説明

バイプレーンバルブ

【課題】弁体強度を向上させ、かつ圧力損失を低減させた、弁板分割構造のバイプレーンバルブを提供する。
【解決手段】弁板8を弁棒の軸心と平行な分割面で分割して弁体強度を向上させるとともに、弁板8を構成する弁板部材11、12の接合構造として、弁板部材11、12の接合端部11a、12aどうしを弁板8の厚み方向に重ね合わせ、その表裏面が接合相手の弁板部材と段差なく連続するようにしてボルト13とナット14で固定するものを採用することにより、弁板8の厚み方向へ張り出し部分を小さくして圧力損失を低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁板が複数の弁板部材に分割されたバイプレーンバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
バイプレーンバルブ(複葉弁)は、弁箱内の流体通路と交差するように配置した弁棒に弁体を取り付け、弁棒と弁体を一体に回動させて流体通路を開閉するもので、その弁体として、弁棒の軸心を挟む位置に弁板と補強板とを互いに平行に間隔をあけて配し、弁板と補強板との間に弁棒の軸心と直交し弁板と平行な線を含む面に沿ってリブ板を設けたものが用いられており、一般的なバタフライ弁よりも全開時の圧力損失が少ないことから、特に水力発電所等の大口径の配管にも多く採用されている。
【0003】
ところで、上記のような大口径の配管に用いられるバイプレーンバルブは、弁箱や弁板の寸法が大きいため、道交法の輸送制限や現地の搬入制限を受けて出荷できないことがある。このような場合には、通常、弁箱や弁板を複数の構成部材に分割した状態で出荷し、現地で各構成部材を接合して一体化するようにしている。
【0004】
そして、弁板を複数の弁板部材に分割する場合、その接合構造は、各弁板部材の接合端部に弁板の厚み方向に張り出すフランジを一体形成しておくかあるいは溶接によって取り付け、そのフランジどうしを突き合わせてボルト止めするものが多い(例えば、特許文献1、2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−59367号公報
【特許文献2】実開昭62−77371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2に記載されたバイプレーンバルブでは、弁板が弁棒の軸心と直交する分割面で分割されているため、弁体の強度が確保できなくなるおそれがある。
【0007】
これに対して、特許文献1に記載されているように、弁板を弁棒の軸心と平行な分割面で分割すれば、弁板の分割による弁体の強度低下のおそれは小さくなる。しかしながら、このような方向で弁板を分割すると、弁板の厚み方向に張り出すフランジが弁開時の弁板に沿う水流と直交する方向(水流を遮る方向)に延びることになるので、圧力損失が大きくなって本来の優位性が著しく低下してしまう。なお、特許文献1では、フランジをレンズ形の塞ぎ板で覆って水流を円滑にすることが提案されているが、このような塞ぎ板を設けると弁板の厚み方向へ張り出す部分が大きくなるので、必ずしも圧力損失の増大を抑えられるとは限らない。
【0008】
そこで、本発明は、弁板が分割されたバイプレーンバルブの弁体強度を向上させ、かつ圧力損失を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明では、弁箱内の流体通路と交差する軸心のまわりに回動自在に支持された弁棒と、前記弁棒と一体に回動する弁体とを備え、前記弁体は、前記弁棒の軸心を挟む位置に弁板と補強板とが互いに平行に間隔をあけて配され、前記弁板と補強板との間にリブ板が設けられ、前記弁板が複数の弁板部材をそれぞれの接合端部で互いに接合することにより一体化されたものであるバイプレーンバルブにおいて、前記弁板が前記弁棒の軸心と平行な分割面で前記複数の弁板部材に分割されており、前記弁板部材の接合構造は、弁板部材の接合端部どうしを前記弁板の厚み方向に重ね合わせてボルトで固定するものとした構成を採用した。
【0010】
すなわち、弁板を弁棒の軸心と平行な分割面で分割することにより、弁体の強度を向上させるとともに、弁板を構成する複数の弁板部材の接合構造として、弁板部材の接合端部どうしを弁板の厚み方向に重ね合わせてボルトで固定するものを採用することにより、弁板の厚み方向へ張り出す部分を小さくして圧力損失が低減されるようにしたのである。
【0011】
上記の構成において、前記各弁板部材を、前記接合端部以外の部分が一定厚で、接合端部どうしを重ね合わせた部分が前記一定厚となり、その表裏面が接合相手の弁板部材と段差なく連続するものとすれば、弁板に沿う流体の流れをより円滑にして、圧力損失をさらに低減することができる。
【0012】
また、前記リブ板を前記弁板の分割面と交差するように配して、前記弁板と交差する面で複数のリブ板部材に分割し、前記リブ板部材の接合構造は、リブ板部材の接合端部どうしを前記リブ板の厚み方向に重ね合わせてボルトで固定するものとすることにより、弁体強度をさらに向上させることができる。
【0013】
また、前記弁板部材の接合端部どうしの間に止水部材を挟み込めば、止水性能の向上が図れる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上述したように、バイプレーンバルブの弁板を弁棒の軸心と平行な分割面で分割し、弁板を構成する複数の弁板部材の接合構造として、弁板部材の接合端部どうしを弁板の厚み方向に重ね合わせてボルトで固定するものを採用したので、従来よりも弁体強度を向上させ、かつ圧力損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態のバイプレーンバルブの正面図
【図2】図1の弁体の下面側からの斜視図
【図3】図2の下面側から見た平面図
【図4】図3の側面図
【図5】図3のV−V線に沿った断面図
【図6】図3のA部の拡大平面図
【図7】図3のVII−VII線に沿った断面での分解図
【図8】図3のB部のVIII−VIII線に沿った拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。このバイプレーンバルブは、図1に示すように、内部に流体通路1が形成される円筒状の弁箱2と、弁箱2の左右両側に形成された筒部2aに通され、流体通路1と直交する水平方向の同一軸心のまわりに回動自在に支持された2本の弁棒3、4と、両弁棒3、4と一体に回動して流体通路1を開閉する弁体5とで基本的に構成されている。なお、図1は弁体5を全開にした状態を示しているが、弁体5を閉じるときには、後述するように、弁体5が弁棒3、4の設置位置よりも流体通路1の下流側で弁箱2の内周面と摺接するようになっている。
【0017】
前記弁箱2は、その中心を通る垂直面で2分割されており、道交法の輸送制限や現地の搬入制限を受ける場合は、分割状態で輸送して現地で一体化できるようになっている。また、その左右両側の下部には、床面Fに固定される脚2bが設けられている。
【0018】
前記各弁棒3、4は、それぞれ弁体5の左右両側に形成された連結部6の孔に通され、連結部6と弁棒3、4を貫通するピン7によって弁体5と一体化されている。そして、右側の弁棒3に連結される駆動軸(図示省略)の駆動により、弁体5と一体に回動するようになっている。
【0019】
図1乃至図4に示すように、前記弁体5は、弁棒3、4の軸心を挟む位置に互いに平行に間隔をあけて配された弁板8と補強板9とが、前記左右の連結部6で連結されており、その弁板8と補強板9との間に2枚の台形状のリブ板10が設けられている。リブ板10は、補強板9とともに弁板8を補強するためのもので、弁棒3、4の軸心と直交する面に沿って設けられ、一側縁を弁板8に他側縁を補強板9にそれぞれ固定されている。なお、リブ板は、弁開時の水流と平行となるように、弁棒3、4の軸心と直交し弁板8と平行な線を含む面に沿って設ければよいので、弁板8に対して斜めにすることもできる。
【0020】
この弁体5の弁板8は、弁棒3、4の軸心と平行な分割面で3分割されており、その上端部および下端部を構成する一対の弁板部材11と中央部を構成する弁板部材12とをそれぞれの接合端部11a、12aで互いに接合することにより一体化したもので、中央の弁板部材12に連結部6が固着されるようになっている。なお、弁板8の上下方向は、図3および図4の図示状態によるものである。
【0021】
前記弁板8の上下の弁板部材11と中央の弁板部材12との接合構造は、図5に示すように、接合される2枚の弁板部材11、12の接合端部11a、12aどうしを弁板8の厚み方向に重ね合わせて、ボルト13、ナット14および帯板状の座金15で固定するものである。なお、座金15としては、2枚のリブ板10間の長尺のものと左右両側の短尺のものが用いられる(図3参照)。ここで、各弁板部材11、12は、接合端部11a、12a以外の部分の厚みがt1、接合端部11a、12aの厚みがt1/2に形成され、接合端部11a、12aどうしを重ね合わせた部分の厚みがt1となり、その表裏面が接合相手の弁板部材と段差なく連続するものとなっている。
【0022】
そして、上下の弁板部材11の表裏面と平行な接合面に設けた凹部、および座金15の弁板部材11との接触面に設けた凹部に、それぞれ線状のゴム製止水部材16、17を嵌め込むことにより、止水性能の向上を図っている。なお、図示は省略するが、座金15と弁板部材11との間の止水部材17に代えて、座金15の側面と弁板部材11の表面との間のコーナ部にシール溶接を施すようにしてもよい。
【0023】
また、図2乃至図4に示すように、前記弁体5の各リブ板10は、弁板8の分割面と交差するように配されており、弁板8と交差する面で3分割され、その上端部および下端部を構成する一対のリブ板部材18と中央部を構成するリブ板部材19とをそれぞれの接合端部で互いに接合することにより一体化したものとなっている。
【0024】
そして、図6に示すように、前記リブ板10の上下のリブ板部材18と中央のリブ板部材19との接合構造は、弁板部材11、12の場合と同様、接合される2枚のリブ板部材18、19の接合端部18a、19aどうしをリブ板10の厚み方向に重ね合わせてボルト20とナット21で固定するものである。
【0025】
各リブ板部材18、19は、接合端部18a、19aどうしを重ね合わせた部分が接合端部18a、19a以外の部分と同じ厚み(t2)になり、その表裏面が接合相手のリブ板部材と段差なく連続するようになっており、この点では弁板部材11、12と同じである。しかし、弁板部材11、12と異なり、接合端部18a、19aの重ね合わせ面の中央部の段差面よりも先端側が基端側よりもわずかに厚く形成され、接合状態では段差面と直交する方向への動きが拘束されるようになっている。
【0026】
従って、図7に示すように、弁板8を組み立てる際には、予め溶接等により一体化した上下の弁板部材11とリブ板部材18を、同じく一体化した中央の弁板部材12とリブ板部材19に対して、互いのリブ板部材18、19の接合端部18a、19aどうしが係合する状態で弁板部材11、12の板厚方向にスライドさせて、弁板部材11、12の接合端部11a、12aどうしを重ね合わせた後、ボルト止めすればよい。このようにすれば、弁板部材11、12どうしの位置合わせに手間がかからず、効率よく組立作業を行うことができる。また、使用中に弁板部材11、12接合用のボルト13が緩んでも、弁板部材11、12の位置ずれが生じにくく、止水性能の低下を防止できる。
【0027】
なお、リブ板部材の接合端部を弁板部材11、12の接合端部11a、12aと同じ形状とする場合や、リブ板を分割しない場合は、弁板部材11、12の接合をリーマボルトを使用して行い、接合時に容易に位置決めできるようにするとよい。
【0028】
また、図7および図8に示すように、上記のようにして組み立てられた弁板8には、その外周部に環状のゴム製止水部材22が取り付けられる。この止水部材22は、弁板8の外周部とこれにボルト止めされる環状の保持部材23とに挟まれ、弁箱2内周に設けられた環状の弁座24と摺接するようになっている。
【0029】
そして、図8に示すように、弁板部材11、12の接合端部11a、12aどうしの間に挟み込まれた線状止水部材16の両端部が、弁板8外周に取り付けられた環状止水部材22の内周面に接着され、より高い止水性能が得られるようになっている。
【0030】
このバイプレーンバルブは、上記の構成であり、弁板8を弁棒3、4の軸心と平行な分割面で分割したので、弁板8の分割によって弁体5の強度が低下するおそれがない。しかも、弁板8を構成する弁板部材11、12の接合構造として、弁板部材11、12の接合端部11a、12aどうしを弁板8の厚み方向に重ね合わせ、その表裏面が接合相手の弁板部材と段差なく連続するようにしてボルト13で固定するものを採用したので、従来の弁板部材をフランジで接合するものに比べて弁板8の厚み方向へ張り出す部分が小さく、弁開時の弁板8に沿う流体の流れが円滑で圧力損失が小さい。
【0031】
また、弁板8を補強するリブ板10は、弁板8の分割面と交差するように配して、弁板8と交差する面で複数のリブ板部材18、19に分割し、弁板8と同様にボルト20で一体化したので、この点でも弁体5の強度向上が図られている。
【符号の説明】
【0032】
1 流体通路
2 弁箱
3、4 弁棒
5 弁体
6 連結部
7 ピン
8 弁板
9 補強板
10 リブ板
11、12 弁板部材
11a、12a 接合端部
13、20 ボルト
14、21 ナット
15 座金
16、17、22 止水部材
18、19 リブ板部材
18a、19a 接合端部
23 保持部材
24 弁座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱内の流体通路と交差する軸心のまわりに回動自在に支持された弁棒と、前記弁棒と一体に回動する弁体とを備え、前記弁体は、前記弁棒の軸心を挟む位置に弁板と補強板とが互いに平行に間隔をあけて配され、前記弁板と補強板との間にリブ板が設けられ、前記弁板が複数の弁板部材をそれぞれの接合端部で互いに接合することにより一体化されたものであるバイプレーンバルブにおいて、前記弁板が前記弁棒の軸心と平行な分割面で前記複数の弁板部材に分割されており、前記弁板部材の接合構造は、弁板部材の接合端部どうしを前記弁板の厚み方向に重ね合わせてボルトで固定するものとしたことを特徴とするバイプレーンバルブ。
【請求項2】
前記各弁板部材は、前記接合端部以外の部分が一定厚で、接合端部どうしを重ね合わせた部分が前記一定厚となり、その表裏面が接合相手の弁板部材と段差なく連続するものとしたことを特徴とする請求項1に記載のバイプレーンバルブ。
【請求項3】
前記リブ板を前記弁板の分割面と交差するように配して、前記弁板と交差する面で複数のリブ板部材に分割し、前記リブ板部材の接合構造は、リブ板部材の接合端部どうしを前記リブ板の厚み方向に重ね合わせてボルトで固定するものとしたことを特徴とする請求項1または2に記載のバイプレーンバルブ。
【請求項4】
前記弁板部材の接合端部どうしの間に止水部材を挟み込んだことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のバイプレーンバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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