-トリメチルソラレン(AMT)を介して付けられる。チミジン−AMT結合の主要部位は、CpG中のチミジンの5,6二重結合とソラレンの4,5二重結合の間である(矢印a)。別のチミジンとさらに反応して(矢印b)ストランド間またはストランド内架橋を形成することも可能である。親電子基、スベロイルアミノ(4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジ(4-ニトロフェニル)エステルは、AMTのアミノ基に連結される(T-PsP単位)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上で列挙した発明の特徴、効果および目的などが明らかになる状況が達成され、かつ詳細に理解されるように、上に簡単に要約した発明のより具体的な記述および特定の実施例が、添付の図表中で説明されている。これらの図表は、明細書の一部を成す。しかし、添付の図表は発明の好適な実施例を説明するのであって、発明の適応範囲を制限すると捉えられるべきものではないという事に留意されたい。
【0023】
ここで使用される通り、(原文において)"a"または"an"なる語は、請求項及び/または明細中「より成る("comprising")」なる語と組み合わせて用いられるとき、”1”を指してよいが、”1以上”、”最低1”、”1または1以上”の意とも整合する。発明の実施例は、一つ以上の要素、方法ステップ、及び/または発明の方法から成ることがある。ここに記述した如何なる化合物、組成、または方法は、如何なる他の道具、化合物、組成、または方法に関して実践することができることが予期される。
【0024】
ここで使用される通り、請求項において「または(”or”)」なる語は、選択肢のみを指すと明確に示されているか、若しくは選択肢が互いに排他的である場合を除き「および/または(”and/or”)」を意味する(開示は選択肢のみおよび「および/または(”and/or”)」を指すという定義を支持するけれども)。
【0025】
ここで使用する通り、「動物」なる語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0026】
ここで使用する通り、「対象」なる語は、HIVを処置する目的で投与されたバイナリエピトープ特異的抗体のあらゆる受領者を指す。
【0027】
本発明の一実施例においては、ポリペプチド抗原上のエピトープに対してバイナリ特異性を有する抗体の産生誘導に有効な、スーパー抗原性エピトープおよび最低一つの他のエピトープから成るポリペプチドまたはその親電子性アナログが供される。別の実施例では、ひとつまたは両方のエピトープは、その中で親電子基がバイナリ特異性抗体の合成を誘起するのに有効である位置に一つ以上の親電子基をさらに含む。
【0028】
両方の実施例において、親電子性アナログは共有結合的にオリゴマー化したgp120であってよい。また、ポリペプチドまたはその親電子性アナログは、ペプチドリンカーによって別のgp120エピトープに連結されたスーパー抗原性gp120エピトープを含んでよい。具体的には、スーパー抗原性エピトープはgp120のアミノ酸残基421−433を含んでよく、他のエピトープはgp120のアミノ酸残基301−311を含んでよい。また、ペプチドリンカーは、リンカー長が天然gp120における2つのエピトープ間の距離を近似するように充分な数のアミノ酸をもつ。
【0029】
また両方の実施様態において、一つまたは両方のエピトープは、以下の構造式(化2)をもつ親電子性アナログを含む。
【0030】
【化2】

【0031】
ここで、L1・・・Lx・・・Lmは抗原決定基を定義する構成要素であり、Lxは抗原決定基の構成アミノ酸であり、L’はLxの官能基であり、Y’’は分子、共有結合またはリンカーであり、Y’は随意の荷電または中性基であり、Yは前述の抗原決定基に結合する抗体と共有結合的に反応する親電子基であり、nは1から1000までの整数であり、mは4から30の整数である。さらに、両方の実施様態においてY’’、Y’、またはYは、さらに末端または内部成分として水に結合する基を含んでよい。具体的には、水に結合する基は、1またはそれ以上の水分子を配位する金属イオンを結合する。金属結合基の例は、n=2以上である-(His)n-、または、-Cys-X-Cys-Cys-または-Cys-X-Cys-(ここで、Xはアミノ酸残基である)、エチレンジアミン四酢酸またはジアミノメチルピリジンである。金属の例は、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、カルシウム、またはマグネシウムである。
【0032】
本発明の別の実施例においては、一つ以上の上述のポリペプチド構築物または一つ以上の親電子性ポリペプチドアナログを生きた動物に投与することを含む、B細胞ポリペプチド抗原に対するバイナリエピトープ特異的抗体を産生するための方法が供される。さらにこの実施例に係る方法は、生きた動物に対してT細胞非依存的またはT細胞依存的B細胞抗体産生を刺激するのに有効な一つ以上の免疫学的アジュバントを投与することを含む。
【0033】
両方の実施例において、ポリペプチド抗原は、HIV gp120、Tat、プロテインA、またはプロテインLであってよい。また、抗体はHIV gp120エピトープのアミノ酸残基421−433および残基301−311を認識してよい。さらに、バイナリエピトープ特異的抗体は、例えばHIV表面に発現したgp120のような天然ポリペプチド抗原の加水分解を触媒するか、若しくは天然ポリペプチド抗原に共有結合し、それによってHIVを中和する。
【0034】
関連した実施例において、上述の方法によって産生されたB細胞ポリペプチド抗原に対するバイナリ特異性を有する抗体が供される。別の関連実施例においては、上述の抗体の免疫学的に有効な量を対象に投与することを含む、対象のHIVを処置するための方法が供される。
【0035】
本発明のさらに別の実施例においては、ポリクローナルB細胞刺激物またはその親電子性アナログの一つまたは両方を生きた動物に投与することを含む、HIV gp120のB細胞スーパー抗原性部位を認識する抗体の産生を向上するための方法が供される。さらにこの実施例に係る方法は、生きた動物に対してT細胞非依存的B細胞抗体産生を刺激するのに有効な一つ以上の免疫学的アジュバントを投与することを含む。
【0036】
両実施様態において、ポリクローナルB細胞刺激物質は、ヤマゴボウマイトジェン、リポポリサッカライド、フィトヘマグルチニン、またはCpGのひとつまたはそれ以上であってよい。また、ポリクローナルB細胞刺激物質は、黄色ブドウ球菌プロテインAであってよい。具体的には、ポリクローナルB細胞刺激物質は、プロテインAのスーパー抗原性ドメイン、プロテインAのスーパー抗原性ドメインのオリゴマー、またはヨウ素標識したプロテインAであってよい。加えて、刺激物質はさらに、gp120の加水分解を触媒するか、若しくはgp120に共有結合的に結合するのに有効な抗体の産生を刺激する親電子基を含んでよい。さらに、一つ以上のエピトープをもつポリクローナルB細胞刺激物質の親電子性アナログは、上述の構造を持ってよい。
【0037】
関連する実施例において、上述の方法によって産生したHIV gp120のB細胞スーパー抗原部位を認識する抗体が供される。別の関連実施例においては、上述の抗体の免疫学的に有効な量を対象に投与することを含む、対象のHIV処置のための方法が供される。
【0038】
本発明のさらに別の実施例においては、ポリクローナルB細胞刺激物の親電子性誘導体と共に、デュアルエピトープポリペプチドとその親電子性アナログの組み合わせを生きた動物に投与することを含む、抗体産生亢進を刺激するための方法が供される。
【0039】
本発明のさらに別の実施例においては、ファージ粒子の表面上に抗体レパートリーを提示し、その抗体レパートリーをポリペプチドまたはそのポリペプチド親電子性アナログを用いてスクリーニングする方法が供され、ここで、ポリペプチドまたはその親電子性アナログと反応する抗体またはその抗体フラグメントは、そのため抗体レパートリーからバイナリエピトープ特異的抗体またはそのフラグメントを分離する。
【0040】
本発明のさらに別の実施例においては、上述のポリペプチド親電子性アナログ一般構造をもち、L1・・・Lx・・・Lmは受容体結合決定基を定義する構成要素であり、ここでLxは受容体結合決定基の構成糖また脂質であり、L’はLxの官能基であり、Y’’は分子、共有結合またはリンカーであり、Y’は随意の荷電または中性基であり、Yは前述の受容体結合決定基に結合する細胞受容体と共有結合的に反応する親電子基、またはアシル基であり、ここで随意に、Y’’、Y’、またはYは末端または内部成分として水に結合する基を含んでよく、nは1から1000までの整数であり、mは1から1000の整数である、脂質、ポリサッカライドまたはリポポリサッカライドの親電子性アナログを供する。
【0041】
本発明のさらに別の実施例においては、上述のポリペプチド親電子性アナログ一般構造をもち、L1・・・Lx・・・Lmは受容体結合決定基を定義するヌクレオチド構成要素であり、ここでLxは受容体結合決定基の構成ヌクレオチドであり、L’はLxの官能基であり、Y’’は分子、共有結合またはリンカーであり、Y’は随意の荷電または中性基であり、Yは前述の受容体結合決定基に結合する細胞受容体と共有結合的に反応する親電子基、またはアシル基であり、ここで随意に、Y’’、Y’、またはYは末端または内部成分として水に結合する基を含んでよく、nは1から1000までの整数であり、mは1から1000の整数である、ヌクレオチドの親電子性アナログが供される。
【0042】
本発明は、例えばHIVコートタンパク質gp120だがこれに限定されないスーパー抗原性ポリペプチドの効果に対して保護することができる適応性抗体応答を制限する障壁を克服するための手段を記述する。HIV gp120のスーパー抗原性部位は比較的保存されており、ウィルスの宿主細胞CD4受容体結合およびその感染に重要なアミノ酸を提供する。従って、この部位に対する抗体は、異なるクレイドに属する多様なHIV分離株を中和するのに有効であることが予期される。
【0043】
本発明は、今まで思いもよらない抗体の性質、すなわち、gp120の2つの異なるエピトープを認識する能力についても記述する。「バイナリエピトープ特異性」と命名した抗体のこの性質は、組織培養においてテストした通り、HIV感染の中和を起こす。加えて、種々のポリペプチド構築物のバイナリエピトープ特異性とHIV中和活性をもった抗体の合成を誘起する能力が開示される。如何にしてポリペプチド構築物中2つのエピトープの含有が、エピトープの一つをCDRにおける相互作用によって認識し、第2のエピトープをFRにおける相互作用によって認識する抗体のB細胞による産生を刺激することができるかがここで示される。本発明において前者のエピトープの認識は、通常のB細胞クローン選択過程によって支配される。CDRにおける相互作用によって産生された細胞増殖シグナルは、FRにおける第2の、すなわちスーパー抗原エピトープの相互作用の負の効果を超えるに充分であり、バイナリエピトープ特異性を発揮する抗体の産生が起こる。これらの考えは、バイナリエピトープ特異性を備えウィルスから保護できる抗体を誘導する有効なHIVワクチンを設計するために重要である。
【0044】
高いウィルス中和活性を備えたバイナリエピトープ特異的抗体を産生するための方法も、ここで開示される。ウィルス中和活性の向上は、抗体の化学反応性に由来する。通常の抗体は、非共有結合メカニズムによって抗原と可逆的に結合する。通常の抗体同様、化学反応性抗体は抗原を、最初非共有結合によって認識する。しかしその後、化学反応性抗体のVドメイン内に位置する求核性部位は、抗原の親電子性反応中心の認識を開始する。
【0045】
これは、共有求核体−親電子体結合をもつ不可逆的免疫複合体の形成、および、水分子が反応中心にある場合には、抗体による抗原の加水分解という、2つの帰結をもつ。付加逆結合性は、免疫複合体の解離による活性抗原の再生を起こらなくするので、抗体の効力を高める。同様に、触媒的加水分解段階は、抗原フラグメントはたいてい親抗原と同等の生物活性を発揮しないので、不可逆的な抗原不活性化を起こす。本発明は、化学的手法により強力な親電子基が導入されたデュアルエピトープポリペプチド構築物を開示する。親電子基は、抗体の求核反応性の適応強化を誘導し、従ってポリペプチド構築物のバイナリエピトープ特異性をもった保護抗体の合成を誘導する能力を高める。
【0046】
従って、ここで供されるデュアルエピトープポリペプチド構築物は、予防的または免疫治療的ワクチンとして利用されるかもしれない。例えばHIVの場合、最低2つのgp120エピトープを含むポリペプチドまたはその親電子性アナログは、メモリーB細胞によって産生される抗体を含む保護抗体の合成を誘導するために、生物に対して繰り返し投与されるかもしれない。
【0047】
具体的には、デュアルエピトープポリペプチドの親電子性アナログは、一つまたは両方のエピトープが以下の構造(化3)を持ってよい。
【0048】
【化3】

【0049】
この構造において、L1・・・Lx・・・Lmは抗原決定基を定義する構成要素であり、Lxは抗原決定基の構成アミノ酸であり、L’はLxの官能基であり、Y’’は分子、共有結合またはリンカーであり、Y’は随意の荷電または中性基であり、Yは前述の抗原決定基に結合する抗体と共有結合的に反応する親電子基であり、nは1から1000までの整数であり、mは4から30の整数である。選択肢として、Y’’、Y’、またはYのいずれもさらに、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、またはマグネシウムのような金属に配位した水分子を結合するのに有効な水結合基を、末端または内部成分として含んでよい。金属結合基は、n=2以上の-(His)n-であってよい。それに代えて、金属結合基は、-Cys-X-Cys-Cys-または-Cys-X-Cys-(Xはアミノ酸残基)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはジアミノメチルピリジンであってよい。同じ一般構造で、L1・・・Lx・・・Lmは受容体結合決定基を定義する構成要素であり、Lxは受容体結合決定基の構成糖また脂質であり、mは1から1000の整数である、ポリサッカライドまたはリポポリサッカライドの親電子性アナログも供される。加えて、L1・・・Lx・・・Lmが受容体結合決定基を定義するヌクレオチド構成要素であり、Lxは受容体結合決定基の構成ヌクレオチドであり、mは1から1000の整数であるオリゴヌクレオチドの親電子性アナログも供される。
【0050】
ワクチンの投与は、例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内および粘膜経路のような、有効な如何なる経路によっても実施できる。HIVは、しばしば経粘膜感染する。従って、粘膜ワクチンは、粘膜表面における防御性IgA抗体の産生を最大化するので、本発明の好適な実施様態である。また、投与された抗体の用量または投与量は、当業者によって容易に決定される。付け加えて、アジュバントおよび/または希釈液を含む免疫原性配合中の抗体を投与することは、当該技術分野においてよく確立されている。
【0051】
本発明は、別のスーパー抗原であるプロテインAの、HIV gp120に対する抗体の合成を刺激するという予期しない能力をも示す。プロテインAとgp120のスーパー抗原性部位の配列は異なるが、クロス反応性抗体が可能であるに充分なコンフォメーション類似性がある。プロテインAに対する抗体の合成自身が起こるかどうかに関わらず、抗gp120抗体の産生は許容されることが予期される。この予期しない知見に基づき、プロテインAの投与は、初期B細胞応答をgp120のスーパー抗原性部位に向けるのに有用であることが期待される。また、プロテインAの投与は、gp120のスーパー抗原性部位に対する抗体合成を制限する天然障壁を乗り越えるために、gp120または前述のデュアルエピトープポリペプチド構築物と合わせることができる。
【0052】
加えて、本発明は、HIVに対する防御性抗体の誘導のために、適切なポリクローナルB細胞刺激物質または活性化物質を単独またはデュアルエピトープポリペプチド構築物と共に使用する方法を供する。そのような活性化物質は非BCR受容体と相互作用し、複数のB細胞部分集団の活性化および増殖を、それらの抗原特異性とは無関係に誘起する。非制限的事例は、リポポリサッカライド、易熱性大腸菌エンテロトキシン、コレラトキシンB、種々のインターロイキン、サイトカイン、CpG、および類似物である。gp120のスーパー抗原性部位に対する抗体の合成は、スーパー抗原によるB細胞の適応成熟を必要としないB細胞の性質であるから、ポリクローナルB細胞活性化は、防御抗体の産生上昇を起こす可能性がある。ポリクローナルB細胞活性化物が適切な免疫原と併せて投与される時、適応免疫プロセスは、抗体の特異性および抗体の化学反応性を向上させることが予期される。
【0053】
本発明において、バイナリエピトープ特異性を有する抗体の合成は、完全長gp120の親電子性アナログによる実験動物の免疫に対する応答において観測された。モノクローナル抗体およびそのフラグメントは、当該技術分野においてよく知られており使用可能な定型的方法、例えばハイブリドーマ技術やファージディスプレイ技術によって、実験動物の脾臓または他のリンパ組織から容易に調製できる。同様に、モノクローナル抗体及びそのフラグメントは、ここで供されたデュアルエピトープポリペプチド構築物または親電子性gp120で免疫されたヒトのB細胞から調製できる。従って、本発明は、バイナリエピトープ特異性とHIV中和活性を有するモノクローナル抗体およびそのフラグメントをもちいる、HIV感染者の受動免疫のための方法を提供する。
【0054】
本発明はさらに、ウィルス表面上に発現した完全長gp120は、稀にではあるしHIV抵抗性の自然免疫をもつHIV感染者に選択的ではあるが、バイナリエピトープ特異性をもった防御抗体の合成を誘起することを示した。長期に亘ってHIVに感染し、かつ後天性免疫不全症候群(AIDS)に進行しないヒトは、gp120のスーパー抗原性部位に対する触媒抗体の産生が上昇することも予期される。さらに、ここに示した通り、バイナリエピトープ特異性を有する抗体は、ハイブリドーマ法、エプスタイン・バーウイルスを用いたB細胞の不死化、および発現B細胞レパートリー由来の抗体またはそのフラグメントライブラリーの構築により、そのような感染者から分離される。これらの方法は当該技術分野において定型的である。これらの方法において、デュアル反応性ポリペプチド構築物は、バイナリエピトープ特異性を発現するB細胞または、例えばファージディスプレイベクターのような適切なベクター上に提示した抗体の部分集団を特定するのに利用される。そのような抗体はHIV感染者の受動免疫治療に有用であることが予期される。
【0055】
以下の例は、本発明の種々の実施様態を説明する目的のために供されるのであって、本発明を如何なる様態においても制限することを意図しない。
【0056】
(実施例1)
HIV gp120の親電子性アナログの免疫によって惹起された求核性MAbsのバイナリエピトープ特異性
HIVエンベロープタンパク質であるgp120は、中和抗体(Abs)の合成を誘導することを試みる実験的ワクチンの標的である(1,2)。gp120による免疫によって誘導される抗体のほとんどは、タンパク質中の高変異性領域、特に第3可変ドメイン(V3ドメイン)に対するものである(3)。これらの抗体は、感染しているウィルスストレインを中和する(4)。しかし、gp120のVドメインは感染過程で変異し、抗体による中和に対して抵抗性のウィルスエスケープ変異体を生ずる。さらに、世界の異なった部分における流行の原因である種々のHIVの系統のgp120は大きく異なり、gp120による免疫によって誘導された抗体はたいてい異系統のHIVを中和しない(5)。これは、gp120によって発現される構造的に保存された中和エピトープの探索につながった。候補エピトープは、HIVの宿主細胞受容体、すなわちCD4およびケモカイン受容体への結合に関与するgp120の比較的保存された領域である。残念なことに、これらのエピトープは免疫原性に乏しい。gp120のCD4およびケモカイン受容体結合部位近傍に対する希少なモノクローナル抗体(MAbs)が複雑な実験手順によって同定された(7-9)。これらのMAbsは、全てではないが多くのクレードBのHIV-1ストレインを中和する。
【0057】
CD4結合部位(CD4bs)は、残基256、257、368-370、421-427および457から成る非連続決定基であると考えられている(11-14)。CD4bsは、ウィルス表面に発現したgp120の3量体が可溶性単量体として脱落する時、コンフォメーション変化を受けると考えられており、単量体のCD4bsに対する抗体はしばしば3量体のCD4bsとの反応性に乏しい(15)。さらに、CD4bsの421−427ペプチド領域は、gp120のBリンパ球スーパー抗原部位の重要な構成因子である(16)(gp120SAg:抗体Vドメインの適応性配列多様化を要せず前免疫レパートリー中に反応性抗体が存在する部位として定義される)。他のB細胞スーパー抗原の場合と同様、B細胞受容体(BCR)の一部として発現したイムノグロブリン(Ig)に対するgp120SAgの結合はB細胞のアポトーシスを引き起こすと考えられており(17-19)、HIV感染者におけるgp120SAg結合性抗体の適応性増幅に対する証明は無い。その逆に、HIV感染者は、gp120SAgと優先的に結合すると考えられているVHファミリーであるVH3+ Igの血清レベル低下を示す(20)。明白な困難にも拘らず、CD4bsを標的とすることを支持する強力な論拠は依然としてある。これらは、(a)非感染者のIgGクラスAbs によるgp120SAgの結合は、以降のHIV感染事例の減少と相関する(21);(b)非感染者の中程度親和性IgAおよびIgMクラス抗体は、421-433領域の認識に由来する反応特異性をもって、gp120の加水分解を触媒し(22,23)、IgAクラス抗体は最近HIVを中和することが観測された(23);(c)HIV感染と稀にしか共存しない(24)自己免疫疾患である全身性エリテマトーデスの患者は、421−433合成ペプチドに対する抗体を高レベルに産生し(25)、狼瘡抗体ライブラリーから分離された421−433を認識する単鎖Fvフラグメント(リンカーペプチドで連結された、抗体の軽鎖および重鎖サブユニットの可変領域)は、組織培養中広範な一次分離HIVストレインを中和する(26)。
【0058】
非共有結合力によって決定されるそれらのエピトープ特異性に伴い、抗体はその結合部位内に位置する求核体を、抗原の親電子基近傍に運ぶ(27,28)。酵素は同様の求核体−親電子体相互作用を利用し、後にアシル−酵素複合体に対する水の攻撃により加水分解される、基質との共有結合反応中間体を形成する(29)。適応免疫プロセスはAbの求核反応性を強化できると仮定し、我々は、親電子性ホスホン酸ジエステルを含むgp120(E-gp120)(30)を用いた免疫によって惹起したIgGクラスMAbsを研究した。向上した求核反応性の誘導に起因し得る2タイプのMAb化学反応性、gp120特異的タンパク質加水分解(30)および共有結合特性を示す極度に安定なgp120免疫複合体の形成(31)が推定された。ここで我々は、E-gp120免疫により惹起された求核性MAbsのバイナリエピトープ特異性について述べる。gp120に対する通常のMAbsと異なり、抗E-gp120 MAbsは、V3ループ脚部および保存されたCD4bsと重複するスーパー抗原性領域内に位置する2つの空間的に離れたgp120エピトープを認識した。クレードB E-gp120免疫原の非相同性にも拘らず、バイナリエピトープ反応性MAbsは、クレードAおよびCに属する一次HIVを中和した。MAbsの性質は、gp120のCD4bsに対する中和抗体を誘導する新規方法を示唆する。
【0059】
<E-gp120免疫原>
E-gp120免疫原は、リコンビナントgp120(MNストレイン)のLys側鎖上に2種の代替リンカーを用いて親電子性ホスホン酸ジフェニルエステル基を設置することによって得た(図2A)。ホスホン酸近傍には、自然発生Ab求核部位のLys/Arg隣接残基認識能を模倣する正荷電基である、4-アミジノフェニル置換基がある。一分子のgp120につき複数のホスホン酸エステルが有り(30−46ホスホン酸エステル/gp120)、多様な抗原エピトープと関連した親電子体の提示を可能にしている。ホスホン酸エステルは、酵素の求核攻撃に感受性のペプチド結合カルボニル基を模倣する。E-gp120の変性電気泳動は、共有結合E-gp120二量体および三量体が単量体と共に存在することを明らかにした(図2B)。他のタンパク質、例えば上皮成長因子受容体の類似親電子性誘導体のオリゴマー化が検出可能でなかったので、オリゴマー化は非選択的反応ではない。
【0060】
<MAbの調製>
2つの交換可能なE-gp120 免疫原(30-46ホスホン酸エステル/gp120; 異なる調製品中のモノマーとオリゴマーの組成比は、各々20-50%および50-80%であった)を用いて、3つの別々のマウス免疫が実施され、ハイブリドーマが作成された。培養上清中のMAbsのスクリーニングは、免疫複合体の検出に先立ち固定化免疫原に非共有結合によって結合した抗体を2%SDS洗浄によって除去する、共有結合ELISAプロトコルによった。IgG分泌ハイブリドーマ705ウェル中39、およびIgM分泌ハイブリドーマ373ウェル中15が、固定化E-gp120に対し検出可能なSDS抵抗性結合を示した(A490 >0.2; 範囲0.2-2.9; 培地による背景値<0.1)。
【0061】
<HIVの中和>
MAbsは、末梢血単核球(PBMCs)宿主を用いて一次分離HIV-1の中和についてアッセイした(p24酵素イムノアッセイ)。検討したHIV-1分離株は、R5クレードB(SF162、JR-CSF、W61D)、R5クレードCストレイン(BR004、ZA009)およびX4クレードDストレーン(UG046)であった。コントロールは、同等に精製した抗E-gp120MAbs YZ18、YZ22、およびYZ23と同一アイソタイプ(IgG2a、k)の無関係なMAb CRL1689を含んだ。IgGはプロテインG−セファロースクロマトグラフィによって精製した。抗E-gp120 MAbsは、HIV非存在下での生存試験によって決定したところ、PBMCsに対して細胞毒性ではなかった。E-gp120結合活性を有する17のIgG MAbsが、HIVストレインZA009の中和について調べられた。10のIgG MAbは、用量依存的かつ再現性のHIV中和活性を示した(図3内に例)。一方、9のE-gp120結合IgM MAbsのどれもウィルスを中和しなかった。2 IgGクローンは、さらに検討された(クローンYZ18およびYZ23)。 両IgGは、検討されたHIVストレインのうちクレードDストレイン以外のすべてを中和した(表1)。既報のMAbsがクレードCストレインを弱くしか、もしくは全く中和しないので、クレードCストレインの中和は興味深い。クレードBストレインについては、IgG YZ23の効力は、参照MAbクローンb12と同等かそれ以上であった。両IgGはSHIVストレイン(SF162P3)も中和し、中和活性はアカゲザルの子宮頸部・膣洗浄液非存在下同等であった(20% v/v; 図示せず)。
【0062】
【表1】

【0063】
<バイナリエピトープ反応性>
2つの中和IgG(YZ18 とYZ23)および非中和IgG(SK-T03 )のエピトープ反応性は、gp120残基27−512に対応する15残基ペプチドを競合物質として使用して試験した。ELISAプレートは、固定化gp120(IgG YZ23、SK-T03)またはE-gp120(IgG YZ18結合; 触媒的切断によるgp120の喪失を避けるため; タンパク質分解活性の記述は下を見よ)を含んでいた。2ペプチド領域、297-315および417-435によるIgG YZ18およびYZ23の結合の用量依存的阻害が見られた(図4)。非中和クローンSK-T03は異なったエピトープ反応性を示した。一つのペプチド(残基465−479)のみIgG-gp120結合を競合的に阻害した。両方の中和抗体に対して、ペプチド297-311と301-315は等効力の阻害物質であったことは、重複する301-311が認識要素であることを示唆している。同様に、ペプチド417-431と421-435はほぼ同等の効力で結合を阻害したことは、421-431が第2の重要な認識要素であることを示唆している。バイナリエピトープ反応性は、残基293-311(E-293-311 )および421-433(E-421-433)に対応するビオチン化ペプチドの親電子性誘導体を使った電気泳動およびELISAアッセイによって確認された(図5A)。これらの親電子性アナログは、SDS-PAGEにおける共有結合免疫複合体の形成から決定される、特異的抗原−抗体結合の高感度プローブである。E-421-433の構造と反応性は発表済みである(28)。E-293-311は、同様にしてLys308およびLys310の側鎖にホスホン酸エステル基をつけることによって得られた。両E-ペプチドは、コントロールペプチドプローブE-VIP(27)を超えるレベルで、IgGs YZ18およびYZ23と複合体を形成した(図5BにYZ18の例を示す)。IgG YZ23によるE-293 -311結合の経時変化は、50%飽和時間43分の単一部位指数結合モデル(%結合 = 100(1 - e-k t); k、一次速度定数)に合致した(図5C、左パネル)。E-293-311結合部位がほぼ飽和後、IgG YZ23は未だ等モル量のE-421-433に結合することができた(図5C、右パネル)ことは、MAbの独立したサブサイトが293-311と421-433の認識に責任を負い、MAb内の2つの結合部位は同時に占有できることを示している。
【0064】
<デュアルエピトープ認識の構造的根拠>
301-311と421-433は、X線結晶学から推定された単量体ヒトgp120(図6A)および3量体サルgp120(図示せず)の3次元構造モデル中でかなり離れて位置している。従って、2つのペプチド領域が単一の連続性エピトープを形成する可能性は低い。
【0065】
IgGs YZ18およびYZ23のVドメインは、ハイブリドーマ細胞からRT-PCR法により増幅したcDNAを使用して配列決定した。各IgGのVHおよびVL中9の置換変異が明白であり、多くの付加/欠如がV-D-JおよびV-J接合部において観測された(生殖細胞遺伝子との比較による)。興味深いことに、VH変異の分布はFRsに偏在しており、全てのFR変異は、以前gp120 SAg結合に重要であることが示唆されている場所(32)に位置していた(図6B)。従って我々は、FR変異がgp120認識を向上させることができる可能性を排除しない。
【0066】
我々は、MAb YZ18のFabフラグメントの結晶構造を2.4Åの解像度で解いた(R因子 0.33)。以下は結論である:(a)可能性のある活性化求核体を含んだいくつかのダイアド(2成分官能基対)が明白であった(水素結合距離の範囲内(ここでは3Åの閾値を採用した)の一般塩基に接近できるSer、ThrまたはTyrのヒドロキシル基); (b)1つのダイアドは、抗体のgp120SAgに寄与すると示唆されたフレームワークアミノ酸を含んでいた(ダイアド VHSer84 0γ−Ser84 backbone O、核間距離2.47Å); および(c)結合部位の表面特性はデュアル認識モデルと整合している、すなわち、CDRsによって形成されたキャビティは、以前gp120 SAg部位の結合に寄与することが示唆されたアミノ酸(33)を一部とする別のより浅いキャビティと隣接している。これらの知見は、残基301−311がCDRsにおいて認識され、残基421−433が主としてFRsにおいて認識されるというgp120認識モデルを示唆する(図6D)。
【0067】
上述の通り、E-gp120免疫原は共有結合オリゴマーを含む(図2B)。E-gp120オリゴマーは、10分間煮沸およびゲルろ過クロマトグラフィーに安定であった(図7A)。我々は以前gp120が、親電子性ハプテンと共結合的に反応する活性求核残基を含むことを報告した(34)。従って、共有結合オリゴマー化の基本反応は、ホスホン酸ジエステル部とgp120の自然発生求核アミノ酸の間での共有結合である可能性が高い。ホスホン酸エステル基で誘導体化されていないgp120は、共有結合オリゴマーを形成しない。E-gp120オリゴマー化は、抗E-gp120 MAbsの特異なエピトープ特性の原因のひとつかもしれない。我々は、特定の既知中和関連エピトープのE-gp120中での発現を調べた。これは、CD4結合部位エピトープ(b12; 参照文献7)、コンフォーメーション性炭水化物依存性エピトープ(2G12; 参照文献35, 36)、および保存性V3頂部エピトープ(447-52D; 参照文献37)に対するMAbsを用いた競合ELISA法によって行われた。MAb b12および2G12による完全HIVの結合はE-gp120によって阻害されたが、抗V3 MAb 447-52Dは阻害されず(図7B)、これはV3頂部エピトープ(GPGR)がE-gp120によって提示されていないことを示唆する。これは、gp120またはE-gp120が固定化された直接結合ELISAによって確認された。MAb 268-D IV(エピトープ、HIGPGR)は、容易に検出可能なgp120結合を与える濃度において、E-gp120に結合しなかった(図7C)。
【0068】
E-gp120の3量体は、更なる構造研究、例えばバイナリエピトープ特異性を決定する2エピトープの相対的空間配置を明らかにするための結晶化、のためにゲルろ過によって濃縮された。
【0069】
<防御ワクチン手法としてのデュアルエピトープ認識>
我々は、10のHIV中和MAbsおよび7の中和活性を持たないMAbsからなる抗E-gp120 MAbs集のバイナリエピトープ特異性を分析した。図5B同様、MAbsをE-293-311およびE-421-433と反応させ、MAb−ペプチド付加物はSDS電気泳動とそれに続くブロットのストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色によって検出した。無関係なペプチド配列(VIPおよびgp120 421−433の並べ替え)を含む親電子性プローブがコントロールとして使用された。検討された17の抗E-gp120 MAbsのうち、10が両ペプチドに検出可能な結合を示した。10のデュアル結合MAbsのうち、6はHIVストレインZA009の中和活性を示した(IC50<30μg/ml; 図8)。一般のMAbsは異系統のHIVを稀にしか中和しないので、バイナリエピトープ特異性がHIV中和の可能性を高めることは明白である。
【0070】
競合ELISAを使い、我々は、我々の中和IgGが特定の参照中和MAbs(CD4bs結合MAbs b12およびF105; CD4誘導エピトープ結合MAbs 17bおよび48d(可溶性CD4存在下に結合を試験); 炭水化物依存エピトープ結合MAb 2G12)と類似のエピトープに結合する可能性を検討した。IgG YZ18およびYZ23は参照MAbによるgp120結合に影響せず、バイナリーエピトープ特異性は我々の抗体に特有の性質であることを示している。
【0071】
HIVにおける残基421−433配列の保存度は90%を超える(表2; ロス・アラモスデータベースにある全てのストレイン; クレードA、B、C、D、F、G、およびCR型)。クレードDを除き、残基301−311の保存は86%超である。これは、表1におけるクレードDストレインの中和抵抗性の理由である可能性がある(このストレインは、301−311のコンセンサス配列に対してわずか45%の同一性しか示さない)。
【0072】
【表2】

【0073】
<付加逆結合およびタンパク質切断活性>
SDS抵抗性E-gp120結合性を有する試験された17のIgG全ては、固定化したホスホン酸エステル部を欠くgp120に対してSDS抵抗性結合を示した(図9Aは8のIgGを用いた実験例を示す)。SDS処理は、コントロール抗gp120IgG(V3ドメイン指向性)のほぼ完全な除去を起こした。IgGとgp120の複合体は、SDS電気泳動によっても明白であった(図9B)。FabフラグメントもSDS抵抗性複合体を形成し、これはアビディティに関連した影響を除外する。非変性溶液中での解離は、以下のペプチドを競合性阻害物質として用いて解離性および難解離性状態を区別することによって研究された: MAb YZ23、ペプチド297-311; MAb SK-T03、ペプチド465-479。時間0において過剰の競合ペプチドを反応混合物に含むと、gp120に対するIgGの結合はほぼ完全に阻害される。Gp120との反応開始後種々の時点において競合ペプチドを添加すると複合体の解離レベルは経時的に減少し、これは時間依存的な難解離性複合体の形成を反映している。MAbs YZ23およびSK-T03の付加逆反応の2次速度定数は、各々2.1x106および2.1x107 M-1 min-1であった。解離速度は、ビオチン化gp120とIgGの混合、免疫複合体のプロテインGビーズ上への捕捉、過剰の競合ペプチドを含む希釈液中におけるビーズの種々の長さの時間のインキュベーションによって調べた(図9C)。コントロールMAb(268-DIV)からのgp120の速くかつほぼ完全な解離が明白であった(t1/24.8時間)。IgG SK-T03によって形成された複合体の解離は非常に遅く、>50%の免疫複合体が最終試験時点において残存していた(10日、名目t1/2 18.5日; 比較として、ビオチン−ストレプトアビジン複合体のt1/2は1.4-3.3日)。
【0074】
E-gp120の免疫によって起こる求核性上昇の結果のひとつは、gp120の切断を触媒する能力である。電気泳動アッセイは、3つの抗E-gp120 IgGがgp120を切断することを明らかにした(クローンYZ18 、YZ20 、YZ24)(図10はIgG YZ18を用いた実験例を示す)。
【0075】
MAbの求核性は、分子内相互作用が活性部位のセリン残基に求核反応性を与え、例えばペプチド結合のカルボキシル基のような、ポリペプチド基質中の電子不足反応中心の攻撃を可能にする、通常のセリンプロテアーゼが示すものと似ている。セリンプロテアーゼの阻害物質は、抗E-gp120 MAbsの触媒活性を阻害する(30)。他の触媒抗体の位置特異的変異(38)および結晶学的研究(39)は、セリンプロテアーゼのSer-His-Asp触媒部位と類似した求核部位を明らかにした。求核性MAbの特異性は、抗原の求核攻撃と協調したペプチドエピトープの非共有結合認識によって担保される(図11)。
【0076】
(材料と方法)
<E-gp120調製品および親電子性プローブ>
E-gp120 1aの調製は、既述のように(30)、スベロイルアミノ(4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジフェニルのコハク酸イミドエステルによる表面の接近可能なアミノ基のアシル化によった。E-gp120 1bは、gp120のN-(γ-マレイミドブチリルオキシ)コハク酸イミドエステルによるアシル化の後、Cys-Glu-Tris(Tris、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)とアミノ (4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジフェニル[m/z (ESI) 717.4(MH+;C32H41N6O9PSに対するMH+計算値、717.2)]とのγ−カルボキサミドの求核付加によって調製した。モノマー/オリゴマー比は、銀染色したSDS電気泳動ゲルのデンシトメトリーによって決定した。3量体の濃縮には、E-gp120 1aをスーパーロース6カラム(GEヘルスケア社; 0.1 mM CHAPS含有10 mM HEPES-0.15 M NaCl, pH 6.5)上ゲルろ過クロマトグラフィーに付した。溶出液は0.3mLづつのフラクションとして採取し、保持容量11.3−12.2mLに相当するフラクションを合わせた。E-421-433の調製は既に述べ(28)、421-433の並べ替えアミノ酸配列を含むコントロールプローブは基本的に同一の方法で調製した。E-293-311は、ビオチン化293-311(ビオチナミドヘキサノイル-LNESVQINC’TRPNYNKRKR; C’、S-アセトアミドメチル-Cys; ジーンメド・シンセシス社)から、スベロイルアミノ(4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジフェニルのコハク酸イミドエステル(27)による徹底的アシル化の後、HPLC精製によって調製した[ESI-MSによるm/z、1298.6 (3+; 計算値、1299.8)、974.8 (4+; 計算値、975.1)、779.6 (5+; 780.3)]。E-VIPおよびE-ハプテンの調製は以前述べた(27,40)。
【0077】
<MAbs> MAbsは、E-gp120 1aまたは1bで免疫されたマウスから調製された。アジュバントは、モノホスホリルリピドA-トレハロースジマイコレートエマルジョン(Ribiアジュバント; シグマ社)であった。ハイブリドーマは、脾臓細胞とミエローマ細胞株(NS-1; 文献41)の融合により調製した。免疫複合体の検出に先立ち固定化免疫原(40-100 ng/ウェル)に非共有結合によって結合した抗体を2%SDS洗浄によって除去する共有結合ELISAプロトコル(30)による培養上澄中のIgGのスクリーニングは、以下の17IgG MAbsを含むgp120特異的求核性MAbsを特定した: YZ18 (1a), YZ19 (1a), YZ20 (1a), YZ21 (1a), YZ22 (1a), YZ23 (1a), YZ24 (1a), SK-T01 (1a), SK-T02 (1a), SK-T03 (1a), SK-T04 (1a), 6B11 (1b), 2F2 (1b), 7H3 (1b), 1F4 (1b), 3A5 (1b), 5E11 (1b)。IgGは、固定化プロテインG上のアフィニティクロマトグラフィー(42)によって、MAbを含んだ組織培養上清から精製した。コントロールMAbs(抗黄熱病ウイルス抗原クローンCRL1689; ATCC社)は同じ方法で精製した。
【0078】
<MAb構造> YZ23Fabの結晶は、室温において懸滴内の蒸気拡散によって成長させた。2μLのFabストック液(10 mMトリス、pH 7.5中4 mg/mL)は、2μLの貯留液(16% w/v ポリエチレングリコール6000、0.1 M HEPES、pH 7.4)と混合した。出現した棒状結晶は、ユニットセルパラメータa=52.29Å、b=62.92Å、c=135.17ÅをもつスペースグループP212121 に属し、非対称ユニットあたり1 Fabであった。結晶は、25%グリセロール中凍結保護され、液体窒素中瞬間凍結した。2.5Å解像度の回折データは、アドバンスド・ライト・ソース、ビームライン4.2.2、バークレーにおいて、 絶対温度100 Kで収集した。構造は分子置換によって解かれ、解像度限界20-2.5Åの間の95%のデータを使用して結晶学的R因子0.223に精緻化した。フリーR因子は、無作為に除外した残りの5%に対し0.277であった。最終モデルは、430のアミノ酸残基と70の水分子から成っていた。平均Bファクターは、タンパク質について31.4Å2であり、水分子について27.4 Å2であった。標準結合距離および結合角からの乖離は、各々0.0054Åおよび1.22°であった。ラマチャンドラン・プロットは、89.3%のアミノ酸残基が最好適領域内にあることを示した。
【0079】
<HIVの中和> 抹消血単核球のHIVの一次分離株による感染は、ウィルス(100 TCID50; TCID50、50%組織培養感染用量)を等容積の漸次上昇する濃度のプロテインG精製したMAbで1時間処理することにより測定した(26)。健康人ドナー由来のフィトヘマグルチニン活性化細胞を加え、3日間培養、細胞を洗浄し、新鮮なRPMI中24時間培養、トリトンX-100で可溶化し、上清中のp24を測定した。50%および80%の中和を与える濃度(IC50およびIC80)は、%HIV中和 = 100%/[1 + 10((logIC50 - 抗体濃度) X ヒルスロープ)]なる式に対する最小二乗適合曲線から決定した。
【0080】
<エピトープの特定> ペプチド競合アッセイにおいて、MAbは、15残基gp120フラグメントペプチド(50μg/ml; 国立衛生研究所エイズ研究および参照試薬プログラム)の存在下または非存在下、E-gp120(MAb YZ18)またはgp120(他のMAbs)でコートしたプレート(40 ng/ウェル)に37℃で2時間0.05% トゥイーン20と0.25% BSAを含むDB8中で結合させ、結合したMAbはヤギ抗マウスIgG−HRPコンジュゲート(1:1000希釈; Fc特異的)と基質としてOPDを用いて検出した(490 nm)。エピトープ特異性を比較するために、参照MAbs(IgGs b12、447-52D、2G12、17b、47d)を、gp120残基497-511に対するヒツジ抗体(クリニカ)を用いて固定化したgp120に抗E-gp120 MAb存在下または非存在下に結合させ、結合した参照MAbはHRPとコンジュゲートしたヤギ抗ヒトIgG(1:1000)で検出した。バイナリエピトープ特異的なMAbsを特定するためのSDS電気泳動アッセイは、2つのペプチドプローブ、E-421-433およびE-293-311と2つのコントロールプローブE-S421-433およびE-VIPを用いて実施した。E-ペプチド(10μM)と3時間インキュベートしたMAbs(75μg/ml)をSDS電気泳動に付し、MAb-ペプチド付加物はブロットのストレプトアビジン-HRP染色によって検出した。バンド強度はデンシトメトリーによって決定し、任意ボリューム単位(AVU)で表示した。E-gp120による種々のエピトープの発現を分析するため、MAbs(b12, 45μg/ml; 447-52D, 0.8μg/ml; 2G12, 7.5μg/ml)は、E-gp120 1a(32ホスホン酸エステル基/gp120)またはコントロールgp120、EGFまたはE-EGF(0.5μM)の存在下または非存在下、HIV(MN, 1.6 x 103 TCID50/mL)と20時間4℃でインキュベートした。MAbに結合したビリオンはプロテインGコートしたウェル中で補足し(1μg/ウェル;1時間)、10%トリトンX100で可溶化し(15 min)、可溶化物中のHIV p24(PBS中1:3希釈)をベックマン-コールター社製HIV p24 抗原EIAキットで測定した。参照MAbによるE-gp120結合は、E-gp120 1a、1aの3量体濃縮品、またはコントロールgp120(40ng/ウェル)でプレートをコートし、結合したMAbsを抗ヒトIgG-HRP(Fc特異的; 1:1000)によって検出するELISAによって調べた。
【0081】
(実施例1の参照文献)
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【0082】
(実施例2)
デュアルエピトープポリペプチド構築物
デュアルエピトープ免疫原の最小構造は、(Ag)-Li-(SAg)で表され、ここで、Ag、SAgおよびLiはそれぞれ、通常の抗原決定基、スーパー抗原性エピトープおよび2つのエピトープ成分を連結するリンカーを示す。リンカーの長さと組成は、SAgおよびAg成分が天然のスーパー抗原性ポリペプチドの対応する領域と類似または一致したコンフォメーションをとるものであるべきである。デュアル免疫原は、免疫原性を高めるキャリアタンパク質、求核性抗体(Abs )の合成を促進する親電子基、SAgとAgが望ましいコンフォメーションをとることを助ける補助基のような付加的成分を含んでよい。
【0083】
我々は、BCRフレームワーク領域(FR)と相互作用するSAgエピトープと相補性決定領域(CDR)と相互作用する別の通常抗原エピトープを含むデュアルエピトープ免疫原が、B細胞分化を防御Absの合成向上を起こす好ましい経路に向かわせることを着想した(図12)。この仮説は、完全長E-gp120に対する中和抗体がgp120残基421-433および残基301-311より成るペプチドのデュアル認識を高頻度に示すという我々の知見に基づいている。これら2つのエピトープから成るデュアルエピトープ構築物の例を図13に示した。
【0084】
SAgおよびAgエピトープは、実施例1で述べた421-433および301-311領域に限定される必要はない。原理的には、如何なるSAgエピトープと如何なる通常エピトープは、それらが充分に免疫原性を有するなら、デュアルエピトープ構築物の構築に妥当である。
【0085】
上述の合成ペプチド構築物に加え、精製完全長タンパク質およびウィルスまたは細胞膜上に発現されたタンパク質は、バイナリエピトープ特異的抗体の合成を誘導するために使用できる。望むAbsの産生は、2つのエピトープ、AgとSAgがそれぞれCDRおよびFRによって協奏的に認識されるなら可能である。
【0086】
<デュアルエピトープ構築体の例>:そのような構築物の一例は、実施例1で述べた共有結合gp120オリゴマーを含む。デュアルエピトープポリペプチド構築物の更なる例を、HIV gp120をバイナリエピトープ特異的Absの標的の例として使用しながら以下に述べる。
【0087】
(a) (301-311)-GMB-GGS-(E-421-433): このデュアルエピトープ構築物は、Agユニットとしてgp120残基301-311、SAgユニットとして421-433、およびリンカーとしてGMB-GGS(γ-マレイミドブチリル-Gly-Gly-Ser)から成る(図13A)。SAg部は、求核性抗体の合成の刺激のために親電子基をC末端に含む。
【0088】
T-(301-311)-GMB-GGS-(E-415-436): この例は、「万能」Tエピトープとして、N末端に明確なTエピトープを含む(T、15残基破傷風トキソイドペプチドQYIKANSKFIGITEL; 参照文献 1)(図13B)。SAg部は、421-433の中和関与コンフォメーションをとると仮定されるE-415-436である。NMRおよびCDによる研究から(2-4)、残基416-419は、421-433領域に向上したCD4結合活性をもつらせんコンフォメーションを誘起するスイッチ領域として特定された。ペプチドの両末端は、大抵内部ペプチド部分よりもよりフレキシブルであり、C末端への434−436残基の付加は、標的の421-433領域により硬さを与えるに違いない。親電子基は、Lys432の側鎖に付けられる。この基は、リンカーのフレキシビリティーにより空間的な自由を享受し、BCRの抗原結合部位内の種々の場所に位置する可能性のある求核体との結合を可能にする。
【0089】
(b) T-(301-311)-GMB-GGS-(E-c421-433): この構築物は、gp120残基421-433のコンフォメーション制限アナログを含む(図13C)。421-433領域を制限する目的は、フレキシビリティーを低下させ、βシートコンフォメーションを近似することである。環化による制限は、βシートペプチド領域の場合にはしばしば成功することが立証されている。gp120のこの領域におけるβシート形成および残基427-430におけるターンはモノマーgp120の公表された結晶構造において明白であり(5)、Met425とGly431のα炭素間の距離は側鎖連結ジペプチドOrn-Asp(Orn、オルニチン)のα炭素間の距離と同等である。そのような構造は、Met425/Gly431をOrn/Asp残基で置換してペプチドを環化させることによって模倣されるかもしれない。
【0090】
(c) KLH-(301-311)-GMB-GGS-(E-c421-433): この例は、キャリアタンパク質キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を含む(図13D)。KLHは、複数のT細胞エピトープを含み、免疫原性に乏しいペプチドに対する抗体産生のためのキャリアとして一般に用いられる。
【0091】
(d) E-gp120オリゴマーおよびE-HIV: 301-311および421-433エピトープを充分に免疫原性を有する形で発現する共有結合によって安定化されたE-gp120は、実施例1において述べた。E-HIVは、コートタンパク質が親電子性ホスホン酸エステル基を提示するよう修飾された完全ウィルス粒子からなる類似の調製品である(図13E)。E-HIVの主たる優位性は、天然のオリゴマーgp120を含むことである。オリゴマーgp120構造は、親電子基とgp120の自然求核体の間での共有結合架橋によって安定化されるとみなされる(6)。さらに、gp120-gp41会合も同じメカニズムによって安定化されるかもしれない。E-HIV調製品は、ウィルス感染性を除去するために、ソラレンで容易に不活性化できる(7)。ソラレンはウィルスRNAに共有結合し、ほとんどタンパク質を変性させることなくHIVを不活性化する。HIVの実験室適応ストレインは連続性細胞株中で高力価に増殖し得るが、一次分離株においては糖タンパク質スパイクはより安定でより高密度であることが示されている。クレードC一次ウィルス(ZA009ストレイン)は、一次分離HIVをよく許容する連続性ヒトT細胞株(PM-1)中で高力価に増殖できる。セルマックス連続フロー(中空糸)かん流バイオリアクター中でウィルスを産生することにより、感染力価6.25 log/mlおよびgp120収量約900 ng/mlが日常的に得られる。収穫したウィルスはスクロースを用いて沈殿することによってenvを顕著に失うことなく更に精製することができる。
【0092】
<親電子基>:親電子基は、デュアルエピトープ構築体の2つのエピトープのうちの1つ、または両エピトープ(Ag およびSAgエピトープ)中に位置することができる。図13の例は、親電子基としてホスホン酸ジフェニルエステル基を、SAg部のC末端またはLys側鎖に含んでいる。高求核性を有するバイナリエピトープ特異的Absの誘導に適したその他の親電子基は、ホスホン酸と種々のアリールおよびアルキルアルコールとのモノおよびジエステル類、α-ケト酸類、およびハロアルキルケトン類を含む。親電子基は、親電子性中心近傍に水分子を捕捉する付帯官能基を含むこともできる。
【0093】
<リンカー>:ここで示した合成ペプチド構造の例は、GMB-GGSリンカー(GMB、γ-マレイミドブチリル; GGS、Gly-Gly-Ser)を含む。SAgとAg の組み合わせが互いに正しい空間的関係に存在するようにデュアルエピトープ構築物の構造を最適化するために、他のリンカーが考慮できる。リンカー構造のスクリーニングは、最適なリンカーを特定するための分子モデリングまたは事件的方法によって行うことができる。最伸長形GMB-GGSリンカーの長さは、21.3Åである。公表されたモノマーgp120の結晶構造(5)において、301-311のN末端は、421-433のN末端から14.8Åに位置している。各アミノ酸の除去はリンカー長を3.7Åづつ減少させるだろう。従って、17.6、13.9および10.2Åの長さのリンカーが、各々1、2および3残基を除去することによって調製でき、種々の末端間距離を有するデュアルエピトープ構築物を産生する。同様に、アミノ酸残基の付加は、リンカー長を3.7Åづつ増加させ、1、2および3残基を付加することにより、エピトープ間距離25.0、28.7および32.4Åを有する構築物が調製できる。同様の設計アプローチは以前、単鎖Fv構築物においてVL/VH ドメインを連結するためのリンカーを開発するために使用された(8)。種々のリンカーを含むデュアルエピトープ構築物は、バイナリエピトープ特異的Ab(例えば、実施例1で述べた中和MAb YZ23; このMAbの構造は結晶学によって決定された) の2つの結合部位に分子モデリングによってドッキングすることができる。これは、明らかな立体的矛盾を除外するだろう。探索プロセスは、リジッドボディ置換とロータマーデータベースに拠る単結合周りの許容回転から成る。1以上のスコアリング機能において高位にランクされるドッキングコンフォメーションを特定するため、コンセンサススコアリング機能が使用される。最終構造に到達するためのソフトウェアのモジュールは、LigScore2、PLP、Jain、PMFおよびLUDI(アクセルリス社)。フレキシブルドッキングのソフトウェアも我々の研究室にある(LigandFit)。立体的矛盾のないデュアルエピトープ構築体は、参照中和Ab(例えば、MAb YZ23)との反応性によってスクリーニングできる。この手順は、エピトープが「中和関与コンフォメーション」にあることを確実にすることを助ける。デュアル反応性は、例えば以下のアッセイによって決定できる: (a) ELISAによる総結合(非共有 + 共有); および(b) SDSゲル電気泳動による不可逆的結合(方法については実施例1を参照)。
【0094】
<化学合成>:デュアルエピトープ構築体の合成は単純である。第一に、GMBリンカーペプチドとE-421 -433領域が単一ユニットとして調製される。このユニットを301-311ペプチド中の残基301の−SH側鎖に連結すると望む免疫原が得られ、それはHPLCによってクロマトグラフィー的均質に精製し、エレクトロスプレー質量分析(必要ならNMR)によって同定できる。Orn425-Asp431で環化したアナログは、以下のような位置選択的な環化およびホスホン酸エステル導入によって合成できる: (a) Orn425(4-メチルトリチル、Mtt)およびAsp431(2-フェニルイソプロピル、2-PhiPr)以外TFA抵抗性保護基を使用したWang樹脂上でのペプチド構築; (b) 1%トリフルオロ酢酸(TFA)によるOrnおよびAsp保護基の除去; (c) カップリング試薬HATUによる樹脂上環化、TFAによるペプチド切断およびアミノホスホン酸エステル前駆体との縮合; および(d) 1M トリフルオロメタンスルホン酸による脱保護。環化反応は、免疫に最適の化合物を選択するために我々の中和Abとの反応性をテストするために、いくつかの代替残基において実施することができる。
【0095】
E-HIVの調製は以下の通りである。ウィルスを、2次酸化反応を停止するアスコルビン酸(0.5 mM)とともに、アミノメチルトリメチルソラレン(10μg/ml)によって不活性化する。調製品は、2サイクルの処理において3ジュール(3分)の紫外線(UVA)[透過距離 = 3 mm]に暴露する。この処理後、濃縮調製品中に感染性ウィルスはPBMCアッセイにおいて検出不能である(感染力低下> 6 対数)。調製品は、ウィルスをボイドボリュームに回収するゲルろ過(スパーロース6カラム)によって更に精製される(これは、宿主細胞タンパク質の除去を助ける)。ホスホン酸ジエステル基による誘導体化は、不活性化ウィルスをN-スベロイルアミノ (4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジフェニルの活性エステル.によって行われる。遊離ホスホン酸エステルを脱離したgp120(免疫原の遊離gp120含量は可能な限り少なくする)とともに除くため、再度ゲルろ過を行う。最終品中のgp120含量は、酵素イムノアッセイによって測定する。ホスホン酸エステル基による誘導体化は、ホスホン酸エステルがタンパク質をその結合タンパク質中に見出される天然親電子体とより反応性にするので、エンベロープを安定化すると期待される(Absとホスホン酸エステル反応に類似)。
【0096】
<マウスの免疫>:候補ワクチン構築物は、例えばBALB/cマウス宿主(10/グループ、4-6週齢)を用いて免疫を実施することによって有効性を確認できる。適切なアジュバントが選択される。アジュバントはB細胞によって産生されるAbsのクラス、Ab応答の大きさ、B細胞移動パターン、および誘導されたAbsの特異性の決定にまで重要である。アジュバントは、サイトカイン誘導およびToll様受容体(TLRs)を含む細胞パターン認識受容体との直接相互作用を経て、T非依存的およびT依存的B応答に影響する。例えば、粘膜免疫によって望むAbs の優先的誘導を達成するには、経鼻免疫がいくつかのアジュバントを用いて実施される: (a) リポポリサッカライド(LPS; T依存および非依存応答を刺激する、TLR4刺激物質); (b) CpG(TH1応答優位、TLR9を介したシグナル); および(c) 炭疽菌浮腫毒素(TH2応答、膣Ab応答を誘導、共刺激分子を上方制御する)。免疫の最適経路も実験的に決定される(例えば、経鼻、経膣、経口、筋肉内、腹腔内および静脈内)。本発明の好適な一実施様態においては、鼻経路が候補ワクチンに対するAb応答を効果的に刺激することが示された(実施例3参照)。免疫原の投与量は、最適投与量を決定するために変動される(10-200μg ペプチド当量/kg)。繰り返し免疫(例えば2−4週間隔で3−4回免疫)は、メモリーB細胞の応答を刺激するために実施される。
【0097】
各免疫の5日後、血液および子宮頚部・膣洗浄液(CVLF)が収集され、血清(IgM、IgGおよびIgA)およびCVLF(sIgA、IgG)中に存在するAbsは、我々の以前の研究(6,9,10)同様、固定化した抗IgM抗体、プロテインGおよび抗IgA抗体を用いるアフィニティクロマトグラフィによって電気泳動上均質に精製し、以下のように研究された。
【0098】
(a) 触媒および結合.以下の基質が調べられた: (a) 完全ビリオン; および(b) リコンビナントモノマーgp120(MNストレイン)。完全ビリオン(ストレインZA009、クレードC、一次分離株、R5依存性)およびMN(クレードB、実験室適応株、X4依存性)はヒトPBMC中で増殖することによって得、感染能アッセイによって定量し、ゲルろ過によって精製した。Abs(1-100 nM)をビリオン調製品(〜103 TCID50)とインキュベートした後、ウィルスgp120の加水分解は、我々の公表したモノマーgp120の加水分解アッセイと同様の方法、すなわち、還元SDS電気泳動と抗gp120Absによるイムノブロッティングによって測定した(6)。gp120の加水分解は、完全gp120バンドの減弱および低分子量フラグメントの出現として明白である。必要なら、高感度検出にためにウィルスgp120は35S-Metによって標識される(35S-Met含有培地中HIVをPBMCに感染させることによって)。無関係なポリペプチドの加水分解は、非選択的な触媒活性の欠如を確認するために、電気泳動によって決定される[文献11; 例えば、ビオチン化アルブミン、オボアルブミン、カルモジュリン、血液凝固第VIII因子]。加水分解速度データは、最も優れた過免疫Absのセットの濃度を変化させて得る。見かけのKmおよびVmaxは参照文献11のようにして計算した。
【0099】
Ab-ウィルス結合も、ウィルス中和を起こす。モノマーgp120に対するAbの結合は、ELISAによって決定される(6,12)。完全ウィルス結合には、ウィルス(〜103 TCID50; ストレインZA009およびMN)を種々の濃度のAbとインキュベートして検出可能な反応を与える濃度を決定する。前免疫Abs、MAb SK-T03(非中和エピトープに不可逆的に結合する)および可逆結合MAb(例、クローン257DIV)をコントロールとして含める。MAb−ビリオン複合体は固定化プロテインGを用いて捕捉し、結合していないビリオンは洗浄により除く。P24はトリトンX-100によって可溶化し、p24ELISAによって測定した。安定性を測定するため、抗体はビリオンと適切な時間反応し、過剰のリコンビナントgp120(1μM)が非共有結合により会合している複合体の解離を誘導するために加えられる。反応混合物はゲルろ過に付される(13,14)。界面活性剤エンピジェンは、免疫複合体を解離することなくビリオンを分解するために使用される(15)。Gp120のC末端領域に対する抗体は、gp120−Ab複合体を捕捉するために使用され、反応はペルオキシダーゼとコンジュゲートした抗マウス軽鎖Abを用いて検出した。t1/2を測定するため、反応混合物は長期間インキュベートされ、残存非解離免疫複合体が測定され、t1/2はデータを1次速度式に適合することよって得た。
【0100】
(b) 中和.はじめに、前免疫および過免疫マウスからの未精製の血清およびCVLFが、PBMC培養中におけるクレードCストレインZA009(R5依存;一次分離株)の中和活性を決定するために使用される。リピートアッセイは、血清およびCVLFから精製したAbs(sIgA, IgM, IgAおよびIgG)を使用して行われる。中和アッセイは既述の通りに行われる(16, 17)。 ウィルスストック(100 TCID50/ウェル)およびAbs(ng/ml-μg/ml)は 短時間インキュベートされ、これによりウィルスはPHA刺激したPBMCに感染する。ウィルス感染は、EIAによってp24を測定することによって定量する。中和の終点力価は、Abなしでインキュベートしたコントロールと比較してp24発現が50%または80%阻害される内挿力価として定義する。コントロールは、非免疫マウスから同等に精製されたAbsを含む。非特異的細胞毒性は、HIV非存在下Absで処理したPBMCを用いて、顕微鏡検査と細胞の生存染色によって分析する。中和の幅は、R5、X4、およびR5X4ストレインを含むパネルを用いて研究する。残基421-433は比較的保存されているが、いくつかのストレインは相違を示す。421-433の特定の位置に配列の違いを持つストレイン、例えば98BR004、98IN022および97ZA012も含まれる。クレードA、B、C、D、E(AE env組み換え)から抽出した4−6ストレインが、多様なHIVの中和を確立するために試験される。
【0101】
<非ヒト霊長類による確認>:他の実験動物と異なり、サルはHIVタンパク質を発現するSIVストレイン(例えば、SHIVSF162P3 は、SIVmac239 ゲノムにクローン化されたCCR5-指向(R5)一次分離HIVストレインSF162(クレードB)のenv、tat、revおよびvpuの配列を含む)による感染に感受性である。ワクチン候補は、そのようなモデルストレインを用いてアカゲザルにおいて容易にテストできる。モデルの詳細な説明がある(例、文献18−22)。簡単に説明すると、アカゲザルのグループは、種々の時間間隔で、適切なアジュバントトともに、適切な投与経路を経て、繰り返し、候補ワクチンで免疫される。血清およびCVLFに中和抗体の誘導を確認した後、アカゲザルに感染用量のSHIVSF162P3を経膣接種する。定型的なRT-PCR法によって血中およびCVLF内のSHIV感染を5-9ヶ月に亘ってモニターする。剖検時、種々の組織中のHIV貯留の存在をモニターする。免疫およびコントロール動物群の平均ウィルス量とCD4細胞数を計算し、適切な検定により差の統計学的有意性を推定する。サルは、姿勢、活動性、飼料消費、行動、体重、膣または全身の不快感の観測を含む、臨床疾患の兆候についても検査される。血液サンプルは、CBC、ヘマトクリット、血清化学、クレアチニン、アルカリホスファターゼおよび血清アスパラギン酸トラスフェラーゼ検査によって分析される。安楽死時には、リンパ組織の組織病理学を含む、完全剖検を行う。
【0102】
(実施例2の参照文献)
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3. Reed, J., and Kinzel, V. (1993) Primary structure elements responsible for the conformational switch in the envelope glycoprotein gp120 from human immunodeficiency virus type 1: LPCR is a motif governing folding. Proc Natl Acad Sci U S A 90, 6761-6765
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6. Paul, S., Planque, S., Zhou, Y. X., Taguchi, H., Bhatia, G., Karle, S., Hanson, C., and Nishiyama, Y. (2003) Specific HIV gp120-cleaving antibodies induced by covalently reactive analog of gp120. J Biol Chem 278, 20429-20435
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17. Planque, S., Mitsuda, Y., Taguchi, H., Salas, M., M-K, M., Nishiyama, Y., R, K., Okhuysen, P., M, E., Hunter, R., Sheppard, H. W., Hanson, C. V., and Paul, S. (2007) Characterization of gp120 hydrolysis by IgA antibodies from humans without HIV infection. AIDS Research and Human Retroviruses 23, in press
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【0103】
(実施例3)
Gp120のスーパー抗原性部位に対する自然発生タンパク質分解抗体とそれらの誘導性
HIVに対する有効なワクチンは、感染ウィルスを中和する一つ以上の定常エピトープに対する強力なポリクローナル抗体(Ab)応答を誘導しなくてはならない。比較的保存されたHIVエピトープに対するいくつかのモノクロナル抗体(MAbs)が知られているが、定常HIVエピトープの認識に起因し、かつHIV感染部位において見出されるポリクローナル抗体中に検出できる充分に強力なHIV中和活性を有するAbsを誘導する免疫原の報告はない。我々は、gp120残基421-433の親電子アナログ(E-421-433)の、マウスにおいて触媒および中和ポリクローナルAb応答の誘導能を試験した。以前指摘した通り、残基421-433は、スーパー抗原特性、すなわち、gp120のこの領域に対する適応B細胞応答を制限する可能性のある性質を発揮する。さらに、合成ペプチドは、完全長タンパク質中のそのペプチドのコンフォメーションから乖離しているかもしれない種々のコンフォメーションをとり得、結果として誘導されたAbsは完全長タンパク質を認識しないかもしれない。予期しないことに、我々は、有効なHIVワクチンの基盤とみなせるこの免疫原に対する好ましい応答を、IgMクラスAbsおよび分泌IgA(sIgA)クラスAbsに観測した。
【0104】
<HIVに感染していないヒトのgp120加水分解Abs >:HIV非感染者のタンパク分解Absに関する我々の研究は、HIVワクチンの設計に価値がある予期しない情報を与えた。Abレパートリーは、定常(μ,δ,γ,α,ε)およびVドメイン遺伝子(V, D, J genes)から作られる(図14)。生殖細胞系Vドメインの研究から示唆されるように(1)、非選択的Abタンパク質分解活性は遺伝性の性質である。その結果として、好ましい選択圧の下では、抗原特異的なタンパク質分解抗体の出現は可能である。gp120を切断するIgMクラスAbsは、HIVに曝露していないヒトおよびマウスの前免疫レパートリー中に見出される(2)。Absは、CDRまたはFR配列多様化またはIgMからIgGまたはIgA産生B細胞へのクラススイッチ組み換えに伴うB細胞成熟化の過程で、上昇したまたは低下したタンパク質分解活性を発現し得る。
【0105】
我々は最近(3)、HIV非感染者4人の唾液および血清から精製した各IgA調製品が、電気泳動における親gp120バンドの消失とより低分子量のフラグメントの出現による評価で、ビオチン化gp120(Bt-gp120 )を切断することを観測した(図15A)。唾液由来の分泌IgAと血清由来のIgAを用いて観測されたBt-gp120の生成物プロファイルは、基本的に同一であった(名目分子量80, 55, 39, 32, 25 および 17 kDの生成物)。Ab分子当りの結合部位数は異なる(2 部位/モノマーIgAおよびIgG; 4部位/唾液IgAダイマー)。しかし、モノマーおよび凝集体の単位質量当りの結合部位数は同等であり(〜75-100 kDに付1結合部位)、活性データの一定濃度(mg/ml)に対する標準化は、それらの活性の妥当な比較を可能にする。4人の被験者由来sIgAの平均タンパク質分解活性は、血清IgAよりも15.4倍高かった[各々の平均± s.d.、128.6±23.3および7.2±3.3 nM gp120/時/(mg IgA/ml); 図15B]。検出可能な触媒活性を与えるsIgAおよび血清IgA濃度は、血中(1.5-2.6 mg/ml)(4)および唾液中(110-300μg/ml) (5, 6)の生理的IgA濃度 よりも約2桁低い。血清IgG画分は、検出可能な活性を持たなかった(図15C)。HIV血清反応陰性者34人のプール血清から精製したIgAおよびIgGを用いて、基本的に同じ結果が得られた(941nM gp120切断/時/mg IgA; 同一IgG濃度においてgp120切断は検出不能)。
【0106】
アフィニティクロマトグラフィによって得た血清IgAの還元SDS電気泳動は、重鎖(60kD)および軽鎖(25kD)サブユニットを示した。唾液IgAは、これらのバンドのほか、抗分泌成分抗体によって染色されるバンド(85kD )を含んでいた。通常酵素の混入を試験するため、抗IgAカラムを用いるアフィニティクロマトグラフィによって精製した血清および唾液IgA調製品はさらに、変性溶媒(6 Mグアニジン塩酸)中FPLCゲルろ過に付した。IgAは、非共有結合およびS-Sした多量体を形成できる(7)。以前報告したとおり、ポリマー、ダイマーおよびモノマーIgAに相当するピークが明白であった(各名目分子量915 kD, 433 kDおよび153 kD)(8)これらのIgA画分のそれぞれは、アフィニティ精製した出発IgAと同一の還元SDSゲル電気泳動プロファイルを示した。モノマーIgAが、カラムから回収された血清IgAの主要な分子種であった(82%; Rt 55.2分)。唾液IgAの90%は、ダイマー(Rt 42.7 分)およびより高次の凝集体(Rt 33.7分)として溶離した。グアニジン塩酸の除去によるリフォールディングの後、カラムから回収したモノマー血清IgA種は、カラムに付したアフィニティ精製IgAと同等のgp120切断活性を示し(各々630±167および823±130 nM gp120/時/mg IgA)、非活性一定までの精製の基準を満たしている。カラムから溶出しリフォールディングしたダイマーおよび高次凝集IgAもgp120切断活性を示し、分泌IgAの主要型は触媒活性を有することが確認された。
【0107】
求核部位に共有結合することが知られている親電子性ホスホン酸ジエステル(E-ハプテン1、図16A)(9)は、唾液および血清IgAの触媒活性を阻害した(図16B)。メタロプロテアーゼ(EDTA、2mMおよび1,10-フェナントロリン、1mM)、システインプロテアーゼ(ヨードアセタミド、100μM)および酸性プロテアーゼ(ペプスタチンA、1μM)のクラス選択的阻害物質は、プールした血清および唾液IgAによるgp120の加水分解を検出可能な程度に阻害しなかった。唾液および血清IgA調製品はE-ハプテン1と、加熱(100℃、 5 min)およびSDSによる変性に安定な付加物を形成し、それらは図16Cに示す〜60 kDの強い重鎖付加物バンドおよびそれより弱い〜25kDの軽鎖付加物バンドに対応する。
【0108】
ヒト唾液IgAまたは血清IgAによるBt-BSA、Bt-FVIII C2ドメイン、Bt-TatまたはBt-sEGFRの処理は、完全長のこれらのタンパク質に対応する電気泳動バンドを、検知できる程度に減弱しなかった(図17)。これらの条件下、容易に検出できるBt-gp120の切断が観測され、このことは触媒反応はgp120選択的であることを示している。
【0109】
gp120残基421−433を含む合成ペプチドはgp120SAgに対する抗体の結合を競合的に阻害することが報告されている(10,11)。ホスホン酸ジエステルおよびビオチン基を含むgp120残基421−433の親電子性アナログE-421-433の濃度を上昇するにつれ(10-100μM)、唾液IgA(21−85%)および血清IgA(41−91%)によるBt-gp120の切断を進行的に阻害する。E-421-433の阻害効果は、無関係なコントロールプローブE-VIPよりも強かった(図18A)。同様に、E-421-433は、付加物の電気泳動評価により、コントロールE-VIPよりも優れた不可逆的IgA結合を示した(図18B)。ホスホン酸エステル基を欠くgp120ペプチド421−435を反応液中に含有すると、IgA:E-421-433付加物の形成は阻害される(図18C )。これらの観察は、421−433領域ペプチドの非共有結合による認識が観測されたgp120選択性に寄与する、IgA触媒作用の求核メカニズムを示唆する。
【0110】
切断部位を特定するため、gp120をポリクローナル唾液IgAで消化し、SDS電気泳動によって得られたgp120フラグメントをN末端アミノ酸配列決定に付した。55、39、および17kDに生成物バンド、および32kDに微弱なバンド明白であった(図19)。55kDフラグメントは、gp120のN末端に相当する配列を与えた。残りのフラグメントは、gp120残基84-88, 322-326および433-437に相当するN末端配列を与え、これらは以下のペプチド結合の切断を示す: Val83-Glu-84(gp120 C1ドメインに位置する)、Tyr321-Thr322(V3ドメイン)およびLys432-Ala433(C4ドメイン)。
【0111】
我々は、HIVストレイン97ZA009(クレードC 、ケモカイン受容体R5依存性) によるヒトPBMCの感染における抗体の効果を研究した。このウィルスストレインと触媒作用アッセイ研究に用いたリコンビナントgp120のgp120残基421−433の配列は、保存的Arg/Lys置換(KQIINMWQEVGR/KA)を除き同一である。非感染ドナーのプール血清IgAおよび唾液IgAは、各々これらの抗体調製品を使用した5回および8回のアッセイにおいて、再現性かつ用量依存性の中和活性を示した(平均半最大効果濃度(EC50)±s.e.m、血清IgA 62.0±38.3μg/ml; 唾液IgA 48.5±14.5μg/ml)。図20Aは、並行して調査した血清IgAおよび唾液IgAの中和活性を報告する(同一ウィルス調製、同一宿主PBMC調製)。IgAと違い、我々の研究室で調製した血清IgGおよび3つの市販IgG製剤(IVIGs; ガンマガードS/D、インビーガム ENおよびイントラテクト)は、検出し得る中和活性を示さなかった。期待通り、無関係なプローブE-VIPで処理したIgAは中和活性を保持したが、IgA−ウィルス混合物にE-421-433を含有すると中和活性の阻害が起こった(図20B)。唾液IgAによるウィルス中和は、HIVと比較的短時間(1時間)のインキュベーションの後再現性良く観測されたのに対し、血清IgAによる中和は、IgA−ウィルスインキュベーションを延長した場合にのみ明白であった(24時間; 図20C)。第2の一次分離HIV、92BR020(クレードB、R5依存性)もまた、図20Cにおいて使用された唾液IgA調製品によって中和された(EC50、5.0±2.1μg/ml)。
【0112】
これらの研究から、IgAクラスAbs(および以前に報告されたIgMクラスAbs、文献2)は、gp120のスーパー抗原性部位の認識によってgp120を加水分解し且つHIVを中和することが出来るが、IgGは出来ないことが明白である。以下の考察はこれらの観察を解釈するのに有用である。第一に、BCR−抗原結合はB細胞分裂を促進すると考えられている。BCRに触媒されたgp120の切断は抗原フラグメントの放出を起こし、細胞に増殖シグナルを与えない。従って、触媒活性は、細胞分裂を刺激する膜貫通シグナル伝達よりも生成物放出がより遅く起こる限りにおいて適応的に向上することができる。このシナリオにおいて、IgMs/IgAsの優れたタンパク質分解活性は、μ/α-BCRsによる膜貫通シグナル伝達がγ-BCRsに比べてより速いためであるかもしれない。第2に、BCR触媒作用自身が、増殖シグナルであるかもしれない。ペプチド結合の切断は、非共有BCR−抗原結合から得られる遥かに少ないエネルギーに比べて、大量のエネルギーを放出する(〜Δ70 kcal/モル)。そのエネルギーの一部が、シグナル変換に必要な生産的BCRコンフォメーション変移を誘導する、あるいは、脂質2重膜内のBCR拡散速度を高め、その結果BCR架橋の確率を上昇させるということは考えられ得る。第3に、BCR触媒によるgp120の切断は、BCRのFRsにおけるgp120スーパー抗原部位の相互作用に起因するB細胞アポトーシス効果を軽減するかもしれない(抗原フラグメントの放出によってアポトーシスシグナル変換を回避することによって)。検知できるほどgp120と結合しないVH2+ Abによる、容易に検出可能な触媒的gp120切断が明白であり(2)、HIV感染後のある種の非VH3ファミリーの合成亢進が記述されている(12)。この理由から、gp120スーパー抗原部位に対して特異的なタンパク質分解抗体の合成は、その部位に結合するのみの抗体ほどには制限されていないのかもしれない。
【0113】
<E-421-433免疫によって誘導されたAbs>:以前我々は、親電子基をもたないペプチド421-436のキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)コンジュゲートが、完全長gp120を認識する抗体を誘導することを報告した(13)。ここで、グループに分けたマウスは、鼻経路によりアジュバントLTmまたはコレラトキシンサブユニットB/IL12中のKLHコンジュゲートしたE-421-433で免疫された。LTmは、強力な粘膜Ab応答を刺激することが知られている易熱性大腸菌エンテロトキシンのR192G変異体である(14);クレメンツ博士提供。この変異は、Gsαを介したシグナル変換と相互作用する能力を破壊し、タンパク質を無毒化する。1モルの免疫原中のKLHにつき1725モルのE-421-433が存在した。以下のアッセイは、免疫したマウスから採取した血清、唾液または膣液を用いて行った: (a) ELISAによってE-421-433結合; (b) 電気泳動によってgp120加水分解; および(c) HIVストレインZA009の中和(PBMC宿主)。重要なことに、これらのアッセイは異なるAb部分集団の活性を反映するかもしれない。結合アッセイは、中和活性とは無関係にペプチドアナログ結合体を検出するし、ウィルス(3量体)gp120に特異的な触媒または結合体を検出しないかもしれない。触媒作用アッセイは、中和活性の如何に関らずモノマーgp120を加水分解する触媒を検出し、ウィルスgp120に特異的な触媒を検出しないかもしれない。中和アッセイは、ウィルスgp120を認識し且つウィルス感染に影響を与える結合体および触媒のみを検出する。
【0114】
経鼻免疫は、血清から精製したIgMクラスAbsのgp120加水分解の上昇を起こす。さらに、唾液および膣sIgAの強度に上昇した触媒作用が明白であった(対応する前免疫Absと比較して; 図21および22A)。しかし、免疫の好ましい効果は、一般化されるものではなく、血清IgAおよびIgGによるgp120加水分解は免疫前に比べて低下した。Ribiアジュバント中での全身免疫は、血液から精製したAbsの触媒活性の低下(IgMを含めて)および膣sIgAの加水分解活性のわずかな上昇を起こした(図23A)。E-421-433結合Ab応答は、全てのタイプの免疫において、血清、唾液およびCVLF中に観測された(図22Bおよび23B)。
【0115】
経鼻免疫後のIgMsの触媒活性の上昇は、強度に上昇したHIV中和活性を伴っていた(図22C)。血清IgAおよびIgGの中和活性は、基本的に無変化であった(図22D)。
【0116】
これらの結果より、KLHにコンジュゲートしたE-421-433による経鼻免疫は、好ましい触媒IgMおよびsIgA応答を誘導するようである。小さい、フレキシブルなペプチドは、それらの微細環境(ペプチド免疫原中のキャリアタンパク質およびT細胞エピトープとの接触を含む)に強く依存したコンフォメーションを採る。免疫したマウス由来のIgMsを用いて得られた中和データから、KLHコンジュゲート中の少なくとも一部のペプチド分子は、ウィルスgp120中のこの領域の天然コンフォメーションを模倣する中和上有用な421-433コンフォメーションを採らなくてはならない。
【0117】
免疫経路の好ましい効果を考えると、経鼻免疫は、M細胞による樹状細胞への抗原輸送と、それに続く鼻咽頭関連リンパ組織(NALT)におけるT細胞抗原提示およびT依存性B細胞分化を起こす。B細胞はリンパ管を経て漏出し、最終的には生殖器官{せいしょく きかん}を含む種々のリンパ組織およびエフェクター部位に移動する。IgM受容体を発現するB細胞は、上皮由来サイトカイン類の影響下粘膜内で、IgA発現細胞へのクラススイッチ組み換え(CSR)を受けることが出来る。我々のsIgAの結果から、粘膜組織で起こるCSRは、gp120加水分解活性の保持および向上を支持するようである。血清IgAおよびIgGのデータから、古典的胚中心反応の間に全身性リンパ組織で起こるCSRは、触媒活性の向上をもたらさないようである。データは、B細胞の異なった部分集団が、希望の中和Absの合成を担っているかもしれない可能性を提起する。例えば、B-1細胞およびB-2細胞は、おそらく細胞を刺激しているリガンド(例えばサイトカイン類)の濃度が異なる局所環境の影響により、異なる抗原認識能を有するAbsを産生する事が知られている。理想的なHIVワクチンは、望ましくは、gp120加水分解およびHIV中和活性を有する分泌性および全身性Abの両方の合成を刺激すべきである。この実施例で述べた免疫スキームの明白な限界にもかかわらず、これらの研究は依然として、gp120の保存エピトープに対する防御性抗体を誘導するペプチド性粘膜ワクチン開発が可能であることを支持する初めての強固な証拠である。我々は、E-421-433の限界は実施例2で述べたデュアルエピトープ構築物によって克服されると見ている。デュアルエピトープ構築物は、免疫応答を全てのクラスのAbs、すなわちIgM、IgGおよびIgAクラスに拡張させる古典的胚中心反応を刺激するように設計される。以下はAb応答の質の改善を助けると考えられる免疫原の更なる例である。
【0118】
<多量体スーパー抗原性ペプチド構築物>:BCR架橋は、強力なAb応答の誘導に必須であると考えられている。多量体抗原は、B細胞膜におけるBCR架橋を効果的に起こし、Ab応答の向上をもたらす。これは、通常抗原とスーパー抗原の両方に当てはまる(15)。防御Absの合成を向上することが期待できる多量体gp120ペプチド免疫原の例は、(T-E-416-433)3である。この構築物においてTは、実施例2で述べたTエピトープペプチドのような、万能T細胞エピトープを指す。(T-E-416-433)3 中のE-416-433ユニットは、以前の我々の出版物に記述されているE-421-433と同様の方法、、すなわち、保護T-416-431とアミノ(4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジフェニルエステル(Lys432-Ala433模倣体)の縮合後、トリフルオロ酢酸で脱保護して合成する(16)。単量体T-E-416-433は、市販のマリチプル抗原ペプチドコアとビカルボン酸リンカーを用いてコンジュゲートし、3量体T-E-416-433を与える。残基416-419をペプチド内に含むと、らせんコンフォメーションにフォールディングする傾向が高まる(17-19)。ペプチド製剤はさらに、α-へリックスを形成させるために1:3モル比の負荷電および中性リン脂質から成るエマルジョン(例えば、ホスファチジルグリセロール/ホスファチジルコリン)中に組み込んでよい。ペプチドのヘリシティを高めるために、金属依存性へリックス核形成配列、例えばDKDGDGYISAAE(カルモジュリンのCa結合ループ由来)をN末端に含むことができる。ランタニド系イオンと配位するとAAE領域は非常に安定なアルファへリックスコンフォメーションを形成し(4-65℃で完全にヘリカル)、そのC末端に連結したペプチドセグメントのためのα-へリックス核形成部位を供する(20)。
【0119】
<免疫、アジュバントおよびAb活性のバリデーション>:候補HIVワクチン構築物のバリデーションは、基本的に実施例2と同様にして行う。これは、適切な量の免疫原構築物(10-200μgペプチド当量/kg)を、適切な間隔(例えば、2-4週)で種々の経路(経鼻、経膣、経口、筋肉内、腹腔内、静脈内)から実験動物(マウス、アカゲザル)に投与することを伴う。メモリーB細胞応答を刺激するために繰り返し免疫を実施する。実施例2と同様、効率的なB細胞成熟とAbクラススイッチを誘導するため、免疫原とともに適切なアジュバントを投与する。免疫原性の試験は、血清、唾液および膣洗浄液から精製したAbs(IgM、IgG、IgA、sIgA)による抗原結合(免疫原、gp120、E-gp120、完全HIV粒子)の測定、Absによるgp120の触媒的加水分解の試験、およびPBMC宿主を用いた組織培養中での多様なHIVストレインの中和の試験を含む。Ab効力のイン・ビボ試験は、実施例2と同様、アカゲザルの候補ワクチンによる免疫、適切なSHIVストレインの接種、および血液細胞とリンパ組織におけるHIV感染の測定によって実施される。
【0120】
(実施例3の参照文献)
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3. Planque, S., Mitsuda, Y., Taguchi, H., Salas, M., M-K, M., Nishiyama, Y., R, K., Okhuysen, P., M, E., Hunter, R., Sheppard, H. W., Hanson, C. V., and Paul, S. (2007) Characterization of gp120 hydrolysis by IgA antibodies from humans without HIV infection. AIDS Research and Human Retroviruses 23, in press
4. Frazer JK, and JD, C. (1999) Immunoglobulins: Structure and Function. In: Fundamental Immunology, 4th edition. (Paul WE, ed ) Lippincott-raven, Philadelphia, , pp. 37-74
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【0121】
(実施例4)
ポリクローナルB細胞活性化物質による抗体合成の刺激
抗原受容体(BCR、シグナル変換分子と複合体化した表面イムノグロブリン)への抗原結合は、B細胞クローン選択への主要な経路であり、最終的には抗原に特異的なAbsの合成に至る。他のリガンド、例えばTLRsはB細胞受容体と相互作用し、これらの受容体を高レベルに発現するB細胞部分集団のポリクローナル活性化を刺激する。gp120のスーパー抗原に対する中和タンパク質分解抗体を合成する能力は、前免疫B細胞の性質である(実施例3)。前免疫Absの一部分だけが、望みのgp120加水分解およびHIV中和活性を発現することは、前免疫B細胞の個々の部分集団が望むAbを色々なレベルで合成することを示す。本発明の一実施様態は、それがgp120に構造的に関連したリガンドによって達成されるかどうかに関係なく、B細胞のポリクローナル刺激によって望むAbsの合成を刺激することから成る。
【0122】
2タイプのリガンドが、本例においてHIV中和Absの合成上昇を達成すると考えられる: (a)BCRを介して作用するgp120以外のスーパー抗原リガンド; および(b)BCR以外の受容体例えば、TLRsおよびサイトカイン受容体、を介して作用し、BCR刺激リガンドの非存在下でB細胞を刺激するアジュバントクラスリガンド。
【0123】
<スーパー抗原刺激物質(SAgs)> 既知のB細胞SAg(例えば、スタフィロコッカスのプロテインA、ペプトストレポトコッカスのプロテインL)は、gp120と認知可能な配列相同性を示さない。しかし、gp120のSAg部位と同様に、プロテインAのSAg部位はVH3+ファミリーのイムノグロブリン(Igs)によって選択的に認識され、両タンパク質のSAg部位の認識はフレームワーク領域(FRs)における接触によって支配される。ここで、我々は、プロテインAの投与がgp120を認識する抗体の産生を刺激するという予期しない観測を述べる。これは、gp120SAgに対する防御Absの適応改良の障壁を回避する新規方法を供するので重要である。例えば、プロテインAのヒトへの投与は、前免疫レパートリー中に見出されるgp120に対する防御抗体の合成を亢進し、それによりHIV感染に対する免疫学的抵抗性のレベルを増すと考えられる。
【0124】
(a)プロテインA投与によって惹起したIgM抗体によるgp120結合.プロテインAをアジュバントを使用することなく第0, 3, 6, 9, 20および30日に腹腔内投与するとIgM画分によるgp120結合の上昇を起こす(図24A)。前免疫IgMは、微弱だが有意なgp120結合シグナルを示した(図2A、第0日)。RIBIと混合したプロテインAの投与は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で投与したプロテインAと同等のgp120結合IgM応答を起こした。IgG画分によるgp120結合は、プロテインA投与後も検出不能のままであった(図24B)。プロテインAに対するIgM応答は用量依存性であり、最大gp120結合IgMは1mg/注射によって観測され、20μg プロテインA /注射においては、ほとんどまたは全く応答がなかった(図24B中矢印で示したスケジュールに従って投与した)。gp120結合IgMの応答は、プロテインAが静脈内経路によって投与された時にも観測された。プロテインAのヨウ素化は、そのFc結合活性を無効にする(1)。ヨウ素化プロテインA(プロテインA; 我々の以前の研究と同様にして調製; 文献5)の投与もgp120結合IgMの上昇を起こし、タンパク質のFc結合活性は観測された免疫応答と無関係であった。IgM画分によるプロテインA結合は、初期の時点(3日)では前免疫IgMレベル以下に減少する傾向があり、第6日までに前免疫レベルに回復した。
【0125】
プロテインAにより誘導したIgMsによる固定化gp120の結合は、可溶性gp120によってほぼ完全に阻害され(図25A)、飽和可能な反応であることを示している。結合は、過剰の無関係なタンパク質(1%スキムミルク)存在下に観測されたことは、IgMsによるgp120の認識が特異的現象であることを示している。SAg gp120421-433の認識は、そのペプチドの親電子性ホスホン酸エステルアナログ(E-421-433; このプローブの合成と抗体反応性は文献2,3および前実施例中に述べられている)を使用する電気泳動アッセイによって調べられた。アッセイは、抗原の非共有結合認識とそれに続くAb求核部位における親電子体の共有結合に依拠する。図25Bに示す通り、E-421-433はプロテインAの投与によって誘導されたIgMsと、並べ替え421-433配列を含む(ES-421-433; 図25C)またはペプチド配列を含まない(E-ハプテン; E-ハプテンの構造、文献3を参照)コントロール親電子性プローブを超えるレベルで複合体を形成した。これらの観察から、プロテインAは、gp120のSAg部位に対するAbsの合成を刺激すると結論できよう。
【0126】
(b)スタフィロコッカスプロテインAとHIV gp120のB細胞スーパー抗原性に対する共通の構造的根拠.結晶学的研究は、プロテインAのSAg部位が、ドメインDのへリックスIIおよびIII中に位置し、SAg部位は以下のVHドメインフレームワーク残基における接触を確立すことによってAbsと結合する:Gly-H15, Ser-H17, Arg-H19, Lys-H57, Tyr-H59, Lys-H64, Gly-H65, Arg-H66, Thr-H68, Ser-H70, Gln-H81, Asn-H82a および Ser-H82b (PDB, 1DEE; (4))。我々のグループ(5,6)および他の研究者(7,8)による研究は、421-433 gp120エピトープはこのタンパク質の発現するB細胞SAg部位の必須成分であることを示した。プロテインA結合に重要なVHフレームワークの6残基(上の太字)は、gp120SAg部位へのAb結合に必須であると推定されている(図26A中赤色で示した; 9)。VHの6残基と相互作用する関連プロテインA残基は、へリックスII中に固まっている(Gln-32, Ser-33, Asp-37)。円二色性およびNMR研究は、gp120421-433領域が2つの異なる2次構造、β-シートおよびα-へリックスをとることができることを明らかにし、α-へリックス型がCD4結合状態において主要であることが示唆されている(10-12)。α-へリックス型gp120421-433 は、プロテインAのSAg部位のへリックスII上に重ね合わせることが可能である(α炭素の標準偏差、0.88Å; 図26B)。重ね合わせモデルにおいて、gp120421-433中のGln-8およびGlu-9の側鎖は、Absとの接触を確立するのに重要なプロテインAへリックスII残基の近傍に位置し(Gln32とSer33)、gp120421-433のAla13カルボニルは、プロテインAへリックスIIのAsp37β-カルボニルの近傍に位置する。これらの考察は、プロテインAとgp120のSAg決定基は共通の構造要素を含むことを示唆する。
【0127】
(c)E-プロテインA刺激物質:プロテインAの様に、プロテインAの親電子性誘導体はgp120認識Absを誘導すると考えられる。gp120の親電子性誘導体と同様、プロテインAの親電子性誘導体は、高求核性のAbsの合成を誘導し、それによってAbsにgp120に共有結合性をもって結合する、およびgp120の加水分解を触媒する能力を付与すると考えられる。BCRと多価相互作用できる繰り返しエピトープの存在は、B細胞の生産的刺激を促進するかもしれない。
【0128】
E-プロテインAと親電子基Eを欠くコントロールプロテインA(図27)が、刺激物質として利用される。E-プロテインAの調製は、例えば、E-gp120 およびE-421-433に用いられた方法(3,13)、すなわちホスホン酸エステル含有前駆体によるLys側鎖アミノ基のアシル化によって行われる。ホスホン酸エステルの導入(mol ホスホン酸エステル/mol タンパク質)は、フルオレスカミンによる残存アミノ基の定量によって決定される。適切な出発物質は、リコンビナントプロテインA(大腸菌発現)である。プロテインAのSAg部位を含むより小さなフラグメントおよびこれらのフラグメントの改変多量体も使用できる。E-プロテインAは、各5匹のBALB/cマウスからなるグループで免疫刺激物質として調べた。Ab応答の質と大きさに影響しIgMからIgAおよびIgGへのクラススイッチを誘導するアジュバントが試験された(14)。プロテインA投与に続くgp120結合IgMの誘導には、アジュバントは必要ではなかった。例えば、アジュバント/共刺激物質であるLPS、CD40L、IL4、C3dg、およびIL12は、T非依存性的抗原に対する免疫応答を高め、クラススイッチの誘導を助けるのに有用であり得る。E-プロテインAの投与は、例えば第0, 2, 5, 10 および 20 日に実施する(例えば、50 および100μg 用量で)。
【0129】
プロテインAおよびE-プロテインAは、gp120のSAg部位に対する防御Ab応答の装備に対する初期障壁の克服を補助する免疫刺激物質と見なすことが出来る。実験動物に対するE-プロテインAまたはプロテインAの投与は、抗gp120Absの合成を増幅しそれらのHIV特異性を向上させるために、実施例I、IIおよびIIIで述べた免疫原と組み合わせることが出来る。例えば、実施例IIのデュアルエピトープポリペプチド構築物は、Ab応答の強度と特異性を向上するためにE-プロテインAと共投与する、若しくは、初期E-プロテインA投与の後に投与することが出来る。
【0130】
候補免疫刺激物質のバリデーションは、基本的に実施例IIと同様に、種々の生物学的液体中に存在するAbsによるgp120およびHIV結合の試験、Absによるgp120の触媒的加水分解の試験、およびPBMC宿主を用いた組織培養における多様なHIVストレインの中和試験によって行う。免疫刺激物質の効力のイン・ビボ試験は、実施例IIと同様、SHIVを接種したアカゲザルを用いて実施することが出来る。
【0131】
<アジュバントクラスリガンド> BCR非依存的なB細胞の直接ポリクローナル活性化は、細胞に元来備わるgp120のSAg部位に対する防御Abを合成する能力を刺激すると考えられる。このタイプのポリクローナルB細胞活性化の古典的な例は、一般にアジュバントと分類される物質によってによって供される。例えば、CpGによる脾臓細胞の刺激は、IgM産生細胞を5倍増加させる(15)。これらの物質は、均一な組成でも微生物産物の不雑な混合物であってもよい。易熱性大腸菌エンテロトキシンやコレラトキシンのようなある種の細菌毒素、およびそれらの低毒性アナログは、ポリクローナルB細胞活性化物質である。最近の研究は、Toll様受容体(TLRs)が、生来性免疫と適応性免疫との間の決定的なリンクであることを示した。良く特徴付けられた合成TLRリガンドは、ワクチンアジュバントとして特定されてきた。例は、イミダゾキノリン類(TLR7アゴニスト)、CpGオリゴデオキシヌクレオチド類 (TLR9アゴニスト)およびリピドAアナログ(TLR4アゴニスト)。これらの化合物は、B細胞および形質細胞様樹状細胞を直接活性化し、それによってB細胞増殖およびプロフェッショナル抗原提示細胞の成熟/活性化を促進する。
【0132】
非修飾ポリクローナルB細胞刺激物質に加えて、これらの物質の親電子性アナログ(E-刺激物質)は、本発明において抗HIV防御Absの合成を増幅するのに有用であると考えられる。E-刺激物質は、B細胞上に発現するそれらの受容体と不可逆的に結合すると考えられる。これは、種々の非酵素受容体タンパク質が求核性部位を発現することが出来るという我々の観測に基づく(16)。不可逆的結合は、受容体からのリガンドの解離を不可能にする。これは、それらの可逆結合対照よりも優れた生物学的効力をE-刺激物質に付与する。E-刺激物質は、HIVに対する優れた防御応答を得るために、単独で、若しくは実施例I、II、およびIIIに述べた免疫原と組み合わせて生物に投与することが出来る。E-刺激物質の例を以下に挙げる。
【0133】
(a)E-LTm:LTmは、強力な粘膜Ab応答を刺激することが知られている易熱性大腸菌エンテロトキシンのR192G変異体である(17)。この変異は、Gsαを介したシグナル変換と相互作用する能力を破壊し、タンパク質を無毒化する。親電子基の導入は、E-gp120と同じ方法(13)、すなわち、スベロイルアミノ(4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジフェニルのN-ヒドロキシコハク酸イミドエステルによるLTmのアシル化によって行うことが出来る。生成したE-LTmは、適切なクロマトグラフィ法によって精製することが出来る。
【0134】
(b)E-PWM:ヤマゴボウマイトジェン(PWM)は、フィトラッカ・アメリカーナ(アメリカヤマゴボウ)の根から抽出される、マイトジェン活性を有するレクチンである。PWMは、ヒトリンパ球においてポリクローナルイムノグロブリン産生を誘導する。PWMへの親電子基の導入は、E-gp120と同じ方法で行うことが出来る。
【0135】
(c)E-LPS:LPSは、T依存性および非依存性応答を刺激するリピドAアナログである。大腸菌Re LPS由来のE-LPS例を図28Aに示す。LPSへの親電子基の導入は、LPSとアミノ(4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジフェニルとの縮合によって行うことが出来る。
【0136】
(d)E-CpG:TLR9アゴニストである、CpG ODN2006由来のE-CpGの例を図28Bに示す。CpGへの親電子基の導入は、アミノメチルソラレンの光活性化共結合付加後、スベロイルアミノ(4-アミジノフェニル)メタンホスホン酸ジニトロフェニルのN-ヒドロキシコハク酸イミドエステルでアシル化することによって行うことが出来る。
【0137】
前述の刺激物質は、抗gp120Absの合成増幅とHIV特異性向上のために、単独で、若しくは実施例I、II、およびIIIに述べた免疫原とともに生物に投与することが出来る。例えば、実施例IIのデュアルエピトープポリペプチド構築物は、Ab応答の強度と特異性を向上させるために、E-LTmと共に、若しくはE-LTmの先行投与の後に投与することが出来る。
【0138】
候補免疫刺激物質のバリデーションは、基本的に実施例IIと同様に、種々の生物学的液体中に存在するAbsによるgp120およびHIV結合の試験、Absによるgp120の触媒的加水分解の試験、およびPBMC宿主を用いた組織培養における多様なHIVストレインの中和試験によって行う。刺激物質の効力のイン・ビボ試験は、実施例IIと同様、SHIVを接種したアカゲザルを用いて実施することが出来る。
【0139】
(実施例 4の参照文献)
1. Sasso, E. H., Silverman, G. J., and Mannik, M. (1989) Human IgM molecules that bind staphylococcal protein A contain VHIII H chains. J Immunol 142, 2778-2783
2. Taguchi, H., Burr, G., Karle, S., Planque, S., Zhou, Y. X., Paul, S., and Nishiyama, Y. (2002) A mechanism-based probe for gp120-Hydrolyzing antibodies. Bioorg Med Chem Lett 12, 3167-3170
3. Planque, S., Taguchi, H., Burr, G., Bhatia, G., Karle, S., Zhou, Y. X., Nishiyama, Y., and Paul, S. (2003) Broadly distributed chemical reactivity of natural antibodies expressed in coordination with specific antigen binding activity. J Biol Chem 278, 20436-20443
4. Graille, M., Stura, E. A., Corper, A. L., Sutton, B. J., Taussig, M. J., Charbonnier, J. B., and Silverman, G. J. (2000) Crystal structure of a Staphylococcus aureus protein A domain complexed with the Fab fragment of a human IgM antibody: structural basis for recognition of B-cell receptors and superantigen activity. Proc Natl Acad Sci U S A 97, 5399-5404
5. Paul, S., Karle, S., Planque, S., Taguchi, H., Salas, M., Nishiyama, Y., Handy, B., Hunter, R., Edmundson, A., and Hanson, C. (2004) Naturally occurring proteolytic antibodies: selective immunoglobulin M-catalyzed hydrolysis of HIV gp120. J Biol Chem 279, 39611-39619
6. Nishiyama, Y., Karle, S., Planque, S., Taguchi, H., and Paul, S. (2007) Antibodies to the superantigenic site of HIV-1 gp120: hydrolytic and binding activities of the light chain subunit. Mol Immunol 44, 2707-2718
7. Goodglick, L., Zevit, N., Neshat, M. S., and Braun, J. (1995) Mapping the Ig superantigen-binding site of HIV-1 gp120. J Immunol 155, 5151-5159
8. Karray, S., and Zouali, M. (1997) Identification of the B cell superantigen-binding site of HIV-1 gp120. Proc Natl Acad Sci U S A 94, 1356-1360
9. Karray, S., Juompan, L., Maroun, R. C., Isenberg, D., Silverman, G. J., and Zouali, M. (1998) Structural basis of the gp120 superantigen-binding site on human immunoglobulins. J Immunol 161, 6681-6688
10. Reed, J., and Kinzel, V. (1991) A conformational switch is associated with receptor affinity in peptides derived from the CD4-binding domain of gp120 from HIV I. Biochemistry 30, 4521-4528
11. Reed, J., and Kinzel, V. (1993) Primary structure elements responsible for the conformational switch in the envelope glycoprotein gp120 from human immunodeficiency virus type 1: LPCR is a motif governing folding. Proc Natl Acad Sci U S A 90, 6761-6765
12. Graf von Stosch, A., Kinzel, V., Pipkorn, R., and Reed, J. (1995) Investigation of the structural components governing the polarity-dependent refolding of a CD4-binding peptide from gp120. J Mol Biol 250, 507-513
13. Paul, S., Planque, S., Zhou, Y. X., Taguchi, H., Bhatia, G., Karle, S., Hanson, C., and Nishiyama, Y. (2003) Specific HIV gp120-cleaving antibodies induced by covalently reactive analog of gp120. J Biol Chem 278, 20429-20435
14. Hunter, R. L. (2002) Overview of vaccine adjuvants: present and future. Vaccine 20 Suppl 3, S7-12
15. Klinman, D. M., Yi, A. K., Beaucage, S. L., Conover, J., and Krieg, A. M. (1996) CpG motifs present in bacteria DNA rapidly induce lymphocytes to secrete interleukin 6, interleukin 12, and interferon gamma. Proc Natl Acad Sci U S A 93, 2879-2883
16. Nishiyama, Y., Mitsuda, Y., Taguchi, H., Planque, S., Hara, M., Karle, S., Hanson, C. V., Uda, T., and Paul, S. (2005) Broadly distributed nucleophilic reactivity of proteins coordinated with specific ligand binding activity. J Mol Recognit 18, 295-306
17. Dickinson, B. L., and Clements, J. D. (1995) Dissociation of Escherichia coli heat-labile enterotoxin adjuvanticity from ADP-ribosyltransferase activity. Infect Immun 63, 1617-1623
【0140】
(実施例5)
gp120に対する均質なバイナリエピトープ特異的抗体の分離
強力で異クレードHIV中和活性を有するAbsは、受動的免疫治療薬としてHIV感染者に投与することが出来る。さらに、性交前の膣または直腸におけるAbsの局所適用は、HIVの伝播阻止に応用することが出来る。実施例Iで述べたバイナリエピトープ特異的Absは、多様なHIVストレインを中和する能力を示し、臨床使用の可能性を有するプロトタイプ薬である。本実施例は、実施例IIのデュアルエピトープポリペプチドアナログを高効力HIV中和Absを特定する手段として使用した多数のAbsの選択およびスクリーニングについて述べる。
【0141】
Absのソース:本発明の一実施例においては、Abのソースは、実施例IおよびIIで述べたポリペプチド免疫原で免疫された実験動物またはヒトである。これらの免疫原は、相補性決定領域(CDRs)によって認識され得る少なくとも一つの他のエピトープとともに、主としてAbフレームワーク(FRs)において認識されるスーパー抗原(SAg)エピトープを含む。実施例IおよびIIにおいて、免疫手順は、バイナリエピトープ特異性を有する抗体の合成を強力に刺激すると考えられる。当該技術分野において既知で、以下に簡単に記した方法を使用して、バイナリエピトープ特異性とHIV中和活性を具えたAbsの均質な調製品が、免疫された実験動物またはヒト由来のB細胞を用いて容易に分離できる。
【0142】
<ファージAbライブラリーからの選択> 文献(1)は、ヒトおよびマウスの発現Abレパートリーからクローン化した単鎖Fv(scFv)構築物を発現するファージライブラリーの調製とキャラクタリゼーションについて述べる。scFv構築物のcDNAは、B細胞由来のAb mRNAの逆転写酵素-ポリメラーゼ反応による増幅によって得られる。scFv構築物は、短いフレキシブルなペプチドリンカーによって連結されたAbのVLおよびVHドメインからなる。非触媒Absと同様、ペプチダーゼAbsは、VLおよびVHドメインの残基における接触によって媒介される高特異性で抗原に結合することが出来る(2)。他のAbフラグメントレパートリー、例えば軽鎖サブユニットレパートリーも同様の方法で作成できる(1)。108-109 ものクローンから成るscFvレパートリーを作成し、ファージ粒子の表面に提示することが可能で、リボソーム提示ライブラリーはさらに多くのAbフラグメントの提示を可能にする。バクテリアおよびイーストディスプレイの様な他の提示法も、望むAbsを特定するために適用することが出来る。
【0143】
ファージ提示レパートリーが構築されたら、ファージ粒子をデュアルエピトープポリペプチド構築物と接触させ、バイナリエピトープ特異性を有するファージscFv構築物を選択し、分離する。デュアルエピトープポリペプチド選択試薬は、例えば、実施例IおよびIIで述べた(301-311)-GMB-GGS-(E-421-433)またはその他のデュアルエピトープポリペプチドであってよい。選択試薬への親電子性ホスホン酸エステル基の含有は必須ではなく、共有結合性をもってgp120と結合する、またはgp120の加水分解を触媒するscFvの分離を可能にする。ファージ選別の方法は、我々の出版物中で述べられているものと同様である(3,4)。例えば、我々は、実施例Iで述べたE-421-433および完全長E-gp120を用いて、gp120特異的触媒を分離した。選択試薬は、エピトープ-パラトープ接触面で起こる伝統的非共有結合と共有結合形成反応を合わせることによって特異的触媒を捕捉する。E-421-433を使用して、我々はヒトファージライブラリーから、gp120を加水分解する特異的Ab軽鎖フラグメントを分離した(4)。ビオチン基が、ファージ選別試薬に含まれる。ファージ−プローブ複合体はストレプトアビジンカラム上に捕捉され、ビオチンとホスホン酸エステル団の間に位置するS-S結合を切断することにより溶出させる。scFvまたは他の抗体フラグメントの精製品は、メタルアフィニティクロマトグラフィによって得られる。触媒アッセイは、gp120、完全HIV粒子、または検出用蛍光基を含むgp120合成ペプチドを含む種々の基質を利用できる。特異性は、並行して試験される無関係なポリペプチド(アルブミン、EGFR細胞外ドメイン)の切断が無い事によって確認される。これらの方法によって分離されたgp120を加水分解する軽鎖の公開された例において、その軽鎖は、E-421-433に共有結合する能力を示した。親電子性ホスホン酸エステル基を欠く合成421−436ペプチドはE-421-433の共有結合を阻害し、このことは触媒求核基が非共有結合認識部位近傍に位置することを示唆している。gp120を加水分解するscFv構築物は、既報のヒトscFvライブラリーから(1)、ファージ選別試薬として完全長E-gp120を用いて分離された。この場合、抗ビオチンAbがE-gp120と複合体化したファージの捕捉に用いられ、低pH溶出ステップによってファージを溶出した。結合ファージ画分から得られた24の精製scFvフラグメントは、電気泳動によりビオチン化gp120の切断についてスクリーニングした。8クローンの触媒scFvが特定された(国際特許申請番号PCT/US2004/009398および公開番号WO2004/087735)。
【0144】
ファージライブラリーからバイナリエピトープ特異的Abフラグメントが得られたら 、標準的なAb改変法によって完全長Absを得るために、それらを適切なAb定常ドメインを発現するベクターに移すことが出来る(5)。完全長のバイナリエピトープ特異的Absは、例えばIgG、IgAまたはIgMのどの望みのクラスでもよい。ベクターは、例えばロンザ社から市販されている。ベクターは、外来Vドメインの挿入のための制限部位に挟まれたヒトAb定常ドメインを含む。定常ドメインは、エフェクター機能、例えば補体固定、Ab依存細胞毒性および抗原提示細胞上に発現したFc受容体に結合する能力をAbsにもたらす。これらの方法によって治療グレードのAbsを得ることの実現可能性は、免疫していないヒトから調製したファージライブラリーを使用した腫瘍壊死因子に対するヒトscFv構築物の開発によって示される。完全長IgGとして再クローン化したこの構築物は、関節リウマチの治療向けに最近認可された(6)。
【0145】
<B細胞由来モノクローナルAbs> 完全長Abは、生物、例えば、実施例IおよびIIのデュアルエピトープポリペプチド構築物で免疫したヒトのB細胞から直接クローン化できる。例えば、Absは、デュアルエピトープ構築物にバイナリ結合する細胞を特定するリンパ球選別技法を用いて得られる。リンパ球は、末梢血球または粘膜組織、例えば扁桃腺または腸管関連リンパ組織(他の理由による扁桃腺除去または解剖死体から)から得ることができる。末梢血は、確実な細胞生存性と容易な入手の利点を供する。粘膜Bリンパ球は、再循環および遠隔部位への移動を経る。例えば、経鼻免疫は、血中および膣を含む遠隔粘膜部位に容易に検出可能なsIgA/IgAを誘導する(7,8)。血液は、粘膜組織から再循環するリンパ球の少なくともー部分集団を含む可能性が高い。提案されたB細胞選別法は、望むAbsを産生する希少なBリンパ球を捉えることが出来るので、血清中に望むバイナリエピトープ特異的Absを発現するよく特徴付けられたドナーからの血液は、モノクローナルAbsのソースとして使用できる。
【0146】
一例として、B細胞は、末梢血(200ml)からフィコール−ハイパック分画とマグネティックビーズ(B細胞分離キット、ミルテニーバイオテク社)上の陰性選択手法によって分離する。望みのB細胞を分離するために、調製物をデュアルエピトープ選択試薬、例えばビオチン化(301-311)-GMB-GGS-(E-421-433)または実施例IおよびIIで述べた他のデュアルエピトープポリペプチドとインキュベートし(60分)、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼ染色をフローサイトメトリー分析する。無関係な親電子性ペプチドプローブ(例えばE-VIP)は、背景反応性のレベルを定義するために用いられる。デュアルエピトープ選択試薬によって最強の染色を示した細胞は(染色細胞の上位1%; 〜103 細胞)、モノクローナルAb産生のためにフローサイトメトリーにより分取する。フロー分取の代替法は、ストレプトアビジンでコートされたマグネティックビーズの使用であるが、この手法は最大SAg反応性をもった細胞の特定の制御がしにくい。続いて細胞は、最近報告された改良EBV形質転換法(9)によって不死化させる。簡単に述べると、細胞を、96穴プレートに分配し(例えば、10細胞/ウェル; 500 ウェル)、10% Ig除去FCS中放射線照射フィーダーPBMCs、サイクロスポリンAおよびCpG2006の存在下エプスタイン・バーウイルスにより形質転換する(EBV、感染B95 細胞の30%上澄)。2−4週内に、上澄は望むAbsの産生についてスクリーニングできる。50%−60%のウェルのみが生育を示し、ウェルがモノクローナル細胞を含む確立が妥当であることを保障する。発現レベルは、ドットブロット分析により12μg Ig/ml以下である。スクリーニングは、例えば、上澄から固定化抗IgMカラムで精製したIgMを使用して行うことができる。精製IgMをBt-gp120とインキュベートし、 切断反応の検出のためにSDS電気泳動に付す。EBVで形質転換した細胞はAb産生を失うことがある(10)ので、興味あるバイナリエピトープ特異的AbsのVドメイン遺伝子は、逆転写酵素−PCR反応(RT-PCR)を使用して救済し、Absの安定ソースを供するため適切な哺乳類発現ベクターにクローン化する。
【0147】
<改変によるAbsの改良> Abの結合親和性、触媒活性およびHIV中和活性を向上させるために、種々のタンパク質改変方法がある。これらは、文献中詳細に記述されており(例えば、国際特許出願番号PCT/US2004/009398および公開番号WO2004/087735)、バイナリエピトープ特異性Absの機能特性を改善するために必要に応じて応用できる。例えば、HIV-1認識の結合力向上は、scFvの多量体を形成することにより得られる。4価抗体フラグメントは、scFv構築物のC末端にGNC4タンパク質由来の33アミノ酸の自己凝集ペプチドを置くことによって創出できる(11)。リンカーペプチドの長さと組成は、scFv構築物中のVL-VH接触面の対合を改善するために変えることができる。リンカー方法論は、二重特異性抗体、すなわち、異なる抗原特異性をもつ2つのscFv成分からなる抗体の創生にも応用できる。この例において、ゴールは2つの異なる抗原を標的とすることである。例えば、トランスフェリン受容体とCD3を標的とする二重特異性構築物は、CD3+T細胞にトランスフェリン受容体を発現している細胞を溶解させることが示される。改善は、変異原性プライマーを用いてCDRsにランダム変異を導入した後、バイナリエピトープ特異性を備えた最良のAbsを特定するためにファージ選択することによっても達成できる。代わりに、好ましい変異は、特に抗原−抗体複合体についての構造情報があるなら、結合および触媒活性を向上させる論理的根拠に基づいてVドメイン中に導入することができる。例えば、変異生成に適した候補アミノ酸は分子モデリングまたはX線結晶学情報によって特定できる。抗体Vドメインの分子モデリングは、統合したホモロジーおよび第1原理アルゴリズムを用いて実施し、またペプチド骨格トポグラフィーの追跡に強力な予測値を備えたコンピュータプログラムがある。
【0148】
(実施例5の参照論文)
1. Paul, S., Tramontano, A., Gololobov, G., Zhou, Y. X., Taguchi, H., Karle, S., Nishiyama, Y., Planque, S., and George, S. (2001) Phosphonate ester probes for proteolytic antibodies. J Biol Chem 276, 28314-28320
2. Sun, M., Gao, Q. S., Kirnarskiy, L., Rees, A., and Paul, S. (1997) Cleavage specificity of a proteolytic antibody light chain and effects of the heavy chain variable domain. J Mol Biol 271, 374-385
3. Karle, S., Planque, S., Nishiyama, Y., Taguchi, H., Zhou, Y. X., Salas, M., Lake, D., Thiagarajan, P., Arnett, F., Hanson, C. V., and Paul, S. (2004) Cross-clade HIV-1 neutralization by an antibody fragment from a lupus phage display library. Aids 18, 329-331
4. Nishiyama, Y., Karle, S., Planque, S., Taguchi, H., and Paul, S. (2007) Antibodies to the superantigenic site of HIV-1 gp120: hydrolytic and binding activities of the light chain subunit. Mol Immunol 44, 2707-2718
5. McLean, G. R., Nakouzi, A., Casadevall, A., and Green, N. S. (2000) Human and murine immunoglobulin expression vector cassettes. Mol Immunol 37, 837-845
6. van de Putte, L. B., Rau, R., Breedveld, F. C., Kalden, J. R., Malaise, M. G., van Riel, P. L., Schattenkirchner, M., Emery, P., Burmester, G. R., Zeidler, H., Moutsopoulos, H. M., Beck, K., and Kupper, H. (2003) Efficacy and safety of the fully human anti-tumour necrosis factor alpha monoclonal antibody adalimumab (D2E7) in DMARD refractory patients with rheumatoid arthritis: a 12 week, phase II study. Ann Rheum Dis 62, 1168-1177
7. Imai, Y., Ishikawa, T., Tanikawa, T., Nakagami, H., Maekawa, T., and Kurohane, K. (2005) Production of IgA monoclonal antibody against Shiga toxin binding subunits employing nasal-associated lymphoid tissue. J Immunol Methods 302, 125-135
8. Shimoda, M., Inoue, Y., Ametani, A., Fujiwara, J., Tsuji, N. M., Kurisaki, J., Azuma, N., and Kanno, C. (1998) Anti-DNA IgA autoantibodies are spontaneously generated in mouse Peyer's patches. Immunology 95, 200-207
9. Traggiai, E., Becker, S., Subbarao, K., Kolesnikova, L., Uematsu, Y., Gismondo, M. R., Murphy, B. R., Rappuoli, R., and Lanzavecchia, A. (2004) An efficient method to make human monoclonal antibodies from memory B cells: potent neutralization of SARS coronavirus. Nat Med 10, 871-875
10. Pasha, R. P., Roohi, A., and Shokri, F. (2003) Establishment of human heterohybridoma and lymphoblastoid cell lines specific for the Rh D and C antigens. Transfus Med 13, 83-92
11. Pack, P., Muller, K., Zahn, R., and Pluckthun, A. (1995) Tetravalent miniantibodies with high avidity assembling in Escherichia coli. J Mol Biol 246, 28-34
【0149】
本明細中で述べられる如何なる特許または出版物は、本発明が関連する技術分野の当業者のレベルの指標である。これらの特許および出版物は、仮に個々の出版物を具体的且つ個別に言及することにより包含した場合と同程度に、ここで参照することにより包含される。当業者は、本発明がその目的を達成し、言及した目標と効果、および内在的な目的、目標および効果を得るためによく適応されることを認識するであろう。その中の変更および請求項の適用範囲によって定義される発明の精神のなかに含まれる他の使用に、当業者は気付くであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドまたはその親電子性アナログであって:
ポリペプチド抗原上のエピトープに対するバイナリ特異性を有する抗体の産生を誘導するのに有効な、スーパー抗原性エピトープおよび少なくとも1つの別のエピトープを含むもの。
【請求項2】
請求項1のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、親電子性アナログが共有結合的にオリゴマー化したgp120であるもの。
【請求項3】
請求項1のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、ポリペプチドまたはその親電子性アナログが、スーパー抗原性gp120エピトープが別のgp120エピトープとペプチドリンカーによって連結さているもの。
【請求項4】
請求項3のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、スーパー抗原性エピトープがgp120のアミノ酸残基421−433を含み、他のエピトープがgp120のアミノ酸残基301−311を含むもの。
【請求項5】
請求項3のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、ペプチドリンカーが、天然gp120中の2つのエピトープ間の距離を近似するに充分な数のアミノ酸をもつもの。
【請求項6】
請求項1のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、1つまたは両方のエピトープが更に1つまたはそれ以上の親電子基を含み、前記親電子基がバイナリ特異的抗体の合成を誘導するのに有効であるもの。
【請求項7】
請求項6のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、親電子性アナログを含む1つまたは両方のエピトープが次の構造式を持つもの:
【化1】

ここで、L1・・・Lx・・・Lmは抗原決定基を定義する構成要素であり;
Lx は抗原決定基の構成アミノ酸であり;
L’はLxの官能基であり;
Y’’は分子、共有結合またはリンカーであり;
Y’は随意の荷電基または中性基であり;
Y は前記抗原決定基に結合する抗体と共有結合的に反応する親電子基であり;
n は1から1000の整数であり; そして
m は4から30の整数である。
【請求項8】
請求項7のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、Y’’、Y’ または Y が更に末端または内部成分として水結合基を含むもの。
【請求項9】
請求項7のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、水結合基が、1分子またはそれ以上の水分子にキレートする金属イオンを結合するもの。
【請求項10】
請求項7のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、金属結合基が -(His)n- (n = 2またはそれ以上)、または -Cys-X-Cys-Cys- または -Cys-X-Cys- (Xはアミノ酸残基)、 エチレンジアミン四酢酸、またはジアミノメチルピリジンであるもの。
【請求項11】
請求項7のポリペプチドまたはその親電子性アナログであって、金属が亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、カルシウムまたはマグネシウムであるもの。
【請求項12】
B細胞ポリペプチド抗原に対するバイナリエピトープ特異的抗体を産生する方法であって:
1つまたはそれ以上の請求項1のポリペプチド構築物、または1つまたはそれ以上のその親電子性ポリペプチドアナログを生きた動物に投与することを含むもの。
【請求項13】
請求項12の方法であって、更に:
T細胞非依存的またはT細胞依存的B細胞抗体産生を刺激するのに有効な1つまたはそれ以上の免疫学的アジュバントを生きた動物に投与することを含むもの。
【請求項14】
請求項12の方法であって、ポリペプチド抗原が、HIV gp120、Tat、プロテインA、またはプロテインLであるもの。
【請求項15】
請求項12の方法であって、抗体が、HIV gp120エピトープのアミノ酸残基421−433および残基301−311を認識するもの。
【請求項16】
請求項12の方法であって、前記バイナリエピトープ特異的抗体が、天然ポリペプチド抗原の加水分解を触媒するか、若しくは天然ポリペプチド抗原、例えばHIVの表面に発現されたgp120に共有結合し、その結果HIVを中和するもの。
【請求項17】
請求項12の方法によって作成された、B細胞ポリペプチド抗原に対するバイナリ特異性を有する抗体。
【請求項18】
対象のHIV感染を治療するための方法であって:
請求項17の抗体の免疫学的に有効な量を対象に投与することを含むもの。
【請求項19】
HIV gp120のB細胞スーパー抗原性部位を認識する抗体の産生を増加させるための方法であって:
ポリクローナルB細胞刺激物質またはその親電子性アナログの1つまたは両方を生きた動物に投与することを含むもの。
【請求項20】
請求項19の方法であって、更に:
T細胞非依存的B細胞抗体産生を刺激するのに有効な、1つまたはそれ以上の免疫学的アジュバントを生きた動物に投与することを含むもの。
【請求項21】
請求項19の方法であって、ポリクローナルB細胞刺激物質が、ヤマゴボウマイトジェン、リポポリサッカライド、フィトヘマグルチニン、またはCpGの1つまたはそれ以上であるもの。
【請求項22】
請求項19の方法であって、ポリクローナルB細胞刺激物質が、gp120ではないがgp120に結合する抗体可変ドメインのアミノ酸の一部または全部に結合するスーパー抗原であるもの。
【請求項23】
請求項22の方法であって、ポリクローナルB細胞刺激物質がブドウ球菌プロテインAであるもの。
【請求項24】
請求項23の方法であって、ポリクローナルB細胞刺激物質が、プロテインAのスーパー抗原性ドメイン、プロテインAのスーパー抗原性ドメインのオリゴマー、またはヨウ素により標識されたプロテインAであるもの。
【請求項25】
請求項19の方法であって、刺激物質が更に、gp120の加水分解を触媒するか、若しくはgp120に共有結合するのに有効な抗体の産生を刺激する親電子基を含むもの。
【請求項26】
請求項19の方法であって、ポリクローナルB細胞刺激物質の親電子性アナログが、1つまたはそれ以上の次の構造をもつエピトープをもつもの:
【化2】

ここで、L1・・・Lx・・・Lmは、抗原決定基を定義する構成要素であり;
Lx は、抗原決定基の構成アミノ酸であり;
L’は、Lxの官能基であり;
Y’’は、分子、共有結合またはリンカーであり;
Y’は、随意の荷電基または中性基であり;
Y は、抗原決定基に結合する抗体と共有結合的に反応する親電子基であり;
n は、1から1000の整数であり; そして
m は、4から30の整数である。
【請求項27】
請求項26の方法であって、Y’’、Y’または Yが更に末端または内部成分として水結合基を含むもの。
【請求項28】
請求項27の方法であって、Y’’、Y’または Yの何れかに位置する水結合基が、1分子またはそれ以上の水分子にキレートする金属イオンを結合する部位を含むもの。
【請求項29】
請求項28の方法であって、金属結合基が -(His)n- (n = 2またはそれ以上)、-Cys-X-Cys-Cys- または -Cys-X-Cys- (Xはアミノ酸残基)、 エチレンジアミン四酢酸、またはジアミノメチルピリジンから選択されるもの。
【請求項30】
請求項19の方法によって作成された、HIV gp120のB細胞スーパー抗原性部位を認識する抗体。
【請求項31】
対象のHIV感染を治療するための方法であって:
請求項30の抗体の免疫学的に有効な量を対象に投与することを含むもの。
【請求項32】
抗体の産生向上を刺激する方法であって:
生きた動物に、デュアルエピトープポリペプチドおよびその親電子性アナログをポリクローナルB細胞刺激物質と配合したものを投与することを含むもの。
【請求項33】
抗体レパートリーから、特定の配列とバイナリエピトープ特異性をもつ個別の抗体またはその抗体フラグメントを分離するための方法であって:
抗体レパートリーをファージ粒子の表面に提示すること;
および、
抗体およびその抗体フラグメントが、ポリペプチド、刺激物質、またはそれらの親電子性アナログと反応し、その結果抗体レパートリーからバイナリエピトープ特異的抗体またはその抗体フラグメントを分離するよう、ポリペプチドまたはその親電子性アナログ、または刺激物質親電子性アナログで抗体レパートリーを選別することを含むもの。
【請求項34】
請求項33の方法であって、ポリペプチドまたはそのポリペプチド親電子性アナログが、共有結合的にオリゴマー化したgp120であるもの。
【請求項35】
請求項33の方法であって、ポリペプチドまたはそのポリペプチド親電子性アナログが、ペプチドリンカーによって別のgp120エピトープに連結されたスーパー抗原性gp120エピトープを含むもの。
【請求項36】
請求項35の方法であって、スーパー抗原エピトープが、スーパー抗原性エピトープがgp120のアミノ酸残基421−433を含み、他のエピトープがgp120のアミノ酸残基301−311を含むもの。
【請求項37】
請求項35の方法であって、ペプチドリンカーが、天然gp120中の2つのエピトープ間の距離を近似するに充分な数のアミノ酸をもつもの。
【請求項38】
請求項35の方法であって、1つまたは両方のエピトープが更に1つまたはそれ以上の親電子基を含み、前記親電子基がバイナリ特異的抗体ろ反応するのに有効であるもの。
【請求項39】
請求項33の方法であって、刺激物質が、gp120ではないがgp120に結合する抗体可変ドメインのアミノ酸の一部または全部に結合するスーパー抗原であるもの。
【請求項40】
請求項33の方法であって、刺激物質がブドウ球菌プロテインAであるもの。
【請求項41】
請求項33の方法であって、刺激物質が、プロテインAのスーパー抗原性ドメイン、プロテインAのスーパー抗原性ドメインのオリゴマー、またはヨウ素により標識されたプロテインAであるもの。
【請求項42】
請求項33の方法であって、刺激物質が更に、gp120の加水分解を触媒するか、若しくはgp120に共有結合するのに有効な抗体の産生を刺激する親電子基を含むもの。
【請求項43】
請求項33の方法であって、ポリペプチド親電子性アナログおよび刺激物質親電子性アナログが、次の構造をもつエピトープを含むもの:
【化3】

ここで、L1・・・Lx・・・Lmは、抗原決定基を定義する構成要素であり;
Lx は、抗原決定基の構成アミノ酸であり;
L’は、Lxの官能基であり;
Y’’は、分子、共有結合またはリンカーであり;
Y’は、随意の荷電基または中性基であり;
Y は、前記抗原決定基に結合する抗体と共有結合的に反応する親電子基であり;
n は、1から1000の整数であり; そして
m は、4から30の整数である。
【請求項44】
請求項33の方法であって、抗体レパートリーが、バイナリエピトープ特異的抗体を産生する生物由来のB細胞、またはB細胞から分離された抗体をコードする遺伝子であるもの。
【請求項45】
請求項33の方法であって、抗体またはその抗体フラグメントが、抗原に可逆的に結合する、抗原に共有結合する、または抗原の加水分解を触媒するもの。
【請求項46】
請求項33の方法であって、抗体が抗原HIV gp120を認識するもの。
【請求項47】
次の構造を持つ、脂質、ポリサッカライド、またはリポポリサッカライドの親電子性アナログ:
【化4】

ここで、L1・・・Lx・・・Lmは、受容体結合決定基を定義する構成要素であり;
Lx は、受容体結合決定基の構成糖または脂質であり;
L’は、Lxの官能基であり;
Y’’は、分子、共有結合またはリンカーであり;
Y’は、随意の荷電基または中性基であり;
Y は、前記受容体結合決定基に結合する細胞受容体と共有結合的に反応する親電子基、またはアシル基であり; ここで、Y’’、Y’ または Y は、随意的に末端または内部成分として水結合基を含み;
n は、1から1000の整数であり; そして
m は、1から1000である。
【請求項48】
次の構造を持つ、オリゴヌクレオチドの親電子性アナログ:
【化5】

ここで、L1・・・Lx・・・Lmは、受容体結合決定基を定義するヌクレオチド構成要素であり;
Lx は、受容体結合決定基の構成ヌクレオチドであり;
L’ は、Lxの官能基であり;
Y’’ は、分子、共有結合またはリンカーであり;
Y’ は、随意の荷電基または中性基であり;
Y は、前記受容体結合決定基に結合する細胞受容体と共有結合的に反応する親電子基であり、ここでY’’、Y’ または Y は、随意的に末端または内部成分として水結合基を含み;
n は、1から1000の整数であり; そして
m は、1から1000である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2010−509340(P2010−509340A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536325(P2009−536325)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/023687
【国際公開番号】WO2008/133652
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509130099)
【出願人】(507284488)
【出願人】(509130125)
【Fターム(参考)】