説明

バスシステムのためのトランシーバ回路を備えた回路構成、及び、バスシステムのためのノード

本発明は、トランシーバ回路(21)と、当該トランシーバ回路(21)と接続された制御回路(31)とを備えた、バスシステム(11)のノード(13)のための回路構成(59)であって、トランシーバ回路(21)は、少なくとも1つの駆動状態に比較して低減された電源入力を有する静止状態を有し、当該トランシーバ回路(21)に組み込まれた電圧供給素子(63)を介してエネルギーが供給される、上記回路構成(59)に関する。バスシステム(11)のためのトランシーバ回路(21)を備えた回路構成(59)であって、静止状態から駆動状態への変更が可能な限り僅かな時間で可能な上記回路構成(59)を示すために、制御回路(31)が、静止状態において当該制御回路(31)にエネルギーを供給するための電圧供給素子(63)に接続され、回路構成(59)が、制御可能な電圧調整器(61)を有し、当該電圧調整器(61)は、静止状態には回路構成(59)の電源入力を低減するために非能動化され、駆動状態にはトランシーバ回路(21)及び制御回路(31)にエネルギー供給するために能動化されるように、トランシーバ回路(21)と結合されることが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の特徴を備えた回路構成と、請求項6の上位概念に記載の特徴を備えたノードと、に関する。
【背景技術】
【0002】
特に車両または商用車の制御装置、センサ、及びアクチュエータは、「FlexRay」の名で公知のバスシステムのような、通信システムによって互いに接続されることが多い。バスシステム上での通信トラフィック、アクセス及び受信の仕組み、並びに、エラー処理は、プロトコルを介して調整される。FlexRayにおいては、特に車両内での使用のための、高速で、決定論的な、エラーに対して耐性のあるバスシステムが関わっている。FlexRayプロトコルは、時分割多重アクセス(TDMA:Time Division Multiple Access)の原則に従って機能し、加入者、又は伝送されるメッセージには、固定のタイムスロットが割り当てられ、当該タイムスロットにおいては、加入者、又は伝送されるメッセージは、通信接続に対する排他的なアクセス権を有する。その際、タイムスロットは固定の周期で繰り返されるので、バスを介してメッセージが伝送される時点を正確に予測することが可能であり、バスアクセスは決定論的に行われる。
【0003】
バス上でメッセージを伝送するための帯域幅を最適に利用するために、FlexRayは、周期を、静的部分と動的部分とに分ける。この場合、固定のタイムスロットは、バスサイクルの最初の静的部分に存在する。動的部分では、タイムスロットが動的に設定される。当該動的部分では、排他的なバスアクセス権はそれぞれ短時間の間だけ、少なくとも1つのミニスロットの時間の間だけ可能とされる。ミニスロットの間にバスアクセスが行われる場合にのみ、タイムスロットは必要な時間分延長される。従って、帯域幅は、実際に必要とされる場合にのみ使用される。その際、FlexRayは、データレートがそれぞれ最大10Mbit/secの、1つまたは2つの物理的に別々の線を介して通信する。FlexRayは、より低いデータレートでも駆動されうる。この場合、当該線により実現されるチャネルは、特にOSI(Open System Architecture、オープンシステム構成)階層モデルの物理層に対応する。2つのチャネルを利用することは主に、重複した、エラーに対して耐性のあるメッセージ伝送に役立つが、異なるメッセージを伝送することも可能であり、それによってデータレートは2倍となるであろう。通常では、メッセージは、異なる信号を用いて伝送され、すなわち、接続線を介して伝送される信号は、2つの線を介して伝送される個々の信号の差分から生成される。階層モデルの物理層に存在する層は、線を介した、1つ又は複数の信号の電気的又は光学的な伝送、又は、他の経路での伝送が可能であるように、構成される。
【0004】
車両におけるこのようなバスシステムの適用の際には特に、バスシステムのノードが、正に必要とされていない場合には、少ないエネルギーを消費することに注意する必要がある。これは、例えば、ノードにより実現される機能がアクティブ(aktiv)ではない場合、又は、車両が駆動していない場合が該当する。従って、ノードは、ノードの幾つかの部分が停止される静止状態を有する。静止状態から駆動状態への変更の際には、マイクロコントローラは全く新たに起動される必要があり、そのために比較的多くの時間が必要となる。このことは、静止状態から出る際の著しい遅延に繋がる。バスシステムの、静止状態にあるノードは、所定のイベントに対して、比較的長い応答時間を掛けてしか応答することが出来ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、バスシステムのためのトランシーバ回路を備えたノードのための回路構成であって、静止状態から駆動状態への変更が可能な限り短時間で可能な上記回路構成を示すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題を解決するために、請求項1の特徴を備えた回路構成と、請求項6の特徴を備えたノードとが提案される。本発明の更なる別の好適な発展形態は、従属請求項から明らかとなろう。
【0007】
本発明によれば、制御回路又はマイクロコントローラは、静止状態において、電圧調整器の非能動化のために、完全に停止される必要はなく、トランシーバ回路の電圧供給素子により電力供給されながら、電源入力がより僅かな状態に留まることが可能である。従って、静止状態から駆動状態へと戻る変更においては、制御素子の、時間を要する完全な再起動が必要ではない。これにより、静止状態から駆動状態への変更の際の、特に僅かな遅延が達成される。
【0008】
回路構成が、請求項4に提案された切替素子によって実現される場合に、回路の電源入力は更に低減される。なぜならば、この切替素子によって、電圧供給素子から、非能動化された電圧調節器への電流の逆流が、少なくとも十分に低減されるからである。
【0009】
組み込まれた電圧供給素子(低電力調整器(Low−Power−Regler))、及び、ピンVBUFと、ピンVCCとの間のスイッチによる新たな解決策は、システムのより迅速な起動(静止状態から駆動状態への変更)を可能とし、外部の電圧調整器のピンVoutへの電流の流れを防止する。
【0010】
電源供給素子は、トランシーバ回路に組み込まれた、低い電力消費に対して最適化されうる(ゆっくりで、不正確な)低電力調整器として構成可能である。アクティブな駆動において、外部の調整器の、より良好な(より迅速で、より正確な)調整特性が利用されうる。
【0011】
アクティブな駆動におけるシステムの熱放出は、2つのIC(外部の電圧調整器、及び、Flexrayトランシーバ)に分散される。これにより、Flexrayトランシーバに電力調整器が組み込まれた場合よりも高い外気温下での駆動が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の更なる別の特徴及び効果は、図面を用いて例示的な実施形態がより詳細に解説される以下の記載において明らかとなろう。
【図1】好適な実施形態にかかる複数のノードを備えたバスシステムを示す。
【図2】図1のノードの回路構成である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、複数のノード13が接続されたバスシステム11を示している。バスシステム11は、FlexRay通信システムであってもよく、従って、バスシステム11は、FlexRayコンソーシアムの仕様に基づいて構成することが可能である。
【0014】
個々のノード13は、バス線15を介して直接的に、又は、スターカプラ17を介して間接的に互いに接続される。各バス線15は、それぞれが導電体を形成する2つの心線19から成る少なくとも1つの心線ペアを備えたケーブルとして構成される。従って、バスシステム11は、データ伝送のためのチャネルであって、心線ペアの心線19により形成される上記チャネルを有する。示されない実施形態において、バスシステム11は、複数のチャネル、好適に、2つの互いに別々の心線ペアによって実現される2つのチャネル(図示せず)を有しうる。2つのチャネルの利用により、2つのチャネルを介した異なるデータの伝送によって、ノード13間でのデータ伝送のユーザデータレートを上げることが出来る。バスシステムは、2つの心線ペアのうちの1つが破損した際に、引き続き機能しうるので、バスシステム11の、より向上した信頼性(Ausfallsicherheit)が得られる。
【0015】
各ノード13は、好適に集積回路として構成されたトランシーバ回路21を有する。トランシーバ回路21の第1のバス接続口BP及び第2のバス接続口BMはそれぞれ、バス線15のうちの1つの、心線のうちの1つと接続されている。
【0016】
トランシーバ回路21は、バス線15を介してデータを受信するための受信回路23と、ノード13が接続されたバス線15を介してデータを送信するための送信回路25と、を有する。受信回路23及び送信回路25は、トランシーバ回路21内で、2つのバス接続口BP及びBMと接続されている。受信回路23及び送信回路25は、対応するトランシーバ回路21に接続されたバス線15の心線ペアを介して、差分デジタル信号を伝送するためのものである。
【0017】
さらに、トランシーバ回路21は、論理ユニット27を有し、当該論理ユニット27は、受信回路23及び送信回路25と接続されている。論理ユニット27は、例えばマイクロコントローラ31又はマイクロコンピュータとして形成された制御回路に、トランシーバ回路21を接続するための接続口を有する。この接続口、又は、当該接続口に接続される線は、トランシーバ回路21と、制御回路又はマイクロコントローラ31と、の間のインタフェース29を形成する。
【0018】
マイクロコントローラ31は、バス線15を介したノード13間の通信プロセスを制御するための通信コントローラ33を有する。通信コントローラ33は、バスシステム11のプロトコルにより通信プロセスを制御するため、特に、バスシステム11のメディアアクセス方法を実施するために構成されている。通信コントローラ33は、さらに、バス線15を介して伝送されるデータフレームのチェックサムを、例えばCRC方法に従って計算するために、及び/又は、受信されたデータフレームのチェックサムを検証するために設けられうる。
【0019】
インタフェース線として、特に、トランシーバ回路21がバス線15を介して受信したデータを、トランシーバ回路21から通信コントローラ33へと伝送するための線RxDと、トランシーバ回路21がバス線15を介して送信すべきデータを、通信コントローラ33からトランシーバ回路21へと伝送ための線TxDと、が設けられている。インタフェース29は、RxD及びTxDの2つの線の他に、例えば通信コントローラ33とトランシーバ回路21との間で制御情報を交換する役目を果たす更なる別の線34も含む。
【0020】
マイクロコントローラ31は、演算コア35と、メモリ37(作業メモリ及び/又は読み出し専用メモリ)と、入出力素子39と、を有する。マイクロコントローラ31は、更なる別のプロトコルソフトウェア、及び/又は、アプリケーションプログラムを実行するために設けられうる。
【0021】
示される実施形態において、通信コントローラ33は、マイクロコントローラ31に組み込まれている。これとは異なり、示されない実施形態において、通信コントローラ33は、マイクロコントローラ31とは別体の回路、好適には、集積回路として構成される。
【0022】
図2は、トランシーバ回路21の部分を含めた、ノード13の一部を構成する回路構成59の詳細な図である。ノード13が、トランシーバ回路21に関して、供給電圧VCCを生成するための外部の電圧調整器61を有することが分かる。電圧調整器61の入力口Vinは、ノード13のバッテリ電圧接続口VBATと接続されている。
【0023】
トランシーバ回路21は、同様にバッテリ電圧接続口VBATに接続された入力口を具備する電圧供給素子63を有する。電圧供給素子63の出力口は、電力供給線65と接続されている。電力供給線65には、トランシーバ回路21の少なくとも幾つかの構成要素、特にトランシーバ回路21の受信素子67、及び、マイクロコントローラ31の供給電圧接続口VDDが接続されている。受信素子67は、静止状態から駆動状態へのノード13の変更をもたらす信号、状態、又は状態の順序に対する、バス線の監視のためのウェイクレシーバ(起動受信部;Weckempfaenger)67を形成する。さらに、電力供給線65と、グランドと、との間に、バッファキャパシタC2が配置されている。
【0024】
電圧調整器61の出力口Voutと、電圧供給素子63との間には、例えばトランシーバとして構成可能な半導体切替素子69が配置されている。半導体切替素子69の制御入力口は、コンパレータcomp1として構成された駆動素子71の出力口に接続されている。さらに、電圧調整器61の出力口Voutが、キャパシタC1に接続され、このキャパシタC1が更にグランドと接続されている。
【0025】
電圧調整器61は、制御可能な電圧調整器61として構成される。電圧調整器61は、論理ユニット27の制御出力口INHと接続された制御入力口「イネーブル」(enable)を有するため、論理ロジック27は、電圧調整器61を能動化し、及び非能動化することが可能である。
【0026】
以下では、図2を参照しながら、そこで示す回路構成59の機能形態をより詳細に解説することにする。
【0027】
回路構成59は、トランシーバ回路21に組み込まれた低電力調整器63として実現された電圧供給素子63を利用するが、当該低電力調整器63は、ウェイクレシーバ67に少ないμAを供給するため、及び、バッファキャパシタC2を充電するために構成される。バッファキャパシタC2は、短時間で(数msの間に)、受信回路23及びマイクロコントローラ31に電力供給することが可能である。
【0028】
起動(Wecken)の前には、即ち静止状態では、低電力調整器63及びウェイクレシーバ67のみがアクティブである。回路構成59は、静止状態において、電圧供給素子63(低電力調整器63)のみを介して電力供給される。キャパシタC2は、低電力調整器63によって充電される。コンパレータcomp1により制御されるスイッチ69は、低電力調整器63から、外部の電圧調整器61の制御フィードバック(Regelrueckfuehrung)への電流の流れを防止するために開放されている。C1は放電している。マイクロコントローラ31は、起動前の、停止モード(STOP−Mode)と呼ばれる電力消費が僅かな駆動状態にある。
【0029】
静止状態から駆動状態からの変更のための以下のような起動シーケンス(Wecksequenz)が得られる。
【0030】
【表1】

【0031】
これに対して、公知の回路構成では、静止状態から駆動状態への変更のために明らかにより長い時間が生じる(以下の表を参照)。
【0032】
公知のFlexRayトランシーバ21は、VBAT(バッテリ電圧)により電力供給されシステムの起動のためにのみ役立つ受信増幅器67と、データ伝送のための高速受信回路23(高速入力増幅器、Fast Receiver23)と、を有する。受信回路23は、精度による理由、及び熱による理由から、5Vの電力供給源(VCC)から電力供給される。
【0033】
スタンバイモード(Stand−By−Mode)にあるシステムの電力消費を可能な限り僅かに抑えるために、受信回路23及び(通常では外部の)5V電圧調整器61は、スタンバイモードにおいて停止される。システムを起動させる際に、公知のトランシーバ回路21では通常では以下のシーケンスが進行する。
【0034】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランシーバ回路(21)と、前記トランシーバ回路(21)と接続された制御回路(31)とを備えた、バスシステム(11)のノード(13)のための回路構成(59)であって、前記トランシーバ回路(21)は、少なくとも1つの駆動状態に比較して低減された電源入力を有する静止状態を有し、前記トランシーバ回路(21)に組み込まれた電圧供給素子(63)を介してエネルギーが供給される、前記回路構成(59)において、
前記制御回路(31)は、前記静止状態において制御回路(31)にエネルギーを供給するための前記電圧供給素子(63)に接続され、前記回路構成(59)は、制御可能な電圧調整器(61)を有し、前記電圧調整器(61)は、前記静止状態には前記回路構成(59)の電源入力を低減するために非能動化され、前記駆動状態には前記トランシーバ回路(21)及び前記制御回路(31)にエネルギー供給するために能動化されるように、前記トランシーバ回路(21)と結合されることを特徴とする、回路構成(59)。
【請求項2】
前記制御回路(31)は、前記トランシーバ回路(21)が静止状態にある場合に前記制御回路(31)の電源入力が低減されるように、前記トランシーバ回路(21)と結合されることを特徴とする、請求項1に記載の回路構成(59)。
【請求項3】
前記トランシーバ回路(21)は、FlexRayシステムに接続するために構成され、及び/又は、制御回路は、マイクロコントローラ(31)が関わっていることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の回路構成(59)。
【請求項4】
前記回路構成(59)は、制御可能な切替素子(69)を有し、前記切替素子(69)は、前記電圧調整器(61)の出力口(Vout)と、電圧供給素子(63)の出力口と間に配置され、かつ、前記電圧調整器(61)が非能動化された場合に前記切替素子(69)により両前記出力口が電気的に互いに分離されるように前記切替素子(69)を駆動するための駆動素子(71)と結合されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路構成(59)。
【請求項5】
前記トランシーバ回路(21)が、前記バスシステム(11)のバス線(15)と結合された受信素子(67)を有し、前記受信素子(67)は、前記バス線(15)の所定の状態、状態変更、及び/又は、状態の所定の時間的順序を検出するために、及び、前記状態、前記状態変更、及び/又は、前記状態の順序の検出後に、前記静止状態から前記駆動状態へと前記トランシーバ回路の駆動形態を変更するために設けられることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路構成(59)。
【請求項6】
トランシーバ回路(21)と、前記トランシーバ回路(21)に接続された制御回路(31)とを備えた回路構成(59)を有する、バスシステム(11)のノード(13)であって、前記トランシーバ回路(21)は、少なくとも1つの駆動状態に比較して低減された電源入力を有する静止状態を有し、前記トランシーバ回路(21)に組み込まれた電圧供給素子(63)を介してエネルギーが供給される、前記ノード(13)において、
前記回路構成(59)は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のように構成されることを特徴とする、バスシステム(11)のノード(13)。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−508491(P2012−508491A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−535059(P2011−535059)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062416
【国際公開番号】WO2010/052064
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(501125231)ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (329)
【Fターム(参考)】