説明

バクテリオファージにおける組換え遺伝子の産生

本発明は、インビボでバクテリオファージまたはバクテリオファージの配列を含むプラスミドにおいて組換え型DNAを産生または検出するための方法、バクテリオファージおよびバクテリオファージの配列を含むプラスミドの使用によってハイブリッド遺伝子およびこれらのハイブリッド遺伝子にコードされているハイブリッド蛋白を産生するための方法、これらの方法に使用されるバクテリオファージおよびプラスミド、ならびに、適当なバクテリア宿主細胞およびバクテリオファージまたはプラスミドを含むキットに関する。これらの方法に関するDNA配列は、蛋白をコードしている配列および非コード配列を含むものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インビボでバクテリオファージまたはバクテリオファージの配列を含むプラスミドにおいて組換え型DNAを産生または検出するための方法、バクテリオファージおよびバクテリオファージの配列を含むプラスミドの使用によってハイブリッド遺伝子およびこれらのハイブリッド遺伝子にコードされているハイブリッド蛋白を産生するための方法、これらの方法に使用されるバクテリオファージおよびプラスミド、ならびに、適当なバクテリア宿主細胞およびバクテリオファージまたはプラスミドを含むキットに関する。これらの方法に関するDNA配列は、蛋白をコードしている配列および非コード配列を含むものに関する。
【背景技術】
【0002】
部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発およびエラープローンPCR法などの酵素における新しい特性を発展させるための従来の変異誘発の方法には、多くの制限がある。これらの方法は、クローン化され機能上特徴付けられた、別々の機能を有する遺伝子または配列に対してのみ適用することができる。また、従来の変異誘発方法は、単一の遺伝子に関してでさえ、配列の総数のうちの非常に限られた数しか調査することしかできなかった。しかしながら、新しい性質を有する蛋白を発現させるために、ある条件下でただ1つの遺伝子だけでなく、さらなる遺伝子を変更する必要がある場合がある。このようなさらなる遺伝子として、たとえば、協同して単一の表現型を与える遺伝子や、転写、翻訳、翻訳後修飾、遺伝子産物の分泌または蛋白分解などの1または複数の細胞のメカニズムに機能を有する遺伝子がある。伝統的な変異誘発方法で、そのような機能を持っている遺伝子のすべてを個々に最適化しようと試みるのは、至難の業であろう。
【0003】
さらに、数多くの従来の変異誘発方法は、制限およびライゲーションのような遺伝子操作方法の使用に基づいている。しかしながら、制限−ライゲーション方法には、実用上いくつかの制限がある。すなわち、都合のよい制限部位を利用可能な場合にのみDNA分子を正確に結合することができ、有用な制限部位は、DNAの長い範囲においてしばしば繰り返されるので、操作できるDNA断片のサイズが制限され、通常は約20キロベース未満である。
【0004】
従来の変異誘発方法に関する多くの問題は、機能性遺伝子の異なる配列のランダムな組換えを伴い、自然と同様またはランダムに変異させられた遺伝子の分子混合を可能とする組換え方法によって解決した。この実験の容易さとDNA配列に課された制限がないこととから、組換えはDNAを操作するための別の方法を提供する。また、組換え方法を使用すると、遺伝子操作技術を含む従来の変異誘発方法を適用する場合と比べて、改良された表現型を有する変異体を得ることができる可能性が非常に高い。
【0005】
組換えは、DNAの複製および修復と堅く結びついている。組換えとDNA複製との間のこの強固な相互関係は、バクテリオファージT4と、関連するT偶数(T−even)ファージにおいて最初に明らかにされた。T4およびその宿主エシェリキア・コリ(Escherichia coli)のDNAは、塩基の組成と修飾において異なり、そして宿主DNAはファージの感染後急速に分解されるので、T4の複製および組換えの分子状況は生化学的、生物物理学的および遺伝子的方法により容易に研究された。多くの不可欠な遺伝子における変異の早期の特徴づけ、および、複製と組換えとがファージにコードされた蛋白にほぼ完全に依存していることから、遺伝子的および生化学的方法を用いて得られた結果の“実体のチェック”だけでなく、組換えおよび複製蛋白の分析が行われた。
【0006】
バクテリオファージにおける組換えが詳細に特徴づけられたにもかかわらず、組換えを達成するための数多くの異なる系が存在するバクテリアや酵母などの単細胞生物と比べて、新しいモザイクまたはハイブリッド遺伝子の産生に用いることができる組換えを達成するためのバクテリオファージを基にした系はほんの少数しか知られていない。しかしながら、これらのファージを基にした系の多くは、いくつかの欠点を有する。特に、バクテリオファージを基にした系の多くは、新規な組換えDNA配列を容易に効果的に検出することができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、この技術分野においては依然として、効率的なバクテリオファージの試験系、特に、選択的強制下での迅速で簡単な組換え体の検出および/または組換え体の選択を可能とするものが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の基礎をなす技術的な問題点は、バクテリオファージの系における組換え型モザイク遺伝子を簡単に効率的に産生するため、特にこのような組換え型配列をスクリーニングおよび検出するための改良された方法および手段を提供することである。
【0009】
本発明は、この基礎をなす技術的な問題を、バクテリオファージおよびバクテリア宿主細胞を含む系において組換え型DNA配列を産生および検出するための方法であって、該バクテリオファージが、組換えられる第一のおよび第二のDNA配列に隣接するプロモーターならびに該第一のDNA配列の下流に位置する第一のマーカー遺伝子を少なくとも含み、該2つのDNA配列の組換えが、フリップフロップ様式で該プロモーターの逆位を導き、該プロモーターの配向に応じて、一方のまたは他方のDNA配列およびマーカー遺伝子が転写され得るか、あるいはそうでないかであり、
a)該第一のマーカー遺伝子の遺伝子産物が発現されるように該プロモーターが配向されているのであれば細胞および/またはバクテリオファージの増殖のみを許容する選択条件下で、バクテリオファージを含む第一のバクテリア宿主細胞を培養する工程、および、
b)選択条件下で成長および/または増殖した該第一の宿主細胞に由来し、第一のおよび第二の組換えDNA配列を含むバクテリオファージの子孫を単離する工程
を含む方法を提供することによって解決した。
【0010】
本発明は、インビボで少なくとも2つの異なるDNA配列または組換え基質の間の組換え現象を選別するために、バクテリオファージに基づく系を提供する。本発明の系は、2つの組換え基質、すなわちバクテリオファージ上に逆の配向で位置する組換えられる2つの異なるDNA配列からのDNAのインビボの交換に関連する方法によって、改良された性質を有する新規で有利なDNA配列を迅速で効率的に生成させる。このバクテリオファージ上で、これらの2つの組換え基質は特定の配置でプロモーターに隣接している。このプロモーターは、フリップフロップ様式(flip-flop manner)でその配向を変えることができる。プロモーターの配向によって、2つの組換え基質の一方または他方が転写され、そして組換え基質のさらに下流のマーカー遺伝子が同様にこの転写コントロールを受ける。これら下流のマーカー遺伝子の発現が、特異的なプロモーターの配向が選択される適当な条件下で検出され、そして選択される。2つの組換え基質が関与する交差(クロスオーバー)組換えがプロモーターの逆位を導くので、特異的な下流のマーカー遺伝子の発現を選択する条件下で組換えが確認される。
【0011】
本発明の組換え方法においては、バクテリオファージを含む宿主細胞が第一のマーカー遺伝子の遺伝子産物の存在を選択するような条件下で培養される。採用される培養条件は、第一のマーカー遺伝子の遺伝子産物が発現されれば、宿主細胞の成長および/または増殖、したがってバクテリオファージの増殖も阻害される条件を含む。これは、第一のマーカー遺伝子が本発明のベクター上に存在するプロモーターから転写されたときだけ宿主細胞の増殖およびバクテリオファージの増殖が起こることを意味し、プロモーターが第一のマーカー遺伝子の転写を指示できるように、組換えられる2つのDNA配列間の組換えによってその配向を反転させられなければならないことを意味する。このために、プロモーターの逆位およびしたがって組換えDNA配列の産生を選択する選択条件下で宿主細胞を培養することによって、容易に組換え現象を調べることができる。
【0012】
それにもかかわらず、本発明の方法は反復性である、すなわち組換えのさらなるラウンドを行えるという利点を有する。これらの組換えのさらなるラウンドは、2つの組換え基質が関与する交差(クロスオーバー)組換えによるプロモーターの逆位に基づく。組換えの第二ラウンドにおけるプロモーターの逆位は、第一のマーカー遺伝子がそれ以上転写されないという結果をもたらす。しかしながらプロモーターの逆位は、第一のマーカー遺伝子と比較してプロモーターの他の側に位置する他のマーカー遺伝子が次に転写される可能性を与える。したがって、組換えの第一ラウンドの産物、すなわち第一のおよび第二の組換えDNA配列を含むバクテリオファージの子孫を、組換えの第二ラウンドを達成するために再び適当な宿主細胞に導入することができる。本発明の一の実施形態においては、第一のマーカー遺伝子の遺伝子産物が存在しないことを選択する条件下で、組換えの第一ラウンドで得られたファージの子孫を含む宿主細胞が培養される。他の実施形態においては、第二のマーカー遺伝子の遺伝子産物の存在を選択する条件下で、組換えの第一ラウンドで得られたファージの子孫を含む宿主細胞が培養される。このような方法で、組換えの多くのラウンドが、単に選択条件を変え、プロモーターの交互の逆位を選択することによって行われる。
【0013】
このように、本発明の方法は、プロモーターの配向によってマーカー遺伝子が交互に発現することに基づく、組換え型DNA配列を同定する簡単で迅速な選択システムを提供する。
【0014】
本発明においては、インビボで高効率でモザイク遺伝子を創作し、検出するために2つの選択方法を開発した。これらの選択方法は、溶菌性および溶原性ファージの異なるライフサイクルに基づき、溶菌性期の期間に、または、バクテリアの溶原菌として組換えを検出する。ファージの成長の溶菌性期の期間に検出する場合、選択は、たとえば、ラムダgam遺伝子のようなファージ自身の1または複数の遺伝子の発現または発現がないことに基づく。介在配列の一の配向においては、プロモーターからの転写が、たとえばgam遺伝子を活性化し、そしてそれはイー・コリ(E. coli)recAの菌叢上に溶菌斑を形成させ、イー・コリP2溶原菌の菌叢上の溶菌斑の形成を妨げる。プロモーターが逆の配向で存在するとき、gamの転写がないことからP2溶原菌において溶菌性の成長が起こり、recA宿主における成長が阻害される。
【0015】
しかしながら組換え体はまた、溶菌斑としてよりむしろ、バクテリアの溶原菌すなわちバクテリオファージゲノムをプロファージの形態でその染色体内に有する細胞としても回収することができる。gam遺伝子の転写を活性化するかわりに、プロモーターは一方の配向において抗生物質耐性マーカーを発現する遺伝子を活性化し、他方の配向において異なる抗生物質耐性マーカーを発現する他の遺伝子を活性化することができる。
【0016】
2つの異なる発明の選択方法を用いることによって、バクテリオファージ、特にバクテリオファージラムダが、相違の程度によるが10−3〜10−6の範囲の頻度で異なる配列を効率的に組換えることが驚くべきことに分かった。これは、ラムダredおよびマーカー遺伝子としてgam遺伝子を用いた場合に特にあてはまり、この場合組換えの発生頻度10−3が得られた。イー・コリΔmutS変異体のようなミスマッチ(不適正塩基対)修復システムを欠損している宿主細胞を用いると、さらに高い発生頻度が得られる。KlecknerおよびRossにより記載されているように(J.Mol.Biol., 144(1980), 215-221)、現在まで、バクテリオファージは非常に類似した、ほぼ同一の配列を組換えることが知られていただけであったため、本発明の方法によって得られた結果は驚くべきものである。しかしながら、バクテリオファージが異なる配列、特に非常に異なる配列を組換える能力については何も知られていなかった。
【0017】
したがって、本発明のバクテリオファージにおいて組換えDNAを産生および検出するための方法は、非常に異なるDNA配列を組換えることができるという利点を有する。意外なことに、全体の相違の度合いが高く、相同または同一の非常に短い範囲を共有するだけである配列を組換えられることが分かった。組換え配列の分析によって、組換えが起こった同一の範囲はごく少数のヌクレオチド、たとえば10未満のヌクレオチドを含むこともあることが明らかとなった。本発明の方法を使用することにより達成される組換え基質の多様化は、著しく非常に効率的である。明白な組換えのホットスポットは確認されなかった。42の“フリップ”組み換え体からの3つの場合だけ、同一の組み換え産物が確認され、それらの全てが同じ2つの異なる配列、すなわちOxa7およびOxa5を組換えることによって得られた。
【0018】
好都合なことに、本発明の方法は野生型(Wild−type)およびミスマッチ修復欠損バクテリア宿主細胞のいずれにおいても行うことができる。損傷したDNAが修復される過程および遺伝子組み換えのメカニズムは密接に関連しており、ミスマッチ修復機構が異なる配列間、すなわち配列が少し違った相同配列同士の組換え(homeologous recombiation)の組換え頻度に阻害効果を有することが知られている。したがって、ミスマッチ修復システムの変異はバクテリア細胞における組換え現象の全体の発生頻度を非常に高める。本発明においては、本発明の方法にミスマッチ修復システムを欠損しているバクテリア宿主細胞を用いると、組換えの頻度が相当増加することを見出した。たとえば、イー・コリΔmutS変異体においては、これに対応する野生型の細胞より組換え頻度が約10倍高かった。さらに、本発明の方法をmutSバックグラウンドのようなミスマッチ修復欠損バックグラウンドにおいて行うと、組換えは、新規なモザイク遺伝子の生成に加えて、貢献する点変異(ポイントミューテーション)の導入を伴う。
【0019】
配列レベルで観察された、使用された基質配列の多様化と共に、本発明の使用によって得られた結果から、本発明によって提供されるバクテリアツールは、定方向進化実験において多量のライブラリを創造するのに利用することができることが分かる。本発明の方法を用いると、組換えられた、変異されたDNA配列の多数のライブラリを容易に生み出すことができ、その後、要求される機能を獲得した変異体が適当な選択またはスクリーニングシステムを用いることによって同定される。
【0020】
組換え方法を達成するための本発明のバクテリオファージの使用にはさらに、DNA配列の操作が容易であり、多数のバクテリオファージに同時に引き起こされた特異的な組換え現象を研究することができる可能性があるという明白な利点がある。このように、バクテリオファージの使用によって短時間に多くの組換えラウンドを行うことができ、多くの新規な組換え型DNA配列を創ることができる。
【0021】
本発明のバクテリオファージにおいて組換え型DNA配列を産生および検出するための方法の好ましい実施形態は、組換えの第二ラウンドに関連し、
a)1b)で得られたバクテリオファージの子孫を第二のバクテリア宿主細胞に導入する工程、
b)前記第一のマーカー遺伝子の遺伝子産物が発現されないように前記プロモーターが配向されているのであれば細胞および/またはバクテリオファージの増殖を許容する選択条件下で、該バクテリオファージの子孫を含む第二の宿主細胞を培養する工程、および、
c)選択条件下で成長および/または増殖し、第三および第四の組換えDNA配列を含む該第二の宿主細胞に由来するバクテリオファージの子孫を単離する工程を含む。
【0022】
本発明の方法の別の好ましい実施形態においては、第二の組換えラウンドで得られたバクテリオファージの子孫に、組換えの第一ラウンドを達成する工程または組換えの第一および第二ラウンドを達成する工程の別のサイクルを少なくとも1回行うことにより、さらに組換えDNA配列が産生される。
【0023】
本発明においては、バクテリオファージを含む第一のおよび/または第二のバクテリア宿主細胞は、プロモーターおよび第一のマーカー遺伝子に隣接する2つの組換え基質を含むバクテリオファージを適当なバクテリア細胞に導入することによって産生され、それによってバクテリオファージが溶菌性または溶原性のいずれかの生活環に入る。本発明の文脈においては“バクテリオファージ”とは、生命体(living)および非生命体(nonliving)の特性両方を有し、バクテリアを感染させるだけのウイルスである。特にファージはDNAから構成されている。ファージの2つの主要な型、すなわち溶菌性ファージおよび溶原性ファージがある。溶菌性の生活環を通して複製する溶菌性ファージは、その感染を終わらせ、その子孫を細胞外の環境に放出するために宿主細胞の外被(エンベロープ)を破る、すなわち宿主バクテリアを溶解する。溶原性ファージは溶原性の感染を示す能力を有するものである。溶原性の感染は、ファージを含む宿主バクテリアがファージの子孫を産生せず、細胞外に放出しないという特徴を有する。その代わりに、ファージの遺伝物質が宿主バクテリアのDNA中に挿入または組み込まれる。ファージの遺伝物質は宿主バクテリアのDNAと共に増殖する。溶原性ファージは一般的に、その増殖のときに溶菌性のサイクル、すなわち非溶原性期を示す。本発明においてバクテリオファージを導入するために使用される宿主細胞は、プロファージを含まない細胞であってもよく、そのゲノム中にすでにプロファージを含む細胞すなわちバクテリアの溶原菌のどちらであってもよい。後者の場合、導入されるバクテリオファージが組換えによって宿主細胞のゲノムに組み込まれるように、プロファージおよび導入されるバクテリオファージは、相同的な配列を多少共有することが好ましい。
【0024】
本発明の方法の特に好ましい実施形態においては、使用されるバクテリオファージがバクテリオファージラムダである。ラムダファージは、溶菌性または溶原性の何れかの感染を示す溶原性ファージである。ラムダファージは、それ自身の組換え系(red)を有する。ラムダの交雑においてRedが媒介する組換えの特徴は、切断および連結機構(break−and−join mechanism)、非相互的DNA交換および全ゲノムの約10%のヘテロ二重鎖の長さである。しかしながらラムダは、自身の組換え遺伝子が変異体である場合には宿主の組換え系によって組換えを行える。redgamファージを用いる交雑において、組換えにはイー・コリのrecAおよびrecBC遺伝子が使用される。特徴は、切断および連結機構、おそらくDNAの相互の交換および通常組換えに関するホットスポットである。
【0025】
本発明の他の実施形態においては、バクテリオファージを含む第一のバクテリア宿主細胞が、バクテリオファージ配列、プロモーターに隣接する組換えられる2つのDNA配列および少なくとも前記第一のマーカー遺伝子を含むプラスミドを、バクテリアの溶原菌、すなわちそのゲノム中にプロファージを含む細胞に導入することにより産生される。プロファージは、プロモーターおよび2つの隣接する組換え基質に加えて第一のマーカー遺伝子を含むプラスミドの少なくともその部分が宿主細胞のゲノムに組み込まれるように、プラスミドに含まれるバクテリオファージ配列と相同の配列を含むことが好ましい。本発明の他の好ましい実施形態においては、第一のバクテリア宿主細胞を産生するために、このようなプラスミド由来の線状の配列がバクテリアの溶原菌に導入される。
【0026】
本発明の方法の特に好ましい実施形態においては、使用されるプラスミドが、バクテリオファージラムダのpL+Nプロモーター領域およびフランキング配列cI+rexaおよびcIII+IS10を含むプラスミドpACYC184の誘導体であるプラスミドpMIX−LAMである。pMIX−LAMはさらに、Cm遺伝子を含む。また、ベクターは、外来DNA配列を挿入するためにラムダのプロモーターを含むpL+N断片に隣接するマルチクローニングサイトMCS1およびMCS2を含む。組換えられる2つのDNA配列を含むプラスミドDNAは、ラムダのフランキング領域cIおよびcIIIで適当な制限酵素によって切断され、組換え基質を含み、受取人(レシピエント)である宿主溶原菌中のラムダゲノムの標的となりうる断片を生成する。
【0027】
本発明の方法におけるまた別のさらに好ましい実施形態においては、使用されるベクターが、低コピー数プラスミドから誘導され、colE1複製開始点を含むプラスミドpAC−OX−OYである。プラスミドpAC−OX−OYはさらに、2つの耐性マーカーSpecおよびCmを含み、これらは2つの組換え基質および組換え基質の末端に位置する標的配列LGおよびLDに隣接している。標的配列は、ラムダゲノムへの組み込みを促進する。組換え基質を含む線状DNA断片は、カセットの酵素的な制限処理および精製によって、またはPCRによる増幅によって得られる。
【0028】
本発明の文脈において“プロモーター”は、蛋白をコードしている配列などのDNA配列の上流に位置し、RNAポリメラーゼが結合することができるDNA領域である。プロモーターが正しく配向されていると、下流にあるDNA配列の転写が開始される。本発明においては、プロモーターが、組換えられる同一でない2つのDNA配列に逆の配置で隣接している。これらの2つのDNA配列間の組換えによって、プロモーターの逆位が導かれる。2つの隣接するDNA配列間の別の組換えによって、再びプロモーターの逆位が導かれ、それによってプロモーターはその本来の配向にフリップして戻る。このように、本発明において使用されるプロモーターはフリップフロップ機構を受け、これによって各組換えラウンドにおいてプロモーターの配向が反転する。本発明の方法の好ましい実施形態においては、前記プロモーターがラムダのpLプロモーターである。本発明の方法の別の好ましい実施形態においては、前記プロモーターが人工のプロモーターProである。
【0029】
本発明においては、第一のバクテリア宿主細胞を産生するために用いられるバクテリオファージまたはプラスミドが、少なくとも1のマーカー遺伝子すなわち第一のマーカー遺伝子を含む。本発明の文脈において、“マーカー遺伝子”の用語は、使用されるバクテリオファージまたはプラスミド上にのみ存在し、宿主細胞のゲノム中にはどこにも他になく、そしてバクテリオファージまたはプラスミド上の2つの組換え基質のうちの1つまたは2つの既に組換えられたDNA配列のうちの1つの下流および使用されるプロモーターの下流に位置する、特有の蛋白をコードしているDNA配列を意味する。組換え基質または既に組換えられたDNA配列としての同じDNA分子上に1または複数のマーカー遺伝子が存在すると、組換えDNA配列もたらす組換え現象を、特に遺伝子的方法によって認識および選択することができる。
【0030】
本発明においては、前記第一のマーカー遺伝子が組換えられる第一のDNA配列の下流、そしてまたプロモーターの下流に位置する。この配置によって、2つの組換え基質すなわち組換えられる2つのDNA配列が関与する交差(クロスオーバー)を選択することができる。第一のおよび第二のDNA配列間の組換えがプロモーターの逆位を導き、それによって第一のマーカー遺伝子が転写されるか否かが該プロモーターの配向によって決まるためである。したがって、第一のマーカー遺伝子の遺伝子産物が存在するかしないかが、組換え現象を選択するために用いられる。またこの配置によって、組換えのさらなるラウンドを反復様式で行うことができる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態においては、前記第一のマーカー遺伝子が、ラムダ遺伝子、栄養マーカー遺伝子、抗生物質耐性マーカー遺伝子および酵素のサブユニットをコードしている配列からなる群より選択されるものである。
【0032】
“栄養マーカー”は、生物または細胞の栄養要求性を補うことができるため、栄養要求性の生物または細胞に原栄養性を付与することができる遺伝子産物をコードしているマーカー遺伝子である。本発明の文脈においては、“栄養要求性”の用語は栄養要求性の生物自身によっては合成することができない必須の栄養素を含む培地で育てられなければならない生物または細胞を意味する。栄養マーカー遺伝子の遺伝子産物は、栄養要求性細胞において欠損している必須の栄養素の合成を促進する。したがって、栄養マーカー遺伝子が発現すると生物または細胞が原栄養性を獲得するので、生物または細胞が育てられる培地にこの必須の栄養素を加える必要がない。
【0033】
“抗生物質耐性マーカー”は、抗生物質マーカー遺伝子の発現が起こると、その遺伝子産物はそれが発現した細胞に、特定の抗生物質が特定濃度存在する条件で成長することができる能力を与えるマーカー遺伝子であるが、抗生物質耐性マーカーをもたない細胞は成長できない。
【0034】
“酵素のサブユニットをコードしている配列”は、完全な酵素構造の会合と、したがって酵素の完全な活性を得るために必要な酵素の全てのサブユニットを細胞が合成することができず、酵素活性が存在するかしないかを遺伝子的方法によりモニターすることができる場合に、マーカー遺伝子として用いることができる。たとえば、もしある酵素の活性が細胞にとって不可欠な生化学経路に必要であり、特定の環境下で細胞が成長および/または増殖することを可能とするものであるのに、細胞が完全な酵素構造の全ての構成要素を合成することができない場合には、細胞はその環境では生存することができない。したがって“酵素のサブユニットをコードしている配列”は、発現すると完全な酵素の会合が起こり、そして細胞が生存することができるマーカー遺伝子として用いることができる。
【0035】
本発明の特に好ましい実施形態においては、第一のマーカー遺伝子がラムダのgam遺伝子である。gam遺伝子は、redX(またはexo)およびredβとともに、組換えに影響を与えるラムダの3つの遺伝子の1つである。Gamがないと、RecBCDがDNAの切断された線状末端を分解するため、ラムダは回転するサイクルの複製を開始することができない。本発明の方法においては、プロモーター、特にpLからのgam遺伝子の転写がエシェリキア・コリ(Escherichia coli)recA宿主細胞の菌叢上に溶菌斑を形成させ、イー・コリP2溶原性宿主細胞の菌叢上の溶菌斑の形成を妨げる。対照的に、前記プロモーター、特にpLの逆位の配向のためgam遺伝子の転写がないことが、イー・コリP2溶原性宿主細胞の菌叢上に溶菌斑を形成させ、イー・コリrecA宿主細胞の菌叢上の溶菌斑の形成を妨げる。
【0036】
本発明の特に好ましい実施形態においては、前記第一のマーカー遺伝子がCmであり、その遺伝子産物が細胞にクロラムフェニコールへの耐性を付与する。したがって、本発明の方法においては、一の配向におけるプロモーター、特にProからのCm遺伝子の転写が、クロラムフェニコールを含む培地上でのバクテリア宿主細胞の成長を許容するが、前記プロモーター、特にProの逆位の配向のためにCm遺伝子の転写がないことが、クロラムフェニコールを含む培地上でのバクテリア宿主細胞の成長を阻害する。
【0037】
本発明の他の好ましい実施形態においては、使用されるバクテリオファージまたはプロモーター上に1以上のマーカーが存在してもよく、したがって選択の厳密性を増加させるためにさらなるマーカーが導入される。本発明においては、使用されるバクテリオファージまたはプラスミドが、組換えられる第二のDNAの下流に、そしてプロモーターの下流にも位置する第二のマーカー遺伝子を少なくとも含んでもよい。したがって、第一のおよび第二のマーカー遺伝子は、使用されるプロモーターの側面に反対の配置で配置され、それによって2つのマーカー遺伝子のうちの1つだけが、その配向によってプロモーターから転写される。
【0038】
前記第二のマーカー遺伝子は、栄養マーカー遺伝子、抗生物質耐性マーカー遺伝子および酵素のサブユニットをコードしている配列からなる群より選択されるものであることが好ましい。
【0039】
本発明の特に好ましい実施形態においては、前記第二のマーカー遺伝子が、好ましくは第一のマーカー遺伝子であるCmと結合している、Specである。プロモーター、特にProからのSpec遺伝子の転写が、スペクチノマイシンを含む培地上でのバクテリア宿主細胞の成長を許容するが、前記プロモーター、特にProの配向のためにSpec遺伝子の転写がないことが、スペクチノマイシンを含む培地上でのバクテリア宿主細胞の成長を阻害する。
【0040】
本発明においては、組換えられる2つのDNAを含むバクテリオファージまたはプラスミドを導入するための宿主細胞としてバクテリア細胞を用いる。“バクテリア細胞”および“バクテリア宿主細胞”の用語は、ゲノムが環状構造で細胞質中に自由に存在するあらゆる細胞、すなわちゲノムが核膜に囲まれていない細胞を含む。宿主細胞は、既にプロファージを含んでいてもよい。
【0041】
本発明の好ましい実施形態においては、前記バクテリア宿主細胞が、グラム陰性細菌、特にイー・コリ、グラム陽性細菌またはラン藻の細胞である。
【0042】
本発明においては、本発明の方法のために機能性ミスマッチ修復システムを有するバクテリア宿主細胞を用いることが好ましいであろう。ミスマッチ修復(MMR)システムは、複製におけるDNAポリメラーゼの誤りによる変異を回避するために最も貢献するものの一つである。しかしながら、ミスマッチ修復はまた、遺伝子組換えの正確さを確実にすることによって遺伝子の安定性を増進する。バクテリアにおいて、そして酵母や哺乳類細胞においても、ごくわずかのミスマッチ(<1%)を含む配列が少し異なる相同の(homeologous)DNA基質間の組換えは、同一配列間よりはるかに少ない効率で起こり、組換え(遺伝子変換および/または交差)頻度はMMR欠損株において劇的に高まる。このことは、組換えの高い正確さが組換え酵素固有の性質のみによってもたらされるのでなく、ミスマッチ修復システムによる組換えの校正によるものでもあることを意味する。このように、ミスマッチ修復機構は、異なる配列間の組換えに阻害効果を有する。イー・コリにおいては、メチル依存性(methyl-directed)MMRシステムの2つの蛋白、すなわちMutSおよびMutLがこの強い抗組み換え活性のために必要とされるが、他のMMRシステムの蛋白MutHおよびUvrDの効果はそれほど明確ではない。MMRおよび配列が少し異なる相同の配列間の組換え(homeologous recombination)におけるこれらの機能に加えて、MMR蛋白は遺伝子変換の間に非相同のDNAを除去するのにも重要な役割を果たす。
【0043】
本発明の別の好ましい実施形態においては、ミスマッチ修復システムを欠損しているバクテリア宿主細胞が使用される。本発明の文脈において、“ミスマッチ修復システムの欠損”の用語は、バクテリア細胞のミスマッチ修復システムが一過的または永久的に損なわれていることを意味する。バクテリア細胞のMMRの欠損は、MMRシステムを一過的または永久的に損なうどのような戦略によっても行うことができ、特に限定されず、MMRに関わる1または複数の遺伝子の変異および/または欠損、MMRを包括的に損なうUV光のような手段による処理、ミスマッチ修復システムを一過的に飽和させ、不活性化させるための2−アミノプリンまたは過剰量のミスマッチ(不適正塩基対)を含むヘテロ二重鎖のような薬剤による処理、および、MMRに関わる1または複数の遺伝子の誘発性な発現または抑制、たとえば、一過的な不活性化を許容する調節可能なプロモーターを介するものなどが挙げられる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態においては、バクテリア宿主細胞のミスマッチ修復の欠損が、MMRに関わる少なくとも1つの遺伝子の変異によるものであることである。好ましい実施形態においては、前記バクテリア細胞が、変異したmutS遺伝子、変異したmutL遺伝子、変異したmutH遺伝子および/または変異したUvrD遺伝子を有するものである。
【0045】
本発明の文脈においては、“組換えられるDNA配列”および“組換え基質”の用語は、組換え過程の結果として組換えられる、いかなる2つのDNA配列をも意味する。組換え基質は、既に組換えられたDNA配列を含んでいてもよい。組換え基質間の組換えは、相同的または非相同的組換えによるものである。いくつかの型の相同的組換え現象は、損傷を受けたDNA鎖と相同のパートナーとの塩基対によって特徴付けられ、そこで相互作用の範囲は、ほぼ完全に一致する塩基対を数百含む。“相同的”の用語は、2つの核酸分子の配列間に存在する同一の度合いを意味する。対照的に、非正統的または非相同的組換えは、相補的な塩基対を共有しないかまたはわずかに共有するDNAの末端を結合することによって特徴付けられる。
【0046】
組換えられる第一のおよび第二のDNAは異なる配列、すなわち同一ではないがある程度の相同性を示す配列である。これは、組換えられるDNA配列が、少なくとも1つのまたは少なくとも2つのヌクレオチドが異なるものであることを意味する。本発明の好ましい実施形態においては、組換えられる第一のおよび第二のDNA配列の全体の組成は、0.1%以上、5%以上、20%以上、30%以上、40%以上または50%以上異なる。これは、組換えられる第一のおよび第二のDNA配列が55%、60%、65%またはさらに多く異なることを意味する。組換えられるDNA配列は、非常に短くてもよいが相同的な領域を少なくとも1または複数共有している配列であることが好ましい。相同的な領域は、約5−50ヌクレオチドの長さを有していてもよい。
【0047】
組換え基質または組換えられるDNA配列は、天然由来のものであってもよくまたは合成由来のものであってもよい。したがって、本発明の好ましい実施形態においては、前記組換えられる第一のおよび第二のDNA配列が天然に存在する配列および/または人工的な配列である。天然に存在する組換えられるDNA配列は、ウイルス、菌類、動物、植物およびヒトを含むいかなる自然の出所由来のものでもよい。人工的または合成の組換えられるDNA配列は、いかなる公知の方法によって生成したものでもよい。
【0048】
本発明の好ましい実施形態においては、組換えられるDNA配列が、天然または非天然の化合物の工業的生産に用いることができる蛋白をコードしている配列、たとえば酵素をコードしている配列である。酵素または酵素の助けによって製造される化合物は、薬剤、化粧品、食品などの製造に使用することができる。蛋白をコードしている配列はまた、ヒトや動物の健康に関する分野において治療法に適用できる蛋白をコードする配列であってもよい。医学上重要な蛋白の重要な種類に、サイトカインおよび成長因子がある。蛋白をコードしている配列の組換えによって、改造された、好ましくは改良された機能および/または新規に獲得した機能を有する蛋白をコードする新規な変異配列を産生することができる。この方法で、たとえば、蛋白の熱安定性の向上を達成したり、蛋白の基質特異性を変化させたり、その活性を向上させたり、新しい触媒部位を進化させたりおよび/または2つの異なる酵素からのドメインを融合させたりすることが可能である。蛋白をコードしている組換えられるDNA配列は、自然の状態において類似かまたは同一の機能を有する同じか類似の蛋白をコードする異なる種由来の配列を含んでいてもよい。蛋白をコードしている組換えられるDNA配列は、同じ蛋白または酵素ファミリー由来の配列を含んでいてもよい。蛋白をコードしている組換えられるDNA配列はまた、異なる機能を有する蛋白をコードする配列、たとえば、特定の代謝経路の異なる段階を触媒する酵素をコードしている配列であってもよい。本発明の好ましい実施形態においては、組換えられる第一のおよび第二のDNA配列が、ベータラクタマーゼのOxaスーパーファミリーの遺伝子配列の群から選択されるものである。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態においては、組換えられるDNA配列が、たとえば、自然の細胞の状態において蛋白をコードしている配列の発現の調節に関与する配列などの非コード配列である。非コード配列の例としては特に限定されず、プロモーター配列、リボソーム結合部位を含む配列、イントロン配列、ポリアデニル化配列などが挙げられる。このような非コード配列を組換えることによって、細胞内環境において細胞の作用の調節を変化−たとえば遺伝子発現を変化させる変異配列を進化させることが可能となる。組換えられる非コードDNA配列は、たとえば、その自然の状態において類似かまたは同一の調節機能を有する異なる種由来の配列を含んでいてもよい。
【0050】
本発明においては、組換え基質または組換えられるDNA配列はもちろん、1以上の蛋白をコードしている配列および/または1以上の非コード配列を含んでいてもよい。たとえば、組換え基質は、1の蛋白をコードしている配列に加えて1の非コード配列を、または、異なる蛋白をコードしている配列および異なる非コード配列の組み合わせを含んでいてもよい。本発明の他の実施形態においては、したがって組換えられるDNA配列は、介在および/または隣接する非コード配列を有するコード配列の1または複数の範囲から構成される。これは、組換えられるDNA配列は、たとえば、その5’末端に調節配列および/または翻訳されない3’領域を有する遺伝子、または、エクソン/イントロン構造を有する哺乳類の遺伝子であってもよいことを意味する。本発明のさらに別の実施形態においては、組換えられるDNA配列が、生合成経路またはオペロンに属するような、非コード配列が介在する1以上のコード配列を含むより長い連続した範囲からなるものであってもよい。組換えられるDNA配列は、既に1または複数の組換え現象、たとえば、相同的および/または非相同的組換え現象を経た配列であってもよい。
【0051】
組換え基質は、変異していない野生型のDNA配列および/または変異DNA配列を含んでいてもよい。好ましい実施形態においては、したがって新規な変異配列を発達させるために野生型の配列と変異が存在する配列とを組換えることができる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態においては、2つの組換え基質に隣接するプロモーターを含むバクテリオファージまたはプラスミドは、2つの組換え基質のうちの1つを含む各断片を遺伝子操作法によってそれぞれのベクターに挿入することによって製造される。それぞれが一の組換え基質を含む断片は、たとえば、組換えられる2つのDNA配列のうちの1つを含むプラスミドなどのDNA分子を1または複数の適当な制限酵素を用いて切断することによって得ることができる。それによって、平滑末端または突出(オーバーハンギング)末端のような末端に隣接するそれぞれのDNA配列を含む断片が得られ、このような末端によって、1または複数の制限酵素で前もって切断され、同一の末端を有するバクテリオファージまたはプラスミドに要求される配向でその断片を挿入することができる。挿入される断片は、PCRによる増幅によっても得ることができ、そこでPCR産物をその後制限酵素を用いて切断することもできる。
【0053】
本発明の方法の別の好ましい実施形態においては、2つの組換え基質に隣接するプロモーターを含むバクテリオファージまたはプラスミドは、それぞれの組換え基質を含む断片の相同的組換えにより産生される。この場合、組換えられる断片は、プロモーターの右側および左側のベクターへの該断片の相同的組換えを可能とするバクテリオファージまたはプラスミドの配列と相同の配列に隣接している。
【0054】
2つの組換え基質を含むバクテリオファージまたはプラスミドを宿主細胞に導入し、マーカー遺伝子の遺伝子産物が発現されるようにプロモーターが配向されているのであれば細胞および/またはバクテリオファージの増殖を許容する選択条件下で、それぞれのベクターを含む宿主細胞を培養した後、組換えDNA配列を含むバクテリオファージが単離される。どちらの選択戦略、すなわち溶菌性期の期間のまたはバクテリアの溶原菌としての組換え体の検出を選択するかによって、組換えDNA配列を含むバクテリオファージの子孫が溶菌斑からまたはバクテリアの溶原菌から単離される。
【0055】
前記バクテリオファージの子孫を単離した後、前記第一のバクテリア宿主細胞のバクテリオファージの子孫に含まれる第一のおよび第二の組換えDNA配列、および/または、第二のバクテリア宿主細胞のバクテリオファージの子孫に含まれる第三のおよび第四の組換え配列が単離されおよび/または分析される。たとえば、前記組換えDNA配列が、PCRによる増幅によって、および/または、制限酵素による切断によって単離される。組換えDNA配列が蛋白をコードしている場合、単離された組換えDNA配列は配列決定され、および/または、適当な宿主細胞中で遺伝子産物を産生するために、1または複数の適当な調節単位を機能的に制御した条件下で発現ベクターに挿入される。組換えDNA配列が調節機能を有する非コード配列を含む場合には、単離されたDNA配列は配列決定され、および/または、レポーター遺伝子の発現へのその調節作用を研究するために、レポーター遺伝子を含む発現ベクターに挿入される。
【0056】
したがって本発明はまた、バクテリオファージおよびバクテリア宿主細胞を含む系においてハイブリッドまたはモザイク遺伝子を産生するための方法であって、本発明の組換え型DNA配列を産生および検出するための方法が行われ、このように得られたハイブリッドまたはモザイク遺伝子が、バクテリア細胞またはバクテリア細胞の菌叢上に形成された溶菌斑に含まれるバクテリオファージの子孫から選択されおよび/または単離される方法に関する。本発明の方法においては、前記単離されたハイブリッド遺伝子が、分析されおよび/または少なくとも1つの調節単位を機能的に制御した条件下で発現ベクターに挿入される。
【0057】
本発明はまた、本発明の組換え型DNA配列を産生および検出するための方法、および/または、本発明のハイブリッドまたはモザイク遺伝子を産生するための方法によって得られるハイブリッド遺伝子にも関する。
【0058】
本発明はまた、バクテリオファージおよびバクテリア宿主細胞を含む系においてハイブリッド遺伝によってコードされているハイブリッド蛋白を産生するための方法であって、本発明の組換え型DNA配列を産生および検出するための方法、および/または、本発明のハイブリッドまたはモザイク遺伝子を産生するための方法が行われてハイブリッド遺伝子が形成され、該ハイブリッド遺伝子にコードされたハイブリッド蛋白が、発現によってバクテリア細胞またはバクテリア細胞の菌叢上に形成された溶菌斑から選択されおよび/または単離される方法に関する。したがって本発明の一の実施形態においては、溶菌性の選択戦略が選ばれた場合には、ハイブリッド遺伝子にコードされたハイブリッド蛋白は溶菌斑において選択され、および/または、そこから単離される。選択戦略がバクテリアの溶原菌を基礎としている場合、ハイブリッド蛋白はバクテリアの溶原菌において選択され、および/または、そこから単離される。本発明の他の実施形態においては、前記ハイブリッド蛋白をコードするハイブリッド遺伝子が単離され、そしてその遺伝子が少なくとも1つの調節単位を機能的に制御した条件下で発現ベクターに挿入され、そしてその発現ベクターが適当な宿主細胞に導入されることによって、ハイブリッド蛋白が選択され、および/または、単離される。それから、発現ベクターを含む宿主細胞が、ハイブリッド蛋白を発現させる条件下で培養される。適当な条件下で、ハイブリッド蛋白はその後発現され、選択され、単離されおよび/または分析される。
【0059】
本発明はまた、ハイブリッド遺伝子によってコードされており、本発明のハイブリッド 蛋白を産生するための方法により得られる蛋白に関する。
【0060】
本発明はさらに、SpecマーカーおよびCmマーカーに隣接するプロモーターProを含むバクテリオファージラムダのコンストラクトであって、第一の外来DNA配列を挿入するために、少なくとも第一のおよび第二の制限部位がプロモーターとSpecマーカーとの間に位置し、第二の外来DNA配列を挿入するために、少なくとも第三のおよび第四の制限部位がプロモーターとCmマーカーとの間に位置するバクテリオファージラムダのコンストラクトに関する。
【0061】
本発明はさらに、プラスミドpACYC184の誘導体であり、バクテリオファージラムダのpL+Nプロモーター領域ならびにフランキング配列cI+rexaおよびcIII+IS10を含むプラスミドpMIX−LAMに関する。プラスミドpMIX−LAMはさらにCm遺伝子を含む。また、ベクターは、外来DNA配列を挿入するためのラムダのpL+N断片を含むプロモーターに隣接するマルチクローニングサイトMCS1およびMCS2を含む。2つの組換えられるDNA配列を含むプラスミドDNAは、適当な制限酵素を用いてラムダのフランキング領域cIおよびcIIIで切断されて、組換え基質を含み受取人(レシピエント)である宿主溶原菌中のラムダゲノムの標的となりうる断片が生成する。
【0062】
本発明はまた、低コピー数プラスミドから誘導され、colE1複製開始点を含むプラスミドpAC−OX−OYに関する。プラスミドプラスミドpAC−OX−OYは、2つの組換え基質に隣接する2つの耐性マーカーSpecおよびCmならびに組換え基質の末端に位置する標的配列LGおよびLDを含む。この標的配列が、ラムダプロファージゲノムへの組み込みを促進する。カセットを酵素的に制限処理し精製することによって、または、PCRで増幅することによって、組換え基質を含む線状DNA断片が得られる。
【0063】
本発明は、本発明の方法を行うために用いられるキットにも関する。本発明の好ましい実施形態においては、キットが少なくとも、バクテリアファージラムダのDNA(そこで該ファージはプロモーターpLおよびgam遺伝子を含む)、または、そのバクテリオファージを含むイー・コリrecA菌株の細胞を含む第一の容器(コンテナ)、イー・コリrecA菌株の細胞を含む第二の容器、および、イー・コリP2溶原性菌株の細胞を含む第三の容器を含む。
【0064】
本発明の他の実施形態は、少なくとも、プラスミドpMIX−LAMのDNAまたはプラスミドpMIX−LAMを含むイー・コリrecA菌株の細胞を含む第一の容器、イー・コリrecA菌株の細胞を含む第二の容器、および、イー・コリP2溶原性菌株の細胞を含む第三の容器を含むキットに関する。
【0065】
本発明のさらに別の実施形態は、バクテリオファージラムダのDNA(そこで該ファージはSpecマーカーおよびCmマーカーに隣接するプロモーターProを含む)、または、このバクテリオファージを含むイー・コリ菌株の細胞を含む第一の容器、および、イー・コリ菌株の細胞を含む第二の容器を含むキットに関する。
【0066】
本発明の他の実施形態は、少なくとも、プラスミドpAC−OX−OYのDNAまたはプラスミドpAC−OX−OYを含むイー・コリ菌株の細胞を含む第一の容器、および、イー・コリ菌株の細胞を含む第二の容器を含むキットに関する。
【0067】
本発明においては、前記キットに含まれるイー・コリ菌株の細胞がmutSである。
【0068】
本発明はまた、本発明の組換え型DNA配列を産生および/または検出するための方法における、本発明のハイブリッド遺伝子を産生するための方法における、または、本発明のハイブリッド蛋白を産生するための方法における、プラスミドpMIX−LAM、プラスミドpAC−OX−OY、プロモーターpLおよびgam遺伝子を含むバクテリオファージラムダ、または、SpecマーカーおよびCmマーカーに隣接するプロモーターProを含むバクテリオファージの使用に関する。
【0069】
本発明は、以下の図面および実施例によって説明される。
【実施例】
【0070】
全体的な戦略
インビボで高効率でモザイク遺伝子を作るために、2つの選択戦略を開発した。どちらのシステムも、2つの組換え基質が逆の配置でプロモーターに隣接しているコンストラクトを利用する。プロモーターの配向によって、2つの組換え基質のうちの一方または他方が転写され、該基質のさらに下流の遺伝子が同様にこの転写調節を受ける。これらの下流の遺伝子が、それによって特定のプロモーターの配向が選択される適当な条件下で検出され、そして選択される。2つの組換え基質が関与する交差(クロスオーバー)組換えはプロモーターの逆位を導き、特定の下流遺伝子の発現を選択する条件下で組換え体が同定される。
【0071】
a)溶菌性選択戦略
溶菌性選択戦略に基づくシステムは、溶菌性期の間に組換え体を検出する。図1に示すように、異なる配列がクローンされた。選択は、ラムダgam遺伝子の発現または発現がないことに基づく。介在する配列の一方の配向においては、ラムダプロモーターpLからの転写がgam遺伝子を活性化し、イー・コリ(E. coli)recAの菌叢上に溶菌斑を形成させ、イー・コリP2溶原菌の菌叢上の溶菌斑の形成を妨げる。pLが逆の配向で存在すると、gamの転写が起こらず、P2溶原菌の溶菌性の成長が起こり、recA宿主の成長が阻害される。
【0072】
b)溶原性選択戦略
このシステムでは、組換え体は溶菌斑としてよりむしろ、バクテリアの溶原菌−ラムダゲノムをその染色体内に有する細胞−として回収することができる。gam遺伝子の転写を活性化するかわりに、人工的なプロモーターProは一方の配向において抗生物質耐性マーカー(ここでは、スペクチノマイシン)を発現する遺伝子を活性化し、もう一方の配向において抗生物質耐性遺伝子(ここでは、クロラムフェニコール;図2参照)を発現する他の遺伝子を活性化する。
【0073】
ラムダに基づくこの2つの戦略について、野生型およびMMR欠損イー・コリ株における異なる配列の一対を組換える能力に関して調べた。ベータラクタマーゼをコードしている配列が少し違った3つの相同配列の遺伝子(homeologous gene)Oxa7、Oxa11およびOxa5が、2つのシステムを調べるための組換え基質として選択された。Oxa11およびOxa7ヌクレオチド配列は4.5%異なり、Oxa5およびOxa7配列は22%異なる。いずれの場合においても、逆位にできるプロモーターに隣接する2つの組換え基質を含むカセットがプラスミド中に構築され、その後これらのカセットを含む出発溶原菌を作るために適当な宿主溶原菌に形質転換された。これらの溶原菌はラムダの溶菌性サイクルが開始される状態に置かれ、回転するサイクルが媒介する組換えが起こったファージの放出をもたらした。組換え型配列は、各システムに特異的な方法によって選択され、配列決定によって特徴付けられた。組換えの新たなラウンドを開始するためにモザイク配列を有する組換えカセットをもつファージを用いることによって、このシステムの反復的な性質が証明された。
【0074】
生物JM105 2Xラムダ6T11 pMIX−LAMは、MIXIS フランスS.A.、パリによって、Mikroorganismen und Zellkulturen株式会社のドイツのコレクション(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)、ブラウンシュバイク(Braunschweig)ドイツ(DSMZ)に2005年6月20日に寄託された:DSM 17434。生物JM105pAC−OX−OY(AA)は、MIXIS フランスS.A.、パリによってDSMZに2005年6月20日に寄託された:DSM 17435。
【0075】
方法および材料
使用された菌株
使用されたイー・コリ菌株を表1に一覧にする。
【0076】
表1 イー・コリ菌株

(*)これらの菌株のmutS誘導体は、形質導入によって産生した
【0077】
ラムダ溶原菌への組換えカセットの導入および最初のファージのストック(保存)品
両方の選択戦略について、標的であるラムダプロファージと相同の配列に隣接する線状DNA断片を作製するため組換えカセットを含むプラスミドを適当な制限酵素を用いて切断した。イー・コリAB1157:λCI854::pKD46細胞が形質転換受容性(コンピテント)とされ、精製した線状DNAを用いて形質転換された。形質転換受容性への誘導に先立って、細胞は、pKD46上にコードされているred−gam複合体の転写を促進するL−アラビノースで処理された。この複合体は、相同的組換えによってシャッフリングカセット(shuffling cassette)のプロファージゲノムへの組み込みを媒介する(Kirill A.ら、PNAS 2000, 97, 6640-6645)。組み込まれたシャッフリングカセットをもつ溶原菌は、適当な抗生物質の存在下、30℃で選択された。ファージのストック品の作製のために、溶原菌は液体培地で許容される温度でOD=0.2まで培養された。この培養物を42℃に10分間移し、その後溶菌が完了するまで37℃に移した。遠心分離の後、クロロホルム(1/500)を上澄みに添加し、得られたファージのストックを4℃で貯蔵した。
【0078】
溶菌性選択戦略を用いた組換え体の選択
野生型およびmutS P2溶原菌(NK5196[P2]誘導体)を、最初のファージストックを用いて感染させ、そして溶菌斑を得るためにリッチ培地に蒔いた。第一ラウンドの組換え体(“フリップ”)を選択するために、これらの溶菌斑からファージを調製し、C600 recA細胞およびNK5196(P2)溶原菌を感染させるために使用した。第二ラウンドの組換え体(“フロップ”)を選択するために、recA宿主に生じた溶菌斑からファージを調製し、そしてC600 recA細胞およびNK5196(P2)溶原菌を再度感染させるために使用した。各宿主上に形成される溶菌斑の相対的な発生頻度が、組換えの発生頻度を決定するために用いられた。
【0079】
溶原性選択戦略を用いた組換え体の選択
C600 hflおよびC600 hfl mutS細胞を、最初のファージストックを用いて感染させ、そして耐性溶原菌を得るためにスペクチノマイシン上に蒔いた。第一ラウンドの組換え体を選択するために、溶原菌が溶解するように誘導し、ファージのストックを調製してC600 hfl細胞を感染させるために使用した。溶原菌がクロラムフェニコールまたはスペクチノマイシンで選択された。
【0080】
混合配列(shuffled sequences)の分子分析
両方の選択戦略について、第一ラウンドおよび第二ラウンドの組換え型分子を特異的なプライマー対を用いてPCRにより増幅させ、標準的な方法で配列決定した。
【0081】
結果
溶菌性選択戦略を用いたラムダにおける組換え
実施例1
Oxa7−Oxa7、Oxa7−Oxa11およびOxa7−Oxa5組換え基質を有するシャッフリングカセットを含むプラスミドが構築された。図3に、2つの異なるOxa基質を含むプラスミドpMAP188の構造を示す。カセットはプラスミドから切り出され、宿主溶原菌に導入され、この宿主溶原菌は、その後最初のファージストックを作製するために用いられた。組換え実験のための宿主として、2つの異なるラムダ誘導体、λgt11(Young, RAおよびDavis, RW, 1983 PNAS 80:1194-1198)およびλcl857(Hendrix, RWら(編者) Lambda II, 1983, CSH)を含む溶原菌が使用された。表2から、両方のラムダ誘導体を用いて組換え体が産生されること、そして、Oxaの相違の度合いおよびラムダ宿主によって、mutSバックグラウンドにおける方が野生型バックグラウンドにおけるより発生頻度が大体10倍高いことが分かる。
【0082】
表2
λgt11およびλcl857を用いて野生型およびmutSバックグラウンドで得られた“フリップ”組換え発生頻度。組換えの発生頻度は、(生存しているgamの総数)/(生存しているgamの総数+生存しているgamの総数)として計算し、3つの別個の実験の平均±標準偏差として表した。Oxa7−Oxa11遺伝子対の組換え頻度が、より高感度の手順を用いて決定された実験の結果。
【0083】


【0084】
組換えの“フリップ”および“フロップ”の両方のサイクルの後、46の組換え型Oxa対が単離され、配列決定された(22のOxa7−Oxa11;24のOxa7−Oxa5)。図4は、組換えの第一ラウンドの後λgt11宿主でOxa7−Oxa5基質対から得られた組換えOxa遺伝子の例を模式的な形態で示している。組換え基質の多様化は、効率的であった。明らかな組換えのホットスポットは確認されなかった:単離された42の“フリップ”組換え体のうちの3つのみにおいて、同一の組換え産物が回収された(全てOxa7−Oxa5組換え体)。配列の同一の間隔が非常に短くても、組換えには十分であった(たとえば、図4b oxa7−5 番号1を参照)。mutSバックグラウンドにおいても、組換えは点変異(ポイントミューテーション)の導入を伴った。予想されたように、組換えの第二のサイクル(“フロップ”)は、基質遺伝子の多様性を増加させた。
【0085】
これらの結果から、ラムダファージの系は異なる配列を効率的に組換えることが分かった。使用された条件下での全体の組換え頻度は、驚くほど高かった。これは、ラムダredおよびgem遺伝子に関して特に当てはまり、発生頻度が10−3に達した(表3を参照)。
【0086】
表3
λgt11およびλcl857を用いて野生型およびmutSバックグラウンドで得られた“フロップ”組換え発生頻度。異なる長さの同一配列のセグメントを有する2つの“フリップ”組換え産物を用いて、Oxa7−11およびOxa7−5基質対が作製された。bp:塩基対;sz:同一配列のサイズ;n.d.:決定せず。
【0087】

【0088】
配列レベルで観察された基質遺伝子の多様化とともに、これらの結果は、定方向進化実験において多様化した遺伝子の多量のライブラリを作るためにラムダツールを利用することができることを示唆している。
【0089】
溶菌性選択方法を用いるラムダでの組換え
実施例2
ベクターpMA188(図3参照)が大きく、宿主バクテリアに対して有毒のように見え、そしてさらなるクローニングのための好適な制限部位を有さないため、新しいプラスミドpMIX−LAM(図5参照)が構築された。2つの重大な特徴が、このコンストラクトに組み入れられた:1)新規なベクターが、逆にできるプロモーターおよび不可欠なラムダ機能をコードしており、シャッフリングカセットのプロファージゲノムへのターゲティングを許容する遺伝子を含むラムダ配列のいくつかのクラスターを含む;および2)ベクターは、容易なサブクローニングのための特有の部位を供給し、これらの部位は、より複雑な遺伝子または遺伝子クラスターの導入を容易にするために他のマルチクローニングサイトと交換されうる。pMIX−LAMは、マルチクローニングサイトに隣接する逆にできるラムダのpLプロモーター領域を含むpACYC184の誘導体であり、pMAP188をテンプレートとして用いた増幅産物として得ることができる。それはまた、pMAP188から制限断片として単離されるcIおよびcIIIフランキング配列を含む。
【0090】
溶原性選択方法を用いるラムダでの組換え
この取り組みにおいては、組換え体の確認は個々の細胞(シャッフリングカセットを含む溶原菌)の選択により、該個々の細胞においては2つの組換え基質の間に位置する人工のプロモーターが配向を変更し、組換え基質の下流の2つの抗生物質耐性マーカーのうちの一方または他方を発現させる。図6に、組換えられる遺伝子を含むシャッフリングカセットを有するベクターの必須の特徴を記載する。
【0091】
Oxa7−Oxa7、Oxa7−Oxa11およびOxa7−Oxa5組換え基質を含むシャッフリングカセットが構築された。シャッフリングカセットをレシピエントの溶原菌に組み込んだ後、溶解を誘導することによってファージのストックを得た。ファージのストックを、野生型およびMMR欠損イー・コリシャッフリング菌株の感染に使用した。これらの菌株はまた、高収率の溶原を促進するhflB変異を有する(Herman, Cら1993. PNAS. 90:10861-10865)。その後、適当な抗生物質を含むプレート上での選択によって新しい溶原菌が回収される。組換えOxa7−Oxa11およびOxa7−Oxa5遺伝子対は、クロラムフェイコール上で選択された溶原菌から回収され、配列決定された。
【0092】
クロラムフェニコール耐性クローンの配列から、それら全てがモザイク現象の程度が異なる組換え体であることが分かった(図7参照)。配列決定されたORFは、全て完全長で潜在的に機能性蛋白をコードしている。MMR欠損バックグラウンド(mutS)から得られた4つの組換え型配列で、点変異が観察された。高度に異なる遺伝子(Oxa7−Oxa5、22%相違)が関与する組換え体が単離されたことは注目すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、溶菌性選択方法の原理を示す。組換え基質(Oxa7−Oxa11またはOxa7−Oxa5遺伝子対)がpLプロモーターの隣に逆の配置でクローンされる。ラムダのgam遺伝子は、導入されたOxa7配列の下流に位置する。pLが右側の方へ転写されるファージがgamで、P2溶原菌で溶菌的に増殖することができるが、イー・コリrecA細胞では増殖できない。pLが左側の方へ転写されるファージがgamで、イー・コリrecA細胞では溶菌的に増殖することができるが、P2溶原菌では増殖できない。挿入された組換え基質が関与する交差(クロスオーバー)は、pLの逆位に伴って起こり、それゆえ組換え体が適当な宿主において選択される。この方法は反復的であり、組換えの複合的なラウンドを行うことができる。
【図2】図2は、溶原性選択方法の原理を示す。組換え基質(示されているのはOxa7−Oxa11遺伝子対)がProプロモーターの隣に逆の配置でクローンされる。抗生物質耐性(ここでは、クロラムフェニコールおよびスペクチノマイシン)を付与する遺伝子は、Oxa配列の下流に位置する。Proが右側の方に転写される溶原菌は、スペクチノマイシンを含む培地上で選択され、Proが左側の方に転写される溶原菌は、クロラムフェニコールを含む培地上で選択される。挿入された組換え基質が関与する交差(クロスオーバー)は、Proの逆位に伴って起こり、適当な抗生物質上に蒔かれた溶原菌において選択される。この方法は反復的であり、組換えの複合的なラウンドを行うことができる。
【図3】図3は、溶菌性選択方法に使用されるベクターpMAP188を示す。組換え基質(OxaXおよびOxaY)は、プロモーターを含むラムダのpL+N断片に隣接する部位に導入される。その結果生じるプラスミドDNAが、ラムダのフランキング領域cIおよびcIIIで切断する酵素によって切断され、シャッフリングカセット(shuffling cassette)を含み、受取人(レシピエント)の宿主溶原菌のラムダゲノムの標的となりうる断片が生成する。
【図4】図4は、溶菌性選択方法によって得られるλgt11 oxa7−5“フリップ”組換え体の対の配列を模式的に示す。a)野生型バックグラウンドで得られた組換え体。b)mutSバックグラウンドで得られた組換え体。Oxa7配列、灰色;Oxa5配列、黒。Oxa7とOxa5との間の同一配列の間隔は、バーの上に示された変異の領域によって示される。
【図5】図5は、溶菌性選択方法に使用されるベクターpMIX−LAMを示す。シャッフルされる遺伝子は、プロモーターを含むラムダのpL+N断片に隣接するマルチクローニングサイトMCS1およびMCS2に挿入される。その結果生じるプラスミドDNAが、ラムダのフランキング領域cIおよびcIIIで切断する酵素によって切断され、シャッフリングカセットを含み、受取人(レシピエント)の宿主溶原菌のラムダゲノムの標的となりうる断片が生成する。
【図6】図6は、2つの組換え基質(OxaXおよびOxaY)を含み、溶原性選択方法に使用されるベクターpAC−OX−OYの一般的な模式図を示す。このプラスミドは、colE1複製開始点を有する低コピー数プラスミドから誘導される。2つの耐性マーカー(ここでは、スペクチノマイシンおよびクロラムフェニコール)は、シャッフルされる遺伝子に隣接する。ラムダファージゲノムへの特異的な組み込みを促進する標的配列(LGおよびLD)は、シャッフリングカセットの末端に位置する。シャッフリングカセットを含む線状DNA断片は、カセットの酵素的な制限処理および精製によって、またはPCRによる増幅によって得られる。
【図7】図7は、溶原性選択方法によって得られた組換え型Oxa7−Oxa11およびOxa7−Oxa5遺伝子対の配列分析の結果を示す(2つの場合、配列情報がORF(翻訳領域)の末端でなくなっている)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリオファージおよびバクテリア宿主細胞を含む系において組換え型DNA配列を産生および検出するための方法であって、
該バクテリオファージが、組換えられる第一のおよび第二のDNA配列に隣接するプロモーター、ならびに該第一のDNA配列の下流に位置する少なくとも1つの第一のマーカー遺伝子を含み、
該2つのDNA配列の組換えが、フリップフロップ様式で該プロモーターの逆位を導き、
該プロモーターの配向に応じて、一方のまたは他方のDNA配列およびマーカー遺伝子が転写され得るか、または転写されないかであり、
a)該第一のマーカー遺伝子の遺伝子産物が発現されるように該プロモーターが配向されているのであれば細胞および/またはバクテリオファージの増殖のみを許容する選択条件下で、バクテリオファージを含む第一のバクテリア宿主細胞を培養する工程、および、
b)選択条件下で成長および/または増殖した該第一の宿主細胞に由来し、第一のおよび第二の組換えDNA配列を含むバクテリオファージの子孫を単離する工程
を含む方法。
【請求項2】
さらに、
a)1b)で得られたバクテリオファージの子孫を第二のバクテリア宿主細胞に導入する工程、
b)組換えを行い、前記第一のマーカー遺伝子の遺伝子産物が発現されないように前記プロモーターが配向されているのであれば細胞および/またはバクテリオファージの増殖のみを許容する選択条件下で、該バクテリオファージの子孫を含む第二の宿主細胞を培養する工程、および、
c)選択条件下で成長および/または増殖した該第二の宿主細胞に由来し、第三および第四の組換えDNA配列を含むバクテリオファージの子孫を単離する工程
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2c)で得られた前記バクテリオファージの子孫を、工程1a)ないし1b)または工程1a)ないし1b)に加えて工程2a)ないし2c)の別のサイクルに少なくとも1回供することにより、さらに組換えDNA配列を産生する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記バクテリオファージを含む第一のおよび/または第二の宿主細胞が、そのゲノム中にプロファージを含むかまたは含まないバクテリア細胞にバクテリオファージを導入することにより産生される請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記バクテリオファージがバクテリオファージラムダの誘導体である請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記バクテリオファージを含む第一の宿主細胞が、バクテリオファージ配列、プロモーターに隣接する組換えられる2つのDNA配列および前記第一のマーカー遺伝子を含むプラスミドを、そのゲノム中にプロファージを含むバクテリア細胞に導入することにより産生される請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プロファージを含むバクテリア細胞へのプラスミドの導入において、プラスミドが相同的組換えを通してゲノムに組み込まれる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラスミドが、バクテリオファージラムダのpL+Nプロモーター領域およびフランキング配列cI+rexaおよびcIII+IS10を含むプラスミドpACYC184の誘導体であり、宿主溶原菌中のラムダゲノムの標的となりうるプラスミドpMIX−LAMである請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記プラスミドが、低コピー数プラスミドから誘導され、colE1複製開始点ならびにラムダプロファージゲノムへの組み込みを促進する標的配列LGおよびLDを含むpAC−OX−OYである請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
前記プロモーターがラムダのpLプロモーターである請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プロモーターがプロモーターProである請求項1ないし9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第一のマーカー遺伝子が、ラムダ遺伝子、栄養マーカー遺伝子、抗生物質耐性マーカー遺伝子および酵素のサブユニットをコードしている配列からなる群より選択されるものである請求項1ないし11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一のマーカー遺伝子がラムダのgam遺伝子である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フリップポジションのプロモーターからのgam遺伝子の転写が、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)recA宿主細胞の菌叢上に溶菌斑を形成させ、イー・コリ(E. coli)P2溶原性宿主細胞の菌叢上の溶菌斑の形成を妨げる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プロモーターのフロップ配向のためにgam遺伝子の転写がないことが、イー・コリP2溶原性宿主細胞の菌叢上に溶菌斑を形成させ、イー・コリrecA宿主細胞の菌叢上の溶菌斑の形成を妨げる請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第一のマーカー遺伝子がCmである請求項12に記載の方法。
【請求項17】
フリップポジションの前記プロモーターからのCm遺伝子の転写が、クロラムフェニコールを含む培地上でのバクテリア宿主細胞の成長を許容し、前記プロモーターのフロップ配向のためにCm遺伝子の転写がないと、クロラムフェニコールを含む培地上でのバクテリア宿主細胞の成長が阻害される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記バクテリオファージまたはプラスミドが、組換えられる第二のDNA配列の下流に位置し、プロモーターの配向によって転写され得るか、または転写されない第二のマーカー遺伝子を含む請求項1ないし17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第二のマーカー遺伝子を有するバクテリオファージの子孫を含む第二の宿主細胞が、前記プロモーターが第二のマーカー遺伝子の遺伝子産物が発現されるように配向されているのであれば該細胞および/または該バクテリオファージの増殖のみを許容する選択条件下で培養される請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第二のマーカー遺伝子が、栄養マーカー遺伝子、抗生物質耐性マーカー遺伝子および酵素のサブユニットをコードしている配列からなる群より選択されるものである請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記第二のマーカー遺伝子がSpecである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
フロップポジションの前記プロモーターからのSpec遺伝子の転写が、スペクチノマイシンを含む培地上でのバクテリア宿主細胞の成長を許容し、前記プロモーターのフリップ配向のためにSpec遺伝子の転写がないと、スペクチノマイシンを含む培地上でのバクテリア宿主細胞の増殖が阻害される請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記バクテリア宿主細胞が、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌またはラン藻の細胞である請求項1ないし22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記グラム陰性細菌がイー・コリである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記バクテリア宿主細胞が機能性ミスマッチ修復システムを有するものである請求項1ないし24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記バクテリア宿主細胞が、一過的または永久的にミスマッチ修復システムを欠損しているものである請求項1ないし24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ミスマッチ修復システムの一過的または永久的な欠損が、ミスマッチ修復システムに関わる1または複数の遺伝子の変異、欠損、および/または誘発性の発現または抑制、ミスマッチ修復システムを飽和させる薬剤による処理および/またはミスマッチ修復システムを包括的にノックアウトする薬剤による処理によるものである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記バクテリア細胞が、変異したmutS遺伝子および/または変異したmutL遺伝子を有するものである請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記組換えられる第一のおよび第二のDNA配列が、少なくとも2つのヌクレオチドが異なるものである請求項1ないし28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記組換えられる第一のおよび第二のDNA配列が、天然に存在する配列および/または人工的な配列である請求項1ないし29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記組換えられる第一のおよび/または第二のDNA配列が、ウイルス、バクテリア、植物、動物および/またはヒト由来のものである請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組換えられる第一のおよび第二のDNA配列が、各々、1または複数の蛋白をコードしている配列および/または1または複数の非コード配列を含む請求項1ないし31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記組換えられる第一のおよび/または第二のDNA配列のバクテリオファージまたはプラスミドへの挿入が、個々のDNA配列を含む断片を、少なくとも1つの制限酵素で予め切断したバクテリオファージまたはプラスミドの部位にクローニングすることにより行われる請求項1ないし32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記組換えられる第一のおよび/または第二のDNA配列のバクテリオファージまたはプラスミドへの挿入が、それぞれのDNA配列を含み、バクテリオファージまたはプラスミドの配列と相同の配列に隣接する断片の相同的組換えにより行われる請求項1ないし32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記組換えDNA配列を含むバクテリオファージの子孫が溶菌斑から単離される請求項1ないし34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記組換えDNA配列を含むバクテリオファージの子孫が、バクテリアの溶原菌から単離される請求項1ないし34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第一のバクテリア宿主細胞のバクテリオファージの子孫に含まれる第一のおよび第二の組換えDNA配列、および/または第二のバクテリア宿主細胞のバクテリオファージの子孫に含まれる第三のおよび第四の組換え配列が単離されおよび/または分析される請求項1ないし36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記組換えDNA配列が、PCRにより増幅され、および/または制限酵素による切断によって単離される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
バクテリオファージおよびバクテリア宿主細胞を含む系においてハイブリッド遺伝子を産生する方法であって、
請求項1ないし38のいずれか一項に記載の方法を行い、このして得られたハイブリッド遺伝子が、バクテリア細胞に、またはバクテリア細胞の菌叢上に形成された溶菌斑に含まれるバクテリオファージの子孫から選択および/または単離される、方法。
【請求項40】
前記単離されたハイブリッド遺伝子が分析され、および/または少なくとも1つの調節単位を機能的に制御した条件下で発現ベクターに挿入される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
バクテリオファージおよびバクテリア宿主細胞を含む系においてハイブリッド遺伝子によってコードされているハイブリッド蛋白を産生する方法であって、
請求項1ないし38のいずれか一項に記載の方法を実施することでハイブリッド遺伝子が形成され、該ハイブリッド遺伝子にコードされたハイブリッド蛋白が、バクテリア細胞または発現によってバクテリア細胞の菌叢上に形成された溶菌斑から選択され、および/または単離される、方法。
【請求項42】
前記ハイブリッド蛋白をコードするハイブリッド遺伝子が単離され、少なくとも1つの調節単位を機能的に制御した条件下で発現ベクターに挿入される請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記挿入されたハイブリッド遺伝子を含む発現ベクターが、適当な宿主細胞に導入される請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記発現ベクターを含む宿主細胞が、ハイブリッド蛋白の発現を許容する条件下で培養される請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1ないし38のいずれか一項に記載の方法により、または請求項39もしくは40に記載の方法により得られるハイブリッド遺伝子。
【請求項46】
請求項45に記載のハイブリッド遺伝子によってコードされており、請求項41ないし44のいずれか一項に記載の方法により得ることのできる蛋白。
【請求項47】
SpecマーカーおよびCmマーカーに隣接するプロモーターProを含むバクテリオファージラムダの誘導体であって、
第一の外来DNA配列を挿入するために、少なくとも第一のおよび第二の制限部位がプロモーターとSpecマーカーとの間に位置し、第二の外来DNA配列を挿入するために、少なくとも第三のおよび第四の制限部位がプロモーターとCmマーカーとの間に位置する、バクテリオファージラムダの誘導体。
【請求項48】
プラスミドpACYC184の誘導体であり、バクテリオファージラムダのpL+Nプロモーター領域ならびにフランキング配列cI+rexaおよびcIII+IS10、pL+N断片を含むプロモーターに隣接するマルチクローニングサイトMCS1およびMCS2、ならびに、Cmマーカー遺伝子を含み、宿主溶原菌中のラムダゲノムの標的となりうるプラスミドpMIX−LAM。
【請求項49】
低コピー数プラスミドから誘導され、colE1複製開始点、マーカー遺伝子CmおよびSpecならびにラムダプロファージゲノムへの組み込みを促進する標的配列LGおよびLDを含む、プラスミドpAC−OX−OY。
【請求項50】
少なくとも、プロモーターpLおよびgam遺伝子を含むバクテリオファージラムダのDNA、またはそのバクテリオファージを含むイー・コリrecA菌株の細胞を含む第一の容器、イー・コリrecA菌株の細胞を含む第二の容器、および、イー・コリP2溶原性菌株の細胞を含む第三の容器を含む、キット。
【請求項51】
少なくとも、プラスミドpMIX−LAMのDNAまたはプラスミドpMIX−LAMを含むイー・コリrecA菌株の細胞を含む第一の容器、イー・コリrecA菌株の細胞を含む第二の容器、およびイー・コリP2溶原性菌株の細胞を含む第三の容器を含む、キット。
【請求項52】
少なくとも、請求項47に記載のバクテリオファージ誘導体のDNAまたは請求項47に記載のバクテリオファージ誘導体を含むイー・コリ菌株の細胞を含む第一の容器、およびイー・コリ菌株の細胞を含む第二の容器を含む、キット。
【請求項53】
少なくとも、プラスミドpAC−OX−OYのDNAまたはプラスミドpAC−OX−OYを含むイー・コリ菌株の細胞を含む第一の容器、およびイー・コリ菌株の細胞を含む第二の容器を含む、キット。
【請求項54】
前記イー・コリ菌株の細胞がmutSである請求項50ないし53のいずれか一項に記載のキット。
【請求項55】
請求項1ないし38のいずれか一項に記載の組換え型DNA配列を産生および/または検出する方法における、請求項39もしくは40に記載のハイブリッド遺伝子を産生する方法における、または請求項41ないし44のいずれか一項に記載のハイブリッド蛋白を産生する方法における、プラスミドpMIX−LAM、プラスミドpAC−OX−OY、プロモーターpLおよびgam遺伝子を含むバクテリオファージラムダ、または請求項47に記載のバクテリオファージの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−504832(P2008−504832A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519715(P2007−519715)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007291
【国際公開番号】WO2006/003001
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504288764)ミクシス フランス ソシエテ アノニム (5)
【Fターム(参考)】